2020年08月27日

EVFセミナー案内:「グリーン・リカバリーの中で進める脱炭素化」



WebSemiIcon.jpg 8月27日 EVF Webセミナーのご案内
演題: 「グリーン・リカバリーの中で進める脱炭素化」〜始まったコロナ後の経済回復、グリーン・リカバリーの議論〜
講師:山岸 尚之様
 公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)気候エネルギー・海洋水産室長
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<セミナーの概要>
コロナ禍からの経済回復は、ただ単に「元通り」の経済社会に戻るのではなく、より環境によくレジリエントな社会に「回復」していくべきであるという「グリーン・リカバリー」の議論が国際的に始まっています。日本ではまだ端緒についたばかりですが、いかにして、グリーン・リカバリーを通じて、脱炭素化を達成していくか、国際事例なども交えながら、皆さんと一緒に考える機会としたいと考えています。

講師の山岸尚之氏はWWFジャパン、気候変動グループのスペシャリストで、EVFにおいてもこれまでCOPの報告など4度にわたりご講演をしていただいております。今回は、コロナ禍の後にやってくる新しい経済社会において、どのように脱炭素化を図っていくかについてお話しいただきます。sem202008273.jpg

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日時:2020年8月27日(木)よりWeb公開
(公開後2週間以内は、ご自宅のパソコンやスマホからご都合の良いときにいつでもご視聴いただけます)
Webセミナーについては、Webセミナーのご案内をご参照ください。
参加費:個人賛助会員・ネット会員 1,000円、一般 1,500円
  (振込手数料は参加者様にてご負担をお願いします。)
申込締め切り:8月23日(日)
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お申し込みは下記のURLをクリックして必要事項を記入し送信をお願いします。
セミナーの申込み : https://www.evfjp.org/postmail_semina/
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2020年07月23日

EVFセミナー報告:「改革」のタイミングと内容は適切?これからの水産業と魚食文化を考える

演 題 : 「改革」のタイミングと内容は適切?これからの水産業と魚食文化を考える
講 師 : 東京大学大学院農学生命科学研究科教授、日本学術会議連携会員、日本水産学会理事  八木 信行様
Web視聴開始日:2020年7月23日(木) (約2週間)
視聴者数:52名 
講師略歴
八木先生は、1987年に東大農学部水産学部をご卒業後、農林水産省に入省。1994年にはペンシルバニア大学のMBAを取得。2008年から東大の生命科学研究所で漁業経済学や農学一般を研究され、学界・官界・ビジネス界で幅広い経験をされている。

講演概要
1. 日本の水産業に対する考察・提言をご講義いただいた。導入部分で世界における天然漁獲と養殖の推移を確認し、各国漁業の特徴を踏まえ、日本が直面している漁業改革の問題点に迫った。2018年12月に漁業法が70年振りに改正され、今年の12月に施行される予定である。改革の要点は三点ある。

(1) 一つは、経済効率を高めることを重視して、「漁場が適切かつ有効に」利用されていない場合には、漁協以外の民間参入を認めること。

(2) 二つは、乱獲を防ぐため、条件が整った魚業種については、漁船隻数及び漁場の制限の従来管理に加え、船舶毎の漁獲を割当制にしたこと。

(3) 三つには、密漁防止のため罰則を三年以下の懲役または三千万円以下の罰金とすること。

現行の漁業法は、江戸時代から続いていた慣習を明治時代に立法化したもので、浜の秩序を維持し漁場を保全するために役立っているとの肯定的な見方は多いが、一方で(秩序を維持しすぎて)新規参入を阻害しているとの否定的な見方もあり、多様な意見が存在している。

2. このような中では “ゼロ”か“1”かの判断を求めてイデオロギー的な対立になることは時間のムダ。ゼロでも1でもない最適な解を求めて新漁業法の改革をすることが課題であった。その基準は、経済・社会・環境のバランスを考えていくことである。

以上、多岐にわたる分野に関連し、しかも複雑に利害が絡み合う水産業のお話をわかり易く、様々な蘊蓄も交えてご説明いただいた。その蘊蓄をいくつか紹介しておく。

*イカ・サンマは1〜1.5年と寿命が短いので、今年海にいる親魚の数から翌年の魚の数は予測が難しい。しかしマグロは7〜8年は生存するので多少の予測が可能。魚の中には、資源管理を人間が行うことが困難な種類と、比較的可能な種類がいる。

*ノルウェーは1980年代にサケ養殖を始めて、それまで塩漬けして新巻として食べられていた鮭を刺身で食べられるよう、日本・アジア・アメリカ向けに出荷した。その技術はチリに移転されている。天然のサケは寄生虫が怖いため刺身で食べる習慣が90年代までの日本にはなかったが、寄生虫フリーの養殖魚がマーケットに浸透し、新しい需要を作った。

*鰻が高いと言うが、江戸時代の鰻の価格は蕎麦の5倍ほどだったので、うな重が現在約3000円でも物価水準価格として妥当だろう。90年代は、ヨーロッパ産の稚魚を使った養鰻業が中国で盛んになり加工鰻が大量に日本に輸入されたためウナギの蒲焼きが1000円程度であったが、鰻としては安すぎたと言える。
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2020年06月25日

EVF Webセミナーの報告:「国会事故調/報告の概要と現状の中間報告」

演題:「国会事故調/報告の概要と現状の中間報告」
講師 :東京理科大学大学院技術経営(MOT)専攻教授 元国会事故調/調査統括補佐
    石橋 哲 様
Web視聴開始日:2020年6月25日(木) (約2週間)
視聴者数:55名 

1. 講師紹介: 
・1964年和歌山県生れ。1987年東大法卒。同年日本長期信用銀行入行(〜1998年10月)。シティバンクを経て、2003年産業再生機構参画(マネージングディレクター)。2007年以降クロト・パートナーズを設立(代表、現)、神戸市住宅供給公社、日本郵政の民営化工程など組織変革支援に従事。11年の東日本大震災にあたっては、同年6月に内閣官房東京電力経営財務調査タスクフォースに、同12月国会事故調に、いずれもプロジェクトマネジメント機能として参画。2017年4月〜2020年3月サイバーセキュリティベンチャーBlue Planet-works取締役・代表取締役CEO。
・2019年4月から東京理科大大学院技術経営(MOT)専攻教授(リーダーシップ、倫理)。https://most.tus.ac.jp/teacher/ishibashi_satoshi/
・2017年5月〜衆議院原子力問題調査特別委員会アドバイザリーボードメンバー。その他、政策研究大学院大学グローバルヘルス政策イノベーションプログラム客員研究員、日本医療教育プログラム推進機構理事、国会事故調報告を出発点に世代立場を超えて社会の「システム」について考えあう場を「共創」するサークル活動「わかりやすいプロジェクト(国会事故調編)」        https://naiic.net/ 代表

2. 講演概要:
2011年3月11日に起こった東日本大震災、これによって生じた東京電力福島第一原子力発電所の事故によって、以前より言われていた「原子力発電所は絶対安全」という神話が崩れ、近隣に住む多くの人から日常の生活を奪い、農業、漁業、その他産業に多大な被害を与え、社会にも大きな影響をもたらした。 事故の数か月後には東京電力も政府も、事故報告書をまとめたが、いずれも当事者の視点から纏められたものであった。 失われた国民からの国家に対する信頼、世界からの日本の信用の再建の出発点とするには不足であることから、国権の最高機関であり、国民の代表である立法府(国会)が、三権分立の基幹的機能である立法による行政に対する監視機能を憲政史上初めて行使した「国会事故調」が衆参全会一致で成立した法により2011年12月に国会に設定された。 この委員会は主として学者、医師、弁護士、ジャーナリストなどの民間人中心に構成され、業界や政府からの独立性・中立性を保ちつつ、7か月間で報告書をまとめた。 この報告はネットで今でも閲覧は可能。 https://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/3856371/naiic.go.jp/。 講師はこの委員会の調査統括補佐(事務局)として活躍され、現在に至るもその提言が埋没しないよういろいろな場で啓もう活動を行っている。

