講師: 竹村 公太郎様 特定非営利活動法人 日本水フォーラム 代表理事 博士(工学)
聴講者数:56名
講師紹介
竹村公太郎(タケムラ コウタロウ)博士(工学)
・1970年:東北大学工学部土木工学科修士。国土交通省の前身の建設省に入省。一貫して「治水、水資源、河川環境」行政に従事。
・1998年:河川局長に就任。
・2006年-現在:NPO特定非営利活動法人 日本水フォーラムの代表理事兼事務局長
・2017年-現在:福島水力発電促進会議座長
・著書:「日本文明の謎を解く」「土地の文明」「幸運な文明」「日本史の謎は『地形』」で解ける」(PHP文庫3部作)「水力発電が日本を救う」(東洋経済)「浮世絵と地 形で解く江戸の謎」(集英社)「水力発電が日本を救う-ふくしまチャレンジ偏」など多数。
講演内容
I.概要
文明の誕生と発展にとってエネルギーは絶対に欠かせない。メソポタミヤ文明、黄河文明はエネルギーで誕生し、エネルギーで衰退していった。日本文明の奈良、平安そして江戸への変遷もエネルギーで説明できる。今日本のエネルギー自給率は10%で他国に比べ極めて低い。22世紀、化石エネルギーは厳しい制約を受ける。日本の未来のエネルギーは何か? 実は、日本には豊富で平等なエネルギー資源がある。水力発電である。ダムは太陽エネルギーの貯蔵庫であり、降った雨は日本の脊梁山脈によって全国津々浦々に川となり平等に流れ込む。その川に新規にダムを建設する必要はない。進化した台風予測を活用し短期に放水せずに夏場の発電月数を稼ぐ、既存ダム全てに発電機をつける。既存ダム全てを発電所にする。今ある発電機は大型化する。ダム嵩上げをして貯水量を何倍にも嵩上げする。すぐ下流に小型ダムを作り需要ピーク時に発電する。荒れた林道も整備し間伐材によるバイオ発電を行う。そして資金を域内循環させる。このような既存ダムの有効利用と再開発の工夫によって一部の人に犠牲を強いることなく、我が国の超大なエネルギーポテンシャルを活かすことができる。全国に河川のない市町村はなく、無限に続く国産エネルギーの水力が未来の日本を必ず救う。

1. 歴史から見る日本のエネルギー
(1). 江戸のオイルピーク
大和の時代から、木材は、記念構造物用として伐採されただけでなく、燃料としても使われていた。そのため、都に近い場所から伐採圏が拡大していった。
(図1)
時代は下り家康が、秀吉の命を受け、奥州伊達勢の軍事侵攻を防ぐ為に関東を治めることになった時、江戸は森林帯の東縁に位置しており、質量ともに良い木材が入手できた。一方で、関東は6000年前の縄文海進を経て一面の干潟・湿地帯であり、関宿の隘路を除けば、東北伊達勢からの軍事侵攻を止める為の自然の要害であった。図2は、家康が江戸入りした1590年当時の関東である。徳川家康は、この地勢を明確に意識し隘路を遮断する為、巨大な堀となるように利根川と渡良瀬川を流れ込ませ銚子に導き防衛線とした。
(図2)

その後幕府は利根川の拡幅と掘り下げを継続し関東平野を利根川の洪水から守り江戸は発展した。同時に木材伐採圏も拡大し、天竜川流域の木材伐採量は枯渇していく。(図3)

また、その様子が歌川広重の 浮世絵 「日坂小夜の中山」に禿山が描かれている(図4)。 「二川猿ケ馬場」も松が散在しているだけ、「金谷大井川遠岸」も山稜に木が描かれていない。

江戸は循環型文明ではない 誤解されている。森林・燃料を消費し尽くしていく。
(2). 明治から昭和のエネルギー;石炭と石油
明治になると 石炭を使う 蒸気機関車を使うため 木材から石炭にエネルギーが変わった 紡績から重化学工業に発展して行く。第一次大戦では 石炭から石油へ。 ソ連の「バクー油田」とジェームスディーンの映画ジャイアンツの舞台となった「テキサスオイル」。第二次大戦は、 米、中、ソ連、中近東、オランダ(インドインドネシア)の産油国の中で、 日本は 燃料・石油を求めてこのインドネシアを 狙った。 民間では燃料不足から木炭バスが走り (昭和16年)、薪を求めて、十和田、奥多摩、伊勢原、足柄 、信濃川、大津、山科、比叡山 など全国の森林は禿山になった。(図5)

