演題 : 電動化に伴う自動車開発の変革と日本の自動車業界の課題
講師 : 矢島 和男様(ブルースカイテクノロジー株式会社 代表取締役社長)
聴講者数: 46名
講師紹介
1990年:東北大学大学院工学研究科 材料化学専攻修士課程修了
同年:日産自動車入社
総合研究所、材料技術部、技術企画部、グローバルマーケティング部、インフィニティ車の車両開発主管(CVE)
電池設計部部長(日産リーフ向けリチウムイオン電池開発)
EV/HEV技術開発本部本部長(二代目リーフ及びe-POWER開発)
2018年:ブルースカイテクノロジー(株)創業
講演概要:
冒頭エンジニア集団である同社の事業は机上調査にとどまらず中欧米の実車を試乗・分解・解析することでハードウエアの設計・生産仕様とソフトウエアとの関係性を理解、それを各企業の若手中堅向けリスキリング教育に用いるなど現物基軸である旨紹介があった。次に日本車メーカが世界市場では悲観的であることに言及、例えば全車種の世界占有率は最近6年で全需九千万台/30%から26%までコンスタントに減少中だが、中欧米のEV+PHEV販売台数は同期間に二百万台から千百万台に増加し占有率も20~30%に大幅増加、にも関わらず日本は3%。この傾向が続けば、エンジン車主体の日本自動車産業が危ういというリスクが示された。その要因として消費者の認識ズレもあるが報道の偏りが助長しており政府も動力源についてはHEVまで広げたマルチパスウエイ方針を掲げている。電動化技術開発については、エンジン車のレガシーに引きずられる日本車メーカに比べ身軽な後発であるテスラや中国車は「開発・生産・販売・アフターサービス」に加え「顧客体験・リサイクル・LCA」など商品寿命全体を対象とした事業変革を行っており既に大きな差がある。例えばテスラの場合、低価格車60kWh容量を購入した顧客は使用過程で最大容量90kWhに変更可など旧来あり得なかった車両の基本機能までOTA※対応し、顧客体験を通じ進化する開発に変化。さらに車体構造を大型一体成型鋳物(ギガキャスト)とし組立工程の簡素化・省時間化による大幅コストダウンを得てエンジンルーム前提の設計基準は不要としている。中国企業もテスラ仕様に半年で追いつくなどリバースエンジニアリング速度は別次元ともいえる。人員体制も開発だけでも10万人を超え昼夜3交代勤務など俄には信じがたい状況。電池以外でもモータ・インバータ・減速機の一体組立方式(3in1)、居室・荷室空間を生むための角巻線によるモータ線密度向上、SiCを用いたインバータ高電圧・細線化、エアコン/強電部品/電池等の加温・冷却相殺式統合熱マネージメントなどいずれもサプライチェーンを巻き込んでの車両最適化開発を迅速実施。一方【電池発火事故累積百万台超え0(日産EV)=車両骨格を作るトップ技術保持】、従って【数千万台分の世界市場データをOTA統合した講師提唱のAI Defined Vehicle(次世代SDV)を各企業相互補完で協調し早期市場投入】すれば、【車の楽しさ+自動運転(事故0化)+国産再エネ低価格化促進+電動部品再利用によるレアアース輸入リスク回避+蓄電電力供給による災害靭性強化】など価値あるプラットフォームに発展。これが次世代に繋ぐ厳しくはあるが希望ある道筋と感じた。その誕生を講師がリードしたe-POWERは日本市場で高評価を得る車両最適化技術でありその先進思想を責任者から直接伺えたことは誠に幸運であった。
※On The Air 即時双方向でサーバと常時通信
Q&A
Q1:半固体電池(モバイル型)は1.5倍の容量があると聞くがその位置づけは?
A1:電池活物質と半固体電解質の間には界面がある。半固体電池は、容量は増えるがハイレート(高速充放電)ではない。つまり自動車にとっては高速合流出力や急速充電の問題がある。一方で穏やかに、長時間使うのには向いている。例えば災害用電池。
Q2:開発の仕方に最近のアメーバ型(海外)と従来のV型(日本)があると紹介があった。アメーバ型はサプライヤーと早い段階から協力するためボトルネックを早期発見できるがV型は時間をかけて課題を細分化した後に発見するため時間がかかるのではないか?
A2:従来は、摺合せ方式と言われてきた。組み合わせではない。例えばパソコンは、同じサイズの箱の中に色々な標準部品が組み合わせて入ってる。しかしすり合わせ型のトヨタエンジンを日産車に乗せるわけにはいかない。アメーバ型開発は、ある程度組合せ型で領域とルールを決めて(考え方の枠組み)サプライヤーに任せる。しかし全体の仕切りは完成車メーカが行う。これはスマホ開発と同じであり開発期間は短くなる。従来の開発が染み付いていると、何もかも把握していないと心もとないと感じる。
過去EVになると水平分業が進むと言われたが、BYDやテスラはウルトラ垂直統合である。シャオミやファーウェイはその先を言っているようにも感じる。しかし、車のしっかりした部分があるのは今までのやり方の強みであり、アメーバ型は市場において抜けも散見される。その点で、日本は新旧両立させるのがよい。
Q3:自動車用ディスク・ドラムブレーキの鋳物部品の仕事を従来型部品メーカと昨年までしていた。その時に中国メーカからタイとインドに新部品を供給するのに納期4ヶ月と要求された。従来は 2万点の部品に対し生産試作や工場試作に時間を取ってきた。質問は、中国メーカはPL(製品安全)まで考えているのか? また日本のTier1が変えられる点はどこか?
A3:良し悪しはあるが市場問題は起きてしまってからなおす。特に中国は早く直す。日本はしっかり評価してから市場に出す。そのために時間がかかる。変えられる点は、まずは相手のやり方を理解すること。例えば、中国メーカ要求に納期2年と答え笑われたサプライヤーがあると最近聞いた。相手の要求を理解しないことには仕事は始まらない。ワークライフバランスもあるが、中国の働く時間は非常に長い。
Q4:我々、現役時代は企業が危うくなるので北米のPLを非常に心配しそこを抑えていた。中国は北米PLにどう取り組んでいるのか?そもそも米国に輸出しているのか?
A4:北米市場には出していないしそのレベルではない(出せばPLや集団訴訟になる)。一方で最近ISO 26262(機能安全)などの基準が出てきたので変化が起きるのではないか。また、テスラについては自動運転で事故も起こしているので確信は持てないが、宇宙開発を行っているので信頼性などよくわかっていると思う。この先は、厳しいがロビーイング活動が必要になるのではないだろうか。
Q5:環境問題と医学の関係に興味がある。例えば、観光バスのディーゼル排ガスによって日光街道の杉並木が枯れ近くの小学校に花粉症が発生し電気自動車化が議論されている。この点で大型車の電気自動車化についてはどう考えるか?
A5:路線バスの電動化は、中国(深圳や上海)はもう既に100%。難しいのは長距離トラックおよび高速バス。そのためエンジン車はある程度残るのが現実的ではないか。排ガスに関しては、都市内で集中して使わない長距離車は違う。さらに都市間走行のため一定速で走る、ストップ&ゴーや冷間起動も少なく排ガス対策も易しくエンジン車の方が使いやすい。 FCV車も定まったルートに水素ステーションを設置できるので良いのではないか。
Q6:日本だけ特異にEVが売れない理由は?また、どうしたら良くなるのか?
A6:EVとエンジン車は違うという認識を持つ必要があるのではないか? 今は、EVはガソリン車基準に合わせようとしている。航続距離2000kmでも良いのではないか。長時間でも、家で充電できればよいのではないか。ある女性顧客がEVを非常に気に入ってくれたがその理由はガソリンスタンドに行かないこと、なぜなら「セルフが怖い」それならば「入れてもらえば」と言うと「知らないおじさんと話すのが嫌だ」と
Q7:日本のEVが普及しなかったのは経産省がその気にならなかったのではないか。確かに補助金はあるが、もっと本気度が必要なのではないだろうか?
A7:経産省は現在マルチパスウエイ戦略をとっている。つまり、EV、PHEV、HEV、FCVバイオ支援なので結果的に、EVの影響が薄まっていると思う。
2025年10月24日
EVFセミナー報告:電動化に伴う自動車開発の変革と日本の自動車業界の課題
posted by EVF セミナー at 16:00| セミナー紹介
2025年08月28日
EVFセミナー報告:第7次エネルギー基本計画を読み解く
演題:第7次エネルギー基本計画を読み解く
講師:橘川 武郎 様 国際大学 学長 EVF顧問
聴講者数: 48名
講師紹介
東京大学大学院経済学研究科 博士課程 単位取得退学 経済学博士
青山学院大学経営学部 助教授、東京大学社会科学研究所 教授、
一橋大学大学院商学研究科 教授、東京大学大学院イノベーション研究科 教授 を経て
2020年より、国際大学大学院 教授
2021年より、国際大学 副学長、東京大学・一橋大学 名誉教授、EVF顧問
2023年より、国際大学 学長 (現職)
講演概要:
・第7次エネルギー基本計画は、基本政策分科会委員16名中、1名だけが原子力反対派。CO2エネルギー消費の6割を占める熱の専門家がいないといった偏った委員構成の中で議論が進められた。
・閣議決定された2040年の電源構成・一次エネルギー構成は、複数のベースシナリオに加え、トランプ政権の誕生を踏まえたリスクシナリオもあり、民間の投資判断に支障をきたす内容となっている。
・リスクシナリオは、第6次計画と比較するとカーボンニュートラルが相当後退した内容となっているが、これが第7次計画の本命と捉えられ具体的な議論が始まっている。
・定性的には「次世代革新炉の開発」を大々的に書き込む等、原発回帰を打ち出した計画と報道されているが、定量的には、ベースシナリオで再エネ4〜5割:原子力2割と、再エネ主力電源化、原子力副次電源化が鮮明となっているのが実態。
・次世代革新炉は運転開始まで約20年の開発期間を要し、今から計画しても40年代後半と、第7次計画の目標40年と整合性がとれていない。1基の投資額は1〜2兆円といわれているが、既設炉の改修・運転延長に要する投資は1基当たり数百億円程度。電力自由化の中で電力料金面での競争力を失うため、次世代革新炉の投資に踏み切るのは容易でない。データセンター建設による消費電力増が、次世代革新炉の必要性の根拠となっているが、NTTのIOWN技術の進展で、40年代には電力消費量が低減トレンドとなる可能性も見通すと、40年以降も原子力は使い勝手の悪い電源であり続けるとみている。
・2023年2月に閣議決定された「GX実現に向けた基本方針」において、次世代革新炉への投資額は総額150兆円のうち1兆円と、ここでも原発をあてにしていないことが読みとれる。
・一方で、第7次エネ基には、「天然ガスは・・・カーボンニュートラル実現後も重要なエネルギー源である。」と、電力業界・都市ガス業界のこれまでの見通しを覆す「大転換」の記載があり、業界こぞってLNG火力発電の新増設計画を打ち出す天然ガスシフトが起こっている。
・カーボンニュートラルの旗は降ろしておらず、第7次エネ基の資料集に極端に低い電力排出係数(kg-CO2/kWh)が示されている。2040年、火力平均で、ベースシナリオ0.08-0.20、リスクシナリオ0.31と、現状の排出係数から考えると、ゼロエミ火力(水素・アンモニア・CCUS火力)の大量導入が必要となり、実現には極めて高水準のカーボンプライシングの想定が必要で、2万円/CO2トンもありうると専門家はみている。
・原子力発電は、カーボンフリー水素製造に活用することで、次世代燃料開発上のネックとなっていたグリーン水素のコスト下げを実現でき、「水素社会」の道を開く、新しい価値を提供することが可能となる。
・電力会社は、原発の再稼働が進むと経営が安定するため、天然ガスシフト、再エネの主力電源化、ゼロエミッション火力に経営資源を投入でき、グリーン水素の製造といった新しい価値の提供に目を向ける余裕も出てくる。
・再エネの主力電源化に向け、主力の太陽光は、課題となっていた発電コストがかなり下がってきている。洋上風力は、三菱商事の撤退等、発電コストの低減は見通せていないが、国防の観点もあってEEZ内での浮体式設置計画が進められている。
Q&A
Q1:基本計画の中で、自給率向上の議論はあったか? 電力が余る国を目指すことにベクトルを会わすべきと考えるがどうか?
A1:世界的な異常気象の発生で、温暖化対策が必要との共通認識は変わらず、アメリカが後退しても世界的には進んでいく。トランプの政策は選挙を意識したもので、米国内の石油会社にメリットがある水素・アンモニア・CCUSの政策は転換していない。
Q2:バイオマス発電について、例えば非食用のポンダミアを原料とすることでデメリットを抑えられると考えるがいかがか?
A2:大いに結構なことと思うが、原料が少なく大きな電力源とはならない。また国内で生産できる非食植物原料は多くはなく残念な状況。
Q3:第7次計画の中で、一番の着目点は何か。
A3:国民の目線から、計画に書かれたことの何を切り口として使っていくか、ということ。例えば、川崎市で火力発電の設置条件として計画で示された排出係数達成を義務化すれば、JERAのガス火力の水素シフトが一気に進む可能性もある。切り口を見つけ取組促進させていくことが肝要。
A4:原子力発電による水素製造の課題、実装までの時間軸は?
Q4:既に技術が確立している水の電気分解炉を既存の原発軽水炉敷地内で設置すれば、すぐにでもできる。
A5:2040年、2050年を見据えると、洋上風力をもう一度本命として見据えることはできないか?
Q5:浮体式について重点地域の選定が始められており、国は巻き返しを図ろうとしている。ただ、三菱商事と競合した事業主体の経営が相当傷んでおり、浮体式に強い戸田建設やパワーエックスといった新たな事業主体で進められていくのではないか。
講演資料:第7次エネルギー基本計画を読み解く
講師:橘川 武郎 様 国際大学 学長 EVF顧問
聴講者数: 48名
講師紹介
東京大学大学院経済学研究科 博士課程 単位取得退学 経済学博士
青山学院大学経営学部 助教授、東京大学社会科学研究所 教授、
一橋大学大学院商学研究科 教授、東京大学大学院イノベーション研究科 教授 を経て
2020年より、国際大学大学院 教授
2021年より、国際大学 副学長、東京大学・一橋大学 名誉教授、EVF顧問
2023年より、国際大学 学長 (現職)
講演概要:
・第7次エネルギー基本計画は、基本政策分科会委員16名中、1名だけが原子力反対派。CO2エネルギー消費の6割を占める熱の専門家がいないといった偏った委員構成の中で議論が進められた。
・閣議決定された2040年の電源構成・一次エネルギー構成は、複数のベースシナリオに加え、トランプ政権の誕生を踏まえたリスクシナリオもあり、民間の投資判断に支障をきたす内容となっている。
・リスクシナリオは、第6次計画と比較するとカーボンニュートラルが相当後退した内容となっているが、これが第7次計画の本命と捉えられ具体的な議論が始まっている。
・定性的には「次世代革新炉の開発」を大々的に書き込む等、原発回帰を打ち出した計画と報道されているが、定量的には、ベースシナリオで再エネ4〜5割:原子力2割と、再エネ主力電源化、原子力副次電源化が鮮明となっているのが実態。
・次世代革新炉は運転開始まで約20年の開発期間を要し、今から計画しても40年代後半と、第7次計画の目標40年と整合性がとれていない。1基の投資額は1〜2兆円といわれているが、既設炉の改修・運転延長に要する投資は1基当たり数百億円程度。電力自由化の中で電力料金面での競争力を失うため、次世代革新炉の投資に踏み切るのは容易でない。データセンター建設による消費電力増が、次世代革新炉の必要性の根拠となっているが、NTTのIOWN技術の進展で、40年代には電力消費量が低減トレンドとなる可能性も見通すと、40年以降も原子力は使い勝手の悪い電源であり続けるとみている。
・2023年2月に閣議決定された「GX実現に向けた基本方針」において、次世代革新炉への投資額は総額150兆円のうち1兆円と、ここでも原発をあてにしていないことが読みとれる。
・一方で、第7次エネ基には、「天然ガスは・・・カーボンニュートラル実現後も重要なエネルギー源である。」と、電力業界・都市ガス業界のこれまでの見通しを覆す「大転換」の記載があり、業界こぞってLNG火力発電の新増設計画を打ち出す天然ガスシフトが起こっている。
・カーボンニュートラルの旗は降ろしておらず、第7次エネ基の資料集に極端に低い電力排出係数(kg-CO2/kWh)が示されている。2040年、火力平均で、ベースシナリオ0.08-0.20、リスクシナリオ0.31と、現状の排出係数から考えると、ゼロエミ火力(水素・アンモニア・CCUS火力)の大量導入が必要となり、実現には極めて高水準のカーボンプライシングの想定が必要で、2万円/CO2トンもありうると専門家はみている。
・原子力発電は、カーボンフリー水素製造に活用することで、次世代燃料開発上のネックとなっていたグリーン水素のコスト下げを実現でき、「水素社会」の道を開く、新しい価値を提供することが可能となる。
・電力会社は、原発の再稼働が進むと経営が安定するため、天然ガスシフト、再エネの主力電源化、ゼロエミッション火力に経営資源を投入でき、グリーン水素の製造といった新しい価値の提供に目を向ける余裕も出てくる。
・再エネの主力電源化に向け、主力の太陽光は、課題となっていた発電コストがかなり下がってきている。洋上風力は、三菱商事の撤退等、発電コストの低減は見通せていないが、国防の観点もあってEEZ内での浮体式設置計画が進められている。
Q&A
Q1:基本計画の中で、自給率向上の議論はあったか? 電力が余る国を目指すことにベクトルを会わすべきと考えるがどうか?
A1:世界的な異常気象の発生で、温暖化対策が必要との共通認識は変わらず、アメリカが後退しても世界的には進んでいく。トランプの政策は選挙を意識したもので、米国内の石油会社にメリットがある水素・アンモニア・CCUSの政策は転換していない。
Q2:バイオマス発電について、例えば非食用のポンダミアを原料とすることでデメリットを抑えられると考えるがいかがか?
A2:大いに結構なことと思うが、原料が少なく大きな電力源とはならない。また国内で生産できる非食植物原料は多くはなく残念な状況。
Q3:第7次計画の中で、一番の着目点は何か。
A3:国民の目線から、計画に書かれたことの何を切り口として使っていくか、ということ。例えば、川崎市で火力発電の設置条件として計画で示された排出係数達成を義務化すれば、JERAのガス火力の水素シフトが一気に進む可能性もある。切り口を見つけ取組促進させていくことが肝要。
A4:原子力発電による水素製造の課題、実装までの時間軸は?
