2020年06月01日

EVF Webセミナー参加申し込み方法、参加費の振込方法と質問・意見の送信方法

EVF Webセミナー参加申し込み方法、参加費の振込方法と質問・意見の送信方法

5月よりWebセミナーを開催します。

1)Web セミナー参加申し込み方法

通常セミナーと同様にセミナー申込みページからお願いします
「懇親会参加可否」は“不参加”をチェックお願いします

2)Web セミナー参加費の振込方法
EVF事務局より金額をe-mailで連絡いたします
指定口座宛てに期日までに振り込みをお願いします

3)Webセミナーへの質問・意見の送信方法
セミナー質問・意見のページから送信お願いします
事務局で整理し講師からの回答をHPに掲載いたします

Webセミナーについては、Webセミナーのご案内をご参照ください。
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2020年05月28日

EVFセミナー案内:「新型コロナウィルス流行と中国」

WebSemiIcon.jpg5月28日 EVFセミナーのご案内
演題: 「新型コロナウィルス流行と中国」

<セミナーの概要>
武漢市から発生した新型コロナウイルスは中国全土に拡散、その後欧米はじめ世界全土に広がった。湖北省全域を2カ月半にわたって封城(ロックダウン)し、他の地域でも厳しい外出制限、隔離政策が実施されたことで、3月に入ってから中国のウイルス流行は終息傾向を見せ、4月8日には武漢の封鎖が解除され、中国は徐々に常態に復帰しつつあるようだ。今年第一四半期の中国のGDP成長率はマイナス6.8%と1960年の大躍進政策失敗時のマイナス27%に次ぐ水準となった。
世界に先駆けて流行を制圧した中国は、インフラ投資の前倒し、金融緩和などの様々な政策を打ち出し、また、圧倒的な国内の生産力を背景にコロナウイルス対策用の医療資材輸出、流行制圧のノウハウ供給などにより国際的なプレゼンスを高めようともしている。
今回のパンデミックによる中国国内の最新情勢、アメリカや欧州、日本と関係した情勢について、地球儀を俯瞰する形で解説をいただきます。

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sem2020052801.jpg 講師:結城 隆氏
 中国ウォッチャー 荒井商事株式会社常勤顧問
日時:2020年5月28日(水)よりWeb公開

参加費:個人賛助会員・ネット会員 1,000円、一般 1,500円
  (いずれの方も振込手数料込)
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お申し込みは下記のURLをクリックして必要事項を記入し送信をお願いします。
セミナーの申込み : https://www.evfjp.org/postmail_semina/
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2020年02月26日

EVF総会記念セミナー報告:「日本文明とエネルギー」〜歴史と地形から見るエネルギー論〜

演題:「日本文明とエネルギー」〜歴史と地形から見るエネルギー論〜
講師:NPO法人 日本水フォーラム代表理事 竹村 公太郎氏 
開催場所:JICA市ヶ谷ビル セミナールーム201AB
開催日時:2020年2月26日(水)15:30〜17:30

1.講師紹介
  講師の竹村先生は神奈川県のご出身で、東北大学工学研究科 土木工学専攻(修士課程)を修了後、建設省(当時)に入省し宮ヶ瀬ダム所長、近畿地方建設局長を経て国土交通省河川局長などを歴任。2002年に国土交通省を退官後、公益財団法人リバーフロント研究所代表理事を経て、現在はNPO法人日本水フォーラム代表理事・事務局長。
  先生は一貫して河川、水資源、環境問題に取り組まれ、著書にベストセラーとなった『日本史の謎は「地形」で解ける(PHP文庫3部作)』『水力発電が日本を救う』などのほか、養老孟司氏との共著に『本質を見抜く力〜環境・食料・エネルギー』などの著作がある。
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2.講演概要:
  今日の話しはエネルギー論を地形で統一し、過去の歴史を見て今はこうで、将来はこうなるだろうと話しを進められた。
・なぜ、桓武天皇は奈良から出たか? なぜ、家康は江戸に行ったか?
・江戸のオイルピークと近代のエンジンは化石エネルギー(人類の歴史の奇跡の一つに日本の明治以降の近代化)
・これからの時代を近代化(膨張への対応)と考えれば、経済発展しても林業・農業・漁業が衰退し、国土が荒廃してしまうので膨張は続かない。
・日本の生き残り作戦で新しいダムを造れないなら既存ダムをどう活用(ダムに発電機を整備、ダムの運用変更、ダムの嵩上げ、ピーク発電)するかを考え、水力エネルギーは地方分散型でやっていかねばならない。
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3.講演内容
  先ず、滅びた文明(8文明:メソポタミア、エジプト、クレタ、古代ギリシャ、ローマ、ビザンティン、中央アメリカ、アンデス)と存続した文明(5文明:西欧、イスラム、インド、中国、日本)の違いを過去と現在の状況(森林率などの環境変化)スライドで判りやすく説明され、次いで360度緑に囲まれ真ん中に湖のある奈良盆地が日本の都になった背景を生命の源の「水」とエネルギーの源の「森林」というインフラ面から説明された。
  「なぜ、桓武天皇は奈良から出たか?」では歴史家の間には諸説があるが、先生は土木屋=インフラの観点から燃料や建築(祈念構造物)流域の毎年百万本以上の立木伐採で周りの山が荒廃し、大和川より何倍も大きく「水」と「木」が豊かな淀川流域にある京都へ遷都したと、今の奈良盆地からは想像がつかない説明であった。
  次いで「なぜ、家康は江戸に行ったか?」では宮廷、寺院、城などの祈念構造物のための巨木伐採(木材需要)進展により森林再生が困難となる時代変遷と秀吉による山地荒廃した関西から未だ文明の地でなかった利根川流域の手つかずの森林(エネルギー)が広がる江戸への移封の歴史面から多くのスライドで説明された。
いよいよ「江戸のオイルピーク」の話しに移り、江戸時代の耕地面積と人口変遷グラフや天領となった天竜川流域の木材伐採量の推移グラフなどと歌川広重の「東海道五十三次」に描かれた沢山の絵には東海道筋の山や丘に鬱蒼とした木々がないはげ山の景色を重ね合せて江戸末期には日本列島全体の森林が荒廃し、貴重なエネルギー源であった木材の確保が難しくなっていたとのことだった。
  「近代のエンジンは化石エネルギー」について、人類の歴史の奇跡の一つに日本の明治以降の近代化の話しが紹介された。ペリー提督の黒船来航を機に大政奉還、王政復古となり、政府が蒸気機関を横浜〜新橋に導入し、北海道、いわきと九州で小規模だったが炭鉱が開かれ、当時の規模では石炭は無尽蔵で、これを機に紡績や重化学工業が発展した。
第2次世界大戦前夜の石油産出分布図(1940年)が紹介され、当時の需要量400万klに対して供給量は30万klしかなく残りはアメリカに依存していた。当時は国内で木炭バスが走り、各地の山々ははげ山と化していた。昭和天皇独自録に「先の戦争は、石油で始まり石油で終わった」とあり、エネルギー可採年数(2013年)が石炭で約109年、石油で約53年、ガスで約56年、巨大油田発見の経年変化を見ると発見の中心が1960年代で、供給のピークは2020年と云われていた。世界のエネルギー自給率(2015年)では、第1位のノルウェーが677.4%、第2位のオーストラリアが235%、第8位のアメリカが85.0%に対して日本は第33位の6.0%となっていて、再生可能エネルギーで「日本は生き残れるか?」もう限界が見えてきたとの事。
 これからの時代を「近代化(膨張への対応)、」と考えれば、人、面積、時間の生産性を上げることであった。人の生産性を上げるには大量生産のための画一性、マニュアル化→人は都市に集中し、各地方の過疎化への原因となった。面積の生産性で都市集中→地方の衰退→多様性の喪失に、時間とスピードを上げるとエネルギー大→地場産業が衰退し、自然と向き合ってきた林業・農業・漁業が衰退し、国土が荒廃していくことなった。この膨張は続かない。
  「確実な未来」について、気候変動による自然の狂暴化、地球環境の悪化とエネルギーの緊迫がほぼ間違いなく云えるとのこと。日本人口問題研究所の「日本二千年の人口史」
では江戸時代に3,000万人の人口が何処からも侵略されずピーク時には12,800万人まで急増し、現在12,400万人と減少し、これまでの膨張から縮小に転じ、持続可能から次世代、次々世代への「日本の生き残り作戦」は画一性から多様性、集中から分散型、スピードからスローにしろと云うこと。即ち石油、ガス、石炭、ウランは尽きるので、天然で尽きることのないエネルギーは太陽エネルギー、地球の重力、電磁場とマグマである。その「太陽エネルギーは無限で膨大」だが単位面積あたりのエネルギー濃度が薄いという弱点がある。風力も同じ。明治時代にグラハム・ベルが来日して日本列島を見て、四方海に囲まれお天道様があり、雨も降り、日本の地形は70%が山でエネルギーを集める装置があると見抜いたとのこと。これが水力エネルギーの強みである。日本列島は日本海側と太平洋側の間に分水嶺があり公平な国土をなしているが滝のような川が弱点でダムが必要となる。
「日本の水力発電」は、気象はアジアモンスーンの北限(雨が多い)、地理は海に囲まれている、地形は70%の山地が雨を集める装置、社会(インフラ)は平等な脊梁山脈で装置であるダムは太陽エネルギーの貯蔵庫と云える。
 先生は建設省に入省して川治ダム、大川ダムと宮ヶ瀬ダムの建設を担当された。新しいダムを造れないなら既存ダムをどう活用するかを考えている。先ずすべてのダムに発電機を整備する。ダムには発電機が付いているのもあるが、治水と利水があるが発電機が付いていない。ダムに簡単に穴を開けることができる。次いでダムの運用変更をする。特定多目的ダムには治水と利水があるが相反した運用を強いられている。治水はなるべく空にして洪水に備え、利水はなるべく貯めて渇水に備えている。今、台風が何時、何処に来るのか判っているので来る前に空けておけば良い。最近台風が多くなって、今やっと60年振りに運用変更が始まった。もう一つ、ダムの嵩上げがある。ダムの上部は広いので10m嵩上げすると容量がズーッと増える。もう一つ、本ダムの下流に小さなダムを造ってピーク発電の流量調整ダムとして使う。
 最後に、水力エネルギーとは太陽エネルギーと重力エネルギーとの話しで、これからの生き残りは進化(分化)で、進化は多様性(分散)。集中は退化であり、分散は進化である。東京への電力供給は大きな電力でやらねばならない。水力は分散型で中小規模発電であり、各地方でやっていける。これからはAI社会と云われているが、ものすごい電力を使う。日本海側は雪があり豊富なエネルギーがあるので、計算センターを日本海側に置くと良いだろう。
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  ここまで丁度1時間半、新型コロナウイルス感染予防のマスクを装着しながら多くのデータや写真を駆使した説明を頂き質疑応答に移り、主な質疑応答を以下に紹介します。
Q1:気候変動が激しくなり、予想も出来ない雨量が百年に一度ではなく変わってきている。インフラの整備とダムの話しをどう組み合わせたら良いのか?
A1:今あるダムをどう使うか、やっとその操作を変える方法が判って来た。今ある150位のダムの運用変更で、台風が来るぞ〜となったら水位を下げて空振りに終わったら(渇水、干ばつ)保険で対応する位考えて良いだろう。運用変更で洪水の安全性を上げる処に入ってきた。今あるダムを200%位価値あるダムに運用変更でして欲しいと云っている。
Q2:この前の台風で、ダムが満水になりオーバーフローすると崩れて大変なので緊急放流をするとの事だったが、これには運用変更で対応できると云うことか?
A2:あの事例はダムの洪水容量が絶対的に不足していた。山間部の川に障害物を造って流路を蛇行させ、洪水時にはその上流で水がダムアップする。これはダムではなく河道の蛇行の問題で、安全性のサービスには種々の工夫が必要。
Q3:農業用水に発電の仕掛けとか運用変更が仮に出来たとしたら日本の電力事情がどのようになるのか?
A3:今の電気のうち水力が10%位、既存ダムを使っても30%位か?水力は分散エネルギーなので、各地域毎にグリッドを造って使って行く世界になる、なって欲しい。
Q4:川に小水力発電機を設置しようとした場合やせせらぎにマイクロ水力発電機を設置しようとした場合、農業用水の水利権の問題があると聞いているが、政策的な対応は可能なのか?
A4:川という公共利用は厄介だが、川の水利権は随分緩くなって来た。但し、組織が大きく地方ほど難しい。所長が替わればガラッと変わるが、時間が解決する。
Q5:日本中にエネルギーを分散させた時に人口も分散しないと上手く行かないのでは?
A5:日本海側に農業用水というインフラがあるので世界の計算機センターを持って来て、若い人を集めるような事をしないと難しい。
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30分間の質疑応答も時間が足りないくらい密度の濃く判りやすいご説明で出席者一同の大喝采の中、2時間のご講演を終えました。
文責:奥野 政博

