2022年07月23日

EVFセミナー報告:どうつくる?持続可能な社会〜新型コロナとSDGs〜

演題:「どうつくる?持続可能な社会〜新型コロナとSDGs〜」
講師:室山 哲也様
元NHK解説主幹、東京都市大学特別教授   
Web視聴開始日:2022年7月23日
聴講者数:49名

講師紹介

・1953年、岡山県倉敷市生まれ、1976年NHK入局。「ウルトラアイ」などの科学番組デイレクター、「クローズアップ現代」「NHKスペシャル」「ロボコン」のチーフプロデューサ、解説主幹を経て、2018年に定年
・科学技術、生命・脳科学、環境、宇宙工学などの中心論説を行い、子供向け科学番組「科学大好き土曜塾」(Eテレ)の塾長として科学教育にも尽力した。
・モンテカルロ国際映像祭金獅子賞・放送文化基金賞・上海国際映像祭撮影賞・科学技術映像祭科学技術庁長官賞・橋田壽賀子賞ほか受賞多数。
・日本科学技術ジャーナリスト会議会長。東京都市大学特別教授。政府委員多数。

講演内容

いま、新型コロナが流行っている。いつまでこの状態が続いていくのか、果てしない状態がもう3年もつづいている。SDGs(持続可能な開発目標)のテーマから見ると一つの警告であるとも思われるので、それも含めて話をする。


1. 私たちの住んでいる地球は課題だらけ

1.1 「もし人類が滅亡するとしたら、どんなプロセスをたどるだろうか?」
・オックスフォード大学が、2015年に発表した「人類滅亡12のシナリオ」には、人類の未来を左右するさまざまな項目が並んでいる。
・「気候変動」から始まり、「核戦争」プーチンが始めたウクライナ戦争により、今まで核戦争がないと思っていたがリアルな感じになってきた。
・「生態系の崩壊」のリスク、現在地球上には3000万種の生物種がいるが環境汚染による生態系の破壊により、生物種が破壊する速さが増す。
・「グローバル経済での格差拡大による国際システムの崩壊」、「巨大隕石衝突」「大規模火山噴火」直近では6600年前に恐竜が全滅したようなことが、たびたび起こり、その都度生物種が絶滅し、また、新たにリセットされた生物種が生まれ進化してきた。これからもこのような事態が起こる。 
・「バイオハザード」「ナノテクによる小型核兵器開発」、「人工知能」これには光と影がある。
・「超汚染物質や宇宙人の襲来など未知の出来事」
・「政治の失敗による国際的影響」これが一番ありそうだが、これはいろいろな点とクロスしながら増幅していく。

1.2 人類滅亡12のシナリオには「パンデミック(新興感染症)」があがっている。
・私たちを悩ませている「新型コロナウイルス」は、この新興感染症の一つ。これで人類が滅亡するとは思えないが、社会的大きな影響を残していく。世界のショックは大きい。感染症には未知の新興感染症と既知のものが再び現れる再興感染症の2種類ある。今後新興感染症が増えてきて、これからも似たようなことが続く。何故そういうことが起こるかというと、ウイルスは人類が誕生する前から存在していて、遺伝子のかけらのようなものが入ったり出たりして進化のいちよういんになっている。
・もの凄くたくさんのウイルスが地球上にいて、ジャングルの中ではウイルスは共存共栄の状態にある。しかしジャングルの外にいる世界にとっては未知のもので、人間は免疫を持っていないので病気になったりする。
図1 20220723D1.jpg
・この図のようにジャングルがあって人の生活圏がある。ジャングルと人の生活圏は離れていたが、家畜経由で人間社会にウイルスが入ってくるようになった。(図1)