その石油も限界が見えてきた。

2. 日本は生き残れるのか
(1). 際立つ日本のエネルギー自給率の低さ
日本のエネルギー 自給率は6%しかない。図6は、 3.11以前のデータをもとに経産省が示した図に日本の自給率を他国と同じ尺度で改めて表現した図である(原図は、数値は正しいが円を大きく描いてある)。 今現在でも10%の自給率である。自給率10%の文明は必ず滅びる この図が示す状況は、今日生まれた赤ちゃんが50歳になった時は そうなることを暗示している。 そういった話を自民党水力推進協議会議員連盟に呼ばれ話をしてきた。 エネルギーはみんなで協力してやろうと。 目糞鼻糞を笑ってる場合ではない!と柔らかくだが伝えた。 もし潤沢な今の暮らしのエネルギーを30%節約して自給率を60%にすれば、なんとか生き残れる。できれば水力だけで30%をやりたい。もちろん太陽光、風力、地熱、水力 すべてやるしかない。

経済性からみた可採年数は、化石は109年 (3.11以前は300年といわれていた)、 石油は53年、ガスは56年であり経済的には早晩使えなくなるため、技術開発もやる、海底メタンハイドレートも探査するなど、全てのエネルギー源を開発しておく必要がある。
(2). 確実な未来
それは、気候変動による自然の狂暴化、 地球環境の悪化、エネルギー逼迫である。
ここまで いろいろ脅かすようなことを言ったが、実は講師御自身は 日本列島は優れており結果として生き残れると考えている。厚生労働省の推計によれば、100年後は 人口のピークを越え6000~7000万人ぐらいになる。これは1600年頃江戸時代の初めと同じであり見方によってはハッピーとも言える。なぜなら世界には強制的に人口を減らすというグループもいるが、日本は自然に減っていく。日本列島で考えれば、人口は増え続けよりも 安全である。
また、化石燃料やウランはいずれ尽きる。尽きることのない自然エネルギーの 元となるのは 四つしかない。 1.太陽エネルギー(太陽光、風力、波力) 2.地球の重力 3.地球の電磁波4.地球のマグマ、 これら地球の持つエネルギーである。但し 太陽エネルギーの弱点は単位面積あたりの エネルギー濃度が薄いこと。そのため濃度を高める技術開発が伴う。
(3). 日本のエネルギーの優位性・公平性
上記4つのエネルギー源の中で、水力は太陽と重力の二つを用いた点が他と違う。この点について、電話の発明者アレクサンダー・グラハム・ベル(実は地理学者で米国地理学会会長、電話の儲けをナショナルジオグラフィック発刊に注いだ)が明治に来日して次の認識を明示した。「日本列島は、アジアモンスーン帯の北限に位置し、雨(梅雨と降雪)が多い事、全周を海に囲まれ70%が山地である事。この二つの要素によって日本列島自体が薄いエネルギー源である雨を集約・凝縮し重力によって河川というエネルギーの流れに変換する装置である事」、つまり日本列島の地形は70%の山が集める水エネルギー装置であり、これが日本列島の優位性である。加えて日本の脊梁山脈は、降った雨を日本海側、太平洋側と全国津々浦々に公平に行き渡らせる、このような国は世界にない。(図7) 全ての市町村が川を持っている(唯一の例外は山がなく川がない沖縄の宮古市)。

(4). 日本列島の弱点は、滝のような川
山地に降った雨は、多摩川で一泊二日、利根川でも二泊三日で海に流れ込むので他は日帰り。
従って、使える水はすぐになくなってしまう。その使い勝手を良くするのがダムである。

