2019年05月23日

EVFセミナー案内:人工知能の光と影

5月23日 EVFセミナーのご案内

演題:「人工知能の光と影」
講演概要:

人工知能は、急速に人間の脳に肉薄し、やがて独自の意識を持ち、人類を支配するのではないかと心配する科学者まで現れています。今後、世界規模で、医療、経済、教育、社会に大きな影響を及ぼす人工知能の現状と課題について考えます。
今回ご講演いただく室山様は、NHKの科学番組のディレクター、プロデューサーとして長年活躍され、その後解説主幹としても科学技術や生命・脳科学、環境、宇宙工学などに携わってこられました。
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講師:室山 哲也 様
NHK解説主幹、日本科学技術ジャーナリスト会議副会長、室山プロダクション代表
日時:2019年5月23日(木)15:30〜17:30
場所:NPO法人新現役ネット会議室

 〒108-0014 港区芝5-31-10サンシャインビル(JR田町三田口駅前)9F
 Tel.03-5730-0161 https://www.shingeneki.com/about/office
参加費:個人賛助会員・ネット会員 1,000円、一般 1,500円
  (当日受付で申し受けます)
定員:45名(定員になり次第、締め切らせていただきます)
講演終了後、会場近隣にて懇親会(実費3,000円程度)を予定しております。
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お申し込みは下記のURLをクリックして必要事項を記入し送信をお願いします。
セミナー・懇親会の申込み : https://www.evfjp.org/postmail_semina/
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2019年04月25日

EVFセミナー報告:「2030年自動車産業の競争軸を考える」〜MaaS、EV、自動運転〜

演 題 :「2030年自動車産業の競争軸を考える」
   〜MaaS、EV、自動運転〜

*MaaSとはMobility as a serviceの略で日本語では「サービスとしての移動」と訳されます。個々人の移動を最適化するために様々な移動手段を活用し、支払い手段の一元化を含めたパッケージサービスにより利用者の利便性を高めることを言います。

実施日:2019年4月25日(木)
講師:轟木光氏 アビームコンサルティング株式会社シニアマネージャー
開催場所:NPO法人新現役ネット会議室;〒108-0014港区芝5-31-10サンシャインビル
   
1.講師略歴:
1999年:九州工業大学大学院設計生産工学専攻 修了
同年:日産自動車入社 主としてR&Dにて開発及び商品投入戦略に従事、ドイツに駐在
2017年:アビームコンサルティング株式会社入社 日本の自動車産業を中心に戦略策定、調査などコンサルティング活動に従事 現在に至る
(著書)「EV・自動運転を超えて”日本流”で勝つ‐2030年新たな競争軸とは‐」
    日経BP社(2018/6/18発売)
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2.講演まとめ:
世界は効率化の追求だけでなく、持続性や循環型経済を意識した構想へ変化し、デジタル化やスマートフォンの普及によって顧客の声が顕在化し、顧客は100%満足できるモノ・サービスを探すようになった。こうした社会の変化はモビリティにも到来している。
自動車産業は、100年に一度の変化期に直面している。その変化を促すのが、パワートレインの電動化(環境)、自動運転(安全)、シェアリングエコノミー及びコネクテッド(ネット接続)である。この4つの内何が2030年の競争軸となるのか?下記講演概要に記述した3つの視点からご講演をいただいた。
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3.講演概要
(1)何故、EV拡大が必要なのか?+燃料電池EV(少しだけ)
・環境問題を背景に各国でCO2規制、ICE(ガソリン車)台数比率規制、ゼロエミッション車台数設定が実施される。
・EV拡大施策は、政府・地方自治体による補助金など優遇策がメインだが限界がある。
・規制対応にはEVは10〜15%の販売シェアが必要。そのためにはバッテリーへの莫大な投資が必要だが回収の見通しが立たない。また、課題も多い。
・リチウムイオンバッテリーについても熱を抑える技術開発、コバルトの調達の社会問題などが存在しコスト削減が困難。
・EVは課題が多く決して楽観できないが、マスコミがネガティブ情報を消している。
・その中でFCEV(燃料電池車)がブーム、排ガスやCO2を排出しないFCEVでないとゼロエミッションを達成できない。
・各国は環境規制への対応とエネルギーセキュリティの向上を見据えFCEVの普及政策を定めている。2024年からルマン24hでFCEVが採用予定。
・トラックはOEM、バスは行政主体で導入伸展、また、高出力、長航続距離が要求される商用車での採用が拡大の見込み。
・乗用車は、BEV(バッテリー式EV)は走行距離が短く充電時間も長いが現状は航続距離500Km以上の領域でFCEVと共存。
(2)完全自動運転後の世界は?
・自動運転技術とはドライバーをロボットに置き換えることである。さらにAI(人工知能)も必要。
・技術開発に関しては、人や他車の動き、天候などの再現性とドイツアウトバーンや日本の多信号などの極限環境の側面から今までのやり方での開発は非常に難しい。
・モノによる開発からバーチャル開発へ移行。試作車をやめてバーチャル認証になる。
・マスのモノづくりが終わり新しいモノづくりの始まりの予兆。
・IT人材不足で優秀な人材獲得が今後の競争軸のひとつになり、特徴としては高収入、日本では東京一極集中。
・自動運転レベル4(特定の場所ですべてを操作)レベル5(場所の限定なし)の拡大は、工場内の自動運転、高速道路での隊列トラックなどのステップを経て、法整備、ユーザーのアクセプタンス向上があり、そしてプライベート車の完全自動運転が達成できる。
・自動車産業が自動運転技術を活用したサービスへ参入拡大。将来キーポイントとなる。例えば工場内輸送・倉庫業、宅配業、シェアリング業など
(3)モビリティシェアリングは4つの変化(電動化・自動運転・シェアリングエコノミー・コネクテッド)の要+MaaS
・モビリティシェアリングサービスにはカーシェアリングサービスとライドシェアリングサービスの2つのタイプが存在する。
  -カーシェアリングは自動車OEM(ダイムラー/BMWなど)の参入後着実に成長。
  -ライドシェアリングはUber及びDiDiなどにより爆発的に普及。
・すでにダイムラーはモビリティサービスを乗用車・トラックに並ぶ事業とし、分社化、増資しながら提携先を拡大することを実施あるいは計画中。
・自動運転実現後の各事業コストはタクシードライバーがいなくなり、タクシー、カーシェアー、ライドシェアー、レンタカーのコストはほぼ同一となり競争が始まる。
・多くのユーザーは自家用車を持たなくなる可能性がある。その結果、マスブランド車が減少し、相対的にプレミアムブランド車の割合が増加する可能性がある。
・モビリティシェアリングサービスが変化の要で、それを通してEVの急速な拡大や、自動運転技術導入がされていき、コネクテッド技術も拡大する。
・この姿がMobility as Service (MaaS)である。
・MaaSは社会最適のための手段で、2014年にフィンランドで誕生。移動/輸送というサービスを統合し、情報・予約・決済を統合する「あらゆる人々の移動/輸送ニーズにこたえるサービス」また、これには周辺サービスが含まれる。
・MaaSは5つのレベルに分類され、現在はレベル2及び3が主戦場だが、社会の最適化というレベル4になると過当競争の発生から国や自治体のガバナンスが必要となる可能性がある。
  -MaaSプラットフォームはアプリケーションとAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェイス)連携で成り立つシンプルな構造で自社開発の必要性は低い。
  -米国ライドヘイリング2社(Uber、Lyft)の売上は順調だがずっと赤字。従って、周辺サービスにチャンスを見出す必要がある。(車両、燃料、駐車場、メンテ、保険、システムなど)
・未来の自動車産業は、航空産業のように車両の供給会社はグローバルで数社に集約され、部品供給はグローバルサプライヤー、エンドユーザーの窓口はMaaSプロバイダーと極めて少数の企業となる可能性がある。
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4.質疑応答
(1)Q1:日本のFCVの状況は
-水素に関しインフラの設置費が高く数が少ない。法律の改善の必要がある。
(2)Q2:アンモニアと水素を混ぜて燃やすのは駄目か
-燃やすとNOxが問題となる。
(3)Q3:ヨーロッパで盛んなディーゼルの見通しは
-絶滅はしない。重量物且つ長距離に有利。NOxはゼロと言い出す。
(4)Q4:カーシェアリングと車(運転)の楽しみの関係は
-わずかには残ると考えられるが、現在でも世代間格差は大きい。将来は車の買えない低所得者が増えると予想される。
(5)所有車が減少する中で新興国も車が増えないか。MaaSについていけるか
-MaaS専用車両が増加する。MaaSは各地域に適応する仕組みなので普及してしまう。
(6)世界を席巻するUberみたいな会社は増えるか
-Facebookは消滅の危機にある。Amazonは世界的には知られていない。現地に税金を払わなければ残れない。
(文責:冨野)
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2019年03月19日

