2021年01月28日

EVFセミナー案内:2050年CO2ネットゼロに向けた次世代パワートレイン戦略とは?

WebSemiIcon.jpg 1月28日 EVF Webセミナーのご案内
演題: 「2050年CO2ネットゼロに向けた次世代パワートレイン戦略とは?」


講師:轟木 光様
PwCコンサルティング合同会社 Director

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<セミナーの概要>
欧州連合(EU)は、2050年までに域内で排出される温暖化ガス(主としてCO₂)を実質ゼロにする目標で合意しました。EUは率先して大胆な目標を採用することで環境関連の産業振興や雇用増につなげ、環境分野におけるビジネス競争力を高めることを目的のひとつとしています。
自動車関連産業も欧州を中心にCO₂ネットゼロを目指し大きく舵をきっています。その中で注目は、次世代パワートレインをどのように開発し、市場に投入していくのか?という点です。
本講演では、欧州で進むCO₂ネットゼロのロードマップを明らかにし、日本企業がどのように対応すればよいのかを説明します。

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日時:1月28日(木)よりWeb公開いたします
  場所:ご自宅のパソコンやスマホからご視聴お願いします
  参加費:個人賛助会員・ネット会員 1,000円、一般 1,500円
  (指定口座に振り込みお願いします。
   振込手数料は参加者様にてご負担をお願いします。)
  お申込み締切り:1月24日(日)
  参加費振込期限:1月26日(火)
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お申し込みは下記のURLをクリックして必要事項を記入し送信をお願いします。
セミナーの申込み : https://www.evfjp.org/postmail_semina/
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posted by EVF セミナー at 00:00| セミナー紹介

2020年12月24日

EVFセミナー報告:「日・米・中を中心とした今後の世界情勢の行方」

演題:「日・米・中を中心とした今後の世界情勢の行方」
講師:キヤノングローバル戦略研究所研究主幹、内閣官房参与(外交) 宮家 邦彦 様
Web視聴開始日:2020年12月25日(金) 
参加視聴者:54名
T. 講師紹介<講師略歴>
 ・78年3月 東京大学法学部卒
 ・78年4月 外務省入省
 ・86年5月 外務大臣秘書官
 ・96年7月 中東第二課長
 ・98年1月 中東第一課長
 ・98年8月 日米安全保障条約課長
 ・00年9月 在中国大使館公使
 ・04年1月 在大使館公使
 ・04年7月 中東アフリカ局参事官 

U.講演内容1.「地政学リスク」とは何か 
  地政学という言葉自体が乱用されている。
EVF関係者が疑うべきエコノミスト
・「地政学リスク」を多用する人 ・「陰謀論」を語る人 ・「運命論」を弄ぶ人 ・「結果論」しか言わない人
インテリジェンスを知らないエコノミストの説明
記者やエコノミストは自ら説明できない国際情勢のことを地政学的リスクと呼ぶ傾向にある。彼らは経済的合理性では説明しきれない複雑な国際情勢に出くわすと、苦し紛れに地政学的リスクを多用する。本当に意味が分かっているのか。
「経済合理性」と「地政学的合理性」は異なる。 
マネーは「経済合理性」で動く、パワーは「経済合理性」では動かない、エコノミストの最大の弱点はパワーの問題を「経済合理性」で説明しようとするから説明できなくなることだ。
地政学とは国家の地理的位置関係が国際政治に与える影響を研究する学問などと定義されている。

2.コロナで変わること、変わらないこと
コロナは疫病で「破壊者」だから何も生み出さず、どの国に対しても容赦なく、見境なく破壊するだけである。しかし破壊することで、すでにあった流れを加速し、多くの場合、劇症化するし、従って、技術革新や経済、政治、軍事面の「トレンド」はコロナで加速する。
・短期の経済的影響
ワクチンが出来たら多少変わるかもしれないが、今回のパンデミックは当分続き、希望的観測は捨てざるを得ない。
・短期の政治、軍事的影響
現職政治家はパンデミックにやられ、トランプや安倍元首相も退場した。
中国は1930年代の日本と同じような政治的過ちを犯す恐れがある。30年代の東南アジアと今の東南アジアと比較すると、共通点がある。強烈な新興国が台頭し、現状変更志向があり、米を過小評価し、米国の西太平洋における海洋覇権に挑戦する。米国はこれをどう見ているか。中国の台頭を恐れ始めている。30年代と似ている部分と似ていない部分がある。このコロナによって国際情勢はどの部分が加速化され、劇症化されるか。
・中長期的な大局観
現時点での国際政治のメジャーリーグは、米国と中国、ロシアである。日本やヨーロッパ、インド、イラン、トルコなどはマイナーリーグである。
ロシアの人口は日本よりも少し多く、GDPは韓国より少し上くらいで、それほどの国ではないが、なぜメジャーかというと、それはプーチンという天才的な政治家がいるからである。
米国の敵といえば、今まではソ連が最大の敵であったが、今の状況下では中国である。
自由主義的国際秩序の危機について、ブッシュ政権は2001年の時点でこれからは中国の問題だとわかっていた。その時起きたのが9.11のテロで中国の問題を先送りした。湾岸戦争から30年間近く中東で戦争してきた。このツケが今起こっている。もし中国への懸念を深めているとき、いま中東のどこかでどえらいテロが起きたら、米国の対中強硬姿勢がぶっ飛ぶということを、常にワイルドカードとして考えておく必要がある。

3.アメリカの大統領選挙について
・今年の選挙を見るときに、どうしても必要になるのが2012年と2016年の選挙に
なる。
2016年のクリントンが負けてトランプが勝った選挙を2012年オバマが勝った選挙と比較するとアメリカの西側は全く結果が同じで、全50州のうち44州は変わっていない。6つの州がどこかというとアイオワ、ウェストン、ミシガン、ペンシルベニア、フロリダ、オハイオである。なぜこんなことが起きたか。1996年から2012年にかけて、製造業の衰退により、5大湖周辺の工業地帯にいる低学歴でブルーカラーの白人男性らの怒りが高まった。1970年代は圧倒的に白人多数社会だったが、2050年になると白人がマイノリティになる。一人当たりの平均収入はアジア系が一番多く、次に白人でヒスパニック、アフリカ系となる。白人には富裕層もいるわけだから、超貧乏な白人も沢山いることになる。白人男性の自分達は忘れ去られたという絶望感、この恐怖がトランプ現象を生んだ。醜く、不健全で、無責任な白人ナショナリズム、ポピュリズム、排外主義、差別主義といった人間の暗黒面「ダークサイト」と呼ぶべき運動の結果がトランプを生んだのである。
・米大統領選:2020年11月18日現在
今回の選挙はコロナが起きて大統領の信任投票になってしまった。トランプはコロナについては、何もしていない。この状況下で600万票ほどの差がついたが、激戦州では僅差で負けてしまった。
バイデンが勝ったのではなく、現職のトランプが自滅した。トランプはこの選挙で前回より、数百万の票と少数派からの票を伸ばしている。ということは、トランプ現象、「ダークサイト」は抑えられていなく、米国内の極端な分断は増している。
・バイデン政権外交安保チーム
バイデン政権は常識的な正統派の政治エリートを採用したオバマ第三次政権である。不確実性は低くなったが、よくなる保証はない。オバマ政権時代この人たちで一度失敗している。
民主党はリベラリストも残っているが、枢要ポストは中道層のエリートの実務家で占められるだろう。バイデンは米国の分断に加えて、サンダースを取り巻く急進左派による民主党分断にも取り組まなければならない。

4.漢族中国の地政学的脆弱性
中国の将来を考える際の基本として中国人、特に漢族中国人の国家観、歴史観、民族観などを述べる。彼ら漢族が、自らの過去、現在、未来をどのような発想で捉えているのか、理解する必要がある。中国がいかなる歴史を歩んできたか、外部からの挑戦・脅威をいかに認識してきたかなど、彼らの国家観を知る必要がある。
漢族中国史の視点からみると、漢族にとって紀元前2世紀から南北朝の5世紀頃まで、外的脅威は北方民族だった蛮族が次々と侵入を繰り返したことである。こうした北方からの脅威に対応するため建設されたのが万里の長城である。そのあと大帝国の唐になる。しかし唐時代の8世紀後半に、中原と中央アジアを結ぶ回廊は北方のウイグルと南方のチベットに鋏み打ちされ、長く脅かされていた。これがまさに中国漢族の地政学的脆弱性であり今も続いている。
11世紀後半の宋の時代になると、周りが強くなり、漢族中国は小さくなる。
宋はやがて女真族の「金」に北半分を支配され、13世紀にはモンゴル族の「元」が中国全域を支配した。14世紀に漢族王朝の明が復活するも、西方はウイグルとチベットが勢力を拡大しており、元に比べれば支配領域は小さかった。
17世紀には満州族が「後金」を経て「清」を建国して、ウイグルとチベットを含む中国全域を支配した。やがてロシアが南下してウラジオストックを取り、日本も満州を占領した。
中国の漢族の領土は、周りの蛮族との力関係で決まり、周りが弱くなれば大きくなり、周りが強くなれば小さくなる。
いまの中国の北の蛮族はロシアである。帝政ロシアの70年代頃は仲が悪かったが、いまは中国の敵ではない。
ウイグルとチベットを掌中に収めたので、インドとの小競り合いがあるが、ヒマラヤ山脈が横たわるので、インドは脅威ではない。中国の南方での蛮族はベトナムである。ベトナムとは抗争を歴史的に繰り返してきたが、1979年のベトナムが勝利した中越戦争以来、陸地では戦いを交えていない。インドとの高山地帯を除けば陸の国境地帯で中国では軍事的脅威はない。
いま中国には、陸からの脅威がないのに、中国はなぜ膨大な軍事費を使い、たくさんの空母とミサイルを保有しようとしているのか、それは、海からの脅威に備えているからである。
今の中国で最も豊かで脆弱な地域は太平洋側の沿岸で、その海の輸送ルートを邪魔しているのは日米同盟だと中国は見ている。日米に対抗し、西太平洋上の覇権を争うことになる。

5.中国の経済政治発展モデル
経済が発展すれば、市民社会ができ中国を変え、民主化が促進されるだろうと考え、我々は希望を持って、中国に20年間投資した。ところが、結果は、経済は繁栄したが、独裁は継続したままであった。日本の場合は早くから気づいていたが、米国ではそれに気づいたのはオバマ政権の第2期目で、その頃から米国の対中政策は徐々に変化し始めた。トランプ政権はそれを引継いだだけである。バイデン政権が第3期オバマ政権だとすれば、第2期オバマ政権の対中政策とは基本的には変わらない。

6.中国の接近阻止/領域拒否
中国が軍事戦略のパワーを展開するための目標ラインとしての第一列島線の内側と小笠原からグアムへ向けての第二列島線の内側の西太平洋をすべて支配しようとしている。そして、自国の海域だと主張する。中国は太平洋を2分割し、米国は、台湾、朝鮮、日本から出ていってハワイに帰ってくれと言っている。
公海における航行の自由を中国は事実上否定し、西太平洋の力による現状変更を画している。
7.米中覇権争いの行方
・米国国防総省内での訓練の「米中戦争」のゲームで中国に勝てなくなった。
米国:高価、代替不能、有人、巨大、移動困難な、数量の少ない、プラットフォームに依存してきた。
その30年間に中国はどうしたか?
中国:廉価、無人、小型、精密誘導、使い捨て、移動に敏捷な、無数の兵器群で、米軍の接近阻止という米国の弱点を衝いた戦略を編み出した。
中国の勝ちである。
これが続くと第二列島線にも進出を許してしまって、米国も日本も海洋国家が成り立たな
くなり、海洋権益を守れなくなる。
中国の沿岸に何百、何千と配備されている命中率の高い弾道ミサイルを、例えは空母に200発同時に打ち込めば必ず空母は沈む。
いま時、必ず沈められる空母などいらないのだ。
我々も、中国の戦略に対抗できうる、廉価、無人、小型、精密誘導、使い捨て、移動に敏捷な、無数の兵器群を持ち、中国への抑止力とする「戦い方改革」をしなければならない。
これから10年間そのような方向で動かなければならないが、全然そのようになっていない。
・大国間戦争の意味:いずれも戦略的譲歩はしない。
中国は「力の真空」をずっと探していて、米国の関心が薄れたら「戦わずして勝つ」としている。
中国のような大国の場合、勝たしてくれない。戦えばこちら側にもダメージがでて、全ての目的を達成できなくなる。そこで優先順位を付けなければならなくなる。では、尖閣諸島はどうするか、これに優先順位を付けるのは難しい利益がある。米国が中東、特にイラク、アフガニスタン、シリアから撤退するのはある程度仕方がない。
中国はバイデンが親中派になるとは思っていない。
中国はあと10年以内に「中所得国の罠」に嵌る筈である。中国だけが経済理論から外れるわけがない。
この危機感を習近平がどれほど思っているかわからないが。

