2017年02月16日

EVFセミナー報告:日本海の謎

[演題]:日本海の謎  〜その深層で起こっていること〜

日時:平成29年2月16日(木)
場所:国際協力機構 市ヶ谷ビル(JICA市ヶ谷ビル)2階会議室
講師:東京大学大気海洋研究所 教授 理学博士 蒲生 俊敬 様

講演要旨
EVF第10回通常総会記念講演として、地球温暖化の影響が、すでに深海に及んでいるのか、私どもに馴染みの薄い基礎研究の成果からひも解いていただいた。
日本海の自然環境は、地形的な閉鎖性がとりわけ強く、また、冬季の季節風の存在があり、対馬暖流の流入という地理的特徴もある。この閉鎖性ゆえに、日本海は、独自の海水循環系を有している。
海水の循環スケールでは、全海洋で2000年かかるところが、約100年〜200年と速い。
表層の生物生産量が多く、下層への有機物輸送が活発であり、地球環境変化に敏感に反応している。先生自ら海水採取、分析し、1977年以来蓄積された時系列データは、日本海底層水の驚くべき実態を明らかにした。
日本海での研究成果は世界に先駆けて警告を発することができるとの示唆に富む高話をお聞きした。

講演概要
1)日本海に関する基礎的事項(日本海の形成・地理的特徴・歴史的役割)
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日本海は約2000万年前から1500万年前にかけて拡大し、日本列島となる部分が、大陸から離れ、約500万年前は、ほぼ現在の姿に近い日本列島は形成された。
日本海は、いくつかの海峡で外海とつながってはいるが、海峡部分はごく浅い。最深部分で約3800mもある日本海の水のほとんどは、外洋との出入りができない。
冬季の季節風が、表面の海水を極限まで冷やして「重い水」をつくり、それが海底まで沈んでいくことで、熱塩循環が駆動され、表層水と深層水が入れ替わる、大規模に循環する仕組みがある。其れゆえ日本海の底層水に豊富な酸素がある。
また、日本海は、日本列島に温暖かつ湿潤な気候と豊かな水資源が育む美しい自然環境をもたらしている。そのことが、縄文時代以来、日本が独自の文化を発展させる上で大きく寄与した。

2)日本海の海洋観測研究から明らかになった、そのユニークな科学的特徴
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日本海を取り囲む四つの海峡はどれも浅い。そのため、海洋としての閉鎖性が高く、
独立した海水循環のメカニズムを持つ。その狭さと閉鎖性ゆえに一般の海洋よりも敏感に
地球環境の変化に反応する。
近年、日本海にわずかな変化が見え始めた。今はわずかでも、将来危険な変化になりかねない徴候だという。
自ら海水採取し分析し、1977年以来蓄積された時系列データは、日本海底層水の驚くべき実態を明らかにした。
特に注目されるのは、溶存酸素濃度が年とともに減少を続け、過去30年間で約10%も減少したことである。
海洋表層では、酸素は植物プランクトンの光合成によって生産される。しかし光合成の起こらない深層では、酸素は海水の循環によって補強される。一方、海水中には有機物の酸化分解のため、酸素は常に消費されていく。もしこの消費に見合うだけの酸素が補充されないと、収支のバランスが崩れ、酸素濃度は次第に減少する。現在の日本海底層は、まさにこの状況にあるらしい。
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3)急激に変わりつつある地球環境の中で、日本海が今後果たすべき役割について
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日本海は全海洋の0.1%強の容積しかないが、全海洋と類似の熱塩循環系を独自に保有することから、全海洋のミニチュア版として注目されている。
ミニ海洋日本海で起こる現象は、世界の海でも同じように起こる可能性がある。地球全体でこれから起こることを先取りする「炭鉱のカナリア」としての役割が日本海には期待されている。と蒲生氏は結んだ
蒲生氏が持ち前の鋭い切り口と和やかな雰囲気で素晴らしいご講話を進められたおかげで、最先端のアカデミックな話もよく理解できた。
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この海の知られざる姿を解き明かす、
海洋科学ミステリーの本書をぜひご購読を。
以上 文責:立花 賢一

講演資料:「日本海の謎」
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