2025年07月24日

EVFセミナー報告:2050年カーボンニュートラルに向け、生まれ変わる川崎臨海部

演題 : 2050年カーボンニュートラルに向け、生まれ変わる川崎臨海部
講師 : 川崎哲弘様
川崎市臨海国際戦略本部成長戦略推進部カーボンニュートラル推進担当課長
聴講者数: 41名

講師紹介 
2001年4月 川崎市役所入庁
2020年4月 港湾局港湾振興部誘致振興課 担当係長
2022年4月 同 課長補佐
2023年4月 臨海部国際戦略本部成長戦略推進部 担当課長

講演概要:
川崎市は古くから近代工業が発展。製鉄所の高炉休止という変遷を乗り越え、CN実現という戦略の下、水素を活用して公害や環境問題へ対応し、民間と共同で近代工業都市として発展している。

1. 川崎市及び川崎臨海部の概況とポテンシャル
工業都市の歴史としては、1900〜1950年代に川崎、横浜にまたがる臨海部の埋立から京浜臨海部が形成され、1950〜1970年代に、鉄鋼、非鉄金属を中心とした企業が立地され、発電所建設、石油パイプラインとシーバースの整備により、石油コンビナートが形成された。1960〜1970年代には、高度成長期に工場からの排水、排煙により環境問題が深刻化したが、1980年代から環境問題の解決に取組み、環境問題は徐々に改善。
川崎市の温室効果ガスの排出量は2021年で2083万t-CO2と日本政令指定都市では第1位。

2. カーボンニュートラル以前の取組
川崎市臨海部では、LNG・天然ガスインフラが集積し、火力発電所があり、化学企業・素材産業が集積して、水素需要が旺盛となり、その供給の水素パイプラインネットワークが形成された。そして、国内最大級のプラスチックリサイクル拠点となった。

3. 川崎カーボンニュートラルコンビナート構想
2015年に「川崎水素戦略」を策定し、@水素の供給システム(民間企業)の構築、A多分野にわたる水素利用の拡大、B社会認知度向上の3つの基本戦略により推進、
2018年に官民協議会として、「臨海部ビジョン」を策定し、低炭素型インダストリーエリア構築、水素エネルギー利用推進、資産活用・投資促進など13のリーディングプロジェクトを推進。

4. 構想実現に向けた具体的取組
(1) 水素戦略
 『パイプラインを活用した水素のサプライチェーン(「水素需要ポテンシャル約2,300t/d等」)』の事業性調査を行い、官民6者(NEDO2事業者、空港関連企業2社、大田区、川崎市)による『羽田空港及び周辺地域における水素利用(約4〜6.6万トン水素相当)』の調査に基づき、事業を実現していく。
(2) 炭素循環戦略
@ 廃プラ等は国のサーキュラーエコノミーに係る取組等を活用。 
2022年4月に「かわさきプラスチック循環プロジェクト」を6者で立ち上げ。市民の行動を促す「回収拠点の環」とペットボトルの「マテリアルの環」、「ケミカルの環」のリサイクル技術 の3つの環(わ)で取組を推進。
市民、事業者、行政が協力して、PET以外にも様々なプラスチックの資源循環や回収拠点などの取組 を実践。
令和6年10月、炭素循環部会特別セミナー「Circular Economy Kawasaki」を開催、「Kawasaki Circular Design Park」(略称︓KCDP)の立ち上げ、
回収、選別、成形、製造メーカー等による業種横断の廃プラスチック循環実証を開始。
A 令和2024年9月26日付け太平洋セメント社・東洋埠頭社より川崎臨海コンビ ナート地区におけるCCS 事業検討の連携開始が発表、CCS 事業における液化二酸化炭素の港湾出荷について、東洋埠頭川崎支店の活用検討 を共同で進めている。
B 廃プラ等とCO2の双方の取組は、市場の構築(最終商品において、環境価値として許容し得るコスト増等)において、長期的には連携していくものとして、今後の取組を深めていく。
(3)エネルギー地域最適化戦略
エネルギー地域最適化では、主に個別調整とワーキンググループ(WG)での検討を進めている。直近では、(A)「使用するエネルギーを再生可能エネルギーや水素等に転換する」の取組への拡張性を考慮しつつ、(@)「エリア全体で省エネによるエネルギー消費量の一層の削減」の取組を企業間連携の更なる強化により 面的に進めている。
WGでは、エリアを限定し、企業間連携による省エネの追求。
個別調整においては、将来的な水素利用を見据えた設備導入等の個別の取組(いわゆる“水素ready”を 増やす取組)を進めている。

