
一般社団法人カーボンリサイクルファンド理事
聴講者数:50名
講演概要
1)一般社会法人カーボンリサイクルファンド(CRF)の概要 :
・組織としては5年前に21社でスタートした。今は法人、自治体、個人、学術など191団体が加盟。
・ビジョンとしてはカーボンリサイクルの社会実装及び民間がビジネスとしてCRに取り組む支援。
・事業内容としては主に研究助成・広報・吸収源活動として任意の寄付金などをいただいて、企業、学校などの研究活動に助成。
・CRの社会実装ワーキングとしては自治体の協力を得て、CO2の分離、回収、貯蔵、吸収源の検討など幅広く支援。
2)CO2の分離・回収技術について
・液体アミンに吸収させて分離回収する技術はすでに確立しているが、CO2を取り出すのにはエネルギーが多く必要である。将来的(2050)には他の技術を含めて回収コストを1000円/t-CO2以下にすることが目標。
・排出源が多岐に亘ること、さらに回収したCO2の利用方法により、回収技術との適応を検討しなければならない。以下が回収方法;
・化学吸収法:(アミン吸収)各社がいろいろな形ですでに行っている。
・物理吸収法: CO2を温度、圧力をかけて物理的に液体に吸収させる。
・固体吸収法:アミンを液体ではなく、多孔質材料に担持させてエネルギーロスを低減。
・膜分離法:CO2だけをうまく膜を透過させて他のガスと分離する方法
・クローズドIGCC:蒸気タービンで発生したCO2をまた上流工程に戻して効率化を図る方法で、同様の他社技術は米国等でかなり実用化されている。
3)DAC 大気中からの直接CO2回収(DAC:Direct Air Capture)
・場所に影響されず、回収可能 、ネガティブエミッションが可能。
・技術ははまだ過渡期で、エネルギーコストは高い。
・アイスランドでは地熱発電のエネルギーを利用して世界最大のDACプラントを稼働させている。
・カナダ、米国などでもそれぞれ、プラントを稼働させており、日本の商社などが提携している。
・国内でも各企業、大学などが実証実験などを開始している。
4)カーボンニュートラルとカーボンリサイクル
・CO2排出ゼロを目指すことはハードルが相当高く、循環炭素社会が必要。
・CRロードマップとしては分離、回収したCO2を化学品、合成燃料、鉱物などに再利用するための技術開発が必要で、水素の値段が高いのでさらなる研究開発、コスト削減などが必要。
・CO2とH2を合成して製造される合成燃料(e-Fuel)は既存設備が使え、航空燃料、舶用燃料として使える。電動化、水素化に比べてエネルギー密度が高く、期待ができる。
5)CCS(Carbon Capture and Storage) ―ネガティブエミッションの方策−
・日本で動きが加速している。2030年までには民間ベースでCCSをやっていく。2050年までに1.2億トンから2.4億トンを目指す。
・先進的CCS事業として民間が主導してやっていくことを、国も期待している。
・CO2バリューチェーンの構築。
・経産省はカーボンマネージメント課が担当することになった。カーボンニュートラル実現に必要な要素として、社会実装には多面的アプローチは不可欠である。政策支援、社会受容性、市場創出・活性化、産業間連携、国際連携などなどが重要。
6)技術由来炭素除去法(ネガティブエミッション)技術
・世界においてはCO2削減方法の国際ルール化が進行。測定、報告、検証(MRV)の方法論
・具体例としては鉱物化、土壌への固定。
・炭素の削減と除去は区分けされる方向。除去のほうが価値を高く評価されるであろう。
7)まとめ(カーボンリサイクルの意義)
・炭素は貴重な資源であり、資源の少ない日本だからこそ技術開発が必要。
・量は少なくてもすぐに実行可能であり、課題先進国日本ならではのエネルギーミックスを目指す。
・CO2からのエネルギー製造は環境問題、資源問題の同時解決が可能であり、世界のリーダーシップを取っていく必要がある。
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Q & A セッション
Q1: 日本でDACをする場合にはどこでどんな技術、どのように処理するのがいいのか?
A1:日本でやる場合に、可能であればCCSで埋めていくのが良いが、地元の理解が必要で、それが難しい場合には鉱物化。日本は深く掘れば玄武岩多いので、地中固定ができる。コンクリートと固めるのも半永久的で良いかもしれない。
Q2: 日揮にいた時代水素を作るプラントにいたが、出てきたCO2はコカ・コーラに渡していた。CO2を貯留した後、何かに使えるという事が見えてくるともっと利用をしようと考えるようになるのではないかと思うが、どのように考えるか。
A2:貯留(storage)といっているのは固定化のイメージが強く、簡単に取り出せないようにすべきで、使いやすい形は別の取り出し方がある。石油やガスのように永久的に地下に収まるイメージでストレージといっている。CO2利用するときにはそれに合わせた形態の貯蔵法があり、炭酸飲料として使う場合も、数か月は大気放出されずに固定されていると考える。
Q3: DACは何のためにあるのか?アミン吸収は昔からある。DACは熱力的に一番不利な形で、経済的にはペイしないのではないのか?
A3:DACは最後の手段かもしれない。この技術は潜水艦や宇宙船内の二酸化炭素濃度を下げるために必要な技術として始まった。CO2が1,000ppmとなると思考能力が落ちてくる。少し簡単に効率よくやれば単純な回収方法ではあるが、数が増えれば効果があるかもしれない。だが大量にやるのは難しいかもしれない。
Q4: 人間は石油を掘って使い放題でCO2を放出した結果がバランスを崩した結果だが、そのCO2はカーボンクレジットとして取引されるというが、どのような形となるか。
A4:政府は飴と鞭を使い分けるが、カーボン削減に対して、欧州では排出権取引が始まっているが、いずれ日本もその方向で動く。すでに再エネで補助金などを政府が出しているが、これはCO2を国民がCO2に対して1トン当たり2〜3万円金を払っていると理解すべき。今後、他でもCO2に値段がついて、実質的には取引されている。
CO2に値段(価値)がついていく。
Q5:CO2は資源になるといわれるが、どのようなものがあるのか。
A5:元総理の安倍さんが、ダボス会議でこのような言い方をした。化学業界のトップは、「CO2はカーボン源、いずれ化石資源がなくなり、日本に入ってこなくなる。化石資源がないと化学メーカーは仕事ができない」と口をそろえていっている。そのための将来を考えるとバイオマス、ゴミ、空気からカーボンを取り出すしかないので、化学メーカーは今からそのことを考えている。
以上 (文責:八谷)
講演資料:DACを含むCO2分離回収・利用技術(CCU)