2022年01月24日

EVFセミナー報告:福島県二本松市におけるソーラーシェアリングと小型EVバギー導入レビュー

演題「福島県二本松市におけるソーラーシェアリングと小型EVバギー導入レビュー」
講師:近藤 恵様

合同会社 AgroKraft 代表社員
Web視聴開始日:2022年1月24日
聴講者数:48名

講師紹介

・株式会社 Sunshine(農業法人)、二本松営農ソーラー 株式会社(4MW営農型発電事業)、二本松ご当地をみんなで考える 株式会社(仮称「二本松電力」の準備会社)、各社の代表取締役。
・1979年 東京都生まれ。筑波大学、千葉県成田市、福島県二本松市、それぞれの地で有機農業の先達に師事。
・2006年より二本松市で専業有機農業経営。3.11原発事故に被災し農業を一時廃業。
・市民電力の立ち上げを支援しつつ、2021年よりソーラーシェアリングで営農法人として兼業農業復帰。


講演概要

震災時に食料には困らなかったが、エネルギーが全くなく、トラクターを1cmも動かせなかった。
その経験から水、食料だけでなくエネルギーを含めた自給自立が必要と考えた。エネルギーを作り出す方法として、ごみ発電、バイオマス発電など考えたが事業化が難しい。ソーラーパネルに対しても最初は抵抗があったが、農作業ができる高さと空間があれば農業とソーラー発電の両立ができると考えた。農作物に対する日照は6〜7割で十分であり、それ以上の日照は返ってよくないこともある。したがって農作業ができる空間の上にパネルを遮蔽率3割ぐらいの間隔でパネルを置いた営農型発電という形とした。2018年から始め面積も広げて2021年には畑でシャインマスカットや荏胡麻を栽培するようになった。これにより安定収入がある程度得られる。しかし耕作放棄地といえども農地にソーラーパネルを置くことに対する規制などが多くあり、これを役所に対して説明して認めてもらうために、ずいぶん時間を費した。ドイツでは垂直式のソーラーパネルが普及し始めており、これは午前と午後に発電ピークを迎えるために、社会の電力需要とマッチしており、またアニマルフェンスにもなり、普及が見込めるので検討しているが、日本には台風があるので、固定強度を大幅に上げる必要がある。 

Q & A

Q1:電力の買い取り価格がどんどん下がってきているが? 一方導入コストも下がってきているから、元は取れるという事か?
A1:2018年当時は27円/Kwhであったものが、現在19円まで落ちてきているが、スタート当初の価格が維持される仕組みのため、既存業者は大きな問題がないが、新規の参入は不利・困難になる。また大企業は巨大な設備を投入できるので、有利なシステムのように思う。

Q2:農地法の壁が高いと思うが? 耕作放棄地などを活用するのになぜ政府が認めようとしなかったのか、政府の考え方はいかに?
A2:一時、河野太郎の規制改革タスクフォースで論議された。中には農業といいつつも発電オンリーの所もある。 福島県は全国2番目に耕作放棄地が多くあるが、地方の農業委員会は認めたがらないが、利害調整をしなければならない。政治はやると決めた場合には必ずやると思う。営農型発電の建設ガイドラインができたが、「やってますよ」というなんとなくアリバイ作りのようなもので、本当にやる気ならば、韓国のように数値目標を作らなければだめだと思う。 

Q3:認可期間は自動更新となるのか、それとも再更新が必要か?
A3:3年と10年があるが、自動更新は認めてもらえない。壁の一つに金融機関があるが、この自動更新とはならないことが怖いため、お金を貸してもらえない。
 
Q4:農地法が障害となるというが、営農型発電は耕地面積を減らさないのに何故か? 
A4:農地法の本来の目的は、農業生産を守るためにあったものが、だんだん形骸化してきている。「農地法を守って農民守らず」と揶揄されるが、面積の広さに応じて管轄が、市、県、国と管轄が分かれており、末節な論議になってしまっている。悪用するような団体もないとは言わないが、全体からするとわずかなものと思う。どんな法律も抜け道を探す人はいる。

Q5:遮蔽率を下げて、空間を開けてパネルを置いているが、この発想はどこから?
A5:日本では2003年に千葉県で長島彬先生が始めたのが始まりだが、ドイツでは1981年に土地の有効活用として、このような立体的なものを始めた。

Q6:両面を使うということが良いアイデアだと思うが、垂直型のパネルの台風対策はどのようなものか?  
A6:現在、支柱を深く、太くするなど対策を進めており、最終段階にきている。最初のケースだから、失敗すると後続への影響が大きく大変なことになる。 

Q7:送電線の空き容量がないという事だったが、電力は地域の電力小売業者に売るので、送電線容量は問題ないのでは? 
A7:送電線の空き容量と電力の売却先は別の問題である。太陽光発電の予約量が一時期大量に出てきたので、ストップしてしまった。最大の発電を想定した安全率を取り過ぎのシステムを作ったのだが、その後それほど大量に太陽光発電しなかったので、送電線の容量は今ガラガラであり、問題はないはずである。 
売電先の問題は、一旦東北電力ネットワークに売り、そこから卸で個別配給会社を通して家庭に配給されるが、そこに制限がかかることはないが、売電価格があまりにも安くなってしまったので、直接売りたいという人が出てきた。 この場合には売電量の制限がかかるし、実際にそういうケースが出始めている。

文責:八谷道紀

講演資料:福島県二本松市におけるソーラーシェアリングと小型EVバギー導入レビュー
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