3. 講演内容
2011年12月にスタートしたこの委員会(国会事故調)は委員長の黒川氏の下、@ 国民の視点に立つ A 世界に発信する B未来に向けた報告とする この3点をしっかり心に留め、調査を進めた。 その中で、この事故は想定外の大きさの地震、津波による天災によるものであるという事故像を超え、むしろその可能性を知ったうえで、事前に対策の手を打た(て)なかった人災という事故像が現れた。 事故前において、「原発の安全」は、原子力発電所内部で何かあったとき(内部事象)には @止める A 冷やす B 閉じ込める、3層の多層防護で安全が担保できると言われていた。 しかし、国際原子力機関(IAEA)における「原子力の安全」の議論では、内部事象にとどまらず、外部事象や人為的事象までを含めて想定される起因事象に対し、放射性物質放出による影響緩和、周辺住民の安全確保までを視野に入れた5層の深層防護が原子力の安全に関する標準的フレームワークとされていたこと、日本における3層の防護はパッチワーク的であったことなどがわかった。また、日本の場合、原子力安全規制機関の監視、監督が行政であることは、他の海外諸国においては議会が監視している事とは異なり、必然的に透明性、公開性などに問題が生じている。 またこの事故を人災といえども個人の責任に帰するのではなく、根源的原因として横たわる組織的、制度的な問題、さらにはそれらを許容する法的枠組みとそれを可能とする関係者や国民のマインドセット(思い込み、常識)の解決こそが大切であり、それなくして再発防止は難しいとしている。 事故調としては8年前にその報告書で、以下の7つの提言を行ったが、96ケ月経った現在まだそれらについて具体的な検討や論議が進んでいないのは残念である。 

7つの提言 
(1)規制当局に対する国会の監視
(2)政府の危機管理体制の見直し
(3)被災住民に対する政府の対応
(4)電気事業者の監視
(5)新しい規制組織の要件
(6)原子力法規制の見直し
(7)独立調査委員会の活用
最後に国会事故調からのメッセージとして「福島原発事故はまだ終わっていない」 「日本の今後(9)の対応に世界は厳しく注視している」 「この経験を無駄にしてはいけない」 「改革の努力をすることが国会/国民一人ひとりの使命である」とまとめられて講演を終えられた。

4. 質疑応答)  (Q1〜Q3は収録時におけるEVF正会員からの質問)
Q1. 3.11後に原子力規制委員会ができたが、それを監視するのが国会であるべきだということはわかったが、規制委員会はずいぶん頑張っていると思うのに左右双方から厳しく批判されている。どう評価されているのでしょうか?
→ 規制(委)の目的は「安全の確保」であり、推進派から再稼働の邪魔をしているのではないかといわれることは、規制(委)がちゃんと仕事をしているということ、住民の避難計画への配意が不十分との批判は、原子力防災に関する法の立て付けに課題があると考える。

Q2. @ 国会事故調が7つの提言をまとめて報告されているが、そのうちどれとどれが取り入れられているのでしょうか?  A また黒川委員長のメッセージからは、環境やエネルギー状況が大きく変化する中で、原子力の位置づけも大きく変わらなければならないと言っているが、日本は変わってきているのでしょうか? 
→ @ 事故調は10項目の結論を出して、7つの提言を行った。 原子力の規制当局(推進行政、安全規制行政、その他関連行政を含む)や原子力関連事業者が、再び、原子力安全規制を「規制の虜」とし、その透明性・公開性を歪めることのないように国民の代表である国権の最高機関である国会がこれを監視することを提言している。残念ながら国会ではまだ一言も論議されていないまま8年経ってしまった。 なかには自分たちに投げられた宿題だと理解していない議員もいる。
→ A エネルギー事情は大きく変わっている。 原発は、枯渇が想定される化石燃料より、希少価値のウランを燃料としていても、そのエネルギー源としての可能性は無尽蔵であり、最終的には「安くてクリーンなエネルギー」として期待されていた。 現在、シェールガス開発などを背景に化石燃料の枯渇は遠のいた。 希少性の高かったウランは、中央アジアなどでの多くの埋蔵が確認されている。スリーマイル、チェルノブイリ、福島の後、原発の安全コストが大きく上昇し、また再生可能エネルギーのコストは激減している。原子力発電の経済合理性を支える根拠は大きく変化している。こういう状況下で安全保障問題、温暖化CO2問題、放射性廃棄物の処分なども合わせて、論議することが不可欠と考える

Q3. 政治家やえらい人達から「よく纏めてくれた」「頑張ってくれた」とお褒めをいただき、「これからも若い人たちを指導していって欲しい」といわれるそうだが、それは日本が記録を残さない文化であることの裏返しのように思うが如何か?
→ 質問者の意見に賛同。 責任を回避することを最優先として、記録を残さない不透明な組織、制度またそれ許容してしまう法的な枠組みに問題がある。 

以上が収録時にEVF正会員メンバーから出された質問ですが、これに加えて視聴者から後日寄せられたWebによる質問が2つあります。 石橋先生より後日メールでの回答をいただきましたので、以下に紹介いたします。

Q4.  (ネット会員M.T様)今回の国会事故調と同様の国会気象災害事故調のような仕組みの実現性はないのでしょうか、あるいはそのような仕組みを作るために必要なことはどんなことでしょうか?

■ 事実の集積、そこからの冷静な知見の積み上げが、大切なことは「気候変動」に関連する諸課題でも福島原発事故に関連する諸課題と同じとのご趣旨は深く共感いたします。いずれの諸課題についても、事実の集積の前に「価値判断」が先行した議論が飛び交っている気がします。面罵の応酬は非生産的ですので、国会事故調のような取り組みとするのは実効性があると私も考えます。
■ ちなみに、国会事故調提言7は以下のように記載しており、下線部にご着目ください。
提言7:独立調査委員会の活用
 未解明部分の事故原因の究明、事故の収束に向けたプロセス、被害の拡大防止、本報告で今回は扱わなかった廃炉の道筋や、使用済み核燃料問題等、国民生活に重大な影響のあるテーマについて調査審議するために、国会に、原子力事業者及び行政機関から独立した、民間中心の専門家からなる第三者機関として(原子力臨時調査委員会〈仮称〉)を設置する。また国会がこのような独立した調査委員会を課題別に立ち上げられる仕組みとし、これまでの発想に拘泥せず、引き続き調査、検討を行う。

福島原発事故のような被害があり、その反省を受けた提言を行って、その実現に向けた道について、私たち有権者が代表を送り続けている国権の最高機関である立法府では「一つの言葉も交わされていない」のが今の立ち位置と認識しております。現状を「今」に現出させているのは「私たち」の選択の帰結と考えられます。
M.T様ご記載のご提案が実現するため、なにが必要なのか、私も胸に手を当てて自問を重ね、言行一致の匍匐前進を重ねて参りたいと考えます。

Q5. (ネット会員K.N 様) EVFとしてはどのようなアクションを取るのでしょうか?
→ K.N 様  石橋様の6月講演に関して、事務局あての質問をいただき、ありがとうございました。 EVFを代表して私(和田 政信理事長)から取組状況を説明させていただきます。EVF理事会として中村様の御指摘を真摯に受け止め、EVFとしてどのように対応するのか検討を開始しております。これまでEVFはご存知のように、セミナー・見学会などを通じて環境問題(持続性の問題)の共有化と問題点の発掘努めてまいりました。今後は重要問題をEVFとし認識すること、そしてベテランの経験で問題にどう取り組むのか検討してまいります。
 (文責:八谷道紀)

講演概要資料:国会事故調報告概要
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2020年06月01日

EVF Webセミナー参加申し込み方法、参加費の振込方法と質問・意見の送信方法

EVF Webセミナー参加申し込み方法、参加費の振込方法と質問・意見の送信方法

5月よりWebセミナーを開催します。

1)Web セミナー参加申し込み方法

通常セミナーと同様にセミナー申込みページからお願いします
「懇親会参加可否」は“不参加”をチェックお願いします

2)Web セミナー参加費の振込方法
EVF事務局より金額をe-mailで連絡いたします
指定口座宛てに期日までに振り込みをお願いします

3)Webセミナーへの質問・意見の送信方法
セミナー質問・意見のページから送信お願いします
事務局で整理し講師からの回答をHPに掲載いたします

Webセミナーについては、Webセミナーのご案内をご参照ください。
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2020年05月28日

EVF Webセミナーの報告:「新型コロナウィルス流行と中国」

演題:「新型コロナウィルス流行と中国」
講師 : 中国ウォッチャー 荒井商事株式会社常勤顧問 結城 隆 様
Web視聴開始日:2020年5月28日(木) (約2週間)
聴講者数 : 62名