講演資料:日本文明とエネルギー
  
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2020年01月23日

EVFセミナー報告:食品ロスと必要とする人をつなぐマクジルトン・チャールズ氏20年の歩み

演題:食品ロスと必要とする人をつなぐマクジルトン・チャールズ氏20年の歩み
演題 : 「食品ロスと必要とする人をつなぐマクジルトン・チャールズ氏20年の歩み」
講師 : セカンドハーベスト・ジャパン 創業者/CEOマクジルトン・チャールズ氏
開催日時 : 2020年1月23日(木) 15:30〜17:30
開催場所 : NPO法人新現役ネット会議室
聴講者数 : 35名

1.講師紹介
講師のマクジルトン・チャールズ氏はアメリカ北西部モンタナ州の生まれで、高校卒業までの18年間は波乱に満ちたものだった。その後海軍で横須賀に駐屯→ミネソタ大学→上智大学に進学。上智大学の時に「山谷」や「隅田川沿いのホームレス」を体験する。これが講師のセカンドハーベスト・ジャパン創立の原点となった。
現在は上智大学教養学部非常勤教授(Sophia University, Faculty of Liberal Arts)

2.講演概要
現在日本での食料廃棄物は年間で1,800万トンにも達する。一方で、食べるものに困っている人が2百万人を超えている。講師はこの2つをつなぐ以下のような活動を20年間にわたり培ってきた。
(1)Harvest Central Kitchen:
寄贈された食品を調理し、生活が困窮している人々へ温かい食事を提供する活動
(2)Harvest Pantry:
個人世帯を対象に緊急食糧支援を行なう活動
(3)Food Bank:
品質には問題がなく賞味期限も残っているのに廃棄されてしまう食品を寄贈して貰い、配給先のニーズと調整しながら配給する活動
(4) Advocacy & Development:
フードバンク活動の普及と発展のための研究調査や講演、シンポジウムの開催など

2020年には、10万人に生活を支えるに十分な食べ物を配給する体制づくりを目指している。

3.講演内容
1.【フードバンク経歴】
◇ 2000年1月 : フードバンク/Food Bank Japan を設立 (連帯組織)共同代表
◇ 2002年3月11日 : セカンドハーベスト・ジャパンを設立 
◇ 2010年4月5日 : Second Harvest Asiaを設立 
◇ 2013年2月 : 公益財団法人フードバンク連盟を設立 理事長
2.東京では緊急的な支援を受けられる場がまだまだ少ない。
    ニューヨーク    : 1,100ヶ所
    サンフランシスコ  :  250ヶ所
    香港        :  160ヶ所
    東京        :  25ヶ所

3.2007年にテレビ「ガイアの夜明け」で取り上げられてから、食品を提供してくれる会社が飛躍的に増加して、今日の基礎を固めた。
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4.「ボランティア」と「無償スタッフ」の違い
ボランティアは自分の都合の良い時だけしか働かない。無償スタッフは必要な役務を無償で提供してくれる。

5.「生活困窮者を助けてあげる」のではなく、「困っている人が自立できるよう道具を貸してあげる」ことが大事である。

6.フードバンク運営の基本は食品を提供してくれる会社とも、食品を配給する相手とも対等な立場を維持することである。
・「あげる→もらう」の一方通行ではなくお互いが対等なパートナー。
・提供者とセカンドハーベストジャパンの対等な信頼関係が、セカンドハーベストジャパンと食品受給者との対等な関係につながる。

7.フードバンクの仕事のリーダーシップの過ちは、人としての適応性の課題をテクニカルな課題と間違えてとらえることである。

8.現在の課題は以下の3点が不足していることである。
    ・人材  :  People
    ・協力者 : Pertners
    ・資金  :  Philanthropy
    