Q&A
Q1:海外水素を持ってきているとお聞きしましたが、海外でその水素を製造する時にCO2が
製造されるなら、そのCO2については川崎市のカーボンニュートラルの考えの中ではどのようにお考えになるのですか?(海外なので考えない?)一方、水の電気分解で作る水素はCO2を発生しないものです。川崎市ではこの方法での水素製造は検討中で、現状では海外水素の輸入を多く行っているとお聞きしましたが、川崎市ではどうお考えでしょうか?
A1:何故海外水素なのかと言うところからお話しますと、川崎臨海部の産業のカーボンニュートラ
ル化に必要な水素は42〜3万トンと申し上げましたが、あれを川崎臨海部エリアで作るというのは現実的ではないです。水素を作る方法として色々あって、水の電気分解もありますが、その電気をCO2をぽっぽと出して作った電気であっては意味がなく、再エネ由来の電気である必要がある。そして、再エネ由来の電気を川崎臨海部で作るとか、持ってくるというのができるのか言うと難しい。ということから必要な水素を獲得するには、川崎市の港湾の機能を使って外から持ってくるという有効だと考え、海外水素の利用を考えている。水素を作る方法として、水の電気分解の他に、過渡的な方法として化石資源から作る方法がある。この方法ではCO2が出るので、CCS(Carbon Capture Storage) などを使って回収する必要がある。これがブルー水素であり(CO2回収しない水素はグレー水素)、再エネ由来の電気を使って水の電気分解から作る水素がグリーン水素である。川崎市が海外から持ってくる水素はカーボンニュートラルなグリーン水素かブルー水素です。(水素を輸入するに当たって)国の支援が得られるサプライチェーンを作る(CO2をいっぱい出さない、ある基準以下の低炭素な水素を持ってくる)必要がある。しかし川崎市が海外まで関与できるかは難しい。川崎市ができる支援として、水素を作る地元自治体でのインフラを作るとか、水素を作る海外側の自治体間の関係性などを重要にするなどの取組を行い、(私もオーストラリアまで行ったりして、)目的に合致するようにしている。

Q2:今の取組だと水素を作って(カーボンニュートラルに繋げる)とのことですが、CO2を
排出することへのオフセット、クレジットに関して、臨海部なので例えばAOへの活用をして、CO2を減らして行くとかの取組みを川崎ではやられているのでしょうか?
A2:CO2を減らす、排出しないと言う排出条件をクリアするためには、そういう取り組みは
重要と思いますが、我々(川崎市)としてはコンビナートの機能としてカーボンニュートラル社会に適用すると考えるとそこは本流ではないのではないかと思います。
何故水素、水素と言っているかと言いますと、水素は水素じゃないといけないものにのみ使うべきだと思っています。水素を使えばカーボンニュートラルが実現する、水素はオールマイティなものと勘違いされる方がいるかと思いますが、水素はもともと電気で作っているので、本当は電気のまま使った方が良いと言うことがあります。電気を使って水素を作る時にロスが発生して、その水素を使って電気を作ると又ロスが発生するのはあまり意味がない。水素から電気を作るだけなら、電気のままで使うのが良いと考えます。何故水素、水素と言っているかと言うと、川崎臨海部の工場はボイラーなどで熱を使っていて、それを電気で作るとなると効率が悪い高い温度帯の熱なので、それを作るには何かを燃やした直接燃焼で作ることが必要で、となるとそれに合うのは水素になる、そこを化石資源を燃やしてしまうとCO2が出てしまう(ので、それではカーボンニュートラルにならなくなる)ということで、水素が適している。
又、日本全体の電力網を見ると再エネが主力になってくるのであるが、再エネは晴れている日中の発電量が多いが夜は発電しない等の波があり、その波の調整力として火力発電が一部必要であり、その火力発電の脱炭素化として水素を使うことを考えている。そのようなニッチな部分を川崎臨海部が担っていると考えている。日本全体のカーボンニュートラルに貢献する産業エリアとして取り組んでいる。