8.米海上戦力のローテーション 20100606−20110406
海上米軍の位置を示した地図がある。
地図は毎週更新される。2010.6.6から2011.4.6までの9カ月間について地図を重ねて動かしてみる。米国海軍は空母を11隻保有(その内4隻が実稼働)していて、ヘリ空母を含む20隻ほどが世  界中をローテーションで回っている。
2011.3.11の東日本大震災の時、米軍は友達作戦で日本の周辺に2隻の空母とヘリ空母1隻を配置し、東北の同胞を支援してくれたが、その時、ほかの2隻はインド洋に配備されていた。
もし、朝鮮半島で何らかの危機があって、同時期に中東や南シナ海で危機が起こった場合、米軍は中東に2隻を派遣するであろう。その結果、南シナ海と東シナ海は空になる。そのようなケースが危惧される。
V. 質疑応答
Q1. 日本は中国に対してどう対応していけばよいか?
 例えば、日中外相会談後の共同記者発表の場で飛び出した、王毅外相の発言について
正体不明の漁船が頻繁に尖閣諸島に侵入しているため、中国公船が必要な反応をしていると説明したが、茂木外相は反論しなかった。一言あっても良かったと考えるが?
A1. 一言あっても良かったと思うが、言っても言わなくても力関係が決まつたり、変わる
 わけでない。
 尖閣は我が国が実効支配しているのに、中国が手を出してきている。日本固有の領土と
して有効に支配してきたのであり、話し合いで解決する領土問題は存在しないとしている。あえて答える必要もなかったのだろう。
 
Q2.中国の軍備が強すぎ、日本近海の海上防衛の維持に力を入れる効果がどの辺にあるの
 か?
A2.攻撃は最大の防御である。防御は最大の攻撃にはならない。しかも防御は受け身だか
 ら、やたら金がかかる。日本では攻撃能力は駄目だという呪縛にかかってしまっている
ので、ミサイル防衛ならいいだろうということで、これに金をかけている。だが、ミサイル技術は日進月歩で既存のミサイル防衛システムが不十分になる可能性は常にある。また、イージスをうまく使えば、まだまだ使える。
 イージス艦を今6隻保有しているが、米国の空母11隻保有のうち実稼働が4隻と同じ
 ように、イージス艦10隻持っていても良くて3隻の実稼働になる。ということで、山
 口と秋田でイージス艦の負担を軽減するため、地上でミサイルを打ち落とせるように、
 地上配備型迎撃システム「イージスアショア」を配備しようとしていた。しかし、北朝
 鮮はすでに、現行イージスシステムの能力を超えるミサイルを持ち始めた。その陸上 
イージス施設に莫大な金をかけて、うまく使えるのかと考えた時に、どうしても意見は割れる。日本のように狭いところで、まして、ブースターを落としてはいけないなんて話になれば、どうしようもない。
攻撃は最大の防御であるとすれば、今はどうしたらもっと安上がりに、抑止力を維持できるかを考える必要がある。防衛費は5兆数千億円しかないわけだから、陸での防衛だけでは難しい。海上を選択したのは正しい。いずれにせよ、相手のミサイルも進化していくわけだから、それに対応できるように、日本のミサイルシステムも常に更新していく必要がある。北朝鮮のような普通じゃない国に対する戦略を考えるのは難しい。

Q3.韓国と北朝鮮とはどのような関係を作ったら良いか?
A3.非常に厳しい問題である。いま日韓関係は無茶苦茶である。また、北朝鮮との関係も
 良くない。
 本来朝鮮半島は安定して、統一し、独立して、民主主義で、法の支配があることが、
 あるべき姿ではある。そこに行くためには相当大きな長い距離がある。むしろそして
その距離広がっているように思える。いま韓国・北朝鮮の最大の問題は、冷戦後の米日同盟による安定の維持はもう終わるということである。朝鮮半島では歴史的な伝統的なバ
ランス外交、つまり最も強い国に朝貢することが、脆弱な半島国家が文化、言語を維持する最善の方法であった。戦ったら滅ぼされるわけだから。
韓国にしてみれば、中国が台頭してきたが、米国は頼りにならない。北朝鮮は核を持っている。されば伝統的「バランス外交」に回帰するしかないと韓国は考えているのだろう。これが韓国の現実であれば日米は、韓国が反対方向に行かないようすることしかできないのではないか。
北朝鮮にしてみれば、トランプは扱い易かったが、バイデンはトランプのような馬鹿
 かなことはしてくれない。かつ、韓国は全く信用できないし、中国は怖いわけである。
 当分は日本には靡いてこないが、北朝鮮がどこかで日本との関係改善を考えることは
 あり得る。とすればいつか拉致問題が花開くことになる。
 
Q4.持続的可能性や社会的平等の観点からみると、脱成長のコモン型社会に移行するのが
良いと斎藤幸平氏が社会主義的発想に近いことを提唱している。米国では資本主義に対して疑問が出てきている。中国はコロナを治めたが、社会制度としては良いと思えない。日本はこういう場面において、どういう方向性を目指すべきか?
A4.資本主義が修正資本主義を経て、共産主義に勝ち、アメリカの一人勝ちの時代があり、その後ネオリベラリズムが出てきて、富の再分配ができなくなり、資本主義の弊害が出てきて、再び平等性をより重んじる考え方が出てきた。これは当たり前のことだと思う。それを社会主義と呼ぶかどうか、ナショナリズムにもなり得るのではないか。
では中国をどこに入れるかというと、中国は現在までの思想史の潮流とは違う方向で動いている。国家資本主義そのものである。社会主義というよりは、重商主義、権威的な国家資本主義である。中国が旨くいったのは、自由、民主、法の支配、適正手続き、人権を無視したおかげであり、独裁的な権威主義により何でもできるので、旨くいっているだけである。現在までの思想史の流れと一緒にしないほうが良い。
中国は非常に単純化すれば、今までのやり方を14億の中国人がどこまで我慢するかである。
あんなに他人の言うことを聞かない中国人たちが、たった一人の言うことだけを聞き続けられるわけがない。いずれどこかで、行き詰まると思っている。日本についていえば純
粋の資本主義ではなく、むしろ唯一成功した社会主義国家ともいえるだろう。

Q5.日本の企業は中国に進出している。また、主要な貿易国でもあるが中国に頼っていいのか?
A5.1939年の技術的レベルの低い地域性の強い「ブロック経済化」とは違い、今世界ではデジタルブロック経済化が出来ている。米国を中心とするインターネットの世界と中国を
中心とするインターネットの世界という、デジタルブロック経済間の戦いが始まっている。いずれどちらかが覇権を握る時代が来る。国家安全保障上必要な技術、産業、応用については、中国とデカプリングするしかない。
 安全保障上の地政学的な合理性だと思う。
日本の場合、最先端なものは補助金を出しても自国でやるべきだ。逆に安全保障上問題ないものは、中国と自由に経済活動をするという二つの方法に分かれていくだろう。

Q6.中国外交はあたかも中国共産党の党内闘争の延長のように振舞っているように見  えるのですが、どのように評価しますか?
A6.中国外交部は政策実施機関に過ぎず、政策立案の権限は事実上持っていないので、単なる官僚の生き残りのための「付託」行動でしかない。

Q7.トランプ政権の中東での実績、就中、イスラエルの首都移転、湾岸4か国国交正常化をどのように評価されますか?
A7.基本的には過去20年間現実を追認しただけの話。パレスチナ内部の分裂は深刻で、
 アラブ諸国はとうの昔にパレスチナ問題に対する関心を失っている。アラブにとって
 敵はペルシャであって、ユダヤではないと言うことなのだろう。
文責:立花 賢一

講演資料:日・米・中を中心とした今後の世界情勢の行方
posted by EVF セミナー at 18:00| セミナー紹介

2020年11月26日

EVFセミナー報告:最近の極端気象と地球温暖化を考える

演題:「最近の極端気象と地球温暖化を考える」
 講師:東京大学大気海洋研究所気候システム研究系教授 木本 昌秀様
 Web視聴開始日:2020年11月26日(木)
 参加視聴者:47名

1.講師紹介
・1980年 京都大学理学部卒業、気象庁に入庁
・1985年 UCLA留学(〜1987年)
・1989年 Ph.D.(Atmospheric Sciences)
・1994年 東京大学気候システム研究センター助教授
・2001年 同教授
・2010年 大気海洋研究所副所長(〜2019年)
・専門は気象学、気候力学。コンピュータシミュレーションを駆使して異常気象、気候変動のメカニズム解明、予測に取り組む。
U.講演内容
<頻発する極端気象>
1.2018年には「平成30年7月豪雨」で死者・行方不明者合わせて281名、それに続く猛暑(公式記録で最高気温41.1℃) で熱中症死者1400名超。秋には大型の台風21号、台風24号が到来。「平成30年7月豪雨」・台風21号・台風24号の災害による保険金支払額は合わせて1兆5695億円で、東日本大震災による保険金支払額1兆2167億円を上回っている。
2.2019年には台風15号の関東上陸により千葉県で鉄塔2基倒壊・電柱1996本損壊、93万戸が停電し完全復旧に30日以上かかった。また台風19号による豪雨で信濃川や多摩川など71河川140箇所が決壊し、死者・行方不明者も合わせて108名となった。
  
<異常気象?極端気象?>
1.気象庁では「その地点、季節として出現頻度数が小さく平常的には現れない現象または状態。統計的には30年に1回以下の出現率の現象」を「異常気象」と定義し使用しているが、異常と正常の違いに関心がいき過ぎ、次も又発生しますから逃げてくださいよ、といったメッセージが伝わりにくいので、私は「極端気象」という言葉を使うようにしている。
2.例えば、東京の1965年から2018年までの7月の平均気温は、暑い年もあれば寒い年もありヒストグラムは正規分布に近い形をとっており、分布の30分の1以下の高い平均気温であれば猛暑と呼んでおり、30分の1以下の低い気温であれば冷夏と呼んでいる。つまり統計的には極端に暑い年や寒い年が何年かに一度の確率で現れるということで、それが正常な姿ともいえる。
3.寺田寅彦先生は「災害は忘れた頃にやって来る」とおっしゃられたが、災害は忘れた頃ではあるが必ずやって来るものであり備えが必要。加えて長期間に亘る地球温暖化の影響が重なって、極端気象がより発生しやすい状況にあり、今までの経験だけでは判断が難しい状況にある。

<地球は温暖化している>
1.1850年から2020年にかけての地球全体の平均気温の推移をみると、トレンドとしては0.73℃/100年の上昇と推計される。
2.これに大気中のCO2濃度の推移と人間活動によるCO2排出量の推移を重ね合わせると同じく上昇トレンドにあり、CO2は地表を温める温室効果があることから、少なくともグラフを見る限り平均気温の上昇と人間活動によるCO2排出量、大気中のCO2濃度の上昇には関連があることが推測される。

<19世紀末〜現在の気候変化>
1.年平均気温長期変化傾向(1891-2019年)では、地域差なく地球全体で上昇傾向にあることが伺える。
2.世界の年降水量偏差では、1891年から2019年通算の年間平均降水量からの差が年毎にプラスマイナスゼロの線を上下して推移しており、また観測された陸域の年降水量の変化(1901-2010年)は世界全体で増加した地域もあれば減少した地域もあり、長期増加傾向は気温のようにはっきりとは現れていない。降水量は時間的・空間的に局地性が強い性格の気候変数であるため、時間空間的に平均した統計では有意な長期変化傾向は検知されていない。

<世界の自然災害の推移>
1.自然災害は、極端気象が人の住む地域で発生し、その極端気象の影響で実際に損害を与えた場合に認知されるものであり、また対策を講じれば災害も防げるため、気候イベントと災害イベントは必ずしも一致しないが、ミュンヘン再保険会社が公表している災害イベント発生件数では、損害の比較的小さいものも含めてカウントしたときには増加傾向にあり(1980-2018年)、自然災害は増えているとの見方もできる。

<世界平均地上気温の将来予測>
1.コンピュータシミュレーションによって地表気温の推計を行うと、観測データと同様の上昇トレンドが計算されるが、人為起源の強制力を除き自然起源強制力のみで計算した場合には上昇トレンドはみられず、人間の活動が気温上昇に影響を与えていることが伺える。IPCCの報告書では、他の証拠とも合わせて「気候システムに対する人間の影響は明白である。」との強い表現でレポートされている。
2.将来の気候をシミュレーションすると、何も対策を講じなかった場合は今世紀の終わり頃に世界平均地上気温は産業革命以前に比べ4℃以上上昇すると推計されている。現在の地上平均気温は産業革命以前から比べるとおよそ1℃上昇しておりその4倍の水準。平均気温1℃の上昇でも前述したとおり猛暑になれば災害級の被害が発生している。世界平均では年間4℃の上昇であるが、地域的・季節的には気温上昇10℃を超える猛暑になってもおかしくない気候。一方対策を講じた場合には、パリ協定の目標である2℃以内の上昇に留めることも可能とのシナリオが推計されている。

