演題 : 電動化に伴う自動車開発の変革と日本の自動車業界の課題
講師 : 矢島 和男様(ブルースカイテクノロジー株式会社 代表取締役社長)
聴講者数: 46名
講師紹介
1990年:東北大学大学院工学研究科 材料化学専攻修士課程修了
同年:日産自動車入社
総合研究所、材料技術部、技術企画部、グローバルマーケティング部、インフィニティ車の車両開発主管(CVE)
電池設計部部長(日産リーフ向けリチウムイオン電池開発)
EV/HEV技術開発本部本部長(二代目リーフ及びe-POWER開発)
2018年:ブルースカイテクノロジー(株)創業
講演概要:
冒頭エンジニア集団である同社の事業は机上調査にとどまらず中欧米の実車を試乗・分解・解析することでハードウエアの設計・生産仕様とソフトウエアとの関係性を理解、それを各企業の若手中堅向けリスキリング教育に用いるなど現物基軸である旨紹介があった。次に日本車メーカが世界市場では悲観的であることに言及、例えば全車種の世界占有率は最近6年で全需九千万台/30%から26%までコンスタントに減少中だが、中欧米のEV+PHEV販売台数は同期間に二百万台から千百万台に増加し占有率も20~30%に大幅増加、にも関わらず日本は3%。この傾向が続けば、エンジン車主体の日本自動車産業が危ういというリスクが示された。その要因として消費者の認識ズレもあるが報道の偏りが助長しており政府も動力源についてはHEVまで広げたマルチパスウエイ方針を掲げている。電動化技術開発については、エンジン車のレガシーに引きずられる日本車メーカに比べ身軽な後発であるテスラや中国車は「開発・生産・販売・アフターサービス」に加え「顧客体験・リサイクル・LCA」など商品寿命全体を対象とした事業変革を行っており既に大きな差がある。例えばテスラの場合、低価格車60kWh容量を購入した顧客は使用過程で最大容量90kWhに変更可など旧来あり得なかった車両の基本機能までOTA※対応し、顧客体験を通じ進化する開発に変化。さらに車体構造を大型一体成型鋳物(ギガキャスト)とし組立工程の簡素化・省時間化による大幅コストダウンを得てエンジンルーム前提の設計基準は不要としている。中国企業もテスラ仕様に半年で追いつくなどリバースエンジニアリング速度は別次元ともいえる。人員体制も開発だけでも10万人を超え昼夜3交代勤務など俄には信じがたい状況。電池以外でもモータ・インバータ・減速機の一体組立方式(3in1)、居室・荷室空間を生むための角巻線によるモータ線密度向上、SiCを用いたインバータ高電圧・細線化、エアコン/強電部品/電池等の加温・冷却相殺式統合熱マネージメントなどいずれもサプライチェーンを巻き込んでの車両最適化開発を迅速実施。一方【電池発火事故累積百万台超え0(日産EV)=車両骨格を作るトップ技術保持】、従って【数千万台分の世界市場データをOTA統合した講師提唱のAI Defined Vehicle(次世代SDV)を各企業相互補完で協調し早期市場投入】すれば、【車の楽しさ+自動運転(事故0化)+国産再エネ低価格化促進+電動部品再利用によるレアアース輸入リスク回避+蓄電電力供給による災害靭性強化】など価値あるプラットフォームに発展。これが次世代に繋ぐ厳しくはあるが希望ある道筋と感じた。その誕生を講師がリードしたe-POWERは日本市場で高評価を得る車両最適化技術でありその先進思想を責任者から直接伺えたことは誠に幸運であった。
※On The Air 即時双方向でサーバと常時通信
Q&A
Q1:半固体電池(モバイル型)は1.5倍の容量があると聞くがその位置づけは?
A1:電池活物質と半固体電解質の間には界面がある。半固体電池は、容量は増えるがハイレート(高速充放電)ではない。つまり自動車にとっては高速合流出力や急速充電の問題がある。一方で穏やかに、長時間使うのには向いている。例えば災害用電池。
Q2:開発の仕方に最近のアメーバ型(海外)と従来のV型(日本)があると紹介があった。アメーバ型はサプライヤーと早い段階から協力するためボトルネックを早期発見できるがV型は時間をかけて課題を細分化した後に発見するため時間がかかるのではないか?
A2:従来は、摺合せ方式と言われてきた。組み合わせではない。例えばパソコンは、同じサイズの箱の中に色々な標準部品が組み合わせて入ってる。しかしすり合わせ型のトヨタエンジンを日産車に乗せるわけにはいかない。アメーバ型開発は、ある程度組合せ型で領域とルールを決めて(考え方の枠組み)サプライヤーに任せる。しかし全体の仕切りは完成車メーカが行う。これはスマホ開発と同じであり開発期間は短くなる。従来の開発が染み付いていると、何もかも把握していないと心もとないと感じる。
過去EVになると水平分業が進むと言われたが、BYDやテスラはウルトラ垂直統合である。シャオミやファーウェイはその先を言っているようにも感じる。しかし、車のしっかりした部分があるのは今までのやり方の強みであり、アメーバ型は市場において抜けも散見される。その点で、日本は新旧両立させるのがよい。
Q3:自動車用ディスク・ドラムブレーキの鋳物部品の仕事を従来型部品メーカと昨年までしていた。その時に中国メーカからタイとインドに新部品を供給するのに納期4ヶ月と要求された。従来は 2万点の部品に対し生産試作や工場試作に時間を取ってきた。質問は、中国メーカはPL(製品安全)まで考えているのか? また日本のTier1が変えられる点はどこか?
A3:良し悪しはあるが市場問題は起きてしまってからなおす。特に中国は早く直す。日本はしっかり評価してから市場に出す。そのために時間がかかる。変えられる点は、まずは相手のやり方を理解すること。例えば、中国メーカ要求に納期2年と答え笑われたサプライヤーがあると最近聞いた。相手の要求を理解しないことには仕事は始まらない。ワークライフバランスもあるが、中国の働く時間は非常に長い。
Q4:我々、現役時代は企業が危うくなるので北米のPLを非常に心配しそこを抑えていた。中国は北米PLにどう取り組んでいるのか?そもそも米国に輸出しているのか?
A4:北米市場には出していないしそのレベルではない(出せばPLや集団訴訟になる)。一方で最近ISO 26262(機能安全)などの基準が出てきたので変化が起きるのではないか。また、テスラについては自動運転で事故も起こしているので確信は持てないが、宇宙開発を行っているので信頼性などよくわかっていると思う。この先は、厳しいがロビーイング活動が必要になるのではないだろうか。
Q5:環境問題と医学の関係に興味がある。例えば、観光バスのディーゼル排ガスによって日光街道の杉並木が枯れ近くの小学校に花粉症が発生し電気自動車化が議論されている。この点で大型車の電気自動車化についてはどう考えるか?
A5:路線バスの電動化は、中国(深圳や上海)はもう既に100%。難しいのは長距離トラックおよび高速バス。そのためエンジン車はある程度残るのが現実的ではないか。排ガスに関しては、都市内で集中して使わない長距離車は違う。さらに都市間走行のため一定速で走る、ストップ&ゴーや冷間起動も少なく排ガス対策も易しくエンジン車の方が使いやすい。 FCV車も定まったルートに水素ステーションを設置できるので良いのではないか。
Q6:日本だけ特異にEVが売れない理由は?また、どうしたら良くなるのか?
A6:EVとエンジン車は違うという認識を持つ必要があるのではないか? 今は、EVはガソリン車基準に合わせようとしている。航続距離2000kmでも良いのではないか。長時間でも、家で充電できればよいのではないか。ある女性顧客がEVを非常に気に入ってくれたがその理由はガソリンスタンドに行かないこと、なぜなら「セルフが怖い」それならば「入れてもらえば」と言うと「知らないおじさんと話すのが嫌だ」と
Q7:日本のEVが普及しなかったのは経産省がその気にならなかったのではないか。確かに補助金はあるが、もっと本気度が必要なのではないだろうか?
A7:経産省は現在マルチパスウエイ戦略をとっている。つまり、EV、PHEV、HEV、FCVバイオ支援なので結果的に、EVの影響が薄まっていると思う。
2025年10月24日
EVFセミナー報告:電動化に伴う自動車開発の変革と日本の自動車業界の課題
posted by EVF セミナー at 16:00| セミナー紹介
2025年08月28日
EVFセミナー報告:第7次エネルギー基本計画を読み解く
演題:第7次エネルギー基本計画を読み解く
講師:橘川 武郎 様 国際大学 学長 EVF顧問
聴講者数: 48名
講師紹介
東京大学大学院経済学研究科 博士課程 単位取得退学 経済学博士
青山学院大学経営学部 助教授、東京大学社会科学研究所 教授、
一橋大学大学院商学研究科 教授、東京大学大学院イノベーション研究科 教授 を経て
2020年より、国際大学大学院 教授
2021年より、国際大学 副学長、東京大学・一橋大学 名誉教授、EVF顧問
2023年より、国際大学 学長 (現職)
講演概要:
・第7次エネルギー基本計画は、基本政策分科会委員16名中、1名だけが原子力反対派。CO2エネルギー消費の6割を占める熱の専門家がいないといった偏った委員構成の中で議論が進められた。
・閣議決定された2040年の電源構成・一次エネルギー構成は、複数のベースシナリオに加え、トランプ政権の誕生を踏まえたリスクシナリオもあり、民間の投資判断に支障をきたす内容となっている。
・リスクシナリオは、第6次計画と比較するとカーボンニュートラルが相当後退した内容となっているが、これが第7次計画の本命と捉えられ具体的な議論が始まっている。
・定性的には「次世代革新炉の開発」を大々的に書き込む等、原発回帰を打ち出した計画と報道されているが、定量的には、ベースシナリオで再エネ4〜5割:原子力2割と、再エネ主力電源化、原子力副次電源化が鮮明となっているのが実態。
・次世代革新炉は運転開始まで約20年の開発期間を要し、今から計画しても40年代後半と、第7次計画の目標40年と整合性がとれていない。1基の投資額は1〜2兆円といわれているが、既設炉の改修・運転延長に要する投資は1基当たり数百億円程度。電力自由化の中で電力料金面での競争力を失うため、次世代革新炉の投資に踏み切るのは容易でない。データセンター建設による消費電力増が、次世代革新炉の必要性の根拠となっているが、NTTのIOWN技術の進展で、40年代には電力消費量が低減トレンドとなる可能性も見通すと、40年以降も原子力は使い勝手の悪い電源であり続けるとみている。
・2023年2月に閣議決定された「GX実現に向けた基本方針」において、次世代革新炉への投資額は総額150兆円のうち1兆円と、ここでも原発をあてにしていないことが読みとれる。
・一方で、第7次エネ基には、「天然ガスは・・・カーボンニュートラル実現後も重要なエネルギー源である。」と、電力業界・都市ガス業界のこれまでの見通しを覆す「大転換」の記載があり、業界こぞってLNG火力発電の新増設計画を打ち出す天然ガスシフトが起こっている。
・カーボンニュートラルの旗は降ろしておらず、第7次エネ基の資料集に極端に低い電力排出係数(kg-CO2/kWh)が示されている。2040年、火力平均で、ベースシナリオ0.08-0.20、リスクシナリオ0.31と、現状の排出係数から考えると、ゼロエミ火力(水素・アンモニア・CCUS火力)の大量導入が必要となり、実現には極めて高水準のカーボンプライシングの想定が必要で、2万円/CO2トンもありうると専門家はみている。
・原子力発電は、カーボンフリー水素製造に活用することで、次世代燃料開発上のネックとなっていたグリーン水素のコスト下げを実現でき、「水素社会」の道を開く、新しい価値を提供することが可能となる。
・電力会社は、原発の再稼働が進むと経営が安定するため、天然ガスシフト、再エネの主力電源化、ゼロエミッション火力に経営資源を投入でき、グリーン水素の製造といった新しい価値の提供に目を向ける余裕も出てくる。
・再エネの主力電源化に向け、主力の太陽光は、課題となっていた発電コストがかなり下がってきている。洋上風力は、三菱商事の撤退等、発電コストの低減は見通せていないが、国防の観点もあってEEZ内での浮体式設置計画が進められている。
Q&A
Q1:基本計画の中で、自給率向上の議論はあったか? 電力が余る国を目指すことにベクトルを会わすべきと考えるがどうか?
A1:世界的な異常気象の発生で、温暖化対策が必要との共通認識は変わらず、アメリカが後退しても世界的には進んでいく。トランプの政策は選挙を意識したもので、米国内の石油会社にメリットがある水素・アンモニア・CCUSの政策は転換していない。
Q2:バイオマス発電について、例えば非食用のポンダミアを原料とすることでデメリットを抑えられると考えるがいかがか?
A2:大いに結構なことと思うが、原料が少なく大きな電力源とはならない。また国内で生産できる非食植物原料は多くはなく残念な状況。
Q3:第7次計画の中で、一番の着目点は何か。
A3:国民の目線から、計画に書かれたことの何を切り口として使っていくか、ということ。例えば、川崎市で火力発電の設置条件として計画で示された排出係数達成を義務化すれば、JERAのガス火力の水素シフトが一気に進む可能性もある。切り口を見つけ取組促進させていくことが肝要。
A4:原子力発電による水素製造の課題、実装までの時間軸は?
Q4:既に技術が確立している水の電気分解炉を既存の原発軽水炉敷地内で設置すれば、すぐにでもできる。
A5:2040年、2050年を見据えると、洋上風力をもう一度本命として見据えることはできないか?
Q5:浮体式について重点地域の選定が始められており、国は巻き返しを図ろうとしている。ただ、三菱商事と競合した事業主体の経営が相当傷んでおり、浮体式に強い戸田建設やパワーエックスといった新たな事業主体で進められていくのではないか。
講演資料:第7次エネルギー基本計画を読み解く
講師:橘川 武郎 様 国際大学 学長 EVF顧問
聴講者数: 48名
講師紹介
東京大学大学院経済学研究科 博士課程 単位取得退学 経済学博士
青山学院大学経営学部 助教授、東京大学社会科学研究所 教授、
一橋大学大学院商学研究科 教授、東京大学大学院イノベーション研究科 教授 を経て
2020年より、国際大学大学院 教授
2021年より、国際大学 副学長、東京大学・一橋大学 名誉教授、EVF顧問
2023年より、国際大学 学長 (現職)
講演概要:
・第7次エネルギー基本計画は、基本政策分科会委員16名中、1名だけが原子力反対派。CO2エネルギー消費の6割を占める熱の専門家がいないといった偏った委員構成の中で議論が進められた。
・閣議決定された2040年の電源構成・一次エネルギー構成は、複数のベースシナリオに加え、トランプ政権の誕生を踏まえたリスクシナリオもあり、民間の投資判断に支障をきたす内容となっている。
・リスクシナリオは、第6次計画と比較するとカーボンニュートラルが相当後退した内容となっているが、これが第7次計画の本命と捉えられ具体的な議論が始まっている。
・定性的には「次世代革新炉の開発」を大々的に書き込む等、原発回帰を打ち出した計画と報道されているが、定量的には、ベースシナリオで再エネ4〜5割:原子力2割と、再エネ主力電源化、原子力副次電源化が鮮明となっているのが実態。
・次世代革新炉は運転開始まで約20年の開発期間を要し、今から計画しても40年代後半と、第7次計画の目標40年と整合性がとれていない。1基の投資額は1〜2兆円といわれているが、既設炉の改修・運転延長に要する投資は1基当たり数百億円程度。電力自由化の中で電力料金面での競争力を失うため、次世代革新炉の投資に踏み切るのは容易でない。データセンター建設による消費電力増が、次世代革新炉の必要性の根拠となっているが、NTTのIOWN技術の進展で、40年代には電力消費量が低減トレンドとなる可能性も見通すと、40年以降も原子力は使い勝手の悪い電源であり続けるとみている。
・2023年2月に閣議決定された「GX実現に向けた基本方針」において、次世代革新炉への投資額は総額150兆円のうち1兆円と、ここでも原発をあてにしていないことが読みとれる。
・一方で、第7次エネ基には、「天然ガスは・・・カーボンニュートラル実現後も重要なエネルギー源である。」と、電力業界・都市ガス業界のこれまでの見通しを覆す「大転換」の記載があり、業界こぞってLNG火力発電の新増設計画を打ち出す天然ガスシフトが起こっている。
・カーボンニュートラルの旗は降ろしておらず、第7次エネ基の資料集に極端に低い電力排出係数(kg-CO2/kWh)が示されている。2040年、火力平均で、ベースシナリオ0.08-0.20、リスクシナリオ0.31と、現状の排出係数から考えると、ゼロエミ火力(水素・アンモニア・CCUS火力)の大量導入が必要となり、実現には極めて高水準のカーボンプライシングの想定が必要で、2万円/CO2トンもありうると専門家はみている。
・原子力発電は、カーボンフリー水素製造に活用することで、次世代燃料開発上のネックとなっていたグリーン水素のコスト下げを実現でき、「水素社会」の道を開く、新しい価値を提供することが可能となる。
・電力会社は、原発の再稼働が進むと経営が安定するため、天然ガスシフト、再エネの主力電源化、ゼロエミッション火力に経営資源を投入でき、グリーン水素の製造といった新しい価値の提供に目を向ける余裕も出てくる。
・再エネの主力電源化に向け、主力の太陽光は、課題となっていた発電コストがかなり下がってきている。洋上風力は、三菱商事の撤退等、発電コストの低減は見通せていないが、国防の観点もあってEEZ内での浮体式設置計画が進められている。
Q&A
Q1:基本計画の中で、自給率向上の議論はあったか? 電力が余る国を目指すことにベクトルを会わすべきと考えるがどうか?
A1:世界的な異常気象の発生で、温暖化対策が必要との共通認識は変わらず、アメリカが後退しても世界的には進んでいく。トランプの政策は選挙を意識したもので、米国内の石油会社にメリットがある水素・アンモニア・CCUSの政策は転換していない。
Q2:バイオマス発電について、例えば非食用のポンダミアを原料とすることでデメリットを抑えられると考えるがいかがか?
