2025年10月24日

EVFセミナー報告:電動化に伴う自動車開発の変革と日本の自動車業界の課題

演題 : 電動化に伴う自動車開発の変革と日本の自動車業界の課題
講師 : 矢島 和男様
(ブルースカイテクノロジー株式会社 代表取締役社長)
聴講者数: 46名

講師紹介
1990年:東北大学大学院工学研究科 材料化学専攻修士課程修了
同年:日産自動車入社
総合研究所、材料技術部、技術企画部、グローバルマーケティング部、インフィニティ車の車両開発主管(CVE)
電池設計部部長(日産リーフ向けリチウムイオン電池開発)
EV/HEV技術開発本部本部長(二代目リーフ及びe-POWER開発)
2018年:ブルースカイテクノロジー(株)創業

講演概要:
冒頭エンジニア集団である同社の事業は机上調査にとどまらず中欧米の実車を試乗・分解・解析することでハードウエアの設計・生産仕様とソフトウエアとの関係性を理解、それを各企業の若手中堅向けリスキリング教育に用いるなど現物基軸である旨紹介があった。次に日本車メーカが世界市場では悲観的であることに言及、例えば全車種の世界占有率は最近6年で全需九千万台/30%から26%までコンスタントに減少中だが、中欧米のEV+PHEV販売台数は同期間に二百万台から千百万台に増加し占有率も20~30%に大幅増加、にも関わらず日本は3%。この傾向が続けば、エンジン車主体の日本自動車産業が危ういというリスクが示された。その要因として消費者の認識ズレもあるが報道の偏りが助長しており政府も動力源についてはHEVまで広げたマルチパスウエイ方針を掲げている。電動化技術開発については、エンジン車のレガシーに引きずられる日本車メーカに比べ身軽な後発であるテスラや中国車は「開発・生産・販売・アフターサービス」に加え「顧客体験・リサイクル・LCA」など商品寿命全体を対象とした事業変革を行っており既に大きな差がある。例えばテスラの場合、低価格車60kWh容量を購入した顧客は使用過程で最大容量90kWhに変更可など旧来あり得なかった車両の基本機能までOTA※対応し、顧客体験を通じ進化する開発に変化。さらに車体構造を大型一体成型鋳物(ギガキャスト)とし組立工程の簡素化・省時間化による大幅コストダウンを得てエンジンルーム前提の設計基準は不要としている。中国企業もテスラ仕様に半年で追いつくなどリバースエンジニアリング速度は別次元ともいえる。人員体制も開発だけでも10万人を超え昼夜3交代勤務など俄には信じがたい状況。電池以外でもモータ・インバータ・減速機の一体組立方式(3in1)、居室・荷室空間を生むための角巻線によるモータ線密度向上、SiCを用いたインバータ高電圧・細線化、エアコン/強電部品/電池等の加温・冷却相殺式統合熱マネージメントなどいずれもサプライチェーンを巻き込んでの車両最適化開発を迅速実施。一方【電池発火事故累積百万台超え0(日産EV)=車両骨格を作るトップ技術保持】、従って【数千万台分の世界市場データをOTA統合した講師提唱のAI Defined Vehicle(次世代SDV)を各企業相互補完で協調し早期市場投入】すれば、【車の楽しさ+自動運転(事故0化)+国産再エネ低価格化促進+電動部品再利用によるレアアース輸入リスク回避+蓄電電力供給による災害靭性強化】など価値あるプラットフォームに発展。これが次世代に繋ぐ厳しくはあるが希望ある道筋と感じた。その誕生を講師がリードしたe-POWERは日本市場で高評価を得る車両最適化技術でありその先進思想を責任者から直接伺えたことは誠に幸運であった。
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Q&A
Q1:半固体電池(モバイル型)は1.5倍の容量があると聞くがその位置づけは?
A1:電池活物質と半固体電解質の間には界面がある。半固体電池は、容量は増えるがハイレート(高速充放電)ではない。つまり自動車にとっては高速合流出力や急速充電の問題がある。一方で穏やかに、長時間使うのには向いている。例えば災害用電池。

