2019年09月26日

EVFセミナー報告:エネルギー・ミックスの問題点

演 題 :エネルギー・ミックスの問題点−再生エネルギー主力電源化への道−
講  師 : 橘川 武郎  東京理科大学大学院経営学研究科教授。東京大学、一橋大学名誉教授
開催場所 : NPO法人新現役ネット会議室
 
1.講師略歴: 
・1951年生まれ。和歌山県出身。
・1975年東京大学経済学部卒業。
・1983年東京大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。同年青山学院大学経営学部専任講師。
・1987年同大学助教授、その間ハーバード大学ビジネススクール 客員研究員等を務める。
・1993年東京大学社会科学研究所助教授。1996年同大学教授。経済学博士(東京大学)。
・2007年一橋大学大学院商学研究科教授。
・2015年より現職。東京大学・一橋大学名誉教授。総合資源エネルギー調査会委員。前経営史学会会長(在任期間2013〜16年)。
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2.講演概要:
講師は、専門は経営史で(前経営史学会会長)、大手のいくつもの電力会社・石油元売りの社の社史編纂をされたとしながらも、総合資源エネルギー調査会委員であり、長年携わってこられたエネルギー産業論の立場から再生可能エネルギーを主力電源とするためにはどうすればよいかについてお話し頂いた。

人類が直面する二つの危機/飢餓・地球温暖化を同時に解決することの困難性、そしてその答えは、「省エネルギー」と「ゼロエミッション」しかない。

「省エネ」は、日本では経済性の追求により、産業部門と運輸部門では取り組みが進んでいるが、民生部門の省エネは、まだ余地がある。「再生可能エネルギー」には、筋の良い「タイプA(地熱・水力・バイオマス)」と、ややネックがある「タイプB」(風力・太陽光)があるが、大幅な拡充を前提に、技術的・制度的ネックを一つ一つ克服する必要がある。タイプBには、送変電網がネックである。

原子力発電所原子炉の現況は、3.11時点での合計57基(既設54基/建設中3基)のうち、稼働中9基/廃炉決定は21基。少なくとも廃炉決定の21基の送電線が余る勘定となる。2030年想定の政府の電源構成案、原子力20〜22%の実現は難しい。

電力業界には3つのビジネスモデルがあるが、「原子力依存型」、「大型電源依存型」ではなく、「分散型電源・ネットワーク重視型」経営が中心になれば、この業界の将来はある。

再生可能エネルギーのコストダウンには、二つの方法がある(蓄電池やバックアップ火力は高コストに繋がる)。
(1)Power to Heat(電気を熱で調節):デンマークでは再生エネ(風力/バイオ)+CHP(コジェネ)で、電気が余るときは熱を生産し、熱で温水を作り、貯める。日本では温水パイプラインの敷設がネックとなるが、2050年なら可能性があり、カニバリゼーション(共食い)が生じるガス会社ではなく電力会社がやれば現実味がある。
(2)再生エネを再生エネで調整:太陽光/風力+ダム式水力。送電線の高い託送料がネック。電力会社自身がやれば、ビジネスモデルとして可能性がある。

第5次エネルギー基本計画の問題点は、(1)元々の15年策定のミックスに問題があり(原子力が高すぎ、再生可能エネが低すぎる)、(2)最近の変化を反映していない=再エネコストの劇的な低下、原子力再稼働の実進捗など、(3)「総合資源エネルギー庁エネルギー情勢懇談会」の2050年見通しと平仄が合わない=再エネの主力電源化は、30年目標をそのまま据え置いている、「脱炭素の選択肢」としての原子力では、リプレースを回避している。

再エネ拡大により低需要期にはベースロード電源でも出力調整が必要であり、ベースロード電源としては天然ガスと「原子力and石炭」ではなく「原子力or石炭」が合理的、現実的である。

2030年度の電源構成案(橘川案)は、現行計画と比較すると、
原子力:15%・現行計画に比し△5〜7%、
石炭 :19%・現行計画に比し△7%、
LNG:33%・現行計画に比し+6%、
石油等:3%・変更なし、
再エネ:30%・現行計画に比し+6〜8%、