<温暖化を止める緩和策>
1.過去数百年に亘る人間活動によりCO2排出量は累積しており、またCO2は大気中に長く留まる性質の物質で濃度も上昇しているため、地上気温の上昇をただちに抑えることは残念ながら困難。2℃目標に限らず、気温上昇を止めるためには、ゼロエミッション(人間活動によるCO2排出量ゼロ)、すなわち低炭素ではなく脱炭素を可能な限り早期に達成しなければならないことがわかっている。
2.CCSといった排出されたCO2を地中に埋める技術を用いれば、少しぐらいのCO2排出は許容されるのではないかとの見解もあるが、この対策を実行するためには大変なコストがかかる相当大掛かりな事業になるものと想定され、これに多くを頼るわけにはいかない。
3.我が国の電源別発受電内訳(2018年)では水力や太陽光といった自然エネルギーは18%しかなく、東日本大震災があったため原子力に大きく頼るわけにはいかず、島国であり他国からの電力供給も受けられないため、残り82%の電源をゼロエミッションにシフトしていくには相当の困難が予想されるが、地球温暖化を止めるためにはゼロエミッション達成は必須の条件である。

<温暖化に伴い、極端気候の増加が予測されている>
1.日本の年平均気温は長期増加傾向にあるが、年間降水量については長期増加の兆候がまだ検知されておらず、これは世界平均の傾向と同様。
2.しかし、例えば猛暑日の日数や日降水量200ml以上の日数の長期変化傾向をみると確実に増加しており、とくに降水については極端気象の変化を見たほうが長期の変動が探知しやすい。
3.気温上昇が進めば大気中の水蒸気量は増えるが、地球全体で平均すると気温1℃の上昇で増加する降水量は2〜3%である。しかし降水の場合は、上昇気流が発生した場所では雨が降り下降気流が発生した場所は乾燥するといった局地性が強いため、より雨の降り易い場所、季節に焦点をあて変化をみた方が長期の影響を統計的に探知し易い。
4.台風は、日本に上陸するのは年に2、3回で接近も10回もあれば多い方。大災害を引き起こすようなケースの発生頻度が少ないため、将来予測は、たくさんの事例を集め高解像度で定量的にシミュレーションしなければならない。

<極端気象イベントに対する温暖化寄与の評価>
1.地球温暖化の影響は、数十年かけてデータをみて長期傾向を取り出し初めてその影響がわかる。一つ々の極端気象イベントが地球温暖化のせいで起こるわけではないが、極端気象イベントやそれらに伴う災害に地球温暖化の影響が全く寄与していないわけではない。一つ々の極端気象イベントに地球温暖化の影響がどれくらいあったのかということを評価できれば、一般の理解も得られやすく、ひいては対策の推進に寄与できる。
2.地球が温暖化すれば毎年猛暑になるわけではないが、猛暑となる確率が増し、その程度も増加する。例えば日本における2013年の猛暑のケースで温暖化の影響がなかった場合と温暖化の影響があった場合の双方をシミュレーションすると、2013年に実際に観測された以上の猛暑となるリスクが1.3%から8.9%に増加するとの計算結果が得られた。
3.また「平成30年7月豪雨」の降雨量データを基にシミュレーションすると、温暖化の影響がなかった場合の降雨量は6〜7%少なくなるとの計算結果が得られた。地上気温が1℃上がれば大気中の水蒸気量は7%程度増すが、降雨量のシミュレーション結果はこの水蒸気量の増加量に相当し、まさに温暖化の影響が降雨量の嵩上げ効果に寄与しているといえ、近年発生した極端気象イベントに温暖化の影響が確実に寄与し、リスクが増し嵩上げしているといえる。

<直近予測〜リードタイムの確保>
1.温暖化が極端気象イベントにもたらす影響を踏まえ、様々な対策とリスクに対する備えが必要になってくるが、実際に生命を守るということになると極端気象イベント発生の直前に、可能な限り早く正確に予報を出すことが肝要。
2.気象庁の予報精度の質も増し、例えば台風については以前は3日前にしか予報できなかったが最近は5日前から進路予報・強度予報を出せるようになった。さらに気象状況を探知する様々な測器も開発・実用化され予報精度向上に努めており、技術のある方々には新たな観測技術の研究・開発に努められ、さらなる予報精度向上に寄与していただきたいと願っている。
3.天気予報は観測データをコンピューターに入力、数値天気予報モデルで計算し予報結果を出しているが、例えば遠方にある台風強度の画像解析による推定や降水予測に基づく避難のタイミングのガイダンス、あるいは予測を踏まえたビジネスへの応用等、様々な場面でAIの活用も期待される。気象庁では、気象情報のビジネスへの活用を目的とした「気象ビジネス推進コンソーシアム(現在会員数803)」を企画し立ち上げており、参考情報として紹介。

<まとめ>
(1)地球温暖化が進行中
(2)温暖化抑止にはゼロエミッションが必要!
(3)温暖化に伴い極端気象が増加する
−気温はますます高く
−豪雨は激しく、台風も強化
(4)温暖化の適応本格化
  −リスクマネジメント〜(気象)情報を上手に利用して
(5)防災対策はますます肝要に
  −これまでの経験に頼らない
  −最後は自分で判断
  −より良い予測は命を救う

V.質疑応答
Q1.ゼロエミッションが実現しても、既に地球の絶妙なバランスは崩れており元に戻らないと思うがどう考えるか。
→ゼロエミッションは人間活動によるCO2累積排出量を一定のレベルに留め、その下での(気温が上がった)環境で我慢しましょうとの政策。CO2累積排出量を削減する技術はまだなく、自然活動による削減に頼らざるを得ないため、足下では自然環境の改善・回復事業しか対策はないので、CO2累積排出量を削減するためにはかなり長期の期間を要する。もしかしたら将来、例えば人工光合成などの新技術が開発されるかもしれないが、我々の世代は我慢しなければならないと考えている。

Q2.東京近辺は、縄文海浸といって7000年前は海の底であったといわれている。地表の氷が溶けたことにより海水面が上昇したことが原因と思われるが、その当時にも温暖化の影響があったのか。
→もっと時代を遡れば地球は氷期・間氷期を繰り返し経験してきている。地球の自転軸と公転軌道の微妙なズレにより太陽に対する傾きが変わるため大きな気候変動が起きると考えられており、こうした環境変化によりCO2濃度も変わるが、気温変化の主たる要因ではない。氷期・間氷期は10万年間で10℃の気温変化であったが、足下の温暖化は人間活動の影響で気温上昇の変化スピードが速く、環境や生態系に大きなダメージを与えることを踏まえてその及ぼす影響を考えていかなければならない。

Q3.気象予報は気象庁に加え民間の予報会社の情報もあるが、退避行動を起こす場合、気象庁の発表をみて動いた方がよいか。
→今のところ災害に結びつく短期の気象予報は、世界でも国内でも気象庁が断トツ。基本的な気象の予測は気象庁の予報に基づくべきだが、どの地区でいつ避難するか等、ユーザーへのきめ細かな情報の提供等に民間の活躍の余地は大いにある。気象庁の予算は限られており、防災に結びつく気象予報に重点化しているので、例えば長期予報や周辺情報は、民間との役割分担を推進している。

Q4.太陽光発電と一体となったバラマキ型センサーなどの測器は気象庁がやっているのか
→ほぼ民間でやっている。AI技術により精度の劣る民間の観測データも活用できるようになったため、これらの民間の測器による観測データも受け入れている。気象庁は不特定多数に向けての予報をやっており、太陽光発電のセンサーのように特定の発電会社や需要者向けの観測は行っていない。

Q5.世界中の電源の中で石炭火力は4割あり、日本の技術をアメリカや中国で用いれば10億トン単位でCO2排出を削減できるとの意見もあり、石炭火力も活動すべきと思うがいかがか。
  
→ゼロエミッションを実現するための技術はとてつもなく難しい。今ある効率的な技術は有用だが、新たな技術の開発、イノベーションを真剣に考えるべきだ。政府にはこれらの技術革新や技術者の教育を後押しする政策を立案・実施して欲しいし、ベテランの技術者も後輩の指導・育成に注力して欲しい。日本人は、これまで技術と頭脳で世界と伍してきた。日本人のポテンシャルを活かせばゼロエミッションに向けた技術開発、イノベーションも達成可能と期待している。

Q6.最近の台風の進路予想をみるとフランスやイギリスの気象観測会社の予報も発表しているが、なぜ他国が日本の気象予報をしているのか。また各国の予報を比較するとどこの精度が高いのか。
→台風によってどの国の予報が一番よいかはコロコロ変わるものです。気象予報は大事な情報なので、各国とも政府機関が独自のモデルを持ち実施しており、全地球の観測データを用いて予報している。したがって他国の気象予報も可能なわけであるが、モデルで全地球のデータを用いてシミュレーションしているのは大気に国境がないため、全地球のデータを入力しないと自国の予報もできないことが理由。気象庁の予報精度は世界でも2、3番手のトップレベルで、トップクラスはほぼ一線で並んでいる。共通のモデルで世界一本化すればよいのではとの意見もあるが、各国のどのモデルにも各々優劣があり、観測精度を向上させていくためには、他国のモデルの進んでいるところを取り入れていくなど、お互いに切磋琢磨し精度を向上させていく方向がよいと考える。

Q7.「溶接、食品、物流などに使われる液化天然ガスやドライアイスなどを扱う日本の産業用ガス業界は恒常的にCO2不足に悩まされている。CO2は@溶接した金属の化学変化を防ぐガスとして使用、Aビールや炭酸飲料の製造、B農作物の光合成促進、C腹腔鏡手術医療用など幅広く使用されているが、昨今の通信販売増加により物流需要も伸びている。日本国内の年間需要は天然ガス約77万トン、ドライアイス約35万トンあり、全て韓国から輸入されている」と新聞報道されています。日本でCO2の回収・再利用を図るカーボンリサイクルの技術が確立されれば温室効果ガスの削減に大きく寄与し、産業用ガスの安定供給にも役立つと考えるがいかがか。
→対策技術は私の専門ではありませんが、例えば日本では発電量の8割近くを化石燃料に依存している現状ですので、CO2排出の削減のみでカーボンニュートラルを実現するのは大変困難だと思います。ですので、CO2を有効利用できるカーボンリサイクルの技術を推進することは大変重要だと思います。技術的なことに加え、コストや、量的にどの程度期待できるのかなど課題は多いと思いますが、有望な分野であることは間違いありません。

文責:伊藤 博通
posted by EVF セミナー at 18:00| セミナー紹介

2020年10月22日

EVFセミナー報告:「コロナの後に何が来るのか」

演題:「コロナの後に何が来るのか〜世界史の転換へ〜」
講師:元国立感染症研究所室長 元米国疾病対策センター(CDC)客員研究員 ウイルス学者 理学博士 
加藤 茂孝 様
 Web視聴開始日:2020年10月22日(木) 参加視聴者:63名

T. 講師紹介<講師略歴>
・1942年生まれ。三重県出身。東京大学理学部卒。同大学院修了。理学博士。
・国立感染症研究所 (1969-2002年) 室長、米国CDC(疾病対策センター)客員研究員(2002-2005年)、理化学研究所新興・再興感染症研究ネットワーク推進センター (2005-2015年) チームリーダー。WHO非常勤諮問委員、放送大学および東京大学医学部非常勤講師、日本生物物理学会運営委員、日本ワクチン学会理事などを歴任。元、ICD(感染症コントロールドクター)。現在、保健科学研究所学術顧問。日本ペンクラブ会員、日本医史学会評議員。
・専門はウイルス学、特に、風疹ウイルスと麻疹・風疹ワクチンの研究。
・胎児風疹感染のウイルス遺伝子診断法を開発して400例余りを検査し、非感染胎児の出生に繋げた。
・著書「人類と感染症との闘い」(丸善、2013年)。「続・人類と感染症との闘い」(丸善、2018年)。
・麻疹・風疹の日本からの排除、先天性風疹症候群(CRS)の根絶が終生の願い。
・感染症研究と社会との橋渡しに力を注いでいる。「科学・芸術・社会」懇談会世話人。

U.講義内容
◇コロナウイルスについての説明に始まり、「COVID-19の現状」、「根絶の可能性」、「どのように社会が変わるか?」について、ご講演頂きました。最後には、我々の心構えにまでお話し頂き、その後の活発な「質疑応答」に続きました。
◇コロナの状況は日々変わりますので、講師はセミナー直前まで資料の数字等をご修正頂き、更に当日のご講演でも誤解のないように、丁寧にご説明頂きました(講演時間:1時間55分)。
◇ご用意して下さった全52枚の一つ一つの情報がどれも「今の私たちには貴重なもの」で、整理してしまうには惜しく、長くなってしまいましたが、敢えて箇条書きに致しました。