Q4:既に技術が確立している水の電気分解炉を既存の原発軽水炉敷地内で設置すれば、すぐにでもできる。
A5:2040年、2050年を見据えると、洋上風力をもう一度本命として見据えることはできないか?
Q5:浮体式について重点地域の選定が始められており、国は巻き返しを図ろうとしている。ただ、三菱商事と競合した事業主体の経営が相当傷んでおり、浮体式に強い戸田建設やパワーエックスといった新たな事業主体で進められていくのではないか。
講演資料:第7次エネルギー基本計画を読み解く
posted by EVF セミナー at 17:00| セミナー紹介
2025年07月24日
EVFセミナー報告:2050年カーボンニュートラルに向け、生まれ変わる川崎臨海部
演題 : 2050年カーボンニュートラルに向け、生まれ変わる川崎臨海部
講師 : 川崎哲弘様 川崎市臨海国際戦略本部成長戦略推進部カーボンニュートラル推進担当課長
聴講者数: 41名
講師紹介
2001年4月 川崎市役所入庁
2020年4月 港湾局港湾振興部誘致振興課 担当係長
2022年4月 同 課長補佐
2023年4月 臨海部国際戦略本部成長戦略推進部 担当課長
講演概要:
川崎市は古くから近代工業が発展。製鉄所の高炉休止という変遷を乗り越え、CN実現という戦略の下、水素を活用して公害や環境問題へ対応し、民間と共同で近代工業都市として発展している。
1. 川崎市及び川崎臨海部の概況とポテンシャル
工業都市の歴史としては、1900〜1950年代に川崎、横浜にまたがる臨海部の埋立から京浜臨海部が形成され、1950〜1970年代に、鉄鋼、非鉄金属を中心とした企業が立地され、発電所建設、石油パイプラインとシーバースの整備により、石油コンビナートが形成された。1960〜1970年代には、高度成長期に工場からの排水、排煙により環境問題が深刻化したが、1980年代から環境問題の解決に取組み、環境問題は徐々に改善。
川崎市の温室効果ガスの排出量は2021年で2083万t-CO2と日本政令指定都市では第1位。
2. カーボンニュートラル以前の取組
川崎市臨海部では、LNG・天然ガスインフラが集積し、火力発電所があり、化学企業・素材産業が集積して、水素需要が旺盛となり、その供給の水素パイプラインネットワークが形成された。そして、国内最大級のプラスチックリサイクル拠点となった。
3. 川崎カーボンニュートラルコンビナート構想
2015年に「川崎水素戦略」を策定し、@水素の供給システム(民間企業)の構築、A多分野にわたる水素利用の拡大、B社会認知度向上の3つの基本戦略により推進、
2018年に官民協議会として、「臨海部ビジョン」を策定し、低炭素型インダストリーエリア構築、水素エネルギー利用推進、資産活用・投資促進など13のリーディングプロジェクトを推進。
4. 構想実現に向けた具体的取組
(1) 水素戦略
『パイプラインを活用した水素のサプライチェーン(「水素需要ポテンシャル約2,300t/d等」)』の事業性調査を行い、官民6者(NEDO2事業者、空港関連企業2社、大田区、川崎市)による『羽田空港及び周辺地域における水素利用(約4〜6.6万トン水素相当)』の調査に基づき、事業を実現していく。
(2) 炭素循環戦略
@ 廃プラ等は国のサーキュラーエコノミーに係る取組等を活用。
2022年4月に「かわさきプラスチック循環プロジェクト」を6者で立ち上げ。市民の行動を促す「回収拠点の環」とペットボトルの「マテリアルの環」、「ケミカルの環」のリサイクル技術 の3つの環(わ)で取組を推進。
市民、事業者、行政が協力して、PET以外にも様々なプラスチックの資源循環や回収拠点などの取組 を実践。
令和6年10月、炭素循環部会特別セミナー「Circular Economy Kawasaki」を開催、「Kawasaki Circular Design Park」(略称︓KCDP)の立ち上げ、
回収、選別、成形、製造メーカー等による業種横断の廃プラスチック循環実証を開始。
A 令和2024年9月26日付け太平洋セメント社・東洋埠頭社より川崎臨海コンビ ナート地区におけるCCS 事業検討の連携開始が発表、CCS 事業における液化二酸化炭素の港湾出荷について、東洋埠頭川崎支店の活用検討 を共同で進めている。
B 廃プラ等とCO2の双方の取組は、市場の構築(最終商品において、環境価値として許容し得るコスト増等)において、長期的には連携していくものとして、今後の取組を深めていく。
(3)エネルギー地域最適化戦略
エネルギー地域最適化では、主に個別調整とワーキンググループ(WG)での検討を進めている。直近では、(A)「使用するエネルギーを再生可能エネルギーや水素等に転換する」の取組への拡張性を考慮しつつ、(@)「エリア全体で省エネによるエネルギー消費量の一層の削減」の取組を企業間連携の更なる強化により 面的に進めている。
WGでは、エリアを限定し、企業間連携による省エネの追求。
個別調整においては、将来的な水素利用を見据えた設備導入等の個別の取組(いわゆる“水素ready”を 増やす取組)を進めている。
Q&A
Q1:海外水素を持ってきているとお聞きしましたが、海外でその水素を製造する時にCO2が
製造されるなら、そのCO2については川崎市のカーボンニュートラルの考えの中ではどのようにお考えになるのですか?(海外なので考えない?)一方、水の電気分解で作る水素はCO2を発生しないものです。川崎市ではこの方法での水素製造は検討中で、現状では海外水素の輸入を多く行っているとお聞きしましたが、川崎市ではどうお考えでしょうか?
A1:何故海外水素なのかと言うところからお話しますと、川崎臨海部の産業のカーボンニュートラ
ル化に必要な水素は42〜3万トンと申し上げましたが、あれを川崎臨海部エリアで作るというのは現実的ではないです。水素を作る方法として色々あって、水の電気分解もありますが、その電気をCO2をぽっぽと出して作った電気であっては意味がなく、再エネ由来の電気である必要がある。そして、再エネ由来の電気を川崎臨海部で作るとか、持ってくるというのができるのか言うと難しい。ということから必要な水素を獲得するには、川崎市の港湾の機能を使って外から持ってくるという有効だと考え、海外水素の利用を考えている。水素を作る方法として、水の電気分解の他に、過渡的な方法として化石資源から作る方法がある。この方法ではCO2が出るので、CCS(Carbon Capture Storage) などを使って回収する必要がある。これがブルー水素であり(CO2回収しない水素はグレー水素)、再エネ由来の電気を使って水の電気分解から作る水素がグリーン水素である。川崎市が海外から持ってくる水素はカーボンニュートラルなグリーン水素かブルー水素です。(水素を輸入するに当たって)国の支援が得られるサプライチェーンを作る(CO2をいっぱい出さない、ある基準以下の低炭素な水素を持ってくる)必要がある。しかし川崎市が海外まで関与できるかは難しい。川崎市ができる支援として、水素を作る地元自治体でのインフラを作るとか、水素を作る海外側の自治体間の関係性などを重要にするなどの取組を行い、(私もオーストラリアまで行ったりして、)目的に合致するようにしている。
Q2:今の取組だと水素を作って(カーボンニュートラルに繋げる)とのことですが、CO2を
排出することへのオフセット、クレジットに関して、臨海部なので例えばAOへの活用をして、CO2を減らして行くとかの取組みを川崎ではやられているのでしょうか?
A2:CO2を減らす、排出しないと言う排出条件をクリアするためには、そういう取り組みは
重要と思いますが、我々(川崎市)としてはコンビナートの機能としてカーボンニュートラル社会に適用すると考えるとそこは本流ではないのではないかと思います。
何故水素、水素と言っているかと言いますと、水素は水素じゃないといけないものにのみ使うべきだと思っています。水素を使えばカーボンニュートラルが実現する、水素はオールマイティなものと勘違いされる方がいるかと思いますが、水素はもともと電気で作っているので、本当は電気のまま使った方が良いと言うことがあります。電気を使って水素を作る時にロスが発生して、その水素を使って電気を作ると又ロスが発生するのはあまり意味がない。水素から電気を作るだけなら、電気のままで使うのが良いと考えます。何故水素、水素と言っているかと言うと、川崎臨海部の工場はボイラーなどで熱を使っていて、それを電気で作るとなると効率が悪い高い温度帯の熱なので、それを作るには何かを燃やした直接燃焼で作ることが必要で、となるとそれに合うのは水素になる、そこを化石資源を燃やしてしまうとCO2が出てしまう(ので、それではカーボンニュートラルにならなくなる)ということで、水素が適している。
又、日本全体の電力網を見ると再エネが主力になってくるのであるが、再エネは晴れている日中の発電量が多いが夜は発電しない等の波があり、その波の調整力として火力発電が一部必要であり、その火力発電の脱炭素化として水素を使うことを考えている。そのようなニッチな部分を川崎臨海部が担っていると考えている。日本全体のカーボンニュートラルに貢献する産業エリアとして取り組んでいる。
Q3:プラスチックゴミの分別に基づく資源回収の意義を日常生活で感じたり、エネファームで水を全部取り替えることに疑念を持ったりしていますが、プラスの方では「ペロブスカイトが急速に立ち上がってきている」とか、「小池百合子東京都知事が太陽光パネルを住宅の屋根全部に設置するように言っているけど、まだそこまでできていない」などの色々な脱炭素化の動きがあります。 もっと言えば、川崎市位の規模があれば、核融合(による脱炭素化されたエネルギー提供)もできるのではないかと思います。ここ7〜8年で一気に変わると思っています。是非、前向きな方向の技術開発を、お金を出せばできるようなことは是非やって欲しいと思いますが、如何でしょうか?
A3:プラスチックゴミの分別については川崎もやっています。回収したプラスチックで作っている
のは、パレットとかプランターであって、少し価値が低いものへのリサイクルであって、(カスケードと呼んでいる)が主流であって、後は燃料として使っている(サーマルリサイクル)。無駄ではないですが、本当の意味での循環にはなっていない。循環をなし得て行くには、技術的部分と社会全体の仕組みの両方に入って行かないといけない。
技術の部分では、川崎臨海部で担っていけるポテンシャルがあると思うので、そこに取組んで行きたいと思うし、社会全体の仕組みについては国に対して自治体としてこういうことが必要だと言うような提言をして行きたい。ということで活動をしている。
当然そう言った分別は必要で、一人一人の力が必要で、そういう人たちに対して、実際に(プラスチックの分別が)意味があることをちゃんとアピールしていかないといけない。分別をお願いしている行政の立場からその辺も頑張っていかないといけないと思っている。
ペロブスカイトを使った太陽光発電は非常に重要で、再エネをもっともっと頑張っていかないといけない時に、日本の国土を使って、地形が変えられない(というような制限がある)時に、ペロブスカイトを使って再エネを広げて行くのは大変重要です。
とは言え、再エネだけで日本の電力を賄うことはできなくて、火力発電(つまり回転から生み出される電気)も電力網全体の中では必要で、エネルギーミックスの中で、再エネは主力だが、
それをサポートするような火力発電も必要だし、ひょっとするとベースロードとして原子力発電も必要かもしれないと考えます。川崎はニッチな脱炭素な火力発電というところで、日本のカーボンニュートラルに貢献していくという役割が果たせるのではないかと考えている。
核融合については、カーボンニュートラル2050に行くためには今の技術の延長線では難しいと思われ、技術のイノベーションが必要と思っている。その中で、何がイノベーションに繋がるかと考えた時に、核融合と言った視点も重要と思っている。今足元の地道な省エネをやっていて、技術革新として何かが来るのを待つという視点も大事と考えている。
Q4:水素需要の42万トンの内、火力発電の部分はどれくらいですか?
A4:42万トンは発電用から熱源として使う部分から化学産業の工業用途で使う部分まで含んだ合計で、その熱とかには今都市ガスを使っている訳で、それを水素に転換した時の量が考えられている。需要のポテンシャルは川崎臨海部と東京横浜の臨海部を含めたものですが、対する供給の目途はまだ全然立っていない。今具体的に動いているプロジェクトが、液化水素の実証を行いましょう。2030年以降は海外から水素を持ってくるプロジェクトを立ち上げようとしています。そこで(発電用に)やれる量はまだ明確ではないですが、10万トンは行かない、数万トンだろうと思っています。新しいものを使うとか持ってくるという話になると、「にわとりが先か、卵が先か」問題があって、使う側は何時来るか分からないので、使うための機器を導入できない。持ってくる側は持って来ても使ってもらえる体制になっていないと言う問題があり、その問題を解決していくのが重要である。準備だけは進めておいて、来なくて使える機器を先行して導入しておくということも必要です。水素は既存のLNGとかより高いので、省エネをやってエネルギー力を減らしておいて、そこに対して水素を充てるというような取組も必要と考えている。今足元でできることをやりつつ、不確実性の高いことがどれ位やってくるのかについては、そこは粘り腰で対応していくのが今の時点だと思っています。
商用の発電所だとプレーヤーも大きいので、例えば、ジェラ 社は大きな会社で自分で水素とかアンモニアを持ってくるような動きをしており、それを(外部に)言ってしまうと、(社会的な)影響も大きいので、(必ずしもオープンではなく、)我々もつかみ切れない部分がある。が、川崎市としても注視しているし、頻繁にコミュニケーションを取っている。
(「(川崎まで来ている)東京ガスが、(家庭でCO2を出す都市ガスの代わりに)水素でなく、e-メタンが提供するような話を聞きましたが、それは川崎市でも使うことになるのでしょうか?」という質問に対して)カーボンニュートラルに向けた道筋として、e-メタン(燃やしてもCO2排出のカウントにならない、CO2由来の都市ガス相当のメタン)が使えて、今の機器が使えるなら、何もしなくても良いとも考えられます。e-メタンが来て、何も変えなくてカーボンニュートラルが達成できるなら、対策は考える必要はないと思います。一方、そういう道もあるが、そうではなくて、水素に燃料転換しての道も将来像として考えています。e-メタンが使えるようになるのをずっと黙って待っていられるかという課題もあります。
e-メタンは海外で作る時に、炭素排出を国際間でどう扱うかの整理がついていない問題があるし、更に、e-メタンは天然ガスより若干熱量が違う(下がる)し、今までの機器がそのまま使えるかについても課題があると聞いています。
e-メタンもカーボンニュートラルに向けてすごく重要と考えていますが、川崎臨海部としては水素を軸として議論を進めています。
Q5:海(船)と空(羽田空港)のモビリティのエネルギーに関して川崎臨海部としての取組みはどのようなものがありますか?
A5:羽田空港(ビルディングなど)で使うエネルギー(電気と熱)に対して水素が良いと思っていますし、羽田空港側でもそういう検討をしていて、そこに水素を供給することを考えている。羽田空港側に敷地が十分にあれば、太陽光パネルを敷いて水素の製造が考えられるのですが、ないようで、それは難しいようです。空港なので、水素を大規模に使ったことがなく、使うことで何かあると問題なので、水素を使う難しさはあるようです。
船の関係は、港湾局が対応していて、アンモニアの話はしてなくて、バイオ燃料の実証を始めたと聞いています。アンモニアは、CNにとって重要なキーワードで、多くは石炭火力に混ぜて使われているが、川崎には石炭火力があまりないので、アンモニアを持ってくるという話はあまりない。アンモニアで持って来てクラッキングで水素を取り出すという考えもあり、それをやっているのがJERA社(東京電力と中部電力が設立したエネルギー会社)です。JERA社は石炭火力を一杯抱えているので、先ずアンモニアとして使う。将来的には水素を運ぶ手段として使うことも考えているのですが、石炭火力で使うのをターゲットにしているので、アンモニアとして持って来て水素生成に使うというのは考えていないのが現状です。
Q6:JFEは高炉を止めてしまった訳ですが、水素製鉄等も含め、今後はどのようなこれからポジティブな連携がありますか?