4.質疑応答
  主な質疑は以下の通り。
Q.食品衛生に関する行政からの指導はあるか?
A.販売しているわけではないので行政からの指導はほとんどない。
    
Q.需要の見込み違いで提供された食品を廃棄することはないか?
A.需要と供給を計画的にマッチングさせているので廃棄することはない。

Q.食品提供者はセカンドハーベストジャパンに渡せば責任は終了か?
A.食品は提供者から預かった形であり、どこに配給したかを毎月提供者に報告している。

セミナー風景写真 :
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以上
文責 : 小栗武治

講演資料:マクジルトン チャールズ氏20年の歩み

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2019年12月19日

EVFセミナー報告:自動運転実現に向けた世界の動き

演題:自動運転実現に向けた世界の動き
講師:内村 孝彦様 特定非営利活動法人 ITS Japan常務理事 、東京大学生産研究所次世代モビリティ研究センター特任研究員
開催日時:2019年12月19日(木) 15:30〜17:30
開催場所:NPO法人新現役ネット会議室
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1.講師紹介
・1981年 日産自動車株式会社入社
・主な開発業務
 衝突安全、エアバック初の市場投入
 衝突安全開発を北米で開始
 世界統一ダミーの開発
 先行開発を北米で開始
・現在
 特定非営利活動法人 ITS Japan常務理事 
 東京大学生産研究所次世代モビリティ研究センター特任研究員
2.講演概要
自動運転車の商品化、普及より、交通事故の減少、渋滞削減、二酸化炭素の削減が見込まれている。各国や多くの自動車メーカーやその他の企業が完全自動運転相当の自動運転車の市販に向けて開発がおこなわれている。
講演では、民間組織の代表として関係組織と連携した活動を推進しているITS Japanの常務理事である講師が自動運転の課題と世界の自動運転開発動向とこれからの見通しなどについて、ITS(Intelligent Transport Systems:高度道路交通システム)の観点から分かりやすく語られた。
 世界の自動運転開発動向
 自動運転とは?
 世界動向
 欧州、米国、UK、日本
 高度自動運転車両(Level 4)
 Level 4 Mobility Service実用化の課題
自動運転は利点が多々あるが、潜在的障害も多く、障害に対処するための方策や制度上の問題、技術的限界、現地調査など、多岐にわたる情報からの、将来展望も含めた講演である。
3.講演内容
4,世界の自動運転開発動向
〇欧米共通
・実証実験が依然拡大
・自動運転に活用する車両の進化
・条件付自動運転(Level 3)以上の実現は容易でないと認識が高まる。
・自動運転実現には安全の確保は必須の下、規制の破壊的取り組みが必要である。
〇米国
・自動運転評価試験場が各地で拡大
・自動運転への物流への適用が進化
・自動運転用いて移動困難者へのモビリティ提供も進化
〇欧州
・二酸化炭素削減等環境対応への取り組みが拡大
・自動運転による環境改善への効果が期待される。
・国際連携を積極的に推進
自動運転と課題
●日本語では自動運転の表現は1つしかないが、英語は多種類あり、使う言葉により表す自動運転は異なる。
●自動運転への期待:渋滞による時間損失を問題視して、2次作業の許容を狙う。
●どのような自動運転を実現するのか:価値の提供が必要であり、欧州では運転中の2次作業の許容を目指す。米国では、製造物責任の課題があり、ドライバーに運転責任を残す考え方が主流。
●GMの運転者支援装備:2020年からドライバーの目の動きをモニターして周囲の監視を怠ると警報を発する。
●自動運転実現に向けた課題-1
センサーは異常気象による竜巻、枯葉、砂塵などを検知しにくい。
道路の地割れは発生比率は低いがセンサーは検知しにくい大きな問題がある。
センサーは、人間のような情緒的な判断ができない。
自動運転実現に向けた課題-2
遂次変化する環境への対応が難しい。
実験場だけのベンチテストだけでは評価不十分である。
性能とコストは比例する。
●自動運転実現に向けた課題-3
自動・手動運転車の混在問題があり、自動運転からの人間への切り替えの対処
システムのエラーへの対応能力に個人差がある。
ドライバーモニタリングとして注意喚起、状況記録が必要になる。
●自動運転実現に向けた課題-4
高度道路交通システムでは繋がるほどリスクが高まる。
法律と規制の制度や仕組み、事故や不具合時の賠償責任、実用化による効果の把握必要。
●自動運転実現に向けた課題-5
自動運転システムに対する倫理的配慮として安全、モビリティ、合法性の成立が必須である。
さまざまな環境でどのように自動化を機能させるか、哲学者と技術者の共同研究が必要。
●自動運転実現に向けた課題-6
法律は事故の起こり得るシナリオをカバーできない。
法律を破ることがより安全な場合もある。(速度超過、車線離脱、道路外走行)
車の挙動は、設計思想に委ねられる。
●保険に関するパラダイムシフト
運転者が関与しない車の責任の所在は、運転者?、自動車製造会社?、サプライヤ-?、
保険会社?、政府?、になるのか、現在の法律では運転者に責任があることになる。
運転支援により、交通事故が減少することが期待されている。
世界動向
情報源として2019年度の主要国際会議からの最新情報から
●欧米の動向
統合移動サービスの実現として自動運転車両の公共交通への活用に期待
●欧州の動向
・交通安全、排気ガス低減、渋滞削減、アクセス向上、輸送精度、快適性、時間の有効活用、土地利用の改善、新たな仕事の創出、欧州による業界リードを目的にITS、つながる車、自動化車両を取り込んだCooperative, connected and automated mobility (CCAM)を推進している。
・CCAM推進のための欧州委員会の施策として、デジタル、研究開発活動、協調型ITS、産業について欧州域で連携して共通目標であるCCAMの開発を加速させ実現するために、車載技術、車両評価、大規模デモ、共有自動運転、社会経済的評価、インフラと接続の保証、ビックデータ・AIの8つのテーマを上げて取り組んでいる。
法的枠組み:テスト、検証、認証の標準化。道路システムすべての関係者の責任と義務の定義。
・自動運転により、二酸化炭素削減等環境対応への取り組みが拡大し、環境改善への効果があると期待がよせられている。
●米国の動向
・米連邦運輸省のニーズとしては、毎年3万人を超える自動車事故による死者を減らしたい意向がある。
・自動運転車のスマートシティでのパイロットプログラムが一般市民も参画して3地域で実施されている。
ニューヨーク市では政府や民間企業の出資のもと、1万台の公用車を活用して交差点の安全、歩行者保護等を対象に、実施されている。
タンパ市では混雑時の渋滞削減と歩行者、自転車安全を対象に、実施されている。
気象が厳しいワイオミング州ではトラックへの気象、交通情報提供を対象に、実施されている。
・2018年10月に発行した自動運転車3.0の施策方針は、輸送の未来に備える6つの原則と戦略を掲げている。
安全性を優先、技術中立を維持、規制を刷新、規則、運用環境の整合促進、自動運転に積極的に対処、アメリカ人の亭受する自由を保護促進するとしている。
・各地で実施の自動運転低速シャトル実証試験では、当初フランス製であった車両を米国車で展開している。
・自動運転バスについては通勤渋滞がひどいリンカートンネル間で、渋滞削減を狙い、バス乗車促進による走行車両を削減する試みが始まった。
・自動運転車と協調型自動運転車に米連邦運輸省から8プロジェクトに60m$の助成金が投入されている。なお、米国は政府による自動車会社への介入は低い。
・自動運転評価試験場が各地で拡大
・国の予算で実施したので報告書はしっかりしたものになっている。
●UKの取り組み
・2019年9月発行の2030年までの協調型自動運転車のロードマップには、社会と人、車両、インフラ、サービスの観点での関連要素の連動をまとめている。
・モビリティの未来の施策では、人、物質、サービスの世界でリーダーになる。
・クリーンな成長の施策では、クリーンな成長への世界的変革について、英国産業の利点の最大化を目指している。
・高齢社会の施策では、高齢化社会のニーズを満たすために、革新力を活用するとしている。
・AI&データ経済の施策では、UKを人口知能とデータ革命の最前線に置くとしている。
●日本の取り組み
2019年9月発行の官民ITS構想・ロードマップ2019には、自動運転システムによる社会的期待として、より安全かつ円滑な道路交通社会、より多くの人が快適に移動できる社会、産業競争力の向上と関連産業の効率化を上げている。
・安全運転支援システムの普及については、交通事故削減にかかわる指標として2020年を.目途に交通事故死者数2500人以下としている。
・2025年までに、つぎの自動運転(Level 4)を確立する。
自家用車:高速道路での自動運転(Level 4)
物流サービス:高速道路での自動運転トラック(Level 4)
移動サービス: 限定地域での無人自動運転移動サービス(レLevel4)
・2030年までにつぎの世界一安全で円滑な道路交通社会を構築するという目標を定めている。
自家用車:交通事故の撲滅・交通渋滞の緩和、産業競争力の向上を図る。
物流サービス:人口減少時代に対応した物流の革新的効率化を図る。
移動サービス:全国各地域で高齢者等が自由に移動できる社会にする。
・自動走行ビジネス検討会を経済産業省と国土交通省で2015年に立ち上げた。
また、国土交通省は法律改正への取り組み、警察庁では交通ルール策定に取り組でいる。
高度自動運転車両(Level 4)
〇高度自動運転車両Level 4では、実現形態がつぎの2種存在する。
・走行環境によりレベルを変化させて走行できる車両
・操作系がなく常にレベル4で走行する車両
〇Level 4の課題
・乗用車の高度自動運転車両の課題・・・運転しない移動が可能、運転条件切り替えの際の要件、無人走行時の要件等
・乗用車派生の運転を必要としない移動専用車利用:新しい車両の定義、運転免許等
・低速シャトルの実用化から幅広い車両への展開:車両に求められる性能要件等
・利用制限範囲拡大に対する課題:車両にかかわる要件とインフラ等走行環境に関する要件
●自動運転を取り巻く環境
・ロードマップでは:物流/移動サービスについては2020年限定地域での無人自動移動サービスを実現、オーナーカーでは高速道路から一般道へ拡張していく。
・Level4車両の必要性:物流/移動サービスの運営上のコストは人件費が約60%を占める。
また、若い運転手の大型第二種免許保有者の年度ごとに減少、無人運転により人件費改善の可能性がある。
Level 4 モビリティサービス実用化の課題
●無人運転車両の実用化のニーズは高く、世界各地域で物流/移動サービス用車両に焦点を合わせ、Level4無人化を想定した実証実験が進行中であるが、実現に至れる車両の認可、運用など法制度含めた課題、持続可能とするビジネスモデルの構築等の諸条件が準備できていない。また、技術的難易度が高く、実用化・実運用にはまだ至っていない。
●Level 4モビリティサービスの実用化を実現したい。
・無人運転を実現するために、運行設計領域を含めた提供サービスを明確化し、国際的に受容できる地区限定実用化を実現し、早期に社会貢献することが望ましい。
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■質疑応答
Q1:Level 4の車両はいつ頃できるか
A1:高価格であるがもうすでにできている。
Q2:実証試験段階の保険は
A2:東京海上火災自動車保険で契約できると聞いている。
(文責:立花 賢一)
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2019年11月28日

