2022年08月25日

EVFセミナー報告:「メタバースとは何か ー 仮想空間の世界へのご招待」

演題:「メタバースとは何か ー 仮想空間の世界へのご招待」
〜メタバースを使いこなして子供、孫と遊ぼう〜
講師:NPO法人リライフ社会デザイン協会(レスダ) 副代表理事 小柳津 誠様
 
聴講者数:57名
講師紹介:
・1983年 名古屋大学工学部電気電子工学科卒
・1983年 (株)リクルート入社(経営企画 情報システム 営業)
・1992年 (株)コスモライフ(リクルート事業会社) 情報システム部長、コールセンター長
・2004年 伊藤忠アーバンコミュニティ(株) CIO兼教育事業本部長
・2014年 起承転結社 代表 (教育事業、新規事業コンサル)
・2017年 レスダ 副代表理事
・2020年 早稲田大学社会人教育事業室 Program Producer
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<講演概要>

1.本日の趣旨
・私は、元々はアニメオタクでメタバースの専門家ではない。素人なので専門性は抜きにして、自分がなるほどと思えたことを皆さんにお伝えしたい。
・「自問自答自習自得」は、九州大学サイバーセキュリティセンターが提供する教育プログラムにある言葉。バーチャルの世界は分からないことが多いので、自分でちゃんと考えるという意味でここにご紹介した。
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2.Web3って何?
・「ウェブの父」ティム・バーナーズ・リー氏は、インターネットやメールで使っているURL・WWW・HTTP・HTMLやブラウザ等ほとんど全て彼が生み出した。彼がアプローチしてきたシナリオを共有することで、何がメタバースなのか、DAOとは何か等全て一連のつながりであることが分かる。
・Web1:インターネット/「読み込む」の登場により、個人が自由に情報発信
・Web2:iPhone/「書き込み」登場から巨大なプラットフォーマーGAFAへ
・グローバルなプラットフォーマーへの集中と問題:皆が安心安全でそれに任せた結果、あらゆるリソースがプラットフォーマーに流れた。その結果、莫大な富と大量の貧しさが構造化している。そこに気付くがどうかが大事なところ。
・Web3:DAOという組織で「分散」と「自律」ということ。一人一人が自律してというのが発想のベースにある。

3.「仮想」って何?
・メタバースはコアな根っこでサーバー上に生まれた仮想空間。この「仮想空間」の中に「現実」を表現する方法がVR「仮想現実」・AR「拡張現実」・XR「複合現実」。
・メタバースとSF・アニメとは明らかに差がある。「現実との連動」があるのがメタバースで、だからこそビジネスが動く。
・広告宣伝は、テレビからネットへ。2021年末に北米全体の広告宣伝費の使用先は、テレビがここ30数年間で初めて2位になった。北米で起こったことは数年後に日本でも起きる。

4.Metaディスリ
・Twitterの最初の呟きはいくら?
・子供の落書きが3万ドル
・AIロボット「ソフィア」が描いたデジタルアートが75百万円

5.あなたは「DAO」できますか?
・DAOの一番大事なところは、分散ということではなく非集中ということ。
・アナログなDAOも私はあると考える。一人一人が自律してお互いに干渉せず全体を動かしていく組織

6.Moonshot計画について
・内閣府Moonshot計画:2030年に10体以上のアバターで身体、頭脳、空間、時間の制約から解放、2050年までに人が身体、頭脳、空間、時間の制約から解放された社会を実現。

7.最期が変わる?
・自分が50年後の人に言いたいことを遺しておきたい。本当に遺したいのは意志。
・Somnium Spaceが開発中の「Life Forever」は、自分の容姿や声、さらに人格まで模倣したアバターに取組んでいる。

<講演内容>

1.本日の趣旨

・私は、元々はアニメオタクでメタバースの専門家ではなく、デジタルの世界について個人的な趣味でいろいろやってきたことで結果的にメタバースであるとか、バーチャルの世界について多少の経験がある。素人なので専門性は抜きにして、自分がなるほどと思えたことを皆さんにお伝えしたい。
・ここに書いた「自問自答自習自得」は、九州大学サイバーセキュリティセンターが提供する教育プログラムにある言葉で、ハッカーのウイルス攻撃から守るものは技術的なものだけではなく、彼らが一体何を狙っているのかという心の問題であるとか、哲学の問題を突き詰めていかないとウイルス対策はできないという趣旨で、私が気に入った言葉。バーチャルの世界は分からないことが多いので、自分でちゃんと考えるという意味でご紹介した。

2.Web3って何?