A6:JFEは扇島だけでも222ha、関連を含めると400haという土地があって、その利用転換が必要な訳で、高炉を止める話は、ハレーションが大きく、事前の相談はなく突然来たと私は理解しています。この土地の利用転換に当たって、JFEとして土地を簡単に売れるかと言うと難しくて、扇島は完全にJFE専用の島の状態で、中に公道すら走っておらず、JFEの私道を通ってでないと扇島の中に入ってこれないという状況でした(高速道路は上を走っていますが通過しているだけ)。
土地を転換して行くインフラを整えていく必要があり、それには市の協力が必要で、市と連携協定を結んで、一緒になって土地利用転換していくことになりました。市としては川崎市臨海部の発展に資するような新しい機能を埋め込むようなことをやって欲しいとして、土地利用転換を有意義なものにしようと協力し合う方向となり、その中で水素利用の話があり、その辺りがポジティブな話になっています。
これは、日本のこれから先、出てくる社会課題の解決に繋がるような土地利用転換をするというコンセプトになっていると思います。
講演資料:川崎カーボンニュートラルコンビナート構想について
講師 : 川崎哲弘様 川崎市臨海国際戦略本部成長戦略推進部カーボンニュートラル推進担当課長
聴講者数: 41名
講師紹介
2001年4月 川崎市役所入庁
2020年4月 港湾局港湾振興部誘致振興課 担当係長
2022年4月 同 課長補佐
2023年4月 臨海部国際戦略本部成長戦略推進部 担当課長
講演概要:
川崎市は古くから近代工業が発展。製鉄所の高炉休止という変遷を乗り越え、CN実現という戦略の下、水素を活用して公害や環境問題へ対応し、民間と共同で近代工業都市として発展している。
1. 川崎市及び川崎臨海部の概況とポテンシャル
工業都市の歴史としては、1900〜1950年代に川崎、横浜にまたがる臨海部の埋立から京浜臨海部が形成され、1950〜1970年代に、鉄鋼、非鉄金属を中心とした企業が立地され、発電所建設、石油パイプラインとシーバースの整備により、石油コンビナートが形成された。1960〜1970年代には、高度成長期に工場からの排水、排煙により環境問題が深刻化したが、1980年代から環境問題の解決に取組み、環境問題は徐々に改善。
川崎市の温室効果ガスの排出量は2021年で2083万t-CO2と日本政令指定都市では第1位。
2. カーボンニュートラル以前の取組
川崎市臨海部では、LNG・天然ガスインフラが集積し、火力発電所があり、化学企業・素材産業が集積して、水素需要が旺盛となり、その供給の水素パイプラインネットワークが形成された。そして、国内最大級のプラスチックリサイクル拠点となった。
3. 川崎カーボンニュートラルコンビナート構想
2015年に「川崎水素戦略」を策定し、@水素の供給システム(民間企業)の構築、A多分野にわたる水素利用の拡大、B社会認知度向上の3つの基本戦略により推進、
2018年に官民協議会として、「臨海部ビジョン」を策定し、低炭素型インダストリーエリア構築、水素エネルギー利用推進、資産活用・投資促進など13のリーディングプロジェクトを推進。
4. 構想実現に向けた具体的取組
(1) 水素戦略
『パイプラインを活用した水素のサプライチェーン(「水素需要ポテンシャル約2,300t/d等」)』の事業性調査を行い、官民6者(NEDO2事業者、空港関連企業2社、大田区、川崎市)による『羽田空港及び周辺地域における水素利用(約4〜6.6万トン水素相当)』の調査に基づき、事業を実現していく。
(2) 炭素循環戦略
@ 廃プラ等は国のサーキュラーエコノミーに係る取組等を活用。
2022年4月に「かわさきプラスチック循環プロジェクト」を6者で立ち上げ。市民の行動を促す「回収拠点の環」とペットボトルの「マテリアルの環」、「ケミカルの環」のリサイクル技術 の3つの環(わ)で取組を推進。
市民、事業者、行政が協力して、PET以外にも様々なプラスチックの資源循環や回収拠点などの取組 を実践。
令和6年10月、炭素循環部会特別セミナー「Circular Economy Kawasaki」を開催、「Kawasaki Circular Design Park」(略称︓KCDP)の立ち上げ、
回収、選別、成形、製造メーカー等による業種横断の廃プラスチック循環実証を開始。
A 令和2024年9月26日付け太平洋セメント社・東洋埠頭社より川崎臨海コンビ ナート地区におけるCCS 事業検討の連携開始が発表、CCS 事業における液化二酸化炭素の港湾出荷について、東洋埠頭川崎支店の活用検討 を共同で進めている。
B 廃プラ等とCO2の双方の取組は、市場の構築(最終商品において、環境価値として許容し得るコスト増等)において、長期的には連携していくものとして、今後の取組を深めていく。
(3)エネルギー地域最適化戦略
エネルギー地域最適化では、主に個別調整とワーキンググループ(WG)での検討を進めている。直近では、(A)「使用するエネルギーを再生可能エネルギーや水素等に転換する」の取組への拡張性を考慮しつつ、(@)「エリア全体で省エネによるエネルギー消費量の一層の削減」の取組を企業間連携の更なる強化により 面的に進めている。
WGでは、エリアを限定し、企業間連携による省エネの追求。
個別調整においては、将来的な水素利用を見据えた設備導入等の個別の取組(いわゆる“水素ready”を 増やす取組)を進めている。
Q&A
Q1:海外水素を持ってきているとお聞きしましたが、海外でその水素を製造する時にCO2が
製造されるなら、そのCO2については川崎市のカーボンニュートラルの考えの中ではどのようにお考えになるのですか?(海外なので考えない?)一方、水の電気分解で作る水素はCO2を発生しないものです。川崎市ではこの方法での水素製造は検討中で、現状では海外水素の輸入を多く行っているとお聞きしましたが、川崎市ではどうお考えでしょうか?
A1:何故海外水素なのかと言うところからお話しますと、川崎臨海部の産業のカーボンニュートラ
ル化に必要な水素は42〜3万トンと申し上げましたが、あれを川崎臨海部エリアで作るというのは現実的ではないです。水素を作る方法として色々あって、水の電気分解もありますが、その電気をCO2をぽっぽと出して作った電気であっては意味がなく、再エネ由来の電気である必要がある。そして、再エネ由来の電気を川崎臨海部で作るとか、持ってくるというのができるのか言うと難しい。ということから必要な水素を獲得するには、川崎市の港湾の機能を使って外から持ってくるという有効だと考え、海外水素の利用を考えている。水素を作る方法として、水の電気分解の他に、過渡的な方法として化石資源から作る方法がある。この方法ではCO2が出るので、CCS(Carbon Capture Storage) などを使って回収する必要がある。これがブルー水素であり(CO2回収しない水素はグレー水素)、再エネ由来の電気を使って水の電気分解から作る水素がグリーン水素である。川崎市が海外から持ってくる水素はカーボンニュートラルなグリーン水素かブルー水素です。(水素を輸入するに当たって)国の支援が得られるサプライチェーンを作る(CO2をいっぱい出さない、ある基準以下の低炭素な水素を持ってくる)必要がある。しかし川崎市が海外まで関与できるかは難しい。川崎市ができる支援として、水素を作る地元自治体でのインフラを作るとか、水素を作る海外側の自治体間の関係性などを重要にするなどの取組を行い、(私もオーストラリアまで行ったりして、)目的に合致するようにしている。
Q2:今の取組だと水素を作って(カーボンニュートラルに繋げる)とのことですが、CO2を
排出することへのオフセット、クレジットに関して、臨海部なので例えばAOへの活用をして、CO2を減らして行くとかの取組みを川崎ではやられているのでしょうか?
A2:CO2を減らす、排出しないと言う排出条件をクリアするためには、そういう取り組みは
重要と思いますが、我々(川崎市)としてはコンビナートの機能としてカーボンニュートラル社会に適用すると考えるとそこは本流ではないのではないかと思います。
何故水素、水素と言っているかと言いますと、水素は水素じゃないといけないものにのみ使うべきだと思っています。水素を使えばカーボンニュートラルが実現する、水素はオールマイティなものと勘違いされる方がいるかと思いますが、水素はもともと電気で作っているので、本当は電気のまま使った方が良いと言うことがあります。電気を使って水素を作る時にロスが発生して、その水素を使って電気を作ると又ロスが発生するのはあまり意味がない。水素から電気を作るだけなら、電気のままで使うのが良いと考えます。何故水素、水素と言っているかと言うと、川崎臨海部の工場はボイラーなどで熱を使っていて、それを電気で作るとなると効率が悪い高い温度帯の熱なので、それを作るには何かを燃やした直接燃焼で作ることが必要で、となるとそれに合うのは水素になる、そこを化石資源を燃やしてしまうとCO2が出てしまう(ので、それではカーボンニュートラルにならなくなる)ということで、水素が適している。
又、日本全体の電力網を見ると再エネが主力になってくるのであるが、再エネは晴れている日中の発電量が多いが夜は発電しない等の波があり、その波の調整力として火力発電が一部必要であり、その火力発電の脱炭素化として水素を使うことを考えている。そのようなニッチな部分を川崎臨海部が担っていると考えている。日本全体のカーボンニュートラルに貢献する産業エリアとして取り組んでいる。
Q3:プラスチックゴミの分別に基づく資源回収の意義を日常生活で感じたり、エネファームで水を全部取り替えることに疑念を持ったりしていますが、プラスの方では「ペロブスカイトが急速に立ち上がってきている」とか、「小池百合子東京都知事が太陽光パネルを住宅の屋根全部に設置するように言っているけど、まだそこまでできていない」などの色々な脱炭素化の動きがあります。 もっと言えば、川崎市位の規模があれば、核融合(による脱炭素化されたエネルギー提供)もできるのではないかと思います。ここ7〜8年で一気に変わると思っています。是非、前向きな方向の技術開発を、お金を出せばできるようなことは是非やって欲しいと思いますが、如何でしょうか?
A3:プラスチックゴミの分別については川崎もやっています。回収したプラスチックで作っている
のは、パレットとかプランターであって、少し価値が低いものへのリサイクルであって、(カスケードと呼んでいる)が主流であって、後は燃料として使っている(サーマルリサイクル)。無駄ではないですが、本当の意味での循環にはなっていない。循環をなし得て行くには、技術的部分と社会全体の仕組みの両方に入って行かないといけない。
技術の部分では、川崎臨海部で担っていけるポテンシャルがあると思うので、そこに取組んで行きたいと思うし、社会全体の仕組みについては国に対して自治体としてこういうことが必要だと言うような提言をして行きたい。ということで活動をしている。
当然そう言った分別は必要で、一人一人の力が必要で、そういう人たちに対して、実際に(プラスチックの分別が)意味があることをちゃんとアピールしていかないといけない。分別をお願いしている行政の立場からその辺も頑張っていかないといけないと思っている。
ペロブスカイトを使った太陽光発電は非常に重要で、再エネをもっともっと頑張っていかないといけない時に、日本の国土を使って、地形が変えられない(というような制限がある)時に、ペロブスカイトを使って再エネを広げて行くのは大変重要です。
とは言え、再エネだけで日本の電力を賄うことはできなくて、火力発電(つまり回転から生み出される電気)も電力網全体の中では必要で、エネルギーミックスの中で、再エネは主力だが、
それをサポートするような火力発電も必要だし、ひょっとするとベースロードとして原子力発電も必要かもしれないと考えます。川崎はニッチな脱炭素な火力発電というところで、日本のカーボンニュートラルに貢献していくという役割が果たせるのではないかと考えている。
核融合については、カーボンニュートラル2050に行くためには今の技術の延長線では難しいと思われ、技術のイノベーションが必要と思っている。その中で、何がイノベーションに繋がるかと考えた時に、核融合と言った視点も重要と思っている。今足元の地道な省エネをやっていて、技術革新として何かが来るのを待つという視点も大事と考えている。
Q4:水素需要の42万トンの内、火力発電の部分はどれくらいですか?
A4:42万トンは発電用から熱源として使う部分から化学産業の工業用途で使う部分まで含んだ合計で、その熱とかには今都市ガスを使っている訳で、それを水素に転換した時の量が考えられている。需要のポテンシャルは川崎臨海部と東京横浜の臨海部を含めたものですが、対する供給の目途はまだ全然立っていない。今具体的に動いているプロジェクトが、液化水素の実証を行いましょう。2030年以降は海外から水素を持ってくるプロジェクトを立ち上げようとしています。そこで(発電用に)やれる量はまだ明確ではないですが、10万トンは行かない、数万トンだろうと思っています。新しいものを使うとか持ってくるという話になると、「にわとりが先か、卵が先か」問題があって、使う側は何時来るか分からないので、使うための機器を導入できない。持ってくる側は持って来ても使ってもらえる体制になっていないと言う問題があり、その問題を解決していくのが重要である。準備だけは進めておいて、来なくて使える機器を先行して導入しておくということも必要です。水素は既存のLNGとかより高いので、省エネをやってエネルギー力を減らしておいて、そこに対して水素を充てるというような取組も必要と考えている。今足元でできることをやりつつ、不確実性の高いことがどれ位やってくるのかについては、そこは粘り腰で対応していくのが今の時点だと思っています。
商用の発電所だとプレーヤーも大きいので、例えば、ジェラ 社は大きな会社で自分で水素とかアンモニアを持ってくるような動きをしており、それを(外部に)言ってしまうと、(社会的な)影響も大きいので、(必ずしもオープンではなく、)我々もつかみ切れない部分がある。が、川崎市としても注視しているし、頻繁にコミュニケーションを取っている。
(「(川崎まで来ている)東京ガスが、(家庭でCO2を出す都市ガスの代わりに)水素でなく、e-メタンが提供するような話を聞きましたが、それは川崎市でも使うことになるのでしょうか?」という質問に対して)カーボンニュートラルに向けた道筋として、e-メタン(燃やしてもCO2排出のカウントにならない、CO2由来の都市ガス相当のメタン)が使えて、今の機器が使えるなら、何もしなくても良いとも考えられます。e-メタンが来て、何も変えなくてカーボンニュートラルが達成できるなら、対策は考える必要はないと思います。一方、そういう道もあるが、そうではなくて、水素に燃料転換しての道も将来像として考えています。e-メタンが使えるようになるのをずっと黙って待っていられるかという課題もあります。
e-メタンは海外で作る時に、炭素排出を国際間でどう扱うかの整理がついていない問題があるし、更に、e-メタンは天然ガスより若干熱量が違う(下がる)し、今までの機器がそのまま使えるかについても課題があると聞いています。
e-メタンもカーボンニュートラルに向けてすごく重要と考えていますが、川崎臨海部としては水素を軸として議論を進めています。
Q5:海(船)と空(羽田空港)のモビリティのエネルギーに関して川崎臨海部としての取組みはどのようなものがありますか?
A5:羽田空港(ビルディングなど)で使うエネルギー(電気と熱)に対して水素が良いと思っていますし、羽田空港側でもそういう検討をしていて、そこに水素を供給することを考えている。羽田空港側に敷地が十分にあれば、太陽光パネルを敷いて水素の製造が考えられるのですが、ないようで、それは難しいようです。空港なので、水素を大規模に使ったことがなく、使うことで何かあると問題なので、水素を使う難しさはあるようです。
船の関係は、港湾局が対応していて、アンモニアの話はしてなくて、バイオ燃料の実証を始めたと聞いています。アンモニアは、CNにとって重要なキーワードで、多くは石炭火力に混ぜて使われているが、川崎には石炭火力があまりないので、アンモニアを持ってくるという話はあまりない。アンモニアで持って来てクラッキングで水素を取り出すという考えもあり、それをやっているのがJERA社(東京電力と中部電力が設立したエネルギー会社)です。JERA社は石炭火力を一杯抱えているので、先ずアンモニアとして使う。将来的には水素を運ぶ手段として使うことも考えているのですが、石炭火力で使うのをターゲットにしているので、アンモニアとして持って来て水素生成に使うというのは考えていないのが現状です。
Q6:JFEは高炉を止めてしまった訳ですが、水素製鉄等も含め、今後はどのようなこれからポジティブな連携がありますか?
A6:JFEは扇島だけでも222ha、関連を含めると400haという土地があって、その利用転換が必要な訳で、高炉を止める話は、ハレーションが大きく、事前の相談はなく突然来たと私は理解しています。この土地の利用転換に当たって、JFEとして土地を簡単に売れるかと言うと難しくて、扇島は完全にJFE専用の島の状態で、中に公道すら走っておらず、JFEの私道を通ってでないと扇島の中に入ってこれないという状況でした(高速道路は上を走っていますが通過しているだけ)。
土地を転換して行くインフラを整えていく必要があり、それには市の協力が必要で、市と連携協定を結んで、一緒になって土地利用転換していくことになりました。市としては川崎市臨海部の発展に資するような新しい機能を埋め込むようなことをやって欲しいとして、土地利用転換を有意義なものにしようと協力し合う方向となり、その中で水素利用の話があり、その辺りがポジティブな話になっています。
これは、日本のこれから先、出てくる社会課題の解決に繋がるような土地利用転換をするというコンセプトになっていると思います。
講演資料:川崎カーボンニュートラルコンビナート構想について
posted by EVF セミナー at 16:00| セミナー紹介
2025年06月27日
EVFセミナー報告:テクノロジーを流用し、小型植物工場でそだてる”WASABI”を世界へ!
演題 : テクノロジーを流用し、小型植物工場でそだてる”WASABI”を世界へ!
講師 : 中村拓也様 株式会社NEXTAGE 代表取締役
聴講者数: 42名
講師紹介
1994年、明治学院大学 国際学部卒。開発経済学・農業経済学を専攻。
1994年 千代田化工建設株式会社入社。
CT121排煙脱硫装置、LNG受入設備の技術営業を担当。
株式会社荏原製作所では半導体製造装置(CMP装置、真空ポンプ、排ガス処理装置)の海外営業推進、
台湾現地法人では営業責任者として役割を果たす。
数社のスタートアップの立ち上げや事業推進を経験し、2018年1月に株式会社NEXTAGEを創業。
講演概要
・従来自然環境の中で育てられていたワサビを、40フィートの断熱コンテナ―を使用しどこでも生育することができるようになった。
・ワサビは2005年を起点とすると2022年には生産高で根茎も葉柄も約60%減となっている。原因は異常気象、温暖化、農業従事者の高齢化が背景にあり、ワサビの生産量が年々減少してきている。
・一方、日本食ブーム、海外での需要増などによりワサビの需要は伸びている。ワサビを守りたい、世界に届けたいとの思いから株式会社NEXTAGEをスタートさせた。
NEXTAGE社は、東京都目黒区祐天寺2丁目13-4に本社を、支社を焼津に、C&Mセンターを横浜の鶴見に置いて活動している。
・ワサビの国内生産減に伴い海外製のワサビが輸入されているが、チューブワサビ原料の90%は輸入されたホースラディッシュで作られている。これにはワサビの葉柄が粉砕されて含まれている。
・日本固有種のワサビには「実生種」と「真妻種」があり、前者は水っぽくおそばなどに使われ、後者はお寿司などに使用されている。価格は前者が1〜2万円/kg、後者は3〜4万円/kgであり、NEXTAGE社では後者を栽培しようとしている。
・生ワサビに含まれる「アリルイソチアネート」という成分は様々な健康効果を持っており、米国のMIT、スタンフォード、ハーバード、などの大学でも研究が進められている。
・ワサビ栽培モジュールは40ftのコンテナーを使用し、年間1800株(90kg)の真妻わさびを露路栽培期間の半分の約1年で収穫することに成功している。このモジュールでは路地でワサビを育てる環境を室内で再現させており、現状はノウハウをベースとしたインストラクションとの組み合わせだが、将来的にはAIをフルに活用しているため、ワサビ栽培への専門知識は不要であり、誰でもわさび栽培が可能になっている。このコンテナー栽培では水を循環させて使用しているので大幅な節水ができる。
・ワサビの種子は発芽率が低いためワサビの苗は供給不足になっている。NEXTAGEでは大学の研究機関と連携し専用液の開発などを進めており、病気に強いワサビの苗を作り農家にも供給する予定。
・NEXTAGEでは、屋内で促成栽培を実現するわさびの栽培方法、及びわさびの栽培管理システムに関する特許や、栽培設備、支援システム、支援装置、支援プログラム、支援方法に関する詳細や、遠隔栽培技術に関連する取り組みに関する特許を出願している。グローバルな進出には特許が必要。
・当然ブラックボックス的な部分はあるが、栽培技術を提供し商業化に成功しているのはNEXTAGEのみであり、現在競合者はいない、もしくは技術参入障壁がとても高いので優位性を確保できる。
・屋外栽培の場合、気候害や虫害などにより葉柄は食べられないが、コンテナー栽培の場合は屋内栽培なので葉柄は新鮮でおいしい。年間で1,296kg以上のわさびの葉と茎を安定して収穫でき、 わさびの葉茎だけで300万円以上の収入を得ている。
・わさびの葉茎を使ったレシピは数多く開発されており、大阪のヒルトン最上級ブランドホテルではワサビの葉柄を入れたカクテルを提供しており、非常に人気が出ている。コンテナー栽培によりわさびの葉茎の安定供給が実現し、市場、ホテル、大手加工メーカーからの引き合いが加速している。
・日本のわさびマーケット市場は50億円と推計されており、医薬品や健康食品分野が今後のマーケットになりそう。世界のわさび需要は年間10,585t以上と推定されており、イタリアやフランスではワサビの葉柄や根茎を使いたがっているシェフが多くいる。
・欧州でのワサビ試食会にNEXTAGEのわさび栽培モジュールで生産した「真妻」と、他の4か所で生産して購入したワサビを食べ比べてもらったところ、参加者の85.7%以上が NEXTAGEのワサビの購入を検討すると回答した。今後コンテナーを世界各国において、現地の人たちにワサビを栽培してもらえる
ようにして行きたい。
Q&A
Q1 フランス料理にはワサビは合わないと思っていた。今後農業との連携を進めてはどうでしょうか?