紀元100年(狭山池、満濃池)から江戸(農業用、水道用堰堤)、明治・大正(水道)、昭和(発電、治水、農業、水道、工業)と日本はダムを作り続けきたダム大国である。自然のバッテリーと言っても良い。ダムの無い一級河川はない。
(5). ここまでのまとめ
地政学※からみる日本の生き残る道
気象:アジアモンスーンの北限
地理:海に囲まれている
地形:70%の山地が雨を集める装置
社会:平等な脊梁山脈
装置:ダムは 太陽エネルギーの貯蔵庫
※地形的条件がその国の政治や外交政策に及ぼす影響を研究する学問(岩波国語辞典)
III. ダムを活かす
1. 既存ダムの弾力的な運用
(1). 全てのダムに発電機を設置する(今は全てのダムが発電機付きではない)
ダムの運用変更(複雑だが大事)ができる。ダムサイトはすでに限られているので改善するなら治水と利水を兼用する。特定多目的ダムは昭和32年の立法を根拠とするが 知性と理性の矛盾を引き起こしている。治水は洪水を貯め込みたいのでダムを空けておきたい国交省だが、 農水省は水を貯めて使いたい、 厚生省も水を貯めておきたい。夏場6月を過ぎると ダムの水位を30m下げる。その背景には昭和29年の台風による青函連絡船・洞爺丸の事故(1155人が死亡した日本海難史上最悪の事故)があった。 この時代に 台風や雨量に関しての気象予報技術はまだなく予測できない という前提で 夏場は一律に水位を下げることになった。そこで、これを改めて 台風予測とともに緩やかに水位を下げて 発電に使うことが今なら可能である。

つい先週の今年(2022年)11月18日 東北整備局が四十四田(しとしだ)ダムにおいて この仕組みを 実際に運用し その結果 160万立米の水を発電に用いることができ 80メガワット以上の電力を得た。(図9) これは丁度この辺りの 概ね300世帯の1ヶ月月分の電力になる。 竹村先生が 後輩たちに この方法を教えて 実際に達成できた ということで先生にとって人生で最も嬉しい一瞬の一つであると いう発言があった。

八ッ場ダムも5000億円かかると言われているが そのうちの3000億円は 付け替え道路や鉄道敷設のための費用であり ダム本体は2000億円である。 このことが示すのは 新たなダムを作るのではなく既存ダム改良であれば 費用を大きく節約できることを示す。 例えば既存ダムの手前にもっと高いダムを作れば、つまりかさ上げすればワイングラスのように満水量がグンと増えるが、水没する集落や鉄道は既に移転しており道路も湖面から大分上にあるので大きな補償や環境激変はないと思われる。どんなダムも嵩上げはできる。夕張のシューパロダムは 70mの水位を110mまで40m嵩上げし 8700万㎥の水量を4億2700万立米まで5倍増やした。 今すぐしなくても将来に向け巨大なストックになっている。
(2). 流量調整池ダム
竹村先生が所長を担った宮ヶ瀬ダム本体は 24200kW であるが 下流800mに1200kWの石小屋ダムを作った。 これによりボタンひとつで 水を抜いたり貯めたりして流量を調整し需要に合わせたピーク発電ができる。 つまり 経済産業省と送電を担う電力会社が協力すればできる仕組みである。宮ヶ瀬ダムは計画時点からそのように進めることができた。
2. 日本の生き残りは多様性である
(1). 未来は分散型エネルギーネットワークシステム
生物の進化の歴史は多様化/bio-diversityである。人類の進化も求める方向は多様性であり、それが豊かな文化にもつながる。エネルギーも集中から分散化に向かっていて、集中は退化ではないか。日本列島は、九電力体制で無理をして全国隅々に送電しているが、これをやめ 大都市は集中 それ以外は分散型発電を行うのが良い 。ただし、仕事が無くなる部分があるので、その変化を計画的に行う必要がある そもそも東京や横浜において水力発電はできない。

(2). 水力発電の弱み
電力会社は、水力発電はコストが高いのでやめた。初期コストが高いので償却期間が長すぎて通常ファンドは投資をしない。しかも河川の水は公共財であり国民の財を使うので制約が多い。