1.講師紹介
・1955年生まれ。福島県出身。一橋大学経済学部卒。旧日本長期信用銀行入行。調査部、ロンドン支店、マーチャントバンキンググループ、パリ支店、ニューヨーク支店勤務。
1999年ダイキン工業経営企画室、大金中国投資有限公司(北京)勤務。デンロコーポレーション常務執行役員を経て現職。
荒井商事において、新規事業開拓を担当する傍ら、東日本大震災事業者再生支援機構業務委託、柳沼プレス工業顧問を務める。中国ビジネス研究会会員。
主な著書: 中国市場に踏みとどまる(1999年草思社)、ジョークで読み解く省別中国人気質(2002年草思社)、その他四半期毎に中国観察レポートを発行。
座右の銘: 百年生きて、百年学べ。

2.講演概要
湖北省武漢市から発生した新型コロナウイルスは中国全土に拡散、その後欧米はじめ世界全土に広がり、1929年の大恐慌あるいはそれ以上の経済的厄災をもたらそうとしている。
中国が武漢市、湖北省をロックダウンしたのが1月23日、そのロックダウンは2か月半後の4月7日に解除された。(注:日本はちょうどその日に7都府県に緊急事態宣言を発した)。
中国は概略次の3段階の戦略で進んでいる。1〜3月は流行の制圧、4〜6月は経済復旧と対外支援、プロパガンダの展開、7〜9月に経済をV字回復させるという戦略である。今年第一四半期の中国のGDP成長率はマイナス6、8%、ロックダウンされた湖北省の成長率はさらに大きくマイナス39、2%だった。
世界に先駆けて流行を制圧した中国は、常態復帰に向けてインフラ投資の前倒し実施、金融緩和、中小企業の資金繰り支援、所得補償など様々な政策を打ち出している。今回のパンデミックによる中国の国内事情、アメリカや欧州、日本と関係した情勢について、地球儀を俯瞰する形で広範囲にわたって詳細にご講演頂いた。

新型コロナウイルス禍で3月、4月と中止せざるを得なかったEVFセミナーだったが、事務局の懸命な手探りの試行で初めてのWebセミナーに漕ぎつけ、講師の結城先生の充実した講演内容も相まって各方面から評価と励ましの声を頂いているところです。

3.講演内容
新型コロナウイルスの感染流行は中国→欧州→アメリカと広まった。3月以降は立場が逆転し、中国は新型コロナウイルスを克服したとして経済復旧に舵を切り、世界に向けて対外支援とプロパガンダを展開している。1月23日に武漢市、湖北省をロックダウンし、湖北省全域に「戦時体制」を導入。全土に外出・移動制限措置を施した。それからの中央政府は武漢市にすさまじいばかりの全面支援を行う一方、行政組織の不作為や怠慢を厳しく取り締まり、省・市のトップを含め630人が処分されたという。
財政・金融面では人民銀行は2〜3月にかけて3兆3,500億元を金融機関に供給する一方、インフラ投資は高速鉄道、高速道路等に7、6兆元、合計11兆元(=170兆円)のテコ入れを行った。
また景気対策として消費喚起策(ただし個人給付は不正受給が横行する可能性があり行わない)、産業梃子入れ策として自動車の排ガス規制の実施の半年間の先送りをはじめ、各種優遇策を導入した。この結果、早くも3月〜4月の製造業生産は常態に復帰、自動車産業は大手販売店の大幅な値引きと地方政府の購入促進策に加えて、消費者の自動車購入の動機の10%が「健康と安全」(=コロナ対策)となるなどで、4月には22か月の低迷から抜け出した。この時期、ファーウエイは半導体等の基幹技術の国産化を着実に進め、デジタル経済はこの3か月の間に100件のアプリが追加登録されるなどむしろ弾みがついた格好。また自動車の自動運転の実験も加速している。
最後に激化しているアメリカと中国の冷戦下でコロナ後の国際秩序はますます流動化してゆく。同じ冷戦といってもかつてのアメリカ対ソ連の冷戦とは異なり、現在の中国はヒト・モノ・カネで世界的に十分大きな存在となっていて、米・中の力は拮抗している。米・中はどこかで折り合えるのだろうか。一方、今回の新型コロナウイルスへの対応で中国の共産党権威に微かな揺らぎも感じられるということで講演を終えた。
    
質疑応答)

Q1.5月18日に開幕したWHOの総会で一番にスピーチした習近平の強気の演説は何を意味するのか。
→ あれは国内向けと解釈できる。中国に対する初動の遅れやマスク外交に対する各国からの批判、反発については中国国内ではほとんど報道されていない。
Q2.コロナ前とコロナ後では中国の立ち位置はどのように変わるのだろうか。
→ 中国はこれまでは世界1番を目指して突っ走ってきた。中国製造2025がその例。ただ1番になったらどうしようかという心の準備が出来ていないように見える。2049年に実現しようとしている「中国の夢」も具体的なイメージがない。一方、コロナ後の世界を考えると、アメリカの凋落は明らか。その意味、コロナ後の世界というのは米中対立が先鋭化する中で、かなり流動的になるのではないか。
Q3.習近平が国賓として来日する計画を中止するのに、3月初めまでもつれ込んだ。なぜ早々に訪日中止に踏み切れなかったのか。
→ 訪日中止自体が日本側の事情ではなかろうか。習近平の訪日は東京五輪と並んで安倍政権にとっては今年の最重要日程だった。ギリギリまで待ったのではないか。中国では日本の新型コロナウイルスへの対応の遅さ、スケールの小ささに失望する見方が多い。
Q4.アメリカのCDC(疾病予防管理センター)のような機関は中国にも存在するか。
→ CDCは中国にもある。各地にもあり、武漢にもある。しかし米国ほど政治的な力はない。ウイルス流行の初動が遅れた原因のひとつもここにあるのではないかと思う。ただ、米国のCDCもトップが政治任用という事情もあって、初動はかなりギクシャクしたと聞いている。

Webセミナー視聴後に寄せられた主な質問と講師の回答)

Q5. WHO総会での習近平のスピーチ、もっと国際協調を訴えた方が中国に有利に働くと思うのだがいかがか。
→ 北京駐在の時に経験したのだが、中国人は片言の英語しかできなくても「流暢に話せます」というのが常。謙譲は美徳ではなく、自分の弱さをさらけ出すのと同じと考える。新型コロナウイルスを短期間で制圧できたことを世界に誇示しなければ、国内での批判にさらされる。
Q6.中国経済の当面の回復スピードが速いとのことだが、今までの貯金が大きく残っているということか。
→貯金ということでは、財政状態が他のOECD諸国に比してかなり健全だったという指摘は出来よう。実はコロナ流行期間中でも多くの国営企業は稼働していたようだ。流行制圧に目途がついた時、まず国営企業の操業を再開させ、自動車などの基幹産業の操業再開を促し、従業員の確保、工場と宿舎の送迎などに対して、政府が手厚く支援した。
Q7. 全人代でGDP目標値が示されなかったのは、コロナの傷が思いのほか大きかったということか。
→全人代でGDP成長率目標が示されなかった第一の理由は、あまりにも先行きが不透明だから。特に輸出については、最大の輸出先であるアメリカとの貿易交渉や華為に対する制裁措置が見通せず、回復の気配は見えていない。二つ目の理由は雇用だ。短期的には2億人の失業者が発生、ほとんどが農民工。全人代での政府工作報告で最も多く使われた言葉が「就業」だった。この問題はボディーブローのように経済回復の足を引っ張っていると思う。
Q8.中国のトップは党内権力闘争でのし上がった成功体験の延長線上で、国際社会においても振舞っているようにしか見えない。“1番”になっても世界のリーダーたりえないのではないか。
→国際社会のリーダーたる要件にはいくつかあるが、自国通貨の人民元が国際通貨として信認されているとはいい難い面があること、普遍的な価値観を他国と共有するまでに至っていないことなど、越えるべきハードルは少なくない。一方、国際社会のリーダーとなるべき資質では、頭の良さや経験、知見という面からみれば中国各界のトップの力量は相当高い。その上、中国社会は猛烈な競争社会であり、その中でのし上がってきた人々の力量はかなりのものと認識すべき。問題は優れた能力を持つリーダーの一方で、地べたとの能力格差だ。中国はどうしても内向きの事象にエネルギーを注がざるを得ない。
文責 : 佐藤孝靖

講演資料:新型コロナウイルス流行と中国

 参考資料:「Webセミナーのご案内」
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2020年02月26日

EVF総会記念セミナー報告:「日本文明とエネルギー」〜歴史と地形から見るエネルギー論〜

演題:「日本文明とエネルギー」〜歴史と地形から見るエネルギー論〜
講師:NPO法人 日本水フォーラム代表理事 竹村 公太郎氏 
開催場所:JICA市ヶ谷ビル セミナールーム201AB
開催日時:2020年2月26日(水)15:30〜17:30