A1 ありがとうございます。
Q2 何年くらいで投資回収ができそうですか?
A2 躯体が1個2000万円。根茎の売り上げが1800株/年→約300万円/年、葉柄1000s年→約400万円/年、電気代が120万円/年、葉柄の剪定工数が7..2人/年、等を考慮すると5〜6年で投資回収ができそう。
Q3 岐阜大学の山根先生のワサビに関する本によると、若者のワサビ離れ、農家の高齢化が進み、日本のワサビ産業はつぶれると書いてあるが、NEXTAGEができたので山根説は変わりそうではないか?
A3 そうだと良いと思っている。先生は三鷹の大沢にあるワサビの生態を研究しておられたようだ。
Q4 天然栽培の場合は水の中に天然の成分が含まれているので肥料などは必要ないか?
A4確かに湧水の中にはカルシューム等々のミネラルが入っている。コンテナの場合ではカリウム、リン、等々の必要な成分は与えている。
Q5 日本の天然水は軟水が多いが、欧州あたりでは硬水が多くいろいろな成分が入っていると聞いている。
A5日本でも硬水の地域はあり、水質調査をして適切に変えている。ワサビ農家は科学的にはわからなくても感覚的に肥料をやっていた。この辺りはリスペクトする。
Q6安曇野と伊豆のどちらがワサビ栽培には適しているのか?
A6伊豆の方が良いと言われているが、安曇野も素晴らしい。
Q7 特許を多数出されていると聞いているが、特許は20年で切れてしまうためノウハウを守るならコカ・コーラの様な経営にして特許は出さない方が得策ではないか?
A7議論は両方ある。営業秘匿の所は特許を出さないようにしており、その範囲外のところを特許申請している。
Q8 OEMにする戦略に変えたのはなぜでしょうか?
A8誰でもワサビが作れる環境にして、生産者を増やしたいから。
Q9 グラフで、だんだん葉が食べられなくなってきたのは何故でしょうか?
A9 最近では葉の活用価値が変わってきている。加工品などが作られるようになってきて、葉の価値が上がってきている。
文責:小栗武治
講演資料:小型植物工場で育てる”WASABI”を世界へ!
講師 : 中村拓也様 株式会社NEXTAGE 代表取締役
聴講者数: 42名
講師紹介
1994年、明治学院大学 国際学部卒。開発経済学・農業経済学を専攻。
1994年 千代田化工建設株式会社入社。
CT121排煙脱硫装置、LNG受入設備の技術営業を担当。
株式会社荏原製作所では半導体製造装置(CMP装置、真空ポンプ、排ガス処理装置)の海外営業推進、
台湾現地法人では営業責任者として役割を果たす。
数社のスタートアップの立ち上げや事業推進を経験し、2018年1月に株式会社NEXTAGEを創業。
講演概要
・従来自然環境の中で育てられていたワサビを、40フィートの断熱コンテナ―を使用しどこでも生育することができるようになった。
・ワサビは2005年を起点とすると2022年には生産高で根茎も葉柄も約60%減となっている。原因は異常気象、温暖化、農業従事者の高齢化が背景にあり、ワサビの生産量が年々減少してきている。
・一方、日本食ブーム、海外での需要増などによりワサビの需要は伸びている。ワサビを守りたい、世界に届けたいとの思いから株式会社NEXTAGEをスタートさせた。
NEXTAGE社は、東京都目黒区祐天寺2丁目13-4に本社を、支社を焼津に、C&Mセンターを横浜の鶴見に置いて活動している。
・ワサビの国内生産減に伴い海外製のワサビが輸入されているが、チューブワサビ原料の90%は輸入されたホースラディッシュで作られている。これにはワサビの葉柄が粉砕されて含まれている。
・日本固有種のワサビには「実生種」と「真妻種」があり、前者は水っぽくおそばなどに使われ、後者はお寿司などに使用されている。価格は前者が1〜2万円/kg、後者は3〜4万円/kgであり、NEXTAGE社では後者を栽培しようとしている。
・生ワサビに含まれる「アリルイソチアネート」という成分は様々な健康効果を持っており、米国のMIT、スタンフォード、ハーバード、などの大学でも研究が進められている。
・ワサビ栽培モジュールは40ftのコンテナーを使用し、年間1800株(90kg)の真妻わさびを露路栽培期間の半分の約1年で収穫することに成功している。このモジュールでは路地でワサビを育てる環境を室内で再現させており、現状はノウハウをベースとしたインストラクションとの組み合わせだが、将来的にはAIをフルに活用しているため、ワサビ栽培への専門知識は不要であり、誰でもわさび栽培が可能になっている。このコンテナー栽培では水を循環させて使用しているので大幅な節水ができる。
・ワサビの種子は発芽率が低いためワサビの苗は供給不足になっている。NEXTAGEでは大学の研究機関と連携し専用液の開発などを進めており、病気に強いワサビの苗を作り農家にも供給する予定。
・NEXTAGEでは、屋内で促成栽培を実現するわさびの栽培方法、及びわさびの栽培管理システムに関する特許や、栽培設備、支援システム、支援装置、支援プログラム、支援方法に関する詳細や、遠隔栽培技術に関連する取り組みに関する特許を出願している。グローバルな進出には特許が必要。
・当然ブラックボックス的な部分はあるが、栽培技術を提供し商業化に成功しているのはNEXTAGEのみであり、現在競合者はいない、もしくは技術参入障壁がとても高いので優位性を確保できる。
・屋外栽培の場合、気候害や虫害などにより葉柄は食べられないが、コンテナー栽培の場合は屋内栽培なので葉柄は新鮮でおいしい。年間で1,296kg以上のわさびの葉と茎を安定して収穫でき、 わさびの葉茎だけで300万円以上の収入を得ている。
・わさびの葉茎を使ったレシピは数多く開発されており、大阪のヒルトン最上級ブランドホテルではワサビの葉柄を入れたカクテルを提供しており、非常に人気が出ている。コンテナー栽培によりわさびの葉茎の安定供給が実現し、市場、ホテル、大手加工メーカーからの引き合いが加速している。
・日本のわさびマーケット市場は50億円と推計されており、医薬品や健康食品分野が今後のマーケットになりそう。世界のわさび需要は年間10,585t以上と推定されており、イタリアやフランスではワサビの葉柄や根茎を使いたがっているシェフが多くいる。
・欧州でのワサビ試食会にNEXTAGEのわさび栽培モジュールで生産した「真妻」と、他の4か所で生産して購入したワサビを食べ比べてもらったところ、参加者の85.7%以上が NEXTAGEのワサビの購入を検討すると回答した。今後コンテナーを世界各国において、現地の人たちにワサビを栽培してもらえる
ようにして行きたい。
Q&A
Q1 フランス料理にはワサビは合わないと思っていた。今後農業との連携を進めてはどうでしょうか?
A1 ありがとうございます。
Q2 何年くらいで投資回収ができそうですか?
A2 躯体が1個2000万円。根茎の売り上げが1800株/年→約300万円/年、葉柄1000s年→約400万円/年、電気代が120万円/年、葉柄の剪定工数が7..2人/年、等を考慮すると5〜6年で投資回収ができそう。
Q3 岐阜大学の山根先生のワサビに関する本によると、若者のワサビ離れ、農家の高齢化が進み、日本のワサビ産業はつぶれると書いてあるが、NEXTAGEができたので山根説は変わりそうではないか?
A3 そうだと良いと思っている。先生は三鷹の大沢にあるワサビの生態を研究しておられたようだ。
Q4 天然栽培の場合は水の中に天然の成分が含まれているので肥料などは必要ないか?
A4確かに湧水の中にはカルシューム等々のミネラルが入っている。コンテナの場合ではカリウム、リン、等々の必要な成分は与えている。
Q5 日本の天然水は軟水が多いが、欧州あたりでは硬水が多くいろいろな成分が入っていると聞いている。
A5日本でも硬水の地域はあり、水質調査をして適切に変えている。ワサビ農家は科学的にはわからなくても感覚的に肥料をやっていた。この辺りはリスペクトする。
Q6安曇野と伊豆のどちらがワサビ栽培には適しているのか?
A6伊豆の方が良いと言われているが、安曇野も素晴らしい。
Q7 特許を多数出されていると聞いているが、特許は20年で切れてしまうためノウハウを守るならコカ・コーラの様な経営にして特許は出さない方が得策ではないか?
A7議論は両方ある。営業秘匿の所は特許を出さないようにしており、その範囲外のところを特許申請している。
Q8 OEMにする戦略に変えたのはなぜでしょうか?
A8誰でもワサビが作れる環境にして、生産者を増やしたいから。
Q9 グラフで、だんだん葉が食べられなくなってきたのは何故でしょうか?
A9 最近では葉の活用価値が変わってきている。加工品などが作られるようになってきて、葉の価値が上がってきている。
文責:小栗武治
講演資料:小型植物工場で育てる”WASABI”を世界へ!
posted by EVF セミナー at 17:00| セミナー紹介
EVFセミナー報告:テクノロジーを流用し、小型植物工場でそだてる”WASABI”を世界へ!
2025年6月27日
EVFセミナー報告:テクノロジーを流用し、小型植物工場でそだてる”WASABI”を世界へ!
演題 : テクノロジーを流用し、小型植物工場でそだてる”WASABI”を世界へ!
講師 : 中村拓也様 株式会社NEXTAGE 代表取締役
聴講者数: 42名
講師紹介
1994年、明治学院大学 国際学部卒。開発経済学・農業経済学を専攻。
1994年 千代田化工建設株式会社入社。
CT121排煙脱硫装置、LNG受入設備の技術営業を担当。
株式会社荏原製作所では半導体製造装置(CMP装置、真空ポンプ、排ガス処理装置)の海外営業推進、
台湾現地法人では営業責任者として役割を果たす。
数社のスタートアップの立ち上げや事業推進を経験し、2018年1月に株式会社NEXTAGEを創業。
講演概要
・従来自然環境の中で育てられていたワサビを、40フィートの断熱コンテナ―を使用しどこでも生育することができるようになった。
・ワサビは2005年を起点とすると2022年には生産高で根茎も葉柄も約60%減となっている。原因は異常気象、温暖化、農業従事者の高齢化が背景にあり、ワサビの生産量が年々減少してきている。
・一方、日本食ブーム、海外での需要増などによりワサビの需要は伸びている。ワサビを守りたい、世界に届けたいとの思いから株式会社NEXTAGEをスタートさせた。
NEXTAGE社は、東京都目黒区祐天寺2丁目13-4に本社を、支社を焼津に、C&Mセンターを横浜の鶴見に置いて活動している。
・ワサビの国内生産減に伴い海外製のワサビが輸入されているが、チューブワサビ原料の90%は輸入されたホースラディッシュで作られている。これにはワサビの葉柄が粉砕されて含まれている。
・日本固有種のワサビには「実生種」と「真妻種」があり、前者は水っぽくおそばなどに使われ、後者はお寿司などに使用されている。価格は前者が1〜2万円/kg、後者は3〜4万円/kgであり、NEXTAGE社では後者を栽培しようとしている。
・生ワサビに含まれる「アリルイソチアネート」という成分は様々な健康効果を持っており、米国のMIT、スタンフォード、ハーバード、などの大学でも研究が進められている。
・ワサビ栽培モジュールは40ftのコンテナーを使用し、年間1800株(90kg)の真妻わさびを露路栽培期間の半分の約1年で収穫することに成功している。このモジュールでは路地でワサビを育てる環境を室内で再現させており、現状はノウハウをベースとしたインストラクションとの組み合わせだが、将来的にはAIをフルに活用しているため、ワサビ栽培への専門知識は不要であり、誰でもわさび栽培が可能になっている。このコンテナー栽培では水を循環させて使用しているので大幅な節水ができる。
・ワサビの種子は発芽率が低いためワサビの苗は供給不足になっている。NEXTAGEでは大学の研究機関と連携し専用液の開発などを進めており、病気に強いワサビの苗を作り農家にも供給する予定。
・NEXTAGEでは、屋内で促成栽培を実現するわさびの栽培方法、及びわさびの栽培管理システムに関する特許や、栽培設備、支援システム、支援装置、支援プログラム、支援方法に関する詳細や、遠隔栽培技術に関連する取り組みに関する特許を出願している。グローバルな進出には特許が必要。
・当然ブラックボックス的な部分はあるが、栽培技術を提供し商業化に成功しているのはNEXTAGEのみであり、現在競合者はいない、もしくは技術参入障壁がとても高いので優位性を確保できる。
・屋外栽培の場合、気候害や虫害などにより葉柄は食べられないが、コンテナー栽培の場合は屋内栽培なので葉柄は新鮮でおいしい。年間で1,296kg以上のわさびの葉と茎を安定して収穫でき、 わさびの葉茎だけで300万円以上の収入を得ている。
・わさびの葉茎を使ったレシピは数多く開発されており、大阪のヒルトン最上級ブランドホテルではワサビの葉柄を入れたカクテルを提供しており、非常に人気が出ている。コンテナー栽培によりわさびの葉茎の安定供給が実現し、市場、ホテル、大手加工メーカーからの引き合いが加速している。
・日本のわさびマーケット市場は50億円と推計されており、医薬品や健康食品分野が今後のマーケットになりそう。世界のわさび需要は年間10,585t以上と推定されており、イタリアやフランスではワサビの葉柄や根茎を使いたがっているシェフが多くいる。
・欧州でのワサビ試食会にNEXTAGEのわさび栽培モジュールで生産した「真妻」と、他の4か所で生産して購入したワサビを食べ比べてもらったところ、参加者の85.7%以上が NEXTAGEのワサビの購入を検討すると回答した。今後コンテナーを世界各国において、現地の人たちにワサビを栽培してもらえる
ようにして行きたい。
Q&A
Q1 フランス料理にはワサビは合わないと思っていた。今後農業との連携を進めてはどうでしょうか?
A1ありがとうございます。
Q2 何年くらいで投資回収ができそうですか?
A2躯体が1個2000万円。根茎の売り上げが1800株/年→約300万円/年、葉柄1000s年→約400万円/年、電気代が120万円/年、葉柄の剪定工数が7..2人/年、等を考慮すると5〜6年で投資回収ができそう。
Q3岐阜大学の山根先生のワサビに関する本によると、若者のワサビ離れ、農家の高齢化が進み、日本のワサビ産業はつぶれると書いてあるが、NEXTAGEができたので山根説は変わりそうではないか?
A3そうだと良いと思っている。先生は三鷹の大沢にあるワサビの生態を研究しておられたようだ。
Q4天然栽培の場合は水の中に天然の成分が含まれているので肥料などは必要ないか?
A4確かに湧水の中にはカルシューム等々のミネラルが入っている。コンテナの場合ではカリウム、リン、等々の必要な成分は与えている。
Q5日本の天然水は軟水が多いが、欧州あたりでは硬水が多くいろいろな成分が入っていると聞いている。
A5日本でも硬水の地域はあり、水質調査をして適切に変えている。ワサビ農家は科学的にはわからなくても感覚的に肥料をやっていた。この辺りはリスペクトする。
Q6安曇野と伊豆のどちらがワサビ栽培には適しているのか?
A6伊豆の方が良いと言われているが、安曇野も素晴らしい。
Q7特許を多数出されていると聞いているが、特許は20年で切れてしまうためノウハウを守るならコカ・コーラの様な経営にして特許は出さない方が得策ではないか?
A7議論は両方ある。営業秘匿の所は特許右を出さないようにしており、その範囲外のところを特許申請している。
Q8OEMにする戦略に変えたのはなぜでしょうか?
A8誰でもワサビが作れる環境にして、生産者を増やしたいから。
Q9グラフで、だんだん葉が食べられなくなってきたのは何故でしょうか?
A9 最近では葉の活用価値が変わってきている。加工品などが作られるようになってきて、葉の価値が上がってきている。
文責:小栗武治
講演資料:小型植物工場で育てる”WASABI”を世界へ!
EVFセミナー報告:テクノロジーを流用し、小型植物工場でそだてる”WASABI”を世界へ!
演題 : テクノロジーを流用し、小型植物工場でそだてる”WASABI”を世界へ!