・人間の活動が活発化し、自然の奥深く侵入し、接触の機会が多くなり、免疫をもたない「未知のウイルス」に感染している。いいウイルスもいる。例えば赤ちゃんを育てる母体の胎盤はウイルスの遺伝子が入って形成され、母親の免疫が胎児を.異物として攻撃しないような仕組みにしている。
・人間側の社会構造が変化し、社会と自然のバランスが崩れる中で起こっている現象が今の新型ウイルスの問題であり、新興感染症の問題点である。
一旦取り付いたウイルスは、現代社会の交通網に乗って世界中にあっという間に拡大する。ゆっくりゆっくり感染していけば、我々は免疫を創ることが出来るが、そのスピードがあまりにも早いので大騒動になっていく。
・先進国では、お金があるのでワクチン接種などで感染を収束させることが出来るが、途上国は感染が拡大し、ウイルスの変異、強毒化して、そのウイルスが先進国に感染して被害の深刻化をもたらす。
・このため、先進国だけが対策しても、開発途上国などの対応が遅れれば、変異が繰り返され、タチの悪いウイルスが現れ、先進国に再流入し、イタチごっこは終わらない。この構図は、人類全体で取り組まなければ根本的には解決しない点で、SDGs(持続可能な開発目標)のテーマそのものだと言える。
・SDGsは、15年の国連サミットで、193カ国によって採択された。「環境問題」「貧困」「紛争」「格差」「健康問題」など、30年までに解決すべき17の目標が掲げられ、その下に169のターゲットが並んでいる。一見ばらばらの目標に見えるが、実はこれらは、根底で関連し合い、影響し合っている。
・SDGs3の目標「すべての人に健康と福祉を」に該当する。コロナはSDGsを考える一つの断面である。
解決すべき17の目標のどこから入っていても持続的な発展につながっていく。

1.3 SDGsの根底にある状況とは?
・なぜ今SDGsが必要なのかと考えるとき、人口急増があるのではないか
ヨーロッパでペストが大流行したときは人口が減少している。感染症は社会構造に大きく影響する。コロナも何らかの爪痕を残していくだろう。新型コロナにより、今から10年先に来ると思われた情報通信技術社会が一気に来てしまい未来に飛んだ状態で、社会構造も大きく変わってきている。
・人口急増は産業革命から始まった。2006年で67億人だったものが、2100年で109億人とピークアウトするのではないかと推計されている。もう少し早くアウトするのではないかとの研究も出ている。今はその途上の状況にある。人類増加と地球とのバランスが崩れることになり、地球規模の大きなリスクが生じている。おいおい2200年、2300年になったら人口減少について考えなければならないかもしれないが、私たちは人口急増の時代に生きている。
・我々が取り組まなければならないのはSDGsテーマである。
エコロジカルフットプリントという言葉があり、これは、人類が地球環境に与えている様々な負荷の大きさを、世界のいろいろなデータを基に計算し、数値で示し「負荷」の大きさを測る指標である。
・2014年度段階で、地球環境負荷の1.7個分で生活している。1個分で生活すれば、持続可能であるが、0.7個分余分に資源を食いつぶしていることになっている。
人類全員が日本人の生活をすると地球2.8個、アメリカ人のレベルの生活をすると地球5個必要になるというデータもある。貯金に例えれば、現在人類は元本まで使っている状態。
しかし途上国の人たちは電気がなく夜、本を読むことすらできない、彼らは豊かになる権利がある。今の格差社会の中で環境問題を考えていかなければならない。これからは地球1個分の文明、生活とか社会を創らなければならないことは明らかである。
・けれども、我慢してではなくもっと豊かになって、もっと素晴らしい人生を送りながら持続可能な地球1個分の生活をする。科学の力によってそれができないか。
・SDGs17枚のカードを組み替えたSDGsウェディングケーキモデルがある。一番底辺に自然環境、その上に社会、経済、文化と乗っている。社会、経済を回すことは良いが、回すことによって自然環境にひびがはいたら元も子ともない。うまく連鎖して同時に連動しながら回っていくシステムが求められている。
・大元の自然環境の面から、ことさら気候変動についての問題と、これらを解決するためにエネルギーはどうあるべきか。
気候変動とは全体の平均気温の上昇する現象をいう。暖かくなる地域と寒くなる地域が生じ、水循環が活発になり気候変動が起こる。これからの夏は暑いこともあり寒くなるところもあるが、全体的に底上げしていく現象は確かで、暑い夏が増えていく。
・ダボス会議のグローバルリスク報告書によると、最も発生可能性が高いリスクと、最も負のインパクトの大きいリスクに異常気象、自然災害、気候変動緩和・適応への失敗がある。なかなか対策が難しいのは、国益と地域益がバッティングすることである。これをクリアしながら、リスクを減らしていかなければならない。故にこれからの政治家には、イマジネーションと構想力、空想力が必要になる。
・世界の主な異常気象を気象庁のデータから、3年間(2015〜18)まとめたものがあるが、高温の地域、低温、多雨、少雨の地域と異常災害など多種多様なリスクが生じている。最近は高温の地域が増えている。地域ごとに課題が違う。
・さらに複雑にしているのは、地球温暖化で洪水、干ばつ・森林火災、水不足の被害があるいっぽう、一部の国では、ある時期だけ利益がある。
1990年度比で2.3℃上昇まで、中〜高緯度の人々は穀物生産性が向上するが2.3℃をこえると穀物生産性が低下していく。
日本でも同様なことが起こり、温暖化と品種改良の相乗効果で米の収量が増えてきている。
・また、北極海の夏場だけ氷が融けて海が現れるようになっている。これは、北極航路を運航することにより、日本から欧州や米国西海岸に燃料も少なく、時間短縮で運航できるようになる。さらに、北極海には採掘可能な石油資源が世界の25%位ある。
オープンシーになると北極海は文明国から見ると内海である。船が運航でき、資源があり、一大経済圏になる。近隣の国にとってはビジネスチャンスになる。
・一方で他の国から見たら、南極の氷が融けるということは、何が起こるかわからないリスクになる。地球温暖化対策はこのような矛盾したことにどのように対処していくかが問われていく。