A2:大いに結構なことと思うが、原料が少なく大きな電力源とはならない。また国内で生産できる非食植物原料は多くはなく残念な状況。
Q3:第7次計画の中で、一番の着目点は何か。
A3:国民の目線から、計画に書かれたことの何を切り口として使っていくか、ということ。例えば、川崎市で火力発電の設置条件として計画で示された排出係数達成を義務化すれば、JERAのガス火力の水素シフトが一気に進む可能性もある。切り口を見つけ取組促進させていくことが肝要。
A4:原子力発電による水素製造の課題、実装までの時間軸は?
Q4:既に技術が確立している水の電気分解炉を既存の原発軽水炉敷地内で設置すれば、すぐにでもできる。
A5:2040年、2050年を見据えると、洋上風力をもう一度本命として見据えることはできないか?
Q5:浮体式について重点地域の選定が始められており、国は巻き返しを図ろうとしている。ただ、三菱商事と競合した事業主体の経営が相当傷んでおり、浮体式に強い戸田建設やパワーエックスといった新たな事業主体で進められていくのではないか。
講演資料:第7次エネルギー基本計画を読み解く
posted by EVF セミナー at 17:00| セミナー紹介
2025年07月24日
EVFセミナー報告:2050年カーボンニュートラルに向け、生まれ変わる川崎臨海部
演題 : 2050年カーボンニュートラルに向け、生まれ変わる川崎臨海部
講師 : 川崎哲弘様 川崎市臨海国際戦略本部成長戦略推進部カーボンニュートラル推進担当課長
聴講者数: 41名
講師紹介
2001年4月 川崎市役所入庁
2020年4月 港湾局港湾振興部誘致振興課 担当係長
2022年4月 同 課長補佐
2023年4月 臨海部国際戦略本部成長戦略推進部 担当課長
講演概要:
川崎市は古くから近代工業が発展。製鉄所の高炉休止という変遷を乗り越え、CN実現という戦略の下、水素を活用して公害や環境問題へ対応し、民間と共同で近代工業都市として発展している。
1. 川崎市及び川崎臨海部の概況とポテンシャル
工業都市の歴史としては、1900〜1950年代に川崎、横浜にまたがる臨海部の埋立から京浜臨海部が形成され、1950〜1970年代に、鉄鋼、非鉄金属を中心とした企業が立地され、発電所建設、石油パイプラインとシーバースの整備により、石油コンビナートが形成された。1960〜1970年代には、高度成長期に工場からの排水、排煙により環境問題が深刻化したが、1980年代から環境問題の解決に取組み、環境問題は徐々に改善。
川崎市の温室効果ガスの排出量は2021年で2083万t-CO2と日本政令指定都市では第1位。
2. カーボンニュートラル以前の取組
川崎市臨海部では、LNG・天然ガスインフラが集積し、火力発電所があり、化学企業・素材産業が集積して、水素需要が旺盛となり、その供給の水素パイプラインネットワークが形成された。そして、国内最大級のプラスチックリサイクル拠点となった。
3. 川崎カーボンニュートラルコンビナート構想
2015年に「川崎水素戦略」を策定し、@水素の供給システム(民間企業)の構築、A多分野にわたる水素利用の拡大、B社会認知度向上の3つの基本戦略により推進、
2018年に官民協議会として、「臨海部ビジョン」を策定し、低炭素型インダストリーエリア構築、水素エネルギー利用推進、資産活用・投資促進など13のリーディングプロジェクトを推進。
4. 構想実現に向けた具体的取組
(1) 水素戦略
『パイプラインを活用した水素のサプライチェーン(「水素需要ポテンシャル約2,300t/d等」)』の事業性調査を行い、官民6者(NEDO2事業者、空港関連企業2社、大田区、川崎市)による『羽田空港及び周辺地域における水素利用(約4〜6.6万トン水素相当)』の調査に基づき、事業を実現していく。
(2) 炭素循環戦略
@ 廃プラ等は国のサーキュラーエコノミーに係る取組等を活用。
2022年4月に「かわさきプラスチック循環プロジェクト」を6者で立ち上げ。市民の行動を促す「回収拠点の環」とペットボトルの「マテリアルの環」、「ケミカルの環」のリサイクル技術 の3つの環(わ)で取組を推進。
市民、事業者、行政が協力して、PET以外にも様々なプラスチックの資源循環や回収拠点などの取組 を実践。
令和6年10月、炭素循環部会特別セミナー「Circular Economy Kawasaki」を開催、「Kawasaki Circular Design Park」(略称︓KCDP)の立ち上げ、
回収、選別、成形、製造メーカー等による業種横断の廃プラスチック循環実証を開始。
A 令和2024年9月26日付け太平洋セメント社・東洋埠頭社より川崎臨海コンビ ナート地区におけるCCS 事業検討の連携開始が発表、CCS 事業における液化二酸化炭素の港湾出荷について、東洋埠頭川崎支店の活用検討 を共同で進めている。
B 廃プラ等とCO2の双方の取組は、市場の構築(最終商品において、環境価値として許容し得るコスト増等)において、長期的には連携していくものとして、今後の取組を深めていく。
(3)エネルギー地域最適化戦略
エネルギー地域最適化では、主に個別調整とワーキンググループ(WG)での検討を進めている。直近では、(A)「使用するエネルギーを再生可能エネルギーや水素等に転換する」の取組への拡張性を考慮しつつ、(@)「エリア全体で省エネによるエネルギー消費量の一層の削減」の取組を企業間連携の更なる強化により 面的に進めている。
WGでは、エリアを限定し、企業間連携による省エネの追求。
個別調整においては、将来的な水素利用を見据えた設備導入等の個別の取組(いわゆる“水素ready”を 増やす取組)を進めている。
Q&A
Q1:海外水素を持ってきているとお聞きしましたが、海外でその水素を製造する時にCO2が
製造されるなら、そのCO2については川崎市のカーボンニュートラルの考えの中ではどのようにお考えになるのですか?(海外なので考えない?)一方、水の電気分解で作る水素はCO2を発生しないものです。川崎市ではこの方法での水素製造は検討中で、現状では海外水素の輸入を多く行っているとお聞きしましたが、川崎市ではどうお考えでしょうか?
A1:何故海外水素なのかと言うところからお話しますと、川崎臨海部の産業のカーボンニュートラ
ル化に必要な水素は42〜3万トンと申し上げましたが、あれを川崎臨海部エリアで作るというのは現実的ではないです。水素を作る方法として色々あって、水の電気分解もありますが、その電気をCO2をぽっぽと出して作った電気であっては意味がなく、再エネ由来の電気である必要がある。そして、再エネ由来の電気を川崎臨海部で作るとか、持ってくるというのができるのか言うと難しい。ということから必要な水素を獲得するには、川崎市の港湾の機能を使って外から持ってくるという有効だと考え、海外水素の利用を考えている。水素を作る方法として、水の電気分解の他に、過渡的な方法として化石資源から作る方法がある。この方法ではCO2が出るので、CCS(Carbon Capture Storage) などを使って回収する必要がある。これがブルー水素であり(CO2回収しない水素はグレー水素)、再エネ由来の電気を使って水の電気分解から作る水素がグリーン水素である。川崎市が海外から持ってくる水素はカーボンニュートラルなグリーン水素かブルー水素です。(水素を輸入するに当たって)国の支援が得られるサプライチェーンを作る(CO2をいっぱい出さない、ある基準以下の低炭素な水素を持ってくる)必要がある。しかし川崎市が海外まで関与できるかは難しい。川崎市ができる支援として、水素を作る地元自治体でのインフラを作るとか、水素を作る海外側の自治体間の関係性などを重要にするなどの取組を行い、(私もオーストラリアまで行ったりして、)目的に合致するようにしている。
Q2:今の取組だと水素を作って(カーボンニュートラルに繋げる)とのことですが、CO2を
排出することへのオフセット、クレジットに関して、臨海部なので例えばAOへの活用をして、CO2を減らして行くとかの取組みを川崎ではやられているのでしょうか?
A2:CO2を減らす、排出しないと言う排出条件をクリアするためには、そういう取り組みは
重要と思いますが、我々(川崎市)としてはコンビナートの機能としてカーボンニュートラル社会に適用すると考えるとそこは本流ではないのではないかと思います。
何故水素、水素と言っているかと言いますと、水素は水素じゃないといけないものにのみ使うべきだと思っています。水素を使えばカーボンニュートラルが実現する、水素はオールマイティなものと勘違いされる方がいるかと思いますが、水素はもともと電気で作っているので、本当は電気のまま使った方が良いと言うことがあります。電気を使って水素を作る時にロスが発生して、その水素を使って電気を作ると又ロスが発生するのはあまり意味がない。水素から電気を作るだけなら、電気のままで使うのが良いと考えます。何故水素、水素と言っているかと言うと、川崎臨海部の工場はボイラーなどで熱を使っていて、それを電気で作るとなると効率が悪い高い温度帯の熱なので、それを作るには何かを燃やした直接燃焼で作ることが必要で、となるとそれに合うのは水素になる、そこを化石資源を燃やしてしまうとCO2が出てしまう(ので、それではカーボンニュートラルにならなくなる)ということで、水素が適している。
又、日本全体の電力網を見ると再エネが主力になってくるのであるが、再エネは晴れている日中の発電量が多いが夜は発電しない等の波があり、その波の調整力として火力発電が一部必要であり、その火力発電の脱炭素化として水素を使うことを考えている。そのようなニッチな部分を川崎臨海部が担っていると考えている。日本全体のカーボンニュートラルに貢献する産業エリアとして取り組んでいる。
Q3:プラスチックゴミの分別に基づく資源回収の意義を日常生活で感じたり、エネファームで水を全部取り替えることに疑念を持ったりしていますが、プラスの方では「ペロブスカイトが急速に立ち上がってきている」とか、「小池百合子東京都知事が太陽光パネルを住宅の屋根全部に設置するように言っているけど、まだそこまでできていない」などの色々な脱炭素化の動きがあります。 もっと言えば、川崎市位の規模があれば、核融合(による脱炭素化されたエネルギー提供)もできるのではないかと思います。ここ7〜8年で一気に変わると思っています。是非、前向きな方向の技術開発を、お金を出せばできるようなことは是非やって欲しいと思いますが、如何でしょうか?
A3:プラスチックゴミの分別については川崎もやっています。回収したプラスチックで作っている
のは、パレットとかプランターであって、少し価値が低いものへのリサイクルであって、(カスケードと呼んでいる)が主流であって、後は燃料として使っている(サーマルリサイクル)。無駄ではないですが、本当の意味での循環にはなっていない。循環をなし得て行くには、技術的部分と社会全体の仕組みの両方に入って行かないといけない。
技術の部分では、川崎臨海部で担っていけるポテンシャルがあると思うので、そこに取組んで行きたいと思うし、社会全体の仕組みについては国に対して自治体としてこういうことが必要だと言うような提言をして行きたい。ということで活動をしている。
当然そう言った分別は必要で、一人一人の力が必要で、そういう人たちに対して、実際に(プラスチックの分別が)意味があることをちゃんとアピールしていかないといけない。分別をお願いしている行政の立場からその辺も頑張っていかないといけないと思っている。
ペロブスカイトを使った太陽光発電は非常に重要で、再エネをもっともっと頑張っていかないといけない時に、日本の国土を使って、地形が変えられない(というような制限がある)時に、ペロブスカイトを使って再エネを広げて行くのは大変重要です。
とは言え、再エネだけで日本の電力を賄うことはできなくて、火力発電(つまり回転から生み出される電気)も電力網全体の中では必要で、エネルギーミックスの中で、再エネは主力だが、
それをサポートするような火力発電も必要だし、ひょっとするとベースロードとして原子力発電も必要かもしれないと考えます。川崎はニッチな脱炭素な火力発電というところで、日本のカーボンニュートラルに貢献していくという役割が果たせるのではないかと考えている。
核融合については、カーボンニュートラル2050に行くためには今の技術の延長線では難しいと思われ、技術のイノベーションが必要と思っている。その中で、何がイノベーションに繋がるかと考えた時に、核融合と言った視点も重要と思っている。今足元の地道な省エネをやっていて、技術革新として何かが来るのを待つという視点も大事と考えている。
Q4:水素需要の42万トンの内、火力発電の部分はどれくらいですか?
A4:42万トンは発電用から熱源として使う部分から化学産業の工業用途で使う部分まで含んだ合計で、その熱とかには今都市ガスを使っている訳で、それを水素に転換した時の量が考えられている。需要のポテンシャルは川崎臨海部と東京横浜の臨海部を含めたものですが、対する供給の目途はまだ全然立っていない。今具体的に動いているプロジェクトが、液化水素の実証を行いましょう。2030年以降は海外から水素を持ってくるプロジェクトを立ち上げようとしています。そこで(発電用に)やれる量はまだ明確ではないですが、10万トンは行かない、数万トンだろうと思っています。新しいものを使うとか持ってくるという話になると、「にわとりが先か、卵が先か」問題があって、使う側は何時来るか分からないので、使うための機器を導入できない。持ってくる側は持って来ても使ってもらえる体制になっていないと言う問題があり、その問題を解決していくのが重要である。準備だけは進めておいて、来なくて使える機器を先行して導入しておくということも必要です。水素は既存のLNGとかより高いので、省エネをやってエネルギー力を減らしておいて、そこに対して水素を充てるというような取組も必要と考えている。今足元でできることをやりつつ、不確実性の高いことがどれ位やってくるのかについては、そこは粘り腰で対応していくのが今の時点だと思っています。
商用の発電所だとプレーヤーも大きいので、例えば、ジェラ 社は大きな会社で自分で水素とかアンモニアを持ってくるような動きをしており、それを(外部に)言ってしまうと、(社会的な)影響も大きいので、(必ずしもオープンではなく、)我々もつかみ切れない部分がある。が、川崎市としても注視しているし、頻繁にコミュニケーションを取っている。
(「(川崎まで来ている)東京ガスが、(家庭でCO2を出す都市ガスの代わりに)水素でなく、e-メタンが提供するような話を聞きましたが、それは川崎市でも使うことになるのでしょうか?」という質問に対して)カーボンニュートラルに向けた道筋として、e-メタン(燃やしてもCO2排出のカウントにならない、CO2由来の都市ガス相当のメタン)が使えて、今の機器が使えるなら、何もしなくても良いとも考えられます。e-メタンが来て、何も変えなくてカーボンニュートラルが達成できるなら、対策は考える必要はないと思います。一方、そういう道もあるが、そうではなくて、水素に燃料転換しての道も将来像として考えています。e-メタンが使えるようになるのをずっと黙って待っていられるかという課題もあります。
e-メタンは海外で作る時に、炭素排出を国際間でどう扱うかの整理がついていない問題があるし、更に、e-メタンは天然ガスより若干熱量が違う(下がる)し、今までの機器がそのまま使えるかについても課題があると聞いています。
e-メタンもカーボンニュートラルに向けてすごく重要と考えていますが、川崎臨海部としては水素を軸として議論を進めています。
Q5:海(船)と空(羽田空港)のモビリティのエネルギーに関して川崎臨海部としての取組みはどのようなものがありますか?
A5:羽田空港(ビルディングなど)で使うエネルギー(電気と熱)に対して水素が良いと思っていますし、羽田空港側でもそういう検討をしていて、そこに水素を供給することを考えている。羽田空港側に敷地が十分にあれば、太陽光パネルを敷いて水素の製造が考えられるのですが、ないようで、それは難しいようです。空港なので、水素を大規模に使ったことがなく、使うことで何かあると問題なので、水素を使う難しさはあるようです。
船の関係は、港湾局が対応していて、アンモニアの話はしてなくて、バイオ燃料の実証を始めたと聞いています。アンモニアは、CNにとって重要なキーワードで、多くは石炭火力に混ぜて使われているが、川崎には石炭火力があまりないので、アンモニアを持ってくるという話はあまりない。アンモニアで持って来てクラッキングで水素を取り出すという考えもあり、それをやっているのがJERA社(東京電力と中部電力が設立したエネルギー会社)です。JERA社は石炭火力を一杯抱えているので、先ずアンモニアとして使う。将来的には水素を運ぶ手段として使うことも考えているのですが、石炭火力で使うのをターゲットにしているので、アンモニアとして持って来て水素生成に使うというのは考えていないのが現状です。
Q6:JFEは高炉を止めてしまった訳ですが、水素製鉄等も含め、今後はどのようなこれからポジティブな連携がありますか?