講師 : 中村拓也様 株式会社NEXTAGE 代表取締役
聴講者数: 42名
講師紹介
1994年、明治学院大学 国際学部卒。開発経済学・農業経済学を専攻。
1994年 千代田化工建設株式会社入社。
CT121排煙脱硫装置、LNG受入設備の技術営業を担当。
株式会社荏原製作所では半導体製造装置(CMP装置、真空ポンプ、排ガス処理装置)の海外営業推進、
台湾現地法人では営業責任者として役割を果たす。
数社のスタートアップの立ち上げや事業推進を経験し、2018年1月に株式会社NEXTAGEを創業。
講演概要
・従来自然環境の中で育てられていたワサビを、40フィートの断熱コンテナ―を使用しどこでも生育することができるようになった。
・ワサビは2005年を起点とすると2022年には生産高で根茎も葉柄も約60%減となっている。原因は異常気象、温暖化、農業従事者の高齢化が背景にあり、ワサビの生産量が年々減少してきている。
・一方、日本食ブーム、海外での需要増などによりワサビの需要は伸びている。ワサビを守りたい、世界に届けたいとの思いから株式会社NEXTAGEをスタートさせた。
NEXTAGE社は、東京都目黒区祐天寺2丁目13-4に本社を、支社を焼津に、C&Mセンターを横浜の鶴見に置いて活動している。
・ワサビの国内生産減に伴い海外製のワサビが輸入されているが、チューブワサビ原料の90%は輸入されたホースラディッシュで作られている。これにはワサビの葉柄が粉砕されて含まれている。
・日本固有種のワサビには「実生種」と「真妻種」があり、前者は水っぽくおそばなどに使われ、後者はお寿司などに使用されている。価格は前者が1〜2万円/kg、後者は3〜4万円/kgであり、NEXTAGE社では後者を栽培しようとしている。
・生ワサビに含まれる「アリルイソチアネート」という成分は様々な健康効果を持っており、米国のMIT、スタンフォード、ハーバード、などの大学でも研究が進められている。
・ワサビ栽培モジュールは40ftのコンテナーを使用し、年間1800株(90kg)の真妻わさびを露路栽培期間の半分の約1年で収穫することに成功している。このモジュールでは路地でワサビを育てる環境を室内で再現させており、現状はノウハウをベースとしたインストラクションとの組み合わせだが、将来的にはAIをフルに活用しているため、ワサビ栽培への専門知識は不要であり、誰でもわさび栽培が可能になっている。このコンテナー栽培では水を循環させて使用しているので大幅な節水ができる。
・ワサビの種子は発芽率が低いためワサビの苗は供給不足になっている。NEXTAGEでは大学の研究機関と連携し専用液の開発などを進めており、病気に強いワサビの苗を作り農家にも供給する予定。
・NEXTAGEでは、屋内で促成栽培を実現するわさびの栽培方法、及びわさびの栽培管理システムに関する特許や、栽培設備、支援システム、支援装置、支援プログラム、支援方法に関する詳細や、遠隔栽培技術に関連する取り組みに関する特許を出願している。グローバルな進出には特許が必要。
・当然ブラックボックス的な部分はあるが、栽培技術を提供し商業化に成功しているのはNEXTAGEのみであり、現在競合者はいない、もしくは技術参入障壁がとても高いので優位性を確保できる。
・屋外栽培の場合、気候害や虫害などにより葉柄は食べられないが、コンテナー栽培の場合は屋内栽培なので葉柄は新鮮でおいしい。年間で1,296kg以上のわさびの葉と茎を安定して収穫でき、 わさびの葉茎だけで300万円以上の収入を得ている。
・わさびの葉茎を使ったレシピは数多く開発されており、大阪のヒルトン最上級ブランドホテルではワサビの葉柄を入れたカクテルを提供しており、非常に人気が出ている。コンテナー栽培によりわさびの葉茎の安定供給が実現し、市場、ホテル、大手加工メーカーからの引き合いが加速している。
・日本のわさびマーケット市場は50億円と推計されており、医薬品や健康食品分野が今後のマーケットになりそう。世界のわさび需要は年間10,585t以上と推定されており、イタリアやフランスではワサビの葉柄や根茎を使いたがっているシェフが多くいる。
・欧州でのワサビ試食会にNEXTAGEのわさび栽培モジュールで生産した「真妻」と、他の4か所で生産して購入したワサビを食べ比べてもらったところ、参加者の85.7%以上が NEXTAGEのワサビの購入を検討すると回答した。今後コンテナーを世界各国において、現地の人たちにワサビを栽培してもらえる
ようにして行きたい。
Q&A
Q1 フランス料理にはワサビは合わないと思っていた。今後農業との連携を進めてはどうでしょうか?
A1ありがとうございます。
Q2 何年くらいで投資回収ができそうですか?
A2躯体が1個2000万円。根茎の売り上げが1800株/年→約300万円/年、葉柄1000s年→約400万円/年、電気代が120万円/年、葉柄の剪定工数が7..2人/年、等を考慮すると5〜6年で投資回収ができそう。
Q3岐阜大学の山根先生のワサビに関する本によると、若者のワサビ離れ、農家の高齢化が進み、日本のワサビ産業はつぶれると書いてあるが、NEXTAGEができたので山根説は変わりそうではないか?
A3そうだと良いと思っている。先生は三鷹の大沢にあるワサビの生態を研究しておられたようだ。
Q4天然栽培の場合は水の中に天然の成分が含まれているので肥料などは必要ないか?
A4確かに湧水の中にはカルシューム等々のミネラルが入っている。コンテナの場合ではカリウム、リン、等々の必要な成分は与えている。
Q5日本の天然水は軟水が多いが、欧州あたりでは硬水が多くいろいろな成分が入っていると聞いている。
A5日本でも硬水の地域はあり、水質調査をして適切に変えている。ワサビ農家は科学的にはわからなくても感覚的に肥料をやっていた。この辺りはリスペクトする。
Q6安曇野と伊豆のどちらがワサビ栽培には適しているのか?
A6伊豆の方が良いと言われているが、安曇野も素晴らしい。
Q7特許を多数出されていると聞いているが、特許は20年で切れてしまうためノウハウを守るならコカ・コーラの様な経営にして特許は出さない方が得策ではないか?
A7議論は両方ある。営業秘匿の所は特許右を出さないようにしており、その範囲外のところを特許申請している。
Q8OEMにする戦略に変えたのはなぜでしょうか?
A8誰でもワサビが作れる環境にして、生産者を増やしたいから。
Q9グラフで、だんだん葉が食べられなくなってきたのは何故でしょうか?
A9 最近では葉の活用価値が変わってきている。加工品などが作られるようになってきて、葉の価値が上がってきている。
文責:小栗武治
講演資料:小型植物工場で育てる”WASABI”を世界へ!
posted by EVF セミナー at 16:00| セミナー紹介
2025年05月15日
EVFセミナー報告:人生100年!シニアが輝く人工知能社会とは?
演題:人生100年!シニアが輝く人工知能社会とは?
講師:室山 哲也 様 日本科学技術ジャーナリスト会議会長 (元NHK解説主幹)
聴講者数:49名
講師紹介
・1976年NHK入局。
・「ウルトラアイ」などの科学番組ディレクター、「クローズアップ現代」「NHKスペシャル」のチーフプロデューサー、解説主幹を経て、2018年定年。
・科学技術、生命・脳科学、環境、宇宙工学などを中心に論説を行い、子供向け科学番組「科学大好き土曜塾」(教育テレビ)の塾長として科学教育にも尽力した。
・モンテカルロ国際映像祭金獅子賞・放送文化基金賞・上海国際映像祭撮影賞・科学技術映像祭科学技術長官賞・橋田壽賀子賞ほか多数受賞。
・日本科学技術ジャーナリスト会議会長。政府委員多数。
講演概要
・「人生100年時代」と言われる現代、100歳以上の人口は今後ますます増加していきます。日本では高齢化社会が問題視されていますが、実はそれほど悲観的になる必要はありません。高齢者は「考えが古く頑固」などと言われがちですが、別の見方をすれば、若い世代にはない豊かな人生経験という「老人力」を秘めています。
・人間の脳は三層構造になっています。進化の過程で、まず生存を司る本能領域が形成され、次に喜怒哀楽を司る感情領域、そして最後に知能を司る領域が発達しました。AI(人工知能)は、特にこの三層目の「知能領域」を模倣・拡張した技術です。近年では生成AIの登場により、大きな注目を集めています。生成AIは従来のようなプログラミング言語を使うのではなく、大規模言語モデルを活用して自然言語で操作できるのが最大の特徴です。これにより、誰でもAIを自在に扱える時代が到来しました。
・とはいえ、AIと人間の決定的な違いは「体験の有無」です。AIは自ら体験したわけではなく、言葉を紡いでいるに過ぎません。AIは与えられた質問には非常に高いレベルで回答することができますが、自ら発案をして問題提起することはできません。AIは質問があって初めて稼働します。そして、質問の質によって回答の質も決まるため、「質問力」が極めて重要になります。
・この点において、高齢者は豊かな人生経験と言語力を持っているため、若い世代よりも深い質問を投げかけることができます。ここに、AI時代において高齢者が価値を発揮し、いきいきと活躍できるチャンスがあるのです。今後、バーチャルリアリティ(VR)やテレイグジスタンス(遠隔存在技術)が進化し、現実の機械やロボットをリモート操作することが可能になっていきます。シニア世代が主体となり、ネット技術や人工知能、遠隔医療、サイボーグ技術などを駆使すれば、日本は「課題先進国」から「課題解決先進国」へと成長できるのではないでしょうか。そうなれば、日本の新たな成長戦略も見えてきます。
この講演は、我々シニアにとって勇気と希望を与えてくれる内容でした。
Q&A
Q 生成とAIとは何が違うのか?
A いろいろな言葉を取り込んでゼロから作り上げるので生成と言われるようになった。AIと言うとロボットを動かすAIや自動運転が含まれていて、生成AIはAIの中の一部。
Q 60才台のシニアへの求人というとガードマンやマンションの管理人等しかない。シニアが生成AIを活用して若い人と共同して社会で活躍できるためにはどうすればよいのか?
A シニアが若い人に対する方法をしっかり考えなければならない。昔のようにノミニケーションという訳にはいかなくなっている。説教をするのでなく若い人と絆を築く橋渡しを私も模索中。
Q 絆を作るためには伝えることができる人間にならなければならないが、深みのあることを伝えるには寡黙であることと多弁であることのどちらがよいのだろうか?
A 日本語は曖昧で独特な言語。時には主語述語がない場合もある。日本語を十分に理解出来るようなAIの技術を開発できれば日本の技術も世界に通用するものになると言える。
Q 弱いロボットの研究はその後どうなったのか?
A 後継者がいない。もったいないことだ。
Q フェイクニュースや戦争の手段としてのAIを考えると、人間がどうのようにしてAIと向き合っていくべきなのか?
A フェイクニュース対策としてはAI作であれば透かしを入れることを法文化する等の対策も必要になってくる。事実の確認を行いつつ情報を管理することが重要。その意味では小さい頃からの教育が重要。
Q AIに詳しい国会議員を教えてください。
A まだいるかもしれないが、自民党の平将明(たいら まさあき)氏や河野太郎氏などは気になる。
講師:室山 哲也 様 日本科学技術ジャーナリスト会議会長 (元NHK解説主幹)
聴講者数:49名
講師紹介
・1976年NHK入局。
・「ウルトラアイ」などの科学番組ディレクター、「クローズアップ現代」「NHKスペシャル」のチーフプロデューサー、解説主幹を経て、2018年定年。
・科学技術、生命・脳科学、環境、宇宙工学などを中心に論説を行い、子供向け科学番組「科学大好き土曜塾」(教育テレビ)の塾長として科学教育にも尽力した。
・モンテカルロ国際映像祭金獅子賞・放送文化基金賞・上海国際映像祭撮影賞・科学技術映像祭科学技術長官賞・橋田壽賀子賞ほか多数受賞。
・日本科学技術ジャーナリスト会議会長。政府委員多数。
講演概要
・「人生100年時代」と言われる現代、100歳以上の人口は今後ますます増加していきます。日本では高齢化社会が問題視されていますが、実はそれほど悲観的になる必要はありません。高齢者は「考えが古く頑固」などと言われがちですが、別の見方をすれば、若い世代にはない豊かな人生経験という「老人力」を秘めています。
・人間の脳は三層構造になっています。進化の過程で、まず生存を司る本能領域が形成され、次に喜怒哀楽を司る感情領域、そして最後に知能を司る領域が発達しました。AI(人工知能)は、特にこの三層目の「知能領域」を模倣・拡張した技術です。近年では生成AIの登場により、大きな注目を集めています。生成AIは従来のようなプログラミング言語を使うのではなく、大規模言語モデルを活用して自然言語で操作できるのが最大の特徴です。これにより、誰でもAIを自在に扱える時代が到来しました。
・とはいえ、AIと人間の決定的な違いは「体験の有無」です。AIは自ら体験したわけではなく、言葉を紡いでいるに過ぎません。AIは与えられた質問には非常に高いレベルで回答することができますが、自ら発案をして問題提起することはできません。AIは質問があって初めて稼働します。そして、質問の質によって回答の質も決まるため、「質問力」が極めて重要になります。
・この点において、高齢者は豊かな人生経験と言語力を持っているため、若い世代よりも深い質問を投げかけることができます。ここに、AI時代において高齢者が価値を発揮し、いきいきと活躍できるチャンスがあるのです。今後、バーチャルリアリティ(VR)やテレイグジスタンス(遠隔存在技術)が進化し、現実の機械やロボットをリモート操作することが可能になっていきます。シニア世代が主体となり、ネット技術や人工知能、遠隔医療、サイボーグ技術などを駆使すれば、日本は「課題先進国」から「課題解決先進国」へと成長できるのではないでしょうか。そうなれば、日本の新たな成長戦略も見えてきます。
この講演は、我々シニアにとって勇気と希望を与えてくれる内容でした。
Q&A
Q 生成とAIとは何が違うのか?
A いろいろな言葉を取り込んでゼロから作り上げるので生成と言われるようになった。AIと言うとロボットを動かすAIや自動運転が含まれていて、生成AIはAIの中の一部。
Q 60才台のシニアへの求人というとガードマンやマンションの管理人等しかない。シニアが生成AIを活用して若い人と共同して社会で活躍できるためにはどうすればよいのか?
A シニアが若い人に対する方法をしっかり考えなければならない。昔のようにノミニケーションという訳にはいかなくなっている。説教をするのでなく若い人と絆を築く橋渡しを私も模索中。
Q 絆を作るためには伝えることができる人間にならなければならないが、深みのあることを伝えるには寡黙であることと多弁であることのどちらがよいのだろうか?
A 日本語は曖昧で独特な言語。時には主語述語がない場合もある。日本語を十分に理解出来るようなAIの技術を開発できれば日本の技術も世界に通用するものになると言える。
Q 弱いロボットの研究はその後どうなったのか?
A 後継者がいない。もったいないことだ。
Q フェイクニュースや戦争の手段としてのAIを考えると、人間がどうのようにしてAIと向き合っていくべきなのか?
A フェイクニュース対策としてはAI作であれば透かしを入れることを法文化する等の対策も必要になってくる。事実の確認を行いつつ情報を管理することが重要。その意味では小さい頃からの教育が重要。
Q AIに詳しい国会議員を教えてください。
A まだいるかもしれないが、自民党の平将明(たいら まさあき)氏や河野太郎氏などは気になる。
文責:桑原 敏行
posted by EVF セミナー at 00:00| セミナー紹介
2025年03月27日
EVFセミナー報告:航空燃料の脱炭素化ーSAFは打ち出の小槌になるか!
演題:「航空燃料の脱炭素化ーSAF*は打ち出の小槌になるか!」
講師:植村 文香様 日揮ホールディングス(株)サステナビリティ協創ユニットSAF事業アシスタントマネージャー
*SAF:持続可能な航空燃料
聴講者数:41名
講師紹介:
2017年4月旧日揮株式会社入社
2017年9月オーストラリア/LNGプラント建設現場
2018年4月国内石炭ガス化プラント設計
2019年4月タイ/化学プラント設計
2019年12月〜SAF製造事業検討
2023年2月〜合同会社SAFFAIRE SKY ENERGY 兼務出向
講演概要
1.会社概要(日揮ホールディングス):
1928年設立、現在/従業員数8,865名、グループ企業数87社。2019年に社名を現・日揮ホールディングに変更。プロジェクト実績は、80か国、20,000件以上。注力する領域は、CO₂マネジメント/資源循環/バイオ/DXカーボンクレジット認証。講師在籍の「廃食用油 SAF」プロジェクト」は、現在急拡大中。
2.SAF(Sustainable Aviation Fuel)について:
化石燃料以外を原料とする持続可能な航空燃料であり、従来の航空燃料と比べてライフサイクルでCO₂排出量を大幅に削減。「中大型の航空機」にはSAFが不可欠。
大幅なCO₂削減には他に代替がなく、世界でのSAFの需要は拡大が予測され、今年は、「SAF元年」と位置付けられている。EUでは2025年よりSAFの供給義務化がスタートし、日本でも2030年に国内SAF10%供給の目標を設定。2022年時点での世界のSAFの需給ギャップは非常に大きく、製造プロジェクトは欧米企業が先行しており、製造効率の良い「廃食用油」などの油脂原料が主流。
2022年10月の第41回ICAO総会で、2025年までの取組について「オフセット量算定の基準となるベースラインを2019年CO₂排出量の85%に変更」すること等を決定。この見直しを踏まえ、国内のSAFの需給量のすり合わせが必要。
国内SAF製造に向けた取り組みとして、ENEOS/コスモ石油/出光興産/富士石油/太陽石油があげられるが、既に投資決定、設備建設しているのは、日揮ホールディングス/コスモ石油/レボインターナショナルの事業のみ。
SAFの原料として「廃食用油」は、製造プロセス/上流工程の処理工数が少なく有利、又他の原料に比べCO₂削減効果は大きい。
SAFの製造技術には色々あるが、HEFA(廃食用油から)が2025年まではベースの製造技術、加えてATJ(バイオエタノールから)。2050年に向けては合成燃料が増加すると予測される。
3.日揮グループが取り組む廃食用油を原料とするSAF製造事業について:
日揮HD(48%)、コスモ石油(48%)、レボインターナショナル(4%)により、2022年11月に国産SAFの製造会社「SAFFAIRE SKY ENERGY」が設立。日揮グループは、主に全体サプライチェーン構築とSAF製造装置建設を担当。
4.原料廃食用油の回収について:
原料は、全国の飲食店舗からの廃食用油のみを使用。廃食用油は、堺市のSAF製造設備の原料集積所に集められる。原料油脂から、水素化精製プロセスにより、SAF、バイオナフサなどが精製される。
NEAT SAF(100%バイオマス由来)は、50%以上を従来ジェット燃料と混合して製品化(混合SAF)。混合SAFは、堺製油所から日本の国際空港へ出荷され、その際、GHG排出削減カウントの為のCORSIA適格燃料の国際認証が必要となる。
国内の廃食用油(50万トン)の課題は、家庭系(10万トン)の「再利用」と、事業系(40万トン)の内、海外輸出(12万トン)などの「国内資源循環」。その為にサプライチェーン全体の連携によりトレーサビリティの確保が必要。廃食用油は、空港・商業施設・百貨店・外食関連企業などとの連携で回収。
資源循環による脱炭素化社会の実現を目指す「FRY to FLY Project」には、本日時点で211団体が加盟。
<よく準備された、大変理解しやすい、素晴らしい内容のセミナーでした。>
Q&A:
Q1)日本の10%目標とSAF50%混合は、製造量と熱効率からのものか?