1.講師紹介
  講師の竹村先生は神奈川県のご出身で、東北大学工学研究科 土木工学専攻(修士課程)を修了後、建設省(当時)に入省し宮ヶ瀬ダム所長、近畿地方建設局長を経て国土交通省河川局長などを歴任。2002年に国土交通省を退官後、公益財団法人リバーフロント研究所代表理事を経て、現在はNPO法人日本水フォーラム代表理事・事務局長。
  先生は一貫して河川、水資源、環境問題に取り組まれ、著書にベストセラーとなった『日本史の謎は「地形」で解ける(PHP文庫3部作)』『水力発電が日本を救う』などのほか、養老孟司氏との共著に『本質を見抜く力〜環境・食料・エネルギー』などの著作がある。
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2.講演概要:
  今日の話しはエネルギー論を地形で統一し、過去の歴史を見て今はこうで、将来はこうなるだろうと話しを進められた。
・なぜ、桓武天皇は奈良から出たか? なぜ、家康は江戸に行ったか?
・江戸のオイルピークと近代のエンジンは化石エネルギー(人類の歴史の奇跡の一つに日本の明治以降の近代化)
・これからの時代を近代化(膨張への対応)と考えれば、経済発展しても林業・農業・漁業が衰退し、国土が荒廃してしまうので膨張は続かない。
・日本の生き残り作戦で新しいダムを造れないなら既存ダムをどう活用(ダムに発電機を整備、ダムの運用変更、ダムの嵩上げ、ピーク発電)するかを考え、水力エネルギーは地方分散型でやっていかねばならない。
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3.講演内容
  先ず、滅びた文明(8文明:メソポタミア、エジプト、クレタ、古代ギリシャ、ローマ、ビザンティン、中央アメリカ、アンデス)と存続した文明(5文明:西欧、イスラム、インド、中国、日本)の違いを過去と現在の状況(森林率などの環境変化)スライドで判りやすく説明され、次いで360度緑に囲まれ真ん中に湖のある奈良盆地が日本の都になった背景を生命の源の「水」とエネルギーの源の「森林」というインフラ面から説明された。
  「なぜ、桓武天皇は奈良から出たか?」では歴史家の間には諸説があるが、先生は土木屋=インフラの観点から燃料や建築(祈念構造物)流域の毎年百万本以上の立木伐採で周りの山が荒廃し、大和川より何倍も大きく「水」と「木」が豊かな淀川流域にある京都へ遷都したと、今の奈良盆地からは想像がつかない説明であった。
  次いで「なぜ、家康は江戸に行ったか?」では宮廷、寺院、城などの祈念構造物のための巨木伐採(木材需要)進展により森林再生が困難となる時代変遷と秀吉による山地荒廃した関西から未だ文明の地でなかった利根川流域の手つかずの森林(エネルギー)が広がる江戸への移封の歴史面から多くのスライドで説明された。
いよいよ「江戸のオイルピーク」の話しに移り、江戸時代の耕地面積と人口変遷グラフや天領となった天竜川流域の木材伐採量の推移グラフなどと歌川広重の「東海道五十三次」に描かれた沢山の絵には東海道筋の山や丘に鬱蒼とした木々がないはげ山の景色を重ね合せて江戸末期には日本列島全体の森林が荒廃し、貴重なエネルギー源であった木材の確保が難しくなっていたとのことだった。
  「近代のエンジンは化石エネルギー」について、人類の歴史の奇跡の一つに日本の明治以降の近代化の話しが紹介された。ペリー提督の黒船来航を機に大政奉還、王政復古となり、政府が蒸気機関を横浜〜新橋に導入し、北海道、いわきと九州で小規模だったが炭鉱が開かれ、当時の規模では石炭は無尽蔵で、これを機に紡績や重化学工業が発展した。
第2次世界大戦前夜の石油産出分布図(1940年)が紹介され、当時の需要量400万klに対して供給量は30万klしかなく残りはアメリカに依存していた。当時は国内で木炭バスが走り、各地の山々ははげ山と化していた。昭和天皇独自録に「先の戦争は、石油で始まり石油で終わった」とあり、エネルギー可採年数(2013年)が石炭で約109年、石油で約53年、ガスで約56年、巨大油田発見の経年変化を見ると発見の中心が1960年代で、供給のピークは2020年と云われていた。世界のエネルギー自給率(2015年)では、第1位のノルウェーが677.4%、第2位のオーストラリアが235%、第8位のアメリカが85.0%に対して日本は第33位の6.0%となっていて、再生可能エネルギーで「日本は生き残れるか?」もう限界が見えてきたとの事。
 これからの時代を「近代化(膨張への対応)、」と考えれば、人、面積、時間の生産性を上げることであった。人の生産性を上げるには大量生産のための画一性、マニュアル化→人は都市に集中し、各地方の過疎化への原因となった。面積の生産性で都市集中→地方の衰退→多様性の喪失に、時間とスピードを上げるとエネルギー大→地場産業が衰退し、自然と向き合ってきた林業・農業・漁業が衰退し、国土が荒廃していくことなった。この膨張は続かない。
  「確実な未来」について、気候変動による自然の狂暴化、地球環境の悪化とエネルギーの緊迫がほぼ間違いなく云えるとのこと。日本人口問題研究所の「日本二千年の人口史」
では江戸時代に3,000万人の人口が何処からも侵略されずピーク時には12,800万人まで急増し、現在12,400万人と減少し、これまでの膨張から縮小に転じ、持続可能から次世代、次々世代への「日本の生き残り作戦」は画一性から多様性、集中から分散型、スピードからスローにしろと云うこと。即ち石油、ガス、石炭、ウランは尽きるので、天然で尽きることのないエネルギーは太陽エネルギー、地球の重力、電磁場とマグマである。その「太陽エネルギーは無限で膨大」だが単位面積あたりのエネルギー濃度が薄いという弱点がある。風力も同じ。明治時代にグラハム・ベルが来日して日本列島を見て、四方海に囲まれお天道様があり、雨も降り、日本の地形は70%が山でエネルギーを集める装置があると見抜いたとのこと。これが水力エネルギーの強みである。日本列島は日本海側と太平洋側の間に分水嶺があり公平な国土をなしているが滝のような川が弱点でダムが必要となる。
「日本の水力発電」は、気象はアジアモンスーンの北限(雨が多い)、地理は海に囲まれている、地形は70%の山地が雨を集める装置、社会(インフラ)は平等な脊梁山脈で装置であるダムは太陽エネルギーの貯蔵庫と云える。
 先生は建設省に入省して川治ダム、大川ダムと宮ヶ瀬ダムの建設を担当された。新しいダムを造れないなら既存ダムをどう活用するかを考えている。先ずすべてのダムに発電機を整備する。ダムには発電機が付いているのもあるが、治水と利水があるが発電機が付いていない。ダムに簡単に穴を開けることができる。次いでダムの運用変更をする。特定多目的ダムには治水と利水があるが相反した運用を強いられている。治水はなるべく空にして洪水に備え、利水はなるべく貯めて渇水に備えている。今、台風が何時、何処に来るのか判っているので来る前に空けておけば良い。最近台風が多くなって、今やっと60年振りに運用変更が始まった。もう一つ、ダムの嵩上げがある。ダムの上部は広いので10m嵩上げすると容量がズーッと増える。もう一つ、本ダムの下流に小さなダムを造ってピーク発電の流量調整ダムとして使う。
 最後に、水力エネルギーとは太陽エネルギーと重力エネルギーとの話しで、これからの生き残りは進化(分化)で、進化は多様性(分散)。集中は退化であり、分散は進化である。東京への電力供給は大きな電力でやらねばならない。水力は分散型で中小規模発電であり、各地方でやっていける。これからはAI社会と云われているが、ものすごい電力を使う。日本海側は雪があり豊富なエネルギーがあるので、計算センターを日本海側に置くと良いだろう。
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  ここまで丁度1時間半、新型コロナウイルス感染予防のマスクを装着しながら多くのデータや写真を駆使した説明を頂き質疑応答に移り、主な質疑応答を以下に紹介します。
Q1:気候変動が激しくなり、予想も出来ない雨量が百年に一度ではなく変わってきている。インフラの整備とダムの話しをどう組み合わせたら良いのか?
A1:今あるダムをどう使うか、やっとその操作を変える方法が判って来た。今ある150位のダムの運用変更で、台風が来るぞ〜となったら水位を下げて空振りに終わったら(渇水、干ばつ)保険で対応する位考えて良いだろう。運用変更で洪水の安全性を上げる処に入ってきた。今あるダムを200%位価値あるダムに運用変更でして欲しいと云っている。
Q2:この前の台風で、ダムが満水になりオーバーフローすると崩れて大変なので緊急放流をするとの事だったが、これには運用変更で対応できると云うことか?
A2:あの事例はダムの洪水容量が絶対的に不足していた。山間部の川に障害物を造って流路を蛇行させ、洪水時にはその上流で水がダムアップする。これはダムではなく河道の蛇行の問題で、安全性のサービスには種々の工夫が必要。
Q3:農業用水に発電の仕掛けとか運用変更が仮に出来たとしたら日本の電力事情がどのようになるのか?
A3:今の電気のうち水力が10%位、既存ダムを使っても30%位か?水力は分散エネルギーなので、各地域毎にグリッドを造って使って行く世界になる、なって欲しい。
Q4:川に小水力発電機を設置しようとした場合やせせらぎにマイクロ水力発電機を設置しようとした場合、農業用水の水利権の問題があると聞いているが、政策的な対応は可能なのか?
A4:川という公共利用は厄介だが、川の水利権は随分緩くなって来た。但し、組織が大きく地方ほど難しい。所長が替わればガラッと変わるが、時間が解決する。
Q5:日本中にエネルギーを分散させた時に人口も分散しないと上手く行かないのでは?
A5:日本海側に農業用水というインフラがあるので世界の計算機センターを持って来て、若い人を集めるような事をしないと難しい。
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30分間の質疑応答も時間が足りないくらい密度の濃く判りやすいご説明で出席者一同の大喝采の中、2時間のご講演を終えました。
文責:奥野 政博