A6:JFEは扇島だけでも222ha、関連を含めると400haという土地があって、その利用転換が必要な訳で、高炉を止める話は、ハレーションが大きく、事前の相談はなく突然来たと私は理解しています。この土地の利用転換に当たって、JFEとして土地を簡単に売れるかと言うと難しくて、扇島は完全にJFE専用の島の状態で、中に公道すら走っておらず、JFEの私道を通ってでないと扇島の中に入ってこれないという状況でした(高速道路は上を走っていますが通過しているだけ)。
土地を転換して行くインフラを整えていく必要があり、それには市の協力が必要で、市と連携協定を結んで、一緒になって土地利用転換していくことになりました。市としては川崎市臨海部の発展に資するような新しい機能を埋め込むようなことをやって欲しいとして、土地利用転換を有意義なものにしようと協力し合う方向となり、その中で水素利用の話があり、その辺りがポジティブな話になっています。
これは、日本のこれから先、出てくる社会課題の解決に繋がるような土地利用転換をするというコンセプトになっていると思います。
講演資料:川崎カーボンニュートラルコンビナート構想について
講師 : 川崎哲弘様 川崎市臨海国際戦略本部成長戦略推進部カーボンニュートラル推進担当課長
聴講者数: 41名
講師紹介
2001年4月 川崎市役所入庁
2020年4月 港湾局港湾振興部誘致振興課 担当係長
2022年4月 同 課長補佐
2023年4月 臨海部国際戦略本部成長戦略推進部 担当課長
講演概要:
川崎市は古くから近代工業が発展。製鉄所の高炉休止という変遷を乗り越え、CN実現という戦略の下、水素を活用して公害や環境問題へ対応し、民間と共同で近代工業都市として発展している。
1. 川崎市及び川崎臨海部の概況とポテンシャル
工業都市の歴史としては、1900〜1950年代に川崎、横浜にまたがる臨海部の埋立から京浜臨海部が形成され、1950〜1970年代に、鉄鋼、非鉄金属を中心とした企業が立地され、発電所建設、石油パイプラインとシーバースの整備により、石油コンビナートが形成された。1960〜1970年代には、高度成長期に工場からの排水、排煙により環境問題が深刻化したが、1980年代から環境問題の解決に取組み、環境問題は徐々に改善。
川崎市の温室効果ガスの排出量は2021年で2083万t-CO2と日本政令指定都市では第1位。
2. カーボンニュートラル以前の取組
川崎市臨海部では、LNG・天然ガスインフラが集積し、火力発電所があり、化学企業・素材産業が集積して、水素需要が旺盛となり、その供給の水素パイプラインネットワークが形成された。そして、国内最大級のプラスチックリサイクル拠点となった。
3. 川崎カーボンニュートラルコンビナート構想
2015年に「川崎水素戦略」を策定し、@水素の供給システム(民間企業)の構築、A多分野にわたる水素利用の拡大、B社会認知度向上の3つの基本戦略により推進、
2018年に官民協議会として、「臨海部ビジョン」を策定し、低炭素型インダストリーエリア構築、水素エネルギー利用推進、資産活用・投資促進など13のリーディングプロジェクトを推進。
4. 構想実現に向けた具体的取組
(1) 水素戦略
『パイプラインを活用した水素のサプライチェーン(「水素需要ポテンシャル約2,300t/d等」)』の事業性調査を行い、官民6者(NEDO2事業者、空港関連企業2社、大田区、川崎市)による『羽田空港及び周辺地域における水素利用(約4〜6.6万トン水素相当)』の調査に基づき、事業を実現していく。
(2) 炭素循環戦略
@ 廃プラ等は国のサーキュラーエコノミーに係る取組等を活用。
2022年4月に「かわさきプラスチック循環プロジェクト」を6者で立ち上げ。市民の行動を促す「回収拠点の環」とペットボトルの「マテリアルの環」、「ケミカルの環」のリサイクル技術 の3つの環(わ)で取組を推進。
市民、事業者、行政が協力して、PET以外にも様々なプラスチックの資源循環や回収拠点などの取組 を実践。
令和6年10月、炭素循環部会特別セミナー「Circular Economy Kawasaki」を開催、「Kawasaki Circular Design Park」(略称︓KCDP)の立ち上げ、
回収、選別、成形、製造メーカー等による業種横断の廃プラスチック循環実証を開始。
A 令和2024年9月26日付け太平洋セメント社・東洋埠頭社より川崎臨海コンビ ナート地区におけるCCS 事業検討の連携開始が発表、CCS 事業における液化二酸化炭素の港湾出荷について、東洋埠頭川崎支店の活用検討 を共同で進めている。
B 廃プラ等とCO2の双方の取組は、市場の構築(最終商品において、環境価値として許容し得るコスト増等)において、長期的には連携していくものとして、今後の取組を深めていく。
(3)エネルギー地域最適化戦略
エネルギー地域最適化では、主に個別調整とワーキンググループ(WG)での検討を進めている。直近では、(A)「使用するエネルギーを再生可能エネルギーや水素等に転換する」の取組への拡張性を考慮しつつ、(@)「エリア全体で省エネによるエネルギー消費量の一層の削減」の取組を企業間連携の更なる強化により 面的に進めている。
WGでは、エリアを限定し、企業間連携による省エネの追求。
個別調整においては、将来的な水素利用を見据えた設備導入等の個別の取組(いわゆる“水素ready”を 増やす取組)を進めている。
Q&A
Q1:海外水素を持ってきているとお聞きしましたが、海外でその水素を製造する時にCO2が
製造されるなら、そのCO2については川崎市のカーボンニュートラルの考えの中ではどのようにお考えになるのですか?(海外なので考えない?)一方、水の電気分解で作る水素はCO2を発生しないものです。川崎市ではこの方法での水素製造は検討中で、現状では海外水素の輸入を多く行っているとお聞きしましたが、川崎市ではどうお考えでしょうか?
A1:何故海外水素なのかと言うところからお話しますと、川崎臨海部の産業のカーボンニュートラ
ル化に必要な水素は42〜3万トンと申し上げましたが、あれを川崎臨海部エリアで作るというのは現実的ではないです。水素を作る方法として色々あって、水の電気分解もありますが、その電気をCO2をぽっぽと出して作った電気であっては意味がなく、再エネ由来の電気である必要がある。そして、再エネ由来の電気を川崎臨海部で作るとか、持ってくるというのができるのか言うと難しい。ということから必要な水素を獲得するには、川崎市の港湾の機能を使って外から持ってくるという有効だと考え、海外水素の利用を考えている。水素を作る方法として、水の電気分解の他に、過渡的な方法として化石資源から作る方法がある。この方法ではCO2が出るので、CCS(Carbon Capture Storage) などを使って回収する必要がある。これがブルー水素であり(CO2回収しない水素はグレー水素)、再エネ由来の電気を使って水の電気分解から作る水素がグリーン水素である。川崎市が海外から持ってくる水素はカーボンニュートラルなグリーン水素かブルー水素です。(水素を輸入するに当たって)国の支援が得られるサプライチェーンを作る(CO2をいっぱい出さない、ある基準以下の低炭素な水素を持ってくる)必要がある。しかし川崎市が海外まで関与できるかは難しい。川崎市ができる支援として、水素を作る地元自治体でのインフラを作るとか、水素を作る海外側の自治体間の関係性などを重要にするなどの取組を行い、(私もオーストラリアまで行ったりして、)目的に合致するようにしている。
Q2:今の取組だと水素を作って(カーボンニュートラルに繋げる)とのことですが、CO2を
排出することへのオフセット、クレジットに関して、臨海部なので例えばAOへの活用をして、CO2を減らして行くとかの取組みを川崎ではやられているのでしょうか?
A2:CO2を減らす、排出しないと言う排出条件をクリアするためには、そういう取り組みは
重要と思いますが、我々(川崎市)としてはコンビナートの機能としてカーボンニュートラル社会に適用すると考えるとそこは本流ではないのではないかと思います。
何故水素、水素と言っているかと言いますと、水素は水素じゃないといけないものにのみ使うべきだと思っています。水素を使えばカーボンニュートラルが実現する、水素はオールマイティなものと勘違いされる方がいるかと思いますが、水素はもともと電気で作っているので、本当は電気のまま使った方が良いと言うことがあります。電気を使って水素を作る時にロスが発生して、その水素を使って電気を作ると又ロスが発生するのはあまり意味がない。水素から電気を作るだけなら、電気のままで使うのが良いと考えます。何故水素、水素と言っているかと言うと、川崎臨海部の工場はボイラーなどで熱を使っていて、それを電気で作るとなると効率が悪い高い温度帯の熱なので、それを作るには何かを燃やした直接燃焼で作ることが必要で、となるとそれに合うのは水素になる、そこを化石資源を燃やしてしまうとCO2が出てしまう(ので、それではカーボンニュートラルにならなくなる)ということで、水素が適している。
又、日本全体の電力網を見ると再エネが主力になってくるのであるが、再エネは晴れている日中の発電量が多いが夜は発電しない等の波があり、その波の調整力として火力発電が一部必要であり、その火力発電の脱炭素化として水素を使うことを考えている。そのようなニッチな部分を川崎臨海部が担っていると考えている。日本全体のカーボンニュートラルに貢献する産業エリアとして取り組んでいる。
Q3:プラスチックゴミの分別に基づく資源回収の意義を日常生活で感じたり、エネファームで水を全部取り替えることに疑念を持ったりしていますが、プラスの方では「ペロブスカイトが急速に立ち上がってきている」とか、「小池百合子東京都知事が太陽光パネルを住宅の屋根全部に設置するように言っているけど、まだそこまでできていない」などの色々な脱炭素化の動きがあります。 もっと言えば、川崎市位の規模があれば、核融合(による脱炭素化されたエネルギー提供)もできるのではないかと思います。ここ7〜8年で一気に変わると思っています。是非、前向きな方向の技術開発を、お金を出せばできるようなことは是非やって欲しいと思いますが、如何でしょうか?
A3:プラスチックゴミの分別については川崎もやっています。回収したプラスチックで作っている
のは、パレットとかプランターであって、少し価値が低いものへのリサイクルであって、(カスケードと呼んでいる)が主流であって、後は燃料として使っている(サーマルリサイクル)。無駄ではないですが、本当の意味での循環にはなっていない。循環をなし得て行くには、技術的部分と社会全体の仕組みの両方に入って行かないといけない。
技術の部分では、川崎臨海部で担っていけるポテンシャルがあると思うので、そこに取組んで行きたいと思うし、社会全体の仕組みについては国に対して自治体としてこういうことが必要だと言うような提言をして行きたい。ということで活動をしている。
当然そう言った分別は必要で、一人一人の力が必要で、そういう人たちに対して、実際に(プラスチックの分別が)意味があることをちゃんとアピールしていかないといけない。分別をお願いしている行政の立場からその辺も頑張っていかないといけないと思っている。
ペロブスカイトを使った太陽光発電は非常に重要で、再エネをもっともっと頑張っていかないといけない時に、日本の国土を使って、地形が変えられない(というような制限がある)時に、ペロブスカイトを使って再エネを広げて行くのは大変重要です。
とは言え、再エネだけで日本の電力を賄うことはできなくて、火力発電(つまり回転から生み出される電気)も電力網全体の中では必要で、エネルギーミックスの中で、再エネは主力だが、
それをサポートするような火力発電も必要だし、ひょっとするとベースロードとして原子力発電も必要かもしれないと考えます。川崎はニッチな脱炭素な火力発電というところで、日本のカーボンニュートラルに貢献していくという役割が果たせるのではないかと考えている。
核融合については、カーボンニュートラル2050に行くためには今の技術の延長線では難しいと思われ、技術のイノベーションが必要と思っている。その中で、何がイノベーションに繋がるかと考えた時に、核融合と言った視点も重要と思っている。今足元の地道な省エネをやっていて、技術革新として何かが来るのを待つという視点も大事と考えている。
Q4:水素需要の42万トンの内、火力発電の部分はどれくらいですか?
A4:42万トンは発電用から熱源として使う部分から化学産業の工業用途で使う部分まで含んだ合計で、その熱とかには今都市ガスを使っている訳で、それを水素に転換した時の量が考えられている。需要のポテンシャルは川崎臨海部と東京横浜の臨海部を含めたものですが、対する供給の目途はまだ全然立っていない。今具体的に動いているプロジェクトが、液化水素の実証を行いましょう。2030年以降は海外から水素を持ってくるプロジェクトを立ち上げようとしています。そこで(発電用に)やれる量はまだ明確ではないですが、10万トンは行かない、数万トンだろうと思っています。新しいものを使うとか持ってくるという話になると、「にわとりが先か、卵が先か」問題があって、使う側は何時来るか分からないので、使うための機器を導入できない。持ってくる側は持って来ても使ってもらえる体制になっていないと言う問題があり、その問題を解決していくのが重要である。準備だけは進めておいて、来なくて使える機器を先行して導入しておくということも必要です。水素は既存のLNGとかより高いので、省エネをやってエネルギー力を減らしておいて、そこに対して水素を充てるというような取組も必要と考えている。今足元でできることをやりつつ、不確実性の高いことがどれ位やってくるのかについては、そこは粘り腰で対応していくのが今の時点だと思っています。
商用の発電所だとプレーヤーも大きいので、例えば、ジェラ 社は大きな会社で自分で水素とかアンモニアを持ってくるような動きをしており、それを(外部に)言ってしまうと、(社会的な)影響も大きいので、(必ずしもオープンではなく、)我々もつかみ切れない部分がある。が、川崎市としても注視しているし、頻繁にコミュニケーションを取っている。
(「(川崎まで来ている)東京ガスが、(家庭でCO2を出す都市ガスの代わりに)水素でなく、e-メタンが提供するような話を聞きましたが、それは川崎市でも使うことになるのでしょうか?」という質問に対して)カーボンニュートラルに向けた道筋として、e-メタン(燃やしてもCO2排出のカウントにならない、CO2由来の都市ガス相当のメタン)が使えて、今の機器が使えるなら、何もしなくても良いとも考えられます。e-メタンが来て、何も変えなくてカーボンニュートラルが達成できるなら、対策は考える必要はないと思います。一方、そういう道もあるが、そうではなくて、水素に燃料転換しての道も将来像として考えています。e-メタンが使えるようになるのをずっと黙って待っていられるかという課題もあります。
e-メタンは海外で作る時に、炭素排出を国際間でどう扱うかの整理がついていない問題があるし、更に、e-メタンは天然ガスより若干熱量が違う(下がる)し、今までの機器がそのまま使えるかについても課題があると聞いています。
e-メタンもカーボンニュートラルに向けてすごく重要と考えていますが、川崎臨海部としては水素を軸として議論を進めています。
Q5:海(船)と空(羽田空港)のモビリティのエネルギーに関して川崎臨海部としての取組みはどのようなものがありますか?
A5:羽田空港(ビルディングなど)で使うエネルギー(電気と熱)に対して水素が良いと思っていますし、羽田空港側でもそういう検討をしていて、そこに水素を供給することを考えている。羽田空港側に敷地が十分にあれば、太陽光パネルを敷いて水素の製造が考えられるのですが、ないようで、それは難しいようです。空港なので、水素を大規模に使ったことがなく、使うことで何かあると問題なので、水素を使う難しさはあるようです。
船の関係は、港湾局が対応していて、アンモニアの話はしてなくて、バイオ燃料の実証を始めたと聞いています。アンモニアは、CNにとって重要なキーワードで、多くは石炭火力に混ぜて使われているが、川崎には石炭火力があまりないので、アンモニアを持ってくるという話はあまりない。アンモニアで持って来てクラッキングで水素を取り出すという考えもあり、それをやっているのがJERA社(東京電力と中部電力が設立したエネルギー会社)です。JERA社は石炭火力を一杯抱えているので、先ずアンモニアとして使う。将来的には水素を運ぶ手段として使うことも考えているのですが、石炭火力で使うのをターゲットにしているので、アンモニアとして持って来て水素生成に使うというのは考えていないのが現状です。
Q6:JFEは高炉を止めてしまった訳ですが、水素製鉄等も含め、今後はどのようなこれからポジティブな連携がありますか?
A6:JFEは扇島だけでも222ha、関連を含めると400haという土地があって、その利用転換が必要な訳で、高炉を止める話は、ハレーションが大きく、事前の相談はなく突然来たと私は理解しています。この土地の利用転換に当たって、JFEとして土地を簡単に売れるかと言うと難しくて、扇島は完全にJFE専用の島の状態で、中に公道すら走っておらず、JFEの私道を通ってでないと扇島の中に入ってこれないという状況でした(高速道路は上を走っていますが通過しているだけ)。
土地を転換して行くインフラを整えていく必要があり、それには市の協力が必要で、市と連携協定を結んで、一緒になって土地利用転換していくことになりました。市としては川崎市臨海部の発展に資するような新しい機能を埋め込むようなことをやって欲しいとして、土地利用転換を有意義なものにしようと協力し合う方向となり、その中で水素利用の話があり、その辺りがポジティブな話になっています。
これは、日本のこれから先、出てくる社会課題の解決に繋がるような土地利用転換をするというコンセプトになっていると思います。
講演資料:川崎カーボンニュートラルコンビナート構想について
posted by EVF セミナー at 16:00| セミナー紹介
2025年06月27日
EVFセミナー報告:テクノロジーを流用し、小型植物工場でそだてる”WASABI”を世界へ!
演題 : テクノロジーを流用し、小型植物工場でそだてる”WASABI”を世界へ!
講師 : 中村拓也様 株式会社NEXTAGE 代表取締役
聴講者数: 42名
講師紹介
1994年、明治学院大学 国際学部卒。開発経済学・農業経済学を専攻。
1994年 千代田化工建設株式会社入社。
CT121排煙脱硫装置、LNG受入設備の技術営業を担当。
株式会社荏原製作所では半導体製造装置(CMP装置、真空ポンプ、排ガス処理装置)の海外営業推進、
台湾現地法人では営業責任者として役割を果たす。
数社のスタートアップの立ち上げや事業推進を経験し、2018年1月に株式会社NEXTAGEを創業。
講演概要
・従来自然環境の中で育てられていたワサビを、40フィートの断熱コンテナ―を使用しどこでも生育することができるようになった。
・ワサビは2005年を起点とすると2022年には生産高で根茎も葉柄も約60%減となっている。原因は異常気象、温暖化、農業従事者の高齢化が背景にあり、ワサビの生産量が年々減少してきている。
・一方、日本食ブーム、海外での需要増などによりワサビの需要は伸びている。ワサビを守りたい、世界に届けたいとの思いから株式会社NEXTAGEをスタートさせた。
NEXTAGE社は、東京都目黒区祐天寺2丁目13-4に本社を、支社を焼津に、C&Mセンターを横浜の鶴見に置いて活動している。
・ワサビの国内生産減に伴い海外製のワサビが輸入されているが、チューブワサビ原料の90%は輸入されたホースラディッシュで作られている。これにはワサビの葉柄が粉砕されて含まれている。
・日本固有種のワサビには「実生種」と「真妻種」があり、前者は水っぽくおそばなどに使われ、後者はお寿司などに使用されている。価格は前者が1〜2万円/kg、後者は3〜4万円/kgであり、NEXTAGE社では後者を栽培しようとしている。
・生ワサビに含まれる「アリルイソチアネート」という成分は様々な健康効果を持っており、米国のMIT、スタンフォード、ハーバード、などの大学でも研究が進められている。
・ワサビ栽培モジュールは40ftのコンテナーを使用し、年間1800株(90kg)の真妻わさびを露路栽培期間の半分の約1年で収穫することに成功している。このモジュールでは路地でワサビを育てる環境を室内で再現させており、現状はノウハウをベースとしたインストラクションとの組み合わせだが、将来的にはAIをフルに活用しているため、ワサビ栽培への専門知識は不要であり、誰でもわさび栽培が可能になっている。このコンテナー栽培では水を循環させて使用しているので大幅な節水ができる。
・ワサビの種子は発芽率が低いためワサビの苗は供給不足になっている。NEXTAGEでは大学の研究機関と連携し専用液の開発などを進めており、病気に強いワサビの苗を作り農家にも供給する予定。
・NEXTAGEでは、屋内で促成栽培を実現するわさびの栽培方法、及びわさびの栽培管理システムに関する特許や、栽培設備、支援システム、支援装置、支援プログラム、支援方法に関する詳細や、遠隔栽培技術に関連する取り組みに関する特許を出願している。グローバルな進出には特許が必要。
・当然ブラックボックス的な部分はあるが、栽培技術を提供し商業化に成功しているのはNEXTAGEのみであり、現在競合者はいない、もしくは技術参入障壁がとても高いので優位性を確保できる。
・屋外栽培の場合、気候害や虫害などにより葉柄は食べられないが、コンテナー栽培の場合は屋内栽培なので葉柄は新鮮でおいしい。年間で1,296kg以上のわさびの葉と茎を安定して収穫でき、 わさびの葉茎だけで300万円以上の収入を得ている。
・わさびの葉茎を使ったレシピは数多く開発されており、大阪のヒルトン最上級ブランドホテルではワサビの葉柄を入れたカクテルを提供しており、非常に人気が出ている。コンテナー栽培によりわさびの葉茎の安定供給が実現し、市場、ホテル、大手加工メーカーからの引き合いが加速している。
・日本のわさびマーケット市場は50億円と推計されており、医薬品や健康食品分野が今後のマーケットになりそう。世界のわさび需要は年間10,585t以上と推定されており、イタリアやフランスではワサビの葉柄や根茎を使いたがっているシェフが多くいる。
・欧州でのワサビ試食会にNEXTAGEのわさび栽培モジュールで生産した「真妻」と、他の4か所で生産して購入したワサビを食べ比べてもらったところ、参加者の85.7%以上が NEXTAGEのワサビの購入を検討すると回答した。今後コンテナーを世界各国において、現地の人たちにワサビを栽培してもらえる
ようにして行きたい。
Q&A
Q1 フランス料理にはワサビは合わないと思っていた。今後農業との連携を進めてはどうでしょうか?