<コロナについて>
*人間の一生とは、コロナウイルスの一生とは? コロナの名前は、王冠から。
*コロナウイルスは、4つの族に分類され、現在38種類が登録、SARS/MERS/COVID-19は、コウモリ由来のベータコロナウイルス属に属する。
*COVID-19は、コウモリ>センザンコウ?>ヒトの感染。世界初の同時感染が発生しており、現在致死率は2.9%(全感染者の累計で)にまで下がってきている。中国での発生時の対応が的確であればと悔やまれている。しかし、中国の科学者が早く発表してくれたお蔭で、情報は世界に伝わり、世界での対応が可能となった。
*「日本の現状」では、若者(致死率が非常に低い)は感染を広げない注意を、高齢者(致死率が高い)は感染しない注意が肝要。
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<1、COVID-19の現状>
*世界では(世界、米国、日本ともに)、感染者数は増えているが、死者数はそれほど増えていない。累積の致死率は下がっている。現在の日本の累積致死率は、1.8%で、ここ1〜2か月の患者では、1%を切っていると思われる。
*(1)中南米、南アジア等は拡大傾向であり、グローバル化の世界ではまだまだ終了とは言えない、(2)日本は、第2波の最中、(3)しかし、世界で医療崩壊は減っている。
*日本は、経済振興に偏り過ぎで、感染の再拡大に。しかし、PCR検査の増加、早期診断、医療情報の増加、により死者数は減少。
*全体としては、当初恐れていたよりは「重症化して死に至るのは少ない疾患」と認識されつつある。
*良く備えていた国の例として、韓国・台湾・独・プエルトリコ・フィンランドがあげられる。
*私見ながらと前置きされてはいるが、「日本は意外に健闘している」との認識。要因として日本の生活様式/国民皆保険/新型インフルでの経験から小規模ながらの対策準備/医療崩壊をギリギリで喰い止めた/ファクターX? ファクターXとしては、研究中であり来年ぐらいには解明されるだろうが、アジア人の遺伝的特徴、BCGワクチチン説、等。
*一方で、日本でのボトルネックだったのは保健所であり、今後の課題。
*今後の予想としては、(1)流行が終息する(ひとまず落ち着くも、ゼロになるわけではない)のは年内までかかるか?(2)3年(〜5年)は縮小しながら流行か? (3)季節性の風邪コロナウイルスに変わるのでは? こんな感じに傾きつつある。
*7種類あるヒト・コロナウイルスの歴史は、(1)〜(4)の風邪(1965〜2005)、(5)SARS(2002)、(6)MERS(2012)、(7)COVID−19(2019)であるが、COVID−19は、(4)の後ろの(5)風邪に変わるかもしれないと予測される。
*ワクチンには3種類、効果の強い順に弱毒性/不活化/成分があり、加えて特殊なものとして交差ワクチンがある。
*新型コロナのワクチンは各種試作中であり、日本政府は3種類の成分ワクチンを予約・支援しているが、実用化にまでは至っていない。過去のワクチン開発の教訓により、慌てて新ワクチンに飛びつくのは考えものと言える。
*ウイルスのスパイクが付くところがリセプターであり、スパイクに抗体がくっつき、細胞に入れなくすることを狙う。
*新型コロナウイルスがもたらす「3つの感染症」には、生物的感染症/心理的感染症/社会的感染症があげられるが、特に「世界同時の不安感の出現」が問題であり、「オープンな情報で、早く伝える」事が重要である。
*今回の対策で学んだ事は、4点。
(1)感染症はリスクマネッジメント、常に備えることが必要。恒常的な組織の提案が必要。日本にはその組織が無い。
(2)不安を減らすリーダーシップ、明確な方針提示が必要。情報、及び情報発信場所(1か所にして)の信頼性が大事。
(3)政治が科学の上に立ってはいけない。最終的には政治家の判断だが、科学者を利用するだけの姿勢はNG.
(4)現場経験者をリーダーに。台湾の例のように、政治と科学の両方を兼ね備えている人材が必要。文科省による学校の一斉休校も、準備が出来ていればもう少しうまくいけたはず。トランプ大統領の発言、行動が米国の惨状を招いた。

<2、根絶の可能性> 〜根絶の成功例は、天然痘〜
*天然痘は、人類を一番多く殺したウイルス。1145年BCから、その存在が記録されている。
*日本では、平安時代以来、天然痘による災異改元が12回繰り返された。
*世界では、1979年に天然痘根絶宣言。根絶の3条件は、患者の同定が容易/保菌者が人のみ/良いワクチン。
*根絶に成功した感染症は、天然痘(1980年)、牛疫Rinderpest(牛)(2011年)、野生型ポリオ2型(2015年)、同3型(2019年)。<同1型も残り2国であり、早晩根絶か>

<3、どのように社会が変わるか?>〜感染症が脅威の時代(死亡原因の第1位)〜
*家畜化が始まった15,000年前から1950年まで、感染症が死因の第一位。
*日本の主要死因の交代は、抗生物質の発見等により、1950年以降感染症から成人病、生活習慣病へ。
*とは言っても、新興感染症は数年おきに絶えない。(エボラ出血熱、AIDS,SARS,MERS,COVID−19等)
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*なぜ感染症が絶えないのかは、2点。(1)ヒトの感染症は、少なくとも75%が動物(コウモリ>猿>ネズミ)から。今後は、コウモリからの感染が多くなるのでは?人獣共通感染症で研究を進める。(2)人・モノ・金・情報の移動の大量・迅速化。それが世界同時不安を生み出す。
*21世紀の新興感染症は、世界で数年に1回出現と拡大。日本では、10年に1回程度(新型インフル、COVID−19)。
*武漢/石正麗氏:・・・・・人類の行為が原因で新型伝染病が相次いで発生したと見ています。(AFPBB,2020/8/28)
*感染症の出現の原因は、「人間の活動が背景にある」。(例:院内感染、血液製剤、動物市場等)。
*ヨーロッパにおける疫病の流行は、人間の活動が原因であり、例えば、ハンセン病は十字軍の移動、ペストは蒙古軍の襲来、梅毒は大航海時代以降で蔓延、天然痘はシルクロード経由で、結核は産業革命による都市への人口流入等。
*「ペスト」は、中世から近世に世界の歴史を変えた。理由は、(1)人口の激減――>産業革命、(2)ローマ教会の権威失墜――>宗教革命、(3)文化の開放――>ルネサンス、各国の国語の使用、(4)科学の発達。
*「ペスト」は、犯人捜しで、ユダヤ人(ペストの死者が少なかった事、金持ちが多かった事により妬まれていた)の迫害を引き起こし、欧州域内外でのユダヤ人の大々的な移動と虐殺が起きた。
*対ペストの「検疫」は、ベネチア関係の地中海の交易で、1377年に初めて、乗組員を40日間上陸させなかった(島で隔離)ことに始まる。
*アイザック・ニュートンの3大発明(万有引力/光の分光/微分積分法)は、ロンドンの「ペスト」の大流行時、ケンブリッジ大学が休校となり、田舎に帰ったニュートン22−23歳の時に、完成されたもの。
*「ペスト」と「COVID−19」の比較では、
(1)権威失墜:今回、WHOとCDCに疑問視か? また一部の非科学的指導者も、
(2)科学の発展:今回、IT,On−line生活が推進、及び感染症対策は国際協力が必要に、
(3)労働構造の変化:今回、貧富の2極化、ITなどの屋内労働者と屋外労働者の2極化、
(4)個人の確立:ペストでは、個人主義の発生・確立がなされたが、今回、国益優先、及び国際協調の衰退、
(5)世界経済:ペストでは人口減が起きたが、今回、3年程度の不況か、米中の2極中心か?及び サプライチェーンの自国化へ(一部の量でも部品を含め全てを自国で生産可への動き)、
(6)人口問題:ペストでは人口減が起きたが、今回は日本では「移民の拡大」が起こるかもしれない??
(7)感情:ペストではルネサンスへの方向付けになったが、今回は感情の世界化・一体化が人類で初めて起きた、
(8)変化のスピード:ペストでは1世紀単位であったが、今回は1−2年単位に。

*他にも、日本では、(1)押印の廃止の加速、(2)都市集中から、地方分散への可能性(しかしどうなるかは不明)、(3)感染症対策の重要性の再認識、常に備える事へ。(4)対面の重要性の再認識、On−line社会とどう調和させていくかは、今後の課題。
*「感染症は潜在化していた格差・問題点を顕在化させる」。新たな問題が生じたわけではない。
*即ち、人類への問いかけとして、(1)動物の生息地へのヒトの侵入、(2)気候変動による生物(ヒトも含む)の生息条件の低下。

<まとめ>
*寺田寅彦の随筆より「・・・・、正当に怖がることはなかなか難しい」――>コロナが終われば平和が戻るのではなくなった――>常に備える(リスク管理)
*マーク・トウェイン「歴史は同じようには繰り返さないが、韻を踏む」<講師の著書「続・人類と感染症の歴史〜新たな恐怖に備える〜」より>
◎私たちの心構えとして、1、常に備える(リスク管理)、2、歴史は同じようには繰り返さないが、韻を踏む。

V.主な質疑応答
Q1.新たな6人の内閣官房参与のうち、感染症対策として、川崎市健康安全研究所長の岡部信彦氏が任命されましたか、ご存知の方でしょうか?
→30年来の長い付き合いです。風土ウイルス、感染研でも一緒でした。又、WHOなど国際関係でも重なる部分が多いです。専門性があり、穏やかな人であり、期待して良いと思います。
Q2.米国のCDC(疾病対策センター)のような組織は、日本には出来ないのでしょうが?
→3年間のCDCでの経験から、日本にも同じような「本質的な、恒常的な組織が必要」と提案をしましたが、残念ながら、今のところは出来ていません。
Q3.そんなCDCが今回はあまり動けなかったと聞いていますが?
→CDCは、当初の技術的な失敗(初歩的なミスによるPCRキットの不良品)があり、NY市の第1波の最初の1月間に対応できなかった。CDCは、予算を減らされたり、トランプ大統領が全く相手にしない状態に陥っている。
Q4.第一波の後の第二波について、日・米の場合、見通せなかったのでしょうか?
→数理疫学者は第二波を予測していました。米国の場合、第一波が下がり始めて、早々に経済に舵を切り替え、日本の場合は、第一波がある程度落ち着いてから、経済に舵を切り替えた。
→数理疫学者の予測通り、どの国も第一波は抑えられたが、例えば欧州のように第二波に襲われているところもある。各国のそれぞれの政策によって、一気に緩めるか、そろそろと緩めるかは、異なる。徐々に山は小さくなるが、いくつの山がこれからあるかは、それぞれの国の政策次第となろう。
→今のところ、医療崩壊は何とか防いだし、第二波でどこも医療崩壊を起こしていないし、今後も起きないのでは。
Q5.感染症の流行が、社会が大きく変わるトリガーになる可能性があることが良く分かりましたが、ある程度の濃度のウイルスに対して、感染しない場合があると理解してよろしいでしょうか?   
→感染するかしないかはそのウイルス毎に異なります。例えば麻疹は1人から12-15人位感染させます。この数値を再生率と言います。新型コロナの場合、2前後と考えられるので、1人の感染者から2人が感染するくらいです。これが社会的な政策で1以下になれば感染が終息します。
ウイルスの感染可能濃度もウイルス毎に異なっています。下痢を起こすノロウイルスなどは低い濃度でも感染を起こす厄介なウイルスです。コロナウイルスの場合にはまだ算出されていないと思います。//

講演資料:コロナの後に何が来るのか〜世界史の転換へ〜
                           文責:三嶋 明
posted by EVF セミナー at 17:00| セミナー紹介

2020年09月24日

EVFセミナー報告:「日本がこの30年間 GDPがなぜ成長しなかったか」

演題:「日本がこの30年間 GDPがなぜ成長しなかったか」
 講師:ビジネス・ブレイクスルー大学大学院経営学研究科教授 工学博士 宮 正義様
 Web視聴開始日:2020年9月24日(木)
 参加視聴者:〇〇名

1.講師紹介
・1966年 京都大学工学部化学工学科卒業
・1966年 フルブライト留学生として米国イリノイ大学大学院に留学
・1970年 旭化成株式会社入社
      HDPEの製造、ポリオレフィンの研究開発(15年間)
      LSIデサインセンター、LSI情報技術研究所(10年間)研究開発本部(8年間)
・2003年 技術経営研究所設立(研究開発コンサルタント)
・2005年 立命館大学大学院テクノロジー・マネジメント研究科 客員教授、教授
・2016年 ビジネス・ブレイクスルー大学大学院経営学研究科 教授