さり乍ら 明治・大正・昭和の経済人の先輩方は 100年を超える長い視点でダムを作ってきた。同様に国内再エネは コストが高いと思われがちだが 今後燃料を輸入するエネルギーはどれだけ高いものになって行くか、下がることはありえない。今20〜25年の視点で将来を考える必要があること受け入れるCEOを探している。 先日、自民党の水力推進進議員連盟に呼ばれてそういう話をしてきた
3. 水源地域の支援
(1). インセンティブは 20年で終わり 地方には過疎だけが残る
電源三法などで作った林道は崩壊する。 なぜなら作るときは 林野庁が予算をつけるが維持管理は市町村になり 道路が壊れたら予算がないので通行止めで山に入れない。 これを改めるにはプロフィットの還元を山に、例えば利益の1/3 を公共の意識を持って還元する必要がある。 良いニュースもある。 林業にロボットを導入すると 若い人に人気が出て地域が活性化する。 ロボット伐採だけでなく間伐材を利用したバイオ発電も行う。 このプロフィットを森林組合へ 注ぎ込めばよく、インドネシアやマレーシアから買う必要がなくなる。実際のお金を動かすこと、リアルにやることが大事。
(2). 列島に分水嶺を書き込むと降った水は全国隅々まで均等に行き渡る
水力発電はすべての基礎自治体に共通する公平な資源である。水源地の水力発電が動けば、取り付け道路である林道が整備され森林組合の間伐材バイオ発電も可能となり 全国山村地域の永続的な活性化が続きエネルギーの大循環が生まれる。