EVFセミナー報告:福島第一原発の廃炉技術とロボット−廃炉作業ロボットの研究開発の現状と課題−

演 題 :福島第一原発の廃炉技術とロボット
   −廃炉作業ロボットの研究開発の現状と課題−

実施日:2019年3月19日(火)
講師:新井民夫氏:技術研究組合・国際廃炉研究開発機構(IRID) 副理事長、東大名誉教授
開催場所:NPO法人新現役ネット会議室;〒108-0014港区芝5-31-10サンシャインビル
   
1.講師略歴:
・福島第一原子力発電所廃炉事業の技術研究開発を担う国際廃炉研究開発機構(IRID)の設立時(2013年)から副理事長に就任し、ロボット技術、設計システム、人材育成を中心に機構の運営に携わっている。
・1970年に東京大学工学部精密機械工学科を卒業、1977年同大博士課程修了、工学博士。
・複数移動ロボットの協調制御、クレーンとロボットによる重量物ハンドリング、ホロニック自律分散生産システムの研究など生産システム研究を進めた。
・2000年より東京大学人工物工学研究センター長としてサービス工学を提唱した。
・2008〜10年精密工学会会長。
・2012年、東京大学名誉教授。
・2012〜16年サービス学会を設立、初代会長。
・日本学術会議会員(第22〜23期)。
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2.講演まとめ:
2011年3月11日に発生した東日本大震災により福島第一原子力発電所の3つの原子炉では全電源を喪失し、結果、炉心溶融が起こり、これに加えて水素爆発が発生した。これらの炉を廃炉にするには、内部の状況調査、放射線量測定、除染、がれきの除去、燃料デブリの取出し、解体という一連の作業が求められ、人が近づけない高放射線量過酷環境の中でも働けるロボットの開発が必須である。
この講演では、事故炉の中で放射性物質の閉じ込めを確保しながら、遠隔操作で数百トンにもおよぶ燃料デブリの取り出しから、収納・移送・保管までを実行するロボットの開発の現状と展望について、ビジュアルな資料を用いつつ語っていただいた。
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3.講演概要
(1)IRIDの発足
2011年3月に炉心溶融を起こした東京電力第一原子力発電所の3つの原子炉は廃炉とすることが決められている。そのため、溶融燃料並びに燃料と周囲の物質とが入り混じって固まった燃料デブリを取り出さなければならない。この技術課題を解決するために、2013年に「廃炉技術を集中して研究開発する技術研究組合(IRID)」が発足した。IRIDのミッションは次の3点にある。1)世界に例のない原子炉内の燃料デブリ取り出しロボットの技術研究開発、2)長期に亘る廃炉事業の技術維持・発展のための人材育成、3)廃炉に関わる世界の英知を結集するための国内のみならず海外の研究機関との技術交流・技術協力の推進。

(2)廃炉作業の特徴
・過酷環境下、かつ未踏分野での仕事であり、開発の⽴案と変更の機敏性が求められる。
・多分野複合技術が要求され、多方面の⼈材参画と連携作業が必須である。
・長期に亘るダイナミックな計画と、それに関わる⼈材育成と開発技術の実用化が必須。
・廃炉は社会的課題であり、研究開発は国の仕事である(全体的に宇宙開発との類比)。

(3)廃炉の手順
廃炉の手順は通常なら下記の手順で行われる。
1)使用済み燃料の搬出、2)炉設備の系統除染、3)一定期間の安全貯蔵で放射能減衰を待つ、4)建屋内部の炉等の解体撤去、建屋除染、5)建屋解体、燃料は譲渡、汚染物廃棄。6)建屋内部からの廃棄物処理処分。
しかしながら、福島の炉は通常ならざる状態であり廃炉工事内容と手順を策定するためにも、まずロボットによる内部状況の調査から始めなければならない。そして最終的な炉解体工事に至るまで、全面的にロボットの活用に依存せざるを得ない。

(4)ロボットに求められる要求とロボット開発
1)ロボットの開発目的は現場観察、環境測定、燃料デブリサンプリング、燃料デブリ取り出し、等々多岐に亘り、それぞれで要求される機能、性能、大きさ、パワーが異なる。
2)高放射線環境での作業のため、電子機器を長期間使用することが出来ない。また、無線の信頼性が低いため、電源供給をも含めた有線による遠隔操作ロボットとなる。しかし、有線では高度なケーブルマネージメントが求められる。
3)炉内では、炉内構造物の落下、瓦礫、たまり水等の障害物があり、外部から遮蔽壁を通って、炉内作業ポイントまでのロボットの持ち込みに、移動の確保が必要となる。
4)使用場所、使用目的に合わせた駆動機能、形状変化機能、運動機能が必要であり、開発が進んでいる。
・クローラタイプ・ロボット(階段、段差、ガレキ走行等の高い運動機能を持ち、映像撮影、環境モニタリング、軽量物のハンドリングに威⼒を発揮する。)
・磁気吸着移動ロボット(磁力で鋼鉄製壁面に吸着し、移動可。サプレッションチェンバ(S/C)やベント管上の漏えいなどの調査を⾏うために開発。)
・⽔上ボート(漏洩箇所調査用)
・⽔中ロボット(トーラス室壁⾯の⽔没したペネ貫通部の漏えいを調査する。超⾳波ソナーによるドップラ計測機能を装備。)
・今までは、炉内調査のため、外部から炉内へ小径の貫通穴(ペネトレーションと呼ぶ)を通過でき、内部で運動性能を発揮できる超⼩型ロボットを開発してきた。今後は耐放射線性、保守性、環境に応じた駆動⽅式を有する重作業のできる⼤型ロボットの開発が必要となる。

(5)現在までに行われた原⼦炉格納容器(PCV)内部調査
・(1号機)溶融燃料は、ほぼ全量が圧力容器(RPV)下部へ落下、炉⼼部には殆ど燃料が存在せずと推測。⇒・燃料デブリのペデスタル外側までの拡散の可能性から、ペデスタル外側の調査を優先。形状変化型ロボットを使用。グレーチング上を移動し、カメラ付き線量計を⽔⾯下に投⼊して調査。降下ポイントの⾼さ⽅向の線量率分布、地下階床⾯の燃料デブリの広がり状況の確認。
・(2号機)溶融した燃料のうち、⼀部は下部プレナムまたは又は格納容器(PCV)ペデスタルへ落下。燃料の⼀部は炉⼼部に残存と推測。⇒ペデスタル外側までの拡散の可能性低く、ペデスタル内側の調査を優先。クローラ型遠隔操作ロボットを使用。CRDレールを経由して直接ペデスタル開⼝部へ侵⼊を試みたが、粘性の高い物質のためとの干渉のため、途中停止。先立つ長尺竿先に付けたカメラによる画像では、ペデスタル底部の全体に,⼩⽯状・粘⼟状に⾒える堆積物を確認。燃料集合体の⼀部(上部タイプレート)がペデスタル底部に落下しており,その周辺に確認された堆積物は燃料デブリと推定。
(3号機)溶融燃料の存在形態は2号機に近いと思われる。PCV内の⽔位が⾼く、水中遊泳型ロボットを使用。着⽔後、潜⽔によりペデスタル⼊⼝から内部へ入る。底部に砂状、小石状の堆積物を確認。

(6)今後の展開・課題
IRIDの研究開発プロジェクトとしては次の3分野に関して、合計15プロジェクトが進行中。そのうち、9プロジェクトはロボット技術がベースになっている。
(1)燃料デブリ取り出し技術、(2)圧力容器補修、止水技術、(3)炉内調査、分析、評価技術