A1)SAFは、熱効率などの品質上は従来の燃料とほぼ同じ。規格も新しく先ず50%に。現在、SAF100%に向けての実証実験も行われている。10%目標は、製造量からではなく、2050年のカーボンネットゼロに向けての取り組みから。一方、廃食用油の供給量には上限があり、2050年に向けてSAFの他の製造方法も含め積み上げて行く必要がある。
Q2)日本の将来の需要に対して、現在の堺の製造量はどれくらいか?
A2)現在の国内の年間廃食用油は50万トンで、そのうちの海外輸出12万トンと家庭系10万トンの合計が、22万トン。2030年の供給予測が172万トンなので、全く足りない。アルコール、ゴミなどからの他の製法が必要。現在の堺の製造会社は3万キロで22万キロと比べ全く足りない。しかし、原料の収集には苦労しているのが現状。この問題が解決できれば、将来2号機、3号機も考えられる。
Q3)水素化精製プロセスの水素はグリーンなのかブルーなのか?将来的には?また、LCA上はどの程度、進んでいるのか?
A3)現状の水素は、既設のコスモ・堺プラントからで、石油由来。今後グリーン化に。ICAOの計算式があり、それを基に計算すると、廃食用油の84%がCO₂削減、13.9%がCO₂排出量となり、その13.9%のほとんどが水素。これがグリーン化されれば、90%のCO₂削減となる。
Q4)日本全体の食用油の生産量はどれくらいか?廃食用油収集の回収率を知りたい。
A4)業界の数字は、示されていない。人口減により油の需要も落ちているし、各社の現場では濾過機等により油の使用を減らす努力もされている。
Q5)@SAFのコストは?Aパーム油はSAFの原料になりうるか?B排出権は、誰がクレジットを得るのか?CNEAT SAFは、航空燃料の△47℃をクリアできるのか?
A5)@SAFは収集コストなどもかかり、JET燃料のおおよそ3〜5倍のコスト。SAF採用の背景には、航空各社の脱炭素の認識がある。Aパームとアンモニアだが、アンモニアは他のものに使えるのでわざわざSAFには。廃パーム油は使える。常温での液体油の回収が多く行われており、固化のパーム油のハンドリングは少し難しいが、品質的には問題はない。B排出権は航空会社が。コストとしては、排出権取引の方が安いが、航空各社の姿勢の表れ。C出来る。正しく△47℃のスペックミートの試運転をしているところ。
Q6)天麩羅油は植物由来で吸収して燃やすから、SAFがカーボンフリーと理解しているが・・・。
A6)その通り。今まで石油を掘り起こしてジェット燃料を作っていたけれど、植物由来に変えることにより、新たにカーボンを地上に掘り起こさなくなる。これはLife Cycleで考えている。
Q7)@10数年前に、京都のバスで、軽油の代わりにバイオディーゼルを、と聞いた事があるが、その後どれくらい進んでいるのか、そしてSAFとの取り合いにならないのか?A廃食用油の値段について。
A7)@京都市も含め各自治体で結構やられているが、採算があわない、エンジンがおかしくなる場合があり、又臭いなどから、止めているところもあり、日本のバイオディーゼルの需要は少ない。今のところは、SAFとの競合にはなっていない。A買い取り価格は、基本的には各社(店舗)に損の無いように決めさせてもらっている。
講師:植村 文香様 日揮ホールディングス(株)サステナビリティ協創ユニットSAF事業アシスタントマネージャー
*SAF:持続可能な航空燃料
聴講者数:41名
講師紹介:
2017年4月旧日揮株式会社入社
2017年9月オーストラリア/LNGプラント建設現場
2018年4月国内石炭ガス化プラント設計
2019年4月タイ/化学プラント設計
2019年12月〜SAF製造事業検討
2023年2月〜合同会社SAFFAIRE SKY ENERGY 兼務出向
講演概要
1.会社概要(日揮ホールディングス):
1928年設立、現在/従業員数8,865名、グループ企業数87社。2019年に社名を現・日揮ホールディングに変更。プロジェクト実績は、80か国、20,000件以上。注力する領域は、CO₂マネジメント/資源循環/バイオ/DXカーボンクレジット認証。講師在籍の「廃食用油 SAF」プロジェクト」は、現在急拡大中。
2.SAF(Sustainable Aviation Fuel)について:
化石燃料以外を原料とする持続可能な航空燃料であり、従来の航空燃料と比べてライフサイクルでCO₂排出量を大幅に削減。「中大型の航空機」にはSAFが不可欠。
大幅なCO₂削減には他に代替がなく、世界でのSAFの需要は拡大が予測され、今年は、「SAF元年」と位置付けられている。EUでは2025年よりSAFの供給義務化がスタートし、日本でも2030年に国内SAF10%供給の目標を設定。2022年時点での世界のSAFの需給ギャップは非常に大きく、製造プロジェクトは欧米企業が先行しており、製造効率の良い「廃食用油」などの油脂原料が主流。
2022年10月の第41回ICAO総会で、2025年までの取組について「オフセット量算定の基準となるベースラインを2019年CO₂排出量の85%に変更」すること等を決定。この見直しを踏まえ、国内のSAFの需給量のすり合わせが必要。
国内SAF製造に向けた取り組みとして、ENEOS/コスモ石油/出光興産/富士石油/太陽石油があげられるが、既に投資決定、設備建設しているのは、日揮ホールディングス/コスモ石油/レボインターナショナルの事業のみ。
SAFの原料として「廃食用油」は、製造プロセス/上流工程の処理工数が少なく有利、又他の原料に比べCO₂削減効果は大きい。
SAFの製造技術には色々あるが、HEFA(廃食用油から)が2025年まではベースの製造技術、加えてATJ(バイオエタノールから)。2050年に向けては合成燃料が増加すると予測される。
3.日揮グループが取り組む廃食用油を原料とするSAF製造事業について:
日揮HD(48%)、コスモ石油(48%)、レボインターナショナル(4%)により、2022年11月に国産SAFの製造会社「SAFFAIRE SKY ENERGY」が設立。日揮グループは、主に全体サプライチェーン構築とSAF製造装置建設を担当。
4.原料廃食用油の回収について:
原料は、全国の飲食店舗からの廃食用油のみを使用。廃食用油は、堺市のSAF製造設備の原料集積所に集められる。原料油脂から、水素化精製プロセスにより、SAF、バイオナフサなどが精製される。
NEAT SAF(100%バイオマス由来)は、50%以上を従来ジェット燃料と混合して製品化(混合SAF)。混合SAFは、堺製油所から日本の国際空港へ出荷され、その際、GHG排出削減カウントの為のCORSIA適格燃料の国際認証が必要となる。
国内の廃食用油(50万トン)の課題は、家庭系(10万トン)の「再利用」と、事業系(40万トン)の内、海外輸出(12万トン)などの「国内資源循環」。その為にサプライチェーン全体の連携によりトレーサビリティの確保が必要。廃食用油は、空港・商業施設・百貨店・外食関連企業などとの連携で回収。
資源循環による脱炭素化社会の実現を目指す「FRY to FLY Project」には、本日時点で211団体が加盟。
<よく準備された、大変理解しやすい、素晴らしい内容のセミナーでした。>
Q&A:
Q1)日本の10%目標とSAF50%混合は、製造量と熱効率からのものか?
A1)SAFは、熱効率などの品質上は従来の燃料とほぼ同じ。規格も新しく先ず50%に。現在、SAF100%に向けての実証実験も行われている。10%目標は、製造量からではなく、2050年のカーボンネットゼロに向けての取り組みから。一方、廃食用油の供給量には上限があり、2050年に向けてSAFの他の製造方法も含め積み上げて行く必要がある。
Q2)日本の将来の需要に対して、現在の堺の製造量はどれくらいか?
A2)現在の国内の年間廃食用油は50万トンで、そのうちの海外輸出12万トンと家庭系10万トンの合計が、22万トン。2030年の供給予測が172万トンなので、全く足りない。アルコール、ゴミなどからの他の製法が必要。現在の堺の製造会社は3万キロで22万キロと比べ全く足りない。しかし、原料の収集には苦労しているのが現状。この問題が解決できれば、将来2号機、3号機も考えられる。
Q3)水素化精製プロセスの水素はグリーンなのかブルーなのか?将来的には?また、LCA上はどの程度、進んでいるのか?
A3)現状の水素は、既設のコスモ・堺プラントからで、石油由来。今後グリーン化に。ICAOの計算式があり、それを基に計算すると、廃食用油の84%がCO₂削減、13.9%がCO₂排出量となり、その13.9%のほとんどが水素。これがグリーン化されれば、90%のCO₂削減となる。
Q4)日本全体の食用油の生産量はどれくらいか?廃食用油収集の回収率を知りたい。
A4)業界の数字は、示されていない。人口減により油の需要も落ちているし、各社の現場では濾過機等により油の使用を減らす努力もされている。
Q5)@SAFのコストは?Aパーム油はSAFの原料になりうるか?B排出権は、誰がクレジットを得るのか?CNEAT SAFは、航空燃料の△47℃をクリアできるのか?
A5)@SAFは収集コストなどもかかり、JET燃料のおおよそ3〜5倍のコスト。SAF採用の背景には、航空各社の脱炭素の認識がある。Aパームとアンモニアだが、アンモニアは他のものに使えるのでわざわざSAFには。廃パーム油は使える。常温での液体油の回収が多く行われており、固化のパーム油のハンドリングは少し難しいが、品質的には問題はない。B排出権は航空会社が。コストとしては、排出権取引の方が安いが、航空各社の姿勢の表れ。C出来る。正しく△47℃のスペックミートの試運転をしているところ。
Q6)天麩羅油は植物由来で吸収して燃やすから、SAFがカーボンフリーと理解しているが・・・。
A6)その通り。今まで石油を掘り起こしてジェット燃料を作っていたけれど、植物由来に変えることにより、新たにカーボンを地上に掘り起こさなくなる。これはLife Cycleで考えている。
Q7)@10数年前に、京都のバスで、軽油の代わりにバイオディーゼルを、と聞いた事があるが、その後どれくらい進んでいるのか、そしてSAFとの取り合いにならないのか?A廃食用油の値段について。
A7)@京都市も含め各自治体で結構やられているが、採算があわない、エンジンがおかしくなる場合があり、又臭いなどから、止めているところもあり、日本のバイオディーゼルの需要は少ない。今のところは、SAFとの競合にはなっていない。A買い取り価格は、基本的には各社(店舗)に損の無いように決めさせてもらっている。
文責:三嶋 明
posted by EVF セミナー at 16:00| セミナー紹介
2025年02月27日
EVFセミナー報告:2025年の新世界 〜 大統領選挙の次に来るものは何か!
演題:2025年の新世界 〜 大統領選挙の次に来るものは何か!
講師:林 良造 様 武蔵野大学国際総合研究所 フェロー
聴講者数:41名
講師紹介
1970年 京都大学法学部卒業、通商産業省 入省
1976年 ハーバード大学ロースクールLL.M.
1991年 ハーバード大学ケネディスクール フェロー
2001年 経済産業省 官房長、経済産業政策局長
帝人 独立社外監査役、伊藤忠商事 独立社外監査役、シティバンク銀行 社外取締役、経営競争基盤 経営諮問委員、コア 独立社外取締役、Robert Bosch GmbH International Advisory Board Member、東京大学公共政策大学院 教授、機械振興協会経済研究所所長 などを歴任
講演要旨
1)トランプ政権の素早いACTION
--トランプ劇場は思ったより早く始まり、テンポが速くかつ中身の詰まった大統領令が発せられている。二期目になるのでバイデン政権時によく自分の政策を考えていた形跡が見られる。
--ガザ戦争もネタニヤフ首相と手際よく処理した。
--ウクライナ戦争も3年間進まなかった戦争終結に向けた全く違う動きがみられる。
2)大統領選挙結果
--先進国の国々では与党が大敗している。その背景としては移民流入やウクライナ戦争による経済悪化など格差が拡大し、それが急激な変化として国民に不公平な感情を抱かせたことがある。
--経験、国力からも今やトランプの独壇場。トランプ大統領が欧州を動かしている。
3)Eurasia Group
--Eurasia Groupによる10のリスクの中で取り上げられている多くはトランプ関連。G7G20などの世界統治機構が機能不全を起こしており、その実効性が問われている。武力紛争解決ができず、貿易戦争も片付かない。
--1971年から機能不全を起こしており、今まではきれいごとに走りすぎていた。アメリカには やりすぎ感と不公平感が渦巻いている。
--今まではハードパワーの共和党とソフトパワーの民主党の両輪できたが。
4)政権の骨格
--トランプに忠誠を誓うスキのない政権骨格
--タブーであった軍トップを交代させた。
--トランプから見たイーロンマスクは利用価値が高い段階。マスクの行動に閣僚との軋轢なども予想されるが当面はトランプのマスク支持は強固。
5)トランプ政権の主要目標
--ウクライナは欧州が中心となり処理。欧州の防衛費を拡大させる。そしてイスラエルとアラブ(エジプト)の処理を終わらせる。しかる後に中国と対峙する。これがトランプが本当にやりたいこと。
--多くの首脳は新しいが、トランプは2期目なので交渉はトランプ有利。
6)Trump Style 傾向と対策
--力の信奉による戦争回避
--関税攻勢とトップ外交 コロンビア、カナダ、メキシコ、中国等
--目指すところはハードバワーとソフトバランスのリバランス
7)米中関係他
--経済力は米優位だが、東アジアの軍事力は中国優勢
--トランプの任期2027年(残り2年はレームダックか)習近平任期2028年
--今後はアジア太平洋が新秩序作りの主戦場になる
8)石破政権の政権運営他
--保守派が嫌だという岸田さんの押しで石破政権が誕生した。
--派閥そして政策決定のへそががなくなって例えば夫婦別姓などのコンセンサス作りは困難に。
--安倍さんの時代に比べて官邸の影響力は減っている。
--安倍政権で積み残した岩盤規制は農業と医療。
--今後の産業政策で一番むつかしいのは自動車。電子・電機。自動車構造変化が多面で起きている。燃料、自動運転、AIなど世界的に合従連合が進んでいる。 それらの情報量が増大化、スピードが速い。
どういう風にのりきれるかが最大の産業課題。
--課題:縦割りを壊して横串を通していくことにより産業・経済を強化すること。ハードバワーとソフトバランスのリバランスをとっていくこと。
以下質疑応答
質問1:政治・外交も含め日本をいかに富ませるか?日本がなし崩し的におとなしい国になっていくのか心配。
回答1 ゆでガエルの状態に多くの人が慣れてきている。この数年の間にそれなりに変わってきているが、うまくオーケストレーションできるかが課題。いろんな場面で新しい芽も育ちつつある。
質問2:政府のエネルギー政策に疑問。どうすれば日本が変われるのか?
回答2:エネルギーの自給、経済性などの理由で原子力が基本にならざるを得ない。やっと出発点に戻った。データセンターやAIなどで電源供給安定性が重要なので原子力、再エネ、LNGなどが手段となるであろう。農業、医療及びエネルギー政策が硬直化している。政策決定には自民党、審議会、業界代表、与党全部がそろっていく必要があり硬直化している。今後日本でも農業、医療及びエネルギーのニッチな領域で技術ブレークスルーを進化させ広がりを始まることを期待している。
質問3:エネルギー関連仕事をしている。インドで分散型エネルギー経済産業省FS受注した。JCMに関連するFSでは国家間契約が前提なので契約の日程など教えて下さい。
回答3:インドは大きな国で一本化が難しい。
質問4:米国にとって日本を本気で守る気があるのだろうか?
回答4:日本はアメリカにとって今は価値が高い状態。中国がアメリカにとって一番大きな脅威。アジアの国の中で日本が安心して付き合うことができる。韓国は難しいし北朝鮮問題を抱えている。しかし20年後ぐらい中国、朝鮮半島問題が収まったら日本の立ち位置は変わるだろう。状況が変わっていっても日本を防御する。そう意味でも日本が持っている製造力、技術力や金融力などが必要なんだと思わせるものが必要である。
質問5:トランプが大統領令で政策をすすめている。憲法との関係はどう考えればよいのでしょうか?
回答5:アメリカでは大統領、議員ともに国民から直接選ばれている。行政庁は議会が決めたことを与えられた予算内で大統領令に従い執行する。現在大統領も議会も共和党。連邦最高裁判所も判事9名中6名が保守派。州と連邦間で多くの問題が発生するが憲法で細かく役割が規定され三権分立の下連邦最高裁で解決される。様々な案件を多数決で決める制度である。その結果は極端に振れるが、それを制限しているのがこの”Check &Balance“のシステムである。日本ではコンセンサスを得るように論議するので時間がかかり大きな変化ができないが極端な結果に結びつかない面でもある。
講演資料:2025年の新世界
講師:林 良造 様 武蔵野大学国際総合研究所 フェロー
聴講者数:41名
講師紹介
1970年 京都大学法学部卒業、通商産業省 入省
1976年 ハーバード大学ロースクールLL.M.