Q2:開発の仕方に最近のアメーバ型(海外)と従来のV型(日本)があると紹介があった。アメーバ型はサプライヤーと早い段階から協力するためボトルネックを早期発見できるがV型は時間をかけて課題を細分化した後に発見するため時間がかかるのではないか?
A2:従来は、摺合せ方式と言われてきた。組み合わせではない。例えばパソコンは、同じサイズの箱の中に色々な標準部品が組み合わせて入ってる。しかしすり合わせ型のトヨタエンジンを日産車に乗せるわけにはいかない。アメーバ型開発は、ある程度組合せ型で領域とルールを決めて(考え方の枠組み)サプライヤーに任せる。しかし全体の仕切りは完成車メーカが行う。これはスマホ開発と同じであり開発期間は短くなる。従来の開発が染み付いていると、何もかも把握していないと心もとないと感じる。
過去EVになると水平分業が進むと言われたが、BYDやテスラはウルトラ垂直統合である。シャオミやファーウェイはその先を言っているようにも感じる。しかし、車のしっかりした部分があるのは今までのやり方の強みであり、アメーバ型は市場において抜けも散見される。その点で、日本は新旧両立させるのがよい。

Q3:自動車用ディスク・ドラムブレーキの鋳物部品の仕事を従来型部品メーカと昨年までしていた。その時に中国メーカからタイとインドに新部品を供給するのに納期4ヶ月と要求された。従来は 2万点の部品に対し生産試作や工場試作に時間を取ってきた。質問は、中国メーカはPL(製品安全)まで考えているのか? また日本のTier1が変えられる点はどこか?
A3:良し悪しはあるが市場問題は起きてしまってからなおす。特に中国は早く直す。日本はしっかり評価してから市場に出す。そのために時間がかかる。変えられる点は、まずは相手のやり方を理解すること。例えば、中国メーカ要求に納期2年と答え笑われたサプライヤーがあると最近聞いた。相手の要求を理解しないことには仕事は始まらない。ワークライフバランスもあるが、中国の働く時間は非常に長い。

Q4:我々、現役時代は企業が危うくなるので北米のPLを非常に心配しそこを抑えていた。中国は北米PLにどう取り組んでいるのか?そもそも米国に輸出しているのか?
A4:北米市場には出していないしそのレベルではない(出せばPLや集団訴訟になる)。一方で最近ISO 26262(機能安全)などの基準が出てきたので変化が起きるのではないか。また、テスラについては自動運転で事故も起こしているので確信は持てないが、宇宙開発を行っているので信頼性などよくわかっていると思う。この先は、厳しいがロビーイング活動が必要になるのではないだろうか。

Q5:環境問題と医学の関係に興味がある。例えば、観光バスのディーゼル排ガスによって日光街道の杉並木が枯れ近くの小学校に花粉症が発生し電気自動車化が議論されている。この点で大型車の電気自動車化についてはどう考えるか?
A5:路線バスの電動化は、中国(深圳や上海)はもう既に100%。難しいのは長距離トラックおよび高速バス。そのためエンジン車はある程度残るのが現実的ではないか。排ガスに関しては、都市内で集中して使わない長距離車は違う。さらに都市間走行のため一定速で走る、ストップ&ゴーや冷間起動も少なく排ガス対策も易しくエンジン車の方が使いやすい。 FCV車も定まったルートに水素ステーションを設置できるので良いのではないか。

Q6:日本だけ特異にEVが売れない理由は?また、どうしたら良くなるのか?
A6:EVとエンジン車は違うという認識を持つ必要があるのではないか? 今は、EVはガソリン車基準に合わせようとしている。航続距離2000kmでも良いのではないか。長時間でも、家で充電できればよいのではないか。ある女性顧客がEVを非常に気に入ってくれたがその理由はガソリンスタンドに行かないこと、なぜなら「セルフが怖い」それならば「入れてもらえば」と言うと「知らないおじさんと話すのが嫌だ」と

Q7:日本のEVが普及しなかったのは経産省がその気にならなかったのではないか。確かに補助金はあるが、もっと本気度が必要なのではないだろうか?
A7:経産省は現在マルチパスウエイ戦略をとっている。つまり、EV、PHEV、HEV、FCVバイオ支援なので結果的に、EVの影響が薄まっていると思う。

posted by EVF セミナー at 16:00| セミナー紹介