2018年01月25日

EVFセミナー報告:ワイヤレス給電の現状と将来の展望

演題:ワイヤレス給電の現状と将来の展望

講師:早稲田大学 電動車両研究所 招聘研究員 高橋 俊輔 様
日時:2018年1月25日(木) 15時30分 〜 17時30分
場所:新現役ネット事務局会議室
参加:44名

[講師略歴]
1972年 早稲田大学大学院 理工学研究科 卒業
1972年 三菱造船株式会社 入社
2003年 昭和飛行機工業株式会社 入社、EV関係の開発に従事
2003年 早稲田大学 環境総合研究センター参与、電動バスの開発に従事
2012年 早稲田大学 参与兼客員上級研究員、非接触給電の開発に従事
2014年 京都大学 生存圏研究所研究員、ワイヤレス給電および大電力給電の研究に従事
2017年 早稲田大学 電動車両研究所 招聘研究員、車両電動化の研究に従事

[要約]
最近NHKなどで取り上げられる様になったワイヤレス給電について、昭和飛行機や早稲田大学などで、実際に電気自動車や給電システムの研究・開発・実証実験に携わって来られた第一人者に、以下の項目についてお話し頂いた。
1.ワイヤレス給電システムとは?
2.EV用ワイヤレス給電の動向
3.汎用機器向けワイヤレス給電の動向
4.ワイヤレス給電における課題
5.将来の展望
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[講演概要]
ワイヤレス給電について以下の順序で幅広く網羅的にお話し頂いた。

1. ワイヤレス給電システムとは?
電磁誘導や電波を利用して、離れた場所へワイヤレスで給電するシステムである。
●ワイヤレスで給電(電力伝送)方式は以下の様に分類される。
(1)非放射型
  1)磁界結合方式
   ・電磁誘導方式
   ・磁界共振方式
  2)電界結合方式
(2)放射型
  3)電波方式(マイクロ波など)
  4)光方式(レーザーやLEDなど)
(3)その他の方式
  5)エバネセント波方式
  6)超音波方式
  7)回転磁石方式
●各方式の特徴などを簡略に述べると以下の様になる。
IMG_0266-2.JPG1)磁界結合方式
・電磁誘導方式:
 19世紀にファラデーの発見した電磁誘導(トランス)の原理を利用した方式。
 非接触化ギャップによる漏れ磁束発生で結合係数k<1となり電力伝送効率が下がる。
・磁界共振方式:
 2007年6月のMITの発表以降多くの会社が発表し注目を浴びている方式。
 送信側と受信側のコイルを高い性能係数QにしてLC共振させる磁気共鳴技術を活用。
2)電界結合方式
 送信側と受信側に電極を設置して電極が近接した時に発生する電界を利用する方式。
 基本的に小さなギャップしか許容されないので未だ出力が小さい。
3)電波方式(マイクロ波など)
 19世紀にマクスウェルが予言した遠方にまで伝搬する電磁波を利用した方式。
 効率が高くない上にマイクロ波の放射は法律で認められていない。
4)光方式(レーザーやLEDなど)
 THz帯の面発光タイプレーザーで送信したエネルギーを太陽電池で受取る方式。
 人体防護の観点からビームエネルギー密度の減少が必要なのが難点。
5)エバネセント波方式
 全反射を起こす壁に挟まれた領域内にマイクロ波を注入し一方の壁から滲み出るエバネセント波を利用する方式。
 基本的に小さなギャップしか許容されないので出力が小さい。
6)超音波方式
 20kHz以上の超音波を利用する方式。
 人体に対する影響はないが壁などの遮蔽物に弱いのが難点。
7)回転磁石方式
 送電部磁石の回転で受電部磁石を回転させ発電するカナダのUBCが開発した方式。
 高周波の電磁界が発生せず人体に対する影響はないが機械的作動がある。
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2. EV用ワイヤレス給電の動向
●国内
 2014年頃まで日産自動車やトヨタ自動車、三菱自動車、本田技研工業が出力3kw程度、周波数85kHzの磁界共振式のものを自社のEVやPHEVに搭載して展示・実証試験を行っていたが最近では発表が殆ど見られない。
●海外(欧州)
 パリモーターショー2016でダイムラーが3.6kWコイルを搭載し、VW社も受電コイルをEV向け新プラットフォームに搭載するコンセプトを発表。一次下請けのボッシュも2017年にBMW用に7 kWコイルを搭載、2018年にはダイムラー車に搭載し市販予定と活発。
●日本でのワイヤレス充電バス
 2004年以降、早稲田大学が電動化した7m長のバスで長野市や川崎市で長期の実証運行。
 国交省や東京都も2008年以降12m長の路線バスで羽田空港や東京駅などで実証運行。
 この結果50kW以下では充電時間が掛かり過ぎてダイヤを確保出来ず、実証試験止まり。
●欧州でのワイヤレス充電バス
 殆どの事例が大電力ワイヤレス給電システムを採用して実運用している。
 2014年から英国ミルトンキーンズ市は8台の電動バスに120kWを搭載して運用続行中。
 ロンドン市も2016年から11kmの路線で電動2階建てバスに100kWを給電して運用中。
 ボンバルディアは200kWシステムを連接バスに搭載しドイツやベルギー各市で実運用中。
●中国でのワイヤレス充電バス
 通信機器大手ZTEが120kWを搭載し各市で最長1充電で44 kmなどの長距離運用中。
●米国でのワイヤレス充電バス
 カリフォルニア州モントレー市で50kWシステムを搭載し2016年6月から実運用開始。