エネルギー事業者の未来は、「熱を制した者」「分散型を制した者」「再生エネ主力電源化に真剣に取り組んだ者」が生き残る。

Q&A:<非常に多数の質問があり、活気ある質疑応答となった>
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Q:ジェット燃料のCO2削減は?
A:飛行機と船舶が注目される。これからバイオ燃料が増えていき、将来的にはガス船か。飛行機の方がより難しい。

Q:地熱発電の問題点は?
A:温泉業者が反対。温泉業者が、地熱発電を自らやるのが良いのでは(温泉業者を当事者にする)。また、発電後地中に戻す蒸気の一部を地元に供給することも有用。

Q:バイオマス発電は、リアルベースでは、カーボンニュートラルと言えないのでは?なぜ再エネの一つとしてクローズアップされるのか?
A:植物は成長過程でCO2を吸収しているという考え方。最近では植林を義務づけるケースも。国際会議で多数の票を持つ欧州諸国がバイオマスを押すからという側面もある。

Q:再エネの発展には地産地消が有効であり、より規制緩和が必要なのでは?
A:規制緩和はそれなりに進んでいる。アプローチの仕方が大切。例えば東北の場合、3、11の後、コミュニティーに中心人物がいるかどうかで復興の差が顕著に出た。中心人物とは、地元の事業者であり、大企業の出先の社員では権限がなく無理。規制緩和より、そのような人の存在が重要と言える。
Q:電力会社の投資は、電源50%+送配電40%+メーター10%と記憶しているが、電源のみの議論ではないか?ベストミックスは時代によって変わるが。
A:本日は送配電の重要性についても大いに言及したはず。例えば、東京の地下にある高圧送電網は、ネットワークとして大きな資産。又、直流の技術も進んでおり、2050年までにロシア、韓国と送電線をつなぐには超高圧直流送電を使う。

Q:Power to Heat(電気を熱で調節)は、日本では蓄電池もあり、通用するか?
A:蓄電池の技術の進展には時間がかかる。余剰買取制度終了後の屋根の上の太陽光発電については、可能な限り、自宅で使うのがベスト(余剰分はEVに蓄電するやり方も)。蓄電池がどこに落ち着くかはこれから。

Q:省エネの民生部門が進んでいないとあるが、FIT(固定価格買取制度)の価格を上げては?
A:ドイツのようにFITの負担を産業に軽く、民生に重くする考え方もある。

Q:日本の宇宙技術を核廃棄物の処理に活かすことはできるか?
A:宇宙での核廃棄物の廃棄は危険すぎる。宇宙開発は大切。それに比べて、原子力は話作りが下手。原子力は、ストーリーが無さすぎる。

Q:P.6の3つのビジネスモデルで、10電力会社は生き残れるか?
A:原発が再稼働すると収益効果が働くので、(1)の原子力依存経営が主流となっているが、長期的には希望がもてない。(3)の分散型電源・ネットワーク重視型経営が未来のあるべき姿。

Q:竹村公太郎氏の著書によると、水力発電用にダムを活用できるのではないか。
A:その通り。多目的ダムの再評価について国交省の姿勢が変わるとすると、水力発電ができ、町おこしに使える。ネックは、縦割り行政であり、突破するには地元から経産省ではなく国交省への提案を。国交省の出番を作る。

Q:各個人の家に蓄電池の設置がなぜ進まないのか?
A:エネファームの普及に見られるように、設置の方向に時代は流れている。又、VPP(仮想発電所、小規模の再エネ・蓄エネ・省エネをまとめて制御・管理することで、一つの発電所のように機能させる)の様に統合型で可能性がある。又、エストニアでは、スマホにより(デジタル化で)P2Pで殆んど解決。2050年へ向けて、P.6の分散型電源・ネットワーク重視型へ。 
(文責:三嶋 明)

講演資料:エネルギー・ミックスの問題点
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