2019年04月25日

EVFセミナー報告:「2030年自動車産業の競争軸を考える」〜MaaS、EV、自動運転〜

演 題 :「2030年自動車産業の競争軸を考える」
   〜MaaS、EV、自動運転〜

*MaaSとはMobility as a serviceの略で日本語では「サービスとしての移動」と訳されます。個々人の移動を最適化するために様々な移動手段を活用し、支払い手段の一元化を含めたパッケージサービスにより利用者の利便性を高めることを言います。

実施日:2019年4月25日(木)
講師:轟木光氏 アビームコンサルティング株式会社シニアマネージャー
開催場所:NPO法人新現役ネット会議室;〒108-0014港区芝5-31-10サンシャインビル
   
1.講師略歴:
1999年:九州工業大学大学院設計生産工学専攻 修了
同年:日産自動車入社 主としてR&Dにて開発及び商品投入戦略に従事、ドイツに駐在
2017年:アビームコンサルティング株式会社入社 日本の自動車産業を中心に戦略策定、調査などコンサルティング活動に従事 現在に至る
(著書)「EV・自動運転を超えて”日本流”で勝つ‐2030年新たな競争軸とは‐」
    日経BP社(2018/6/18発売)
semi19042502.jpg
2.講演まとめ:
世界は効率化の追求だけでなく、持続性や循環型経済を意識した構想へ変化し、デジタル化やスマートフォンの普及によって顧客の声が顕在化し、顧客は100%満足できるモノ・サービスを探すようになった。こうした社会の変化はモビリティにも到来している。
自動車産業は、100年に一度の変化期に直面している。その変化を促すのが、パワートレインの電動化(環境)、自動運転(安全)、シェアリングエコノミー及びコネクテッド(ネット接続)である。この4つの内何が2030年の競争軸となるのか?下記講演概要に記述した3つの視点からご講演をいただいた。
semi19042503.jpg
3.講演概要
(1)何故、EV拡大が必要なのか?+燃料電池EV(少しだけ)
・環境問題を背景に各国でCO2規制、ICE(ガソリン車)台数比率規制、ゼロエミッション車台数設定が実施される。
・EV拡大施策は、政府・地方自治体による補助金など優遇策がメインだが限界がある。
・規制対応にはEVは10〜15%の販売シェアが必要。そのためにはバッテリーへの莫大な投資が必要だが回収の見通しが立たない。また、課題も多い。
・リチウムイオンバッテリーについても熱を抑える技術開発、コバルトの調達の社会問題などが存在しコスト削減が困難。
・EVは課題が多く決して楽観できないが、マスコミがネガティブ情報を消している。
・その中でFCEV(燃料電池車)がブーム、排ガスやCO2を排出しないFCEVでないとゼロエミッションを達成できない。
・各国は環境規制への対応とエネルギーセキュリティの向上を見据えFCEVの普及政策を定めている。2024年からルマン24hでFCEVが採用予定。
・トラックはOEM、バスは行政主体で導入伸展、また、高出力、長航続距離が要求される商用車での採用が拡大の見込み。
・乗用車は、BEV(バッテリー式EV)は走行距離が短く充電時間も長いが現状は航続距離500Km以上の領域でFCEVと共存。
(2)完全自動運転後の世界は?
・自動運転技術とはドライバーをロボットに置き換えることである。さらにAI(人工知能)も必要。
・技術開発に関しては、人や他車の動き、天候などの再現性とドイツアウトバーンや日本の多信号などの極限環境の側面から今までのやり方での開発は非常に難しい。
・モノによる開発からバーチャル開発へ移行。試作車をやめてバーチャル認証になる。
・マスのモノづくりが終わり新しいモノづくりの始まりの予兆。
・IT人材不足で優秀な人材獲得が今後の競争軸のひとつになり、特徴としては高収入、日本では東京一極集中。
・自動運転レベル4(特定の場所ですべてを操作)レベル5(場所の限定なし)の拡大は、工場内の自動運転、高速道路での隊列トラックなどのステップを経て、法整備、ユーザーのアクセプタンス向上があり、そしてプライベート車の完全自動運転が達成できる。
・自動車産業が自動運転技術を活用したサービスへ参入拡大。将来キーポイントとなる。例えば工場内輸送・倉庫業、宅配業、シェアリング業など
(3)モビリティシェアリングは4つの変化(電動化・自動運転・シェアリングエコノミー・コネクテッド)の要+MaaS
・モビリティシェアリングサービスにはカーシェアリングサービスとライドシェアリングサービスの2つのタイプが存在する。
  -カーシェアリングは自動車OEM(ダイムラー/BMWなど)の参入後着実に成長。
  -ライドシェアリングはUber及びDiDiなどにより爆発的に普及。
・すでにダイムラーはモビリティサービスを乗用車・トラックに並ぶ事業とし、分社化、増資しながら提携先を拡大することを実施あるいは計画中。
・自動運転実現後の各事業コストはタクシードライバーがいなくなり、タクシー、カーシェアー、ライドシェアー、レンタカーのコストはほぼ同一となり競争が始まる。
・多くのユーザーは自家用車を持たなくなる可能性がある。その結果、マスブランド車が減少し、相対的にプレミアムブランド車の割合が増加する可能性がある。
・モビリティシェアリングサービスが変化の要で、それを通してEVの急速な拡大や、自動運転技術導入がされていき、コネクテッド技術も拡大する。
・この姿がMobility as Service (MaaS)である。
・MaaSは社会最適のための手段で、2014年にフィンランドで誕生。移動/輸送というサービスを統合し、情報・予約・決済を統合する「あらゆる人々の移動/輸送ニーズにこたえるサービス」また、これには周辺サービスが含まれる。
・MaaSは5つのレベルに分類され、現在はレベル2及び3が主戦場だが、社会の最適化というレベル4になると過当競争の発生から国や自治体のガバナンスが必要となる可能性がある。
  -MaaSプラットフォームはアプリケーションとAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェイス)連携で成り立つシンプルな構造で自社開発の必要性は低い。
  -米国ライドヘイリング2社(Uber、Lyft)の売上は順調だがずっと赤字。従って、周辺サービスにチャンスを見出す必要がある。(車両、燃料、駐車場、メンテ、保険、システムなど)
・未来の自動車産業は、航空産業のように車両の供給会社はグローバルで数社に集約され、部品供給はグローバルサプライヤー、エンドユーザーの窓口はMaaSプロバイダーと極めて少数の企業となる可能性がある。
semi19042504.jpg
4.質疑応答
(1)Q1:日本のFCVの状況は
-水素に関しインフラの設置費が高く数が少ない。法律の改善の必要がある。
(2)Q2:アンモニアと水素を混ぜて燃やすのは駄目か
-燃やすとNOxが問題となる。
(3)Q3:ヨーロッパで盛んなディーゼルの見通しは
-絶滅はしない。重量物且つ長距離に有利。NOxはゼロと言い出す。
(4)Q4:カーシェアリングと車(運転)の楽しみの関係は
-わずかには残ると考えられるが、現在でも世代間格差は大きい。将来は車の買えない低所得者が増えると予想される。
(5)所有車が減少する中で新興国も車が増えないか。MaaSについていけるか
-MaaS専用車両が増加する。MaaSは各地域に適応する仕組みなので普及してしまう。
(6)世界を席巻するUberみたいな会社は増えるか
-Facebookは消滅の危機にある。Amazonは世界的には知られていない。現地に税金を払わなければ残れない。
(文責:冨野)
posted by EVF セミナー at 18:00| セミナー紹介