2025年11月28日

EVFセミナー報告:CHAdeMOは世界標準となれるか?

演題:CHAdeMOは世界標準となれるか?
講師:姉川 尚史 様
 CHAdeMO協議会会長、e-Mobility Power 会長
聴講者数:46名

講師紹介
1983年東京電力入社福島第一原子力発電所に勤務
2002年技術開発研究所にてEVおよび急速充電器の開発
2010年急速充電普及のためCHAdeMO協議会を立ち上げ
2011年福島第一原子力発電所の事故を受け原子力部門に復帰し事故後の対応に従事
2014年常務取締役原子力立地本部長
2018年経営技術戦略研究所長としてEVや再生可能エネルギー開発を加速
2019年CHAdeMO協議会会長、e-Mobility Power会長
2024年東京電力退職

講演概要:
・日本発の急速充電規格であるチャデモ(CHAdeMO)は特定の自動車会社に有利になるものではなく、お相撲の土俵の様なもの。
・チャデモのオリジナル特許では、充電の際の事故を防ぐために、車両側のバッテリー状態に基づく充電命令信号を車両から充電器側が受け取り、安全に充電を制御するという内容で、特許は無償開放されている。米国充電規格CCS1(Combined Charging System1)、欧州CCS2(Combined Charging System2)、テスラ社もチャデモの通信方式を使っている。
・充電コネクター形状はチャデモ(絶縁性能が高いがサイズが大きい)、CCS(小型)で異なる。欧米規格のCCSの通信方式は、チャデモが採用しているCAN方式(2線式作動通信方式)に対して、ノイズの影響を受けやすい。チャデモは充電成功率が99%と高い。

1. USTRからの唐突な因縁
USTR(米国通商代表)は4月、日本政府がチャデモを標準とする動きを、外資系自動車メーカーの日本進出を阻む「非関税障壁」として指摘。チャデモは欧米を含む世界約100カ国で導入されている国際的な規格で対立するものではなく、信頼性や安全性、互換性で実績があると反証した。

2. 歴史から学ぶ
-2001年 フォードが加州でGMが使用していた誘導方式の充電規格の変更を働きかけて成功、GMは市場から退場。接触式充電規格で勝者となったフォード車は、ほとんど売れず。個社のための充電規格の変更がEVを殺してしまった。
-06年 急速充電器と急速充電可能なEV開発をスバルと共同。
-2010年 CHAdeMO協議会設立、世界に展開。急速充電インフラは中立の立場の企業、例えば電力、ガス、石油会社などが推進すべき
-10年 起業まもないテスラ社を訪問、急速充電器の必要性を説明、その後のNACS(North America Charging Standard)開発に繋がる
-10年 東電がチャデモをカリフォルニア州の電力会社に貸与し設置
-14年 テスラ社の支援要請を受け、特例としてチャデモでも充電可能となるテスラ社設計の変換用アダプタの使用を許可した。
-14年 ディーゼルゲート事件で欧州はEV化に舵を切る。欧州は政策としてチャデモを排除、ドイツメーカの意向により無理な設計のCCS2を規格化。米国はディーゼルゲート事件でのVWの罰金3000億円、CCS1を大量に設置するために費やした。
-18年 中国側からチャデモと中国の規格を統一する提案(超急速充電規格ChaoJi)。チャデモとはCAN通信を採用した兄弟規格。
-23年 チャデモ会員は世界45カ国、会員数518に拡大している。チャデモ充電器は100ヵ国 56,000基(北米1万 欧州3万 アジア0.5万 日本0.8万豪州 0.1万)。
・航続距離の競争はEVの普及を妨げている。蓄電池の価格は15年前比べ100分の1と安くなり、その分電池積載量を増加させた結果ユーザは高いEVを購入。急速充電器が必要と考えたのは、利便性(航続距離)を損なわない範囲で電池積載量を過剰に増やさないため。
・充電コネクターのサイズ
欧州のCCSコネクターはガソリン車代替のEVを前提とし充電孔のサイズを変えずに小型としたため絶縁に対する配慮が不足している。

3.CHAdeMOの高い充電成功率99%の背景にあるもの
-技術仕様書の丁寧な改訂と認証プロセスで優れた互換性を実現
-世界の認定機関と提携して、認証プロセスを確立

4.CHAdeMOが世界標準になれば日本の自動車会社に有利になるかとの問いかけに対して
・残念ながら、特に日本メーカーだけに有利なことはない。
・とはいえ最優先事項である安全で、信頼でき充電成功率が高い充電方式である点については誰にとっても有
・それでも、日本メーカーを応援する理由は、日本人が大谷選手を応援するようなもの。実際は、日本メーカーは多くを海外で生産し雇用も納税も現地であるため、日本への経済効果を期待して応援している訳ではない。 

Q&A:
Q1: 普及のために特許化せず無償開放したが、今想うに特許化すれば良かったとコメントされましたが真意は?QRコードは無償開放したが海賊版に悩まされたと聞きましたので
A1:特許料を得るのが目的ではなく、CHAdeMO仕様に合致しなければ使用許諾しないようにできたと思う。

Q2: EV充電器の開発で、コネクターの形状、電圧の違い、車とのコミュニケーションで難しかったのはなんでしたか?
A2:制作において難しいことはなかった。難しかったのはメンツでした。CANはドイツのボッシュ社によって仕様が公開され、後に国際標準化された通信プロトコルです。CANはほぼすべての自動車で採用されているのでそれを使用するのに何ら問題がないと話したら、車のスタンダードはドイツかデトロイトが決めるので、CHAdeMO が規格まで考えるのは生意気だとの話しがあった。コネクターはアメリカ、ヨーロッパ、中国それぞれでよいのではないか。コネクターは新品の時はよいが、劣化した時の保証は難しい。

Q3: CHAdeMOは全固体電池の様な新しい電池にも対応できますか?
A3:(車両からの充電命令信号である)電流と電圧がわかればどんな電池にも対応できます。

Q4:今後250kWクラスの急速充電が実用化された場合、EVへの充電は系統(電圧)に影響ありますか?
A4:350kWクラスが計画されており、系統(電圧)に影響があります。EV所有者の意識改革が必要です。積載バーテリーが増えていますが、(車両重量増加により電費)効率が悪くなっています。エコの視点からも、電力供給としては家の夜間電力を利用し時間をかけて充電する。EVの蓄電池容量は30kWhから50kWhもあれば充分です。例えば、東名高速で東京−名古屋間を蓄電池容量大きいEVで走行し、途中の岡崎インターで多くの車が給電すると、今の送電容量では足らず、中電がインフラに莫大なお金を投入しなければならなくなります。

Q5:PLC通信での充電成功率が低いのは何ですか?
A5:クレジットカードリーダーの破損、スマホの感度が悪い。インフラサービスが悪い。メンテナンス悪い。などが考えられます。

Q6: CHAdeMOの今後の展開にあたっての困りごとは?
A6: 日本の自動車メーカーのEVに対する消極姿勢です。

講演資料:CHAdeMOは世界標準になれるか?

(文責:立花 賢一) 


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