3. 汎用機器向けワイヤレス給電の動向
●家庭・オフィス機器への応用
 1980年代から電話子機などで電磁誘導式が使われていたが機器の小型・薄型化につれ充電コネクタ不要のワイヤレス給電化が進み自宅、店舗、車内充電の相互互換性が図られた。
●モバイル機器への応用
 2017年末のiPhoneX搭載でQi規格(ワイヤレス給電の国際標準規格)が優位に立った。
 現在では家具・店舗・自動車車内などでの給電にQiワイヤレス給電が導入されている。
●水中機器・ロボットへの応用
 水中でも漏電しないで充電出来るという特性から水中機器やスプラッシュ域、フィールド機器などへの応用が増え、警備や介護などのロボットへの応用も実施されている。
●工場内機器等への応用
 レール搬送システム、AGV(無人搬送車)、電動工具などで1990年代から使われている。
●回転機器への応用
 コイルを向かい合わせるだけで回転体に影響を与えずに、軽量、接触抵抗無しで給電。
 防水型給電ソケット、劇場の回り舞台、CTスキャナーなどへの応用が可能である。
●医療機器への応用
 電磁波にセンシティブな医療分野でペースメーカーや人工内耳などに実用化されている。
 人工眼やコンタクトレンズ使用の検査機器、カプセル内視鏡などで臨床試験実施中。

4. ワイヤレス給電における課題
●電磁波の課題
 電力供給ワイヤの制約から解放される反面、他システムへの影響や人体防護の面が課題。
 人体防護に関しては総務省電波防護指針やICNIRPの人体防護ガイドラインがある。
●異物の侵入への課題
 通電中にコイル間に鉄やアルミなどの金属製品が入ると誘導加熱により高温になる。
 これを防ぐために異物の検知や生体検知のシステムなどがいろいろ考えられている。
●標準化などの課題
 EV用ワイヤレス給電システムの相互互換性を確保するための国際標準・規格化進行中。
 標準化を2019年までに実施しないと合意済み内容もリセットされるので鋭意取組み中。

5.将来の展望
●技術開発の方向性
 特許出願から見たワイヤレス給電の技術動向を踏まえ特許庁が下記3提言を行った。
 ・EV用ワイヤレス給電技術およびそのFODやロバスト性向上技術
 ・コイル、コアなどの構成部品とモジュール化、実装技術
 ・エナジーハーベスティング、回転体、医療機器、検査・診断機器
●EVへの走行中給電
 EV分野でいろいろ調査検討した結果、提言以外で走行中ワイヤレス給電があげられる。
 海外では標準化コイルによる静止中も走行中も給電出来るシステムの実証を実施中。
 日本では自動車会社は静観し大学のみ独自の方法やコイルで取組みガラパゴス化の恐れ。
●新たなコイル・デバイス等の構成部品
 電線のブレークスルーが必要でカーボンナノチューブとプリント基板コイルが有望分野。
 デバイス材料としては高周波化と高出力化に対応するためGaNなども非常に重要な技術。
●新たな応用分野
 ワイヤレスキッチンと言ったホームユースの大電力化、ドローンなどの空中移動体への給電、極小インプラントや人工心臓への給電、検査・診断機器への給電などが挙げられる。
●市場規模
 2030年の充電設備必要とするEV、PHEV用のワイヤレス給電の市場規模は3,600億円。
 モバイル用ワイヤレス給電モジュールだけでも2030年には1.75兆円になる予測がある。

6.その他
 質疑応答の中で、EVや電動バスへの給電方式としてCHAdeMOの120kWタイプの試作や欧州でのEVバスへのパンタグラフ式接触給電の検討の例を挙げ、実用的方式の最終的な決着までにはまだまだいろいろな検討が行われるだろうとのお話があった。

以上 文責:岩崎力
講演資料:
ワイヤレス給電ワイヤレス給電の現状と将来の展望
posted by EVF セミナー at 15:00 | TrackBack(0) | セミナー紹介

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