EVFセミナー報告:これからのエネルギーとCO2活用への道

演 題 :これからのエネルギーとCO2活用への道
講  師 : 保田 隆 様 日揮グローバル株式会社シニアーフェロー
開催場所 : 品川区立綜合区民会館「きゅりあん」大会議室
開催日時 : 2019年11月28日(木)14:30〜17:30
 
1.講師略歴: 
・1982年 東京大学工学部反応化学科卒業、同年 日揮株式会社入社
・2003年〜2009年 リファイナリー、ニューエネルギープロセス部長
・2009年〜2014年 執行役員、技術統括担当役員(CTO)、技術開発本部長
・2014年〜2016年 常務執行役員、プロセス技術本部長
・2016年〜2018年 常務執行役員、インフラ統括本部長代行、技術イノベーション本部長
・2018年 日揮株式会社 顧問、日本エヌ・ユー・エス株式会社特任顧問
・2019年 日揮グローバル株式会社シニアフェロー、日本エヌ・ユー・エス株式会社シニアフェロー、日本メタンハイドレート調査株式会社(JMH)取締役、JCOAL評議員、石油学会理事など

2.講演概要:地球温暖化問題から今世紀中の「炭酸ガス排出実質ゼロ」に向けて、世界は脱炭素社会へ大きく舵を切りつつある。化石燃料に制約が課せられる一方、再生可能エネルギーや水素社会への転換が求められている。講演では、これからの世界におけるエネルギー問題と言う複雑なシステムを次の観点から問題を掘り起こし、将来展望が語られた。
〇現時点でのエネルギー各論
〇脱炭素社会から要請される各種のエネルギーのあるべき姿
〇低炭素・脱炭素社会を誘導するために新しく生まれつつある世界における金融・財政的仕組み
〇脱炭素社会創設のキーワードである「CO2の活用の道」
現代世界における最重要課題の一つである地球環境問題の根幹をなす「密接不可分なエネルギーと炭酸ガス問題」の現状分析、解決への道を技術的のみならず金融・財政的仕組みという観点からも縦横無尽に語り尽くされた感のある講演であった。
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3.講演内容:
(1)エネルギー長期見通し
今後20年間における世界的なエネルギー需要は30数%増加と見通されているが、一方環境意識から低炭素化が一層求められている。
個別エネルギーそれぞれの展望としては、再生エネルギーが全電源の半分を占め、化石燃料はエネルギー源として必要であるが、環境問題から天然ガス利用にシフトし石油、石炭等の化石燃料率は今後急激な低下を見る。原子力の需要も減少。
石炭は炭酸ガス問題からフェードアウト、石油は便利さから使い続けられるが、2035年頃までに需要がピークアウトすると見られる。
地球温暖化問題の深刻化から結果として世界的に再生可能エネルギーに頼らざるを得なくなる。化石燃料+CO2活用の道も探る必要がある。

1−1)LNG
世界的にLNG需要拡大(過去10年間で40%増加)最大の輸出国はオーストラリア、最大の輸入国は日本だが、中国、インドの輸入量アップが著しい。これからの20年間で産出量は倍増、アジア地域での消費量は世界の70%となる。一方、脱炭素問題から石炭同様座礁資産となる可能性もあり、バイオメタン、合成メタン、水素等への転換が求められる。
1−2)シェールガス
現在は、北米が生産の中心、これからは南米、中国等での生産が増加。米国は増産トレンド。
1−3)原子力
日本のエネルギー基本計画では2030年国内原子力発電シェア20〜22%としているが、達成は恐らく無理。中国、ロシア、新興国では伸びるがOECD国では撤退傾向。
1−4)再生可能エネルギー
今後最も増加するのは再生可能エネルギーである。2016年から2040年にかけて、水力を除いた風力、太陽光、地熱などの再生可能エネルギーの発電は2〜 3倍に増加すると予測。水力を含めると、一次エネルギー消費に占める再生可能エネルギーのシェアは2016年現在 の10.0%弱から、30%前後へと拡大。
再生可能エネルギーは自然任せで変動が大きい。従って、今後の課題として蓄エネルギーシステムの導入が必須であり、それらのコストダウンが再生エネルギー拡大の鍵。
再生エネルギーが普及するほどに、それらは分散エネルギーとなり、手軽に連続的に使うにはリチウム電池をはじめとする蓄電池の導入が不可欠となる。
1−5)水素エネルギー
水素は、脱炭素社会でのエネルギーとしての役割と同時に、炭酸ガス等を有効化学製品に転換するために必須のものである。
【水素を得る手段】化学反応によって化石資源や様々な化学物質から製造可能。
【水素エネルギーの運搬手段】水素製造場所から水素利用の場所までの移動のために、手段が必要。液体化、他の化学物質にくっつけて使用場所で分離する等々の方法あり。インフラ整備が課題。
【課題】これらの「手間」に掛かるコストの低減が課題。因みに、現状ではLNGが15円/m3に対し水素は100円/m3程度。少なくとも20円〜30円/m3にすることが必要。

(2)温室効果ガス削減とCO2活用への道
(2−1)パリ協定とそれをめぐる世界(含む石油メジャー)の動向
1)パリ協定(2015年):
・全ての国が温室効果ガス削減に取り組むこと。
・世界の気温上昇を産業革命以前の気温から2℃を超えない水準(1.5℃を努力目標)とする。
・今世紀中に世界の脱炭素化を図る(排出実質ゼロ)。化石燃料依存型からの抜本的転換。
・パリ協定達成のための必要CO2排出削減目標=2060年までに世界で年間300億トンを削減(2016年の世界のCO2排出量は323億トン、日本の全排出量=13億トン、日本の石炭火力排出量=2.6億トン、ガス火力=1.7億トン、石油火力=0.4億トン)。

2)パリ協定以降:
〇 欧米の動き
・EU環境理念主義とUS現実主義の対立
・欧州の施策=2050年にほぼ80%削減が目標。電力の脱炭素化へ。再生エネルギーへのシフト。石炭火力の停止。等々
・米国=パリ協定を離脱。温暖化ガス排出削減に係わる先進技術を展開し、世界のリーダーを目指す。CO2除去技術でCO2固定化の推進。
〇 日本の動き
・日本の長期戦略(2019年6月閣議決定)=脱炭素社会を目指し、2050年までに80%の温室効果ガスを削減。このため、革新的技術開発が必要。イノベーションを通じて環境と成長の好循環を目指す。
〇 石油メジャーの動き:
・株主、機関投資家、NGO等からの圧力もあり、石油に過度に依存しない経営体質への転換を急がざるを得なくなってきている。