福島第一原発の廃炉は、人類が未だ踏み込んだことのない社会的・技術的分野であり、多分野複合技術とリソース(人材・予算)を必要とする長期プロジェクトである。この未踏分野における複雑かつ巨大システム技術を持続的進化させるためには、その考え方の基盤において、「認識科学」と「設計科学」を融合させながら推進することが重要。「認識科学」として観測⇒分析、その結果を使っての「設計科学」としての設計⇒適用があり、これらが循環することで持続的にシステムの進化が進む。

(7)講演の最後に講師は「君に何を期待するか」と若い人へのメッセージを発信された。
・福島第一原発の状況を科学的に理解せよ。
・社会の技術としての科学技術を広く眺める⼒を持て。同時に、社会科学的視点を理解せよ。
・部分最適化を避け、全体最適化を図れ。多分野複合技術者たれ。
・未踏分野の技術成功率は低いことを理解せよ。そして、技術の適⽤、失敗、その後の対応を深く考え、失敗例を的確な情報として残せ。

そして、「廃炉は世代をまたいだ⻑期事業。理解し、記憶し、⼿助けしよう」と呼びかけられた。

質疑応答
Q1;廃炉の達成は大変に難しそうであり、ダメな場合は、石棺もありうるか?
A1;ないと思う。国は石棺という手段を選択しないように考えている。
Q2;作業環境から無線は適さないとのことであるが、放射能耐性の高い材料もあると思うが?
A2;宇宙用にICが開発されているが、価格が高い。つまり、実用的な電子機器が使えるかどうかである。材料的には可能性がある。
Q3;IRIDは技術研究組合法に基づいての設立で、活動期間は10年と聞いている。プロジェクトの長さを考えると、それでは困るのでは?
A3;福島第一原発の廃炉技術開発をオール日本の態勢で立ち上げる必要があり、技術研究組合という枠組みを使った。組合故、時限で設置している。しかし、それで終わることはなく、必要に応じて、形態は変わっても何らかの形で技術開発の継続がなされよう。
Q4;お話の中で日本では技術伝承がないとおっしゃったが、自分の経験ではそうではなかった。
A4;一般論としては、日本はシステム的な技術について伝承が弱いと思う。また、日本ではリスクアセスメントが弱い。原子力はリスクに敏感な産業だけに進んでいると思っていたのだが、実際にはそうでもなかった。
(文責:橋本升)
講演資料:福島第一原発の廃炉技術とロボット
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2019年02月21日

EVF総会記念セミナー報告:クルマはエンジン車からEVに置き換わるか?〜電力ネットワークからソーラーカーを語る〜

演 題 :クルマはエンジン車からEVに置き換わるか?
〜電力ネットワークからソーラーカーを語る〜

実施日:2019年2月21日(木)
講師:廣田壽男氏 早稲田大学環境総合研究センター客員教授 工学博士
開催場所:JICA地球広場 セミナールーム202AB 
〒162-8433 東京都新宿区市谷本村町10-5(JICA市ヶ谷ビル内)   
1.講師略歴:
1972年、北海道大学工学部原子工学科(学部)卒業
同年、  日産自動車入社。中央研究所にて、電気自動車、燃料電池の研究開発
水素エンジン、メタノールエンジンの研究開発
1990年、エンジン開発部門にて生産車エンジンの開発 
1994年、米国駐在。パワートレーン開発、EV実用性試験
1998年、総合研究所にて、燃料電池システムの研究開発
1999年、工学博士(機械工学)
2001年、米国駐在。コネチカット州に燃料電池研究室開設。燃料電池車を開発
2005年、技術企画部。電動車両など環境・エネルギー研究開発戦略
2014年、日産自動車退職
2008年、早稲田大学。先進電動バス、EVバッテリ活用V2Hの研究
2011年、リチウムイオンバッテリの性能および耐久性に関する研究
2015年、燃料電池ゴミ収集車の研究
2018年、国際エネルギー機関(IEA) 太陽光発電 TASK17
     運輸部門における太陽光発電の活用に関する研究
現在に至る
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2.講演まとめ:
クルマはエンジン車からEVに置き換わるか?というテーマにつき以下の3つの視点からご講演をいただいた。
(1)EVの市場導入が進む
−2018年末にEV、PHV保有台数は500万台超に達する(全乗用車の0.5%)
−欧州、中国を中心に普及促進の政策が実行されている
(2)環境性能だけでないEVの魅力
−バッテリーとパワーエレクトロニクスの技術革新がEVを魅力ある車にかえた
−レスポンスの良い力強い走り、静かで滑らかな乗り心地、気持ちの良い空気感
−3ペダル(MT)⇒2ペダル(AT)⇒1ペダル(EV)の革新
−リチウムイオン電池の進化により2008年⇒2018年で、エネルギー密度は6倍、コストは1/6に進化
−2019年の日本国内の急速充電は7,500基、普通充電は1.5万基に達する
(3)将来展望
−EVのクルマとしての魅力により置き換わる。しかし時間がかかる。
−現在のEVはまだまだ重すぎるため、大幅な軽量化、コスト低減が必要
−太陽光エネルギーでどこまでも走ることができるクルマを作りたい
−PV(Photovoltaic:太陽光発電)セルの変換効率向上とモジュールコスト低減によりPV搭載EVの実用化を近づける
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3.講演概要
(1)EVの市場導入が進む
−2018年末にEV、PHV保有台数は500万台超に達する(全乗用車の0.5%)
−最大の市場は中国で米国、欧州(フランス、ノルウエーなど)が続く
−欧州、中国を中心に普及促進の政策が実行されている
−欧州では2030年〜2040年に内燃機関エンジン車の販売を禁止する動き
−中国では新エネ車を2019年に10%義務付け
(2)環境性能だけでないEVの魅力
−バッテリーとパワーエレクトロニクスの技術革新がEVを魅力ある車にかえた
−レスポンスの良い力強い走り:モーターは低速トルク大で変速機なしでクルマの要求トルクを実現できるため、変速ロスが無い。
−モーターの応答性の良さを生かして、コーナリング時のトルク制御により操縦安定性を改善することが可能
−3ペダル(MT)⇒2ペダル(AT)⇒1ペダル(EV)の革新
−市街地のゴーストップの多い走行で運転が容易。上り下りやカーブの多い山岳走行でも直感的にコントロールできる
−回生ブレーキのエネルギー回生量を増大できる
−静かで滑らかな乗り心地、気持ちの良い空気感
−長野市EVバス実証実験では「静かにお話ができる」「音楽の聞こえ方が違う」「オイルや排気ガスのにおいがしない」「長く乗っても車酔いしない」などの声が聞かれた
−リチウムイオン電池の進化により2008年⇒2018年で、エネルギー密度は6倍、コストは1/6に進化
−最近ではセル容量の大きい三元系(Ni,Co,Mn)やニッケルリッチ三元系が増加している
−2019年の日本国内の急速充電は7,500基、普通充電は15,000基に達する
−現在の急速充電は50kWだが、150kW、350kWへの拡大が検討されている
−充電器へのバッテリー内臓により大容量電源化無しでも超急速充電が可能となる
−仮に日本国内の保有乗用車7,000万台すべてがEV化されたとするとEVによる消費電力は全体の11%に相当する