U.講義内容
<現状>
この30年間、日本はGDPがほとんど伸びておらず、人口も増えていない。
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<30年間の停滞の本質は何か>
1.日本経済の振り返り
平成30年間の日本経済を振り返ると、まずは1985年のプラザ合意により1ドル240円が2年後には120円の超円高になり、日本経済が深刻な円高不況になったことが停滞の発端。この結果大規模な財政出動と大胆な金融緩和を余儀なくされ、その後の巨大なバブル発生の原因となった。
続いてアメリカ主導による1986年の日米半導体協定と1991年の輸入割当により、日本の半導体産業は競争力を失うこととなる。
円高による産業の空洞化と安い材料の輸入で製造業、第一次産業等壊滅的打撃を受けた。
戦後日本の経済復興の要因であった日本型金融システム(不動産を担保として低金利で資金調達が可能)だが、バブル崩壊により不動産の単なる担保割れの問題が銀行の自己資本減少、銀行による「貸し渋り」「貸し剥がし」となり多くの企業の倒産に繋がった。今までに経験したことのない不良債権処理で専門家の意見は大きく割れ、対応が遅れに遅れた。
2.人口減少
一人あたり実質GDPが不変であるとすると、GDPは人口の増減に規定される。人口が減少しているのでGDPも減少することとなる。
3.低い労働分配率
企業の売上高は殆ど同じだが、経常利益と内部留保が大きく伸びた。労働分配率の低下と非正規労働者の比率がアップし、平均賃金が欧米と比べて日本だけが低下している。
4.研究開発の効率の悪さ。
米国では研究開発費の支出が多い企業ほど生産性の成長率が大きいが、日本では研究開発費が大きいものの革新的な商品開発が少なく生産性向上に結びついていない。
5.低い国内投資額
実質GDPに占める日本企業の国内設備投資額は、1980年代までは17〜18%だったが、2000年代以降は12〜13%まで落ち込んだ。

<提言>
内部留保の一部を従業員に還元して、賃金をアップ。
労働分配率を67.7%から70%台にアップ。
国内への設備投資の増加。
国内消費を増やすためには内部留保を国内設備投資に回し、国内賃金アップが必要。
優等生であるフランスの施策を参考に少子化対策の実施。
子育てに優しい国になれるように、国民全員で努力。

V.主な質疑応答
Q1.日本が不良債権問題等に十分な対応ができていなかった背景には、日本政府が問題を軽く見ていたとか、日本人が低賃金でも我慢するという精神構造があるのでは無いか。
→日本政府の役人は過去に起こったことを調べて対応するという能力には優れるが、全く経験したことがないような事象に対しては優秀性を発揮できなかったのではないか。

Q2.日本だけがこれほど成長がないという原因は、政府の施策のまずさと人口減少以外に起業家マインドの欠如、DX化の遅れ、パラダイムシフトへの乗り遅れ等の日本特有の構造的な問題があるのでは無いか。
→日本の産業の育成が米国に押さえつけられたということが一番の大きな要因であるが、確かに日本ではベンチャーの育成やイノベーションの活用ができていないのが問題。

Q3.効率が悪いとはいえ、多額の研究開発をしている日本にはまだ期待が持てそうな気がするが・・・
→日本の研究開発も他社のマネをするのではなく、世の中に無いモノの開発等の独自性・クリエイティビティを発揮するように努力しないといけない。

Q4.労働生産性のアップのためには、労働市場の流動化が必要ではないか。
→競争力の無い低い生産性の領域から競争力のある領域へのシフトが必要。政府は競争力の無い領域の保護に力を入れるのではなく、競争力のある領域への労働力のシフトのための人材の再教育に力を入れるべき。

Q5.人からAIに労働がシフトすると、労働分配率がますます下がるのではないか。
→そうならないように新しい仕事に対応できるように再教育が必要。特に40代、50代の人の再教育が必要。

Q6.日本が30年間GDPを成長できなかった理由が理解でき、心のもやもやが晴れてきた気がいたしました。政府、国民とも、これに対する問題意識が薄く、目標設定と改善への取り組みが必要と思います。
→今後の日本の目標設定と改善策はぜひ必要と思いますが、非力な私には講演でこの点を述べることが出来ませんでした。

Q7. 貿易自由化(グローバリズム)の錦の御旗の本家本元が耐えきれず自国第一に転じざるを得なくなったいまこそ、我が国は我が国に日本第一に立ち返る道はないものでしょうか。
→現在の米国と中国の経済的、政治的対立は、35年前の日米の関係と類似していると思います。日本は米国の強権に屈してプラザ合意以降の展開になりました。中国は日本と異なって米国に対抗しようとしており、この摩擦は今後10年以上続くと思います。米国は段々競争力が弱くなっても、自国が世界一でないと許せないと思う人が多い国です。日本第一でなく、米中の狭間で近隣諸国と協調して段々日本独自の政策を展開すべきと思います。

Q8.わが国の閉そく感の対価として、米国民は経済成長に見合う幸福を享受しているのでしょうか。
→今のアメリカの大統領選挙戦をみれば、国内の分断が激しく共和党支持者と民主党支持者共に不満が渦巻いています。

Q9.プラザ合意以降30有余年、現在の円市場は概ね105円、現在の円相場はなお強いられたものなのでしょうか。
→経済の専門家でも為替相場の動向は、政治的・経済的な変動要因が多過ぎて予測できないと思います。個人的には100円〜110円が妥当かと思います。以前79円の時もありました。アメリカ政府の意向は、円相場に陰に陽に反映しているかも?

Q10.日銀の調査研究で、「先進国の中で、生産年齢人口一人当たりのGDP成長率は、日本が一番高い。」との視点もあるように思いました。
→私が調べた日銀のワーキングペーパーシリーズには、その様な記述はありませんでした。生産人口一人当たりのGDP成長率が、日本が一番高ければ30年間のGDPの停滞は無かったと思います。

文責:桑原 敏行

講演資料:日本がこの30年間 GDPがなぜ成長しなかったか
posted by EVF セミナー at 16:00| セミナー紹介

2020年08月27日

EVFセミナー報告:「グリーン・リカバリーの中で進める脱炭素化」

演題:「グリーン・リカバリーの中で進める脱炭素化」
   〜始まったコロナ後の経済回復、グリーン・リカバリーの議論〜

講師:公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)気候エネルギー・海洋水産室長 山岸尚之様                
Web視聴開始日: 2020年8月27日(木)
視聴者予定数: 45名
講師略歴:
 •2001年3月に立命館大学国際関係学部を卒業。
 •2003年5月に米ボストン大学大学院にて、国際関係論・環境政策の修士号を取得。
 •卒業後、WWFジャパンの気候変動担当オフィサーとして、政策提言・キャンペーン活動などをはじめ、国際的な提言活動に携わる。2020年より現職。
 •著作:諸富徹・山岸尚之/編(2009)『脱炭素社会とポリシーミックス』日本評論社など
 •その他:外務省・気候変動に関する有識者会合(2018年1月〜4月)など

講演概要:
講師の山岸尚之氏は、気候変動に関するペシャリストで、EVFにおいてもこれまでCOPの報告など4度にわたりご講演をしていただいている。今回はコロナ禍後の、脱炭素化を目指す経済回復(グリーン・リカバリー)のグローバルな動きについてお話しいただいた。
コロナ後の経済回復について他の国々における活動を詳しく述べられ、遅れている日本の意識改革を強く求める講師の思いが伝わる内容であった。
1. 感染症拡大に起因する経済危機のCO2排出量への影響
今回のコロナ禍によるCO2排出量は8%の減少率(1日あたりでは17%減の日もあった)になり、絶対量としてリーマンショック時の6倍、第2次世界大戦後の減少をも大きく上回る。しかしながら、このまま経済回復すれば元に戻るだけとなる。
大気中のCO2濃度への影響は平均414ppmをほんの少し減らすだけとなる(温暖化を少し遅らせるだけ)。
2. グリーン・リカバリーの国際的な議論動向
欧州委員会は4月9日に欧州グリーンディール(COP25において環境保護施策を議論)をコロナ後の経済復興の中心とすべしと提言。7月21日には欧州理事会で7年間の投入予算を合意。
これら欧米の素早い対応は、コロナ以前よりグリーン対応による経済競争(攻勢)力をどうするか考えていることによる。
講師から、具体的な例としてフランスのエールフランスに対する支援の条件としてCO2削減目標や持続可能な代替燃料の導入などを入れたこと、カナダの大企業の支援策に気候関連情報開示を義務付けたことなどが紹介された。
欧米の企業や自治体などの非国家アクターについても述べられ、あの米国においてさえも300社に以上が賛同している。
日本JCI(気候変動イニシアティブ)も国に訴えている。
3. 日本の対応
わが国では、新型コロナウイルス感染症緊急経済対策が4月7日、その改訂版が4月20日に発表されたが、感染防止対策と雇用・事業維持の緊急フェーズや経済活動回復とサプライチェーンやDX加速などのV字回復フェーズをあげ、気候変動対策などのグリーン・リカバリーのビジョンはほとんどない。ヒアリング段階で日常的な援助を求める声が多かったせいかもしれないとのこと。 
国際的な経済競争力を高めるためにも、国内におけるグリーン・リカバリーを目指す議論を増やしたい。講師からは、IEAの持続可能な回復プランや、オックスフォード大学の研究チームの示す政策分野がヒントとして示された。この中で建築物に注目すれば断熱効果による省エネ、雇用拡大が期待されるのではないかという。
更に注目しているのは、日本のエネルギー基本計画である。2018年に見直す年であったが2015年の案をそのまま踏襲している。現状に合っていない原子力の割合や国外から注目されている火力発電の割合の見直しがある。
防戦一方の日本の温暖化防止対策だがこの機にグリーン・リカバリーを皆ですすめようと締めくくられた。
4. Q & A
 Q1: CO2の影響のところで、排出量が減ったのにCO2濃度はほんの少ししか減らないとあった。温暖化防止には蓄積されたCO2を減らすこともクローズアップすべきでは。
 A1: CO2の寿命は長く、急には止められない。言われるようにCO2濃度を下げる方に注目してもらえれるようにしたい。
 Q2: 効率の悪い小規模石炭火力を廃するなどと言いながら、追浜大規模火力発電所を作ろうとしている。2050年までに火力発電をなくせるとは思えない。
 A2: 日本のエネルギー政策は3E+S(Energy Security, Economy Efficiency, Environment, Security)であり、石炭は資源が偏在しないことや安いことがあてはまる。ガス化や再生可能エネルギーでやや遅れていることもあり、石炭に執着があるようだが世界的な動きに合わせて変わらなければならないであろう。
 Q3: 欧州では車はEVへと転換しているが、日本ではコロナ後もEV転換の声が聞かれないが。
 A3: 欧州ではコロナ以前からEVについて議論していたので、グリーン・リカバリーに合わせた。日本では議論が進んでいなかった。
 Q4: 航空会社への支援条件として、2%の持続可能な代替燃料の導入とあるがどんな燃料になるか。
 A4: ICAOはカーボンニュートラルを進めており、CO2増加分を代替燃料とカーボンオフセットで賄おうとしている。いくつかのバイオ燃料を混ぜて使うことになろう。
 Q5: ユーグレナによる航空機燃料が研究されていると聞いている
 A5: 詳しいことは聞いていない。航空機の電動化は無理と言われているが、最近小型機の電動化の話がある。
文責:津田俊夫

講演資料:グリーン・リカバリーの中で進める脱炭素化
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2020年07月23日

EVFセミナー報告:「改革」のタイミングと内容は適切?これからの水産業と魚食文化を考える

演題:「改革」のタイミングと内容は適切?これからの水産業と魚食文化を考える 
講師:東京大学大学院農学生命科学研究科 教授
   八木信行様
Web視聴開始日:2020年7月23日(木)(約2週間)
視聴者:52名
 
T.講師紹介
八木先生は、1987年に東大農学部水産学部をご卒業後、農林水産省に入省。1994年にはペンシルバニア大学のMBAを取得。2008年から東大の生命科学研究所で漁業経済学や農学一般を研究され、学界・官界・ビジネス界で幅広い経験をされている。日本の水産業に対する考察・提言をご講義いただいた。

U.講演概要
導入部分で世界における天然漁獲と養殖の推移を確認し、各国漁業の特徴を踏まえ、日本が直面している漁業改革の問題点に迫った。2018年12月に漁業法が70年振りに改正され、今年の12月に施行される予定である。改革の要点は三点ある。
(1) 一つは、経済効率を高めることを重視して、「漁場が適切かつ有効に」利用されていない場合には、漁協以外の民間参入を認めること。
(2) 二つは、乱獲を防ぐため、条件が整った魚業種については、漁船隻数及び漁場の制限の従来管理に加え、船舶毎の漁獲を割当制にしたこと。
(3) 三つには、密漁防止のため罰則を三年以下の懲役または三千万円以下の罰金とすること。
現行の漁業法は、江戸時代から続いていた慣習を明治時代に立法化したもので、浜の秩序を維持し漁場を保全するために役立っているとの肯定的な見方は多いが、一方で(秩序を維持しすぎて)新規参入を阻害しているとの否定的な見方もあり、多様な意見が存在している。
このような中では “ゼロ”か“1”かの判断を求めてイデオロギー的な対立になることは時間のムダ。ゼロでも1でもない最適な解を求めて新漁業法の改革をすることが課題であった。その基準は、経済・社会・環境のバランスを考えていくことである。
以上、多岐にわたる分野に関連し、しかも複雑に利害が絡み合う水産業のお話をわかり易く、様々な蘊蓄も交えてご説明いただいた。その蘊蓄をいくつか紹介しておく。
*イカ・サンマは1〜1.5年と寿命が短いので、今年海にいる親魚の数から翌年の魚の数は予測が難しい。しかしマグロは7〜8年は生存するので多少の予測が可能。魚の中には、資源管理を人間が行うことが困難な種類と、比較的可能な種類がいる。
*ノルウェーは1980年代にサケ養殖を始めて、それまで塩漬けして新巻として食べられていた鮭を刺身で食べられるよう、日本・アジア・アメリカ向けに出荷した。その技術はチリに移転されている。天然のサケは寄生虫が怖いため刺身で食べる習慣が90年代までの日本にはなかったが、寄生虫フリーの養殖魚がマーケットに浸透し、新しい需要を作った。
*鰻が高いと言うが、江戸時代の鰻の価格は蕎麦の5倍ほどだったので、うな重が現在約3000円でも物価水準価格として妥当だろう。90年代は、ヨーロッパ産の稚魚を使った養鰻業が中国で盛んになり加工鰻が大量に日本に輸入されたためウナギの蒲焼きが1000円程度であったが、鰻としては安すぎたと言える。