A1 ありがとうございます。
Q2 何年くらいで投資回収ができそうですか?
A2 躯体が1個2000万円。根茎の売り上げが1800株/年→約300万円/年、葉柄1000s年→約400万円/年、電気代が120万円/年、葉柄の剪定工数が7..2人/年、等を考慮すると5〜6年で投資回収ができそう。
Q3 岐阜大学の山根先生のワサビに関する本によると、若者のワサビ離れ、農家の高齢化が進み、日本のワサビ産業はつぶれると書いてあるが、NEXTAGEができたので山根説は変わりそうではないか?
A3 そうだと良いと思っている。先生は三鷹の大沢にあるワサビの生態を研究しておられたようだ。
Q4 天然栽培の場合は水の中に天然の成分が含まれているので肥料などは必要ないか?
A4確かに湧水の中にはカルシューム等々のミネラルが入っている。コンテナの場合ではカリウム、リン、等々の必要な成分は与えている。
Q5 日本の天然水は軟水が多いが、欧州あたりでは硬水が多くいろいろな成分が入っていると聞いている。
A5日本でも硬水の地域はあり、水質調査をして適切に変えている。ワサビ農家は科学的にはわからなくても感覚的に肥料をやっていた。この辺りはリスペクトする。
Q6安曇野と伊豆のどちらがワサビ栽培には適しているのか?
A6伊豆の方が良いと言われているが、安曇野も素晴らしい。
Q7 特許を多数出されていると聞いているが、特許は20年で切れてしまうためノウハウを守るならコカ・コーラの様な経営にして特許は出さない方が得策ではないか?
A7議論は両方ある。営業秘匿の所は特許を出さないようにしており、その範囲外のところを特許申請している。
Q8 OEMにする戦略に変えたのはなぜでしょうか?
A8誰でもワサビが作れる環境にして、生産者を増やしたいから。
Q9 グラフで、だんだん葉が食べられなくなってきたのは何故でしょうか?
A9 最近では葉の活用価値が変わってきている。加工品などが作られるようになってきて、葉の価値が上がってきている。
文責:小栗武治
講演資料:小型植物工場で育てる”WASABI”を世界へ!
講師 : 中村拓也様 株式会社NEXTAGE 代表取締役
聴講者数: 42名
講師紹介
1994年、明治学院大学 国際学部卒。開発経済学・農業経済学を専攻。
1994年 千代田化工建設株式会社入社。
CT121排煙脱硫装置、LNG受入設備の技術営業を担当。
株式会社荏原製作所では半導体製造装置(CMP装置、真空ポンプ、排ガス処理装置)の海外営業推進、
台湾現地法人では営業責任者として役割を果たす。
数社のスタートアップの立ち上げや事業推進を経験し、2018年1月に株式会社NEXTAGEを創業。
講演概要
・従来自然環境の中で育てられていたワサビを、40フィートの断熱コンテナ―を使用しどこでも生育することができるようになった。
・ワサビは2005年を起点とすると2022年には生産高で根茎も葉柄も約60%減となっている。原因は異常気象、温暖化、農業従事者の高齢化が背景にあり、ワサビの生産量が年々減少してきている。
・一方、日本食ブーム、海外での需要増などによりワサビの需要は伸びている。ワサビを守りたい、世界に届けたいとの思いから株式会社NEXTAGEをスタートさせた。
NEXTAGE社は、東京都目黒区祐天寺2丁目13-4に本社を、支社を焼津に、C&Mセンターを横浜の鶴見に置いて活動している。
・ワサビの国内生産減に伴い海外製のワサビが輸入されているが、チューブワサビ原料の90%は輸入されたホースラディッシュで作られている。これにはワサビの葉柄が粉砕されて含まれている。
・日本固有種のワサビには「実生種」と「真妻種」があり、前者は水っぽくおそばなどに使われ、後者はお寿司などに使用されている。価格は前者が1〜2万円/kg、後者は3〜4万円/kgであり、NEXTAGE社では後者を栽培しようとしている。
・生ワサビに含まれる「アリルイソチアネート」という成分は様々な健康効果を持っており、米国のMIT、スタンフォード、ハーバード、などの大学でも研究が進められている。
・ワサビ栽培モジュールは40ftのコンテナーを使用し、年間1800株(90kg)の真妻わさびを露路栽培期間の半分の約1年で収穫することに成功している。このモジュールでは路地でワサビを育てる環境を室内で再現させており、現状はノウハウをベースとしたインストラクションとの組み合わせだが、将来的にはAIをフルに活用しているため、ワサビ栽培への専門知識は不要であり、誰でもわさび栽培が可能になっている。このコンテナー栽培では水を循環させて使用しているので大幅な節水ができる。
・ワサビの種子は発芽率が低いためワサビの苗は供給不足になっている。NEXTAGEでは大学の研究機関と連携し専用液の開発などを進めており、病気に強いワサビの苗を作り農家にも供給する予定。
・NEXTAGEでは、屋内で促成栽培を実現するわさびの栽培方法、及びわさびの栽培管理システムに関する特許や、栽培設備、支援システム、支援装置、支援プログラム、支援方法に関する詳細や、遠隔栽培技術に関連する取り組みに関する特許を出願している。グローバルな進出には特許が必要。
・当然ブラックボックス的な部分はあるが、栽培技術を提供し商業化に成功しているのはNEXTAGEのみであり、現在競合者はいない、もしくは技術参入障壁がとても高いので優位性を確保できる。
・屋外栽培の場合、気候害や虫害などにより葉柄は食べられないが、コンテナー栽培の場合は屋内栽培なので葉柄は新鮮でおいしい。年間で1,296kg以上のわさびの葉と茎を安定して収穫でき、 わさびの葉茎だけで300万円以上の収入を得ている。
・わさびの葉茎を使ったレシピは数多く開発されており、大阪のヒルトン最上級ブランドホテルではワサビの葉柄を入れたカクテルを提供しており、非常に人気が出ている。コンテナー栽培によりわさびの葉茎の安定供給が実現し、市場、ホテル、大手加工メーカーからの引き合いが加速している。
・日本のわさびマーケット市場は50億円と推計されており、医薬品や健康食品分野が今後のマーケットになりそう。世界のわさび需要は年間10,585t以上と推定されており、イタリアやフランスではワサビの葉柄や根茎を使いたがっているシェフが多くいる。
・欧州でのワサビ試食会にNEXTAGEのわさび栽培モジュールで生産した「真妻」と、他の4か所で生産して購入したワサビを食べ比べてもらったところ、参加者の85.7%以上が NEXTAGEのワサビの購入を検討すると回答した。今後コンテナーを世界各国において、現地の人たちにワサビを栽培してもらえる
ようにして行きたい。
Q&A
Q1 フランス料理にはワサビは合わないと思っていた。今後農業との連携を進めてはどうでしょうか?
A1 ありがとうございます。
Q2 何年くらいで投資回収ができそうですか?
A2 躯体が1個2000万円。根茎の売り上げが1800株/年→約300万円/年、葉柄1000s年→約400万円/年、電気代が120万円/年、葉柄の剪定工数が7..2人/年、等を考慮すると5〜6年で投資回収ができそう。
Q3 岐阜大学の山根先生のワサビに関する本によると、若者のワサビ離れ、農家の高齢化が進み、日本のワサビ産業はつぶれると書いてあるが、NEXTAGEができたので山根説は変わりそうではないか?
A3 そうだと良いと思っている。先生は三鷹の大沢にあるワサビの生態を研究しておられたようだ。
Q4 天然栽培の場合は水の中に天然の成分が含まれているので肥料などは必要ないか?
A4確かに湧水の中にはカルシューム等々のミネラルが入っている。コンテナの場合ではカリウム、リン、等々の必要な成分は与えている。
Q5 日本の天然水は軟水が多いが、欧州あたりでは硬水が多くいろいろな成分が入っていると聞いている。
A5日本でも硬水の地域はあり、水質調査をして適切に変えている。ワサビ農家は科学的にはわからなくても感覚的に肥料をやっていた。この辺りはリスペクトする。
Q6安曇野と伊豆のどちらがワサビ栽培には適しているのか?
A6伊豆の方が良いと言われているが、安曇野も素晴らしい。
Q7 特許を多数出されていると聞いているが、特許は20年で切れてしまうためノウハウを守るならコカ・コーラの様な経営にして特許は出さない方が得策ではないか?
A7議論は両方ある。営業秘匿の所は特許を出さないようにしており、その範囲外のところを特許申請している。
Q8 OEMにする戦略に変えたのはなぜでしょうか?
A8誰でもワサビが作れる環境にして、生産者を増やしたいから。
Q9 グラフで、だんだん葉が食べられなくなってきたのは何故でしょうか?
A9 最近では葉の活用価値が変わってきている。加工品などが作られるようになってきて、葉の価値が上がってきている。
文責:小栗武治
講演資料:小型植物工場で育てる”WASABI”を世界へ!
posted by EVF セミナー at 17:00| セミナー紹介
EVFセミナー報告:テクノロジーを流用し、小型植物工場でそだてる”WASABI”を世界へ!
2025年6月27日
EVFセミナー報告:テクノロジーを流用し、小型植物工場でそだてる”WASABI”を世界へ!
演題 : テクノロジーを流用し、小型植物工場でそだてる”WASABI”を世界へ!
講師 : 中村拓也様 株式会社NEXTAGE 代表取締役
聴講者数: 42名
講師紹介
1994年、明治学院大学 国際学部卒。開発経済学・農業経済学を専攻。
1994年 千代田化工建設株式会社入社。
CT121排煙脱硫装置、LNG受入設備の技術営業を担当。
株式会社荏原製作所では半導体製造装置(CMP装置、真空ポンプ、排ガス処理装置)の海外営業推進、
台湾現地法人では営業責任者として役割を果たす。
数社のスタートアップの立ち上げや事業推進を経験し、2018年1月に株式会社NEXTAGEを創業。
講演概要
・従来自然環境の中で育てられていたワサビを、40フィートの断熱コンテナ―を使用しどこでも生育することができるようになった。
・ワサビは2005年を起点とすると2022年には生産高で根茎も葉柄も約60%減となっている。原因は異常気象、温暖化、農業従事者の高齢化が背景にあり、ワサビの生産量が年々減少してきている。
・一方、日本食ブーム、海外での需要増などによりワサビの需要は伸びている。ワサビを守りたい、世界に届けたいとの思いから株式会社NEXTAGEをスタートさせた。
NEXTAGE社は、東京都目黒区祐天寺2丁目13-4に本社を、支社を焼津に、C&Mセンターを横浜の鶴見に置いて活動している。
・ワサビの国内生産減に伴い海外製のワサビが輸入されているが、チューブワサビ原料の90%は輸入されたホースラディッシュで作られている。これにはワサビの葉柄が粉砕されて含まれている。
・日本固有種のワサビには「実生種」と「真妻種」があり、前者は水っぽくおそばなどに使われ、後者はお寿司などに使用されている。価格は前者が1〜2万円/kg、後者は3〜4万円/kgであり、NEXTAGE社では後者を栽培しようとしている。
・生ワサビに含まれる「アリルイソチアネート」という成分は様々な健康効果を持っており、米国のMIT、スタンフォード、ハーバード、などの大学でも研究が進められている。
・ワサビ栽培モジュールは40ftのコンテナーを使用し、年間1800株(90kg)の真妻わさびを露路栽培期間の半分の約1年で収穫することに成功している。このモジュールでは路地でワサビを育てる環境を室内で再現させており、現状はノウハウをベースとしたインストラクションとの組み合わせだが、将来的にはAIをフルに活用しているため、ワサビ栽培への専門知識は不要であり、誰でもわさび栽培が可能になっている。このコンテナー栽培では水を循環させて使用しているので大幅な節水ができる。
・ワサビの種子は発芽率が低いためワサビの苗は供給不足になっている。NEXTAGEでは大学の研究機関と連携し専用液の開発などを進めており、病気に強いワサビの苗を作り農家にも供給する予定。
・NEXTAGEでは、屋内で促成栽培を実現するわさびの栽培方法、及びわさびの栽培管理システムに関する特許や、栽培設備、支援システム、支援装置、支援プログラム、支援方法に関する詳細や、遠隔栽培技術に関連する取り組みに関する特許を出願している。グローバルな進出には特許が必要。
・当然ブラックボックス的な部分はあるが、栽培技術を提供し商業化に成功しているのはNEXTAGEのみであり、現在競合者はいない、もしくは技術参入障壁がとても高いので優位性を確保できる。
・屋外栽培の場合、気候害や虫害などにより葉柄は食べられないが、コンテナー栽培の場合は屋内栽培なので葉柄は新鮮でおいしい。年間で1,296kg以上のわさびの葉と茎を安定して収穫でき、 わさびの葉茎だけで300万円以上の収入を得ている。
・わさびの葉茎を使ったレシピは数多く開発されており、大阪のヒルトン最上級ブランドホテルではワサビの葉柄を入れたカクテルを提供しており、非常に人気が出ている。コンテナー栽培によりわさびの葉茎の安定供給が実現し、市場、ホテル、大手加工メーカーからの引き合いが加速している。
・日本のわさびマーケット市場は50億円と推計されており、医薬品や健康食品分野が今後のマーケットになりそう。世界のわさび需要は年間10,585t以上と推定されており、イタリアやフランスではワサビの葉柄や根茎を使いたがっているシェフが多くいる。
・欧州でのワサビ試食会にNEXTAGEのわさび栽培モジュールで生産した「真妻」と、他の4か所で生産して購入したワサビを食べ比べてもらったところ、参加者の85.7%以上が NEXTAGEのワサビの購入を検討すると回答した。今後コンテナーを世界各国において、現地の人たちにワサビを栽培してもらえる
ようにして行きたい。
Q&A
Q1 フランス料理にはワサビは合わないと思っていた。今後農業との連携を進めてはどうでしょうか?
A1ありがとうございます。
Q2 何年くらいで投資回収ができそうですか?
A2躯体が1個2000万円。根茎の売り上げが1800株/年→約300万円/年、葉柄1000s年→約400万円/年、電気代が120万円/年、葉柄の剪定工数が7..2人/年、等を考慮すると5〜6年で投資回収ができそう。
Q3岐阜大学の山根先生のワサビに関する本によると、若者のワサビ離れ、農家の高齢化が進み、日本のワサビ産業はつぶれると書いてあるが、NEXTAGEができたので山根説は変わりそうではないか?
A3そうだと良いと思っている。先生は三鷹の大沢にあるワサビの生態を研究しておられたようだ。
Q4天然栽培の場合は水の中に天然の成分が含まれているので肥料などは必要ないか?
A4確かに湧水の中にはカルシューム等々のミネラルが入っている。コンテナの場合ではカリウム、リン、等々の必要な成分は与えている。
Q5日本の天然水は軟水が多いが、欧州あたりでは硬水が多くいろいろな成分が入っていると聞いている。
A5日本でも硬水の地域はあり、水質調査をして適切に変えている。ワサビ農家は科学的にはわからなくても感覚的に肥料をやっていた。この辺りはリスペクトする。
Q6安曇野と伊豆のどちらがワサビ栽培には適しているのか?
A6伊豆の方が良いと言われているが、安曇野も素晴らしい。
Q7特許を多数出されていると聞いているが、特許は20年で切れてしまうためノウハウを守るならコカ・コーラの様な経営にして特許は出さない方が得策ではないか?
A7議論は両方ある。営業秘匿の所は特許右を出さないようにしており、その範囲外のところを特許申請している。
Q8OEMにする戦略に変えたのはなぜでしょうか?
A8誰でもワサビが作れる環境にして、生産者を増やしたいから。
Q9グラフで、だんだん葉が食べられなくなってきたのは何故でしょうか?
A9 最近では葉の活用価値が変わってきている。加工品などが作られるようになってきて、葉の価値が上がってきている。
文責:小栗武治
講演資料:小型植物工場で育てる”WASABI”を世界へ!
EVFセミナー報告:テクノロジーを流用し、小型植物工場でそだてる”WASABI”を世界へ!
演題 : テクノロジーを流用し、小型植物工場でそだてる”WASABI”を世界へ!