(3)将来展望
−クルマはエンジン車からEVに置き換わるか?
−置き換わる。しかし時間がかかる。
−EVのクルマとしての魅力が置き換えを促進する
−ただし、大幅な軽量化、コスト低減がないと急速には普及しない
−Chevrolet VOLTもNissan Leafも1,600kg以上、1,000kg位の車が理想的。
−トヨタ、東工大が全個体電池を開発。実用化が待たれる。
−In-Wheel Motor、SiC半導体などの技術革新がEVの性能向上を促進する
−太陽光エネルギーでどこまでも走るクルマを創りたい
−PVセルの変換効率は22%(1977年)⇒46%(2015年)と進化している
−コストは$100/W(1976年)⇒$0.55W(2017年)まで低減された
−Nissan LEAFに1kWのPV搭載で試算すると、27回/年必要だった充電が5回/年に削減可能となり、消費電力量は732kWh⇒202kWhに低減される
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4.質疑応答
(1)Q1:運行費用はEVとエンジン車でどの程度違うのか?
−ガソリン車が約¥7/km、EVが約¥2.5/km(昼間電力)
(2)Q2:中国の技術レベルはどの程度なのか
−数年前は大したことは無かったが、ここ数年見ているととても高い。開発投資の投入量が莫大。日本の優位性は楽観できない。
(3)Q3:トラック、バスのEV化はどうなっているのか
−欧州、中国を中心に積極的に開発されている。日本は遅れている。
−EVバスは世界で40万台が走っている
−温暖化に対する国民に意識の差が原因か
(4)Q4:日産がEVシフトした理由は何か
−トヨタの後追いでHEVをやるよりはEVシフトしたほうが、勝算があった
(5)Q5:中古バッテリーよりも新品バッテリーの方が安くなるのでは
−新品は額面では¥10,000/kWhとなっているが現実には大量発注でないとこの値段では買えない。量が多くない場合は中古バッテリーは十分価値が有る。
以上 

(文責:深井吉男)

講演資料:クルマはエンジン車からEVに置き換わるか?
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2019年01月24日

EVFセミナー報告:COP24で見えてきた世界の大きな潮流

演 題 :「COP24で見えてきた世界の大きな潮流」
実施日:2019年1月24日(木)
講師:山岸 尚之氏 [WWFジャパン(公益財団法人 世界自然保護基金ジャパン)自然保護室 気候変動・エネルギーグループ リーダー]
開催場所:NPO法人新現役ネット会議室 
〒108-0014港区芝5-31-10サンシャインビル   
1.講師略歴:
1997年に立命館大学国際関係学部入学。同年にCOP3の開催をきっかけとして気候変動問題をめぐる国際政治に関心を持つようになる。2001年3月に同大を卒業。
同年9月よりアメリカ、マサチューセッツ州、ボストン大学大学院にて、国際関係論・環境政策の修士プログラムに入学。2003年5月に同修士号を取得。
卒業後、WWFジャパン(公益財団法人 世界自然保護基金ジャパン)の気候変動担当オフィサーとして、政策提言・キャンペーン活動に携わるほか、国連会議での情報収集・ロビー活動などを担当。
現在は自然保護室・自然保護室次長 兼 気候変動・エネルギーグループ長。
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2.講演まとめ:
COP24(2018年12月、ポーランド・カトヴィツェ、第24回国連気候変動枠組み条約締結国会議)は、地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」を運用する「実施指針」(通称「ルールブック」)を採択して閉幕しました。
今回焦点だった(1)「ルールブック」と呼ばれるパリ協定実施に際する細目ルールについて、(2)CO2削減目標をさらに高める必要性の合意について、会議(COP24)直後でもあり、具体的なやりとり、そしてその背景についてまでご説明頂きました。演題にもありますように、大きな世界の潮流の変化があり、そして現状の我が国の対応にまで言及して頂きました。質疑応答についても、時間も多めにあり、熱心な質問が続きました。
今回で山岸講師は4回目のEVFセミナーでもあり、我々EVF向けに的を絞った分かり易い、且つ高いレベルの講演でした。「24時間営業のコンビニ店舗の拡大」、「ネット通販の拡大に伴う再配達の増加」等、一部脱炭素社会への逆行とも思われる現状の日本の社会において、我々の今後のあるべき方向付けについても大いに認識が深まりました。
3.講演概要:
*パリ協定は、2015年に採択され、2020年の実施が予定されている。産業革命前に比して、気温上昇を2℃より低く、出来れば1.5℃を狙う。21世紀後半には、段階的な改善を経て、脱炭素化社会の実現を図る。

*パリ協定は、1980年代の後半からの国際的な議論の積み重ねの上にあり、先進国と途上国の対立を乗り越えての合意を優先した。今回は、初めてその実施の為の規則・ルールブックが、締結された。

*NDC(国別目標)は、5年ごとに管理のサイクル(P-D-C)で世界全体での進捗確認を行う、透明性のある枠組み作りを。NDCは、原則的にすべての国が参加する。2020年までに、「2030年までのNDC」を提出もしくは更新することを求める。5年ごとのグローバル・ストックテイクは、「緩和」「適応」「実施の手段」の3つのテーマを中心に行われる。

*2.0℃と1.5℃の差の影響は大きな問題であり、今のままでは3.0℃になってしまう現実がある。NDCに書くべき項目として、根本的な対立点は、「排出削減が中心」vs「資金・技術も」であったが、先進国と途上国が歩み寄る形でルールが概ね採択された。ルールが採択された原動力の一つは、各国の温暖化の被害(米国の例、日本の例・・・)に対する危機感だったのではないか。

*交渉において基本的な難しさは残っており、再燃する。国のタイプによるグループ分けをどうするかの議論も残っているが、ともかく今回はひとまず全ての国に共通する形で「ルールブック」を完成させることが出来た。

*ルールブック以外も含め、その他の決定事項は、COP25(チリ)に持ち越された。COP25の開催は、2019年11月から2020年1月に移すことが検討されている。
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*タラノア対話の意図は、今のままでは3℃になってしまい、世界全体の野心を2020年までに引き上げる事。44か国、429の非締約国ステークホルダーからのインプットがあり、又、国・地域で約90のイベントが開催。その背景には、世界各国での非国家ファクターの台頭がある。

*米国はトランプ大統領がパリ協定からの離脱を決め、自主目標を拒絶した。米国の企業と国民は「We are still in」のキャンペーンの盛り上がりが、そして日本では「気候変動イニシアティブ」の推進があり、その好例。

*「パリ協定」では、各国に長期戦略(2050年まで)も求めているが、G7では「日本」と「イタリア」だけが未提出。日本がリーダーシップを発揮しているとは言えない状況。しかし、「2020年までの野心の強化」を発表すれば、先進国としては初めてなだけに、日本の評価は一変するのでは。

*タラノア対話を通じた「野心の強化」のメッセージは、十分とは言い切れない。しかし、メッセージは埋め込まれている。2019年9月の国連事務総長主催の気候サミットへの「参加」、及び「強化された野心を示す」ことを呼びかける。

4.質疑応答:
講演終了(16:45)後、17:30まで活発な質疑応答があった。以下はQ&Aの事例。
Q:中国のCO2排出量削減の姿勢について。
A:パリ協定を支える姿勢は守っているが、交渉官の態度は極めてハード。しかしマスコミ対策は上手い。

Q:2.0℃/1.5℃にならなかったらどんなに事になるかを明らかにすべきでは。
A:今の科学ではそこまで明確に言いきれていないが、情報のある国では解決できる可能性はある。危機感を共有する事が必要であり、共有する時間が不足している。

Q:CO2排出量が削減され、上昇温度が減る事を検証する必要があるのでは。だれが責任を持つのか。
A:今回、グローバル・ストックテイクで5年ごとに進捗確認の仕組みが作られた。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が、今後起こりうる被害の科学的予測を報告している。政策決定者がそれをベースに判断する。

Q:COPにおける、非国家機関の位置付けは。
A:現状では「脇役」だが、しかし気候変動対策は、国家総力戦の方向であり、会場では「国家」と「非国家機関」の二つの盛り上がりがあった。但し、非国家機関の定義は難しい。
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Q:国連では、各国が何を対策としてやるかの議論を避けているのでは。
A:内政干渉になりかねないので、国連では「何を」の議論にはならない。

Q:地球温暖化について、日本政府/環境省、経産省の議論は。
A:「イノベーション」や最先端技術があったらできる、という意識が強すぎて、目の前でできることへの意識が低い。例えば、石炭や再エネなど。

Q:日本の政策と産業構造の可能性については。
A:最近は連携して進んでいる。日本の「気候変動イニシア「ティブ」の最近の拡大は特筆されるべき。革新的技術だけでは危機的であり、技術以外の社会の仕組み・ソフトの変化がなければ進まない。