講演資料:日本文明とエネルギー
  
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2020年01月23日

EVFセミナー報告:食品ロスと必要とする人をつなぐマクジルトン・チャールズ氏20年の歩み

演題:食品ロスと必要とする人をつなぐマクジルトン・チャールズ氏20年の歩み
演題 : 「食品ロスと必要とする人をつなぐマクジルトン・チャールズ氏20年の歩み」
講師 : セカンドハーベスト・ジャパン 創業者/CEOマクジルトン・チャールズ氏
開催日時 : 2020年1月23日(木) 15:30〜17:30
開催場所 : NPO法人新現役ネット会議室
聴講者数 : 35名

1.講師紹介
講師のマクジルトン・チャールズ氏はアメリカ北西部モンタナ州の生まれで、高校卒業までの18年間は波乱に満ちたものだった。その後海軍で横須賀に駐屯→ミネソタ大学→上智大学に進学。上智大学の時に「山谷」や「隅田川沿いのホームレス」を体験する。これが講師のセカンドハーベスト・ジャパン創立の原点となった。
現在は上智大学教養学部非常勤教授(Sophia University, Faculty of Liberal Arts)

2.講演概要
現在日本での食料廃棄物は年間で1,800万トンにも達する。一方で、食べるものに困っている人が2百万人を超えている。講師はこの2つをつなぐ以下のような活動を20年間にわたり培ってきた。
(1)Harvest Central Kitchen:
寄贈された食品を調理し、生活が困窮している人々へ温かい食事を提供する活動
(2)Harvest Pantry:
個人世帯を対象に緊急食糧支援を行なう活動
(3)Food Bank:
品質には問題がなく賞味期限も残っているのに廃棄されてしまう食品を寄贈して貰い、配給先のニーズと調整しながら配給する活動
(4) Advocacy & Development:
フードバンク活動の普及と発展のための研究調査や講演、シンポジウムの開催など

2020年には、10万人に生活を支えるに十分な食べ物を配給する体制づくりを目指している。

3.講演内容
1.【フードバンク経歴】
◇ 2000年1月 : フードバンク/Food Bank Japan を設立 (連帯組織)共同代表
◇ 2002年3月11日 : セカンドハーベスト・ジャパンを設立 
◇ 2010年4月5日 : Second Harvest Asiaを設立 
◇ 2013年2月 : 公益財団法人フードバンク連盟を設立 理事長
2.東京では緊急的な支援を受けられる場がまだまだ少ない。
    ニューヨーク    : 1,100ヶ所
    サンフランシスコ  :  250ヶ所
    香港        :  160ヶ所
    東京        :  25ヶ所

3.2007年にテレビ「ガイアの夜明け」で取り上げられてから、食品を提供してくれる会社が飛躍的に増加して、今日の基礎を固めた。
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4.「ボランティア」と「無償スタッフ」の違い
ボランティアは自分の都合の良い時だけしか働かない。無償スタッフは必要な役務を無償で提供してくれる。

5.「生活困窮者を助けてあげる」のではなく、「困っている人が自立できるよう道具を貸してあげる」ことが大事である。

6.フードバンク運営の基本は食品を提供してくれる会社とも、食品を配給する相手とも対等な立場を維持することである。
・「あげる→もらう」の一方通行ではなくお互いが対等なパートナー。
・提供者とセカンドハーベストジャパンの対等な信頼関係が、セカンドハーベストジャパンと食品受給者との対等な関係につながる。

7.フードバンクの仕事のリーダーシップの過ちは、人としての適応性の課題をテクニカルな課題と間違えてとらえることである。

8.現在の課題は以下の3点が不足していることである。
    ・人材  :  People
    ・協力者 : Pertners
    ・資金  :  Philanthropy
    