1.4 解決のための根本的視点とは?
・日本や中国などでは人口減少にあるが、地球全体から見ると人口急増の途上にある。
人口爆発により人口の半数が都市に集中し、環境汚染をもたらし、森林が消滅し、生物種が絶滅に向かい、エネルギー不足に陥り、食料も不足し、地球温暖化が起きている。これら繋がっている諸々の症状をいろいろな施策によって同時に解決する必要がある。

1.5 どう解決?
・近江商人の経営理念を表すものに、売り手良し、買い手よし、世間よしがあるが、これに地球よし、未来よしを追加したい。こうすると現代的な三方よしができるのかなと思う。このような結果を導くような施策を探す。
・昨年のCOP26では、気温上昇を産業革命以前の温度から1.5℃以内に抑えることが合意された。。それには温暖化ガスを2050年までに実質ゼロにしなければならない。そのためには、農業からのメタン排出削減、電力の石炭火力削減、森林破壊防止、エコカーの導入などを推進しなければならない。今の目標では足らないので、毎年削減目標の上乗せを図っていくことを世界全体が合意した。
・日本も菅首相の時、2050年温室効果ガス排出実施セロを推進する法改正をした。そして2030年の電源構成の目標を設定した。再生可能エネルギーを36〜38%にすると計画しているが、問題があり、原発20〜22%にすることは関係者に聞いても難しいと言っている。石炭火力も19%としているが、世界の国々(先進国)から非難されている。
・政府は石炭火力のインフラを利用してアンモニアと混焼して、2050年には石炭火力を100%のアンモニア火力発電にすると説明している。だがアンモニアをどう製造するのかなとの課題が残っている。
・再エネをいかに増やすかが重要である。

