2022年12月22日

EVFセミナー報告:EVの真実〜大丈夫か、日本のEV〜

演題:EVの真実〜大丈夫か、日本のEV〜
講師:舘内 端 様
 一般社団法人EVクラブ 代表理事
視聴者数:59名
講師紹介:
1947年群馬県生まれ。日大理工学部卒業 東大宇宙研勤務の後、レーシングカーの開発、製作に携わる。
1978年日本F1GPに高橋国光選手のチーフエンジニアとして参戦。完走9位に入る。
2009年自作EVで1充電555.6km達成、
2010年同EVでテストコースにて1充電1003kmを達成。いずれもギネス記録。
1994年日本EVクラブ創設。1998:年環境大臣表彰。

講演概要:

「EVの真実」についてのご講演。「世界の変化がEVを生み」、「EVが自動車と産業を大きく変える結果」の観点から、下記4点を通して解説してくださった。
(1)やっぱり EV 主流化か、FCV はどうする→→→ 主流はEV。FCはあるがFCVはない。
(2)早期普及の為の課題は→→→ 人民、行政、企業の気候変動防止への覚悟。
(3)2030 年以降を見据えた性能向上見通し→→→ 性能向上は不要、むしろ性能を低下させ環境・エネルギー負荷を低下させるべき。
(4)EV が主流になることによる Mobilityコンセプトの革新→→→ 20世紀型「自動車と産業」の消滅。
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講演内容:

〇今後、EVは主流化する。
〇早期普及の為の課題については、特に日本は、国の「変革が苦手」な特性により、EV化を阻んでいる。成功体験を持つ日本人、自動車メーカーが阻んでいると言えるし、覚悟するしかない。
〇どのような性能向上が本当に必要なのかを考えなければならない。エンジン車が辿ってきた道を再び辿るのではないか。
EVは1/3の期間で消滅してしまうのでは。
〇自動車産業を含む「20世紀型産業」は、このままでは消滅に。20世紀型として成功している「トヨタ」も同様か?(舘内講師は「トヨタの危機」という本を上梓されている)

◇人はなぜ移動するのか/移動の始まりと進化
*第一次ホモサピエンスの大移動・・・人力による移動、
*第二次ホモサピエンスの大移動・・・文明を拓く、農業革命、自然エネルギーによる技術革新、
*第三次ホモサピエンスの大移動・・・グローバリゼイション、化石エネルギーの利用(石炭、石油、天然ガス)、

◇グローバリゼイションは、物流を伴う。
*グローバリゼイションでの成功例の一つが、日本の自動車産業

◇ホモサピエンスは、陸海空を化石燃料で征服した。(蒸気機関車/ライト兄弟の内燃機関の飛行機の成功/リンドバーグのNY-パリの無着陸飛行/コンコルド)
◇移動形態の変化・革命
*大量移動から、「個」の移動へ―――>巨大船、汽車から、「自動車」へーーー>駅馬車からガソリン自動車・EVへ(最初に100kmを超えたのは自動車・初期時代のEV)

◇スピードへの欲望
◇高級化の欲望―――>高級車の誕生(欲望という幻想消費の自動車版)
◇大量生産・大量消費という欲望の始まり(アメリカンドリームの自動車版)―――>大衆車の誕生―――>地球温暖化の主役登場=ホモサピエンス絶滅の第一歩

◇モータリゼイションの進展―――>気候変動がじわりじわり・・・・

◇その進展の結果
*自動車保有台数の増大/自動車走行距離の伸長/自動車の大型化 燃費の悪化
―――>石油消費量の増大―――> CO2二酸化炭素排出量の増大―――>温暖化/気候変動地球の始動

◇石油を膨大に使ってしまった人類*世界の石油累計生産量(〜2005年)1兆4600億トン ―――>出したCO2は、4兆2458億トン (うち自動車は、約半分、およそ2兆3000億トン) (石油鉱業連盟 経産省の資料から計算)
◇「自動車とCO2」の関係の具体例:                                   *ガソリン1リットルが燃えると 2.32kgのCO2が排出される/ 自家用車で月に4回給油。合計200ℓのガソリンを入れた/排出したCO2はおよそ460kg―――>1年間自家用車を使うと5.5トンもCO2を出してしまうという計算に。
◇世界の石油の半分を使ってしまう自動車:                                *世界の石油消費量・ 44億4900万トン、自動車の石油消費量 ・ 28億0800万トン ―――> 自動車の石油消費比率 :  およそ63%。―――>従って、中東に何かあれば、日本は自衛隊は出ざるを得ない状況。例えば、ホルムズ海峡の機雷除去作業。   
◇世界の自動車のCO2排出量:                                      *世界のCO2排出量(2015年) 329億トン、/世界の自動車のCO2排出量(2015年) 73.8億トン―――>自動車のCO2排出量の割合 22.4%―――>自動車は地球温暖化の元凶です!
(中国のCO2排出割合は28.1%であり、中国一国の排出割合とほぼ同じ)