講師 : 中村拓也様 株式会社NEXTAGE 代表取締役
聴講者数: 42名
講師紹介
1994年、明治学院大学 国際学部卒。開発経済学・農業経済学を専攻。
1994年 千代田化工建設株式会社入社。
CT121排煙脱硫装置、LNG受入設備の技術営業を担当。
株式会社荏原製作所では半導体製造装置(CMP装置、真空ポンプ、排ガス処理装置)の海外営業推進、
台湾現地法人では営業責任者として役割を果たす。
数社のスタートアップの立ち上げや事業推進を経験し、2018年1月に株式会社NEXTAGEを創業。
講演概要
・従来自然環境の中で育てられていたワサビを、40フィートの断熱コンテナ―を使用しどこでも生育することができるようになった。
・ワサビは2005年を起点とすると2022年には生産高で根茎も葉柄も約60%減となっている。原因は異常気象、温暖化、農業従事者の高齢化が背景にあり、ワサビの生産量が年々減少してきている。
・一方、日本食ブーム、海外での需要増などによりワサビの需要は伸びている。ワサビを守りたい、世界に届けたいとの思いから株式会社NEXTAGEをスタートさせた。
NEXTAGE社は、東京都目黒区祐天寺2丁目13-4に本社を、支社を焼津に、C&Mセンターを横浜の鶴見に置いて活動している。
・ワサビの国内生産減に伴い海外製のワサビが輸入されているが、チューブワサビ原料の90%は輸入されたホースラディッシュで作られている。これにはワサビの葉柄が粉砕されて含まれている。
・日本固有種のワサビには「実生種」と「真妻種」があり、前者は水っぽくおそばなどに使われ、後者はお寿司などに使用されている。価格は前者が1〜2万円/kg、後者は3〜4万円/kgであり、NEXTAGE社では後者を栽培しようとしている。
・生ワサビに含まれる「アリルイソチアネート」という成分は様々な健康効果を持っており、米国のMIT、スタンフォード、ハーバード、などの大学でも研究が進められている。
・ワサビ栽培モジュールは40ftのコンテナーを使用し、年間1800株(90kg)の真妻わさびを露路栽培期間の半分の約1年で収穫することに成功している。このモジュールでは路地でワサビを育てる環境を室内で再現させており、現状はノウハウをベースとしたインストラクションとの組み合わせだが、将来的にはAIをフルに活用しているため、ワサビ栽培への専門知識は不要であり、誰でもわさび栽培が可能になっている。このコンテナー栽培では水を循環させて使用しているので大幅な節水ができる。
・ワサビの種子は発芽率が低いためワサビの苗は供給不足になっている。NEXTAGEでは大学の研究機関と連携し専用液の開発などを進めており、病気に強いワサビの苗を作り農家にも供給する予定。
・NEXTAGEでは、屋内で促成栽培を実現するわさびの栽培方法、及びわさびの栽培管理システムに関する特許や、栽培設備、支援システム、支援装置、支援プログラム、支援方法に関する詳細や、遠隔栽培技術に関連する取り組みに関する特許を出願している。グローバルな進出には特許が必要。
・当然ブラックボックス的な部分はあるが、栽培技術を提供し商業化に成功しているのはNEXTAGEのみであり、現在競合者はいない、もしくは技術参入障壁がとても高いので優位性を確保できる。
・屋外栽培の場合、気候害や虫害などにより葉柄は食べられないが、コンテナー栽培の場合は屋内栽培なので葉柄は新鮮でおいしい。年間で1,296kg以上のわさびの葉と茎を安定して収穫でき、 わさびの葉茎だけで300万円以上の収入を得ている。
・わさびの葉茎を使ったレシピは数多く開発されており、大阪のヒルトン最上級ブランドホテルではワサビの葉柄を入れたカクテルを提供しており、非常に人気が出ている。コンテナー栽培によりわさびの葉茎の安定供給が実現し、市場、ホテル、大手加工メーカーからの引き合いが加速している。
・日本のわさびマーケット市場は50億円と推計されており、医薬品や健康食品分野が今後のマーケットになりそう。世界のわさび需要は年間10,585t以上と推定されており、イタリアやフランスではワサビの葉柄や根茎を使いたがっているシェフが多くいる。
・欧州でのワサビ試食会にNEXTAGEのわさび栽培モジュールで生産した「真妻」と、他の4か所で生産して購入したワサビを食べ比べてもらったところ、参加者の85.7%以上が NEXTAGEのワサビの購入を検討すると回答した。今後コンテナーを世界各国において、現地の人たちにワサビを栽培してもらえる
ようにして行きたい。
Q&A
Q1 フランス料理にはワサビは合わないと思っていた。今後農業との連携を進めてはどうでしょうか?
A1ありがとうございます。
Q2 何年くらいで投資回収ができそうですか?
A2躯体が1個2000万円。根茎の売り上げが1800株/年→約300万円/年、葉柄1000s年→約400万円/年、電気代が120万円/年、葉柄の剪定工数が7..2人/年、等を考慮すると5〜6年で投資回収ができそう。
Q3岐阜大学の山根先生のワサビに関する本によると、若者のワサビ離れ、農家の高齢化が進み、日本のワサビ産業はつぶれると書いてあるが、NEXTAGEができたので山根説は変わりそうではないか?
A3そうだと良いと思っている。先生は三鷹の大沢にあるワサビの生態を研究しておられたようだ。
Q4天然栽培の場合は水の中に天然の成分が含まれているので肥料などは必要ないか?
A4確かに湧水の中にはカルシューム等々のミネラルが入っている。コンテナの場合ではカリウム、リン、等々の必要な成分は与えている。
Q5日本の天然水は軟水が多いが、欧州あたりでは硬水が多くいろいろな成分が入っていると聞いている。
A5日本でも硬水の地域はあり、水質調査をして適切に変えている。ワサビ農家は科学的にはわからなくても感覚的に肥料をやっていた。この辺りはリスペクトする。
Q6安曇野と伊豆のどちらがワサビ栽培には適しているのか?
A6伊豆の方が良いと言われているが、安曇野も素晴らしい。
Q7特許を多数出されていると聞いているが、特許は20年で切れてしまうためノウハウを守るならコカ・コーラの様な経営にして特許は出さない方が得策ではないか?
A7議論は両方ある。営業秘匿の所は特許右を出さないようにしており、その範囲外のところを特許申請している。
Q8OEMにする戦略に変えたのはなぜでしょうか?
A8誰でもワサビが作れる環境にして、生産者を増やしたいから。
Q9グラフで、だんだん葉が食べられなくなってきたのは何故でしょうか?
A9 最近では葉の活用価値が変わってきている。加工品などが作られるようになってきて、葉の価値が上がってきている。
文責:小栗武治
講演資料:小型植物工場で育てる”WASABI”を世界へ!
posted by EVF セミナー at 16:00| セミナー紹介
2025年05月15日
EVFセミナー報告:人生100年!シニアが輝く人工知能社会とは?
演題:人生100年!シニアが輝く人工知能社会とは?
講師:室山 哲也 様 日本科学技術ジャーナリスト会議会長 (元NHK解説主幹)
聴講者数:49名
講師紹介
・1976年NHK入局。
・「ウルトラアイ」などの科学番組ディレクター、「クローズアップ現代」「NHKスペシャル」のチーフプロデューサー、解説主幹を経て、2018年定年。
・科学技術、生命・脳科学、環境、宇宙工学などを中心に論説を行い、子供向け科学番組「科学大好き土曜塾」(教育テレビ)の塾長として科学教育にも尽力した。
・モンテカルロ国際映像祭金獅子賞・放送文化基金賞・上海国際映像祭撮影賞・科学技術映像祭科学技術長官賞・橋田壽賀子賞ほか多数受賞。
・日本科学技術ジャーナリスト会議会長。政府委員多数。
講演概要
・「人生100年時代」と言われる現代、100歳以上の人口は今後ますます増加していきます。日本では高齢化社会が問題視されていますが、実はそれほど悲観的になる必要はありません。高齢者は「考えが古く頑固」などと言われがちですが、別の見方をすれば、若い世代にはない豊かな人生経験という「老人力」を秘めています。
・人間の脳は三層構造になっています。進化の過程で、まず生存を司る本能領域が形成され、次に喜怒哀楽を司る感情領域、そして最後に知能を司る領域が発達しました。AI(人工知能)は、特にこの三層目の「知能領域」を模倣・拡張した技術です。近年では生成AIの登場により、大きな注目を集めています。生成AIは従来のようなプログラミング言語を使うのではなく、大規模言語モデルを活用して自然言語で操作できるのが最大の特徴です。これにより、誰でもAIを自在に扱える時代が到来しました。
・とはいえ、AIと人間の決定的な違いは「体験の有無」です。AIは自ら体験したわけではなく、言葉を紡いでいるに過ぎません。AIは与えられた質問には非常に高いレベルで回答することができますが、自ら発案をして問題提起することはできません。AIは質問があって初めて稼働します。そして、質問の質によって回答の質も決まるため、「質問力」が極めて重要になります。
・この点において、高齢者は豊かな人生経験と言語力を持っているため、若い世代よりも深い質問を投げかけることができます。ここに、AI時代において高齢者が価値を発揮し、いきいきと活躍できるチャンスがあるのです。今後、バーチャルリアリティ(VR)やテレイグジスタンス(遠隔存在技術)が進化し、現実の機械やロボットをリモート操作することが可能になっていきます。シニア世代が主体となり、ネット技術や人工知能、遠隔医療、サイボーグ技術などを駆使すれば、日本は「課題先進国」から「課題解決先進国」へと成長できるのではないでしょうか。そうなれば、日本の新たな成長戦略も見えてきます。
この講演は、我々シニアにとって勇気と希望を与えてくれる内容でした。
Q&A
Q 生成とAIとは何が違うのか?
A いろいろな言葉を取り込んでゼロから作り上げるので生成と言われるようになった。AIと言うとロボットを動かすAIや自動運転が含まれていて、生成AIはAIの中の一部。
Q 60才台のシニアへの求人というとガードマンやマンションの管理人等しかない。シニアが生成AIを活用して若い人と共同して社会で活躍できるためにはどうすればよいのか?
A シニアが若い人に対する方法をしっかり考えなければならない。昔のようにノミニケーションという訳にはいかなくなっている。説教をするのでなく若い人と絆を築く橋渡しを私も模索中。
Q 絆を作るためには伝えることができる人間にならなければならないが、深みのあることを伝えるには寡黙であることと多弁であることのどちらがよいのだろうか?
A 日本語は曖昧で独特な言語。時には主語述語がない場合もある。日本語を十分に理解出来るようなAIの技術を開発できれば日本の技術も世界に通用するものになると言える。
Q 弱いロボットの研究はその後どうなったのか?
A 後継者がいない。もったいないことだ。
Q フェイクニュースや戦争の手段としてのAIを考えると、人間がどうのようにしてAIと向き合っていくべきなのか?
A フェイクニュース対策としてはAI作であれば透かしを入れることを法文化する等の対策も必要になってくる。事実の確認を行いつつ情報を管理することが重要。その意味では小さい頃からの教育が重要。
Q AIに詳しい国会議員を教えてください。
A まだいるかもしれないが、自民党の平将明(たいら まさあき)氏や河野太郎氏などは気になる。
講師:室山 哲也 様 日本科学技術ジャーナリスト会議会長 (元NHK解説主幹)
聴講者数:49名
講師紹介
・1976年NHK入局。
・「ウルトラアイ」などの科学番組ディレクター、「クローズアップ現代」「NHKスペシャル」のチーフプロデューサー、解説主幹を経て、2018年定年。
・科学技術、生命・脳科学、環境、宇宙工学などを中心に論説を行い、子供向け科学番組「科学大好き土曜塾」(教育テレビ)の塾長として科学教育にも尽力した。
・モンテカルロ国際映像祭金獅子賞・放送文化基金賞・上海国際映像祭撮影賞・科学技術映像祭科学技術長官賞・橋田壽賀子賞ほか多数受賞。
・日本科学技術ジャーナリスト会議会長。政府委員多数。
講演概要
・「人生100年時代」と言われる現代、100歳以上の人口は今後ますます増加していきます。日本では高齢化社会が問題視されていますが、実はそれほど悲観的になる必要はありません。高齢者は「考えが古く頑固」などと言われがちですが、別の見方をすれば、若い世代にはない豊かな人生経験という「老人力」を秘めています。
・人間の脳は三層構造になっています。進化の過程で、まず生存を司る本能領域が形成され、次に喜怒哀楽を司る感情領域、そして最後に知能を司る領域が発達しました。AI(人工知能)は、特にこの三層目の「知能領域」を模倣・拡張した技術です。近年では生成AIの登場により、大きな注目を集めています。生成AIは従来のようなプログラミング言語を使うのではなく、大規模言語モデルを活用して自然言語で操作できるのが最大の特徴です。これにより、誰でもAIを自在に扱える時代が到来しました。
・とはいえ、AIと人間の決定的な違いは「体験の有無」です。AIは自ら体験したわけではなく、言葉を紡いでいるに過ぎません。AIは与えられた質問には非常に高いレベルで回答することができますが、自ら発案をして問題提起することはできません。AIは質問があって初めて稼働します。そして、質問の質によって回答の質も決まるため、「質問力」が極めて重要になります。
・この点において、高齢者は豊かな人生経験と言語力を持っているため、若い世代よりも深い質問を投げかけることができます。ここに、AI時代において高齢者が価値を発揮し、いきいきと活躍できるチャンスがあるのです。今後、バーチャルリアリティ(VR)やテレイグジスタンス(遠隔存在技術)が進化し、現実の機械やロボットをリモート操作することが可能になっていきます。シニア世代が主体となり、ネット技術や人工知能、遠隔医療、サイボーグ技術などを駆使すれば、日本は「課題先進国」から「課題解決先進国」へと成長できるのではないでしょうか。そうなれば、日本の新たな成長戦略も見えてきます。
この講演は、我々シニアにとって勇気と希望を与えてくれる内容でした。
Q&A
Q 生成とAIとは何が違うのか?
A いろいろな言葉を取り込んでゼロから作り上げるので生成と言われるようになった。AIと言うとロボットを動かすAIや自動運転が含まれていて、生成AIはAIの中の一部。
Q 60才台のシニアへの求人というとガードマンやマンションの管理人等しかない。シニアが生成AIを活用して若い人と共同して社会で活躍できるためにはどうすればよいのか?
A シニアが若い人に対する方法をしっかり考えなければならない。昔のようにノミニケーションという訳にはいかなくなっている。説教をするのでなく若い人と絆を築く橋渡しを私も模索中。
Q 絆を作るためには伝えることができる人間にならなければならないが、深みのあることを伝えるには寡黙であることと多弁であることのどちらがよいのだろうか?
A 日本語は曖昧で独特な言語。時には主語述語がない場合もある。日本語を十分に理解出来るようなAIの技術を開発できれば日本の技術も世界に通用するものになると言える。
Q 弱いロボットの研究はその後どうなったのか?
A 後継者がいない。もったいないことだ。
Q フェイクニュースや戦争の手段としてのAIを考えると、人間がどうのようにしてAIと向き合っていくべきなのか?
A フェイクニュース対策としてはAI作であれば透かしを入れることを法文化する等の対策も必要になってくる。事実の確認を行いつつ情報を管理することが重要。その意味では小さい頃からの教育が重要。
Q AIに詳しい国会議員を教えてください。
A まだいるかもしれないが、自民党の平将明(たいら まさあき)氏や河野太郎氏などは気になる。
文責:桑原 敏行
posted by EVF セミナー at 00:00| セミナー紹介
2025年03月27日
EVFセミナー報告:航空燃料の脱炭素化ーSAFは打ち出の小槌になるか!
演題:「航空燃料の脱炭素化ーSAF*は打ち出の小槌になるか!」
講師:植村 文香様 日揮ホールディングス(株)サステナビリティ協創ユニットSAF事業アシスタントマネージャー
*SAF:持続可能な航空燃料
聴講者数:41名
講師紹介:
2017年4月旧日揮株式会社入社
2017年9月オーストラリア/LNGプラント建設現場
2018年4月国内石炭ガス化プラント設計
2019年4月タイ/化学プラント設計
2019年12月〜SAF製造事業検討
2023年2月〜合同会社SAFFAIRE SKY ENERGY 兼務出向
講演概要
1.会社概要(日揮ホールディングス):
1928年設立、現在/従業員数8,865名、グループ企業数87社。2019年に社名を現・日揮ホールディングに変更。プロジェクト実績は、80か国、20,000件以上。注力する領域は、CO₂マネジメント/資源循環/バイオ/DXカーボンクレジット認証。講師在籍の「廃食用油 SAF」プロジェクト」は、現在急拡大中。
2.SAF(Sustainable Aviation Fuel)について:
化石燃料以外を原料とする持続可能な航空燃料であり、従来の航空燃料と比べてライフサイクルでCO₂排出量を大幅に削減。「中大型の航空機」にはSAFが不可欠。
大幅なCO₂削減には他に代替がなく、世界でのSAFの需要は拡大が予測され、今年は、「SAF元年」と位置付けられている。EUでは2025年よりSAFの供給義務化がスタートし、日本でも2030年に国内SAF10%供給の目標を設定。2022年時点での世界のSAFの需給ギャップは非常に大きく、製造プロジェクトは欧米企業が先行しており、製造効率の良い「廃食用油」などの油脂原料が主流。
2022年10月の第41回ICAO総会で、2025年までの取組について「オフセット量算定の基準となるベースラインを2019年CO₂排出量の85%に変更」すること等を決定。この見直しを踏まえ、国内のSAFの需給量のすり合わせが必要。
国内SAF製造に向けた取り組みとして、ENEOS/コスモ石油/出光興産/富士石油/太陽石油があげられるが、既に投資決定、設備建設しているのは、日揮ホールディングス/コスモ石油/レボインターナショナルの事業のみ。
SAFの原料として「廃食用油」は、製造プロセス/上流工程の処理工数が少なく有利、又他の原料に比べCO₂削減効果は大きい。
SAFの製造技術には色々あるが、HEFA(廃食用油から)が2025年まではベースの製造技術、加えてATJ(バイオエタノールから)。2050年に向けては合成燃料が増加すると予測される。
3.日揮グループが取り組む廃食用油を原料とするSAF製造事業について:
日揮HD(48%)、コスモ石油(48%)、レボインターナショナル(4%)により、2022年11月に国産SAFの製造会社「SAFFAIRE SKY ENERGY」が設立。日揮グループは、主に全体サプライチェーン構築とSAF製造装置建設を担当。
4.原料廃食用油の回収について:
原料は、全国の飲食店舗からの廃食用油のみを使用。廃食用油は、堺市のSAF製造設備の原料集積所に集められる。原料油脂から、水素化精製プロセスにより、SAF、バイオナフサなどが精製される。
NEAT SAF(100%バイオマス由来)は、50%以上を従来ジェット燃料と混合して製品化(混合SAF)。混合SAFは、堺製油所から日本の国際空港へ出荷され、その際、GHG排出削減カウントの為のCORSIA適格燃料の国際認証が必要となる。
国内の廃食用油(50万トン)の課題は、家庭系(10万トン)の「再利用」と、事業系(40万トン)の内、海外輸出(12万トン)などの「国内資源循環」。その為にサプライチェーン全体の連携によりトレーサビリティの確保が必要。廃食用油は、空港・商業施設・百貨店・外食関連企業などとの連携で回収。
資源循環による脱炭素化社会の実現を目指す「FRY to FLY Project」には、本日時点で211団体が加盟。
<よく準備された、大変理解しやすい、素晴らしい内容のセミナーでした。>
Q&A:
Q1)日本の10%目標とSAF50%混合は、製造量と熱効率からのものか?