Q:CO2排出量削減の日本の本質的な取り組みについて。
A:日本の社会、政府は、確証はないが、最初の10年に比べて、ここ5年の空気は変わっている。ビジネスチャンスと感じている人も増え、うねりとなっているのでは。自動車、プラスチック業界は、その好例。

以上
(文責:三嶋 明)

講演資料:COP24で見えてきた 世界の大きな潮流
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2018年12月20日

EVFセミナー:リチウムイオン電池の再利用への取り組み

演 題 :「リチウムイオン電池の再利用への取り組み」
実施日:2018年12月20日(木)
講師: フォーアールエナジー株式会社代表取締役社長 牧野英治様
演題:「リチウムイオン電池の再利用への取り組み」
開催場所:NPO法人新現役ネット会議室 
〒108-0014港区芝5-31-10サンシャインビル   
1.講師略歴:
講師は1983年に日産自動車に入社し、開発部門で技術渉外、技術企画等を担当、1994年〜98年、2004年〜07年の2回に亘り米国駐在を経験した。その後経営企画室、電気自動車リーフのプロジェクトメンバー、等々を歴任し、2014年4月から現職を務めている。

2.講演概要:
まず冒頭に電気自動車(EV)導入の社会的必然性と、その実現方策について以下のような説明があった。
・IPCCの第4次報告に基づくと2050年までにCO2排出量を2000年比で90%の削減が必要。
・この実現のためには走行中にCO2排出ゼロのEVを広く普及させることが必要。
・使用済み電池の活用まで計算に入れたEVの生涯コストを考えると、現行のガソリン車の生涯コストとほぼ同等になり、EVの普及が進む。
・このためには使用済み電池の活用が必須となる。
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次にフォーアールエナジー社の概要について以下のような説明があった。
フォーアールエナジー社は、日産自動車と住友商事の共同出資により2010年9月に設立された。同社はEVで使用済みとなったリチウムイオンバッテリーを2次利用し、エネルギー貯蔵の解決策として「4R」事業と銘打った事業を手掛ける。「4R」は社名のフォーアールの語源にもなっている。EVで使用済みのリチウムイオンバッテリーは、まだ高い残存容量を持つためこの有効利用を図る。「4R」とは、次のような事業を指している。
・再利用(Reuse) : 約60%〜80%と高い残存容量を持つバッテリーの2次利用を行なう。
・再販売(Resell): バッテリーを様々な用途のために再販売する。
・再製品化(Refabricate): バッテリーパックを分解した後、顧客のニーズに合うよう再度パッケージングを行なう。
・リサイクル(Recycle): 原材料を回収するために使用済みバッテリーのリサイクルを行なう。

4Rビジネスはゼロエミッション車の普及のみならず、再生可能エネルギー分野でさらなるCO2削減を行ない低炭素社会の実現に貢献する。電池の残存容量に合わせて使用対象を使い分ける
・性能が優れた電池   : EVの交換用電池、他
・性能が中程度の電池  : フォークリフト、ゴルフカート、他
・性能が少し低下した電池: 定置型蓄電池・電源、工場電源バックアップ設備、他
 
日産のリチウムイオン電池は、新品製造の段階でセルごとに詳細な情報をすべて記録保存してあり、万一の事故発生時に原因を特定できるようなトレーサビリティーが確保されている。4Rエナジーでの使用済み電池製品の製造過程についても全く同様な情報を記録保存してあり、日産の新品製造時の記録とも連結しているため、2次利用での不具合発生時にも原因を新品時までさかのぼって特定できる仕組みとなっている。

最後に同社が今年3月に建設した福島県浪江町の新事業所の機能について以下の紹介があった。
使用済み電池の2次利用ビジネスに関する、
(1) グローバル開発センター機能
    ・使用済み電池を使った製品の開発と、グローバル展開
    ・製造技術の開発と、グローバル展開
(2) 国内向け製品製造機能
   ・使用済み電池を使った国内向け製品の製造

今後太陽光発電のFIT(固定価格買い取り制度)が切れて来るので、売電の代わりに自家使用するための蓄電地としての需要増が期待されること、またEV用電池の高容量化を受けて充電速度の高速化技術を開発中、との説明があった。
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3.質疑応答:
講演終了後、聴講者と講師の間で活発な質疑応答があった。Q&Aの例は以下の通り。
Q.街路灯用電源として現在「ソーラーパネル+鉛蓄電池」を使っている。この鉛蓄電池を中古リチウム電池に置き替えたいが販売して貰えるか?  
A.相談に乗ります。
Q.リチウムイオン電池はどこの部分が劣化していてどう修理しているのか?
   A.電池の中身はいじらない。残存性能を正確に把握し再利用の仕方を判断する。
Q.フォーアールエナジー社の業務内容はいずれ中国にコピーされるだろうが、その先の収益策は?
   A.使用済み電池がこれから急増するのでこれを使った商品で収益を上げていく。
Q.非常用電源としての利用可否は?
   A.現在商品を開発中なので期待してほしい。
Q.他社車の電池でのリユースはできるのか?
    A.検討を進めている。
Q.中古バッテリーの価格のレベルは?
    A.同等性能の新品バッテリーに比較して1/2〜1/3の価格レベル。
Q.中古電池の回収の仕組みは?
    A.電池は中古といえども取り扱いを誤ると非常に危険なので、回収業者への資格制度、認証制度などの制度整備を政府に働きかけている。
Q.モンゴルの移動住宅「ゲル」などへの適用は?
   A.現在は未検討だが$700程度の価格なら事業化できるかもしれない。
以上
(文責:小栗武治)
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2018年11月20日

EVF拡大セミナー報告:「第三の危機」VS 鳥類学者、あるいは(外来生物の功罪)

演 題 :「第三の危機」VS 鳥類学者、あるいは(外来生物の功罪)
開催日:平成30年11月20日(火)18:30〜20:30
場 所:きゅりあん6F大会議室
講 師:川上和人氏 森林総合研究所主任研究員

講演概要:
T 生物の多様性を保全することがなぜ必要なのか?
生物多様性基本法(2008年施行)では、生物多様性の保全及び持続可能な利用に関する施策を総合的かつ計画的に推進することにより、豊かな生物多様性を保持し、その恵沢を将来にわたって享受できる自然と共生できる社会を実現し、地球環境の保全に寄与することとあり、人類共通の財産である生物多様性を引き継いでいく義務があると明確に記されています。そして、生物多様性がもたらす恵沢は生態系サービスと呼ばれ、いくつかの種類に分類されています。
1.供給サービス・・・何かを供給してくれる。例えば、農産物・魚介類・
水・医薬品
2.調整サービス・・・気候や水質、農地環境などを調整する。例えば、
洪水などの制御や受粉など。
3.生息・生育地サービス・・・多様な生物が生き、遺伝的多様性が維持
できる生息地を提供する。
4.文化的サービス・・・レクレーションや文化の発展、芸術的インスピ
レーションを得る。
次世代に生物の多様性を残すためには、保全のためにできることをして行くことであり森林を守る、寄付をする、研究、行政色々な立場での保全活動があります。
また、生物多様性の国家戦略で、基本法は生物多様性を阻害する四つの危機を示しています。
1.第一の危機・・・開発・乱獲の利用しすぎる危機
2.第二の危機・・・里山の放置などの利用しないことによる危機
3.第三の危機・・・外来種の侵入等、人間が何かを持ち込んでしまう危機
4.第四の危機・・・地球温暖化で世界的レベルでの気候変化の危機
中でも、このセミナーのテーマは第三の危機:外来生物の侵入です。

U 外来生物の問題
1.世界の侵略的外来種ワースト100、同様に日本の侵略的外来種ワースト100もあります。ブラックバス、ミシシッピアカミミガメ、繁殖力の強いグリーンワームそして意外なのは日本のわかめです。我が国や朝鮮半島でのみ好まれるわかめですが、船のバラスト水として世界の港に運ばれて繁殖しています。
2.侵略的外来生物による影響はどんなところで問題になっているのでしょう
か?