(「ウェブの父」ティム・バーナーズ・リー氏)
・キーワードとして覚えていただきたいのは、ティム・バーナーズ・リー氏のこと。皆さんがインターネットやメールで使っているURL・WWW・HTTP・HTMLやブラウザ等は、ほとんど全て彼が生み出したもので、「ウェブの父」と言われている。
・彼がアプローチしてきたシナリオを共有することで、何をしたかったのか、何がメタバースなのか、DAOというものがなぜ組織として生まれてきたのかが、全て一連のつながりであることが分かる。

(Web1:インターネット/「読み込む」の登場により、個人が自由に情報発信)
・Web1はHTMLによるインターネットで、軍用の網状ネットワークでどこかが切れても必ず届くというもの。彼が言い出した1990年当時は、情報発信は放送局・新聞社等の特定の権利者しかできないものであった(独占/既得権益)。特定の人しかできなかったことを、まずは皆が世界中どこにいても自由に発信できるようにつくったインターネットがWeb1である。

(Web2:iPhone/「書き込み」登場から巨大なプラットフォーマーGAFAへ)
・Web2は2007年のiPhoneで、「書き込める」ことが出来るようになった。テキストのみでなく、写真が送れて自由に書き込めるようになったことで劇的な変化をもたらした。

(グローバルなプラットフォーマーGAFAへの集中と問題)
・そこで起きてきたことが問題で、自分の情報を発信するとなると怖さがあり、悪用されるのではないかという思いがあった。そこで、自分の身を自分で守るのではなく、有名な看板を掲げているところに自分を守ってもらおうと、そこに皆が集中した。これがグローバルなプラットフォーマーで、GAFAである。安心安全で皆がそれに任せた結果、あらゆるリソースがプラットフォーマーに流れた。
・私はゲームオタクで、「うま娘/プリティダービー」のアプリケーションの話で例えると、そこは単にデータが流れていくという生やさしいものではない。2019年(コロナ直前)のオリエンタルランド(ディズニーランドとディズニーシー)の集客は年間2,500万人、売上5,256億円で、エンタメの頂点にある。これと比較してプリティダービーの一日平均はどれくらいと思われるか? 無料利用もできるが、一日の課金利用はどれくらいか? 利用者は150万人〜200万人程度。

【会場男性】:1日10百万円(1年36億5千万円)
【講師】:データに変動はあるが、一日約10億円。お金は儲からないし、キックバックもなくただ単に女の子のウマのキャラクターが走るのに課金しているだけ。但し、この10億円を売上げるために、キャラクターやその動きとか、作家やデザイナー等様々な人が関わっている。一日10億円が365日、ゲームはこれだけでなく日本だけでも何百本のアプリが有り、それが世界中、中国・台湾・アメリカ・イギリス等にある。
・実はGAFA、例えばアップルさんは当然一定の利益をとっている、これが驚くべき水準。通常、商売でお世話になった人に「利益」の何%かを返すのは普通にあるが、彼らは「売上」の30%のレベルで、これを毎日世界中で得ておりものすごい売上になっている。問題は、この状態でGAFAは大きな売上があがり素晴らしいということでいいのかということ。実はこれがWeb3に繋がっている。

(Web3:DAOへのつながり)
・Web3が考えようとしているのは、DAOという組織で「分散」と「自律」ということ。一人一人が自律してというのが発想のベースにある。
・創設者のティム氏が、このWeb3を提唱している。「新しいことを新しいエンジニア(それまでの技術に束縛されない若手)」が言っているのではなく、「一番新しいことを最初からやっていた人(その道を最初から究めた一番の経験者)」が言っていることが大事なポイント。
・そのティム氏が「Web3はまだ存在しないもの」と言っている。今の世の中でいわれているWeb3は一体何かということになるが、私が思うにキャッチーなキーワードを前にすると、皆が思考停止になる。冷静にデータを観察して論理的にものごとを考える訓練を受けた皆さんにもっと考えてほしい。ウマ娘のゲームの売上の30%を世界中で得ていることは、すごく儲かっているビッグビジネスということではなく、どうみてもおかしいということ。確かにプラットフォームを作ったが、その結果何が起こっているか。莫大な富と大量の貧しさが構造化している。GAFAだけのせいではないが、そこに気付くがどうかが大事。