◇舘内講師の出したCO2の計算:                                     * 年間 2万 Km、走行 40年で80万km、リッター10km 〜 ―――>使ったガソリン8万リットル―――>出したCO2 ・25万9200トン―――>「地球温暖は私の責任です」「今は車を持っていません」・・・・・・・【これは、『各人は、地球温暖化を、他人事(ひとごと)ではなく自分事(わがこと)として、受け止めるべき』との強いメッセージかと】
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◇資本主義と自動車(と地球温暖化・気候変動)                              *20世紀型資本主義と共に生まれた自動車(T型フォード)                         *資本主義を育てた自動車                                        *自動車産業を拡大させた私たちの欲望                                  *私たちの欲望を刺激しつつ続けた自動車と技術                              *資本主義型欲望に飽きた私たち(我々の子供世代、孫世代の現状)                     *欲望という名のマーケットを失った自動車
◇自動車社会・繁栄の理由(なぜ、今まで繁栄が許されたのか?):                     1.豊かな資源、                                             2.発展の余地のある市場(残る市場はインド、アフリカは?)、                      3.温暖化していなかった地球環境
◇さようなら欲望拡大型自動車と技術:                                  *より速く(する技術)、より遠くへ(行く技術)、より快適に(する技術)を進めてきた。             *しかし、欲望拡大型自動車と技術では地球が持たない。
◇さようなら欲望拡大社会(変わるマーケット):30年後にはこうなる・・・・               *消費文化を象徴した衣服の例(日本):既に、パリでもイタリアでも、変革しつつある            1990年の売れ残り衣服の割合  3.5%                                   2018年の売れ残り衣服の割合 53.8%(15億5000万点)
◇変わり始める自動車の生産と使い方                                   *水平分業型自動車生産:デトロイトで始まる、分業化、統一規格など                    *産直型自動車生産:現在の日本メーカーの自動車生産台数は約2,000万台(国内市場・500万台、海外1,500万台)であり、産直型になると、日本の自動車産業は変わらざるを得ない。               *生協型自動車生産・販売                                        *国民自動車
◇30年後の自動車産業/産直・生協・地域通貨型 国民EV (1):                   
(グローバリゼイションからローカライゼーションへ) 
*自動車の生産者と購入者をダイレクトに結ぶ                               *企画は生協が行う(生協は会員制、商品企画は会員が行う)                        *地域通貨で資本蓄積増大を防ぐ(地域通貨は利息なし、資本の蓄積はなし)
◇30年後の自動車産業/産直・生協・地域通貨型 国民EV (2)                     *販売店/セールススタッフ/広告代理店が不要                               *営業部門・広報部門・クルマのカタログ・自動車雑誌・カージャナリスト〜不要               ―――>コストは1/3が削減可に。例えば、今まで300万円の車が、200万円で販売可に―――>更に、売り残しも、0に
◇地方産直EVは、60年前から存在している                                *スイスのツェルマット村(マッターホルンの登山口)の産直EVの例:村で許されているのは、村仕様のEVバス、EVトラック、と馬車のみ
◇産直式・欲望減少・移動の個別化が進むと、三輪車に未来を感じる(例えば、カールベンズの三輪車)。   
*戦後の三輪車(メッサーシュミット、イソ・イセッタ・フジキャビン、など)
◇三輪の方向性に(二人乗り、三人乗り)、またはsmall Carに                       *1997年のベンツの300Eコンセプトカー、97年のVWのコンセプトカー、同・Audiのコンセプトカー
◇◇◇未来を先取りしたEV活動  By 一般社団法人日本EVクラブ
*中学生EV教室:EVサイド・バイ・サイド2007、部品はエンジン車の半分程度。
*2001年充電の旅:日本一周の旅(全国621か所のコンセントで充電、半年かけて日本一周)。
*ビバンダムチャレンジ/EV1998、:パリ・シャンゼリゼ通りを初めて日本のEVが走る。
*2009年11月17日、東京〜大阪をミラEVで「途中無充電」の旅。
・東京・日本橋〜大阪・日本橋555、6km+α=600km程度を、無充電走行。
・日本国内の「反EVキャンペーン」の強い中、アンチ「反EVキャンペーン」として実施。
*2010年5月22日のミラEVチャレンジ1000。
・一充電走行として。1,003kmを達成(今でも破られていない)。
・オートレース選手養成所オーバルコースにて(筑波)。
*2013年EVスーパーセブン急速充電の旅。
・急速充電・600〜800か所で、8,100kmを走行。
・「反EVキャンペーン」の急速充電気が少なすぎるからとの主張に対して、実施。
・経産省も含め、EV推進の会社、組織、個人が支援、一方では反EV推進の大企業も。
*2020年3月10日Electric Kart on Ice(新横浜にて)
◇◇◇ポストEVを考えるための必読書
(1)「人新世の『資本論』」  斎藤幸平著
(2)「未来への大分岐」  マルクス・ガブリエル著
(3)「ロスト欲望社会」  橋本努著
(4)ホモサピエンス全史(上)(下)」  ユヴァル・ノア・ハラリ著
*ホモサピエンスは100万年間はびこっていたネアンデルタール人をなぜ全滅(混血も)させえたか?
*ホモサピエンスは、「言語を生み出した」、「幻想ができるようになった」事が。
*その結果、貨幣を生み出し、利子を、そして欲望を膨らませた。
*ネアンデルタール人の100万年間に対し、ホモサピエンスは今のところ20−30万年。果たして、ホモサピエンスはネアンデルタール人ほど生存しうるか? 欲望の肥大化により、ホモサピエンスは全滅の方向に。
*即ち、自動車だけの話ではなく、EVだけの話でもない。その結果、残るのは三輪車ではなかろうか?
*そして、全自動運転は、成功しないと。
*小鳥の脳みそは小さくても、それでも巣立ちして、自由飛翔をする。101論議ではないのかもしれない。ホモサピエンスは、脳が大きかったネアンデルタール人が持っていなかった「何か」を持っているのかもしれない。//