日本でも南西諸島・伊豆諸島・小笠原諸島の島嶼と陸上の池・湖・
川などの狭い面積の中で周囲から取り残された領域です。島嶼は面積が小
さいので、狭い所で生物が進化すると移動性が低く防御力が低くなります。
また、これらのエリアでは個体数が少ないので絶滅しやすい環境でもあり
ます。島は地球全体の5%しかなく、しかも鳥類絶滅種の83%は島嶼で
起きています。

3.余談ですが、オーストラリア大陸以上の大きさの陸地を大陸とし、それより面積が少ない陸地を島と表します。また、この島は二つに分類できます。
A.海洋島(小笠原諸島)・・海洋プレート上にあり、海が深く孤立する。
  地上哺乳類は遠くまで泳げない。捕食者であるキツネ・イタチ・テンは海洋島にはいない。海洋島では生態系が簡単で種が少ない環境になっています。
B.大陸島(本州・沖縄)・・大陸プレート上にあり、海面レベルの上下で      
  陸続きになる可能性が大きい。

V 世界自然遺産/小笠原諸島をモデルとして侵略的外来生物の影響を観察しま
す。
1.小笠原固有種の鳥類は四種(メグロ・オガサワラカラスバト・オガサワラガビチョウ・オガサワラマシコ)で長い時間をかけて進化し、島の環境に適合していると考えられます。メグロ以外は既に絶滅しています。
2.メグロはメジロより一回り大きく、小笠原村のマークになっている絶滅危惧種IBで約15000羽が生息していると推定されており、個体数は決して多くありません。本州では、木の幹にキツツキ、地上にツグミと空間を分割利用しているが、小笠原ではメグロは競争者や捕食者がいないので全体を使って生きています。
さて、メグロは母島・向島・妹島にのみ生息しているが、DNA分析で島ごとに独自の遺伝的パターンがないかを調べました。そうするとミトコンドリアDNAに、母島や妹島にしかない配列が見つかり、島間の移動がほとんど生じていないことが分かりました。
 島という環境では、しばしば移動性が低下することがあり、メグロもその
典型例と言えます。

W 小笠原諸島の外来種生物対策
1.聟島列島でヤギ被害
  人間が持ち込んだヤギが、森林そして草原化した小笠原固有植物を食い荒 
  らした上、荒れ地になってしまいましたが、ヤギの根絶対策を施した結果、オナガミズナドリなどの海鳥が増加しました。
2.東島でクマネズミ
  クマネズミはもともと植物食を中心とした雑食性であったが、海鳥を食べ
るようになってしまっていたのです。ネズミ駆除の結果、海鳥の営巣が増
えました。
3.トクサバモクマオウ(オーストラリア原産の植物)
  落葉が10pもたまると他の植物が生息できないし、しかも土地が乾燥しま
す。トクサバモクマオウを駆除することで、水分量が増加して在来種のウ
ラジオエノキが増加しました。
 
*外来種はなぜ増えるのか?移入先には、もともとの生息地にいたはずの天敵がいないため、増加しやすい場合があります。また、進化の歴史が違うことで強い競争力を持っている生物や、低コストで生きられる生物は侵略的外来種になりやすい性質を持っています。

X 外来種の駆除には良いことも悪いこともある
1.算数では1プラス1−1(駆除)=1で元に戻ると考えられるが、生態系ではそうはなりません。駆除の影響から違った生態系になることもあります。そんなことで駆除でなく、侵入を防止することが生態系の保全には肝要です。
*トクサバモクマオウを駆除したら生物多様性は回復したが、その葉がカタ
ツムリの絶好の隠れ場所となっているような場合もあります。
*また、ネズミを駆除するとネズミを捕食している在来種のオガサワラノス 
 リ(鷹の一種)の生存が危惧されます。

2.外来種対策は生態系に対する影響があるからやるのだが、不測の事態が起きることを恐れすぎては駄目でしょう。何が起きるか予測して、特定種の排除・保護を目的とするのではなく、在来種による安定した生態系を作ること・保全することが上位に位置する目標であります。

3.定着した外来種は、生態系の中で機能を持ちます
A.外来生物対策
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B.外来種生物問題の変遷
   STAGE1 認識外
   STAGE2 問題の認識
   STAGE3 対策開始
STAGE4 新たな課題
  以上、外来生物対策は「悪対善」の図式で考えるものでなく、もっと複雑な問題であります。大切なことは種間作用をキチンと把握して、生態系全体で考え対処することであろう。
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質疑応答
1.メグロに興味があります。メグロのご先祖は遠くへ飛べない姿だし、海鳥 
でもない。何百キロもどうして飛んだのか?また、もしくは、フィリピン・プレートの上に島が乗っていて、昔はもっと南に位置していたのか?
答:鋭い良い質問です。フィリピン・プレートは少しづつ北に向かって動いています。プレート上の島はもっと南にあったと考えられます。
 サイパンに居るオウゴンメジロはメグロの祖先に近いもので、メグロは南方起源と考えられます。カワセミが1000キロも飛んで小笠原諸島にやってくることが確認されているので、小さい鳥でも頑張って飛べるのです。
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2.飛翔力のある鳥がどうして北と南を往来しないのか?(渡りをしないのか)
答:渡り鳥の進化は食べ物の量に影響を受けます。北の方は寒くなると、昆虫が動かなくなり、両生類・爬虫類は冬眠します。小笠原諸島は亜熱帯で食べ物が豊富だから渡りをする必要がないのです。この「渡り」というのは鳥にとってリスクのとても大きいことです。行ったことのない所へ渡って、食べ物を新たに見つけそして危険を冒して戻ってくる。そんな危険な渡りをしない方が生き残りやすくなるのです。海洋島だから渡り鳥がいないのでなく、亜熱帯で季節的な変化が小さいから渡りをする必要がないのでしょう。

3.小笠原諸島の200〜300年前と現在、そして200年後を考えると、進化を
止めているのでないか?
答:人が持ち込む外来種が生態系の脅威となっているので、これを管理するこ
とは自然の進化を止めることではありません。また、全ての外来種を管理す
るのは現実的には不可能で、対象となっているのは侵略的な外来種のみとな
ります。 
 ただし、小笠原は世界自然遺産なので、基本的には生態系に対する人為的干
渉は最低限にすべきと考えられます。また、保全の目標となるべき人間が影
響を与える以前の環境はわかっていないので、在来種を中心に自律的に維持
される安定した生態系を目標に、保全が進められています。
                                以上
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2018年09月27日

EVFセミナー報告:「極地研究からわかる地球規模の気候変化」〜第58次副隊長兼越冬隊長に聞く〜

演 題 :「極地研究からわかる地球規模の気候変化」〜第58次副隊長兼越冬隊長に聞く〜
開催日:平成30年9月27日(木)午後3時30分〜5時30分
場 所:新現役ネット事務局A会議室
講 師:岡田雅樹氏  国立極地研究所准教授、第58次南極地域観測隊副隊長兼越冬隊長

 講師は京都大学大学院工学研究科電子工学専攻博士課程を修了し、国立極地研究所に入所。現在は研究教育系宙空圏研究グループ准教授として極域プラズマ物理学分野を担当されると共に情報基盤センター長も兼ねられています。

講演概要:
今回の講演では、第58次南極地域観測隊副隊長兼越冬隊長として本年3月に帰国され、
南極という自然条件のなか、南極観測船「新しらせ」による年1回の物資の輸送に大きく依存しながらも、第1次南極地域観測隊が昭和基地を開設してから60年の長きにわたり安定した運用を維持する一方で、世界的な観測競争に伍して最先端の観測を維持する昭和基地の現状と観測体制を32名の越冬隊員とともに越冬した経験を基に、南極の自然と観測隊運営について最新の映像と観測データから地球環境観測の現況と厳しい自然環境の中、いかにして隊員の安全と柔軟な運営を両立させているか基地運営の実態を多数の資料にて紹介いただきました。