4.質疑応答
  主な質疑は以下の通り。
Q.食品衛生に関する行政からの指導はあるか?
A.販売しているわけではないので行政からの指導はほとんどない。
    
Q.需要の見込み違いで提供された食品を廃棄することはないか?
A.需要と供給を計画的にマッチングさせているので廃棄することはない。

Q.食品提供者はセカンドハーベストジャパンに渡せば責任は終了か?
A.食品は提供者から預かった形であり、どこに配給したかを毎月提供者に報告している。

セミナー風景写真 :
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以上
文責 : 小栗武治

講演資料:マクジルトン チャールズ氏20年の歩み

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2019年12月19日

EVFセミナー報告:自動運転実現に向けた世界の動き

演題:自動運転実現に向けた世界の動き
講師:内村 孝彦様 特定非営利活動法人 ITS Japan常務理事 、東京大学生産研究所次世代モビリティ研究センター特任研究員
開催日時:2019年12月19日(木) 15:30〜17:30
開催場所:NPO法人新現役ネット会議室
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1.講師紹介
・1981年 日産自動車株式会社入社
・主な開発業務
 衝突安全、エアバック初の市場投入
 衝突安全開発を北米で開始
 世界統一ダミーの開発
 先行開発を北米で開始
・現在
 特定非営利活動法人 ITS Japan常務理事 
 東京大学生産研究所次世代モビリティ研究センター特任研究員
2.講演概要
自動運転車の商品化、普及より、交通事故の減少、渋滞削減、二酸化炭素の削減が見込まれている。各国や多くの自動車メーカーやその他の企業が完全自動運転相当の自動運転車の市販に向けて開発がおこなわれている。
講演では、民間組織の代表として関係組織と連携した活動を推進しているITS Japanの常務理事である講師が自動運転の課題と世界の自動運転開発動向とこれからの見通しなどについて、ITS(Intelligent Transport Systems:高度道路交通システム)の観点から分かりやすく語られた。
 世界の自動運転開発動向
 自動運転とは?
 世界動向
 欧州、米国、UK、日本
 高度自動運転車両(Level 4)
 Level 4 Mobility Service実用化の課題
自動運転は利点が多々あるが、潜在的障害も多く、障害に対処するための方策や制度上の問題、技術的限界、現地調査など、多岐にわたる情報からの、将来展望も含めた講演である。
3.講演内容
4,世界の自動運転開発動向
〇欧米共通
・実証実験が依然拡大
・自動運転に活用する車両の進化
・条件付自動運転(Level 3)以上の実現は容易でないと認識が高まる。
・自動運転実現には安全の確保は必須の下、規制の破壊的取り組みが必要である。
〇米国
・自動運転評価試験場が各地で拡大
・自動運転への物流への適用が進化
・自動運転用いて移動困難者へのモビリティ提供も進化
〇欧州
・二酸化炭素削減等環境対応への取り組みが拡大
・自動運転による環境改善への効果が期待される。
・国際連携を積極的に推進
自動運転と課題
●日本語では自動運転の表現は1つしかないが、英語は多種類あり、使う言葉により表す自動運転は異なる。
●自動運転への期待:渋滞による時間損失を問題視して、2次作業の許容を狙う。
●どのような自動運転を実現するのか:価値の提供が必要であり、欧州では運転中の2次作業の許容を目指す。米国では、製造物責任の課題があり、ドライバーに運転責任を残す考え方が主流。
●GMの運転者支援装備:2020年からドライバーの目の動きをモニターして周囲の監視を怠ると警報を発する。
●自動運転実現に向けた課題-1
センサーは異常気象による竜巻、枯葉、砂塵などを検知しにくい。
道路の地割れは発生比率は低いがセンサーは検知しにくい大きな問題がある。
センサーは、人間のような情緒的な判断ができない。
自動運転実現に向けた課題-2
遂次変化する環境への対応が難しい。
実験場だけのベンチテストだけでは評価不十分である。
性能とコストは比例する。
●自動運転実現に向けた課題-3
自動・手動運転車の混在問題があり、自動運転からの人間への切り替えの対処
システムのエラーへの対応能力に個人差がある。
ドライバーモニタリングとして注意喚起、状況記録が必要になる。
●自動運転実現に向けた課題-4
高度道路交通システムでは繋がるほどリスクが高まる。
法律と規制の制度や仕組み、事故や不具合時の賠償責任、実用化による効果の把握必要。
●自動運転実現に向けた課題-5
自動運転システムに対する倫理的配慮として安全、モビリティ、合法性の成立が必須である。
さまざまな環境でどのように自動化を機能させるか、哲学者と技術者の共同研究が必要。
●自動運転実現に向けた課題-6
法律は事故の起こり得るシナリオをカバーできない。
法律を破ることがより安全な場合もある。(速度超過、車線離脱、道路外走行)
車の挙動は、設計思想に委ねられる。
●保険に関するパラダイムシフト
運転者が関与しない車の責任の所在は、運転者?、自動車製造会社?、サプライヤ-?、
保険会社?、政府?、になるのか、現在の法律では運転者に責任があることになる。
運転支援により、交通事故が減少することが期待されている。
世界動向
情報源として2019年度の主要国際会議からの最新情報から
●欧米の動向
統合移動サービスの実現として自動運転車両の公共交通への活用に期待
●欧州の動向
・交通安全、排気ガス低減、渋滞削減、アクセス向上、輸送精度、快適性、時間の有効活用、土地利用の改善、新たな仕事の創出、欧州による業界リードを目的にITS、つながる車、自動化車両を取り込んだCooperative, connected and automated mobility (CCAM)を推進している。
・CCAM推進のための欧州委員会の施策として、デジタル、研究開発活動、協調型ITS、産業について欧州域で連携して共通目標であるCCAMの開発を加速させ実現するために、車載技術、車両評価、大規模デモ、共有自動運転、社会経済的評価、インフラと接続の保証、ビックデータ・AIの8つのテーマを上げて取り組んでいる。
法的枠組み:テスト、検証、認証の標準化。道路システムすべての関係者の責任と義務の定義。
・自動運転により、二酸化炭素削減等環境対応への取り組みが拡大し、環境改善への効果があると期待がよせられている。
●米国の動向
・米連邦運輸省のニーズとしては、毎年3万人を超える自動車事故による死者を減らしたい意向がある。
・自動運転車のスマートシティでのパイロットプログラムが一般市民も参画して3地域で実施されている。
ニューヨーク市では政府や民間企業の出資のもと、1万台の公用車を活用して交差点の安全、歩行者保護等を対象に、実施されている。
タンパ市では混雑時の渋滞削減と歩行者、自転車安全を対象に、実施されている。
気象が厳しいワイオミング州ではトラックへの気象、交通情報提供を対象に、実施されている。
・2018年10月に発行した自動運転車3.0の施策方針は、輸送の未来に備える6つの原則と戦略を掲げている。
安全性を優先、技術中立を維持、規制を刷新、規則、運用環境の整合促進、自動運転に積極的に対処、アメリカ人の亭受する自由を保護促進するとしている。
・各地で実施の自動運転低速シャトル実証試験では、当初フランス製であった車両を米国車で展開している。
・自動運転バスについては通勤渋滞がひどいリンカートンネル間で、渋滞削減を狙い、バス乗車促進による走行車両を削減する試みが始まった。
・自動運転車と協調型自動運転車に米連邦運輸省から8プロジェクトに60m$の助成金が投入されている。なお、米国は政府による自動車会社への介入は低い。
・自動運転評価試験場が各地で拡大
・国の予算で実施したので報告書はしっかりしたものになっている。
●UKの取り組み
・2019年9月発行の2030年までの協調型自動運転車のロードマップには、社会と人、車両、インフラ、サービスの観点での関連要素の連動をまとめている。
・モビリティの未来の施策では、人、物質、サービスの世界でリーダーになる。
・クリーンな成長の施策では、クリーンな成長への世界的変革について、英国産業の利点の最大化を目指している。
・高齢社会の施策では、高齢化社会のニーズを満たすために、革新力を活用するとしている。
・AI&データ経済の施策では、UKを人口知能とデータ革命の最前線に置くとしている。
●日本の取り組み
2019年9月発行の官民ITS構想・ロードマップ2019には、自動運転システムによる社会的期待として、より安全かつ円滑な道路交通社会、より多くの人が快適に移動できる社会、産業競争力の向上と関連産業の効率化を上げている。
・安全運転支援システムの普及については、交通事故削減にかかわる指標として2020年を.目途に交通事故死者数2500人以下としている。
・2025年までに、つぎの自動運転(Level 4)を確立する。
自家用車:高速道路での自動運転(Level 4)
物流サービス:高速道路での自動運転トラック(Level 4)
移動サービス: 限定地域での無人自動運転移動サービス(レLevel4)
・2030年までにつぎの世界一安全で円滑な道路交通社会を構築するという目標を定めている。
自家用車:交通事故の撲滅・交通渋滞の緩和、産業競争力の向上を図る。
物流サービス:人口減少時代に対応した物流の革新的効率化を図る。
移動サービス:全国各地域で高齢者等が自由に移動できる社会にする。
・自動走行ビジネス検討会を経済産業省と国土交通省で2015年に立ち上げた。
また、国土交通省は法律改正への取り組み、警察庁では交通ルール策定に取り組でいる。
高度自動運転車両(Level 4)
〇高度自動運転車両Level 4では、実現形態がつぎの2種存在する。
・走行環境によりレベルを変化させて走行できる車両
・操作系がなく常にレベル4で走行する車両
〇Level 4の課題
・乗用車の高度自動運転車両の課題・・・運転しない移動が可能、運転条件切り替えの際の要件、無人走行時の要件等
・乗用車派生の運転を必要としない移動専用車利用:新しい車両の定義、運転免許等
・低速シャトルの実用化から幅広い車両への展開:車両に求められる性能要件等
・利用制限範囲拡大に対する課題:車両にかかわる要件とインフラ等走行環境に関する要件
●自動運転を取り巻く環境
・ロードマップでは:物流/移動サービスについては2020年限定地域での無人自動移動サービスを実現、オーナーカーでは高速道路から一般道へ拡張していく。
・Level4車両の必要性:物流/移動サービスの運営上のコストは人件費が約60%を占める。
また、若い運転手の大型第二種免許保有者の年度ごとに減少、無人運転により人件費改善の可能性がある。
Level 4 モビリティサービス実用化の課題
●無人運転車両の実用化のニーズは高く、世界各地域で物流/移動サービス用車両に焦点を合わせ、Level4無人化を想定した実証実験が進行中であるが、実現に至れる車両の認可、運用など法制度含めた課題、持続可能とするビジネスモデルの構築等の諸条件が準備できていない。また、技術的難易度が高く、実用化・実運用にはまだ至っていない。
●Level 4モビリティサービスの実用化を実現したい。
・無人運転を実現するために、運行設計領域を含めた提供サービスを明確化し、国際的に受容できる地区限定実用化を実現し、早期に社会貢献することが望ましい。
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■質疑応答
Q1:Level 4の車両はいつ頃できるか
A1:高価格であるがもうすでにできている。
Q2:実証試験段階の保険は
A2:東京海上火災自動車保険で契約できると聞いている。
(文責:立花 賢一)
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2019年11月28日

EVFセミナー報告:これからのエネルギーとCO2活用への道

演 題 :これからのエネルギーとCO2活用への道
講  師 : 保田 隆 様 日揮グローバル株式会社シニアーフェロー
開催場所 : 品川区立綜合区民会館「きゅりあん」大会議室
開催日時 : 2019年11月28日(木)14:30〜17:30
 
