2019年01月24日

EVFセミナー報告:COP24で見えてきた世界の大きな潮流

演 題 :「COP24で見えてきた世界の大きな潮流」
実施日:2019年1月24日(木)
講師:山岸 尚之氏 [WWFジャパン(公益財団法人 世界自然保護基金ジャパン)自然保護室 気候変動・エネルギーグループ リーダー]
開催場所:NPO法人新現役ネット会議室 
〒108-0014港区芝5-31-10サンシャインビル   
1.講師略歴:
1997年に立命館大学国際関係学部入学。同年にCOP3の開催をきっかけとして気候変動問題をめぐる国際政治に関心を持つようになる。2001年3月に同大を卒業。
同年9月よりアメリカ、マサチューセッツ州、ボストン大学大学院にて、国際関係論・環境政策の修士プログラムに入学。2003年5月に同修士号を取得。
卒業後、WWFジャパン(公益財団法人 世界自然保護基金ジャパン)の気候変動担当オフィサーとして、政策提言・キャンペーン活動に携わるほか、国連会議での情報収集・ロビー活動などを担当。
現在は自然保護室・自然保護室次長 兼 気候変動・エネルギーグループ長。
sem190124b1.jpg
2.講演まとめ:
COP24(2018年12月、ポーランド・カトヴィツェ、第24回国連気候変動枠組み条約締結国会議)は、地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」を運用する「実施指針」(通称「ルールブック」)を採択して閉幕しました。
今回焦点だった(1)「ルールブック」と呼ばれるパリ協定実施に際する細目ルールについて、(2)CO2削減目標をさらに高める必要性の合意について、会議(COP24)直後でもあり、具体的なやりとり、そしてその背景についてまでご説明頂きました。演題にもありますように、大きな世界の潮流の変化があり、そして現状の我が国の対応にまで言及して頂きました。質疑応答についても、時間も多めにあり、熱心な質問が続きました。
今回で山岸講師は4回目のEVFセミナーでもあり、我々EVF向けに的を絞った分かり易い、且つ高いレベルの講演でした。「24時間営業のコンビニ店舗の拡大」、「ネット通販の拡大に伴う再配達の増加」等、一部脱炭素社会への逆行とも思われる現状の日本の社会において、我々の今後のあるべき方向付けについても大いに認識が深まりました。
3.講演概要:
*パリ協定は、2015年に採択され、2020年の実施が予定されている。産業革命前に比して、気温上昇を2℃より低く、出来れば1.5℃を狙う。21世紀後半には、段階的な改善を経て、脱炭素化社会の実現を図る。

*パリ協定は、1980年代の後半からの国際的な議論の積み重ねの上にあり、先進国と途上国の対立を乗り越えての合意を優先した。今回は、初めてその実施の為の規則・ルールブックが、締結された。

*NDC(国別目標)は、5年ごとに管理のサイクル(P-D-C)で世界全体での進捗確認を行う、透明性のある枠組み作りを。NDCは、原則的にすべての国が参加する。2020年までに、「2030年までのNDC」を提出もしくは更新することを求める。5年ごとのグローバル・ストックテイクは、「緩和」「適応」「実施の手段」の3つのテーマを中心に行われる。

*2.0℃と1.5℃の差の影響は大きな問題であり、今のままでは3.0℃になってしまう現実がある。NDCに書くべき項目として、根本的な対立点は、「排出削減が中心」vs「資金・技術も」であったが、先進国と途上国が歩み寄る形でルールが概ね採択された。ルールが採択された原動力の一つは、各国の温暖化の被害(米国の例、日本の例・・・)に対する危機感だったのではないか。

*交渉において基本的な難しさは残っており、再燃する。国のタイプによるグループ分けをどうするかの議論も残っているが、ともかく今回はひとまず全ての国に共通する形で「ルールブック」を完成させることが出来た。

*ルールブック以外も含め、その他の決定事項は、COP25(チリ)に持ち越された。COP25の開催は、2019年11月から2020年1月に移すことが検討されている。
sem190124b2.jpg
*タラノア対話の意図は、今のままでは3℃になってしまい、世界全体の野心を2020年までに引き上げる事。44か国、429の非締約国ステークホルダーからのインプットがあり、又、国・地域で約90のイベントが開催。その背景には、世界各国での非国家ファクターの台頭がある。

*米国はトランプ大統領がパリ協定からの離脱を決め、自主目標を拒絶した。米国の企業と国民は「We are still in」のキャンペーンの盛り上がりが、そして日本では「気候変動イニシアティブ」の推進があり、その好例。

*「パリ協定」では、各国に長期戦略(2050年まで)も求めているが、G7では「日本」と「イタリア」だけが未提出。日本がリーダーシップを発揮しているとは言えない状況。しかし、「2020年までの野心の強化」を発表すれば、先進国としては初めてなだけに、日本の評価は一変するのでは。

*タラノア対話を通じた「野心の強化」のメッセージは、十分とは言い切れない。しかし、メッセージは埋め込まれている。2019年9月の国連事務総長主催の気候サミットへの「参加」、及び「強化された野心を示す」ことを呼びかける。

4.質疑応答:
講演終了(16:45)後、17:30まで活発な質疑応答があった。以下はQ&Aの事例。
Q:中国のCO2排出量削減の姿勢について。
A:パリ協定を支える姿勢は守っているが、交渉官の態度は極めてハード。しかしマスコミ対策は上手い。

Q:2.0℃/1.5℃にならなかったらどんなに事になるかを明らかにすべきでは。
A:今の科学ではそこまで明確に言いきれていないが、情報のある国では解決できる可能性はある。危機感を共有する事が必要であり、共有する時間が不足している。

Q:CO2排出量が削減され、上昇温度が減る事を検証する必要があるのでは。だれが責任を持つのか。
A:今回、グローバル・ストックテイクで5年ごとに進捗確認の仕組みが作られた。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が、今後起こりうる被害の科学的予測を報告している。政策決定者がそれをベースに判断する。

Q:COPにおける、非国家機関の位置付けは。
A:現状では「脇役」だが、しかし気候変動対策は、国家総力戦の方向であり、会場では「国家」と「非国家機関」の二つの盛り上がりがあった。但し、非国家機関の定義は難しい。
sem190124b3.jpg
Q:国連では、各国が何を対策としてやるかの議論を避けているのでは。
A:内政干渉になりかねないので、国連では「何を」の議論にはならない。

Q:地球温暖化について、日本政府/環境省、経産省の議論は。
A:「イノベーション」や最先端技術があったらできる、という意識が強すぎて、目の前でできることへの意識が低い。例えば、石炭や再エネなど。

Q:日本の政策と産業構造の可能性については。
A:最近は連携して進んでいる。日本の「気候変動イニシア「ティブ」の最近の拡大は特筆されるべき。革新的技術だけでは危機的であり、技術以外の社会の仕組み・ソフトの変化がなければ進まない。

Q:CO2排出量削減の日本の本質的な取り組みについて。
A:日本の社会、政府は、確証はないが、最初の10年に比べて、ここ5年の空気は変わっている。ビジネスチャンスと感じている人も増え、うねりとなっているのでは。自動車、プラスチック業界は、その好例。

以上
(文責:三嶋 明)

講演資料:COP24で見えてきた 世界の大きな潮流
posted by EVF セミナー at 17:00| セミナー紹介