A1)SAFは、熱効率などの品質上は従来の燃料とほぼ同じ。規格も新しく先ず50%に。現在、SAF100%に向けての実証実験も行われている。10%目標は、製造量からではなく、2050年のカーボンネットゼロに向けての取り組みから。一方、廃食用油の供給量には上限があり、2050年に向けてSAFの他の製造方法も含め積み上げて行く必要がある。
Q2)日本の将来の需要に対して、現在の堺の製造量はどれくらいか?
A2)現在の国内の年間廃食用油は50万トンで、そのうちの海外輸出12万トンと家庭系10万トンの合計が、22万トン。2030年の供給予測が172万トンなので、全く足りない。アルコール、ゴミなどからの他の製法が必要。現在の堺の製造会社は3万キロで22万キロと比べ全く足りない。しかし、原料の収集には苦労しているのが現状。この問題が解決できれば、将来2号機、3号機も考えられる。
Q3)水素化精製プロセスの水素はグリーンなのかブルーなのか?将来的には?また、LCA上はどの程度、進んでいるのか?
A3)現状の水素は、既設のコスモ・堺プラントからで、石油由来。今後グリーン化に。ICAOの計算式があり、それを基に計算すると、廃食用油の84%がCO₂削減、13.9%がCO₂排出量となり、その13.9%のほとんどが水素。これがグリーン化されれば、90%のCO₂削減となる。
Q4)日本全体の食用油の生産量はどれくらいか?廃食用油収集の回収率を知りたい。
A4)業界の数字は、示されていない。人口減により油の需要も落ちているし、各社の現場では濾過機等により油の使用を減らす努力もされている。
Q5)@SAFのコストは?Aパーム油はSAFの原料になりうるか?B排出権は、誰がクレジットを得るのか?CNEAT SAFは、航空燃料の△47℃をクリアできるのか?
A5)@SAFは収集コストなどもかかり、JET燃料のおおよそ3〜5倍のコスト。SAF採用の背景には、航空各社の脱炭素の認識がある。Aパームとアンモニアだが、アンモニアは他のものに使えるのでわざわざSAFには。廃パーム油は使える。常温での液体油の回収が多く行われており、固化のパーム油のハンドリングは少し難しいが、品質的には問題はない。B排出権は航空会社が。コストとしては、排出権取引の方が安いが、航空各社の姿勢の表れ。C出来る。正しく△47℃のスペックミートの試運転をしているところ。
Q6)天麩羅油は植物由来で吸収して燃やすから、SAFがカーボンフリーと理解しているが・・・。
A6)その通り。今まで石油を掘り起こしてジェット燃料を作っていたけれど、植物由来に変えることにより、新たにカーボンを地上に掘り起こさなくなる。これはLife Cycleで考えている。
Q7)@10数年前に、京都のバスで、軽油の代わりにバイオディーゼルを、と聞いた事があるが、その後どれくらい進んでいるのか、そしてSAFとの取り合いにならないのか?A廃食用油の値段について。
A7)@京都市も含め各自治体で結構やられているが、採算があわない、エンジンがおかしくなる場合があり、又臭いなどから、止めているところもあり、日本のバイオディーゼルの需要は少ない。今のところは、SAFとの競合にはなっていない。A買い取り価格は、基本的には各社(店舗)に損の無いように決めさせてもらっている。
講師:植村 文香様 日揮ホールディングス(株)サステナビリティ協創ユニットSAF事業アシスタントマネージャー
*SAF:持続可能な航空燃料
聴講者数:41名
講師紹介:
2017年4月旧日揮株式会社入社
2017年9月オーストラリア/LNGプラント建設現場
2018年4月国内石炭ガス化プラント設計
2019年4月タイ/化学プラント設計
2019年12月〜SAF製造事業検討
2023年2月〜合同会社SAFFAIRE SKY ENERGY 兼務出向
講演概要
1.会社概要(日揮ホールディングス):
1928年設立、現在/従業員数8,865名、グループ企業数87社。2019年に社名を現・日揮ホールディングに変更。プロジェクト実績は、80か国、20,000件以上。注力する領域は、CO₂マネジメント/資源循環/バイオ/DXカーボンクレジット認証。講師在籍の「廃食用油 SAF」プロジェクト」は、現在急拡大中。
2.SAF(Sustainable Aviation Fuel)について:
化石燃料以外を原料とする持続可能な航空燃料であり、従来の航空燃料と比べてライフサイクルでCO₂排出量を大幅に削減。「中大型の航空機」にはSAFが不可欠。
大幅なCO₂削減には他に代替がなく、世界でのSAFの需要は拡大が予測され、今年は、「SAF元年」と位置付けられている。EUでは2025年よりSAFの供給義務化がスタートし、日本でも2030年に国内SAF10%供給の目標を設定。2022年時点での世界のSAFの需給ギャップは非常に大きく、製造プロジェクトは欧米企業が先行しており、製造効率の良い「廃食用油」などの油脂原料が主流。
2022年10月の第41回ICAO総会で、2025年までの取組について「オフセット量算定の基準となるベースラインを2019年CO₂排出量の85%に変更」すること等を決定。この見直しを踏まえ、国内のSAFの需給量のすり合わせが必要。
国内SAF製造に向けた取り組みとして、ENEOS/コスモ石油/出光興産/富士石油/太陽石油があげられるが、既に投資決定、設備建設しているのは、日揮ホールディングス/コスモ石油/レボインターナショナルの事業のみ。
SAFの原料として「廃食用油」は、製造プロセス/上流工程の処理工数が少なく有利、又他の原料に比べCO₂削減効果は大きい。
SAFの製造技術には色々あるが、HEFA(廃食用油から)が2025年まではベースの製造技術、加えてATJ(バイオエタノールから)。2050年に向けては合成燃料が増加すると予測される。
3.日揮グループが取り組む廃食用油を原料とするSAF製造事業について:
日揮HD(48%)、コスモ石油(48%)、レボインターナショナル(4%)により、2022年11月に国産SAFの製造会社「SAFFAIRE SKY ENERGY」が設立。日揮グループは、主に全体サプライチェーン構築とSAF製造装置建設を担当。
4.原料廃食用油の回収について:
原料は、全国の飲食店舗からの廃食用油のみを使用。廃食用油は、堺市のSAF製造設備の原料集積所に集められる。原料油脂から、水素化精製プロセスにより、SAF、バイオナフサなどが精製される。
NEAT SAF(100%バイオマス由来)は、50%以上を従来ジェット燃料と混合して製品化(混合SAF)。混合SAFは、堺製油所から日本の国際空港へ出荷され、その際、GHG排出削減カウントの為のCORSIA適格燃料の国際認証が必要となる。
国内の廃食用油(50万トン)の課題は、家庭系(10万トン)の「再利用」と、事業系(40万トン)の内、海外輸出(12万トン)などの「国内資源循環」。その為にサプライチェーン全体の連携によりトレーサビリティの確保が必要。廃食用油は、空港・商業施設・百貨店・外食関連企業などとの連携で回収。
資源循環による脱炭素化社会の実現を目指す「FRY to FLY Project」には、本日時点で211団体が加盟。
<よく準備された、大変理解しやすい、素晴らしい内容のセミナーでした。>
Q&A:
Q1)日本の10%目標とSAF50%混合は、製造量と熱効率からのものか?
A1)SAFは、熱効率などの品質上は従来の燃料とほぼ同じ。規格も新しく先ず50%に。現在、SAF100%に向けての実証実験も行われている。10%目標は、製造量からではなく、2050年のカーボンネットゼロに向けての取り組みから。一方、廃食用油の供給量には上限があり、2050年に向けてSAFの他の製造方法も含め積み上げて行く必要がある。
Q2)日本の将来の需要に対して、現在の堺の製造量はどれくらいか?
A2)現在の国内の年間廃食用油は50万トンで、そのうちの海外輸出12万トンと家庭系10万トンの合計が、22万トン。2030年の供給予測が172万トンなので、全く足りない。アルコール、ゴミなどからの他の製法が必要。現在の堺の製造会社は3万キロで22万キロと比べ全く足りない。しかし、原料の収集には苦労しているのが現状。この問題が解決できれば、将来2号機、3号機も考えられる。
Q3)水素化精製プロセスの水素はグリーンなのかブルーなのか?将来的には?また、LCA上はどの程度、進んでいるのか?
A3)現状の水素は、既設のコスモ・堺プラントからで、石油由来。今後グリーン化に。ICAOの計算式があり、それを基に計算すると、廃食用油の84%がCO₂削減、13.9%がCO₂排出量となり、その13.9%のほとんどが水素。これがグリーン化されれば、90%のCO₂削減となる。
Q4)日本全体の食用油の生産量はどれくらいか?廃食用油収集の回収率を知りたい。
A4)業界の数字は、示されていない。人口減により油の需要も落ちているし、各社の現場では濾過機等により油の使用を減らす努力もされている。
Q5)@SAFのコストは?Aパーム油はSAFの原料になりうるか?B排出権は、誰がクレジットを得るのか?CNEAT SAFは、航空燃料の△47℃をクリアできるのか?
A5)@SAFは収集コストなどもかかり、JET燃料のおおよそ3〜5倍のコスト。SAF採用の背景には、航空各社の脱炭素の認識がある。Aパームとアンモニアだが、アンモニアは他のものに使えるのでわざわざSAFには。廃パーム油は使える。常温での液体油の回収が多く行われており、固化のパーム油のハンドリングは少し難しいが、品質的には問題はない。B排出権は航空会社が。コストとしては、排出権取引の方が安いが、航空各社の姿勢の表れ。C出来る。正しく△47℃のスペックミートの試運転をしているところ。
Q6)天麩羅油は植物由来で吸収して燃やすから、SAFがカーボンフリーと理解しているが・・・。
A6)その通り。今まで石油を掘り起こしてジェット燃料を作っていたけれど、植物由来に変えることにより、新たにカーボンを地上に掘り起こさなくなる。これはLife Cycleで考えている。
Q7)@10数年前に、京都のバスで、軽油の代わりにバイオディーゼルを、と聞いた事があるが、その後どれくらい進んでいるのか、そしてSAFとの取り合いにならないのか?A廃食用油の値段について。
A7)@京都市も含め各自治体で結構やられているが、採算があわない、エンジンがおかしくなる場合があり、又臭いなどから、止めているところもあり、日本のバイオディーゼルの需要は少ない。今のところは、SAFとの競合にはなっていない。A買い取り価格は、基本的には各社(店舗)に損の無いように決めさせてもらっている。
文責:三嶋 明
posted by EVF セミナー at 16:00| セミナー紹介
2025年02月27日
EVFセミナー報告:2025年の新世界 〜 大統領選挙の次に来るものは何か!
演題:2025年の新世界 〜 大統領選挙の次に来るものは何か!
講師:林 良造 様 武蔵野大学国際総合研究所 フェロー
聴講者数:41名
講師紹介
1970年 京都大学法学部卒業、通商産業省 入省
1976年 ハーバード大学ロースクールLL.M.
1991年 ハーバード大学ケネディスクール フェロー
2001年 経済産業省 官房長、経済産業政策局長
帝人 独立社外監査役、伊藤忠商事 独立社外監査役、シティバンク銀行 社外取締役、経営競争基盤 経営諮問委員、コア 独立社外取締役、Robert Bosch GmbH International Advisory Board Member、東京大学公共政策大学院 教授、機械振興協会経済研究所所長 などを歴任
講演要旨
1)トランプ政権の素早いACTION
--トランプ劇場は思ったより早く始まり、テンポが速くかつ中身の詰まった大統領令が発せられている。二期目になるのでバイデン政権時によく自分の政策を考えていた形跡が見られる。
--ガザ戦争もネタニヤフ首相と手際よく処理した。
--ウクライナ戦争も3年間進まなかった戦争終結に向けた全く違う動きがみられる。
2)大統領選挙結果
--先進国の国々では与党が大敗している。その背景としては移民流入やウクライナ戦争による経済悪化など格差が拡大し、それが急激な変化として国民に不公平な感情を抱かせたことがある。
--経験、国力からも今やトランプの独壇場。トランプ大統領が欧州を動かしている。
3)Eurasia Group
--Eurasia Groupによる10のリスクの中で取り上げられている多くはトランプ関連。G7G20などの世界統治機構が機能不全を起こしており、その実効性が問われている。武力紛争解決ができず、貿易戦争も片付かない。
--1971年から機能不全を起こしており、今まではきれいごとに走りすぎていた。アメリカには やりすぎ感と不公平感が渦巻いている。
--今まではハードパワーの共和党とソフトパワーの民主党の両輪できたが。
4)政権の骨格
--トランプに忠誠を誓うスキのない政権骨格
--タブーであった軍トップを交代させた。
--トランプから見たイーロンマスクは利用価値が高い段階。マスクの行動に閣僚との軋轢なども予想されるが当面はトランプのマスク支持は強固。
5)トランプ政権の主要目標
--ウクライナは欧州が中心となり処理。欧州の防衛費を拡大させる。そしてイスラエルとアラブ(エジプト)の処理を終わらせる。しかる後に中国と対峙する。これがトランプが本当にやりたいこと。
--多くの首脳は新しいが、トランプは2期目なので交渉はトランプ有利。
6)Trump Style 傾向と対策
--力の信奉による戦争回避
--関税攻勢とトップ外交 コロンビア、カナダ、メキシコ、中国等
--目指すところはハードバワーとソフトバランスのリバランス
7)米中関係他
--経済力は米優位だが、東アジアの軍事力は中国優勢
--トランプの任期2027年(残り2年はレームダックか)習近平任期2028年
--今後はアジア太平洋が新秩序作りの主戦場になる
8)石破政権の政権運営他
--保守派が嫌だという岸田さんの押しで石破政権が誕生した。
--派閥そして政策決定のへそががなくなって例えば夫婦別姓などのコンセンサス作りは困難に。
--安倍さんの時代に比べて官邸の影響力は減っている。
--安倍政権で積み残した岩盤規制は農業と医療。
--今後の産業政策で一番むつかしいのは自動車。電子・電機。自動車構造変化が多面で起きている。燃料、自動運転、AIなど世界的に合従連合が進んでいる。 それらの情報量が増大化、スピードが速い。
どういう風にのりきれるかが最大の産業課題。
--課題:縦割りを壊して横串を通していくことにより産業・経済を強化すること。ハードバワーとソフトバランスのリバランスをとっていくこと。
以下質疑応答
質問1:政治・外交も含め日本をいかに富ませるか?日本がなし崩し的におとなしい国になっていくのか心配。
回答1 ゆでガエルの状態に多くの人が慣れてきている。この数年の間にそれなりに変わってきているが、うまくオーケストレーションできるかが課題。いろんな場面で新しい芽も育ちつつある。
質問2:政府のエネルギー政策に疑問。どうすれば日本が変われるのか?
回答2:エネルギーの自給、経済性などの理由で原子力が基本にならざるを得ない。やっと出発点に戻った。データセンターやAIなどで電源供給安定性が重要なので原子力、再エネ、LNGなどが手段となるであろう。農業、医療及びエネルギー政策が硬直化している。政策決定には自民党、審議会、業界代表、与党全部がそろっていく必要があり硬直化している。今後日本でも農業、医療及びエネルギーのニッチな領域で技術ブレークスルーを進化させ広がりを始まることを期待している。
質問3:エネルギー関連仕事をしている。インドで分散型エネルギー経済産業省FS受注した。JCMに関連するFSでは国家間契約が前提なので契約の日程など教えて下さい。
回答3:インドは大きな国で一本化が難しい。
質問4:米国にとって日本を本気で守る気があるのだろうか?
回答4:日本はアメリカにとって今は価値が高い状態。中国がアメリカにとって一番大きな脅威。アジアの国の中で日本が安心して付き合うことができる。韓国は難しいし北朝鮮問題を抱えている。しかし20年後ぐらい中国、朝鮮半島問題が収まったら日本の立ち位置は変わるだろう。状況が変わっていっても日本を防御する。そう意味でも日本が持っている製造力、技術力や金融力などが必要なんだと思わせるものが必要である。
質問5:トランプが大統領令で政策をすすめている。憲法との関係はどう考えればよいのでしょうか?
回答5:アメリカでは大統領、議員ともに国民から直接選ばれている。行政庁は議会が決めたことを与えられた予算内で大統領令に従い執行する。現在大統領も議会も共和党。連邦最高裁判所も判事9名中6名が保守派。州と連邦間で多くの問題が発生するが憲法で細かく役割が規定され三権分立の下連邦最高裁で解決される。様々な案件を多数決で決める制度である。その結果は極端に振れるが、それを制限しているのがこの”Check &Balance“のシステムである。日本ではコンセンサスを得るように論議するので時間がかかり大きな変化ができないが極端な結果に結びつかない面でもある。
講演資料:2025年の新世界
講師:林 良造 様 武蔵野大学国際総合研究所 フェロー
聴講者数:41名
講師紹介
1970年 京都大学法学部卒業、通商産業省 入省
1976年 ハーバード大学ロースクールLL.M.