V.講演の内容
1. 世界の漁獲高と各国漁業の特徴
(1) 国連食糧農業機関の統計によると、世界の漁獲高のうち、天然漁獲は1950〜1980年代に伸びている。船を造ればその分漁獲量が増えた時代だったが、1990年代以降は横ばいである。
養殖の方は、1990年頃から漸増している。エサを必要とするブリや真鯛等はそれほど数が伸びていないが、エサを必要としない貝類(ホタテや牡蠣等)が伸びているためである。
一方、日本の天然漁獲は1985年代半ばをピークに漸減している。養殖も1970〜1980年代がピークであり、以降はほぼ横ばいである。生産減のパターンは日本の農業も同じ。
天然漁獲はドイツ、イタリア、スペインなどの先進国は皆減少している。労働力が工業やサービス業に流れている。
中国は、1980年代半ばに天然漁獲が急増した。1990年代からは養殖も急増している。内水面にある池で、淡水魚(エサは植物)を養殖した影響が大きい。インドネシアやインドも漁獲量は近年伸びている。
まとめると、途上国は生産を伸ばし、先進国は生産を減少させているのが水産に関する世界の趨勢。
(2) ノルウェーは先進国の中でも減少幅が少ない。天然漁獲が長期的にそれほど減少しておらず、養殖で“ノルウェー・サーモン”を開発し成功している。以前はアラスカ産の塩鮭を新巻として売っていたが、2000年頃養殖化して生鮭を日本・アジア・アメリカ市場に出荷した。養殖の過程で、寄生虫を排除し、新たに生鮭食文化を創り出した。その技術は、チリにも移転されている。

2.「なぜ日本で漁業の生産量が減少したか」の課題に対する需要と供給面からの考察
経済学では、需要が生産量に大きく影響するとされる。漁業では需要の減退(=魚離れ)が大きい。水産物の輸入も2000年代から減少している。輸入しても売れない、漁獲しても売れない、といった声は業界内で多い。
(1) 漁業資源学の立場からは、漁業生産量=q×努力量α×資源量βである。
       q定数 α・β無視できる乗数
      漁業者の数が減っていることに伴う努力量の減少と、資源量減少の双方が生産量に影響していることがわかる。就業者の統計を見ると、日本の場合は漁業者は明らかに減っている。資源量は、減っている魚種も多いが増えている魚種もある。減っている理由は気候変動、過剰漁獲、沿岸開発など様々だが、どの要素がどの程度効いているのかといった研究はなされていないのが現状である。
(2) 以上考えると水産業の場合、消費者・流通(需要)そして供給者の立場から見ても、産業を強力に持ち上げる材料に乏しい。消費者の立場では、人口の減少・老齢化等で魚離れが進んでいる。流通の段階では、スーパーが売残りリスクを避けて取扱品目を限定し、人気魚のマグロ・はまち・鯖・鰻・サケ等に力を注いでおり、不人気なシイラ・サメ・エイなどは店頭に並ばない。日本近海では150−200種ほどの魚が獲れるが、スーパーに並ぶのはその1割にも満たない種類。あとは非食用に回っている。供給も、輸入量の減少・船員の高齢化・船の老朽化等、課題は多い。
3.日本と漁業先進国ノルウェーとの漁業比較
日本における漁業の生産現場では、流通や加工を含めてトータルで見たときに、効率化が不足していると考えられる。例えば、日本での水揚げは小型船を一人で繰り人力で行うが、陸揚げやセリは多数の関係者が関与する。ノルウェーにも日本のような小型船は多く、彼らは日本と似たような効率の低さであろうが、大型船の操業は極めて効率的。漁獲物の陸揚げ作業から加工から梱包まで自動化されているため、雇用人数が非常に少なく、遙かに経済効率性が高い。日本の場合、消費者価格を100として漁労者25、中間流通業者35、小売業者40の取り分と言う。ただ経済効率性を優先させるのか、雇用を優先させるのかについては、双方賛否両論がある。ゼロか1かの議論をして合意形成は図れないのが悩ましいところ。

4.新漁業法改革の要点
今年12月に施行予定の新漁業法は、水産業の成長産業化をめざす点からは産業政策であり、経済効率の向上を図るものだが、改革の要点は漁業権をどう考えるかで様々な意見がある。改革の要点は次の三点である。
(1)一つは、経済効率を高めることを重視して、「漁場が適切かつ有効に」利用されていない場合には、漁協以外の民間参入を認めること。
(2)二つは、乱獲を防ぐため、条件が整った魚業種については、漁船隻数及び漁場の制限の従来管理に加え、船舶毎の漁獲を割当制にしたこと。
(3)三つには、密漁防止のため罰則を三年以下の懲役または三千万円以下の罰金とすること。
現行の漁業法は、江戸時代から続いていた慣習を明治時代に立法化したもので、浜の秩序を維持し漁場を保全するために役立っているとの肯定的な見方は多いが、一方で(秩序を維持しすぎて)新規参入を阻害しているとの否定的な見方もあり、多様な意見が存在している。

5.改革に対する様々な意見
 *賛成:養殖などに民間企業が参入すれば、浜は活性化する。
反対:民間企業は、漁場条件の良い所にしか参入しない。しかも、すぐに撤退する。
 *賛成:民間企業の方が販売チャンネルや新商品の開発力があるので、漁業の付加価値を高められる。
反対:浜と東京本社の利益配分が問題で、民間は本社へ利益を持って行く。
 *賛成:科学に基づく資源管理を強化できるし、資源の保全や維持が容易になる。
  反対:科学には限界があるので、頼りすぎは危険である。現場感覚も大事だ。
 *賛成:政府による資源管理で現場をコントロールすると、ガバナンスが向上する。
反対:日本のような漁船数が多い国は、政府による細かい管理は困難であるため、日本の伝統であるボトムアップ管理を活用し、社会基盤を評価すべきである。

6.多様な意見を踏まえた論点
   視点を変えて賛成・反対意見を整理すると、下記が論点になる。
   (1)雇用を守るのか? 経済効率を上げるのか?
   (2)環境を守るのか? 経済効率を上げるのか?
    (3)政府が漁業者に配分する対象 欧米:漁獲枠 日本:漁場使用権
       漁業者が保全しようとする対象  
             欧米:漁獲対象資源 日本:漁場の環境(森川海)
  これらに対して、八木先生の見解は、漁業者+地域全体で監視しているのが日本漁
業であって、関係者の人数が漁協レベルの200人程度なら環境問題の解決は可能で
ある。官民一体となった漁業管理として国際的評価も高い。   
  
7.八木信行先生の提言
  かねてより日本水産業の掟には、漁業者だけでなく、地域コミュニティ全体を巻き込んだ監視・取締り機能がある。しかも漁協の200人規模の関係者なら、政府がなくても環境問題の解決も可能であろう。2009年ノーベル経済学賞に輝いて、自主的管理が有効であることを示したエリノア・オストロム教授は、以下8つの基準が満たされる時、地域経済が守られるとしており、日本の沿岸漁業はその管理の好例だと思う。  
〜自主的管理の有効性の条件(オストロムの8条件)〜
(1)管理区域の境界線が明確に設定されている。
(2)利益配分のメカニズムがある。
(3)参加型の意思決定がされている。
(4)モニタリングを実施している。
(5)複数違反者にはより厳しい罰則規定がある。
(6)紛争解決の機能がある。
(7)排他的な権利の存在(フリーライダー防止)
(8)組織体制には複数の階層がある
日本では、漁業管理の対象が漁場使用権であり、オストロム型の「場所の管理」である一方、欧米の漁業管理の対象は漁業枠使用権で何トンと言う「漁獲の割当」である。また、漁業者が保全する対象は、日本では漁場の環境である森・川・海だが、欧米ではサバなどの漁獲資源そのものである。従って、漁業者が自らゴミ拾いをしている光景は日本では頻繁に見られるが、欧米ではそのような例は寡聞にして承知していない。
農林水産省的な視点から見ると、経済効率を最優先するやり方でなく、社会・経済・環境のバランスの上に立って考えるべきとみることが妥当だろう。
ご興味のある方は、7月20日刊行「水産改革と魚食の未来」八木信行編/恒星社厚生閣をご参照いただきたい。

8.質疑応答
Q1.日本でサンマが取れなくなったのは、サンマの通り道で中国・台湾の大型漁船が根こそぎ獲るからだと聞いている。解決策はどのようにすればよいか?
→日本でサンマが取れなくなったのは、資源が少なくなったことや、気候変動(海洋環境の変化)の影響など、複数の要因が複合的に効いている。日本では何十年も科学調査を行ってはいるものの、それぞれの要因が何パーセント効いているのか、などまではよくわかっていない。「他国が根こそぎ持っていく」と言うマスコミ報道は一つの仮説にすぎない。科学者は色々な要因が科学的に検証されない限り、結論付けすることが出来ない。ただしそもそも日本のサンマ漁船は世界的に見ると小型の船であり、サンマが沿岸に回遊してくるものを取っていた。仮に、サンマが沿岸から離れて何100キロもの沖にいたとしても、往復の燃油代などで経費がかかるので商売上そこまで捕りに行かない判断をする船主が多い。船が小さいのは、資源を保全するために大型漁船を作らせないという政府の規制があるから。解決策としては、船のサイズ規制は緩和しつつ漁獲総量の規制は強めて、漁船の大型化を図った上で、沖合に出かけて獲る等が考えられるが、日本だけ漁獲総量を規制しても外国にとられては資源保全の効果がない。急激に獲り始めた中国などと何らかの合意を模索する必要があるだろう。

Q2.鯨問題で日本は批判を浴び続けてきたが、去年のIWC脱退後、国際的に問題はなくなったのか?
→1986年から、北米・欧州・オーストラリア・ニュージーランドなどの圧力で商業捕鯨が禁止された。しかし、アラスカ・ロシアなどは先住民捕鯨と称して捕獲を継続したし、ノルウェー・アイスランドは法的な例外条項を活用して商業捕鯨を継続した。インドネシアなど捕鯨国であるもののIWCに加盟していない国もいる。韓国も日本も定置網などでクジラの「混獲」が相当数あるが、これはIWCの管轄権の外。捕鯨禁止といっても様々な捕獲が続いている。日本は1986年から2018年まで調査捕鯨をしてきた。IWCの捕鯨禁止条項は、沢山の科学データをそろえれば1990年以降は商業捕鯨再開を検討することが可能、との書き方になっている。それで調査捕鯨を30年以上実施したが、反捕鯨国の市民団体などからの政治圧力が強く捕鯨再開のためにIWC加盟国の75%が賛成する状況には当面ならないことも明らかになった。これでは外国人の反対で日本国民の権利が損なわれる変な構図が継続すると考えたのであろう、日本政府は昨年IWCを脱退した。脱退後大きな反対運動を懸念したが、大きな反発はなかった。捕鯨問題はいまや環境問題よりもアニマル・ライト(動物の権利)の問題という要素が強い。一方で日本が主張しているのは沿岸捕鯨業者の人権である。つまり捕鯨問題は、動物の権利を優先するのか捕鯨関係者とその家族の人権を優先するのか、との対立軸がある。外国の反捕鯨団体も人権は重視せざるを得ず、さすがに無茶な捕鯨反対はできなかったのではないか、と私は勝手に解釈している。

Q3.「改革」の主たる狙いはどこにあるのか?また、改革によって漁獲量の復活はあるか?あるとすればどの程度期待できるか?近大マグロの企業的経営と今回の改革との関係・影響をどう考えるか?
→養殖と沿岸漁業と沖合(日本の200カイリ内)、そして遠洋漁業(公海や外国の200カイリ内)に分けて考える。遠洋漁業は国際規制があるので今回改革の主たる対象でない。また資源保全のためには200カイリ内でも生産量を急には増加できない。このためコストを下げて効率を上げることが短期的な主眼となる。沖合漁業で、サバ・イワシを取る船を大型化して効率を高め、同時に漁獲総量の管理を厳格に実施する。アクセルとブレーキを踏むことが要求されるのが今回の改革。養殖業者も、ノルウェーのように単一の魚種で規模拡大をするのか、多種多様な魚を小規模に養殖するのか、二極分化していくだろう。その両方できるようにしているのが今回の改革。アクセルとブレーキ両方をかけやすいようにしないといけない点で大変。
漁獲の復活については、すでに日本は人口減少時代を迎え、食の嗜好変化で魚の需要自体も落ちている。魚輸入も減っている中で、飛躍的に漁獲が伸びても、売れないし、資源の保全にもならない。生産量が伸びることをよしとする価値観は漁業の場合は昭和の時代で終わっている。これからは環境との両立、経済では費用対効果、社会では沿岸社会の維持(過疎化への歯止め)をバランスさせないといけない。
近大マグロは稚魚が大きくなるまで陸上で育て、20〜30cmになって海のイケスに入れて飼育する。陸上は漁業権は関係ないが、海上では今でも漁業権を使用してイケスを保持している。今度の漁業法改正で影響が出るかもしれないが、それはプラスもマイナスも両方あり得る。