(「ティム氏が考えていること」は何か?)
・いろいろな思いがあって1990年にインターネットを立ち上げ、そのために必要なHTMLやWWWを作り、その後世の中が変わり、今Web3を作らないといけないと考えている。どんなことがその動機にあると思うか? 彼は何をしたいのか?

【会場女性】:国境を取り払って、全部自由な空間を作りたいということ。
【会場男性】:いつでも自由に情報発信ができること。
【オンライン男性】:途中からGAFAの権力的志向が強くなったことから、世界の皆が平等で自由に情報の送信・受信をやろうということではないか。
【会場男性】:昨日Roblox(https://corp.roblox.com/ja/)という孫のゲームを見て思ったことだが、「バース」とは「ユニバース」で、「自由な宇宙で皆で創造ができる」ということではないか。
【講師】:国境をなくすとか自由な情報発信とかはWeb1からの流れで、世界の平等を宇宙レベルでというのもその延長線上で共感できる。リアルよりバーチャル世界が先に動いている。
・私が個人的に一番感じるのは、皆が便利なことにまき込まれ過ぎていること。便利なのはいいが、「便利かそうでないか」と「大切かそうでないか」ということを混在してしまっている。そういう状況に対して、彼が言うところの「自律」ということを皆が考える必要があると思う。

3.「仮想」って何?

(メタバースとVR・AR・XRの違い、後者は仮想空間に「現実」をつくる表現方法)
・メタバースとセットになっているVR・AR・XRという言葉がある。日本人の悪い癖で、漢字で書きたがりそのせいでわかりにくくなっている。
・メタバース「仮想空間」とVR「仮想現実」・AR「拡張現実」・XR「複合現実」を見分ける方法は「現実」という言葉。メタバースにはこの言葉が入っておらず、それ以外は全て入っている。メタバースはコアな根っこでサーバー上に生まれた仮想空間。そこに「現実」はない。この「仮想空間」の中に「現実」を表現する方法がVR・AR・XR。仮想の中に現実をつくるVR(仮想現実)、現実を仮想で拡げるAR(拡張現実)、両者を混在させるXR(複合現実)ということ。

(メタバースとSF・アニメとの違い、「現実との連動」)
・メタバースとSF・アニメとは明らかに差がある。「現実との連動」があるのがメタバースで、だからこそビジネスが動く。
・バーチャルシティの渋谷でゲームセンターに入り、クレーンゲームで商品を吊上げ落とすと次の日にアマゾンからその商品が届く、というように仮想と現実が繋がっている。商品や流通・販売が動くことが、アニメやSFと絶対的に違うところ。仮想空間ではお店を開く土地も売られている。仮想と現実のつながりをデザインしたものがこの図である。
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【会場男性】:クレーンゲームの話はよく分かったが、土地のケースはどういうことか?
【講師】:土地はSANDBOX(https://www.sandbox.game/jp/)というサイトで、SANDという通貨で土地(LAND)を買うと、その電子的空間を利用できる権利がもらえる。その占有した場所に仮想現実としてお店を開いたり商品を並べたりすることができ、その権利の売買がビジネスになっている。今から2年間くらい前に世に出て、最高価格が発売になった時の価格の40倍になり、今はまた元にもどった経緯がある。
・仮想空間がもてはやされて、なぜ何十億円も投資するのかは、夢物語ではなくあくまで現実が動いているからで、逆にお金が動いているということは、どこかで必ず現実と繋がっているとみていただくと、いろいろなことに気がつかれるのではないかと思う。

(メタバースの事例1:選挙、史上初の「メタバース街頭演説会」)
・先日の選挙で自民党が立会演説会を仮想空間で行い、結構反響があった。集まったアバターを通じて実際にリアルで参加者が聞いており、現実とつながった世界となっている。