1991年 ハーバード大学ケネディスクール フェロー
2001年 経済産業省 官房長、経済産業政策局長
帝人 独立社外監査役、伊藤忠商事 独立社外監査役、シティバンク銀行 社外取締役、経営競争基盤 経営諮問委員、コア 独立社外取締役、Robert Bosch GmbH International Advisory Board Member、東京大学公共政策大学院 教授、機械振興協会経済研究所所長 などを歴任
講演要旨
1)トランプ政権の素早いACTION
--トランプ劇場は思ったより早く始まり、テンポが速くかつ中身の詰まった大統領令が発せられている。二期目になるのでバイデン政権時によく自分の政策を考えていた形跡が見られる。
--ガザ戦争もネタニヤフ首相と手際よく処理した。
--ウクライナ戦争も3年間進まなかった戦争終結に向けた全く違う動きがみられる。
2)大統領選挙結果
--先進国の国々では与党が大敗している。その背景としては移民流入やウクライナ戦争による経済悪化など格差が拡大し、それが急激な変化として国民に不公平な感情を抱かせたことがある。
--経験、国力からも今やトランプの独壇場。トランプ大統領が欧州を動かしている。
3)Eurasia Group
--Eurasia Groupによる10のリスクの中で取り上げられている多くはトランプ関連。G7G20などの世界統治機構が機能不全を起こしており、その実効性が問われている。武力紛争解決ができず、貿易戦争も片付かない。
--1971年から機能不全を起こしており、今まではきれいごとに走りすぎていた。アメリカには やりすぎ感と不公平感が渦巻いている。
--今まではハードパワーの共和党とソフトパワーの民主党の両輪できたが。
4)政権の骨格
--トランプに忠誠を誓うスキのない政権骨格
--タブーであった軍トップを交代させた。
--トランプから見たイーロンマスクは利用価値が高い段階。マスクの行動に閣僚との軋轢なども予想されるが当面はトランプのマスク支持は強固。
5)トランプ政権の主要目標
--ウクライナは欧州が中心となり処理。欧州の防衛費を拡大させる。そしてイスラエルとアラブ(エジプト)の処理を終わらせる。しかる後に中国と対峙する。これがトランプが本当にやりたいこと。
--多くの首脳は新しいが、トランプは2期目なので交渉はトランプ有利。
6)Trump Style 傾向と対策
--力の信奉による戦争回避
--関税攻勢とトップ外交 コロンビア、カナダ、メキシコ、中国等
--目指すところはハードバワーとソフトバランスのリバランス
7)米中関係他
--経済力は米優位だが、東アジアの軍事力は中国優勢
--トランプの任期2027年(残り2年はレームダックか)習近平任期2028年
--今後はアジア太平洋が新秩序作りの主戦場になる
8)石破政権の政権運営他
--保守派が嫌だという岸田さんの押しで石破政権が誕生した。
--派閥そして政策決定のへそががなくなって例えば夫婦別姓などのコンセンサス作りは困難に。
--安倍さんの時代に比べて官邸の影響力は減っている。
--安倍政権で積み残した岩盤規制は農業と医療。
--今後の産業政策で一番むつかしいのは自動車。電子・電機。自動車構造変化が多面で起きている。燃料、自動運転、AIなど世界的に合従連合が進んでいる。 それらの情報量が増大化、スピードが速い。
どういう風にのりきれるかが最大の産業課題。
--課題:縦割りを壊して横串を通していくことにより産業・経済を強化すること。ハードバワーとソフトバランスのリバランスをとっていくこと。
以下質疑応答
質問1:政治・外交も含め日本をいかに富ませるか?日本がなし崩し的におとなしい国になっていくのか心配。
回答1 ゆでガエルの状態に多くの人が慣れてきている。この数年の間にそれなりに変わってきているが、うまくオーケストレーションできるかが課題。いろんな場面で新しい芽も育ちつつある。
質問2:政府のエネルギー政策に疑問。どうすれば日本が変われるのか?
回答2:エネルギーの自給、経済性などの理由で原子力が基本にならざるを得ない。やっと出発点に戻った。データセンターやAIなどで電源供給安定性が重要なので原子力、再エネ、LNGなどが手段となるであろう。農業、医療及びエネルギー政策が硬直化している。政策決定には自民党、審議会、業界代表、与党全部がそろっていく必要があり硬直化している。今後日本でも農業、医療及びエネルギーのニッチな領域で技術ブレークスルーを進化させ広がりを始まることを期待している。
質問3:エネルギー関連仕事をしている。インドで分散型エネルギー経済産業省FS受注した。JCMに関連するFSでは国家間契約が前提なので契約の日程など教えて下さい。
回答3:インドは大きな国で一本化が難しい。
質問4:米国にとって日本を本気で守る気があるのだろうか?
回答4:日本はアメリカにとって今は価値が高い状態。中国がアメリカにとって一番大きな脅威。アジアの国の中で日本が安心して付き合うことができる。韓国は難しいし北朝鮮問題を抱えている。しかし20年後ぐらい中国、朝鮮半島問題が収まったら日本の立ち位置は変わるだろう。状況が変わっていっても日本を防御する。そう意味でも日本が持っている製造力、技術力や金融力などが必要なんだと思わせるものが必要である。
質問5:トランプが大統領令で政策をすすめている。憲法との関係はどう考えればよいのでしょうか?
回答5:アメリカでは大統領、議員ともに国民から直接選ばれている。行政庁は議会が決めたことを与えられた予算内で大統領令に従い執行する。現在大統領も議会も共和党。連邦最高裁判所も判事9名中6名が保守派。州と連邦間で多くの問題が発生するが憲法で細かく役割が規定され三権分立の下連邦最高裁で解決される。様々な案件を多数決で決める制度である。その結果は極端に振れるが、それを制限しているのがこの”Check &Balance“のシステムである。日本ではコンセンサスを得るように論議するので時間がかかり大きな変化ができないが極端な結果に結びつかない面でもある。
文責:藤木憲夫
講演資料:2025年の新世界
posted by EVF セミナー at 16:00| セミナー紹介
2025年01月29日
EVFセミナー報告:アンモニアが脱炭素に果たす役割と課題
演題:アンモニアが脱炭素に果たす役割と課題
講師:村木 茂 様 一般社団法人クリーン燃料アンモニア協会 会長
聴講者数:48名
講師紹介
1972年: 東京大学工学部卒業
1972年: 東京ガス株式会社入社
1989年: ニューヨーク事務所所長、米国駐在
2000年: 原料部長
2002年: 執行役員
2004年: 常務執行役員R&D本部長
2007年: 常務執行役員エネルギーソリューション本部長
2010年: 代表取締役副社長執行役員
2014年: 取締役副会長
2015年: 常勤顧問
2022年: 一般社団法人クリーン燃料アンモニア協会(旧グリーンアンモニアコンソーシアム)会長
講演概要
化石燃料由来のブルー水素、再生可能エネルギー由来のグリーン水素を海外から日本へ輸送するエネルギーキャリアとしてのアンモニアが、貯蔵を含めて他の水素輸送よりも経済的。液化水素、有機ハイドライド(メチルシクロヘキサン)での海上輸送の取り組みもあるが、陸揚げ後に気化、脱水素のプロセスが必要なのに対して、アンモニアは海上輸送後、燃焼のプロセスに直接利用できる。2024年10月23日施行の水素社会推進法により、GX経済移行債により約7兆円が水素等への支援、その内数として、国内製造及び輸入のクリーン水素に対して、既存燃料との価格差に対して「値差支援」を総額3兆円を15年間支援(2千億円/年)営業費用の支援は異例、但し、適用条件が厳格。ハブ・アンド・スポークで国内各地への供給網を効率的に配置する拠点整備支援に1兆円の投資支援
アンモニアの役割;
アンモニアは肥料で製造・貯蔵・輸送の技術が存在。水素を運ぶ・貯蔵するにはアンモニアが最適。燃焼してもゼロエミッション。発電、船舶推進、工業炉での利用が先行。
利用技術:
石炭火力発電でのアンモニア混焼(20%)はJERAで実証済み、50ー60%の混焼になる見込み。アンモニア専焼とすると排ガス量が増大し、煙道の改造が必要になる。アンモニア燃料コンバインドサイクル(ACC)のガスタービン(GT)火力発電(効率60%)が本命だが、大型は未完成。小型GTは変動出力に対応可能、大型GTはベースロード向け。
海外アンモニアの輸入元:
天然ガス由来のブルーは、米国、カナダ、中東、オーストラリアから。再生エネ由来のグリーンは、インド、チリ、オーストラリア、中東から。
アンモニア製造法:
ハーバー・ボッシュ法+水蒸気改質。75%のCO2回収率を更に高めるとコスト上昇。今後の技術としてのATR(自己熱改質)では空気から窒素を分離する(ATU)が消費する電力の脱炭素が課題。
アンモニア受け入れの国内受け入れ施設:
6箇所のハブ:苫小牧、相馬、常陸那珂および鹿島、碧南、泉北(大阪)、山口周南および愛媛波方。受入規模:300万トン/2030年、3000万トン/2050年
ロードマップ:
インフレにより製造コストが上昇しているため値差支援が増大。第7次エネルギー基本計画に対して2050年に3000万トンとしていた計画を10年前倒しして2040年に達成するとの計画を提出。
(注)当日の質疑に関しましては、EVFホームページに掲載しておりますので、ご参照ください。
https://www.evfjp.org/
主な質疑応答
Q1:アンモニアの経済性は?
A1:ブルーアンモニアで天然ガスの約2倍強、グリーンアンモニアで3倍位、1万円を超えるカーボンプライシング(炭素税)が必要
Q2:輸入の天然ガスに1万円以上のカーボンプライシングを課税し、アンモニアと同等の価格になる?
A2:そうです。
Q3:海外からの水素のままで輸送するケースはない?
A3:液化水素は高コストで無理、水素は2,000kmの範囲までパイプラインで輸送、それ以上の距離では採算が合わない。液化水素、高圧水素での輸入極めて難しい。
Q4:経産省が設定した20円/Nm3は、発熱量ベースで天然ガスの2倍程度?
A4:天然ガスの1.2−1.3倍程度。この20円の水素でコンバインドガスサイクルで発電すると12円/kWhで発電できる。
Q5:航空機のエンジンでのアンモニア利用の可能性?
A5:できるが、アンモニアが漏れる場合を想定する必要があり、航空機のエンジンなどでの利用はアンモニアの毒性の観点から、一般人が利用する場所での使用はやめた方が良い。熱量あたりの体積が大きく航続距離も短縮。
Q6:鉄鋼産業でのアンモニア利用が他の産業よりも遅い理由?
A6:国内で水素(アンモニア)還元製鉄はコストで難しい、20円でなく8.5円/Nm3でないと採算が合わない。鉄鉱石の産地で脱炭素燃料が安い海外で、粗鋼を製造、国内で電炉で製品に仕上げるのが経済的。石油化学も日本での経済合理性があるか分からない。
Q7:アンモニアから水素を取りだし水素で混焼させるのは?
A7:水素源として可能性は大きいが、10%のエネルギーロス。
Q8:原子力で製造する水素を利用?
A8:原子力で水素を製造する技術は実用化までの時間が必要。
Q9:エネルギーを自給自足するために、国内生産のグリーン水素と大気中の窒素でアンモニアを製造できないか?
A9:国内の再エネコストが高価。浮体式洋上風力を推進しているが、EEZでの浮体式は需要地から離れている。海底の直流送電も良いが、LNG,LPGの既存技術を利用し、浮体式アンモニア製造設備でアンモニアを製造し運ぶ方法は検討の余地があり。
Q10:アンモニアがどれ位使われるかの見通し?
A10:300万トン/2030年で発電量の0.8%、2050年に水素及びアンモニアで10%、2040年に発電で4−5%、産業で1−2%
Q11:MITがADDIS Energy社が鉱山からアンモニアを採掘(製造?)するニュースがあった。
A11:存じませんでした。地中に水素は存在するが、アンモニアは?
Q12:製造プロセスでエネルギーロスがあるがエネルギー収支は?。
A12:アンモニア製造で25%のエネルギーロス。LNGで10%の液化ロス、アンモニアの液体輸送に比べると、シクロヘキサン輸送だと脱水素を含め50-60%のロスなのでアンモニアが勝る。これまでのアンモニアは長期契約はなく、オープンマーケットで取引されてきたのが、長期契約で大規模な供給設備形成をすると、市場価格が低下する可能性はある。
講演資料:アンモニアが脱炭素で果たす役割と課題
講師:村木 茂 様 一般社団法人クリーン燃料アンモニア協会 会長
聴講者数:48名
講師紹介
1972年: 東京大学工学部卒業
1972年: 東京ガス株式会社入社
1989年: ニューヨーク事務所所長、米国駐在
2000年: 原料部長
2002年: 執行役員
2004年: 常務執行役員R&D本部長
2007年: 常務執行役員エネルギーソリューション本部長
2010年: 代表取締役副社長執行役員
2014年: 取締役副会長
2015年: 常勤顧問
2022年: 一般社団法人クリーン燃料アンモニア協会(旧グリーンアンモニアコンソーシアム)会長
講演概要
化石燃料由来のブルー水素、再生可能エネルギー由来のグリーン水素を海外から日本へ輸送するエネルギーキャリアとしてのアンモニアが、貯蔵を含めて他の水素輸送よりも経済的。液化水素、有機ハイドライド(メチルシクロヘキサン)での海上輸送の取り組みもあるが、陸揚げ後に気化、脱水素のプロセスが必要なのに対して、アンモニアは海上輸送後、燃焼のプロセスに直接利用できる。2024年10月23日施行の水素社会推進法により、GX経済移行債により約7兆円が水素等への支援、その内数として、国内製造及び輸入のクリーン水素に対して、既存燃料との価格差に対して「値差支援」を総額3兆円を15年間支援(2千億円/年)営業費用の支援は異例、但し、適用条件が厳格。ハブ・アンド・スポークで国内各地への供給網を効率的に配置する拠点整備支援に1兆円の投資支援
アンモニアの役割;
アンモニアは肥料で製造・貯蔵・輸送の技術が存在。水素を運ぶ・貯蔵するにはアンモニアが最適。燃焼してもゼロエミッション。発電、船舶推進、工業炉での利用が先行。
利用技術:
石炭火力発電でのアンモニア混焼(20%)はJERAで実証済み、50ー60%の混焼になる見込み。アンモニア専焼とすると排ガス量が増大し、煙道の改造が必要になる。アンモニア燃料コンバインドサイクル(ACC)のガスタービン(GT)火力発電(効率60%)が本命だが、大型は未完成。小型GTは変動出力に対応可能、大型GTはベースロード向け。
海外アンモニアの輸入元:
天然ガス由来のブルーは、米国、カナダ、中東、オーストラリアから。再生エネ由来のグリーンは、インド、チリ、オーストラリア、中東から。
アンモニア製造法:
ハーバー・ボッシュ法+水蒸気改質。75%のCO2回収率を更に高めるとコスト上昇。今後の技術としてのATR(自己熱改質)では空気から窒素を分離する(ATU)が消費する電力の脱炭素が課題。
アンモニア受け入れの国内受け入れ施設:
6箇所のハブ:苫小牧、相馬、常陸那珂および鹿島、碧南、泉北(大阪)、山口周南および愛媛波方。受入規模:300万トン/2030年、3000万トン/2050年
ロードマップ:
インフレにより製造コストが上昇しているため値差支援が増大。第7次エネルギー基本計画に対して2050年に3000万トンとしていた計画を10年前倒しして2040年に達成するとの計画を提出。
(注)当日の質疑に関しましては、EVFホームページに掲載しておりますので、ご参照ください。
https://www.evfjp.org/
主な質疑応答
Q1:アンモニアの経済性は?
A1:ブルーアンモニアで天然ガスの約2倍強、グリーンアンモニアで3倍位、1万円を超えるカーボンプライシング(炭素税)が必要
Q2:輸入の天然ガスに1万円以上のカーボンプライシングを課税し、アンモニアと同等の価格になる?
A2:そうです。
Q3:海外からの水素のままで輸送するケースはない?
A3:液化水素は高コストで無理、水素は2,000kmの範囲までパイプラインで輸送、それ以上の距離では採算が合わない。液化水素、高圧水素での輸入極めて難しい。
Q4:経産省が設定した20円/Nm3は、発熱量ベースで天然ガスの2倍程度?
A4:天然ガスの1.2−1.3倍程度。この20円の水素でコンバインドガスサイクルで発電すると12円/kWhで発電できる。
Q5:航空機のエンジンでのアンモニア利用の可能性?
A5:できるが、アンモニアが漏れる場合を想定する必要があり、航空機のエンジンなどでの利用はアンモニアの毒性の観点から、一般人が利用する場所での使用はやめた方が良い。熱量あたりの体積が大きく航続距離も短縮。
Q6:鉄鋼産業でのアンモニア利用が他の産業よりも遅い理由?
A6:国内で水素(アンモニア)還元製鉄はコストで難しい、20円でなく8.5円/Nm3でないと採算が合わない。鉄鉱石の産地で脱炭素燃料が安い海外で、粗鋼を製造、国内で電炉で製品に仕上げるのが経済的。石油化学も日本での経済合理性があるか分からない。
Q7:アンモニアから水素を取りだし水素で混焼させるのは?
A7:水素源として可能性は大きいが、10%のエネルギーロス。
Q8:原子力で製造する水素を利用?
A8:原子力で水素を製造する技術は実用化までの時間が必要。
Q9:エネルギーを自給自足するために、国内生産のグリーン水素と大気中の窒素でアンモニアを製造できないか?
A9:国内の再エネコストが高価。浮体式洋上風力を推進しているが、EEZでの浮体式は需要地から離れている。海底の直流送電も良いが、LNG,LPGの既存技術を利用し、浮体式アンモニア製造設備でアンモニアを製造し運ぶ方法は検討の余地があり。
Q10:アンモニアがどれ位使われるかの見通し?