Q4.中国の漁獲・養殖が格段に伸びている。魚食文化でない中国で何が起きてこれほど急激に伸びたのか?
→80〜90年代にかけての急成長の理由は単純で、船舶機材がなかったのが造れるよう
  になったため天然漁獲も増えたと推測する。
中国は内水面を使う養殖が盛んである。そこでは海の魚を原料としたエサに頼らずに植物性のエサを与えて養殖できるものもある。また、わかめや海苔、そしてエサの不要な貝類も多い。中国の魚食文化は、北京ではないが、上海以南では魚食文化があり、米+魚がご馳走である。

Q5.鰻の値段はどうして高いのか?鰻資源回復はありうるか?
→江戸時代の古文書を漁って、蕎麦と鰻の物価を検証したことがある。大体蕎麦の5倍くらいの価格だった。いま、蕎麦を600円とすれば3000円のウナギ価格は妥当。
20年前欧州産稚魚が中国に入って、そこで大量に養殖されて日本に安く輸出された。これが1000円鰻の秘密だった。しかし環境上の理由で欧州産の鰻を輸出することが禁止される国際ルールになった。中国はWTOに訴えるなどしないで表面的には受け入れている。そして今では日本産の稚魚が国内もしくは台湾で育てられている状況。30年前に戻った。今後は鰻の資源が増える見込みは悲観的である。とりすぎとの説もあるが、河口で手作業で鰻の稚魚をすくっている日本の採集方法は50年以上変わっていない。むしろ大きく変わったのは生息環境。すみかである川はコンクリートの護岸で鰻の隠れ場所がなく、エサの小魚・エビが生息できなくなった。堰堤があるので上流に鰻は遡上できなくなった。この環境変化は不可逆的で、今さら改変することは防災の観点からも難しい。鰻の人工孵化は実験では成功しているが、商業ベースで安定してペイするまで技術は成熟していない。

Q6.ヨットが趣味で、日本中を航海してきた。気が付くのは広大な海の領域で、定置網・イケスを漁協に任せ、漁獲が落ちても行政は知らぬ顔だ。小さい港をそのままにして集約しようともしない。人手不足の解消や漁船の大型化を図るなど、水産国日本の復活オプションはあるか?
→日本魚食文化の象徴的な定置網は、日本が発祥。国際的には珍しく、欧米にはほとんどない。彼らは日本から定置網の技術を導入しなかったというのが理由。彼らにはそこまでは魚食にこだわっておらず、畜産物の食文化が主流。欧米スタンダードのヨットの世界観では、日本の沿岸が奇異に映るのも無理はない。水産庁は「何をやってきたのか」と批判も聞こえるが、日本の水産庁の人員は500人のレベル。他国はもっと多い(アメリカの水産当局(NMFS)は4000人以上人員がいる)。完璧な行政サービスを提供しようとすると水産庁の人員を大幅に増やさなければならない。水産の管理にそこまで税金を注ぎ込むべきかどうか、国民の間にも賛否両論があるだろう。
  現状で小さな政府が日本できているのは政府に変わって漁協や沿岸住民が密漁監視などの見張りをしているから。たしかに効率化を追求する産業政策の立場からすると、小さい漁港を沢山作るよりも、拠点を集めて大きな漁港を作って一つに集めた方が効率も良い点はそのとおり。しかし小さな拠点をなくすと監視の目は弱くなる。農水省も、「産業政策に特化して経済効率を追及するか」「社会政策も含めて面倒を見る省庁になりたいのか」二つの立場を行ったり来たりしている部分もある。

Q7.養殖は今の漁業を守る一つの方法だが、養殖の環境に対する阻害要因はないか。
→エサの過剰投与などで、栄養過多になり、海の下で滞って赤潮が発生するなどの環境汚染がある。

Q8.北朝鮮漁船など魚を違法に盗っていく。厳しく取り締まれないか?
→外国船の取締まりは海上保安庁である。日本は漁業者も見張り役になっていた。これまでは漁船の数も多く、漁業者の通報で海上保安庁が現場に急行することもあった。漁業者が減少してこの機能が弱まるのは懸念材料。テクノロジーの利用で違法操業をしている漁船を発見し取り締まることも大事だろう。

Q9.捕鯨は環境問題から動物の権利の問題になっているとのことですが、クジラの権利の問題がとりあげられるのはなぜでしょうか。
→動物の権利についてはヨーロッパなどを中心に広く尊重しようとする動きがあります。例えば動物実験の制限、また家畜の場合でも捕殺する際は苦しみを与えないようにする基準などがそれです。ただし、動物の死生観には文化的・宗教的な背景が強く関係しており、ヨーロッパで残酷と思われている行為が日本ではそう思われていなかったり、日本で残酷と思われている行為がヨーロッパではそう思われていなかったりしています。これはヨーロッパと日本だけではなく、例えばモンゴルと日本でも相当違います。以前私はモンゴル人の留学生と家畜の捕殺を議論したことがありますが、考え方は相当違うように思えました。人間の尊厳死や安楽死が議論になることがありますが、これに近い話と思います。つまり誰かが「正解」を勝手に決めて、それを他人に押しつけてはならない性質の話だと思います。ご質問では、クジラの権利の問題がとりあげられるのはなぜかとのことですが、個人個人によって理由は異なるため、単一の正解を私が代弁して述べることはできないと思います。
文責:羽岡秀晃


講演資料:改革」のタイミングと内容は適切?これからの水産業と魚食文化を考える
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2020年06月25日

EVF Webセミナーの報告:「国会事故調/報告の概要と現状の中間報告」

演題:「国会事故調/報告の概要と現状の中間報告」
講師 :東京理科大学大学院技術経営(MOT)専攻教授 元国会事故調/調査統括補佐
    石橋 哲 様
Web視聴開始日:2020年6月25日(木) (約2週間)
視聴者数:55名 

1. 講師紹介: 
・1964年和歌山県生れ。1987年東大法卒。同年日本長期信用銀行入行(〜1998年10月)。シティバンクを経て、2003年産業再生機構参画(マネージングディレクター)。2007年以降クロト・パートナーズを設立(代表、現)、神戸市住宅供給公社、日本郵政の民営化工程など組織変革支援に従事。11年の東日本大震災にあたっては、同年6月に内閣官房東京電力経営財務調査タスクフォースに、同12月国会事故調に、いずれもプロジェクトマネジメント機能として参画。2017年4月〜2020年3月サイバーセキュリティベンチャーBlue Planet-works取締役・代表取締役CEO。
・2019年4月から東京理科大大学院技術経営(MOT)専攻教授(リーダーシップ、倫理)。https://most.tus.ac.jp/teacher/ishibashi_satoshi/
・2017年5月〜衆議院原子力問題調査特別委員会アドバイザリーボードメンバー。その他、政策研究大学院大学グローバルヘルス政策イノベーションプログラム客員研究員、日本医療教育プログラム推進機構理事、国会事故調報告を出発点に世代立場を超えて社会の「システム」について考えあう場を「共創」するサークル活動「わかりやすいプロジェクト(国会事故調編)」        https://naiic.net/ 代表

2. 講演概要:
2011年3月11日に起こった東日本大震災、これによって生じた東京電力福島第一原子力発電所の事故によって、以前より言われていた「原子力発電所は絶対安全」という神話が崩れ、近隣に住む多くの人から日常の生活を奪い、農業、漁業、その他産業に多大な被害を与え、社会にも大きな影響をもたらした。 事故の数か月後には東京電力も政府も、事故報告書をまとめたが、いずれも当事者の視点から纏められたものであった。 失われた国民からの国家に対する信頼、世界からの日本の信用の再建の出発点とするには不足であることから、国権の最高機関であり、国民の代表である立法府(国会)が、三権分立の基幹的機能である立法による行政に対する監視機能を憲政史上初めて行使した「国会事故調」が衆参全会一致で成立した法により2011年12月に国会に設定された。 この委員会は主として学者、医師、弁護士、ジャーナリストなどの民間人中心に構成され、業界や政府からの独立性・中立性を保ちつつ、7か月間で報告書をまとめた。 この報告はネットで今でも閲覧は可能。 https://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/3856371/naiic.go.jp/。 講師はこの委員会の調査統括補佐(事務局)として活躍され、現在に至るもその提言が埋没しないよういろいろな場で啓もう活動を行っている。

3. 講演内容
2011年12月にスタートしたこの委員会(国会事故調)は委員長の黒川氏の下、@ 国民の視点に立つ A 世界に発信する B未来に向けた報告とする この3点をしっかり心に留め、調査を進めた。 その中で、この事故は想定外の大きさの地震、津波による天災によるものであるという事故像を超え、むしろその可能性を知ったうえで、事前に対策の手を打た(て)なかった人災という事故像が現れた。 事故前において、「原発の安全」は、原子力発電所内部で何かあったとき(内部事象)には @止める A 冷やす B 閉じ込める、3層の多層防護で安全が担保できると言われていた。 しかし、国際原子力機関(IAEA)における「原子力の安全」の議論では、内部事象にとどまらず、外部事象や人為的事象までを含めて想定される起因事象に対し、放射性物質放出による影響緩和、周辺住民の安全確保までを視野に入れた5層の深層防護が原子力の安全に関する標準的フレームワークとされていたこと、日本における3層の防護はパッチワーク的であったことなどがわかった。また、日本の場合、原子力安全規制機関の監視、監督が行政であることは、他の海外諸国においては議会が監視している事とは異なり、必然的に透明性、公開性などに問題が生じている。 またこの事故を人災といえども個人の責任に帰するのではなく、根源的原因として横たわる組織的、制度的な問題、さらにはそれらを許容する法的枠組みとそれを可能とする関係者や国民のマインドセット(思い込み、常識)の解決こそが大切であり、それなくして再発防止は難しいとしている。 事故調としては8年前にその報告書で、以下の7つの提言を行ったが、96ケ月経った現在まだそれらについて具体的な検討や論議が進んでいないのは残念である。 

7つの提言 
(1)規制当局に対する国会の監視
(2)政府の危機管理体制の見直し
(3)被災住民に対する政府の対応
(4)電気事業者の監視
(5)新しい規制組織の要件
(6)原子力法規制の見直し
(7)独立調査委員会の活用
最後に国会事故調からのメッセージとして「福島原発事故はまだ終わっていない」 「日本の今後(9)の対応に世界は厳しく注視している」 「この経験を無駄にしてはいけない」 「改革の努力をすることが国会/国民一人ひとりの使命である」とまとめられて講演を終えられた。

4. 質疑応答)  (Q1〜Q3は収録時におけるEVF正会員からの質問)
Q1. 3.11後に原子力規制委員会ができたが、それを監視するのが国会であるべきだということはわかったが、規制委員会はずいぶん頑張っていると思うのに左右双方から厳しく批判されている。どう評価されているのでしょうか?
→ 規制(委)の目的は「安全の確保」であり、推進派から再稼働の邪魔をしているのではないかといわれることは、規制(委)がちゃんと仕事をしているということ、住民の避難計画への配意が不十分との批判は、原子力防災に関する法の立て付けに課題があると考える。

Q2. @ 国会事故調が7つの提言をまとめて報告されているが、そのうちどれとどれが取り入れられているのでしょうか?  A また黒川委員長のメッセージからは、環境やエネルギー状況が大きく変化する中で、原子力の位置づけも大きく変わらなければならないと言っているが、日本は変わってきているのでしょうか? 
→ @ 事故調は10項目の結論を出して、7つの提言を行った。 原子力の規制当局(推進行政、安全規制行政、その他関連行政を含む)や原子力関連事業者が、再び、原子力安全規制を「規制の虜」とし、その透明性・公開性を歪めることのないように国民の代表である国権の最高機関である国会がこれを監視することを提言している。残念ながら国会ではまだ一言も論議されていないまま8年経ってしまった。 なかには自分たちに投げられた宿題だと理解していない議員もいる。
→ A エネルギー事情は大きく変わっている。 原発は、枯渇が想定される化石燃料より、希少価値のウランを燃料としていても、そのエネルギー源としての可能性は無尽蔵であり、最終的には「安くてクリーンなエネルギー」として期待されていた。 現在、シェールガス開発などを背景に化石燃料の枯渇は遠のいた。 希少性の高かったウランは、中央アジアなどでの多くの埋蔵が確認されている。スリーマイル、チェルノブイリ、福島の後、原発の安全コストが大きく上昇し、また再生可能エネルギーのコストは激減している。原子力発電の経済合理性を支える根拠は大きく変化している。こういう状況下で安全保障問題、温暖化CO2問題、放射性廃棄物の処分なども合わせて、論議することが不可欠と考える

Q3. 政治家やえらい人達から「よく纏めてくれた」「頑張ってくれた」とお褒めをいただき、「これからも若い人たちを指導していって欲しい」といわれるそうだが、それは日本が記録を残さない文化であることの裏返しのように思うが如何か?
→ 質問者の意見に賛同。 責任を回避することを最優先として、記録を残さない不透明な組織、制度またそれ許容してしまう法的な枠組みに問題がある。 

以上が収録時にEVF正会員メンバーから出された質問ですが、これに加えて視聴者から後日寄せられたWebによる質問が2つあります。 石橋先生より後日メールでの回答をいただきましたので、以下に紹介いたします。

Q4.  (ネット会員M.T様)今回の国会事故調と同様の国会気象災害事故調のような仕組みの実現性はないのでしょうか、あるいはそのような仕組みを作るために必要なことはどんなことでしょうか?