(2−2) 温暖化問題とCO2活用への道
1)二酸化炭素削減技術
〇 CO2の利用や製造でよく用いられる技術用語を以下に簡単に解説する。
・【合成ガス】化石燃料のガス化や、触媒を用いて炭化水素を分解して得られる水素と一酸化炭素(CO)の混合ガス。さらにこれからアンモニア、メタノール等が誘導される。
・【FT合成】合成ガスから液体燃料を合成する。
・【メタネーション】CO2と水素からメタンを合成し、CO2発生の少ない燃料あるいは化学原料に転 
 換する。
・【逆シフト反応】CO2と水素からCOと水を作り、これを合成ガス原料とする。
・【部分酸化】炭化水素系燃料と空気の混合物を部分的に燃焼させる反応。水素に富んだ合成ガスが生成される。
〇 CCS:Carbon dioxide Capture and Storage:
発電所や工場排ガスから炭酸ガスを分離し、高圧で地中に圧入・貯留する。まだ開発途上とでもいうべき段階であり、世界的には大規模(年間80万トン以上)プロジェクトは10数件、処理される炭酸ガスは年間4000万トン程度にとどまる。日本では2019年11月22日に苫小牧で累積30万トンの圧入を達成した。
現状での試算では回収CO2トン当たり7300円と評価され、石炭火力では、kWh当り7300円となりまだまだ実用化には遠い。
・特殊な炭酸ガス固定法として、セメント製造時にセメントの半分以上を、CO2と反応することでCO2を吸収し固まる性質を持った混和材に置き換え、セメント製造時に排出されるCO2を大幅に削減する方法もある。
〇 CCUS:Carbon dioxide Capture、Utilization and Storage:
換言すれば、これはカーボンリサイクルである。CO2を回収した後に
・石油油田にCO2を高圧注入し、石油回収を行うと同時に地中にCO2を貯留。
・人工光合成(CO2と水素を原材料とし太陽エネルギーと触媒を活用し合成ガスを作る)の原料とし、さらに合成ガスから化学品を誘導する。水中の微細藻を利用し光合成で成長させ、これを原材料として液体燃料などを製造。

2)カーボンリサイクル
〇日本のカーボンリサイクル促進の動き:2019年1月ダボス会議で安倍首相がその重要性を強調。経産省にカーボンリサイクル室を設置。予算増加の動きあり、産学ともに推進機運にある。
ロードマップとしては、2030年までは回収技術の確立、その後普及品(ポリカーボネイト、バイオジェット燃料、コンクリート製品等)製造技術の低コスト化を実現し、安価な水素の調達が可能となる2050年以降は汎用品の生産技術確立を図る。
〇 カーボンリサイクルの中で、CO2を新しい燃料として転換するときに重要な働きをするのは水素であり水素コストがCO2用途拡大のキーとなる。
〇 水素製造コスト:水素製造法には各種あり、製造コストは原料コストに大きく依存するが、現状で製造コストの高いものから順に列記すると、水の電気分解、重質油の部分酸化、石炭ガス化、天然ガス中のメタンの水蒸気改質や部分酸化等々がある。いずれも、原料となる化石燃料および分解用エネルギーとしての電力コストにほぼ比例する。
水の電気分解の効率は既に充分高く、電解水素のコストダウンは既に限界に近く、他の方法での水素製造方法でのイノベーションがのぞまれる。

(3)まとめ(脱炭素社会実現のための世界の流れ)
〇 パリ協定の目標⇒今世紀中の「炭酸ガス排出実質ゼロ」に向けて、低炭素を軸とした現状から脱炭素を軸とした社会への転換のためには世界的な技術的イノベーションが必要になる。
〇 世界的な運輸・産業・民生・電力の各分野におけるCO2発生実態を定量的に把握し、次世代ないし次世紀まで持続させない技術とさらに生み出すべき技術を見極め、それらに必要な経済的側面も見極める必要があろう。
G20の要請により金融安定理事会が民間主導の気候変動関連財務情報開示(Task Force on Climate-related Financial Disclosure)を発足させた(2015年)。世界で567機関、日本で43機関が署名しており、パリ協定とTCFDとが密接に関連し始めている。
〇 財政面では、世界的には、ESG投資が進んでいる。これは環境(environment)、社会(social)、企業統治(governance)に配慮している企業(環境問題であれば、地球温暖化対策に取り組む企業)を重視・選別して行う投資である。世界的には2018年には3千兆円を超えている。
〇 <タクソノミー> EUのサステナビリティ方針に資する経済活動を分類したものであり、EUのアクションプランでは金融商品の基準や銀行の資本規制等、さらには機関投資家による投資などもタクソノミーのグリーンリストに基づくことが必要とされ、エネルギー関連では再生可能エネルギーは問題ないが、石炭火力は不適格とされている。
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Q&A
〇 バイオ利用のジェット燃料製造が世界でも複数試みられているが、展望如何?⇒技術的にはいろいろと進んでいるが、最終的にはコストが課題であろう。
〇 GTL(天然ガスからの液体燃料製造)の展望は?⇒ShellやSasolの技術が生かされ世界で商業生産に使われている。石油製品需要の減退傾向の中でGTLプラントのニーズは高くないと考えられる。CO2やバイオマスを活用した合成ガスからFT合成で液体燃料を製造するプロセスが期待されるが、コスト面ではハードルが非常に高い。
〇 CO2回収技術について⇒アミン回収が主流。コスト問題は装置規模との相関大。固体吸着・分離の方法もあり得る。
〇 ESG投資の見通しは?⇒世界的には確実に拡大しつつある。 
(文責:橋本 升)

講演資料:これからのエネルギーとCO2活用への道
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2019年10月24日

EVFセミナー報告:津波リスクと可動型防波堤による減災

演 題 :津波リスクと可動型防波堤による減災
講  師 : 平石哲也 様 京都大学防災研究所教授
開催場所 : NPO法人新現役ネット会議室
 
1.講師略歴: 
・1976年 3月 兵庫県立兵庫高等学校 卒
・1980年 3月 京都大学工学部交通土木工学科 卒
・1982年 3月 京都大学大学院工学研究科交通土木工学専攻 修了
・1982年 4月 旧運輸省入省 旧港湾技術研究所 海洋・水工部 波浪研究室
・1996年 3月    同 上           波浪研究室長
・2008年 4月 独立行政法人 港湾・空港技術研究所 海洋・水工部長
・2010年 4月 京都大学防災研究所 流域災害研究センター 教授


2.講演概要:
国土交通省港湾局による「防波堤による津波防災ガイドライン作成」時の委員を担当され、津波対策の第1線で活躍されている京都大学防災研究所の平石哲也教授から、「津波リスク(専門家がどのように評価しているか)」、「津波被害とその特徴」、「津波対策事例:(コンクリート式防潮堤における)カウンターウエイト工法の仕組み」、「流起式可動型防波堤」などを解説して頂いた。
今までの大津波のデータを専門的に評価し、近い内に大津波が起きる可能性に基づき、そのLEVEL2の大津波を設定して対応を行うことが必要であることを述べられた。次に、海外の大津波の事例などに基づき、大津波の分析がどのように進んでいるかの話があった。その後で、日本で行われているカウンターウェイト工法の仕組み、利点、欠点の話があった後、近年研究されている流起式可動型防波堤のご紹介があった。形式ばらず親しみやすいお話しで、津波関連の土木技術を良く知らない参加者にも分かり易い内容でした。

3.講演内容:
平石先生は、運輸省入省後、港湾技術研究所畑で28年研究をされた後に、京都大学に戻られて8年以上経っているご経歴で、ずっと港湾技術研究の第1線を歩まれています。
今回のセミナーは津波に焦点を当ててのセミナーでした。
先ず、基礎知識として、津波高の評価の仕方が「浸水高」(東京湾中等海面(T.P.)を基準面として地表上で津波が浸水した高さ)、「浸水深」(浸水高から地表面高さを引いたもの)、「遡上高」(丘や山に遡上して乗り上げた浸水高さ)に分かれていることから入りました。
次に津波リスクとして、東北、南海地域でマグニチュード9から8の大地震が100年おきかそれ以下のインターバルで起きて大津波が伴っていることから、今後30年以内に例えば南海地域に大地震が起きる可能性は現時点では70%以上(京都市民新聞での記事に基づき)であって、そしてその時に大津波が伴うリスクがあるとのことでした。
津波の被害とその特徴に関しては、人的な被害の他に、船舶、道路、橋、防波堤などへの津波の被害があって、防波堤や建物が壊れるメカニズムの中に専門的な分析(Piping,Scouring,液状化によるもの等)を行い、対策に繋げているとのことでした。
津波対策事例としては、津波対応強化のために古い設備の補強の必要性があって、堤防を高くするかさ上げが行われてきているが、基礎も新たに作る必要もあるし、できても海へのアクセスが困難というような問題も解決していく必要がある。海側に幅広となる堤防を作って面的な防御をすることが望ましいが土地等の制約があってなかなかできないのが課題である。 又、現在の堤防は、「防波堤に作用する(津波などの)波の力」の分析の下に、地震に対してのスライディングを考慮してコンクリートブロックをマウンドと呼ばれる土台の上に載せているのが一般である。この方式では杭で止めていない。その理由は高くつくからだそうです。
その後、長周期波浪による水平移動が問題視されるようになってから、後方にカウンターウエイトと呼ばれる重りをおく工法がとられており、前面に置く消波装置と併せてレジリエンシー(粘り強さ)の向上が図られている。京都大学は日建工学と共同でサブプレオフレームという商品名でカウンターウエイト工法を提供している。
もう一つ紹介されたのが流起式可動型防波堤で、港の入り口や河口などの開口部での津波の浸水を防止するもので、通常時は水底に邪魔にならずに設置してあり、その上部を津波の浸水が通る時の流れによって起き上がって、防波堤として機能することを特徴としている。この流起式防波堤は既に実験を含め開発はほぼ完了しており、マニュアルの作成段階に入っている。現在、適切な適用場所を検討している段階である。(大阪には高潮防止のための水門が3つ河口にあるが、これらは津波には対応できないことから、その前方に置くような実験を行ったこともある。この時は、流起式防波堤と水門を組み合わせるより流起式防波堤のみの方が経済的との結果が出て、実験の成果は活用されなかった。)