Q3:プラスチックゴミの分別に基づく資源回収の意義を日常生活で感じたり、エネファームで水を全部取り替えることに疑念を持ったりしていますが、プラスの方では「ペロブスカイトが急速に立ち上がってきている」とか、「小池百合子東京都知事が太陽光パネルを住宅の屋根全部に設置するように言っているけど、まだそこまでできていない」などの色々な脱炭素化の動きがあります。 もっと言えば、川崎市位の規模があれば、核融合(による脱炭素化されたエネルギー提供)もできるのではないかと思います。ここ7〜8年で一気に変わると思っています。是非、前向きな方向の技術開発を、お金を出せばできるようなことは是非やって欲しいと思いますが、如何でしょうか?
A3:プラスチックゴミの分別については川崎もやっています。回収したプラスチックで作っている
のは、パレットとかプランターであって、少し価値が低いものへのリサイクルであって、(カスケードと呼んでいる)が主流であって、後は燃料として使っている(サーマルリサイクル)。無駄ではないですが、本当の意味での循環にはなっていない。循環をなし得て行くには、技術的部分と社会全体の仕組みの両方に入って行かないといけない。
技術の部分では、川崎臨海部で担っていけるポテンシャルがあると思うので、そこに取組んで行きたいと思うし、社会全体の仕組みについては国に対して自治体としてこういうことが必要だと言うような提言をして行きたい。ということで活動をしている。
当然そう言った分別は必要で、一人一人の力が必要で、そういう人たちに対して、実際に(プラスチックの分別が)意味があることをちゃんとアピールしていかないといけない。分別をお願いしている行政の立場からその辺も頑張っていかないといけないと思っている。
ペロブスカイトを使った太陽光発電は非常に重要で、再エネをもっともっと頑張っていかないといけない時に、日本の国土を使って、地形が変えられない(というような制限がある)時に、ペロブスカイトを使って再エネを広げて行くのは大変重要です。
とは言え、再エネだけで日本の電力を賄うことはできなくて、火力発電(つまり回転から生み出される電気)も電力網全体の中では必要で、エネルギーミックスの中で、再エネは主力だが、
それをサポートするような火力発電も必要だし、ひょっとするとベースロードとして原子力発電も必要かもしれないと考えます。川崎はニッチな脱炭素な火力発電というところで、日本のカーボンニュートラルに貢献していくという役割が果たせるのではないかと考えている。
核融合については、カーボンニュートラル2050に行くためには今の技術の延長線では難しいと思われ、技術のイノベーションが必要と思っている。その中で、何がイノベーションに繋がるかと考えた時に、核融合と言った視点も重要と思っている。今足元の地道な省エネをやっていて、技術革新として何かが来るのを待つという視点も大事と考えている。