■ 事実の集積、そこからの冷静な知見の積み上げが、大切なことは「気候変動」に関連する諸課題でも福島原発事故に関連する諸課題と同じとのご趣旨は深く共感いたします。いずれの諸課題についても、事実の集積の前に「価値判断」が先行した議論が飛び交っている気がします。面罵の応酬は非生産的ですので、国会事故調のような取り組みとするのは実効性があると私も考えます。
■ ちなみに、国会事故調提言7は以下のように記載しており、下線部にご着目ください。
提言7:独立調査委員会の活用
 未解明部分の事故原因の究明、事故の収束に向けたプロセス、被害の拡大防止、本報告で今回は扱わなかった廃炉の道筋や、使用済み核燃料問題等、国民生活に重大な影響のあるテーマについて調査審議するために、国会に、原子力事業者及び行政機関から独立した、民間中心の専門家からなる第三者機関として(原子力臨時調査委員会〈仮称〉)を設置する。また国会がこのような独立した調査委員会を課題別に立ち上げられる仕組みとし、これまでの発想に拘泥せず、引き続き調査、検討を行う。

福島原発事故のような被害があり、その反省を受けた提言を行って、その実現に向けた道について、私たち有権者が代表を送り続けている国権の最高機関である立法府では「一つの言葉も交わされていない」のが今の立ち位置と認識しております。現状を「今」に現出させているのは「私たち」の選択の帰結と考えられます。
M.T様ご記載のご提案が実現するため、なにが必要なのか、私も胸に手を当てて自問を重ね、言行一致の匍匐前進を重ねて参りたいと考えます。

Q5. (ネット会員K.N 様) EVFとしてはどのようなアクションを取るのでしょうか?
→ K.N 様  石橋様の6月講演に関して、事務局あての質問をいただき、ありがとうございました。 EVFを代表して私(和田 政信理事長)から取組状況を説明させていただきます。EVF理事会として中村様の御指摘を真摯に受け止め、EVFとしてどのように対応するのか検討を開始しております。これまでEVFはご存知のように、セミナー・見学会などを通じて環境問題(持続性の問題)の共有化と問題点の発掘努めてまいりました。今後は重要問題をEVFとし認識すること、そしてベテランの経験で問題にどう取り組むのか検討してまいります。
 (文責:八谷道紀)

講演概要資料:国会事故調報告概要
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2020年06月01日

EVF Webセミナー参加申し込み方法、参加費の振込方法と質問・意見の送信方法

EVF Webセミナー参加申し込み方法、参加費の振込方法と質問・意見の送信方法

5月よりWebセミナーを開催します。

1)Web セミナー参加申し込み方法

通常セミナーと同様にセミナー申込みページからお願いします
「懇親会参加可否」は“不参加”をチェックお願いします

2)Web セミナー参加費の振込方法
EVF事務局より金額をe-mailで連絡いたします
指定口座宛てに期日までに振り込みをお願いします

3)Webセミナーへの質問・意見の送信方法
セミナー質問・意見のページから送信お願いします
事務局で整理し講師からの回答をHPに掲載いたします

Webセミナーについては、Webセミナーのご案内をご参照ください。
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2020年05月28日

EVF Webセミナーの報告:「新型コロナウィルス流行と中国」

演題:「新型コロナウィルス流行と中国」
講師 : 中国ウォッチャー 荒井商事株式会社常勤顧問 結城 隆 様
Web視聴開始日:2020年5月28日(木) (約2週間)
聴講者数 : 62名

1.講師紹介
・1955年生まれ。福島県出身。一橋大学経済学部卒。旧日本長期信用銀行入行。調査部、ロンドン支店、マーチャントバンキンググループ、パリ支店、ニューヨーク支店勤務。
1999年ダイキン工業経営企画室、大金中国投資有限公司(北京)勤務。デンロコーポレーション常務執行役員を経て現職。
荒井商事において、新規事業開拓を担当する傍ら、東日本大震災事業者再生支援機構業務委託、柳沼プレス工業顧問を務める。中国ビジネス研究会会員。
主な著書: 中国市場に踏みとどまる(1999年草思社)、ジョークで読み解く省別中国人気質(2002年草思社)、その他四半期毎に中国観察レポートを発行。
座右の銘: 百年生きて、百年学べ。

2.講演概要
湖北省武漢市から発生した新型コロナウイルスは中国全土に拡散、その後欧米はじめ世界全土に広がり、1929年の大恐慌あるいはそれ以上の経済的厄災をもたらそうとしている。
中国が武漢市、湖北省をロックダウンしたのが1月23日、そのロックダウンは2か月半後の4月7日に解除された。(注:日本はちょうどその日に7都府県に緊急事態宣言を発した)。
中国は概略次の3段階の戦略で進んでいる。1〜3月は流行の制圧、4〜6月は経済復旧と対外支援、プロパガンダの展開、7〜9月に経済をV字回復させるという戦略である。今年第一四半期の中国のGDP成長率はマイナス6、8%、ロックダウンされた湖北省の成長率はさらに大きくマイナス39、2%だった。
世界に先駆けて流行を制圧した中国は、常態復帰に向けてインフラ投資の前倒し実施、金融緩和、中小企業の資金繰り支援、所得補償など様々な政策を打ち出している。今回のパンデミックによる中国の国内事情、アメリカや欧州、日本と関係した情勢について、地球儀を俯瞰する形で広範囲にわたって詳細にご講演頂いた。

新型コロナウイルス禍で3月、4月と中止せざるを得なかったEVFセミナーだったが、事務局の懸命な手探りの試行で初めてのWebセミナーに漕ぎつけ、講師の結城先生の充実した講演内容も相まって各方面から評価と励ましの声を頂いているところです。

3.講演内容
新型コロナウイルスの感染流行は中国→欧州→アメリカと広まった。3月以降は立場が逆転し、中国は新型コロナウイルスを克服したとして経済復旧に舵を切り、世界に向けて対外支援とプロパガンダを展開している。1月23日に武漢市、湖北省をロックダウンし、湖北省全域に「戦時体制」を導入。全土に外出・移動制限措置を施した。それからの中央政府は武漢市にすさまじいばかりの全面支援を行う一方、行政組織の不作為や怠慢を厳しく取り締まり、省・市のトップを含め630人が処分されたという。
財政・金融面では人民銀行は2〜3月にかけて3兆3,500億元を金融機関に供給する一方、インフラ投資は高速鉄道、高速道路等に7、6兆元、合計11兆元(=170兆円)のテコ入れを行った。
また景気対策として消費喚起策(ただし個人給付は不正受給が横行する可能性があり行わない)、産業梃子入れ策として自動車の排ガス規制の実施の半年間の先送りをはじめ、各種優遇策を導入した。この結果、早くも3月〜4月の製造業生産は常態に復帰、自動車産業は大手販売店の大幅な値引きと地方政府の購入促進策に加えて、消費者の自動車購入の動機の10%が「健康と安全」(=コロナ対策)となるなどで、4月には22か月の低迷から抜け出した。この時期、ファーウエイは半導体等の基幹技術の国産化を着実に進め、デジタル経済はこの3か月の間に100件のアプリが追加登録されるなどむしろ弾みがついた格好。また自動車の自動運転の実験も加速している。
最後に激化しているアメリカと中国の冷戦下でコロナ後の国際秩序はますます流動化してゆく。同じ冷戦といってもかつてのアメリカ対ソ連の冷戦とは異なり、現在の中国はヒト・モノ・カネで世界的に十分大きな存在となっていて、米・中の力は拮抗している。米・中はどこかで折り合えるのだろうか。一方、今回の新型コロナウイルスへの対応で中国の共産党権威に微かな揺らぎも感じられるということで講演を終えた。
    
質疑応答)

Q1.5月18日に開幕したWHOの総会で一番にスピーチした習近平の強気の演説は何を意味するのか。
→ あれは国内向けと解釈できる。中国に対する初動の遅れやマスク外交に対する各国からの批判、反発については中国国内ではほとんど報道されていない。
Q2.コロナ前とコロナ後では中国の立ち位置はどのように変わるのだろうか。
→ 中国はこれまでは世界1番を目指して突っ走ってきた。中国製造2025がその例。ただ1番になったらどうしようかという心の準備が出来ていないように見える。2049年に実現しようとしている「中国の夢」も具体的なイメージがない。一方、コロナ後の世界を考えると、アメリカの凋落は明らか。その意味、コロナ後の世界というのは米中対立が先鋭化する中で、かなり流動的になるのではないか。
Q3.習近平が国賓として来日する計画を中止するのに、3月初めまでもつれ込んだ。なぜ早々に訪日中止に踏み切れなかったのか。
→ 訪日中止自体が日本側の事情ではなかろうか。習近平の訪日は東京五輪と並んで安倍政権にとっては今年の最重要日程だった。ギリギリまで待ったのではないか。中国では日本の新型コロナウイルスへの対応の遅さ、スケールの小ささに失望する見方が多い。
Q4.アメリカのCDC(疾病予防管理センター)のような機関は中国にも存在するか。
→ CDCは中国にもある。各地にもあり、武漢にもある。しかし米国ほど政治的な力はない。ウイルス流行の初動が遅れた原因のひとつもここにあるのではないかと思う。ただ、米国のCDCもトップが政治任用という事情もあって、初動はかなりギクシャクしたと聞いている。

Webセミナー視聴後に寄せられた主な質問と講師の回答)

Q5. WHO総会での習近平のスピーチ、もっと国際協調を訴えた方が中国に有利に働くと思うのだがいかがか。
→ 北京駐在の時に経験したのだが、中国人は片言の英語しかできなくても「流暢に話せます」というのが常。謙譲は美徳ではなく、自分の弱さをさらけ出すのと同じと考える。新型コロナウイルスを短期間で制圧できたことを世界に誇示しなければ、国内での批判にさらされる。
Q6.中国経済の当面の回復スピードが速いとのことだが、今までの貯金が大きく残っているということか。
→貯金ということでは、財政状態が他のOECD諸国に比してかなり健全だったという指摘は出来よう。実はコロナ流行期間中でも多くの国営企業は稼働していたようだ。流行制圧に目途がついた時、まず国営企業の操業を再開させ、自動車などの基幹産業の操業再開を促し、従業員の確保、工場と宿舎の送迎などに対して、政府が手厚く支援した。
Q7. 全人代でGDP目標値が示されなかったのは、コロナの傷が思いのほか大きかったということか。
→全人代でGDP成長率目標が示されなかった第一の理由は、あまりにも先行きが不透明だから。特に輸出については、最大の輸出先であるアメリカとの貿易交渉や華為に対する制裁措置が見通せず、回復の気配は見えていない。二つ目の理由は雇用だ。短期的には2億人の失業者が発生、ほとんどが農民工。全人代での政府工作報告で最も多く使われた言葉が「就業」だった。この問題はボディーブローのように経済回復の足を引っ張っていると思う。
Q8.中国のトップは党内権力闘争でのし上がった成功体験の延長線上で、国際社会においても振舞っているようにしか見えない。“1番”になっても世界のリーダーたりえないのではないか。
→国際社会のリーダーたる要件にはいくつかあるが、自国通貨の人民元が国際通貨として信認されているとはいい難い面があること、普遍的な価値観を他国と共有するまでに至っていないことなど、越えるべきハードルは少なくない。一方、国際社会のリーダーとなるべき資質では、頭の良さや経験、知見という面からみれば中国各界のトップの力量は相当高い。その上、中国社会は猛烈な競争社会であり、その中でのし上がってきた人々の力量はかなりのものと認識すべき。問題は優れた能力を持つリーダーの一方で、地べたとの能力格差だ。中国はどうしても内向きの事象にエネルギーを注がざるを得ない。
文責 : 佐藤孝靖

講演資料:新型コロナウイルス流行と中国

 参考資料:「Webセミナーのご案内」
posted by EVF セミナー at 16:00| セミナー紹介