演題:第7次エネルギー基本計画を読み解く
講師:橘川 武郎 様 国際大学 学長 EVF顧問
聴講者数: 48名
講師紹介
東京大学大学院経済学研究科 博士課程 単位取得退学 経済学博士
青山学院大学経営学部 助教授、東京大学社会科学研究所 教授、
一橋大学大学院商学研究科 教授、東京大学大学院イノベーション研究科 教授 を経て
2020年より、国際大学大学院 教授
2021年より、国際大学 副学長、東京大学・一橋大学 名誉教授、EVF顧問
2023年より、国際大学 学長 (現職)
講演概要:
・第7次エネルギー基本計画は、基本政策分科会委員16名中、1名だけが原子力反対派。CO2エネルギー消費の6割を占める熱の専門家がいないといった偏った委員構成の中で議論が進められた。
・閣議決定された2040年の電源構成・一次エネルギー構成は、複数のベースシナリオに加え、トランプ政権の誕生を踏まえたリスクシナリオもあり、民間の投資判断に支障をきたす内容となっている。
・リスクシナリオは、第6次計画と比較するとカーボンニュートラルが相当後退した内容となっているが、これが第7次計画の本命と捉えられ具体的な議論が始まっている。
・定性的には「次世代革新炉の開発」を大々的に書き込む等、原発回帰を打ち出した計画と報道されているが、定量的には、ベースシナリオで再エネ4〜5割:原子力2割と、再エネ主力電源化、原子力副次電源化が鮮明となっているのが実態。
・次世代革新炉は運転開始まで約20年の開発期間を要し、今から計画しても40年代後半と、第7次計画の目標40年と整合性がとれていない。1基の投資額は1〜2兆円といわれているが、既設炉の改修・運転延長に要する投資は1基当たり数百億円程度。電力自由化の中で電力料金面での競争力を失うため、次世代革新炉の投資に踏み切るのは容易でない。データセンター建設による消費電力増が、次世代革新炉の必要性の根拠となっているが、NTTのIOWN技術の進展で、40年代には電力消費量が低減トレンドとなる可能性も見通すと、40年以降も原子力は使い勝手の悪い電源であり続けるとみている。
・2023年2月に閣議決定された「GX実現に向けた基本方針」において、次世代革新炉への投資額は総額150兆円のうち1兆円と、ここでも原発をあてにしていないことが読みとれる。
・一方で、第7次エネ基には、「天然ガスは・・・カーボンニュートラル実現後も重要なエネルギー源である。」と、電力業界・都市ガス業界のこれまでの見通しを覆す「大転換」の記載があり、業界こぞってLNG火力発電の新増設計画を打ち出す天然ガスシフトが起こっている。
・カーボンニュートラルの旗は降ろしておらず、第7次エネ基の資料集に極端に低い電力排出係数(kg-CO2/kWh)が示されている。2040年、火力平均で、ベースシナリオ0.08-0.20、リスクシナリオ0.31と、現状の排出係数から考えると、ゼロエミ火力(水素・アンモニア・CCUS火力)の大量導入が必要となり、実現には極めて高水準のカーボンプライシングの想定が必要で、2万円/CO2トンもありうると専門家はみている。
・原子力発電は、カーボンフリー水素製造に活用することで、次世代燃料開発上のネックとなっていたグリーン水素のコスト下げを実現でき、「水素社会」の道を開く、新しい価値を提供することが可能となる。
・電力会社は、原発の再稼働が進むと経営が安定するため、天然ガスシフト、再エネの主力電源化、ゼロエミッション火力に経営資源を投入でき、グリーン水素の製造といった新しい価値の提供に目を向ける余裕も出てくる。
・再エネの主力電源化に向け、主力の太陽光は、課題となっていた発電コストがかなり下がってきている。洋上風力は、三菱商事の撤退等、発電コストの低減は見通せていないが、国防の観点もあってEEZ内での浮体式設置計画が進められている。
Q&A
Q1:基本計画の中で、自給率向上の議論はあったか? 電力が余る国を目指すことにベクトルを会わすべきと考えるがどうか?
A1:世界的な異常気象の発生で、温暖化対策が必要との共通認識は変わらず、アメリカが後退しても世界的には進んでいく。トランプの政策は選挙を意識したもので、米国内の石油会社にメリットがある水素・アンモニア・CCUSの政策は転換していない。
Q2:バイオマス発電について、例えば非食用のポンダミアを原料とすることでデメリットを抑えられると考えるがいかがか?
A2:大いに結構なことと思うが、原料が少なく大きな電力源とはならない。また国内で生産できる非食植物原料は多くはなく残念な状況。
Q3:第7次計画の中で、一番の着目点は何か。
A3:国民の目線から、計画に書かれたことの何を切り口として使っていくか、ということ。例えば、川崎市で火力発電の設置条件として計画で示された排出係数達成を義務化すれば、JERAのガス火力の水素シフトが一気に進む可能性もある。切り口を見つけ取組促進させていくことが肝要。
A4:原子力発電による水素製造の課題、実装までの時間軸は?
Q4:既に技術が確立している水の電気分解炉を既存の原発軽水炉敷地内で設置すれば、すぐにでもできる。
A5:2040年、2050年を見据えると、洋上風力をもう一度本命として見据えることはできないか?
Q5:浮体式について重点地域の選定が始められており、国は巻き返しを図ろうとしている。ただ、三菱商事と競合した事業主体の経営が相当傷んでおり、浮体式に強い戸田建設やパワーエックスといった新たな事業主体で進められていくのではないか。
講演資料:第7次エネルギー基本計画を読み解く
2025年08月28日
EVFセミナー報告:第7次エネルギー基本計画を読み解く
posted by EVF セミナー at 17:00| セミナー紹介