1.講師略歴: 
・1982年 東京大学工学部反応化学科卒業、同年 日揮株式会社入社
・2003年〜2009年 リファイナリー、ニューエネルギープロセス部長
・2009年〜2014年 執行役員、技術統括担当役員(CTO)、技術開発本部長
・2014年〜2016年 常務執行役員、プロセス技術本部長
・2016年〜2018年 常務執行役員、インフラ統括本部長代行、技術イノベーション本部長
・2018年 日揮株式会社 顧問、日本エヌ・ユー・エス株式会社特任顧問
・2019年 日揮グローバル株式会社シニアフェロー、日本エヌ・ユー・エス株式会社シニアフェロー、日本メタンハイドレート調査株式会社(JMH)取締役、JCOAL評議員、石油学会理事など

2.講演概要:地球温暖化問題から今世紀中の「炭酸ガス排出実質ゼロ」に向けて、世界は脱炭素社会へ大きく舵を切りつつある。化石燃料に制約が課せられる一方、再生可能エネルギーや水素社会への転換が求められている。講演では、これからの世界におけるエネルギー問題と言う複雑なシステムを次の観点から問題を掘り起こし、将来展望が語られた。
〇現時点でのエネルギー各論
〇脱炭素社会から要請される各種のエネルギーのあるべき姿
〇低炭素・脱炭素社会を誘導するために新しく生まれつつある世界における金融・財政的仕組み
〇脱炭素社会創設のキーワードである「CO2の活用の道」
現代世界における最重要課題の一つである地球環境問題の根幹をなす「密接不可分なエネルギーと炭酸ガス問題」の現状分析、解決への道を技術的のみならず金融・財政的仕組みという観点からも縦横無尽に語り尽くされた感のある講演であった。
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3.講演内容:
(1)エネルギー長期見通し
今後20年間における世界的なエネルギー需要は30数%増加と見通されているが、一方環境意識から低炭素化が一層求められている。
個別エネルギーそれぞれの展望としては、再生エネルギーが全電源の半分を占め、化石燃料はエネルギー源として必要であるが、環境問題から天然ガス利用にシフトし石油、石炭等の化石燃料率は今後急激な低下を見る。原子力の需要も減少。
石炭は炭酸ガス問題からフェードアウト、石油は便利さから使い続けられるが、2035年頃までに需要がピークアウトすると見られる。
地球温暖化問題の深刻化から結果として世界的に再生可能エネルギーに頼らざるを得なくなる。化石燃料+CO2活用の道も探る必要がある。

1−1)LNG
世界的にLNG需要拡大(過去10年間で40%増加)最大の輸出国はオーストラリア、最大の輸入国は日本だが、中国、インドの輸入量アップが著しい。これからの20年間で産出量は倍増、アジア地域での消費量は世界の70%となる。一方、脱炭素問題から石炭同様座礁資産となる可能性もあり、バイオメタン、合成メタン、水素等への転換が求められる。
1−2)シェールガス
現在は、北米が生産の中心、これからは南米、中国等での生産が増加。米国は増産トレンド。
1−3)原子力
日本のエネルギー基本計画では2030年国内原子力発電シェア20〜22%としているが、達成は恐らく無理。中国、ロシア、新興国では伸びるがOECD国では撤退傾向。
1−4)再生可能エネルギー
今後最も増加するのは再生可能エネルギーである。2016年から2040年にかけて、水力を除いた風力、太陽光、地熱などの再生可能エネルギーの発電は2〜 3倍に増加すると予測。水力を含めると、一次エネルギー消費に占める再生可能エネルギーのシェアは2016年現在 の10.0%弱から、30%前後へと拡大。
再生可能エネルギーは自然任せで変動が大きい。従って、今後の課題として蓄エネルギーシステムの導入が必須であり、それらのコストダウンが再生エネルギー拡大の鍵。
再生エネルギーが普及するほどに、それらは分散エネルギーとなり、手軽に連続的に使うにはリチウム電池をはじめとする蓄電池の導入が不可欠となる。
1−5)水素エネルギー
水素は、脱炭素社会でのエネルギーとしての役割と同時に、炭酸ガス等を有効化学製品に転換するために必須のものである。
【水素を得る手段】化学反応によって化石資源や様々な化学物質から製造可能。
【水素エネルギーの運搬手段】水素製造場所から水素利用の場所までの移動のために、手段が必要。液体化、他の化学物質にくっつけて使用場所で分離する等々の方法あり。インフラ整備が課題。
【課題】これらの「手間」に掛かるコストの低減が課題。因みに、現状ではLNGが15円/m3に対し水素は100円/m3程度。少なくとも20円〜30円/m3にすることが必要。

(2)温室効果ガス削減とCO2活用への道
(2−1)パリ協定とそれをめぐる世界(含む石油メジャー)の動向
1)パリ協定(2015年):
・全ての国が温室効果ガス削減に取り組むこと。
・世界の気温上昇を産業革命以前の気温から2℃を超えない水準(1.5℃を努力目標)とする。
・今世紀中に世界の脱炭素化を図る(排出実質ゼロ)。化石燃料依存型からの抜本的転換。
・パリ協定達成のための必要CO2排出削減目標=2060年までに世界で年間300億トンを削減(2016年の世界のCO2排出量は323億トン、日本の全排出量=13億トン、日本の石炭火力排出量=2.6億トン、ガス火力=1.7億トン、石油火力=0.4億トン)。

2)パリ協定以降:
〇 欧米の動き
・EU環境理念主義とUS現実主義の対立
・欧州の施策=2050年にほぼ80%削減が目標。電力の脱炭素化へ。再生エネルギーへのシフト。石炭火力の停止。等々
・米国=パリ協定を離脱。温暖化ガス排出削減に係わる先進技術を展開し、世界のリーダーを目指す。CO2除去技術でCO2固定化の推進。
〇 日本の動き
・日本の長期戦略(2019年6月閣議決定)=脱炭素社会を目指し、2050年までに80%の温室効果ガスを削減。このため、革新的技術開発が必要。イノベーションを通じて環境と成長の好循環を目指す。
〇 石油メジャーの動き:
・株主、機関投資家、NGO等からの圧力もあり、石油に過度に依存しない経営体質への転換を急がざるを得なくなってきている。

(2−2) 温暖化問題とCO2活用への道
1)二酸化炭素削減技術
〇 CO2の利用や製造でよく用いられる技術用語を以下に簡単に解説する。
・【合成ガス】化石燃料のガス化や、触媒を用いて炭化水素を分解して得られる水素と一酸化炭素(CO)の混合ガス。さらにこれからアンモニア、メタノール等が誘導される。
・【FT合成】合成ガスから液体燃料を合成する。
・【メタネーション】CO2と水素からメタンを合成し、CO2発生の少ない燃料あるいは化学原料に転 
 換する。
・【逆シフト反応】CO2と水素からCOと水を作り、これを合成ガス原料とする。
・【部分酸化】炭化水素系燃料と空気の混合物を部分的に燃焼させる反応。水素に富んだ合成ガスが生成される。
〇 CCS:Carbon dioxide Capture and Storage:
発電所や工場排ガスから炭酸ガスを分離し、高圧で地中に圧入・貯留する。まだ開発途上とでもいうべき段階であり、世界的には大規模(年間80万トン以上)プロジェクトは10数件、処理される炭酸ガスは年間4000万トン程度にとどまる。日本では2019年11月22日に苫小牧で累積30万トンの圧入を達成した。
現状での試算では回収CO2トン当たり7300円と評価され、石炭火力では、kWh当り7300円となりまだまだ実用化には遠い。
・特殊な炭酸ガス固定法として、セメント製造時にセメントの半分以上を、CO2と反応することでCO2を吸収し固まる性質を持った混和材に置き換え、セメント製造時に排出されるCO2を大幅に削減する方法もある。
〇 CCUS:Carbon dioxide Capture、Utilization and Storage:
換言すれば、これはカーボンリサイクルである。CO2を回収した後に
・石油油田にCO2を高圧注入し、石油回収を行うと同時に地中にCO2を貯留。
・人工光合成(CO2と水素を原材料とし太陽エネルギーと触媒を活用し合成ガスを作る)の原料とし、さらに合成ガスから化学品を誘導する。水中の微細藻を利用し光合成で成長させ、これを原材料として液体燃料などを製造。

