講師:松浦 哲哉 様 株式会社DK-Power 代表取締役
聴講者数:47名
講師紹介:
・1991年ダイキン工業入社。
・以来、研究畑を歩み、近年はエネルギー関連の研究開発に従事。
・独自技術によるクリーンエネルギーの普及を目指し、株式会社DK-Power を設立。
・地下に眠る再生可能エネルギーを掘り起こし、地球環境と地域経済の活性化 に貢献。
講演概要
・従来ダイキンは空調機の省エネに努めてきたが、2050年のカーボンニュートラルを達成するには省エネだけでは限界があるため、そのコア技術であるモータ・インバータ技術を活用したマイクロ水力発電システムを開発した。創エネ技術であるこの発電システムの普及のためにDK-Power社を設立し、再生可能エネルギー事業を通してCO2排出削減に取り組んでいる。
・この発電システムを上水道施設の浄水場⇒配水池の間に設置することにより、今まで捨てていた圧力差(水の位置のエネルギー)を活用し電気に変換する。上水道施設では当然ゴミは除去されており、また近隣との水利権の問題などは無いため、従来の水力発電には有った大きな問題がクリアーできる。
・マイクロ水力発電システムには最大出力が27kWと75kWの2機種があり、有効落差と流量条件により複数の水車が選定できるようになっている。マイクロ水力発電システムは、浄水場⇒排水池の間に設置されている流量調整弁をバイパスする流路を新たに作り、この流路に上水を流す。発電システムに異常が発生したときには、元々の流量調整弁を復活させる。
・このマイクロ水力発電システムは、国の固定価格買取り制度(FIT)で「〜200kW、34円/kWh」の領域に該当するため比較的買取り価格は高く設定されており、かつ競合他社がいない。このため、従来は難しかった100kW以下での投資回収を可能にした。
・自治体の保有する水道施設に対し、DK-Power社が初期費用およびランニングコストを負担して発電設備を導入するため自治体の費用負担がないビジネスモデルを実現できる。また売電により得られる利益の一部を自治体に収益還元するため自治体は、費用負担なしに環境貢献できるので、自治体には大変喜んでもらえている。一方、DK-Power社はマイクロ水力発電所竣工と同時にリース会社へ売却してリースバックすることにより費用の平準化が図れるとともに、月々の売電によりキャッシュが枯渇することはない。
・DK-Power社設立後、2023年3月現在まで44ヶ所が稼働、契約済みを含めると51ヶ所にまで拡がっており、2025年度までに100ヶ所への導入を目指している。また発電量も順調に増加し、2023年1月実績で840,000kWh/月、住宅で3,230軒分相当の電力を生んでいる。
・今後は脱FITを目指して、従来のFIT売電や場内消費型のオンサイト型電力販売契約事業から、電力小売り事業者を通じて別需要地に販売するオフサイト型の電力販売事業を目指して事業を拡大して行きたい。
・日本では発電のための燃料費が年間数兆円海外に流出している。このお金を再生エネルギーを活用しやすい地方に還流し、地方を活性化して国土の強靭化を図り、日本の活力を生み出すのが最終目的である。
Q&A:
Q1:このシステムの基本的使用エネルギーは水の落差だが、末端の家庭などへの水道ではポンプで加圧して流しているのか?
A1:加圧している場合もあるが、基本的には山から落としている圧力でありこれが理想。ポンプ加圧の場合はこのシステムは適用できないが、余剰圧がある場合はこのシステムをあてはめられる。基本は余剰圧力の活用である。
Q2:モーターを含めたシステムは相当長持ちしそうだが、どのくらい寿命があるか?
A2:電気的な部分は10年程度で部品を交換するが、システムとしては40〜50年は持つ。100年持つ事例もある。
Q3:講演資料によると太陽光発電の稼働率は13%程度とあるが、これは夜間の発電がないからか?
A:その通り。夜間と雨の日のせい。
Q4:このシステムで発電した電気は地産地消なのか?
A4:その通り。近くの需要で使われる。しかし系統に流す場合はその分はどこで使われるか分からない。
Q5:超高層ビルでの水道の落差を発電に利用することは考えられないか?
A5:その話は沢山来るがこのシステムで必要な250㎥/hourの流量が得られない。もっと小さい100㎥/hourのシステムだと採算性が厳しくビジネスにならない。苦戦中だが、ビジネスに乗せられるやり方がひらめけば進められる。
Q6:このシステムは非常に汎用性があるので、水道システムが整っていれば必ず使えると考えると、発展途上国や無電化国で使えないか?
A6:将来的には夢として当発電システムや空調機と共にそのような国に持って行きたい。自分たちの電源としてそのまま使ってくれれば良いが、系統への繋ぐという話になるとつなぎの部分が日本と違うので新たな開発が必要とな
り、そこのところが難しい。海外からの問い合わせはかなり来ているが、無電化国に行けるかは分からない。東南アジアならいけるかもしれない。
Q7:奈良県の市長に知り合いがいるが今日のような話をPRするにはどうしたらよいか?
A7:奈良県からは結構話はある。大和郡山市の様に、県水から水を買っている市であれば出来ないことはない。
文責:小栗武治