2017年10月26日

EVFセミナー報告:ここまで来た農業改革

[演題]:ここまで来た農業改革
 〜これからのわが国農業の姿と国際競争力〜

日時:平成29年10月26日(木)
場所:国際協力機構市ヶ谷ビル(JICA市ヶ谷ビル)会議室
講師:西南学院大学経済学部教授・東京大学名誉教授 本間正義 先生 
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講演要旨:
『日本の農業問題はだれもが関心あるが、だれもが内容を知らない。
グローバル化と少子高齢化が進む中で、何が起きているのだろうか。日本の農業はかつての食管制度や今日の農協制度に守られて、国際化を拒否し構造改革を遅らせてきた。
しかし、国際化(仲良くする)からグローバル化(ルールを決め、一緒に仕事する事)へと社会構造は変化している。安部政権下は農業改革に取り組んでおり、農業に革新をもたらすのではないかと考えられる。これからの日本農業はどのような方向に進むのか、現場はどうこたえようとしているのか。』等についてご講演頂いた。
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講演概要:
1.グローバル化・少子高齢時代と日本農業の課題
1)農業生産の停滞と農業経営の零細性
農業生産額が1990年代以後減少しており、これは農業構造の脆弱化による。
1000万円未満:1,119,685経営体(増加率 −30.4%)
1000〜5000万円未満:108,547経営体(増加率 −20.8%)
5000〜3億円:15,173経営体(増加率 11.6%)
3億円以上:1,827経営体(増加率 54.6%)
 2)農業労働力の高齢化と労働力不足
  @農業労働者の高齢化が進み、新規参入者が少ない。特に稲作では65歳以上が77%
を占める。一方、酪農や施設野菜では若い労働者が多い。
A米作は65歳でもやれるのである。ウイークエンド農業。3チャン農業。
3)農地集約化が進まず、経営面積は大でも分散圃場になっている。
    都道県(2015年)           北海道(2015年)
5㏊未満:1,262,058経営体(増加率 −33.6%)  :10,195経営体(増加率 −37.5%)
5〜20㏊未満:64.428経営体(増加率 24.8%)  :13,197経営体(増加率 −35.8%) 
20〜50㏊未満:8,107経営体(増加率 159.9%)  :11,570経営体(増加率 −8.2%)
50〜100㏊未満:1,537経営体(増加率 234.9%) :4,584経営体(増加率 3.3%)
50〜100㏊未満:422経営体(増加率 165.4%)  :11,168経営体(増加率 65.7%)
 4)アベノミックスにおける農業改革の行方
 @生産現場の強化
 A国内バリューチェーンの6次産業化
 B輸出促進

2.近年の農業政策の展開
1)農地中間管理機構による農地の流動化:
(問題点)借り手は使いにくい。お隣の農家に、農地を貸したりしない。
2)農業委員会の組織改編
3)農地所有適格法人の要件緩和:現在、出資は農業関係者が50%超になっている。
4)農協改革(全中、監査、準組合韻、全農)
5)米の生産調整の転換:減反政策の廃止では無く、生産調整は続ける。
⇒主食米の価格を上げる。=主食のコメを減らす。米価は高いままに維持する。
200円/kg⇒飼料用米20円/kg=9割が補助金
6)指定生乳生産者団体制度の改革:差別化が当たり前なのに、生乳は一緒に混ぜてしまうので、差別化できない。=高品質の牛乳を生産するモチベーションが無くなる。
7)収入保険制度の導入(予定)
  収入保険についても検討を進めるべき。制度設計の検討の際には、社会政策的な保険ではなく、産業政策的な保険として、財政負担に頼らない自己責任を原則とする。
8)国家戦略特区での取組み
 @特例措置で株式会社による農地取得(養父市)
 A外国人農業労働者の受入れ(予定)。研修生ではなく専門労働者として受入れる。

3.農産物の国境保護措置の推移 
1)戦後「貿易、為替自由化計画大綱」で農産物の自由化を進めたが、重要品目には手をつけなかった
2)本格的な農産物自由化はガット・ウルグライ・ラウンド合意による非関税障壁の関税化と関税削減からである。しかし、関税化品目には高関税が容認されていたため、輸入禁止的高関税による保護が続いている。
3)WTO農業交渉(2000年〜)では実質的保護削減の方向付けがなされたが全体交渉が停滞
4)関税等の保護削減の舞台はFTAだが、TPPは発効の見込みがなく、
日欧EPAは次のステージが未定

4.今後の日本農業への期待
 1)稲作の規模拡大と乾田直播等による生産費削減=労働時間の節約になる。農業機械への投資増大と効率的利用につながる。
 2)農業は楽しい。=農作業する人から金を取る。農業のテーマパーク化
   農地を経営資源にする。
 3)情報機器・システムで高度に管理された野菜栽培
   IT、ICT企業との連携と農作業のマニュアル化
 4)農業の6次産業化の広範な取り組み
   他産業とのコラボレーション、バリューチェーン
 5)農業のサービス産業化と都市・農村の交流
   教育への活用、作るプロセスの商品化
 6)農業をフードシステムで考えられる。
   農協は生産物の差別化を行わず、一緒くたである。   
 7)流通業との連携でマーケットインによる輸出戦略
   国際的フードネットワークの確立。
農業は8兆円産業だが、製造業・サービス産業を含めると80兆円である。
農水産物・食品の輸出は1兆円。NO1は真珠。

5.具体的なビジネス
 1)経営コンサルの展開。本来は農協の職員がやるべきことだが、実際は経理士、税理士、獣医師が担っている。
 2)乾田直播の技術導入
 3)食と農のクラスラー形成。
@シリコンバレーのようなフードバレーを作る。
A次世代施設園芸の拠点
  BICTの活用
   
講演資料:
「ここまで来た農業改革」〜これからのわが国農業の姿と国際競争力

参考資料:日経調 本間正義先生 プレゼン資料
http://www.nikkeicho.or.jp/wp/wp-content/uploads/honma_siryou.pdf
http://www.nikkeicho.or.jp/wp/wp-content/uploads/honma_kouenroku.pdf
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6.質疑応答
 Q)日本に農業は必要か。米生産を止めたらどうなるのか。
 A) @安全保障から言えることは、コメが入らなくなるとオイルもはいらなくなる。
   有事の際のビジョンや計画が必要である。スイスの様に、家庭内備蓄で2週間対処できるか。古米や古古米を優先的に食べるコンセンサスができるか。
   A日本の農業が消えることは無い。5兆円は残る。
   B景観が変わる。(日本文化が変質する。)       以上  文責:大山敏雄


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