IV.質疑応答
Q1, 竹村先生の水力発電が日本を救うーふくしまチャレンジ偏※1―を読んだ。地方銀行が資金を出さないことが問題のようだが、地方自治体・地元を活動の主体にすることはどうか?
A1, 地方自治体がやるのが正解。 現状は、銀行は初め話に乗ってくれるものの償却期間が長いので成約しない。しかし地方自治体や首長が推進すれば社会的信用も高まりSPC※2などにより自治体も少額拠出すれば事業資金を地方銀行も出さざるを得ないと考える。 自己資金を得ることが大事で 方向はそうなっている。
※1. 真の自立のため人々は立ち上がった!福島からエネルギー革命が始まる!新規大型ダムを建設しなくても、既存ダムの潜在能力を発揮させれば 水力発電量が2〜3倍に。安定的な再生可能エネルギーを確保し、地元経済を活性化し、百年後の日本に大きな富を残す-夢のプロジェクトが動き出した!「ふくしまモデル」を実現するため国民一人ひとりができることは?
※2. 特別目的会社「SPC(Special Purpose Company)」;当該不動産のキャッシュフローを原資に資金調達を行う仕組み。この仕組みでは、投資家が不動産に対する投資を行う場合、投資対象としての不動産は、株式や債券などの有価証券と比較して様々な魅力がある反面、投資単位が高額であること、株式や債券などの有価証券と比較すると売買が容易ではなく、換金性が劣っているといった側面もある。不動産証券化の意義は、投資対象としての不動産の魅力は保ちつつ、投資単位を小口化し換金性を高めることで、より投資家が投資しやすくすることにある。(https://www.mlit.go.jp/common/001204998.pdfより抜粋編集)
Q2,地方再生の視点で見るなら1例としてふるさと納税の対象に地産エネルギープロジェクトを加えることも考えられる。今日の例で言えば 小水力発電プロジェクトに相当するが、その場合 何か 課題や問題があるか?
A2, 全く問題ない。 そういう発想に債券で市民に売り出すということがある。まだやっていないが債券で売れば 銀行の資金回収は5年で済むかもしれない。 銀行員にとっても自分の人生軸の中で解決できる可能性がある。水力発電の償却期間が長い問題をこのような仕組みでどこかが最初に実行すれば他の自治体も採用が大変簡単になり連鎖すると思う。
Q3, 主要国のエネルギー自給率はノルウェーが792%と日本の6%に対し、大変高い。 これは水力発電がありそのため電気自動車も売れていると思っていたが 水力だけでもない。 こう見ると 日本の水力も もっとその比率を高め30%までいけると 考えてよいか?
A3, 既存ダムの最大活用・嵩上げなどを 行えば 30%はいけると考えている。 そもそも今までは 需要がなかったので環境問題、地方活性化、エネルギー自給率向上ができることが理解されれば動機付けとなり日本でも進むと思う。例えば、富山宇奈月ダムではダムを長持ちさせるために砂を排出する排砂ゲートを改造して作り、堆砂や石が通り抜けて上手く機能することが実証されている。また、新規建設も可能と考えるが、そこまでしなくても 今あるダムを全てエネルギーに使うということでも可能である。なぜなら治水については、喫緊の課題だが、遊水地や流域治水の考えなど代替手段がでてきたので、少し長い目で見れば エネルギー利用の優先度が 逆転して行くのではないか。
Q4. 小水力発電に注目している。分散化で地方に広がれば電気自動車にも使える。その点で、全国ではどこにどれぐらいの小水力発電のポテンシャルがあるのか?
A4. 各県で 20プロジェクト程度は活動しており、全国で1000プロジェクトぐらいはあるのではないか。一か所平均200kWとして20万kW程度かもしれない。自動車会社でも関心を持っている企業がある。ただ 小水力をやろうという集まりは多くあるが 実現性まではわからない。
関連でだが、あらたな応用先として計算センターがある。大電力を使うので話が電力会社に持ち込まれたが、都市圏での対応を求められたので断った事例がある。 5G などは大電力を使うだけでなく 寒いところであれば冷却問題も対処できるので、世界を見渡してもカントリーリスクの少ない我が国の北海道、東北、北陸、中国地方など日本海側にポテンシャルがあると思うがまだ具体化されていない。
Q5.分散型発電は集中型に比べ送電距離が短いのでロスが少ないのではないか? 特に集中型では行き届いていない地方の地域(図10右側)に行き渡ることが期待できる。
A5. 分散型は、距離が短いのでロスについては助かると思う。加えて全国各地での自給率向上にもつながる。また、離島や半島において送電網(Grid)を用いるのは、電力会社の負担が大きくなる。そのため事業となる仕組みが必要であり引き続き議論が必要である
会場参加の電力会社OBコメント;系統を専門とした立場からは(古いデータだが)送電ロスは2~3%であった。確かに地産地消が良いが問題は電源安定性で50Hz基準が48〜52Hz程度変動してしまうので千kWから1万kW程度の大きなコンデンサーや電池がバックアップ電源として必要となる。そのため、火力、原子力、ピーク時の揚水をバックアップとして、系統から一括して流し込むのが良いという意見である。但し、現状は東西の系統連携が2か所60万kWしか融通できないという問題がある。
Q6. 水力発電に期待している。揚水発電 はバッテリー代替としてポテンシャルが高いと思う。 また、今の発電所をすべて揚水発電用に変えることはできるか?
A6. 再エネは太陽光発電など不安定で余剰を捨てている場合もある。そのため各地で揚水発電の論議がされている。しかし、山上に水を溜めるのは論理として経済性がない。ただ、ダムは多いので調べればあるかも知れないが、そこまでは検討していない。とは言え、都会の昼間の余分な電気をポンプアップに使うのは簡単なので小規模なら効果があるかもしれ
会場参加の電力会社OBコメント;系統の専門としては、本来、変動運転できない原子力や火力との組み合わせが揚水発電の本来の形である。つまり夜に焚いた(タービンなどを動かす場合に焚くと表現する)電力でダム下の水をポンプアップして上に貯水し昼間の必要な時間帯に流す。(火力も変動に即応できそうだが、立ち上がり時等の熱応力問題があり定常運転が基本)。そのため現状は、揚水発電が力を発揮している。
Q7. エネルギー安全保障の観点から国家事業として水力発電のポテンシャルを
最大限に見積もった場合のエネルギーミックスをどう見通すか。
A7.
そのような水力のポテンシャルを前提としたエネルギー政策を誰も作っていない。かつて通産省には水力課があったが潰されてしまった。日本列島固有の水力発電を最大限計画したうえで、足らずじまいを化石エネルギー、原子力エネルギーなどで補てんしていく。その位の覚悟が必要である。
最後に
揚水発電は、60〜70年前に計画され20〜30年前に完成した。計画した人たちは凄い、株主もうるさくなかったからかもしれない。今は長期的に考える人がいないとぼやきたいが言い続ければ、節税対策として遺産相続時に投資をする人も出てくるかもしれない。この先も言い続けることが大事ですね。と発言があり、全員の笑いと共に拍手で終了した。
文責:寺本正彦
以上