A10:300万トン/2030年で発電量の0.8%、2050年に水素及びアンモニアで10%、2040年に発電で4−5%、産業で1−2%
Q11:MITがADDIS Energy社が鉱山からアンモニアを採掘(製造?)するニュースがあった。
A11:存じませんでした。地中に水素は存在するが、アンモニアは?
Q12:製造プロセスでエネルギーロスがあるがエネルギー収支は?。
A12:アンモニア製造で25%のエネルギーロス。LNGで10%の液化ロス、アンモニアの液体輸送に比べると、シクロヘキサン輸送だと脱水素を含め50-60%のロスなのでアンモニアが勝る。これまでのアンモニアは長期契約はなく、オープンマーケットで取引されてきたのが、長期契約で大規模な供給設備形成をすると、市場価格が低下する可能性はある。
文責:松本泰郎
講演資料:アンモニアが脱炭素で果たす役割と課題
posted by EVF セミナー at 14:00| セミナー紹介
2024年12月21日
EVFセミナー報告:感染爆発(パンデミック)は必ず起こる、コロナの教訓は生かされているのか !
演題 : 感染爆発(パンデミック)は必ず起こる、コロナの教訓は生かされているのか !
講師: 尾身 茂様 結核予防会理事長
聴講者数: 52名
・1978年 自治医科大卒業
・1990年 B型肝炎の分子生物学的研究により医学博士を取得
・1999年 その後厚生技官となり、WHO西太平洋地域事務局長としてマニラに赴任
・2009年 自治医科大地域医療学センター教授
・2012年 年金・健康保険福祉施設整理機構理事長
・2013年 世界保健総会会長
・2020年 新型コロナウイルス感染症対策本部新型コロナウイルス感染症対策専門家会議副座長
・2022年 結核予防会理事長
講演概要
1.はじめに
コロナは2020年1月に始まった。2月にクローズ船が横浜に停泊し船内で毎日感染者が出て日本中が大騒ぎだった。その頃の韓国ソウルのコロナ対策本部のヘッドクォーターはIT化していた。全く同じ時期の日本の対策本部は、専門家がいても、コンピューターもなくIT化もしていないので、膨大な量を手仕事でしなければならなかった。
2009年にメキシコで発生した新型インフルエンザHINIの総括があった際、PCR検査、医療体制も少なく保健所の機能も弱ってきているということで、国に対して提言書を出したが、政府がその中身をほとんど実行しないまま(仏作って魂入れず)、2020年のコロナへ突入し、近隣諸国に比べ圧倒的に準備不足で始まった。
2.我が国の対策の特徴
・感染症の世界規模での大流行の対応戦略
大別するとA.封じ込め、中国のとった対応に見られる徹底的に封じ込めて感染者をゼロにするケース。B.感染抑制、日本のとった対応に見られる感染者数を抑制し、死亡者数を一定数以下にとどめるケース。C.被害抑制、スウェ−デンのとった対応に見られる感染者数が増えることは許容し、重症者への対応に注力するケース。現在、多くの国では、少しずつC.被害抑制に近づいている。
・パンデミックの初期、我が国の専門家が世界に先駆けて直面した謎
感染が確定した人の接触者を徹底的に調べても、その人たちからほとんど感染者が見つからない。それなのになぜ感染者が急激に広がっているのか
・専門家が考えた仮設、この感染症は、クラスターを形成することで感染拡大。特に感染初期ではクラスターを制御できれば、感染拡大を一定程度制御できるという戦略。
・我が国のクラスター対策(さかのぼり接触者調査)の特徴
・共通の感染源を特定し、その場の濃厚接触者に網羅的な接触者調査を実施。感染者が確認できれば、入院措置等により感染拡大を防止
・3蜜などのクラスターが発生しやすい場の特徴を指摘することが出来、これにより、初期の段階から、市民に対して注意喚起。
・パンデミックの対応戦略
感染者数急増→接触者調査だけでは感染抑制不十分→緊急宣言や、まん延防止等重点措置などを組み合せて、感染者数を一定レベル以下に抑制。
3.我々の対策の評価
3年間のコロナ禍が我が国のGDPに与えたマイナスの影響は、累計では欧米のそれとはほぼ同水準であったが、欧米の先進諸国などと比べると人口100万人当たりの累積死亡者数が最も低水準であった。日本が死亡者数少なかった理由は
・市民の衛生意識が高く、行動変容の要請に多くの一般市民が協力してくれた。
・国民皆保険制度による医療のアクセスが良く、流行初期から感染者を早く探知できた。
・効果的なクラスター対策(日本独自のさかのぼり接触者調査)を実施した。
・保険医療機関関係者の献身的な努力
・政府と自治体の協議・連携が頻繁に行われた。
・緊急事態宣言のように感染者を減らす強い施策と感染者が落ち着いてきたところで、経済活動を再開し、次なる大波に備える施策で対応した。
4.我が国が直面した課題と一部の人々からの疑問
・政府と専門家の関係は適切・明確だったか
専門家のリスク評価とそれに基づく対策案の政府への提言(100以上)を政府が採用したが、採用しない場合もあり、採用しない場合の説明が不十分であった。専門家の意見を聞かないで決定したこともあったが、だれが意思決定しているかわかりにくかった。
・前のめりになった背景は、感染症対策について政府が主導しないのであれば専門家が主導する以外に手立てはなかった。
・我が国の医療制度の在り方が背景で医療のひっ迫が起きた。
・歓楽街や飲食を介しての感染が拡大の原因で家族内感染や院内感染の感染拡大は結果。
・国の強いリーダ−シップで、ワクチンの接種がスピーディーに拡大したが、PCR検査では国の強いリーダ−シップが見られず検査のニーズに追いつかなかった。
・緊急事態宣言が出ていない時でも高齢者の人は結構協力してくれた。緊急事態宣言を出すと若い人でも協力する傾向にあった。
・政府の有識者会議は22年6月に検証報告を取りまとめたが、これだけの複雑な危機の検証としては不十分である。
Q&A
Q1:我が国のコロナ禍の初期の対応は
A1:2012年の新型インフルエンザ(A/H1N1)対策総括会議報告書では、リスクコミュニケーションの在り方や保健所の機能強化、国と専門家の役割の明確化等、現在問題となっている様々な課題に対する提言がなされている。しかし残念なことに、ほとんどの教訓が活されずに今般のコロナ禍を迎えてしまった。準備不足で、ガイドラインがなく対応を現場の判断に任されていた。政府は20年2月のクルーズ船の対応に追われ、国内感染の対応が遅れた。死者数が増えたが、病床確保など保健、医療体制の構築に時間がかかり、感染者をみる病院も限られ、ワクチンもなく医療の逼迫を招いた。
Q2:コロナ禍とリスク評価についてお聞きしたい。
A2:リスク評価についての必要な情報へのアクセスが難しかった。西浦教授の何も対策を施さなければ、42万人の死亡が予想されるので、少しでもこの数を減らすためにみんなで対策した方が良いていうリスク評価があった。この件に基づき、緊急事態宣言時の記者会見で安倍首相は、専門家の試算では、私たち全員が努力を重ね、人と人との接触機会を最低、極力8割削減できれば、2週間後には感染者の増加をピークアウトさせ、減少にさせると述べている。リスクコミュニケーションの観点から、毎日の感染者数など断片的情報だけでなく、市民に全体像を理解納得してもらえる説明をする。2つ目は、状況が変化した場合にはその都度可及的速やかに全体像が分かりやすく説明する。
Q3:なぜ日本のワクチン開発、生産が遅れたか
A3:パンデミックが起きた場合、ワクチンの生産を100日間で生産する世界の約束がある。多くの国では、パンデミックを外交、教育、経済にも影響を及ぶ安全保障の一環としてとらえている。国内の製薬会社では、主な投資先は糖尿病薬やがん治療に向け多額の金が使われている。いつ起こるかわからないようなパンデミック用のワクチン開発などは、国主導で政府が一体となって、必要な体制を構築し、長期継続的にとり組む必要がある。
Q4:コロナ禍における専門家会議の組織と医師会、都道府県自治体との関係は
A4:医師会とは立場の違いがあったが、ほとんど同じ認識であった。
都道府県自治体が繰り返したハンマー&ダンス(対策強化と緩和の繰り返し)と保健所を含めた医療従事者の献身的な努力により諸外国の中で死亡者数が最低水準であった。とくに、現場の多くの情報は保健所から得ていた。
Q5:世界中でパンデミックが発生したので、それらの国の膨大なビックデーターをAIで解析などして、まとめられませんか。
A5:可能だと考えるが、しかし日本のIT化は道半ばである。AIで解析となると、医療について知見がない業者に丸投げの形になることが考えられる。いろいろな専門化の疫学情報を共有化することが課題で、それをまとめ上げる強いリーターシップが現れることが必要。
Q6: 今回のようなパンデミックが起きた場合の後継者は、いますか。
A6:今回のように個人ではなく、全国の感染症に強い組織、研究所とのネットワークなどで、システム的に対応するのではないか
Q7: 20代の女性の妊婦さんが心配していたが、今後も発生するのか
A7:新型コロナウイルスも野生動物との接点が原因となった可能性が大いにあり、人間と野生動物の距離が近い環境では、人畜共通感染症が生まれやすい。
講師紹介
・1978年 自治医科大卒業
・1990年 B型肝炎の分子生物学的研究により医学博士を取得
・1999年 その後厚生技官となり、WHO西太平洋地域事務局長としてマニラに赴任
・2009年 自治医科大地域医療学センター教授
・2012年 年金・健康保険福祉施設整理機構理事長
・2013年 世界保健総会会長
・2020年 新型コロナウイルス感染症対策本部新型コロナウイルス感染症対策専門家会議副座長
・2022年 結核予防会理事長
講師: 尾身 茂様 結核予防会理事長
聴講者数: 52名
・1978年 自治医科大卒業
・1990年 B型肝炎の分子生物学的研究により医学博士を取得
・1999年 その後厚生技官となり、WHO西太平洋地域事務局長としてマニラに赴任
・2009年 自治医科大地域医療学センター教授
・2012年 年金・健康保険福祉施設整理機構理事長
・2013年 世界保健総会会長
・2020年 新型コロナウイルス感染症対策本部新型コロナウイルス感染症対策専門家会議副座長
・2022年 結核予防会理事長
講演概要
1.はじめに
コロナは2020年1月に始まった。2月にクローズ船が横浜に停泊し船内で毎日感染者が出て日本中が大騒ぎだった。その頃の韓国ソウルのコロナ対策本部のヘッドクォーターはIT化していた。全く同じ時期の日本の対策本部は、専門家がいても、コンピューターもなくIT化もしていないので、膨大な量を手仕事でしなければならなかった。
2009年にメキシコで発生した新型インフルエンザHINIの総括があった際、PCR検査、医療体制も少なく保健所の機能も弱ってきているということで、国に対して提言書を出したが、政府がその中身をほとんど実行しないまま(仏作って魂入れず)、2020年のコロナへ突入し、近隣諸国に比べ圧倒的に準備不足で始まった。
2.我が国の対策の特徴
・感染症の世界規模での大流行の対応戦略
大別するとA.封じ込め、中国のとった対応に見られる徹底的に封じ込めて感染者をゼロにするケース。B.感染抑制、日本のとった対応に見られる感染者数を抑制し、死亡者数を一定数以下にとどめるケース。C.被害抑制、スウェ−デンのとった対応に見られる感染者数が増えることは許容し、重症者への対応に注力するケース。現在、多くの国では、少しずつC.被害抑制に近づいている。
・パンデミックの初期、我が国の専門家が世界に先駆けて直面した謎
感染が確定した人の接触者を徹底的に調べても、その人たちからほとんど感染者が見つからない。それなのになぜ感染者が急激に広がっているのか
・専門家が考えた仮設、この感染症は、クラスターを形成することで感染拡大。特に感染初期ではクラスターを制御できれば、感染拡大を一定程度制御できるという戦略。
・我が国のクラスター対策(さかのぼり接触者調査)の特徴
・共通の感染源を特定し、その場の濃厚接触者に網羅的な接触者調査を実施。感染者が確認できれば、入院措置等により感染拡大を防止
・3蜜などのクラスターが発生しやすい場の特徴を指摘することが出来、これにより、初期の段階から、市民に対して注意喚起。
・パンデミックの対応戦略
感染者数急増→接触者調査だけでは感染抑制不十分→緊急宣言や、まん延防止等重点措置などを組み合せて、感染者数を一定レベル以下に抑制。
3.我々の対策の評価
3年間のコロナ禍が我が国のGDPに与えたマイナスの影響は、累計では欧米のそれとはほぼ同水準であったが、欧米の先進諸国などと比べると人口100万人当たりの累積死亡者数が最も低水準であった。日本が死亡者数少なかった理由は
・市民の衛生意識が高く、行動変容の要請に多くの一般市民が協力してくれた。
・国民皆保険制度による医療のアクセスが良く、流行初期から感染者を早く探知できた。
・効果的なクラスター対策(日本独自のさかのぼり接触者調査)を実施した。
・保険医療機関関係者の献身的な努力
・政府と自治体の協議・連携が頻繁に行われた。
・緊急事態宣言のように感染者を減らす強い施策と感染者が落ち着いてきたところで、経済活動を再開し、次なる大波に備える施策で対応した。
4.我が国が直面した課題と一部の人々からの疑問
・政府と専門家の関係は適切・明確だったか
専門家のリスク評価とそれに基づく対策案の政府への提言(100以上)を政府が採用したが、採用しない場合もあり、採用しない場合の説明が不十分であった。専門家の意見を聞かないで決定したこともあったが、だれが意思決定しているかわかりにくかった。
・前のめりになった背景は、感染症対策について政府が主導しないのであれば専門家が主導する以外に手立てはなかった。
・我が国の医療制度の在り方が背景で医療のひっ迫が起きた。
・歓楽街や飲食を介しての感染が拡大の原因で家族内感染や院内感染の感染拡大は結果。
・国の強いリーダ−シップで、ワクチンの接種がスピーディーに拡大したが、PCR検査では国の強いリーダ−シップが見られず検査のニーズに追いつかなかった。
・緊急事態宣言が出ていない時でも高齢者の人は結構協力してくれた。緊急事態宣言を出すと若い人でも協力する傾向にあった。
・政府の有識者会議は22年6月に検証報告を取りまとめたが、これだけの複雑な危機の検証としては不十分である。
Q&A
Q1:我が国のコロナ禍の初期の対応は
A1:2012年の新型インフルエンザ(A/H1N1)対策総括会議報告書では、リスクコミュニケーションの在り方や保健所の機能強化、国と専門家の役割の明確化等、現在問題となっている様々な課題に対する提言がなされている。しかし残念なことに、ほとんどの教訓が活されずに今般のコロナ禍を迎えてしまった。準備不足で、ガイドラインがなく対応を現場の判断に任されていた。政府は20年2月のクルーズ船の対応に追われ、国内感染の対応が遅れた。死者数が増えたが、病床確保など保健、医療体制の構築に時間がかかり、感染者をみる病院も限られ、ワクチンもなく医療の逼迫を招いた。
Q2:コロナ禍とリスク評価についてお聞きしたい。
A2:リスク評価についての必要な情報へのアクセスが難しかった。西浦教授の何も対策を施さなければ、42万人の死亡が予想されるので、少しでもこの数を減らすためにみんなで対策した方が良いていうリスク評価があった。この件に基づき、緊急事態宣言時の記者会見で安倍首相は、専門家の試算では、私たち全員が努力を重ね、人と人との接触機会を最低、極力8割削減できれば、2週間後には感染者の増加をピークアウトさせ、減少にさせると述べている。リスクコミュニケーションの観点から、毎日の感染者数など断片的情報だけでなく、市民に全体像を理解納得してもらえる説明をする。2つ目は、状況が変化した場合にはその都度可及的速やかに全体像が分かりやすく説明する。
Q3:なぜ日本のワクチン開発、生産が遅れたか
A3:パンデミックが起きた場合、ワクチンの生産を100日間で生産する世界の約束がある。多くの国では、パンデミックを外交、教育、経済にも影響を及ぶ安全保障の一環としてとらえている。国内の製薬会社では、主な投資先は糖尿病薬やがん治療に向け多額の金が使われている。いつ起こるかわからないようなパンデミック用のワクチン開発などは、国主導で政府が一体となって、必要な体制を構築し、長期継続的にとり組む必要がある。
Q4:コロナ禍における専門家会議の組織と医師会、都道府県自治体との関係は
A4:医師会とは立場の違いがあったが、ほとんど同じ認識であった。
都道府県自治体が繰り返したハンマー&ダンス(対策強化と緩和の繰り返し)と保健所を含めた医療従事者の献身的な努力により諸外国の中で死亡者数が最低水準であった。とくに、現場の多くの情報は保健所から得ていた。
Q5:世界中でパンデミックが発生したので、それらの国の膨大なビックデーターをAIで解析などして、まとめられませんか。
A5:可能だと考えるが、しかし日本のIT化は道半ばである。AIで解析となると、医療について知見がない業者に丸投げの形になることが考えられる。いろいろな専門化の疫学情報を共有化することが課題で、それをまとめ上げる強いリーターシップが現れることが必要。
Q6: 今回のようなパンデミックが起きた場合の後継者は、いますか。
A6:今回のように個人ではなく、全国の感染症に強い組織、研究所とのネットワークなどで、システム的に対応するのではないか
Q7: 20代の女性の妊婦さんが心配していたが、今後も発生するのか
A7:新型コロナウイルスも野生動物との接点が原因となった可能性が大いにあり、人間と野生動物の距離が近い環境では、人畜共通感染症が生まれやすい。
講師紹介
・1978年 自治医科大卒業
・1990年 B型肝炎の分子生物学的研究により医学博士を取得
・1999年 その後厚生技官となり、WHO西太平洋地域事務局長としてマニラに赴任
・2009年 自治医科大地域医療学センター教授
・2012年 年金・健康保険福祉施設整理機構理事長
・2013年 世界保健総会会長
・2020年 新型コロナウイルス感染症対策本部新型コロナウイルス感染症対策専門家会議副座長
・2022年 結核予防会理事長
文責:立花賢一
posted by EVF セミナー at 15:00| セミナー紹介