(メタバースの事例2:SnapのARグラスを使ったNIKEの動画)
・AR(拡張現実)サングラスでランニングするシーン。現実の中に仮想で鳥が飛んだり、現実の中に仮想の新しいのもが拡張で入ってくる。特定のメガネを掛けた人のみが見ることができ(拡張現実)、その中でコマーシャルを映すことも可能。個人が自分の好きな人にメッセージを入れることも、できるようになると思う。

(広告宣伝は、テレビからネットへ)
・ここに掲載している企業は、広告宣伝費をテレビからネットに移している。2021年末に北米全体の広告費用の使用先で、テレビが第2位になった。30数年間テレビがずっと1位だったものが、昨年初めて2位になった。1位がネットで、多分この先変わらないのではないか。北米でおきたことは数年先に日本でおきる。テレビもあと5〜10年ではないか。

【会場男性】:今は民放が自分の番組宣伝を自分の局でやっていて、枠が埋まらないのか?
【講師】:民放もそうだが、TVerで無料で見られるように、今までは生でしか見られないということで広告宣伝費を高くとれていたものが、生で見ていなくてもインターネットやYouTubeで見られるようになってきた。放送法違反でもそれを全て摘発することはできない。テレビ局もそれが分かっているので、「独占だから権利を金に換えて儲ける」のではなく、「多くの人が見て楽しむ際に少しずつ金をもらう」ビジネスモデルに変えてきており、それしか方法が無くなってきたという厳しい状況にある。

4.Metaディスリ※
※報告者注記(ディスリスペクト)

(Twitterの最初の呟きはいくら?)
【講師】:Twitter最初のコメントはいくらで落札されたか?
【オンライン男性】:1億円
【会場男性】:2億円
【講師】:3億円です。NFT※やTwitterが巨大プラットフォームとして話題となっていた時期でもあるが、本当にこの金額で売れた。
※報告者注記:NFT Non Fungible Token 

【会場男性】:買ったというのはどういう権利を手に入れたということか?
【講師】:所有権を意味する。絵画と同じで公開して他の人も見ることはできるが、他の人は持っているとはいえず、所有権はNFTを買った人にある。デジタルで証明される仕組みがNFT。

【講師】:今年の5月、3億円で買った人が売りに出したがいくらで落札されたか? 購入時の価値の20倍(60億円)で、チャリティオークションで半額が寄付される仕組み。
【オンライン男性】:80億円
【講師】:実は値がついたのは440万円で、入札は最低価格に満たず成立しなかった。Twitterという巨大なプラットフォームの最初の一言に、価値はないわけではないと思うが、チューリップ相場やバブル等もそうだったがやはり本当の価値に戻るものと思う。

(子供の落書きが3万ドル)
・シボレーの例で、世界でただ一台の限定特殊デザイン車を高い価格で出したが、誰も買わなかった。
・ニューヨーク在住の一般市民の子供が描いた落書きが、NFT化して「Open Sea」サイト※で3万ドルで売れた。お金を出す人は、子供に凄い才能を感じて芸術作品として買ったということで買う人の自由であるが、それがOpen Seaを通じて売買されたことが面白い。
※報告者注記:Open SeaはNFT販売を行っている最大手マーケットプレイス(ネット記事より)

(AIロボット「ソフィア」が描いたデジタルアートが75百万円)
・AIロボット「ソフィア」が自らNFT資産を使って描いたデジタルアートが、75百万円で落札された。人間の指示や意図、技術等は一切介在していないが、どこに価値があるのか? 芸術家のように長い間に自分の感性や経験とか技量を尽くして描いた作品ではない。ソフィアは電源を入れたら描くわけで、芸術の価値とは何かを考えさせられる。ソフィアを否定するわけではなく、アートの価値とお金の交換がこれからどうなっていくのかと思う。

【会場男性】:Open Seaで子供の落書きを売るのと、メルカリで売るのとは何が違うのか?
【講師】:基本的には同じで、唯一違うのは、そこで使われているお金が「イーサリアム」という仮想通貨であること。メルカリも現金ではなく、メルペイでチャージして決済するのと同じ。仮想通貨では国境がなく、となると通貨とは何かという問題も提起される。

【会場男性】:買った人はどうなるのか?
【講師】:買った人が現物を貰うか、NFTというこの絵はあなたの持ち物という証明書だけを貰うのかは、当事者同士の決めごと。例えば巨大なアート作品であれば、モノはそのままでNFTを所有すれば、世界中でこれはあなたの持ち物ということを証明してくれる。NFTというブロックチェーンに基づいた証明書が有効ということ。

5.あなたは「DAO」できますか?