1.6 解決の切り札?自然力×科学技術
・日本は世界で61位の小さな島国である。
海の面積は6位で水の量は世界4位の海洋大国である。そこに巨大なパワーを持つ黒潮が流れている。この海の存在を活かした洋上風力、潮流、温度差、波力の利用をする。地熱のポテンシャルではインドネシア、アメリカに次ぎ世界3位である。バイオマスの森林率は先進国3位で、さらに各地に太陽が降り注いでいる。こう見ると日本は自然エネルギー大国である。採算の取れる事業だけをやっても、現在の電力使用量の1から2倍のポテンシャルがある。巨大なものである。こういう視点から展開できないか。
・グリーン成長戦略で、次世代太陽光がある。
地球上に降り注ぐ太陽光エネルギーの1時間分は、人類消費の1年分である。
ゴビ砂漠の面積130万Kuの23%に太陽光パネルを敷き詰めると、計算上ではあるが、世界のエネルギー供給量に匹敵する。
・2021年経産省試算であるが太陽光は原発より安くなる。太陽光パネルの設置場所は公共建築物の屋根、貯水池、農地・耕作放棄地、最終処分場などに展開していこうというのが今の政府の考え方である。また、都市全体に、変換効率の高い、曲がるペロブスカイト型太陽電池の設置などが考えられる。
・洋上風力発電である。
海洋大国である日本は排他的経済水域をどう使うかが問われている。
九州大学の研究者が、効率的な風力発電であるレンズ風車を開発した。(図2)
図2 20220723D2.jpg

通常の風力発電に輪を付けると通常の3倍弱の能力の発電機になる。モジュールの上にレンズ風車を複数配置し、それらを組み合わせ構築物にし、モジュール天盤には、太陽パネルを敷き詰め、潮流、波力発電も付加し、真ん中のところは魚が寄ってくる構造を作り、海洋牧場にする。福岡で設置に向けて、地産地消型の発電システムとして最初から漁協と一緒に取り組んで地域の活性化を目指している。大規模発電には向かないが、中規模程度までならば凄く有効である。
・大規模洋上風力発電ならば日本の得意技の造船技術を活用することで成長戦略になるのではないか。プロデュースしていく発想の仕方が重要である。
・カーボンリサイクルこれは、二酸化炭素を有効利用しようということで、森林からのバイオマスも良いが、CO2吸収が熱帯雨林3倍のミドリムシとか海藻は大量に増えるのでうまく利用する。火力発電所から排出されたCO2はそのまま海底とか陸の中に貯留することが考えられているが、もったいないので海藻を増やして、バイオ燃料や食料にしていければ、CO2の有効利用になる。
・琉球大学の研究者が海洋バイオマス利用によるCO2削減およびバイオ燃料化に関する研究を行っている。海水と排ガスを溶かして2%くらいのCO2濃度にするとホソエダアオノリの成長が2倍になる。この海藻の糖類からの発酵液でエタノールを造るバイオエタノールの試作に成功した。また、この海藻を使って美味しいゼリーも製造している。
ミドリムシの事業などは大成功でミドリムシをジェット燃料に混ぜて利用する計画。西東京市ではミドリムシバスが走行していた。
・いろいろな知恵があるので、その中から政府が後押ししてブレークするようにしていく施策が必要である。
・つぎに、グリーン水素の話になるが
電気は蓄積できない。大規模発電所からの一次エネルギーは利用されない排熱、送電ロスなどが63%もある。実際に利用している一次エネルギーは37%しかない。
再生可能エネルギーは風力も地熱も偏在している。では電力をどう運ぶか、送電網の強化にはお金がかかる。送電網を使用しない解決法としてはバッテリーがある。ナス電池などあるけれども限界がある。
・水素をコアにしたエネルギー社会ができないのかということで実証実験を見に行った。東芝の川崎では太陽光発電で水を電気分解して、水素を作り、燃料電池に充填する。その電力を公園のカメラや照明、事業所でも使用し効率を調べている。
・長崎五島市でも浮体式洋上風力発電でつくられた電気を島に運び、そこで水を電気分解して水素を作っている。ここでは水素を圧縮してタンクに充填して、燃料電池船とか燃料電池車に使用している。またこの企業は常温に近い状態でメチルシクロヘキサンの液体に水素を混ぜて他の島に運びそれから水素を取り出して、燃料電池に充電し発電して効率を調べている。
・アルゼンチンのパタゴニアは一年を通じて一方向に強い偏西風がアンデスから吹き降りている。巨大な風力発電の基地を作って、水の電気分解で水素を生産したらどうなるか。これを世界の大規模水素サプライチェーンで回していけば水素国際社会ができる。今は、中東が石油を生産して世界を回しているが、これからはパタゴニアが世界の中心になるかもしれない。日本の北の地域にも吹いている場所があり、世界でも何か所か風の強い場所がある。そういう場所で水素を生産すれば、今は中東が石油を生産して世界を回しているがこれからはパタゴニアが回していくことになるかもしれない。
・そうなると、エネルギー問題だけでなく、安全保障とか、国際政治の構造が変わるだけのインパクトがある。その上に水素社会が乗っかっていく。水素は大きな政治的な意味を持っている背景がある。EV対燃料電池車みたいな話があるが、それぞれ違う未来を切り開くパワーがあるので、こういうことを含めて考えていった方が良い。
・このような、あの手、この手の知恵を使いながらどういう文明を進めていけばよいのか、SDGs社会でやらなければならない。