先ず最初に先生が所属している国立極地研究所の建物や南極観測実施体制の中での位置付け、国際学術研究組織体制と第58次南極地域観測隊(夏隊35名、越冬隊33名と同行者25名)が「しらせ」甲板上でお正月を迎えた様子をご紹介頂いた。
次いで1961年に発効した南極条約(51条約締結国)に基づく南極観測実施国(29ヶ国)と越冬実施国(20ヶ国)の基地位置と絡めて昭和基地の気象・海氷状況と気温の変化をグラフを使って厳しい環境を紹介して頂きました。因みに最低気温は-32.9℃(8/29/2017)で最高気温は5.4℃(12/22/2017)で、一日中太陽が出ている“白夜”が11月末から1月末と一日中太陽が出てこない“極夜”が6月20日から2ヶ月半があり、この期間の隊員の体調管理が大変との事。
また昭和基地には約70棟の建物と一般家庭約400件分の発電機(300kVA、2基)があり、「しらせ」による年1回1,000トンの物資が輸送されています。
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 宇宙環境の予測、宇宙天気予報への応用のためのオーロラ観測(宙空圏変動)、地球温暖化予測のための精密観測と温暖化物質(微量元素)の変化観測(気水圏変動観測)、30年以上にわたりペンギンの個体数変化を調べることで南極の温暖化が生息環境にどのような影響を及ぼすかの調査(生態圏変動)についてデータと豊富な写真を用いて説明頂いた。特にオーロラ発現の動画は参加者の興味を大いに曳き付けました。
南極氷床の成り立ちの説明では、南極海下からの大陸岩盤の上に厚さ平均約2,450mの氷床(雪が降り積もり圧縮されてでき、世界の淡水の90%を占める)が覆い被さって最高標高が約4,000mもある氷でできた南極大陸のイメージと南極大陸の落ちる隕石の集積機構についても説明された。
ここまで約1時間、丁寧な説明をされた後、越冬隊員の構成について写真を交えて説明頂きました。観測系隊員が14名でその内訳は、宙空圏分野が5名、気水圏分野が1名、地圏分野が1名、生物圏分野で2名と気象観測に5名との事。
観測隊員の裏方になる設営系隊員が18名でその内訳は機械担当(エンジン、制御、電気、設備と車両)が7名、調理と医療担当が夫々2名、通信、衛星受信、ネットワークおよび環境保全担当が夫々1名と少数精鋭の体制であることを感じ取れました。
第59次先遣隊(18名)受入の為の緊急用滑走路(1,000m、昭和基地から8km)の整備状況と隊員との交歓やペンギン、湖沼調査やアザラシ調査状況さらに昭和基地からの情報発信としてのホームページ“昭和基地NOW!!”やテレビ会議を用いた小学生を対象とした“南極教室”なども写真や動画をフル登場で判り易く説明頂きました。
南極観測隊における危機管理として火災、漏油事故、隊員の生命にかかわる事故・病気などに対する行動実施計画書・安全対策計画書として“昭和基地油流失防災計画指針”“ブリザード対策指針”“防火・防災指針”“野外行動における安全行動指針”“レスキュー指針”および“内陸行動における安全指針”が用意され、これらの指針に基づいた訓練状況の映像解説で基地生活の厳しさがよく理解できました。
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ここまで丁度1時間半、多くのデータ、写真や動画を駆使した説明を頂き質疑応答の時間になり、これまでのセミナーでは類を見ない約15件もの質疑応答となり司会者も時間を気にしながら進行をされました。
質疑応答の数例を以下に紹介します。
Q1:燃料は600トン輸送されるそうだが、水は飲料水や洗濯水などに使われると思うが現地調達しているのですか?また発電機を使っているのでコージェネになっていますか?
A1:発電機はコージェネになっていて熱効率で70%回収している。冷却水は暖房や融雪に活用し、水は貴重で常日頃節水に心がけている。
Q2:60年間の南極観測予算は減ってはいないと思うが?また一冬の越冬費用は?
A2:当初1億円弱でスタートし、現在は約30億円規模の予算。一番費用が掛かるのは「しらせ」の運航で約20億円、越冬隊が約10億円。
Q3:33名の越冬隊員が約1ヶ月の引継ぎでは難しいと思う。越冬経験が2度目、3度目という隊員がいるのか否か?また、建築担当が1名で33名の隊員を指導できるのか?
A3:越冬が2度目という隊員が約10%前後で、越冬隊長も2度目・3度目の経験者を充て、建物の建設は夏隊を1〜2名増員して行い、越冬隊は内装改修をメインにしている。
Q4:南極は寒い処なので冷蔵庫はあるのか?長い期間閉じられた環境で生活するので帰国後、同窓会的な集まりはあるのか否か?
A4:生鮮食品を凍らせないための大型冷蔵庫が3個、冷凍庫も3個あり、分散保管している。同窓会も年1〜2回実施している隊が普通。
Q5:現地での廃棄物処理対策は?減量化・燃料化は行っているのか?
A5:南極条約で厳しくなっており、持ち帰りが原則。固形物は焼却して減量・減容化し、灰は持ち帰る。汚水の浄化装置があり、浄化水は海洋投棄が出来る。1,000トン持ち込み、400トンを持ち帰っている。
Q6:33名の隊員のメンタルケアは?またインターネットを利用したカウンセリングの事例は?
A6:太陽のない時期は滅入る隊員が出てくるので懇親会など行って気分転換を図っている。テレビ電話やラインを使って家族とのコミュニケーションが頻繁に行われている。
東葛病院と連携して何かあればテレビ会議で対応している。対応アドバイスが必要な場合は専門病院と患部を確認しながら対処している。
Q7:帰国してからのデータ発表期間の制限は?
A7:南極条約で観測データは原則2年を目途に公開することになっている。その間、個人が自由に使えるが、共同研究ではオープンデータアクセスを使うこともある。
Q8:先生の専門はオーロラ分野と聞いているが?
A8:オーロラの電波を観測して光では天気が悪くて見えない時でも電波によりオーロラ現象が分かり、地球規模の観測が出来る。
 3月に帰国されてから数多くのご講演をなされ、豊富なデーター、写真や動画を駆使されたご発表で30分間の質疑応答も時間が足りないくらい密度の濃く出席者一同の大喝采の中、2時間のご講演を終えました。
以上
講演資料:昭和基地創設60周年を迎える南極観測
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2018年08月23日

EVFセミナー報告:「インドはカーストよりコスト」〜あなたの既成概念は、インドビジネスの敵〜

演 題 :「インドはカーストよりコスト」〜あなたの既成概念は、インドビジネスの敵〜
講 師 : 島田 卓様  株式会社インド・ビジネス・センター 代表取締役社長
日 時 : 2018年8月23日(木) 15:30〜17:30 
場 所 : NPO法人新現役ネット会議室