(DAO:Decentralized Autonomous Organization/自律分散型組織)
・Web3の世界は、国家とか組織とかのあり方に影響し、その一種の組織論がDAO。日本語では「自律分散型組織」と訳されているが、これは間違いで、Decentralizedは分散ではなく非集中とすべき。非集中を実現するためには前提として分散が必要だが、分散してるから非集中というわけではない。分散しても分散した人が思考停止していれば自律はしていない。DAOの一番大事なところは、分散ということではなく非集中ということ。
・自律分散型組織には、アナログなDAOもあると考える。一人一人が自律してお互いに干渉せず全体を動かしていく組織で、皆さんも経験していると思う。
・皆が共通の意識を持ち、その時々の状況に合わせて共通の目的に即した判断を支持するのがDAOで、以下に例をあげてみる。

(アナログなDAOの例:日本ラグビー南アに勝利)
・日本ラグビーが2015年ラグビーW杯初戦で優勝候補の南アフリカと対戦したとき、皆さんのご記憶にあると思うが、終盤に相手ゴール前で反則を獲得し、キック・スクラム・ラインアウトの選択肢があった際、エディ・ジョーンズ・ヘッドコーチのキックの指示に反し、リーチ・マイケル主将がスクラムを選んで結果トライで逆転勝利した。あのリーチの判断は独断ではなく、全員のスクラム選択の思いがあってこそで、予め決めていたことではなく、その時に必要なことを皆が認めてその人が判断するということ、これがDAO。

(アナログなDAOの例:ブラックジャック)
・カードゲームのブラックジャック(子/プレイヤー4〜5人+親/ディーラー)で、レベルが高くなってくると子は皆が残りの絵札を覚えており、親に1対1で勝つより親がドボンすると全員が勝てるので、どうすれば親がゲームオーバーになるかをお互い知らないプレイヤー同士が会話の出来ない暗黙の中で連携し、親をドボンさせたらgood job!ということで同様にDAOである。

(中高生のゲームシーン)
・マクドナルドで中高生がたむろってゲームをしているのは日常的に見られるが、あれはチームになって相手を倒している。どうするかは個人に任されており、相手の攻撃も早いので、お互いに合図を送ったりする時間もなく瞬時の判断で対応している。怪我した人を治すヒーラー役や魔法を使って相手を倒すマジシャン役等いろいろな役割と組合わせがあり、黙って皆がやっている。これもある種のDAOと思う。
・今の子供達はこういうことを皆経験しており、目配りだけで何をしようとしているのかを察し、協調して動くことを知っている。こういう子供達が社会人になり、リアル組織の中でリーダーに従うということが分かるかどうか、大人は少し違う目線で彼らを見る必要があるのではないかと思う。是非、土日の昼間にマクドナルドで観察してください。

6.Moonshot計画について

(内閣府Moonshot計画:10体以上のアバターで身体、頭脳、空間、時間の制約から解放)
・内閣府がMoonshot計画を策定している。2030年までに1つのタスクに対して、一人で10体以上のアバターを自由に操作して実際の社会活動に参加できるようにするもの。予算も47兆円と本気。まずは身障者とかシルバーの皆さんが利用できるようにすることで、少子高齢化を克服するもの。2050年までに人が身体、頭脳、空間、時間の制約から解放された社会を実現する。それで全てのことが出来る訳ではないが、今まで出来なかったことの大きな部分が出来るようになる。
・2050年は先のことではあるが、日本政府の計画として公式に発表されており、英語版も用意されている。世界に対して発信しているもののその割には誰も知らないので、是非、皆さんにも関心を持っていただきたい。

7.最期が変わる?