Q&A:

Q1:移動の中にも、「移動」と「旅(時間を楽しむ)」の2種類があると思うが、どのように考えたらよいか?
A1:その通り、二つあると思う。移動しながら楽しむ部分もあり、分別はできないのでは。未開の狩猟民族では、一日3時間働けば5人を賄うことができ、残りの22時間は昼寝とお喋りに費やするとの事。ホモサピエンスは初期の段階こそ豊かであったと言えるのでは。近代になり、移動が速いのは儲けに繋がったが、環境等失ったものも多い。

Q2:数年前までは、EVは世界でも疑問であったが、今後の欧・米・新興国でのEVの流れは?
A2:<欧州>は、見切っており、EV化は決定している。日本のようなアンモニア、水素のような議論は、既に見切っている。
<米国>は、EVに前向きであり、動きが早い。1994年の加州でのEVS(EVシンポジウム)において、ゴア副大統領の名代で出席した上院議員は、「米国は、EVで自動車の復権を果たす」「EVはエネルギー問題」と話した。その2つが米国のEVの底流となっている。
<新興国/アジア>は、地産地消がキーワード。(1)例えば、ネパールで深刻な大気汚染の原因になっている「ツクツク」のEV化が図られ、結構増えている。「ツクツク」は、我々がイメージする自動車とはかけ離れているが、それが現地の自動車。(2)現在、パリでは時速30km制限となっている。30kmなら、現在の技術は不要に。これと同じことが、アジアでも起きるのでは。(3)30kmなら、電池は鉛で、エネルギーはソーラーで十分。世界は、アジアに学ぶ時代に・・・。

Q3:知的存在としての人類で、「知識」と「欲望」は異なるのでは?その辺りのお考えを教えて頂ければ。
A3:ここは悩んでいるところ。科学技術とは何か?「ホモサピエンス全史(上)(下)」  ユヴァル・ノア・ハラリ著を読むと、それは「幻想」と説明されている。科学技術の「全自動運転」が、小鳥に先行されている。ホモサピエンスは、幻想によって滅びるのかもしれない。 
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以上

文責:三嶋 明
posted by EVF セミナー at 16:00| セミナー紹介