講師略歴 : 島田 卓(しまだ たかし)氏 
・1948年生まれ。明治大学商学部卒業。
・1972年東京銀行入行。本店営業部、ロサンジェルス支店、事務管理部、大阪支店等を経て、1991年インド・ニューデリー支店次長
・1995年アジア・オセアニア部次長。1997年同行退職。同年4月に潟Cンド・ビジネス・センターを設立、代表取締役社長に就任。
・東京商工会議所 中小企業国際展開アドバイザー。
・NHK「クローズアップ現代」「Bizスポワイド」等のテレビ出演、各方面での講演、執筆多数。
・主な著書:「インドとビジネスをするための鉄則55」(アルク)、「不思議の国インドがわかる本」(廣済堂出版)、「スズキのインド戦略」(監訳、中経出版)、
「トヨタとインドとモノづくり」(編著、日刊工業新聞社)、「インド2020」(監修、日本経済新聞出版社)、「日本を救うインド人」(講談社)など多数。
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講演概要:
「インドをモノにしようとするなら、インドに関するカーストを含めた既成概念を一旦捨て、一対一のビジネスマンとして、差し違えるくらいの気概で取り組む必要がある」とのことだが、その訳をインドの向かう方向を追い求めてきたインド駐在時代の経験も含めてお話していただいた。
1.あなたの視点でインドは変わる
●インドを理解するためには
ポール・セザンヌの多角的な視点の採用 即ち一点透視画法から多視点透視画法の見方が必要であるということ。ポール・セザンヌの発明とは「私たちは絵を描く際に、見たように筆を走らせる。これを単一視点と言うが、それは対象物の一側面を描いただけにすぎない」ということである。
セザンヌはそれでは対象を正確に描写することではできないと主張した。そこで彼は多角的に対象物を観察し、画面に同時に描写する「多角的視点」を導入した。インドも全体を理解するためには、多面的に、多視点からバランスの取れた判断をしていく必要がある。
●印ビジネスを飛躍的に拡大するには
スティーブ・ジョブスは、一見すると関係のないように見えるさまざまな分野の疑問や課題、アイデアやひらめきを上手につなぎ合わせる力が創造力だと語っている。
インドでは神様が無数いるがこれらを包含して多様性国の統一を目指している。最初は何でもありで多様な社会における知識を積み重ね、それに基づく判断をしていく。単一民族といわれる日本が、人種の坩堝であるインドに、日本流経営の良さとメリットを伝え、うまく結びつけ、ハーモニーを醸し出す努力をすべきではないか。
2.なぜヒンドゥー至上主義政党から首相が生まれたか
●モディを理解すれば今のインドが分かる。
独立以来インド社会が頼みにしてきたネル-・ガンディ-家支配の腐敗にまみれた体制の呪縛からインドを解き放ち、インド国家自体の政治・経済体制を作り変えたのは、2014年の総選挙で勝利したナレンドラ・モディである。モディは苦学して大学を卒業しているが、二等列車の紅茶売りからたたき上げ、17歳で家を出て現政権BJP(インド人民党)の母体である民族奉仕団に加わった。彼ほど多極的な側面を持つ人間はいない。ヒンドゥー至上主義者でありながら、ことビジネスに関しては無宗教派に徹する。現在、硬軟併せ持ち、政治とビジネスを融合させる、らつ腕を絵にかいたような立ち回りのできる人物であり、モットーは【Perform or Perish(結果の出せぬものは去れ) 】である。
3.インド経済の現状と今後
●直近のインド実質GDPの推移
2014年の105兆ルピーから2017年は130兆ルピー(2.6兆ドル)と急成長している。
●10年後の中米印の主要国GDP推移
2010年のGDPは10位以下の圏外であったが、2020年には4.5兆ドルの5位で、2030年にはドイツ、日本を抜いて15兆ドルとなる予測がある。
●ビジネスの世界が変わる
将来、ナレッジ国家インドが世界ビジネスの中心になる。
●人口の増減が物語ること
少子化する日本は2025年の20〜24歳の人口が600万人で、一人っ子政策のリスクのある中国は8000万人、バランスの取れた人口構成のインドは一億人になる。
●GDP構成・労働人口比を変える
GDPの2割に満たない農業部門に労働人口の約5割が従事しているが、今インドに必要なことは、農業生産の効率化を進めるための総合的社会のインフラの整備を行い、それで余った労働力を生産性のより高い製造業へシフトして、国としての総合力をつけていくことではないか。

4.インドビジネスの要諦
●『プシュカールの老人』を描いたときの西田俊英画伯の言葉から
相手の心底にまで入り込み、相手を理解しようとする気概でビジネスをやれば、案外心が通じ合い、それまで気になっていたことが些細なことにすぎず、ことの本質ではないということに気付くのではないか。これからの日印の各種交流拡大を考えたとき、西田画伯の言う「心で受け止める気概」を忘れてはならない。
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●暗黙知・実践知・形式知
日印製造業の顧客創造の施策には、製造業における日印人材の暗黙知の形式知化が必要である。日印双方の暗黙知を統合、形式知化し、相互協力体制を築き、国籍に関係なく現場が現状を創造、維持、破壊、再生の繰り返しで、最適解を求めて動くようにする。そうすれば日印両国の労働者は、世界最強の製造業を創り出せる。
●金まみれのヒラリーと型破りのトランプを全く同列の醜悪大統領選だと。
米国のある有権者曰く「今回の選挙はガンか心臓発作のいずれかを選べと言っているに等しい」。
●鈴木修会長に要請され、インド重工業省から同社をマルチウドヨク(現マルチ・スズキ・インディアの前身)に転身し同社をインド最大の自動車メーカーに育て上げたバルガバ氏は完璧に時間を守った。インド人は時間をまもらない、というのは一面的観察に過ぎない。
●バルガバ氏から聞いた話だが、以前日本からの使節団に講演を頼まれた「カーストの話」をあえて「コストの話」に変えて話した。なぜなら、いかなる国でものづくりしようが、
一番大切なのは「いかにしてコストを削減するか」だから、とのことだった。 
セミナーに参加して
●中国のように中央政府の決定が絶対的な意味を持つ国とは異なり、村落レベルから合意形成を重視する傾向が根付いている親日国インドは、行政による意思決定に時間がかかるが、改革が進めば、これまでにないスピードで発展していく期待感が今回のセミナーを通じて強くなってきた。
(文責:立花賢一)

講演資料:インドはカーストよりコスト-18.8.23
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2018年07月26日

EVFセミナー報告:経済発展する中国の現状と将来〜ある中国ウオッチャーの観察

演題:経済発展する中国の現状と将来〜ある中国ウオッチャーの観察
講師:結城 隆様  中国ウォッチャー 荒井商事常勤顧問 
日時:2018年7月26日(木) 15:30〜17:30
場所:NPO法人新現役ネット 会議室
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講師略歴:
•1955年生まれ。福島県出身。一橋大学経済学部卒。
•1979年旧日本長期信用銀行入行。調査部、ロンドン支店、マーチャントバンキンググループ、パリ支店、ニューヨーク支店勤務。
•1999年ダイキン工業経営企画室、大金中国投資有限公司(北京)勤務。
•デンロコーポレーション常務執行役員を経て2013年より現職。
•現在、荒井商事の常勤顧問として新規事業開拓を担当する傍ら、東日本大震災事業者再生支援機構業務委託、柳沼プレス工業顧問を務める。
•中国ビジネス研究会会員。
•主な著書:中国市場に踏みとどまる(2009年草思社)、中国羅針盤(2009〜2010年)日経ビジネスオンライン、ジョークで読み解く省別中国人気質(2012年草思社)、その他四半期毎に中国観察レポートを発行。
•座右の銘:百年生きて、百年学べ。
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講演概要:
本年の全人代政府報告からここ数年の習政権中国の発展の実績を数値をいれて紹介された。2014年の「新常態」(景気下降、政治的乱気流)から2017年「新時代」(中華民族の偉大な復興の夢)への移行が謳われている。GDP年平均成長率7.1%、高速鉄道総延長2.5万キロなど目覚ましい発展を遂げている。北京市の地下鉄の年間利用客はなんと述べ30億人に達しているとのこと。
従来の投資+輸出による成長から消費が投資を上回る消費主導の成長に転換。その陰では消費者金融の利用も大きく伸びて、違法金利などの問題も出ている。
携帯電話普及台数は14億台、内スマホは9.7億台。スマホを使用したネット予約タクシー、自転車シェアリングなど新しいサービスが次々に登場。スマホ支払サービスが急増した背景には100元札で5%とも言われる偽札率もある。
一方、過当競争により企業の生き残りも厳しく、各種規制も追いつかない現状がある。
自動車分野ではEV市場世界No.1を目指す戦略で2020年までに新エネルギー車生産比率10%以上を目標としている。
「不動産は住むものであって投機の対象ではない」と明言し、不動産市場は本格的な調整局面に入った。
環境問題取り組みが本格化し、環境対応コストが上昇するが、逆に言えば、環境対応が企業価値を高める時代になっている。
綱紀粛正は継続し、2017年規律検査委員会調査件数127万件、うち52.7万件を立件、44万人を処分。省部級処分58名、庁局級3,300人。結果、高官専用の泰城監獄がスペース不足に。
新たに1)資産効果縮減 2)新農民工問題 3)「ミンスキーの時」(金融崩壊の危険) 4)「トゥキディデェスの罠」(パワー・ゲームの中で、軍事的な争いに発展しがちな現象)等4つのリスクが挙げられる。
日本にとっては2007年に対中貿易は対米を超えており、最も重要な隣国となっている。積極的な環境対応、旺盛な消費市場への商品供給、シェアリングビジネス等の新しいビジネスモデルへの積極的な取り組みを図るべき時にある。
(文責:深井吉男)

講演資料:中国「新時代」
posted by EVF セミナー at 17:00| セミナー紹介