2025年06月27日

EVFセミナー報告:テクノロジーを流用し、小型植物工場でそだてる”WASABI”を世界へ!

演題 : テクノロジーを流用し、小型植物工場でそだてる”WASABI”を世界へ!
講師 : 中村拓也様
  株式会社NEXTAGE 代表取締役
聴講者数: 42名

講師紹介

1994年、明治学院大学 国際学部卒。開発経済学・農業経済学を専攻。
1994年 千代田化工建設株式会社入社。
CT121排煙脱硫装置、LNG受入設備の技術営業を担当。
株式会社荏原製作所では半導体製造装置(CMP装置、真空ポンプ、排ガス処理装置)の海外営業推進、
台湾現地法人では営業責任者として役割を果たす。
数社のスタートアップの立ち上げや事業推進を経験し、2018年1月に株式会社NEXTAGEを創業。

講演概要

・従来自然環境の中で育てられていたワサビを、40フィートの断熱コンテナ―を使用しどこでも生育することができるようになった。
・ワサビは2005年を起点とすると2022年には生産高で根茎も葉柄も約60%減となっている。原因は異常気象、温暖化、農業従事者の高齢化が背景にあり、ワサビの生産量が年々減少してきている。
・一方、日本食ブーム、海外での需要増などによりワサビの需要は伸びている。ワサビを守りたい、世界に届けたいとの思いから株式会社NEXTAGEをスタートさせた。
NEXTAGE社は、東京都目黒区祐天寺2丁目13-4に本社を、支社を焼津に、C&Mセンターを横浜の鶴見に置いて活動している。
・ワサビの国内生産減に伴い海外製のワサビが輸入されているが、チューブワサビ原料の90%は輸入されたホースラディッシュで作られている。これにはワサビの葉柄が粉砕されて含まれている。
・日本固有種のワサビには「実生種」と「真妻種」があり、前者は水っぽくおそばなどに使われ、後者はお寿司などに使用されている。価格は前者が1〜2万円/kg、後者は3〜4万円/kgであり、NEXTAGE社では後者を栽培しようとしている。
・生ワサビに含まれる「アリルイソチアネート」という成分は様々な健康効果を持っており、米国のMIT、スタンフォード、ハーバード、などの大学でも研究が進められている。
・ワサビ栽培モジュールは40ftのコンテナーを使用し、年間1800株(90kg)の真妻わさびを露路栽培期間の半分の約1年で収穫することに成功している。このモジュールでは路地でワサビを育てる環境を室内で再現させており、現状はノウハウをベースとしたインストラクションとの組み合わせだが、将来的にはAIをフルに活用しているため、ワサビ栽培への専門知識は不要であり、誰でもわさび栽培が可能になっている。このコンテナー栽培では水を循環させて使用しているので大幅な節水ができる。
・ワサビの種子は発芽率が低いためワサビの苗は供給不足になっている。NEXTAGEでは大学の研究機関と連携し専用液の開発などを進めており、病気に強いワサビの苗を作り農家にも供給する予定。
・NEXTAGEでは、屋内で促成栽培を実現するわさびの栽培方法、及びわさびの栽培管理システムに関する特許や、栽培設備、支援システム、支援装置、支援プログラム、支援方法に関する詳細や、遠隔栽培技術に関連する取り組みに関する特許を出願している。グローバルな進出には特許が必要。
・当然ブラックボックス的な部分はあるが、栽培技術を提供し商業化に成功しているのはNEXTAGEのみであり、現在競合者はいない、もしくは技術参入障壁がとても高いので優位性を確保できる。
・屋外栽培の場合、気候害や虫害などにより葉柄は食べられないが、コンテナー栽培の場合は屋内栽培なので葉柄は新鮮でおいしい。年間で1,296kg以上のわさびの葉と茎を安定して収穫でき、 わさびの葉茎だけで300万円以上の収入を得ている。
・わさびの葉茎を使ったレシピは数多く開発されており、大阪のヒルトン最上級ブランドホテルではワサビの葉柄を入れたカクテルを提供しており、非常に人気が出ている。コンテナー栽培によりわさびの葉茎の安定供給が実現し、市場、ホテル、大手加工メーカーからの引き合いが加速している。
・日本のわさびマーケット市場は50億円と推計されており、医薬品や健康食品分野が今後のマーケットになりそう。世界のわさび需要は年間10,585t以上と推定されており、イタリアやフランスではワサビの葉柄や根茎を使いたがっているシェフが多くいる。
・欧州でのワサビ試食会にNEXTAGEのわさび栽培モジュールで生産した「真妻」と、他の4か所で生産して購入したワサビを食べ比べてもらったところ、参加者の85.7%以上が NEXTAGEのワサビの購入を検討すると回答した。今後コンテナーを世界各国において、現地の人たちにワサビを栽培してもらえる
ようにして行きたい。

Q&A

Q1 フランス料理にはワサビは合わないと思っていた。今後農業との連携を進めてはどうでしょうか?
A1 ありがとうございます。

Q2 何年くらいで投資回収ができそうですか?
A2 躯体が1個2000万円。根茎の売り上げが1800株/年→約300万円/年、葉柄1000s年→約400万円/年、電気代が120万円/年、葉柄の剪定工数が7..2人/年、等を考慮すると5〜6年で投資回収ができそう。

Q3 岐阜大学の山根先生のワサビに関する本によると、若者のワサビ離れ、農家の高齢化が進み、日本のワサビ産業はつぶれると書いてあるが、NEXTAGEができたので山根説は変わりそうではないか?
A3 そうだと良いと思っている。先生は三鷹の大沢にあるワサビの生態を研究しておられたようだ。

Q4 天然栽培の場合は水の中に天然の成分が含まれているので肥料などは必要ないか?
A4確かに湧水の中にはカルシューム等々のミネラルが入っている。コンテナの場合ではカリウム、リン、等々の必要な成分は与えている。

Q5 日本の天然水は軟水が多いが、欧州あたりでは硬水が多くいろいろな成分が入っていると聞いている。
A5日本でも硬水の地域はあり、水質調査をして適切に変えている。ワサビ農家は科学的にはわからなくても感覚的に肥料をやっていた。この辺りはリスペクトする。

Q6安曇野と伊豆のどちらがワサビ栽培には適しているのか?
A6伊豆の方が良いと言われているが、安曇野も素晴らしい。

Q7 特許を多数出されていると聞いているが、特許は20年で切れてしまうためノウハウを守るならコカ・コーラの様な経営にして特許は出さない方が得策ではないか?
A7議論は両方ある。営業秘匿の所は特許を出さないようにしており、その範囲外のところを特許申請している。

Q8 OEMにする戦略に変えたのはなぜでしょうか?
A8誰でもワサビが作れる環境にして、生産者を増やしたいから。

Q9 グラフで、だんだん葉が食べられなくなってきたのは何故でしょうか?
A9 最近では葉の活用価値が変わってきている。加工品などが作られるようになってきて、葉の価値が上がってきている。
文責:小栗武治

講演資料:小型植物工場で育てる”WASABI”を世界へ!




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