講師:室山 哲也 様 日本科学技術ジャーナリスト会議会長 (元NHK解説主幹)
聴講者数:49名
講師紹介
・1976年NHK入局。
・「ウルトラアイ」などの科学番組ディレクター、「クローズアップ現代」「NHKスペシャル」のチーフプロデューサー、解説主幹を経て、2018年定年。
・科学技術、生命・脳科学、環境、宇宙工学などを中心に論説を行い、子供向け科学番組「科学大好き土曜塾」(教育テレビ)の塾長として科学教育にも尽力した。
・モンテカルロ国際映像祭金獅子賞・放送文化基金賞・上海国際映像祭撮影賞・科学技術映像祭科学技術長官賞・橋田壽賀子賞ほか多数受賞。
・日本科学技術ジャーナリスト会議会長。政府委員多数。
講演概要
・「人生100年時代」と言われる現代、100歳以上の人口は今後ますます増加していきます。日本では高齢化社会が問題視されていますが、実はそれほど悲観的になる必要はありません。高齢者は「考えが古く頑固」などと言われがちですが、別の見方をすれば、若い世代にはない豊かな人生経験という「老人力」を秘めています。
・人間の脳は三層構造になっています。進化の過程で、まず生存を司る本能領域が形成され、次に喜怒哀楽を司る感情領域、そして最後に知能を司る領域が発達しました。AI(人工知能)は、特にこの三層目の「知能領域」を模倣・拡張した技術です。近年では生成AIの登場により、大きな注目を集めています。生成AIは従来のようなプログラミング言語を使うのではなく、大規模言語モデルを活用して自然言語で操作できるのが最大の特徴です。これにより、誰でもAIを自在に扱える時代が到来しました。
・とはいえ、AIと人間の決定的な違いは「体験の有無」です。AIは自ら体験したわけではなく、言葉を紡いでいるに過ぎません。AIは与えられた質問には非常に高いレベルで回答することができますが、自ら発案をして問題提起することはできません。AIは質問があって初めて稼働します。そして、質問の質によって回答の質も決まるため、「質問力」が極めて重要になります。
・この点において、高齢者は豊かな人生経験と言語力を持っているため、若い世代よりも深い質問を投げかけることができます。ここに、AI時代において高齢者が価値を発揮し、いきいきと活躍できるチャンスがあるのです。今後、バーチャルリアリティ(VR)やテレイグジスタンス(遠隔存在技術)が進化し、現実の機械やロボットをリモート操作することが可能になっていきます。シニア世代が主体となり、ネット技術や人工知能、遠隔医療、サイボーグ技術などを駆使すれば、日本は「課題先進国」から「課題解決先進国」へと成長できるのではないでしょうか。そうなれば、日本の新たな成長戦略も見えてきます。
この講演は、我々シニアにとって勇気と希望を与えてくれる内容でした。
Q&A
Q 生成とAIとは何が違うのか?
A いろいろな言葉を取り込んでゼロから作り上げるので生成と言われるようになった。AIと言うとロボットを動かすAIや自動運転が含まれていて、生成AIはAIの中の一部。
Q 60才台のシニアへの求人というとガードマンやマンションの管理人等しかない。シニアが生成AIを活用して若い人と共同して社会で活躍できるためにはどうすればよいのか?
A シニアが若い人に対する方法をしっかり考えなければならない。昔のようにノミニケーションという訳にはいかなくなっている。説教をするのでなく若い人と絆を築く橋渡しを私も模索中。
Q 絆を作るためには伝えることができる人間にならなければならないが、深みのあることを伝えるには寡黙であることと多弁であることのどちらがよいのだろうか?
A 日本語は曖昧で独特な言語。時には主語述語がない場合もある。日本語を十分に理解出来るようなAIの技術を開発できれば日本の技術も世界に通用するものになると言える。
Q 弱いロボットの研究はその後どうなったのか?
A 後継者がいない。もったいないことだ。
Q フェイクニュースや戦争の手段としてのAIを考えると、人間がどうのようにしてAIと向き合っていくべきなのか?
A フェイクニュース対策としてはAI作であれば透かしを入れることを法文化する等の対策も必要になってくる。事実の確認を行いつつ情報を管理することが重要。その意味では小さい頃からの教育が重要。
Q AIに詳しい国会議員を教えてください。
A まだいるかもしれないが、自民党の平将明(たいら まさあき)氏や河野太郎氏などは気になる。
文責:桑原 敏行