1.7 持続可能社会の思想とは
・被災地に行ったら夜は真っ暗闇だったが、小水力発電のあったじいちゃんの家だけが電気が灯っていた。冷蔵庫も使うことが出来た。近隣の人たちが集まって生き延び、救援が来るまで持ちこたえることが出来たエピソードがある。自然エネルギーは地べたにあるので災害の時にしぶとい社会をつくる糸口になる。これはSDGs社会に向いている。
・日本には、里山という文化がある。里山は大自然と町の間にある。
西洋は自然を支配し生物種が減少する。東洋は自然と共存し生物種が増加する。里山では木こりが木を切るときは少し残す。すると長年萌芽更新を繰り返し、その結果できた木の空洞の中で新たな生物種が生活し、生態系が豊かになる。このような里山エコシティのようなものができないだろうか

1.8 どうやって直すかわからないものを壊すのはやめて。
・ブラジル・リオデジャネイロで開催された環境保全と持続可能な開発に焦点を当てた国連会議で、子供環境運動代表のセバン・スズキさんが子供たちの声に耳を傾けてという演説をした。その後の大人たちに影響与えた。
・セバンさんからの演説から、私たちは12歳から13歳の子供たちの集まりで、今の世界を変えるために頑張っている。自分たちでお金をためてカナダからブラジルにやってきた。未来をかけて話す。ここに立って話すのは未来の子供たちのためである。世界中で飢え苦しむ子供たちのため、今にも死に絶えようとしている無数の動物達のためである。
・もし戦争のために使われるお金を貧しさと環境問題のために使えば、この地球は素晴らしい星になる。私はまだ子供だがこのことを知っている。
争いをしないこと、話し合いで解決すること、人を救うこと、自分のごみは自分で片づけること、傷付けないこと、分かち合うこと、欲張らないこと。
・ならばなぜ、大人たちは、私たちにするなということをしているのか。私たち子供たちの未来を本当に真剣に考えているのか。大人たちのやっていることのせいで私たちは泣いている。大人はいつも私たちを愛しているという。もしその言葉が本当なら行動で示して。
・ウクライナ戦争で子供たちを悲惨な目に合わせているプーチンにこの講説を聞かせてやりたい。

1.9 地球と共に生きる
NASAから地球を撮った3つの写真がある。地球を回りながら撮った写真、アポロ8号が月から撮った写真、ボイジャーが太陽系の海王星の外から撮った写真。地球の周りは真っ暗である。この地球上に3000万種の生物と、80億の人が住んでいる。80億の人はこの星と運命を共にするしかない。この地球で持続可能に地球と共に生きていくのにどうすればよいか、いま問われている。

2. 主な質疑応答

Q:セバン・スズキさんの話が感動的で、地球温暖化の被害者は次世代、次々世代の人たちが本当の被害者になると思っている。我々高齢者が、その人たちに正しく情報を伝達していかなければならないが、何かいい方法があるか。
A:温暖化は息の長い話で、想像力が必要になる。倫理観とか生き方とかありとあらゆるものがためされ、変わっていかなければならないもので、脱化石燃料が正しいものとすれば、それに代わるものがいかに素晴らしいものになっていくかを見つけ、楽しい温暖化対策について伝わるようにする。