2)カーボンリサイクル
〇日本のカーボンリサイクル促進の動き:2019年1月ダボス会議で安倍首相がその重要性を強調。経産省にカーボンリサイクル室を設置。予算増加の動きあり、産学ともに推進機運にある。
ロードマップとしては、2030年までは回収技術の確立、その後普及品(ポリカーボネイト、バイオジェット燃料、コンクリート製品等)製造技術の低コスト化を実現し、安価な水素の調達が可能となる2050年以降は汎用品の生産技術確立を図る。
〇 カーボンリサイクルの中で、CO2を新しい燃料として転換するときに重要な働きをするのは水素であり水素コストがCO2用途拡大のキーとなる。
〇 水素製造コスト:水素製造法には各種あり、製造コストは原料コストに大きく依存するが、現状で製造コストの高いものから順に列記すると、水の電気分解、重質油の部分酸化、石炭ガス化、天然ガス中のメタンの水蒸気改質や部分酸化等々がある。いずれも、原料となる化石燃料および分解用エネルギーとしての電力コストにほぼ比例する。
水の電気分解の効率は既に充分高く、電解水素のコストダウンは既に限界に近く、他の方法での水素製造方法でのイノベーションがのぞまれる。

(3)まとめ(脱炭素社会実現のための世界の流れ)
〇 パリ協定の目標⇒今世紀中の「炭酸ガス排出実質ゼロ」に向けて、低炭素を軸とした現状から脱炭素を軸とした社会への転換のためには世界的な技術的イノベーションが必要になる。
〇 世界的な運輸・産業・民生・電力の各分野におけるCO2発生実態を定量的に把握し、次世代ないし次世紀まで持続させない技術とさらに生み出すべき技術を見極め、それらに必要な経済的側面も見極める必要があろう。
G20の要請により金融安定理事会が民間主導の気候変動関連財務情報開示(Task Force on Climate-related Financial Disclosure)を発足させた(2015年)。世界で567機関、日本で43機関が署名しており、パリ協定とTCFDとが密接に関連し始めている。
〇 財政面では、世界的には、ESG投資が進んでいる。これは環境(environment)、社会(social)、企業統治(governance)に配慮している企業(環境問題であれば、地球温暖化対策に取り組む企業)を重視・選別して行う投資である。世界的には2018年には3千兆円を超えている。
〇 <タクソノミー> EUのサステナビリティ方針に資する経済活動を分類したものであり、EUのアクションプランでは金融商品の基準や銀行の資本規制等、さらには機関投資家による投資などもタクソノミーのグリーンリストに基づくことが必要とされ、エネルギー関連では再生可能エネルギーは問題ないが、石炭火力は不適格とされている。
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Q&A
〇 バイオ利用のジェット燃料製造が世界でも複数試みられているが、展望如何?⇒技術的にはいろいろと進んでいるが、最終的にはコストが課題であろう。
〇 GTL(天然ガスからの液体燃料製造)の展望は?⇒ShellやSasolの技術が生かされ世界で商業生産に使われている。石油製品需要の減退傾向の中でGTLプラントのニーズは高くないと考えられる。CO2やバイオマスを活用した合成ガスからFT合成で液体燃料を製造するプロセスが期待されるが、コスト面ではハードルが非常に高い。
〇 CO2回収技術について⇒アミン回収が主流。コスト問題は装置規模との相関大。固体吸着・分離の方法もあり得る。
〇 ESG投資の見通しは?⇒世界的には確実に拡大しつつある。 
(文責:橋本 升)

講演資料:これからのエネルギーとCO2活用への道
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2019年10月24日

EVFセミナー報告:津波リスクと可動型防波堤による減災

演 題 :津波リスクと可動型防波堤による減災
講  師 : 平石哲也 様 京都大学防災研究所教授
開催場所 : NPO法人新現役ネット会議室
 
1.講師略歴: 
・1976年 3月 兵庫県立兵庫高等学校 卒
・1980年 3月 京都大学工学部交通土木工学科 卒
・1982年 3月 京都大学大学院工学研究科交通土木工学専攻 修了
・1982年 4月 旧運輸省入省 旧港湾技術研究所 海洋・水工部 波浪研究室
・1996年 3月    同 上           波浪研究室長
・2008年 4月 独立行政法人 港湾・空港技術研究所 海洋・水工部長
・2010年 4月 京都大学防災研究所 流域災害研究センター 教授


2.講演概要:
国土交通省港湾局による「防波堤による津波防災ガイドライン作成」時の委員を担当され、津波対策の第1線で活躍されている京都大学防災研究所の平石哲也教授から、「津波リスク(専門家がどのように評価しているか)」、「津波被害とその特徴」、「津波対策事例:(コンクリート式防潮堤における)カウンターウエイト工法の仕組み」、「流起式可動型防波堤」などを解説して頂いた。
今までの大津波のデータを専門的に評価し、近い内に大津波が起きる可能性に基づき、そのLEVEL2の大津波を設定して対応を行うことが必要であることを述べられた。次に、海外の大津波の事例などに基づき、大津波の分析がどのように進んでいるかの話があった。その後で、日本で行われているカウンターウェイト工法の仕組み、利点、欠点の話があった後、近年研究されている流起式可動型防波堤のご紹介があった。形式ばらず親しみやすいお話しで、津波関連の土木技術を良く知らない参加者にも分かり易い内容でした。

3.講演内容:
平石先生は、運輸省入省後、港湾技術研究所畑で28年研究をされた後に、京都大学に戻られて8年以上経っているご経歴で、ずっと港湾技術研究の第1線を歩まれています。
今回のセミナーは津波に焦点を当ててのセミナーでした。
先ず、基礎知識として、津波高の評価の仕方が「浸水高」(東京湾中等海面(T.P.)を基準面として地表上で津波が浸水した高さ)、「浸水深」(浸水高から地表面高さを引いたもの)、「遡上高」(丘や山に遡上して乗り上げた浸水高さ)に分かれていることから入りました。
次に津波リスクとして、東北、南海地域でマグニチュード9から8の大地震が100年おきかそれ以下のインターバルで起きて大津波が伴っていることから、今後30年以内に例えば南海地域に大地震が起きる可能性は現時点では70%以上(京都市民新聞での記事に基づき)であって、そしてその時に大津波が伴うリスクがあるとのことでした。
津波の被害とその特徴に関しては、人的な被害の他に、船舶、道路、橋、防波堤などへの津波の被害があって、防波堤や建物が壊れるメカニズムの中に専門的な分析(Piping,Scouring,液状化によるもの等)を行い、対策に繋げているとのことでした。
津波対策事例としては、津波対応強化のために古い設備の補強の必要性があって、堤防を高くするかさ上げが行われてきているが、基礎も新たに作る必要もあるし、できても海へのアクセスが困難というような問題も解決していく必要がある。海側に幅広となる堤防を作って面的な防御をすることが望ましいが土地等の制約があってなかなかできないのが課題である。 又、現在の堤防は、「防波堤に作用する(津波などの)波の力」の分析の下に、地震に対してのスライディングを考慮してコンクリートブロックをマウンドと呼ばれる土台の上に載せているのが一般である。この方式では杭で止めていない。その理由は高くつくからだそうです。
その後、長周期波浪による水平移動が問題視されるようになってから、後方にカウンターウエイトと呼ばれる重りをおく工法がとられており、前面に置く消波装置と併せてレジリエンシー(粘り強さ)の向上が図られている。京都大学は日建工学と共同でサブプレオフレームという商品名でカウンターウエイト工法を提供している。
もう一つ紹介されたのが流起式可動型防波堤で、港の入り口や河口などの開口部での津波の浸水を防止するもので、通常時は水底に邪魔にならずに設置してあり、その上部を津波の浸水が通る時の流れによって起き上がって、防波堤として機能することを特徴としている。この流起式防波堤は既に実験を含め開発はほぼ完了しており、マニュアルの作成段階に入っている。現在、適切な適用場所を検討している段階である。(大阪には高潮防止のための水門が3つ河口にあるが、これらは津波には対応できないことから、その前方に置くような実験を行ったこともある。この時は、流起式防波堤と水門を組み合わせるより流起式防波堤のみの方が経済的との結果が出て、実験の成果は活用されなかった。)

まとめとして、下記の4点を強調された。
・今後の防波堤はレベル2津波の設定・対応を行っていかねばならない。(今まではレベル1津波が中心)
・既存の防波堤は消波及び透水性構造物を有する構造物を用いて粘り強く津波を減災し、津波の到達時間を遅くするような機能を持たせなければならない。(レジリエンシーの向上)
・カウンターウエイト工法による減災を図ることも有用で重要である。
・可動型防波堤を有効に活用することで、減災を図ることができる。 
(文責:濱田英外)

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講演資料:津波リスクと可動型防波堤による減災
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