(自分の意志をメタバースで遺す)
・私はもう60代だが、自分で動画を撮って遺言を残そうと思っている。去年取組んだが、プライベートな遺言で財産を分けるというより、今日の時点で自分が50年後の人に言いたいことを遺しておきたい。今の社会を見ていて、孫が大人になったときにお祖父さんの言うことが正しいと思ってもらえるようなもの、ノストラダムスの大予言ではないが、今の自分が考えている未来に対しての思いを遺しておきたい。私は、本当に遺したいのは意志と思う。津波の記憶もそうで50年前の記憶が残っていたらもう少し避けられたかもしれない。同じことを私たちも一人の人間として遺しておきたい。
・私は三国志が好きだが、実際に登場人物の声は聞いたことはない。今までは有名人でないと、そういうコンテンツは遺せなかったが、今は誰でも遺すことができる。

(安楽死について)
・安楽死について調べた。法律的に安楽死が認められている国はあるが、残念ながら日本では認められていない。死ぬときぐらいは自分で決めたいと思う。
・Somnium Spaceが開発中の「Life Forever」は、自分の容姿や声、さらに人格まで模倣したアバターに取組んでいる。自身の記憶や普段の行動等をAIが全てデータとして記録している。私は今日の自分を遺したいわけではなく、50年後の見通しを遺したいと思っているが、あたかも自分がAIロボットとして遺ることが面白いと思う人もいると思う。
・少し前まではあり得なかったことがいろいろできる時代なってきており、こういうこともあることをお伝えしたかった。経験と知恵が一番役に立つので、今日お話ししたことを将来に向けて皆さんの経験や知恵を活かせる助けに少しでもなればと思う。
ご清聴ありがとうございました。

<質疑応答>

Q1:【会場男性】
・今日はありがとうございました。メタバースを構成しているのは洗濯槽の泡の一つ一つではないかと思いました。泡はそれぞれ勝手なことを言うのでしょうが、最終的に寄り集まるところは、LINEの同好の士や、このEVF(環境ベテランズファーム)のように気持ちを一つにして集まるということになるのかと。それぞれがバラバラに言いたいことを言って、最期にまとまるモノは何もないというイメージを持った。今日のお話は最後で安楽死までいったが、ブツブツ言っている泡の一人として、一体どういう世界になるのかなと、いかがでしょうか?
【講師】
・おっしゃっていることは全く私と同じで、先は分からないが、自然に帰るということのように思う。好きな人と好きなことをするために好きなことを考える、ということがいろいろな意味で出来るようになる。DAOがそうだが、例えばこのEVFも同好の士がいるが、ここだけの世界ではない。私はアニメファンでもあり、ドラゴンズファンでもある。自分がたくさん存在して、たくさんいる自分がそれぞれ好きな人と好きなことをやっている、それでなおかつお金が稼げる世界。
・夢みたいなものかもしれないが、実は既に遊ぶだけでお金が貰える世界ができつつある。フィリピンの一部では、ゲームをすると一定のお金が貰える。ベーシックインカムの発想に近く、そのベーシックなものが戸籍ではなく、ゲームをやることにあるということ。ゲームをやればベーシックインカムが入ってくる。日本人の考えるベーシックインカムは戸籍の登録が必要だが、ルールが違うだけで同じこと。好きなことは皆違っており、違うということは、より得意な人と苦手な人が生まれ、その差分でエネルギーというかビジネスが動くはず。今までは誰が得意で誰が苦手で、どこにその差分があるかが分からなかったが、今は皆が繋がり簡単に分かるようになってきたので、そういうことが可能になるのではと個人的には思っている。
・組織や国境は本当に無くなる。警察や消防はないと困るが、多分AIで代替できる。そういうモノはルールに基づいており、ルールに基づくモノはAIロボットができる。これだけは必要というモノを、皆がお金を出して作っておけば、あとは皆が好きなことをやればいい。
・日本人は好きなことをやって生きることを怠け者といったりするが、好きなことをやっている人で怠けている人は誰もいない。死ぬ気で遊んでいる。皆がそうやって汗を流してというようになれば、ある意味面白いのではないかと思う。