まとめとして、下記の4点を強調された。
・今後の防波堤はレベル2津波の設定・対応を行っていかねばならない。(今まではレベル1津波が中心)
・既存の防波堤は消波及び透水性構造物を有する構造物を用いて粘り強く津波を減災し、津波の到達時間を遅くするような機能を持たせなければならない。(レジリエンシーの向上)
・カウンターウエイト工法による減災を図ることも有用で重要である。
・可動型防波堤を有効に活用することで、減災を図ることができる。 
(文責:濱田英外)

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講演資料:津波リスクと可動型防波堤による減災
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2019年09月26日

EVFセミナー報告:エネルギー・ミックスの問題点

演 題 :エネルギー・ミックスの問題点−再生エネルギー主力電源化への道−
講  師 : 橘川 武郎  東京理科大学大学院経営学研究科教授。東京大学、一橋大学名誉教授
開催場所 : NPO法人新現役ネット会議室
 
1.講師略歴: 
・1951年生まれ。和歌山県出身。
・1975年東京大学経済学部卒業。
・1983年東京大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。同年青山学院大学経営学部専任講師。
・1987年同大学助教授、その間ハーバード大学ビジネススクール 客員研究員等を務める。
・1993年東京大学社会科学研究所助教授。1996年同大学教授。経済学博士(東京大学)。
・2007年一橋大学大学院商学研究科教授。
・2015年より現職。東京大学・一橋大学名誉教授。総合資源エネルギー調査会委員。前経営史学会会長(在任期間2013〜16年)。
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2.講演概要:
講師は、専門は経営史で(前経営史学会会長)、大手のいくつもの電力会社・石油元売りの社の社史編纂をされたとしながらも、総合資源エネルギー調査会委員であり、長年携わってこられたエネルギー産業論の立場から再生可能エネルギーを主力電源とするためにはどうすればよいかについてお話し頂いた。

人類が直面する二つの危機/飢餓・地球温暖化を同時に解決することの困難性、そしてその答えは、「省エネルギー」と「ゼロエミッション」しかない。

「省エネ」は、日本では経済性の追求により、産業部門と運輸部門では取り組みが進んでいるが、民生部門の省エネは、まだ余地がある。「再生可能エネルギー」には、筋の良い「タイプA(地熱・水力・バイオマス)」と、ややネックがある「タイプB」(風力・太陽光)があるが、大幅な拡充を前提に、技術的・制度的ネックを一つ一つ克服する必要がある。タイプBには、送変電網がネックである。

原子力発電所原子炉の現況は、3.11時点での合計57基(既設54基/建設中3基)のうち、稼働中9基/廃炉決定は21基。少なくとも廃炉決定の21基の送電線が余る勘定となる。2030年想定の政府の電源構成案、原子力20〜22%の実現は難しい。

電力業界には3つのビジネスモデルがあるが、「原子力依存型」、「大型電源依存型」ではなく、「分散型電源・ネットワーク重視型」経営が中心になれば、この業界の将来はある。

再生可能エネルギーのコストダウンには、二つの方法がある(蓄電池やバックアップ火力は高コストに繋がる)。
(1)Power to Heat(電気を熱で調節):デンマークでは再生エネ(風力/バイオ)+CHP(コジェネ)で、電気が余るときは熱を生産し、熱で温水を作り、貯める。日本では温水パイプラインの敷設がネックとなるが、2050年なら可能性があり、カニバリゼーション(共食い)が生じるガス会社ではなく電力会社がやれば現実味がある。
(2)再生エネを再生エネで調整:太陽光/風力+ダム式水力。送電線の高い託送料がネック。電力会社自身がやれば、ビジネスモデルとして可能性がある。

第5次エネルギー基本計画の問題点は、(1)元々の15年策定のミックスに問題があり(原子力が高すぎ、再生可能エネが低すぎる)、(2)最近の変化を反映していない=再エネコストの劇的な低下、原子力再稼働の実進捗など、(3)「総合資源エネルギー庁エネルギー情勢懇談会」の2050年見通しと平仄が合わない=再エネの主力電源化は、30年目標をそのまま据え置いている、「脱炭素の選択肢」としての原子力では、リプレースを回避している。

再エネ拡大により低需要期にはベースロード電源でも出力調整が必要であり、ベースロード電源としては天然ガスと「原子力and石炭」ではなく「原子力or石炭」が合理的、現実的である。

2030年度の電源構成案(橘川案)は、現行計画と比較すると、
原子力:15%・現行計画に比し△5〜7%、
石炭 :19%・現行計画に比し△7%、
LNG:33%・現行計画に比し+6%、
石油等:3%・変更なし、
再エネ:30%・現行計画に比し+6〜8%、

エネルギー事業者の未来は、「熱を制した者」「分散型を制した者」「再生エネ主力電源化に真剣に取り組んだ者」が生き残る。

Q&A:<非常に多数の質問があり、活気ある質疑応答となった>
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Q:ジェット燃料のCO2削減は?
A:飛行機と船舶が注目される。これからバイオ燃料が増えていき、将来的にはガス船か。飛行機の方がより難しい。

Q:地熱発電の問題点は?
A:温泉業者が反対。温泉業者が、地熱発電を自らやるのが良いのでは(温泉業者を当事者にする)。また、発電後地中に戻す蒸気の一部を地元に供給することも有用。

Q:バイオマス発電は、リアルベースでは、カーボンニュートラルと言えないのでは?なぜ再エネの一つとしてクローズアップされるのか?
A:植物は成長過程でCO2を吸収しているという考え方。最近では植林を義務づけるケースも。国際会議で多数の票を持つ欧州諸国がバイオマスを押すからという側面もある。

Q:再エネの発展には地産地消が有効であり、より規制緩和が必要なのでは?
A:規制緩和はそれなりに進んでいる。アプローチの仕方が大切。例えば東北の場合、3、11の後、コミュニティーに中心人物がいるかどうかで復興の差が顕著に出た。中心人物とは、地元の事業者であり、大企業の出先の社員では権限がなく無理。規制緩和より、そのような人の存在が重要と言える。
Q:電力会社の投資は、電源50%+送配電40%+メーター10%と記憶しているが、電源のみの議論ではないか?ベストミックスは時代によって変わるが。
A:本日は送配電の重要性についても大いに言及したはず。例えば、東京の地下にある高圧送電網は、ネットワークとして大きな資産。又、直流の技術も進んでおり、2050年までにロシア、韓国と送電線をつなぐには超高圧直流送電を使う。

Q:Power to Heat(電気を熱で調節)は、日本では蓄電池もあり、通用するか?
A:蓄電池の技術の進展には時間がかかる。余剰買取制度終了後の屋根の上の太陽光発電については、可能な限り、自宅で使うのがベスト(余剰分はEVに蓄電するやり方も)。蓄電池がどこに落ち着くかはこれから。

Q:省エネの民生部門が進んでいないとあるが、FIT(固定価格買取制度)の価格を上げては?
A:ドイツのようにFITの負担を産業に軽く、民生に重くする考え方もある。

Q:日本の宇宙技術を核廃棄物の処理に活かすことはできるか?
A:宇宙での核廃棄物の廃棄は危険すぎる。宇宙開発は大切。それに比べて、原子力は話作りが下手。原子力は、ストーリーが無さすぎる。

Q:P.6の3つのビジネスモデルで、10電力会社は生き残れるか?
A:原発が再稼働すると収益効果が働くので、(1)の原子力依存経営が主流となっているが、長期的には希望がもてない。(3)の分散型電源・ネットワーク重視型経営が未来のあるべき姿。

