2018年02月15日

EVFセミナー報告:AIとの付き合い方

演題:AIとの付き合い方

講師:DeepZenGoプロジェクト代表 加藤英樹 様
日時:2018年2月15日(木) 15時30分 〜 17時30分
場所:JAICA市ヶ谷ビル201A/B会議室
参加:63名

[講師略歴]
1953年 東京都出身
1977年 東京工業大学工学部電子物理工学科卒業
1980年 東京工業大学工学部情報工学専攻修了
1980年 東京工業大学工学部助手
1982年 (株)富士通研究所にてエキスパートシステム、ニューラルネットなどの研究開発に従事
2005年 東京大学大学院創造情報学専攻博士課程にてモンテカルロ碁を研究
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[要約]
囲碁AIの第一人者である加藤英樹氏から、自ら開発されたプログラム「Zen」の紹介と「囲碁AIの進歩」の状況から入って、「AIを巡る混乱」として問題点や課題を指摘して頂き、「ディープラーニング」と呼ばれるAIを大きく発展させた機械学習方法の説明の後、「何に使えるか」と題してAIの効用の分析を行って、AI全般の「今後の展望」までを講演して頂いた。
幅広く豊富なAIに関する知見や経験に基づき、1時間半の長丁場を一気に講演して下さり、聴講者を飽きさせることなく、AIに関する混乱や問題点を分析して不安を解き、AIの今後への展望について知識を向上させて頂いた講演でした。

[講演概要]
加藤氏は、東工大で電子物理工学と情報工学を専攻した後、富士通研究所でエキスパートシステムやニューラルネットなどを研究・開発したことが背景にあって、囲碁AIに取り組まれるようになられた。
何故囲碁AIであったかと言うと、2つ理由があって、一つは、AI研究には人工認識やパターン認識などがあって多くは一人でできないものであるが、囲碁AIは一人できること。もう一つは、客観的に出来/不出来が分かるということで、その世界に進むようになった。一方、囲碁AIは研究当初コンピューターゲームのような扱いを受けており、日本では学問領域としての認知が進んでおらず、博士号が取れないなどと言った課題があり、苦労の多い領域であった。
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加藤氏は2008年に独立プログラマの尾島陽児氏と知り合ってから二人で組んで囲碁AIの開発を大きく進ませ、その成果であるZenは2009年にスペインで行われたコンピューターゲームオリンピックで初参加初優勝した。また、2012年に武宮正樹九段に4子で勝ったことも大きな話題になった。 その後も囲碁AIは浮き沈みがあったが、Zenは世界一を維持していた。2015年頃から囲碁AIにディープラーニングを取り入れる動きが始まり、そこで開発されたDeepZenGo(同名プロジェクト中のZenの公式名称)が、2017年8月に内モンゴルで行われた第1回世界電脳碁オープン戦で優勝して囲碁AIのチャンピオンとして認められた。
AIの専門家でない人が混乱していることは、AIには「人類を滅ぼす・人類の敵」という側面と「人類を手助けする道具・技術」という側面がある点で、この混乱には、2つのAIがゴッチャになっていると思われる。それらは、一般にAIとして実用化されている「専用AI」と、SFや映画に登場する人間のような「汎用AI」で、後者の研究は最近始まったばかりである。
現在のAIは、ディープラーニング(深層学習)と呼ばれる人間の神経系を模した情報処理技術で大きく発展してきている。結果として人間の真似が上手いのが特徴であるが、膨大な実例(訓練データ)が必要である点が難点と言える。現在のAI(ディープラーニング)は人間の視覚や小脳と同じ役割で、それ以上はできず、人間並みのAIはまだ当分先の話である。
AIを何に使えるかを考えると、普通の人間が0.5秒でできる情報処理をすることと同等であり、画像認識、顔認識から食べ頃の果実を選ぶとか、車の自動運転などまでが考えられる。予測やプランニングも得意であり、限られたゲームのような世界で活用されている。しかしながら、実世界で問題なく使えるようになっているかというとまだ無理と考えられる。その理由は、情報の質が悪く、扱う量が膨大であることに対して十分な状態ではないと言うことが挙げられる。
今後のAIの長期的な展望としては、「AIと人間の共存」が第一に挙げられるが、人間並みのAIが出現はまだまだ(なので、安心して良いとも考えられるし、なかなか楽はできないとも考えられる)。
留意すべき点は、「AIは人間が設計するものであり、悪用するのも人間」ということである。将来的なAIとの付き合い方の選択肢は2つあって、「労働を全てAIに任せる」のと、「人間も一緒に働く」のがある。
AIが人間の労働を分担していくことになると思われるが、それによって得られた富をどのように分配するかという問題がその裏に存在し、その点を解決していくことも必要となる。
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お薦め図書
1.「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」 新井紀子 (東洋経済新報社)
2.「棋士とAI ‐ アルファ碁から始まった未来」 王銘? (岩波新書)
3.「よくわかる囲碁AI大全」大橋拓文(日本棋院)
4.月刊碁ワールド2017年11月号「加藤英樹氏が語る囲碁AI」(日本棋院)
5.数学セミナー2017年11月号「コンピュータ将棋・囲碁のこれから」(日本評論社)
6.日経サイエンス2018年2月号「AIの新潮流」(日経サイエンス社)
7.別冊日経サイエンス「AI人工知能の軌跡と未来」(日経サイエンス社)

以上 文責:浜田 英外

講演資料:
AIとの付き合い方
posted by EVF セミナー at 16:00| セミナー紹介