2018年05月24日

2018年5月24日EVFセミナー報告:アフリカでの製油所建設

EVFセミナー報告:アフリカでの製油所建設〜襲い来る数々の困難に立ち向かうプロジェクト組織〜

演題:アフリカでの製油所建設〜襲い来る数々の困難に立ち向かうプロジェクト組織〜
講師:吉見昭司氏、元日揮株式会社理事、元東京大学工学部大学院プロジェクトマネジメント講座講師 
日時:2018年5月24日15:30〜17:30
場所:NPO法人新現役ネット会議室
講師略歴:
1941年;岩手県盛岡市生まれ
1966年;東北大学工学部化学工学科卒業、日揮(株)入社、基本設計部門勤務
1975年;国内プロジェクト部門にて合成ガス製造装置のプロジェクトエンジニア
1977年;ブラジル営業事務所責任者(ブラジル、アルゼンチンの営業活動)
1980年;帰国後、国内プロジェクト部門に復帰、更に海外プロジェクト部門に移籍。大型プロジェクトに携わる。
1995年;基本設計とエンジニアリングマネジメントを業務とする新設本部に異動、副本部長
1997年;基本設計と詳細設計部門が合併した新設本部の副本部長、理事
2001年;EPC委員会(業務改善・改革、競争力強化委員会)副委員長
2010年;東京大学工学部大学院のプロジェクトマネジメント講座講師(〜2011)
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講演概要:
アフリカでの製油所建設プロジェクトを、厳しい経済情勢と自然・労働環境の中で如何にして成功に導いたか、そのご苦労の実態をご講演いただいた。お話は(1)プロジェクトマネージメントとはどのようなものかについての解説と、(2)プロジェクトの実例の紹介 の2部構成であった。後者においては、大型プロジェクトの中身と完成までの間に発生した生々しいトラブルとその解決への取り組みにつき臨場感溢れるお話を伺うことが出来た。

(1)プロジェクトマネジメントとは;

1)プロジェクト組織に求められるもの
世界的に大型プロジェクトの受注は、極めて厳しい競争環境(リスクの顕在化で赤字転落の危険性を孕んでいる)の中での受注が普通であり、従ってプロジェクト完遂のためには各種の問題が発生しても、絶対条件である品質と納期の確保、及びコストダウン・追加獲得のためのノウハウを持ったプロジェクト組織およびエンジニアーの存在が大前提となる。そのためにプロジェクト組織に求められるものは、1)複雑に絡む諸々の因子を俯瞰的に捉えることが出来る洞察力 2)緻密な計画力 3)諸々の事情で計画からの乖離が発生したときの解決への調整能力 4)組織の強化力 等々である。

2)プロジェクト運営手法
プロジェクトは、あるプラントでものを作ろうとするプラントオーナーがプロジェクトを計画することから始まり、それを実現するプラント建設をコントラクター(プラント建設会社)に発注する。受注したコントラクターは、納期、コスト、品質の確保をしながら契約に基づき基本設計、詳細設計、機器調達、建設、試運転、引渡までの一貫した複雑な作業を行う。ここで採用されるのがプロジェクトマネジメント手法であり、その中でも重要なのが、WBS(Work Breakdown Structure)と呼ばれるものである。これは、プロジェクト全体を細かな作業要素に分解(Work Breakdown)し、全作業を階層構造(Structure)として組み立てる手法であり、これによりプロジェクトの全ての作業が事前に明確にされ、全体が統合的に管理できる。最も重要な事は問題を発見しそれを解決しようとする姿勢である。
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(2)プロジェクトの実例紹介;

1)プロジェクトの中身
アフリカにおける日量150,000バーレルの原油を処理するガソリン最大収率型製油所建設プロジェクトの受注から完成に至るまでの間に、講演者が遭遇した諸々の出来事について、問題点とそれぞれの解決策が映像と共に詳細な説明がなされた。言及された出来事は、それらが解決しないとプラントの納期、品質、コストに多大の影響を与える事象であり、キーワードを挙げればファイナンスの組み方、パートナーとのコミュニケーション、設計から建設に至るまでのプロジェクトライフサイクルに係わるプロフェッショナルエンジニアの確保とコミュニケーション、現場作業員の確保、現場労働環境、等々である。
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2)プロジェクトライフサイクルの中で解決してきた諸々の課題
・プロジェクトの受注活動―客先の現地事情や会社状況の調査。客先作成の膨大な量のプロジェクト指示書を読みこなした上での見積作業。
・ファイナンス準備――信用度の低い開発途上国へのファイナンスの難しさ
・基本設計、詳細設計――客先側のコンサルタントの自己PR・保身のための過剰な質問、コメントによる混乱、時間の無駄使い
・客先の姿勢――客先や、パートナーのプロジェクト理解の差、あるいはコミュニケーションの欠落等からの混乱、
・調達――急激な円高から海外発注へ切り替えたことによる海外ベンダーの発掘と品質管理、工程管理に苦労
・建設――建設マンパワーの質の問題(日本人125名に対し、7000名を超える現地およびアジア人労働者の技能教育、管理)、現場における盗難、ストライキ、暴動等々。労務管理上の問題は、人的関係、技能等に関するトラブル早期発見と早い対応(辞めさせることも含め)が肝要。
・作業環境保全――安全上の問題、現地風土病への対応(罹ってもすぐ適切に対処すれば命を救える)

3)プロジェクトマネージャーに求められること
・プロジェクト業務が好きであること。
・ストレスに強いこと
・洞察力と想像力、リーダーシップ。
・困難から逃げない意志。改善・改革の意識。
・自分および人を(経験によって)育てる。

(3)質疑応答:

講演後、活発な質疑応答があったが、その内の数例を以下に記す。
・Q:開発途上国と契約をするときの難しさは何か?(A:リスクヘッジは当然考えるが、契約時に読み切れない事象は必ず生じる。その解決はプロジェクトチームの総合力による。)
・Q:なにかとプロジェクト遂行の困難さが予想できる国と仕事をしようとした理由は?(A:相手国が資源保有国であり、将来性が期待できたから。)
・Q:ヨーロッパ人や日本人技術者の作業環境維持はどうしたか?(A:居住環境、特に食べ物への配慮。ヨーロッパ人、中国人の冒険心とタフさには学ぶべきところあり。)
(以上 文責:橋本 升)
posted by EVF セミナー at 17:00 | TrackBack(0) | セミナー紹介

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