2018年08月23日

EVFセミナー報告:「インドはカーストよりコスト」〜あなたの既成概念は、インドビジネスの敵〜

演 題 :「インドはカーストよりコスト」〜あなたの既成概念は、インドビジネスの敵〜
講 師 : 島田 卓様  株式会社インド・ビジネス・センター 代表取締役社長
日 時 : 2018年8月23日(木) 15:30〜17:30 
場 所 : NPO法人新現役ネット会議室

講師略歴 : 島田 卓(しまだ たかし)氏 
・1948年生まれ。明治大学商学部卒業。
・1972年東京銀行入行。本店営業部、ロサンジェルス支店、事務管理部、大阪支店等を経て、1991年インド・ニューデリー支店次長
・1995年アジア・オセアニア部次長。1997年同行退職。同年4月に潟Cンド・ビジネス・センターを設立、代表取締役社長に就任。
・東京商工会議所 中小企業国際展開アドバイザー。
・NHK「クローズアップ現代」「Bizスポワイド」等のテレビ出演、各方面での講演、執筆多数。
・主な著書:「インドとビジネスをするための鉄則55」(アルク)、「不思議の国インドがわかる本」(廣済堂出版)、「スズキのインド戦略」(監訳、中経出版)、
「トヨタとインドとモノづくり」(編著、日刊工業新聞社)、「インド2020」(監修、日本経済新聞出版社)、「日本を救うインド人」(講談社)など多数。
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講演概要:
「インドをモノにしようとするなら、インドに関するカーストを含めた既成概念を一旦捨て、一対一のビジネスマンとして、差し違えるくらいの気概で取り組む必要がある」とのことだが、その訳をインドの向かう方向を追い求めてきたインド駐在時代の経験も含めてお話していただいた。
1.あなたの視点でインドは変わる
●インドを理解するためには
ポール・セザンヌの多角的な視点の採用 即ち一点透視画法から多視点透視画法の見方が必要であるということ。ポール・セザンヌの発明とは「私たちは絵を描く際に、見たように筆を走らせる。これを単一視点と言うが、それは対象物の一側面を描いただけにすぎない」ということである。
セザンヌはそれでは対象を正確に描写することではできないと主張した。そこで彼は多角的に対象物を観察し、画面に同時に描写する「多角的視点」を導入した。インドも全体を理解するためには、多面的に、多視点からバランスの取れた判断をしていく必要がある。
●印ビジネスを飛躍的に拡大するには
スティーブ・ジョブスは、一見すると関係のないように見えるさまざまな分野の疑問や課題、アイデアやひらめきを上手につなぎ合わせる力が創造力だと語っている。
インドでは神様が無数いるがこれらを包含して多様性国の統一を目指している。最初は何でもありで多様な社会における知識を積み重ね、それに基づく判断をしていく。単一民族といわれる日本が、人種の坩堝であるインドに、日本流経営の良さとメリットを伝え、うまく結びつけ、ハーモニーを醸し出す努力をすべきではないか。
2.なぜヒンドゥー至上主義政党から首相が生まれたか
●モディを理解すれば今のインドが分かる。
独立以来インド社会が頼みにしてきたネル-・ガンディ-家支配の腐敗にまみれた体制の呪縛からインドを解き放ち、インド国家自体の政治・経済体制を作り変えたのは、2014年の総選挙で勝利したナレンドラ・モディである。モディは苦学して大学を卒業しているが、二等列車の紅茶売りからたたき上げ、17歳で家を出て現政権BJP(インド人民党)の母体である民族奉仕団に加わった。彼ほど多極的な側面を持つ人間はいない。ヒンドゥー至上主義者でありながら、ことビジネスに関しては無宗教派に徹する。現在、硬軟併せ持ち、政治とビジネスを融合させる、らつ腕を絵にかいたような立ち回りのできる人物であり、モットーは【Perform or Perish(結果の出せぬものは去れ) 】である。
3.インド経済の現状と今後
●直近のインド実質GDPの推移
2014年の105兆ルピーから2017年は130兆ルピー(2.6兆ドル)と急成長している。
●10年後の中米印の主要国GDP推移
2010年のGDPは10位以下の圏外であったが、2020年には4.5兆ドルの5位で、2030年にはドイツ、日本を抜いて15兆ドルとなる予測がある。
●ビジネスの世界が変わる
将来、ナレッジ国家インドが世界ビジネスの中心になる。
●人口の増減が物語ること
少子化する日本は2025年の20〜24歳の人口が600万人で、一人っ子政策のリスクのある中国は8000万人、バランスの取れた人口構成のインドは一億人になる。
●GDP構成・労働人口比を変える
GDPの2割に満たない農業部門に労働人口の約5割が従事しているが、今インドに必要なことは、農業生産の効率化を進めるための総合的社会のインフラの整備を行い、それで余った労働力を生産性のより高い製造業へシフトして、国としての総合力をつけていくことではないか。

4.インドビジネスの要諦
●『プシュカールの老人』を描いたときの西田俊英画伯の言葉から
相手の心底にまで入り込み、相手を理解しようとする気概でビジネスをやれば、案外心が通じ合い、それまで気になっていたことが些細なことにすぎず、ことの本質ではないということに気付くのではないか。これからの日印の各種交流拡大を考えたとき、西田画伯の言う「心で受け止める気概」を忘れてはならない。
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●暗黙知・実践知・形式知
日印製造業の顧客創造の施策には、製造業における日印人材の暗黙知の形式知化が必要である。日印双方の暗黙知を統合、形式知化し、相互協力体制を築き、国籍に関係なく現場が現状を創造、維持、破壊、再生の繰り返しで、最適解を求めて動くようにする。そうすれば日印両国の労働者は、世界最強の製造業を創り出せる。
●金まみれのヒラリーと型破りのトランプを全く同列の醜悪大統領選だと。
米国のある有権者曰く「今回の選挙はガンか心臓発作のいずれかを選べと言っているに等しい」。
●鈴木修会長に要請され、インド重工業省から同社をマルチウドヨク(現マルチ・スズキ・インディアの前身)に転身し同社をインド最大の自動車メーカーに育て上げたバルガバ氏は完璧に時間を守った。インド人は時間をまもらない、というのは一面的観察に過ぎない。
●バルガバ氏から聞いた話だが、以前日本からの使節団に講演を頼まれた「カーストの話」をあえて「コストの話」に変えて話した。なぜなら、いかなる国でものづくりしようが、
一番大切なのは「いかにしてコストを削減するか」だから、とのことだった。 
セミナーに参加して
●中国のように中央政府の決定が絶対的な意味を持つ国とは異なり、村落レベルから合意形成を重視する傾向が根付いている親日国インドは、行政による意思決定に時間がかかるが、改革が進めば、これまでにないスピードで発展していく期待感が今回のセミナーを通じて強くなってきた。
(文責:立花賢一)

講演資料:インドはカーストよりコスト-18.8.23
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