Q:竹村公太郎氏の著書によると、水力発電用にダムを活用できるのではないか。
A:その通り。多目的ダムの再評価について国交省の姿勢が変わるとすると、水力発電ができ、町おこしに使える。ネックは、縦割り行政であり、突破するには地元から経産省ではなく国交省への提案を。国交省の出番を作る。

Q:各個人の家に蓄電池の設置がなぜ進まないのか?
A:エネファームの普及に見られるように、設置の方向に時代は流れている。又、VPP(仮想発電所、小規模の再エネ・蓄エネ・省エネをまとめて制御・管理することで、一つの発電所のように機能させる)の様に統合型で可能性がある。又、エストニアでは、スマホにより(デジタル化で)P2Pで殆んど解決。2050年へ向けて、P.6の分散型電源・ネットワーク重視型へ。 
(文責:三嶋 明)

講演資料:エネルギー・ミックスの問題点
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2019年08月22日

EVFセミナー報告:グリーンスローモビリティ(GSM)の価値と将来展望

演 題 :グリーンスローモビリティ(GSM)の価値と将来

実施日:2019年8月22日(木)
講師:圓山 博嗣 公益財団法人交通エコロジー・モビリティ財団 交通環境対策部長
開催場所:NPO法人新現役ネット会議室;〒108-0014港区芝5-31-10サンシャインビル

1.講師略歴
1979年3月 早稲田大学 機械工学 学士課程修了
(職歴)
1979年4月 日産自動車株式会社 入社
1993年1月 同 エンジン実験課 課長
1995年7月 米国 日産リサーチ&デベロップメント会社 出向管理職
1999年7月 日産工機株式会社 出向管理職
2001年4月 日産自動車パワートレイン実験部 主管
2005年4月 同 パワートレイン実験部 部長
2008年4月 同 パワートレイン品質監査室 室長
2009年4月 同 環境・安全技術渉外部 担当部長
2015年4月 同 グローバル技術渉外部(改称) 担当部長
2016年7月 公益財団法人 交通エコロジー・モビリティ財団 調査役
2017年4月 同 現職
(外部組織)
2009年7月〜2016年6月 日本自動車工業会 環境委員会温暖化対策検討会 主査
2.講演まとめ
講師は日産自動車で主にパワートレイン開発を担当されていましたが、2016年からは交通エコロジー・モビリティ財団(略称:エコモ財団)に転職されて多くの交通環境対策事業を推進中です。
セミナーは、エコモ財団の紹介から始まり、高齢化する地域社会において公共交通の“衰退”による移動困難の高まりに対処する打開策の一つとして、グリーンスローモビリティ(GSM)の可能性に着目し、その普及推進に向けた調査・研究のご説明をいただきました。GSMとは電動車両で、スピードは20Km/h未満、定員4人以上の車のことで、低床で屋根が高く、手すりはあるがドアはなく、座高が高いため高齢者が乗降しやすいという利便性があります。目標のGSMは自家用車よりも公共交通の手段に重きを置いて開発されています。
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3.講演概要
(1)交通と環境の歴史
・1972年 ローマクラブ
・1992年 リオ 地球サミット  「アジェンダ21」・・・気候変動条約と生物多様性条約
・1995年、1996年 OECD  「ESTの定義・基準」〜健康と生態系に害がなく、基本的に再エネを利用する輸送方法
・1997年 欧州 「EPOMM」 「ECOMM」 European Platform/Conference of Mobility Management
・2006年 日本 「JCOMM」・・・一般社団法人日本モビリティ・マネジメント会議

(2)グリーンスローモビリティの歴史
・2014年 石川県・輪島商工会議所が初の公道での無償運送を開始。
・2016年 「電動小型低速車の活用推進委員会」を設置し、事業開始。
・2018年 輪島・松江・横浜等、6地域で実証実験および試走
・2019年 環境省と国交省が連携して車両購入費半額補助事業を開始、対象車両にヤマハ・日立・シンクトゥギャザを認定。

(3)主要な使用シナリオ
1)ニュータウン :ラストワンマイルで誰でも利用できる公共交通として。
2)地方都市の中心市街地 :ラストワンマイルで誰でも利用できる公共交通として。
3)地方都市郊外、中山間地 :シニアや主婦等免許保有者が自家用に運転するため。
4) 同 上 :だれでも利用できる既存のバス、タクシーの補完的公共交通として。
5)中山間地 :ラストワンマイルで誰でも利用できる公共交通として。

(4)豊島区が2019年にグリーンスローモビリティを導入
 池袋は“特定都市緊急整備地域”として指定されて再開発が進んでいます。四つの公園を周遊する新しい乗り物を導入しようということで、e-COMIO(立ち席を含めて27人乗りのシンクドゥギャザのマイクロバス)が今年中に運行される予定との由。デザインはJR九州の「ななつ星」などで有名な水戸岡鋭治氏によるもので、実現したら試乗してみてはいかが、ということでセミナーが締めくくられました。
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4.質疑応答
1)Q1:実証実験・試走は1か所何台の車で行っていますか?
−1か所1台だ。期間は3か月とか1週間が多い。
2)Q2:勝浦あたりでゴルフカートのガレージ付き別荘を見たことがあるが‥。
−私道ならナンバープレートなしで走れるが、公道ではナンバープレートも車検を受ける必要がある。
3)Q3:GSM専用の走行レーンを設けられないものか。
−GSMは幹線道路を走行することは想定していない。
4)Q4:GSMを早く購入したいと思ってきたが、価格が最低でも250万円〜300万円もかかると聞いてがっかりしている。
−今は大量生産の自動車に比べれば少量で安くはないが、今後の生産台数、販売台数いかんでは安くなっていくと思われる。

(文責:佐藤孝靖)

講演資料:グリーンスローモビリティの価値と将来展望
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2019年07月25日

EVFセミナー報告:近未来の食料・農業と地域社会:新潮流と変わらぬ本質

演 題 :「近未来の食料・農業と地域社会:新潮流と変わらぬ本質」

実施日:2019年7月25日(木)
講師:生源寺 眞一 福島大学食農学類 教授・学類長
開催場所:NPO法人新現役ネット会議室;〒108-0014港区芝5-31-10サンシャインビル

1.講師略歴
・1951年愛知県生まれ。東京大学農学部農業経済学科卒業。農学博士。
・農林水産省農事試験場研究員・北海道農業試験場研究員を経て、1987年東京大学農学部助教授、1996年同教授。
・2011年名古屋大学農学部教授、2017年福島大学食農学類準備室教授、2019年4月から福島大学食農学類長。
・これまでに東京大学大学院農学生命科学研究科長・農学部長、日本フードシステム学会会長、農村計画学会会長、日本農業経営学会会長、日本農業経済学会会長、日本学術会議会員、食料・農業・農村政策審議会会長などを歴任。
・現在、樹恩ネットワーク理事長、中山間地域フォーラム会長、地域農政未来塾塾長など。
・近年の著書に『日本農業の真実』ちくま新書、『農業と人間』岩波現代全書、『農業と農政の視野』農林統計出版、『農業がわかると、社会のしくみが見えてくる・新版』家の光協会など。
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2.講演概要
 若手の新規就農者の半数近くが非農家出身となり、企業の農業参入も活発化するなど、日本の農業にはさまざまな新潮流が現れている。他方で、農業用水をめぐる共同行動など、農村社会に連綿と継承されてきた伝統も存在する。両面を視野に、近未来の食料・農業・農村のあり方について、日本の農業を再生させるためにはどうしたらよいか、という視点を見据えてお話しいただきました。