1991年 ハーバード大学ケネディスクール フェロー
2001年 経済産業省 官房長、経済産業政策局長
帝人 独立社外監査役、伊藤忠商事 独立社外監査役、シティバンク銀行 社外取締役、経営競争基盤 経営諮問委員、コア 独立社外取締役、Robert Bosch GmbH International Advisory Board Member、東京大学公共政策大学院 教授、機械振興協会経済研究所所長 などを歴任
講演要旨
1)トランプ政権の素早いACTION
--トランプ劇場は思ったより早く始まり、テンポが速くかつ中身の詰まった大統領令が発せられている。二期目になるのでバイデン政権時によく自分の政策を考えていた形跡が見られる。
--ガザ戦争もネタニヤフ首相と手際よく処理した。
--ウクライナ戦争も3年間進まなかった戦争終結に向けた全く違う動きがみられる。
2)大統領選挙結果
--先進国の国々では与党が大敗している。その背景としては移民流入やウクライナ戦争による経済悪化など格差が拡大し、それが急激な変化として国民に不公平な感情を抱かせたことがある。
--経験、国力からも今やトランプの独壇場。トランプ大統領が欧州を動かしている。
3)Eurasia Group
--Eurasia Groupによる10のリスクの中で取り上げられている多くはトランプ関連。G7G20などの世界統治機構が機能不全を起こしており、その実効性が問われている。武力紛争解決ができず、貿易戦争も片付かない。
--1971年から機能不全を起こしており、今まではきれいごとに走りすぎていた。アメリカには やりすぎ感と不公平感が渦巻いている。
--今まではハードパワーの共和党とソフトパワーの民主党の両輪できたが。
4)政権の骨格
--トランプに忠誠を誓うスキのない政権骨格
--タブーであった軍トップを交代させた。
--トランプから見たイーロンマスクは利用価値が高い段階。マスクの行動に閣僚との軋轢なども予想されるが当面はトランプのマスク支持は強固。
5)トランプ政権の主要目標
--ウクライナは欧州が中心となり処理。欧州の防衛費を拡大させる。そしてイスラエルとアラブ(エジプト)の処理を終わらせる。しかる後に中国と対峙する。これがトランプが本当にやりたいこと。
--多くの首脳は新しいが、トランプは2期目なので交渉はトランプ有利。
6)Trump Style 傾向と対策
--力の信奉による戦争回避
--関税攻勢とトップ外交 コロンビア、カナダ、メキシコ、中国等
--目指すところはハードバワーとソフトバランスのリバランス
7)米中関係他
--経済力は米優位だが、東アジアの軍事力は中国優勢
--トランプの任期2027年(残り2年はレームダックか)習近平任期2028年
--今後はアジア太平洋が新秩序作りの主戦場になる
8)石破政権の政権運営他
--保守派が嫌だという岸田さんの押しで石破政権が誕生した。
--派閥そして政策決定のへそががなくなって例えば夫婦別姓などのコンセンサス作りは困難に。
--安倍さんの時代に比べて官邸の影響力は減っている。
--安倍政権で積み残した岩盤規制は農業と医療。
--今後の産業政策で一番むつかしいのは自動車。電子・電機。自動車構造変化が多面で起きている。燃料、自動運転、AIなど世界的に合従連合が進んでいる。 それらの情報量が増大化、スピードが速い。
どういう風にのりきれるかが最大の産業課題。
--課題:縦割りを壊して横串を通していくことにより産業・経済を強化すること。ハードバワーとソフトバランスのリバランスをとっていくこと。
以下質疑応答
質問1:政治・外交も含め日本をいかに富ませるか?日本がなし崩し的におとなしい国になっていくのか心配。
回答1 ゆでガエルの状態に多くの人が慣れてきている。この数年の間にそれなりに変わってきているが、うまくオーケストレーションできるかが課題。いろんな場面で新しい芽も育ちつつある。
質問2:政府のエネルギー政策に疑問。どうすれば日本が変われるのか?
回答2:エネルギーの自給、経済性などの理由で原子力が基本にならざるを得ない。やっと出発点に戻った。データセンターやAIなどで電源供給安定性が重要なので原子力、再エネ、LNGなどが手段となるであろう。農業、医療及びエネルギー政策が硬直化している。政策決定には自民党、審議会、業界代表、与党全部がそろっていく必要があり硬直化している。今後日本でも農業、医療及びエネルギーのニッチな領域で技術ブレークスルーを進化させ広がりを始まることを期待している。
質問3:エネルギー関連仕事をしている。インドで分散型エネルギー経済産業省FS受注した。JCMに関連するFSでは国家間契約が前提なので契約の日程など教えて下さい。
回答3:インドは大きな国で一本化が難しい。
質問4:米国にとって日本を本気で守る気があるのだろうか?
回答4:日本はアメリカにとって今は価値が高い状態。中国がアメリカにとって一番大きな脅威。アジアの国の中で日本が安心して付き合うことができる。韓国は難しいし北朝鮮問題を抱えている。しかし20年後ぐらい中国、朝鮮半島問題が収まったら日本の立ち位置は変わるだろう。状況が変わっていっても日本を防御する。そう意味でも日本が持っている製造力、技術力や金融力などが必要なんだと思わせるものが必要である。
質問5:トランプが大統領令で政策をすすめている。憲法との関係はどう考えればよいのでしょうか?
回答5:アメリカでは大統領、議員ともに国民から直接選ばれている。行政庁は議会が決めたことを与えられた予算内で大統領令に従い執行する。現在大統領も議会も共和党。連邦最高裁判所も判事9名中6名が保守派。州と連邦間で多くの問題が発生するが憲法で細かく役割が規定され三権分立の下連邦最高裁で解決される。様々な案件を多数決で決める制度である。その結果は極端に振れるが、それを制限しているのがこの”Check &Balance“のシステムである。日本ではコンセンサスを得るように論議するので時間がかかり大きな変化ができないが極端な結果に結びつかない面でもある。
文責:藤木憲夫
講演資料:2025年の新世界
posted by EVF セミナー at 16:00| セミナー紹介
2025年01月29日
EVFセミナー報告:アンモニアが脱炭素に果たす役割と課題
演題:アンモニアが脱炭素に果たす役割と課題
講師:村木 茂 様 一般社団法人クリーン燃料アンモニア協会 会長
聴講者数:48名
講師紹介
1972年: 東京大学工学部卒業
1972年: 東京ガス株式会社入社
1989年: ニューヨーク事務所所長、米国駐在
2000年: 原料部長
2002年: 執行役員
2004年: 常務執行役員R&D本部長
2007年: 常務執行役員エネルギーソリューション本部長
2010年: 代表取締役副社長執行役員
2014年: 取締役副会長
2015年: 常勤顧問
2022年: 一般社団法人クリーン燃料アンモニア協会(旧グリーンアンモニアコンソーシアム)会長
講演概要
化石燃料由来のブルー水素、再生可能エネルギー由来のグリーン水素を海外から日本へ輸送するエネルギーキャリアとしてのアンモニアが、貯蔵を含めて他の水素輸送よりも経済的。液化水素、有機ハイドライド(メチルシクロヘキサン)での海上輸送の取り組みもあるが、陸揚げ後に気化、脱水素のプロセスが必要なのに対して、アンモニアは海上輸送後、燃焼のプロセスに直接利用できる。2024年10月23日施行の水素社会推進法により、GX経済移行債により約7兆円が水素等への支援、その内数として、国内製造及び輸入のクリーン水素に対して、既存燃料との価格差に対して「値差支援」を総額3兆円を15年間支援(2千億円/年)営業費用の支援は異例、但し、適用条件が厳格。ハブ・アンド・スポークで国内各地への供給網を効率的に配置する拠点整備支援に1兆円の投資支援
アンモニアの役割;
アンモニアは肥料で製造・貯蔵・輸送の技術が存在。水素を運ぶ・貯蔵するにはアンモニアが最適。燃焼してもゼロエミッション。発電、船舶推進、工業炉での利用が先行。
利用技術:
石炭火力発電でのアンモニア混焼(20%)はJERAで実証済み、50ー60%の混焼になる見込み。アンモニア専焼とすると排ガス量が増大し、煙道の改造が必要になる。アンモニア燃料コンバインドサイクル(ACC)のガスタービン(GT)火力発電(効率60%)が本命だが、大型は未完成。小型GTは変動出力に対応可能、大型GTはベースロード向け。
海外アンモニアの輸入元:
天然ガス由来のブルーは、米国、カナダ、中東、オーストラリアから。再生エネ由来のグリーンは、インド、チリ、オーストラリア、中東から。
アンモニア製造法:
ハーバー・ボッシュ法+水蒸気改質。75%のCO2回収率を更に高めるとコスト上昇。今後の技術としてのATR(自己熱改質)では空気から窒素を分離する(ATU)が消費する電力の脱炭素が課題。
アンモニア受け入れの国内受け入れ施設:
6箇所のハブ:苫小牧、相馬、常陸那珂および鹿島、碧南、泉北(大阪)、山口周南および愛媛波方。受入規模:300万トン/2030年、3000万トン/2050年
ロードマップ:
インフレにより製造コストが上昇しているため値差支援が増大。第7次エネルギー基本計画に対して2050年に3000万トンとしていた計画を10年前倒しして2040年に達成するとの計画を提出。
(注)当日の質疑に関しましては、EVFホームページに掲載しておりますので、ご参照ください。
https://www.evfjp.org/
主な質疑応答
Q1:アンモニアの経済性は?
A1:ブルーアンモニアで天然ガスの約2倍強、グリーンアンモニアで3倍位、1万円を超えるカーボンプライシング(炭素税)が必要
Q2:輸入の天然ガスに1万円以上のカーボンプライシングを課税し、アンモニアと同等の価格になる?
A2:そうです。
Q3:海外からの水素のままで輸送するケースはない?
A3:液化水素は高コストで無理、水素は2,000kmの範囲までパイプラインで輸送、それ以上の距離では採算が合わない。液化水素、高圧水素での輸入極めて難しい。
Q4:経産省が設定した20円/Nm3は、発熱量ベースで天然ガスの2倍程度?
A4:天然ガスの1.2−1.3倍程度。この20円の水素でコンバインドガスサイクルで発電すると12円/kWhで発電できる。
Q5:航空機のエンジンでのアンモニア利用の可能性?
A5:できるが、アンモニアが漏れる場合を想定する必要があり、航空機のエンジンなどでの利用はアンモニアの毒性の観点から、一般人が利用する場所での使用はやめた方が良い。熱量あたりの体積が大きく航続距離も短縮。
Q6:鉄鋼産業でのアンモニア利用が他の産業よりも遅い理由?
A6:国内で水素(アンモニア)還元製鉄はコストで難しい、20円でなく8.5円/Nm3でないと採算が合わない。鉄鉱石の産地で脱炭素燃料が安い海外で、粗鋼を製造、国内で電炉で製品に仕上げるのが経済的。石油化学も日本での経済合理性があるか分からない。
Q7:アンモニアから水素を取りだし水素で混焼させるのは?
A7:水素源として可能性は大きいが、10%のエネルギーロス。
Q8:原子力で製造する水素を利用?
A8:原子力で水素を製造する技術は実用化までの時間が必要。
Q9:エネルギーを自給自足するために、国内生産のグリーン水素と大気中の窒素でアンモニアを製造できないか?
A9:国内の再エネコストが高価。浮体式洋上風力を推進しているが、EEZでの浮体式は需要地から離れている。海底の直流送電も良いが、LNG,LPGの既存技術を利用し、浮体式アンモニア製造設備でアンモニアを製造し運ぶ方法は検討の余地があり。
Q10:アンモニアがどれ位使われるかの見通し?
A10:300万トン/2030年で発電量の0.8%、2050年に水素及びアンモニアで10%、2040年に発電で4−5%、産業で1−2%
Q11:MITがADDIS Energy社が鉱山からアンモニアを採掘(製造?)するニュースがあった。
A11:存じませんでした。地中に水素は存在するが、アンモニアは?
Q12:製造プロセスでエネルギーロスがあるがエネルギー収支は?。
A12:アンモニア製造で25%のエネルギーロス。LNGで10%の液化ロス、アンモニアの液体輸送に比べると、シクロヘキサン輸送だと脱水素を含め50-60%のロスなのでアンモニアが勝る。これまでのアンモニアは長期契約はなく、オープンマーケットで取引されてきたのが、長期契約で大規模な供給設備形成をすると、市場価格が低下する可能性はある。
講演資料:アンモニアが脱炭素で果たす役割と課題
講師:村木 茂 様 一般社団法人クリーン燃料アンモニア協会 会長
聴講者数:48名
講師紹介
1972年: 東京大学工学部卒業
1972年: 東京ガス株式会社入社
1989年: ニューヨーク事務所所長、米国駐在
2000年: 原料部長
2002年: 執行役員
2004年: 常務執行役員R&D本部長
2007年: 常務執行役員エネルギーソリューション本部長
2010年: 代表取締役副社長執行役員
2014年: 取締役副会長
2015年: 常勤顧問
2022年: 一般社団法人クリーン燃料アンモニア協会(旧グリーンアンモニアコンソーシアム)会長
講演概要
化石燃料由来のブルー水素、再生可能エネルギー由来のグリーン水素を海外から日本へ輸送するエネルギーキャリアとしてのアンモニアが、貯蔵を含めて他の水素輸送よりも経済的。液化水素、有機ハイドライド(メチルシクロヘキサン)での海上輸送の取り組みもあるが、陸揚げ後に気化、脱水素のプロセスが必要なのに対して、アンモニアは海上輸送後、燃焼のプロセスに直接利用できる。2024年10月23日施行の水素社会推進法により、GX経済移行債により約7兆円が水素等への支援、その内数として、国内製造及び輸入のクリーン水素に対して、既存燃料との価格差に対して「値差支援」を総額3兆円を15年間支援(2千億円/年)営業費用の支援は異例、但し、適用条件が厳格。ハブ・アンド・スポークで国内各地への供給網を効率的に配置する拠点整備支援に1兆円の投資支援
アンモニアの役割;
アンモニアは肥料で製造・貯蔵・輸送の技術が存在。水素を運ぶ・貯蔵するにはアンモニアが最適。燃焼してもゼロエミッション。発電、船舶推進、工業炉での利用が先行。
利用技術:
石炭火力発電でのアンモニア混焼(20%)はJERAで実証済み、50ー60%の混焼になる見込み。アンモニア専焼とすると排ガス量が増大し、煙道の改造が必要になる。アンモニア燃料コンバインドサイクル(ACC)のガスタービン(GT)火力発電(効率60%)が本命だが、大型は未完成。小型GTは変動出力に対応可能、大型GTはベースロード向け。
海外アンモニアの輸入元:
天然ガス由来のブルーは、米国、カナダ、中東、オーストラリアから。再生エネ由来のグリーンは、インド、チリ、オーストラリア、中東から。
アンモニア製造法:
ハーバー・ボッシュ法+水蒸気改質。75%のCO2回収率を更に高めるとコスト上昇。今後の技術としてのATR(自己熱改質)では空気から窒素を分離する(ATU)が消費する電力の脱炭素が課題。
アンモニア受け入れの国内受け入れ施設:
6箇所のハブ:苫小牧、相馬、常陸那珂および鹿島、碧南、泉北(大阪)、山口周南および愛媛波方。受入規模:300万トン/2030年、3000万トン/2050年
ロードマップ:
インフレにより製造コストが上昇しているため値差支援が増大。第7次エネルギー基本計画に対して2050年に3000万トンとしていた計画を10年前倒しして2040年に達成するとの計画を提出。
(注)当日の質疑に関しましては、EVFホームページに掲載しておりますので、ご参照ください。
https://www.evfjp.org/
主な質疑応答
Q1:アンモニアの経済性は?
A1:ブルーアンモニアで天然ガスの約2倍強、グリーンアンモニアで3倍位、1万円を超えるカーボンプライシング(炭素税)が必要
Q2:輸入の天然ガスに1万円以上のカーボンプライシングを課税し、アンモニアと同等の価格になる?
A2:そうです。
Q3:海外からの水素のままで輸送するケースはない?
A3:液化水素は高コストで無理、水素は2,000kmの範囲までパイプラインで輸送、それ以上の距離では採算が合わない。液化水素、高圧水素での輸入極めて難しい。
Q4:経産省が設定した20円/Nm3は、発熱量ベースで天然ガスの2倍程度?
A4:天然ガスの1.2−1.3倍程度。この20円の水素でコンバインドガスサイクルで発電すると12円/kWhで発電できる。
Q5:航空機のエンジンでのアンモニア利用の可能性?
A5:できるが、アンモニアが漏れる場合を想定する必要があり、航空機のエンジンなどでの利用はアンモニアの毒性の観点から、一般人が利用する場所での使用はやめた方が良い。熱量あたりの体積が大きく航続距離も短縮。
Q6:鉄鋼産業でのアンモニア利用が他の産業よりも遅い理由?
A6:国内で水素(アンモニア)還元製鉄はコストで難しい、20円でなく8.5円/Nm3でないと採算が合わない。鉄鉱石の産地で脱炭素燃料が安い海外で、粗鋼を製造、国内で電炉で製品に仕上げるのが経済的。石油化学も日本での経済合理性があるか分からない。
Q7:アンモニアから水素を取りだし水素で混焼させるのは?
A7:水素源として可能性は大きいが、10%のエネルギーロス。
Q8:原子力で製造する水素を利用?
A8:原子力で水素を製造する技術は実用化までの時間が必要。
Q9:エネルギーを自給自足するために、国内生産のグリーン水素と大気中の窒素でアンモニアを製造できないか?
A9:国内の再エネコストが高価。浮体式洋上風力を推進しているが、EEZでの浮体式は需要地から離れている。海底の直流送電も良いが、LNG,LPGの既存技術を利用し、浮体式アンモニア製造設備でアンモニアを製造し運ぶ方法は検討の余地があり。
Q10:アンモニアがどれ位使われるかの見通し?
A10:300万トン/2030年で発電量の0.8%、2050年に水素及びアンモニアで10%、2040年に発電で4−5%、産業で1−2%
Q11:MITがADDIS Energy社が鉱山からアンモニアを採掘(製造?)するニュースがあった。
A11:存じませんでした。地中に水素は存在するが、アンモニアは?
Q12:製造プロセスでエネルギーロスがあるがエネルギー収支は?。
A12:アンモニア製造で25%のエネルギーロス。LNGで10%の液化ロス、アンモニアの液体輸送に比べると、シクロヘキサン輸送だと脱水素を含め50-60%のロスなのでアンモニアが勝る。これまでのアンモニアは長期契約はなく、オープンマーケットで取引されてきたのが、長期契約で大規模な供給設備形成をすると、市場価格が低下する可能性はある。
文責:松本泰郎
講演資料:アンモニアが脱炭素で果たす役割と課題
posted by EVF セミナー at 14:00| セミナー紹介
2024年12月21日
EVFセミナー報告:感染爆発(パンデミック)は必ず起こる、コロナの教訓は生かされているのか !
演題 : 感染爆発(パンデミック)は必ず起こる、コロナの教訓は生かされているのか !