Q2:【オンライン男性】
・DAOの場合は、その組織の目的が予め決まっているわけではなくて、何人か集まった中で、楽しむモノが出てくるのが理想。そのためには顔を付き合わす必要もなく、今ならいくらでもテレワークでできる環境は整っている。ここからは私個人の感じで皆さんと異なるかもしれないが、EVFもDAOだと思う。みな自主的に役割分担を決めており、嫌になったらやめて次の人が自然にその役割を担うというのがこの十数年の歴史。正に(DAOの)典型なんですが、欠点はなにか皆が真面目すぎて成果を出さねばならない、脱炭素社会の形成に向けて何かcontributionを創れという暗黙のプレッシャーを感じている。そういうことも勘案して楽しくやる秘訣はないか?
【講師】
・そのご質問は和田さんがお答えになると思うが・・・。おっしゃるとおりDAOと思うが、DAOには自律分散とか共通の目的があるが、はっきりしていない要素がまだある。それは「循環」ということ。固定的役割はなく、その時、誰かが皆が思うことでこれをやろうと言い出して皆でやるという、そういうプラットフォームになっていないと、この人が司会者、あなたが世話役、あなたが下働きということ等々、日本人は役割分担が大好きで役割を決めたがる。逆に役割分担はしているが、朝起きたらリシャッフルされて、今日の役割分担を決めていく、それが自然に言葉や動作で皆に共有されていく「循環」というか、皆がそれぞれいろいろなことが出来る仕掛けや考え方がもう少し揃ってこないと本当のDAOはなかなか難しいのかもしれない。
・根っこにあるのはこのEVFのようなもので、スタートはここから。皆が真面目というのがキーワードで、日本人は「辛いことを我慢することを真面目」といっているが、「好きなことを一生懸命やることが真面目」というように定義を変えると、多分皆さんの真面目さがもう少し違う形になると思う。嫌なら、それは嫌だと言うこと、皆はよくても自分だけはやりたくないということでよく、それを「それはそうだよな」ということでやっていければそれでいいのではないか。そうすることでイメージしているDAOにより近づくのではないかと思う。実験的にこういうところで、やっていただきたい。

<講演会終了後 番外編>

Q1.【会場男性】:メターバースは私でも作れるか?
【講師】:メタにお金を払ったり、ある一定の条件で契約してある空間を買うことができる。NFT取引きを提供しているのがOpen Seaであり、ある空間を土地として認識し売買しているのがSAND BOX。皆さんがメタバースに自分の空間を作るのは可能で、今は商業利用の最低価格3百万円程度。小さい空間ではあるがそれをどう使うかは皆さん次第。1回バズルと費用は回収できる。

Q2.【会場男性】:その空間はメタ社が独占ということか?
【講師】:メタバースはメタ社の商品で、仮想空間は他にもある。多くの人の目線や注目を浴びているのがメタバース。別の仮想空間で安く始めることもなくはないが、今はメタバースに人気が集中しており、メタバースで小さくてもやり始めるのがいいように思う。

Q3.【会場男性】ハード的にはどの程度の準備が必要か?
【講師】:パソコン1台、ひょっとしたら高性能のスマホでできる。メタバースを持っているというだけで、影響力を持てるかもしれない。アンテナショップや地方のお店が東京でお店を買ったら簡単に潰れてしまうので、メタバースに出店するのも選択肢ではないか。なお、お金のやりとりは全て仮想通貨で現金ではない。

Q4.【会場男性】:地方自治体はそういうことをやっているか?
【講師】:北九州とか鎌倉とかやっている。

Q5.【会場男性】:この間日産がやっていたが、あれでも3億円とかかかっていたようだ。
【講師】:もっといろいろ可能性が出てくるかもしれない。出品することがポイント。まず皆さんはクライアントとしてどこかにアカウント登録をする。皆さんが持っている知識を個々に集めるのは大変だが、集まっている人でどういう情報の形にするのか、ちょっと工夫するのがいいと思う。皆さんはエンジニアなので、新しい技術に対して何かテイストをつける、皆さんは変数で考えたがるが変数はいい点がつけば褒められるが悪い点がつけば攻撃されるのでよくない。例えば色をつけること、この技術はピンク色とかこの技術は別の色とか。なぜこれはクリームイエローでスカイブルーではないのかをEVFとして言えれば、それだけで価値になる。エンジニアが数値でなくて色でモノを語っているのが新しい価値になる。そんなことがあると面白いと思う。
文責:井上 善雄

講演資料:「メタバーストは何か-仮想空間の世界へのご招待」
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