Q:電気自動車の蓄電池を利用すると電力網が生かされると電力も助かるけれど、一例としてセクター間カップリング、例えば交通部門と発電部門あるいは水素を通じての鉄鋼部門など内外でポジティブにつなぐアイデアがないか。
A: 自動車については、CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)の方向性に従って、自動車のありようは大きな影響を及ぼし、車に人工知能が搭載されて、今後の社会を大きく変えることについて、大いに興味を持っている。気が付いたら車は生活を変え、地方も救うことになっているかもしれない。
また、DXも産業構造や社会構造を、根本から変えていく要素を含んでいる。

Q: SDGsにある思想は全人類をどう救うかという思想で国連がまとめた発想で、だれも反対できないが、ウクライナ戦争から地球は滅亡していくしかないにように思える。事実、ウクライナ戦争後、ドイツは原子力、石炭も使用する政策を進めているが、今後どう考えればよいのか。
A:安全保障上のリスクは、国内で使用するエネルギーを自らがハンドリングできるエネルギーがあればあるほど安定することになる。わが国は、日本の周りに天然ガス100年くらい利用できるメタンハイドレードとか、海に結構あるレアメタル、自然エネルギーとしての太陽光、風力、地熱、バイオマス、海流利用の波力などを生かして自立していくことが大切である。
バイオマスを造っている岡山県に行ってみると、森を育ててバイオマスチップでエネルギーを作ってやっている。森を育てないと再生可能にならないので、雇用を創ることになる。雇用が生まれてお年寄りとか、若者が来て森を管理することによって、人が集まり、村が街になり、地域の自立につながるサイクルが出来ている。その地では地域通貨などを使って、大手企業がお金を吸い上げるのではなく、エネルギーを含めて地域が回るような仕組みがある。文化が育つ、その街は凄く安定している。日本で優れた首長のいるところと、そうでないところでは差がものすごく出ると思う。優れた首長のところは浮上して素晴らしい街になるけれども、考えが古い首長のところは、沈没してどんどん劣化してやばいことになる。地域のリーダーシップが問われる時代になってきている。そこに再生エネルギーとかが噛んでくる。それらが総体として日本の安全保障に寄与していく。三菱総研の小宮山さんがプラチナ社会を提案している。高齢化が、人類の末路となるか、進化となるか。高齢者は足腰立てばすごいことだが、足腰立たずとも知恵を持っている。お年寄りが納税者としての可能性を持っている人がどんどん社会に参加する。再生医療やパワースーツもそうだし、老人のための娯楽の開発などで、輝く老人が生きる色々なコンテンツを創れば、内需拡大になり、課題解決先進国として、そのコンテンツを少子高齢化に悩む国に輸出できるだろう。そのような社会の設計、旗印があれば希望を持てるのではないか。

Q:日本は自然エネルギーの宝庫と考えるが、農業用地に太陽光発電機を設置すると農地法に引っかかるとか、水力発電をしようとするも治水用、農地用と発電用ダムで管轄が違いプロジェクトの障害になる。メディアの力で、省庁の既存権益を取り払うことが出来ないだろうか
A:記者クラブの記者は文部省付きとかがあって張り付いている。私はデイレクターなのでどこの省庁にも出入りできるが行政の縦割りが出来ていて、垣根を超えたデスカッッションがあまりできていない。マスコミの情報は、ある意味それと呼応して縦割りの傾向がある。
それに風穴をあけているのがネット社会であるがニュースの真偽の問題がある。マスコミでいうと記者クラブを廃止すれば記者は大変で自らネタを探さなければならなくなる。その時金太郎あめのような記事はなくなるが、生き残れる記者は一握りになる。

講師から受講者への質問

Q: EVが世界を変えているのは確かだが、トヨタは水素燃料を使用しエンジンを残すということは雇用を守るということか
A:個人的な意見だが、水素を使用するとの振り上げたこぶしをおろせなくなってしまい、雇用を守ることに持っていたように感じられる。
Q:燃料電池車は長距離走行にEVは短距離が有利とされているが
A:一般の乗用車は電気自動車が主となる可能性があると思う。そして、大型で走行ルートが決まっている場合は水素、というようにユーザニーズから棲み分けが進んでいくのではないか。
文責:立花賢一

講演資料:どうつくる持続可能な社会
posted by EVF セミナー at 00:00| セミナー紹介