Q4:水素需要の42万トンの内、火力発電の部分はどれくらいですか?
A4:42万トンは発電用から熱源として使う部分から化学産業の工業用途で使う部分まで含んだ合計で、その熱とかには今都市ガスを使っている訳で、それを水素に転換した時の量が考えられている。需要のポテンシャルは川崎臨海部と東京横浜の臨海部を含めたものですが、対する供給の目途はまだ全然立っていない。今具体的に動いているプロジェクトが、液化水素の実証を行いましょう。2030年以降は海外から水素を持ってくるプロジェクトを立ち上げようとしています。そこで(発電用に)やれる量はまだ明確ではないですが、10万トンは行かない、数万トンだろうと思っています。新しいものを使うとか持ってくるという話になると、「にわとりが先か、卵が先か」問題があって、使う側は何時来るか分からないので、使うための機器を導入できない。持ってくる側は持って来ても使ってもらえる体制になっていないと言う問題があり、その問題を解決していくのが重要である。準備だけは進めておいて、来なくて使える機器を先行して導入しておくということも必要です。水素は既存のLNGとかより高いので、省エネをやってエネルギー力を減らしておいて、そこに対して水素を充てるというような取組も必要と考えている。今足元でできることをやりつつ、不確実性の高いことがどれ位やってくるのかについては、そこは粘り腰で対応していくのが今の時点だと思っています。 
商用の発電所だとプレーヤーも大きいので、例えば、ジェラ 社は大きな会社で自分で水素とかアンモニアを持ってくるような動きをしており、それを(外部に)言ってしまうと、(社会的な)影響も大きいので、(必ずしもオープンではなく、)我々もつかみ切れない部分がある。が、川崎市としても注視しているし、頻繁にコミュニケーションを取っている。
(「(川崎まで来ている)東京ガスが、(家庭でCO2を出す都市ガスの代わりに)水素でなく、e-メタンが提供するような話を聞きましたが、それは川崎市でも使うことになるのでしょうか?」という質問に対して)カーボンニュートラルに向けた道筋として、e-メタン(燃やしてもCO2排出のカウントにならない、CO2由来の都市ガス相当のメタン)が使えて、今の機器が使えるなら、何もしなくても良いとも考えられます。e-メタンが来て、何も変えなくてカーボンニュートラルが達成できるなら、対策は考える必要はないと思います。一方、そういう道もあるが、そうではなくて、水素に燃料転換しての道も将来像として考えています。e-メタンが使えるようになるのをずっと黙って待っていられるかという課題もあります。
e-メタンは海外で作る時に、炭素排出を国際間でどう扱うかの整理がついていない問題があるし、更に、e-メタンは天然ガスより若干熱量が違う(下がる)し、今までの機器がそのまま使えるかについても課題があると聞いています。
e-メタンもカーボンニュートラルに向けてすごく重要と考えていますが、川崎臨海部としては水素を軸として議論を進めています。

Q5:海(船)と空(羽田空港)のモビリティのエネルギーに関して川崎臨海部としての取組みはどのようなものがありますか?
A5:羽田空港(ビルディングなど)で使うエネルギー(電気と熱)に対して水素が良いと思っていますし、羽田空港側でもそういう検討をしていて、そこに水素を供給することを考えている。羽田空港側に敷地が十分にあれば、太陽光パネルを敷いて水素の製造が考えられるのですが、ないようで、それは難しいようです。空港なので、水素を大規模に使ったことがなく、使うことで何かあると問題なので、水素を使う難しさはあるようです。
船の関係は、港湾局が対応していて、アンモニアの話はしてなくて、バイオ燃料の実証を始めたと聞いています。アンモニアは、CNにとって重要なキーワードで、多くは石炭火力に混ぜて使われているが、川崎には石炭火力があまりないので、アンモニアを持ってくるという話はあまりない。アンモニアで持って来てクラッキングで水素を取り出すという考えもあり、それをやっているのがJERA社(東京電力と中部電力が設立したエネルギー会社)です。JERA社は石炭火力を一杯抱えているので、先ずアンモニアとして使う。将来的には水素を運ぶ手段として使うことも考えているのですが、石炭火力で使うのをターゲットにしているので、アンモニアとして持って来て水素生成に使うというのは考えていないのが現状です。

Q6:JFEは高炉を止めてしまった訳ですが、水素製鉄等も含め、今後はどのようなこれからポジティブな連携がありますか?
A6:JFEは扇島だけでも222ha、関連を含めると400haという土地があって、その利用転換が必要な訳で、高炉を止める話は、ハレーションが大きく、事前の相談はなく突然来たと私は理解しています。この土地の利用転換に当たって、JFEとして土地を簡単に売れるかと言うと難しくて、扇島は完全にJFE専用の島の状態で、中に公道すら走っておらず、JFEの私道を通ってでないと扇島の中に入ってこれないという状況でした(高速道路は上を走っていますが通過しているだけ)。
土地を転換して行くインフラを整えていく必要があり、それには市の協力が必要で、市と連携協定を結んで、一緒になって土地利用転換していくことになりました。市としては川崎市臨海部の発展に資するような新しい機能を埋め込むようなことをやって欲しいとして、土地利用転換を有意義なものにしようと協力し合う方向となり、その中で水素利用の話があり、その辺りがポジティブな話になっています。
これは、日本のこれから先、出てくる社会課題の解決に繋がるような土地利用転換をするというコンセプトになっていると思います。

講演資料:川崎カーボンニュートラルコンビナート構想について
posted by EVF セミナー at 16:00| セミナー紹介