3.講演の内容
(1)経済成長と食生活の変化
 ・海外への依存度を高めた日本の食料
食料自給率は、米の消費が減少する一方、畜産物や油脂類の消費が増大する等の食生活の変化で、長期的には低下傾向が続いてきたが、2000年代に入ってからは概ね横ばい傾向で推移している。
生産額ベース総合食料自給率:66%(2015年)
カロリー(供給熱量)ベース総合食料自給率:39%(2015年)
   ※生産額ベースとカロリーベースで大幅に差が生じるのはレタスを考えれば納得がいく。  レタスはカロリー数と関係なく経済的価値があるが、レタスのカロリーは少ない。
   穀物自給率:約27%
 ・伸びていた1980年代までの農業生産
  1960〜1964年を100とすると、5年間毎の統計では、総合では、117、120、129、129、134、と推移し、全体として伸びていた。その中身を見ると野菜、果実、畜産物が伸び、畜産は3倍、果実2倍を達成していた。1961年の農業基本法ができた際に掲げたスローガ ンを実現した。
 ・経済成長で激変した食生活
  食料自給率の三つのデータの全てが、この50〜60年間低下傾向にあった。         しかし、1955年と比べて、肉類は10倍であり、米やイモ類は半減している。経済の成長にともない大きな食生活の変化が生じたからである。1980年代の自給率の低下は、基本的には食べた方の変化が生じ、食べる量が増えた結果と言える。分母(消費量)と分子(生産量)で、分母が多くなれば自給率は低下するからである。
  平成時代に入ると、生産指数は1980年代後半の134をピークに後は急速に小さくなっている。野菜、果実、畜産物も縮小傾向になり、米、麦などの縮小も続いている。高齢化や人口減少で消費は全体として減少傾向に転じており、農業生産が同じならば自給率は上昇するはずだが、実際は下がっている。平成時代の自給率の低下は農業生産の縮小によって生じている。その縮小の背景には、農業従事者の高齢化、耕作放棄地の増加、外国産の輸入がある。
・食料自給率と食料自給力
 2013年の日本の穀物自給率は28%、インドは111%、バングラデシュの105%であるが、栄養不足人口が2割に近い南アジアの食料事情は日本よりはるかに劣悪である。即ち、自給率を比較して論議することには無理がある。
  問題は約40%の自給率がどれほどの絶対的な供給力に対応しているかである。日本の農地面積にカロリーが最大になるように作付けをした場合のカロリー供給力を試算した結果、栄養バランスを考慮した米・麦・大豆のパターンで、1441キロカロリー、イモ類中心で2361キロカロリーである。健康維持できるぎりぎりのカロリーが1日2000キロカロリーで、その状態に何とか対応しているのが、約40%のカロリー自給率である。食べ方によって自給率は変わってくる。

(2)存在感を増した食品産業
 ・買い方・食べ方も変わった日本の消費者
飲食費の最終消費額は76.3兆円(2011年)。
内訳:加工食品38.7兆円(50.7%)、外食25.1兆円(32.9%)、生鮮品12.5兆円(16.3%)
  農産物・水産物:国内生産 9.2兆円、生鮮品の輸入 1.3兆円 輸入加工食品の原料費を考慮しても、15兆円に達しないであろう。金額配分は2割程度か。
  食品関連への配分は製造業、外食産業、食品流通業(食品スーパーを含む)で8割。
・生鮮品への支出は減少している。
・外食の増加から中食の増加へ。両者を合わせた食の外部化率は45%程度。
外食産業は資本の自由化によって急成長した。ケンタ、マック、ミスドーなど
コンビニが支える食の外部化率。単身世帯ほど外部化率が高く、現在の世帯の3分の1は単身世帯である。そのことが、日本全体の外部化率を引き上げている。
・就業者数の約6000万人のうち、食に関係する仕事の就業者は1103万人(2010年)。   食品産業の働き手は大幅に増えているということは、食に関わる産業が増えていることになる。しかし、農業・水産業に関わる就業者は大幅に減り、309万人(2010年)であった。
・安定した雇用力を日本社会の基盤にする必要がある。リーマンショック直後の業況感をみても、長期的に見ても、食品産業は安定性が高く、フレが小さいことがわかる。

(3)一律に論じられない日本の農業
 ・水田農業に代表される土地利用型農業は、兼業農家が多数派で高齢化が顕著である。
土地利用型農業でも、北海道の畑作や酪農は規模拡大を通じてEU農業に比肩しうるレベルを実現している。稲作の面積当たり労働時間は施設園芸や畜産などに比べて、大幅に短い。昔は10a当たり200時間だったが現在は20時間。一方、施設園芸では2000時間が普通。
・施設園芸や畜産などの労働多投型農業では、若者や働き盛りを確保している。
 ・高い生産額自給率は強い農業を反映している。
美味しさについて日本人はうるさい。品質の高さを求める。カロリーのほとんど無いレタ  スにも経済的価値があり、野菜は近年でも8割近い自給率を維持している。消費者に評価されている和牛の価格は外国産の牛肉よりも高く、国内生産はカロリー自給率より生産額自給率に大きく貢献している。
  ・カロリー自給率は、畜産物自体は国産であっても、飼料の自給率の割合だけを国産とみなす計算方式である。卵は96%が国産であっても、エサの9割近くは輸入である。その結果、カロリー自給率を下げる結果になっている。養豚のエサの自給率も同様に低い。
・貸し出される農地は確実に増加している。農業就労者が高齢化し、1㏊未満の規模の農家では農業所得は低い。こうした兼業農家を引き継ぐ人がいない。そのこともあり、耕作放棄地が増えてきている。他方で企業参入も広がってきている。

(4)農業経営の新潮流
 ・食品産業にウイングを広げる農業経営。食品産業との良好なつながりは、水田農業のみならず、日本農業全体の課題である。
 ・加工による付加価値を確保するだけでなく、小分け包装と情報添付により、農家が売値を決めることが出来るようになる。農家レストランも共通。農家が販売と加工を手がけ、フードチェーンの川下をカバーすることで、農業経営は消費者に接近することができる。
 ・自ら情報を発信出来るようになった現在、農業経営には生産現場からの情報発信力のレベルが問われる時代になっている。例えば、環境に配慮した農業であることのメッセージが生産工程の品質の高さを伝達することになる。
 ・職業として選ばれる農業になってきている。2017年の44歳以上の新規就農者のうち、40%が雇用就農者、13%が起業型の新規就農者である。そのほとんどが非農家出身である。
  農家の長男以外が就農するケースも珍しくなくなった。
 ・新規就農者は若者だけではない。47%を占めた60歳以上の新規就農者の大半は自分の家で農業を取り組むかたちで、典型的なのは定年帰農の方である。
 ・参入企業の総農地面積の割合は、0.2%であり、現時点ではマイナーな存在である。
 ・おじいちゃん・おばあちゃんの農業に触れて、農業の面白さを知り農業を目指す若者も増加した。

(5)地域の共同行動は文化遺産
 ・農業インフラの保全も重要な課題である。共同行動の典型は農業用水の維持管理活動や公平な用水配分のルール、農道や公民館の維持管理など、共同の力が大きい。農村の文化的資産でもある。
 ・水田農業は日本型のコモンズだ。利己的な行動によって自壊することはなかった。「自分さえ良ければ・得をするならば」と取った行動では長期的な持続はできないからである。悲劇を克服する人間の知恵として、「囚人のジレンマ」というゲーム理論が示している。仲間全体の最大利益を得るには、自分だけの利益追求では逆に得られることは小さいことになる。
 ・メンバーが固定された閉鎖型の農村社会は過去のもの。「よそ者・新住民」として仲間に入れない社会では農村社会を維持することはできない。新たな共助・共存関係が求められる時代になった。クローズドな側面が濃厚であった従来型の農協組織も、変化を始めている。
 
(6)農村空間の特色を生かす
・隣り合わせの都会と農村(ちかいなか:近い仲:近い田舎:農村が都会から比較的アクセスしやすい距離にあることがポイント)で、農業の多面的機能が関心を呼んでいる背景には、地域外から多くの訪問者を受け入れる農村空間の構造があればこそ。
 ・農業・農村に触れることの意味には、教育的側面もある。人間の思い通りにならない生き物を相手にする農業の難しさ、面白さ、達成感などを学ぶことができる。これも、近隣にアクセス可能な農村があればこそ。
 ・農業の多面的機能は金銭に換算できない価値がある。農林水産省が1998年に6兆9千億円との試算を公表しているが、コスト評価は政策的判断には重要だが、金額に換算されなければ価値を実感できないとすれば、それも情けない話しである。

4.質疑応答
Q1;食料自給率の分母にハイキ食品も含まれるのか。
A1;ロス=余裕との考え方もある、との考え方もある。自給率の計算は供給ベースが基本となっているため、食卓で廃棄されるものも分母の消費量に含まれている。
Q2:フルーツ狩りの収入は、生産額ベースの自給率に反映するのか。
A2;統計上あらわれない。
Q3;福島県の復興はあり得るのか。
A3;放射能値が問題なくなり、耕作できるようになっても、人々は戻ってこない。内陸部では加工品や花などが生産されるようになったが、食品の製造は弱い。時間がかかるであろう。
Q4;耕作放棄地が増えている。纏った農地(大規模農業)が進むのか。企業参入は増えるのか。
 A4;2009年の農地法改正後、2014年に農地中間管理機構法が成立した。しかし、成果はでていない。その直前の2012年に新たに設けられた制度に農協が関与していたこともあってか、農地をめぐる制度が短期間に変更される事態が生じている。企業参入はモデルが出来て来れば、広がってくるであろう。
Q5;外国人労働者の雇用なしに、農業は成り立たないのではないか。
A5;地域性がある。
(文責:大山敏雄)

講演資料:近未来の食糧・農業と地域社会
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