講師: 尾身 茂様 結核予防会理事長
聴講者数: 52名
・1978年 自治医科大卒業
・1990年 B型肝炎の分子生物学的研究により医学博士を取得
・1999年 その後厚生技官となり、WHO西太平洋地域事務局長としてマニラに赴任
・2009年 自治医科大地域医療学センター教授
・2012年 年金・健康保険福祉施設整理機構理事長
・2013年 世界保健総会会長
・2020年 新型コロナウイルス感染症対策本部新型コロナウイルス感染症対策専門家会議副座長
・2022年 結核予防会理事長
講演概要
1.はじめに
コロナは2020年1月に始まった。2月にクローズ船が横浜に停泊し船内で毎日感染者が出て日本中が大騒ぎだった。その頃の韓国ソウルのコロナ対策本部のヘッドクォーターはIT化していた。全く同じ時期の日本の対策本部は、専門家がいても、コンピューターもなくIT化もしていないので、膨大な量を手仕事でしなければならなかった。
2009年にメキシコで発生した新型インフルエンザHINIの総括があった際、PCR検査、医療体制も少なく保健所の機能も弱ってきているということで、国に対して提言書を出したが、政府がその中身をほとんど実行しないまま(仏作って魂入れず)、2020年のコロナへ突入し、近隣諸国に比べ圧倒的に準備不足で始まった。
2.我が国の対策の特徴
・感染症の世界規模での大流行の対応戦略
大別するとA.封じ込め、中国のとった対応に見られる徹底的に封じ込めて感染者をゼロにするケース。B.感染抑制、日本のとった対応に見られる感染者数を抑制し、死亡者数を一定数以下にとどめるケース。C.被害抑制、スウェ−デンのとった対応に見られる感染者数が増えることは許容し、重症者への対応に注力するケース。現在、多くの国では、少しずつC.被害抑制に近づいている。
・パンデミックの初期、我が国の専門家が世界に先駆けて直面した謎
感染が確定した人の接触者を徹底的に調べても、その人たちからほとんど感染者が見つからない。それなのになぜ感染者が急激に広がっているのか
・専門家が考えた仮設、この感染症は、クラスターを形成することで感染拡大。特に感染初期ではクラスターを制御できれば、感染拡大を一定程度制御できるという戦略。
・我が国のクラスター対策(さかのぼり接触者調査)の特徴
・共通の感染源を特定し、その場の濃厚接触者に網羅的な接触者調査を実施。感染者が確認できれば、入院措置等により感染拡大を防止
・3蜜などのクラスターが発生しやすい場の特徴を指摘することが出来、これにより、初期の段階から、市民に対して注意喚起。
・パンデミックの対応戦略
感染者数急増→接触者調査だけでは感染抑制不十分→緊急宣言や、まん延防止等重点措置などを組み合せて、感染者数を一定レベル以下に抑制。
3.我々の対策の評価
3年間のコロナ禍が我が国のGDPに与えたマイナスの影響は、累計では欧米のそれとはほぼ同水準であったが、欧米の先進諸国などと比べると人口100万人当たりの累積死亡者数が最も低水準であった。日本が死亡者数少なかった理由は
・市民の衛生意識が高く、行動変容の要請に多くの一般市民が協力してくれた。
・国民皆保険制度による医療のアクセスが良く、流行初期から感染者を早く探知できた。
・効果的なクラスター対策(日本独自のさかのぼり接触者調査)を実施した。
・保険医療機関関係者の献身的な努力
・政府と自治体の協議・連携が頻繁に行われた。
・緊急事態宣言のように感染者を減らす強い施策と感染者が落ち着いてきたところで、経済活動を再開し、次なる大波に備える施策で対応した。
4.我が国が直面した課題と一部の人々からの疑問
・政府と専門家の関係は適切・明確だったか
専門家のリスク評価とそれに基づく対策案の政府への提言(100以上)を政府が採用したが、採用しない場合もあり、採用しない場合の説明が不十分であった。専門家の意見を聞かないで決定したこともあったが、だれが意思決定しているかわかりにくかった。
・前のめりになった背景は、感染症対策について政府が主導しないのであれば専門家が主導する以外に手立てはなかった。
・我が国の医療制度の在り方が背景で医療のひっ迫が起きた。
・歓楽街や飲食を介しての感染が拡大の原因で家族内感染や院内感染の感染拡大は結果。
・国の強いリーダ−シップで、ワクチンの接種がスピーディーに拡大したが、PCR検査では国の強いリーダ−シップが見られず検査のニーズに追いつかなかった。
・緊急事態宣言が出ていない時でも高齢者の人は結構協力してくれた。緊急事態宣言を出すと若い人でも協力する傾向にあった。
・政府の有識者会議は22年6月に検証報告を取りまとめたが、これだけの複雑な危機の検証としては不十分である。
Q&A
Q1:我が国のコロナ禍の初期の対応は
A1:2012年の新型インフルエンザ(A/H1N1)対策総括会議報告書では、リスクコミュニケーションの在り方や保健所の機能強化、国と専門家の役割の明確化等、現在問題となっている様々な課題に対する提言がなされている。しかし残念なことに、ほとんどの教訓が活されずに今般のコロナ禍を迎えてしまった。準備不足で、ガイドラインがなく対応を現場の判断に任されていた。政府は20年2月のクルーズ船の対応に追われ、国内感染の対応が遅れた。死者数が増えたが、病床確保など保健、医療体制の構築に時間がかかり、感染者をみる病院も限られ、ワクチンもなく医療の逼迫を招いた。
Q2:コロナ禍とリスク評価についてお聞きしたい。
A2:リスク評価についての必要な情報へのアクセスが難しかった。西浦教授の何も対策を施さなければ、42万人の死亡が予想されるので、少しでもこの数を減らすためにみんなで対策した方が良いていうリスク評価があった。この件に基づき、緊急事態宣言時の記者会見で安倍首相は、専門家の試算では、私たち全員が努力を重ね、人と人との接触機会を最低、極力8割削減できれば、2週間後には感染者の増加をピークアウトさせ、減少にさせると述べている。リスクコミュニケーションの観点から、毎日の感染者数など断片的情報だけでなく、市民に全体像を理解納得してもらえる説明をする。2つ目は、状況が変化した場合にはその都度可及的速やかに全体像が分かりやすく説明する。
Q3:なぜ日本のワクチン開発、生産が遅れたか
A3:パンデミックが起きた場合、ワクチンの生産を100日間で生産する世界の約束がある。多くの国では、パンデミックを外交、教育、経済にも影響を及ぶ安全保障の一環としてとらえている。国内の製薬会社では、主な投資先は糖尿病薬やがん治療に向け多額の金が使われている。いつ起こるかわからないようなパンデミック用のワクチン開発などは、国主導で政府が一体となって、必要な体制を構築し、長期継続的にとり組む必要がある。
Q4:コロナ禍における専門家会議の組織と医師会、都道府県自治体との関係は
A4:医師会とは立場の違いがあったが、ほとんど同じ認識であった。
都道府県自治体が繰り返したハンマー&ダンス(対策強化と緩和の繰り返し)と保健所を含めた医療従事者の献身的な努力により諸外国の中で死亡者数が最低水準であった。とくに、現場の多くの情報は保健所から得ていた。
Q5:世界中でパンデミックが発生したので、それらの国の膨大なビックデーターをAIで解析などして、まとめられませんか。
A5:可能だと考えるが、しかし日本のIT化は道半ばである。AIで解析となると、医療について知見がない業者に丸投げの形になることが考えられる。いろいろな専門化の疫学情報を共有化することが課題で、それをまとめ上げる強いリーターシップが現れることが必要。
Q6: 今回のようなパンデミックが起きた場合の後継者は、いますか。
A6:今回のように個人ではなく、全国の感染症に強い組織、研究所とのネットワークなどで、システム的に対応するのではないか
Q7: 20代の女性の妊婦さんが心配していたが、今後も発生するのか
A7:新型コロナウイルスも野生動物との接点が原因となった可能性が大いにあり、人間と野生動物の距離が近い環境では、人畜共通感染症が生まれやすい。
講師紹介
・1978年 自治医科大卒業
・1990年 B型肝炎の分子生物学的研究により医学博士を取得
・1999年 その後厚生技官となり、WHO西太平洋地域事務局長としてマニラに赴任
・2009年 自治医科大地域医療学センター教授
・2012年 年金・健康保険福祉施設整理機構理事長
・2013年 世界保健総会会長
・2020年 新型コロナウイルス感染症対策本部新型コロナウイルス感染症対策専門家会議副座長
・2022年 結核予防会理事長
講師: 尾身 茂様 結核予防会理事長
聴講者数: 52名
・1978年 自治医科大卒業
・1990年 B型肝炎の分子生物学的研究により医学博士を取得
・1999年 その後厚生技官となり、WHO西太平洋地域事務局長としてマニラに赴任
・2009年 自治医科大地域医療学センター教授
・2012年 年金・健康保険福祉施設整理機構理事長
・2013年 世界保健総会会長
・2020年 新型コロナウイルス感染症対策本部新型コロナウイルス感染症対策専門家会議副座長
・2022年 結核予防会理事長
講演概要
1.はじめに
コロナは2020年1月に始まった。2月にクローズ船が横浜に停泊し船内で毎日感染者が出て日本中が大騒ぎだった。その頃の韓国ソウルのコロナ対策本部のヘッドクォーターはIT化していた。全く同じ時期の日本の対策本部は、専門家がいても、コンピューターもなくIT化もしていないので、膨大な量を手仕事でしなければならなかった。
2009年にメキシコで発生した新型インフルエンザHINIの総括があった際、PCR検査、医療体制も少なく保健所の機能も弱ってきているということで、国に対して提言書を出したが、政府がその中身をほとんど実行しないまま(仏作って魂入れず)、2020年のコロナへ突入し、近隣諸国に比べ圧倒的に準備不足で始まった。
2.我が国の対策の特徴
・感染症の世界規模での大流行の対応戦略
大別するとA.封じ込め、中国のとった対応に見られる徹底的に封じ込めて感染者をゼロにするケース。B.感染抑制、日本のとった対応に見られる感染者数を抑制し、死亡者数を一定数以下にとどめるケース。C.被害抑制、スウェ−デンのとった対応に見られる感染者数が増えることは許容し、重症者への対応に注力するケース。現在、多くの国では、少しずつC.被害抑制に近づいている。
・パンデミックの初期、我が国の専門家が世界に先駆けて直面した謎
感染が確定した人の接触者を徹底的に調べても、その人たちからほとんど感染者が見つからない。それなのになぜ感染者が急激に広がっているのか
・専門家が考えた仮設、この感染症は、クラスターを形成することで感染拡大。特に感染初期ではクラスターを制御できれば、感染拡大を一定程度制御できるという戦略。
・我が国のクラスター対策(さかのぼり接触者調査)の特徴
・共通の感染源を特定し、その場の濃厚接触者に網羅的な接触者調査を実施。感染者が確認できれば、入院措置等により感染拡大を防止
・3蜜などのクラスターが発生しやすい場の特徴を指摘することが出来、これにより、初期の段階から、市民に対して注意喚起。
・パンデミックの対応戦略
感染者数急増→接触者調査だけでは感染抑制不十分→緊急宣言や、まん延防止等重点措置などを組み合せて、感染者数を一定レベル以下に抑制。
3.我々の対策の評価
3年間のコロナ禍が我が国のGDPに与えたマイナスの影響は、累計では欧米のそれとはほぼ同水準であったが、欧米の先進諸国などと比べると人口100万人当たりの累積死亡者数が最も低水準であった。日本が死亡者数少なかった理由は
・市民の衛生意識が高く、行動変容の要請に多くの一般市民が協力してくれた。
・国民皆保険制度による医療のアクセスが良く、流行初期から感染者を早く探知できた。
・効果的なクラスター対策(日本独自のさかのぼり接触者調査)を実施した。
・保険医療機関関係者の献身的な努力
・政府と自治体の協議・連携が頻繁に行われた。
・緊急事態宣言のように感染者を減らす強い施策と感染者が落ち着いてきたところで、経済活動を再開し、次なる大波に備える施策で対応した。
4.我が国が直面した課題と一部の人々からの疑問
・政府と専門家の関係は適切・明確だったか
専門家のリスク評価とそれに基づく対策案の政府への提言(100以上)を政府が採用したが、採用しない場合もあり、採用しない場合の説明が不十分であった。専門家の意見を聞かないで決定したこともあったが、だれが意思決定しているかわかりにくかった。
・前のめりになった背景は、感染症対策について政府が主導しないのであれば専門家が主導する以外に手立てはなかった。
・我が国の医療制度の在り方が背景で医療のひっ迫が起きた。
・歓楽街や飲食を介しての感染が拡大の原因で家族内感染や院内感染の感染拡大は結果。
・国の強いリーダ−シップで、ワクチンの接種がスピーディーに拡大したが、PCR検査では国の強いリーダ−シップが見られず検査のニーズに追いつかなかった。
・緊急事態宣言が出ていない時でも高齢者の人は結構協力してくれた。緊急事態宣言を出すと若い人でも協力する傾向にあった。
・政府の有識者会議は22年6月に検証報告を取りまとめたが、これだけの複雑な危機の検証としては不十分である。
Q&A
Q1:我が国のコロナ禍の初期の対応は
A1:2012年の新型インフルエンザ(A/H1N1)対策総括会議報告書では、リスクコミュニケーションの在り方や保健所の機能強化、国と専門家の役割の明確化等、現在問題となっている様々な課題に対する提言がなされている。しかし残念なことに、ほとんどの教訓が活されずに今般のコロナ禍を迎えてしまった。準備不足で、ガイドラインがなく対応を現場の判断に任されていた。政府は20年2月のクルーズ船の対応に追われ、国内感染の対応が遅れた。死者数が増えたが、病床確保など保健、医療体制の構築に時間がかかり、感染者をみる病院も限られ、ワクチンもなく医療の逼迫を招いた。
Q2:コロナ禍とリスク評価についてお聞きしたい。
A2:リスク評価についての必要な情報へのアクセスが難しかった。西浦教授の何も対策を施さなければ、42万人の死亡が予想されるので、少しでもこの数を減らすためにみんなで対策した方が良いていうリスク評価があった。この件に基づき、緊急事態宣言時の記者会見で安倍首相は、専門家の試算では、私たち全員が努力を重ね、人と人との接触機会を最低、極力8割削減できれば、2週間後には感染者の増加をピークアウトさせ、減少にさせると述べている。リスクコミュニケーションの観点から、毎日の感染者数など断片的情報だけでなく、市民に全体像を理解納得してもらえる説明をする。2つ目は、状況が変化した場合にはその都度可及的速やかに全体像が分かりやすく説明する。
Q3:なぜ日本のワクチン開発、生産が遅れたか
A3:パンデミックが起きた場合、ワクチンの生産を100日間で生産する世界の約束がある。多くの国では、パンデミックを外交、教育、経済にも影響を及ぶ安全保障の一環としてとらえている。国内の製薬会社では、主な投資先は糖尿病薬やがん治療に向け多額の金が使われている。いつ起こるかわからないようなパンデミック用のワクチン開発などは、国主導で政府が一体となって、必要な体制を構築し、長期継続的にとり組む必要がある。
Q4:コロナ禍における専門家会議の組織と医師会、都道府県自治体との関係は
A4:医師会とは立場の違いがあったが、ほとんど同じ認識であった。
都道府県自治体が繰り返したハンマー&ダンス(対策強化と緩和の繰り返し)と保健所を含めた医療従事者の献身的な努力により諸外国の中で死亡者数が最低水準であった。とくに、現場の多くの情報は保健所から得ていた。
Q5:世界中でパンデミックが発生したので、それらの国の膨大なビックデーターをAIで解析などして、まとめられませんか。
A5:可能だと考えるが、しかし日本のIT化は道半ばである。AIで解析となると、医療について知見がない業者に丸投げの形になることが考えられる。いろいろな専門化の疫学情報を共有化することが課題で、それをまとめ上げる強いリーターシップが現れることが必要。
Q6: 今回のようなパンデミックが起きた場合の後継者は、いますか。
A6:今回のように個人ではなく、全国の感染症に強い組織、研究所とのネットワークなどで、システム的に対応するのではないか
Q7: 20代の女性の妊婦さんが心配していたが、今後も発生するのか
A7:新型コロナウイルスも野生動物との接点が原因となった可能性が大いにあり、人間と野生動物の距離が近い環境では、人畜共通感染症が生まれやすい。
講師紹介
・1978年 自治医科大卒業
・1990年 B型肝炎の分子生物学的研究により医学博士を取得
・1999年 その後厚生技官となり、WHO西太平洋地域事務局長としてマニラに赴任
・2009年 自治医科大地域医療学センター教授
・2012年 年金・健康保険福祉施設整理機構理事長
・2013年 世界保健総会会長
・2020年 新型コロナウイルス感染症対策本部新型コロナウイルス感染症対策専門家会議副座長
・2022年 結核予防会理事長
文責:立花賢一
posted by EVF セミナー at 15:00| セミナー紹介
2024年12月15日
EVFセミナー報告:2050年カーボンニュートラルに向けた日本風力発電協会の取り組み
演題 :2050年カーボンニュートラルに向けた日本風力発電協会の取り組み
講師:秋吉 優 様(あきよし まさる)
株式会社ユーラスエナジーホールディングス代表取締役 一般社団法人日本風力発電協会代表理事
聴講者数:47名
講師略歴:
1983年3月 同志社大学 法学部法律学科卒業
1983年4月 株式会社トーメン入社
1999年4月 株式会社トーメンパワージャパン札幌支店長
2005年7月 株式会社 ユーラスジャパン事業開発第一部長
2011年4月 株式会社 ユーラスエナジーホールディングス アジア大洋州事業部長
2023年4月 同社 代表取締役副社長執行役員(現在)
2022年6月 一般社団法人日本風力発電協会 副代表理事
2024年2月 同代表理事(現在)
補足のご説明:中村 成人様(なかむら しげひと)一般社団法人日本発電協会専務理事
概要報告:
日本企業における風力発電事業の嚆矢は、ユーラスエナジー社による1987年米国事業である。冒頭 同社出身の講師から世界や日本の再生エネルギーに関する価値・意義や同社の立ち位置について紹介があり、続いて技術的側面とは少し角度を変えた制度設計的な面についての説明があった。EVFは洋上風力発電推しであり、第七次エネルギー基本計画に対しご意見箱に投稿もしており、特に実装時制度面について大変良い勉強になり活発な質疑応答もなされた。日本風力発電協会(JWPA)の取り組みは風力発電の主力電源化であるが、その前提として日本のエネルギー自給率が13%(2021年度)、OECD38ヶ国中37位と危機的状況にあり、化石燃料輸入による多額の国富流出があることを確認した。その状況において現在政府は再エネ主力電源化を含めた政策立案の山場に来ており、これを踏まえJWPAは技術要件に加え、市場開拓,認証・標準化,工程表(グランドデザイン)、地元協調、教育など事業全般について産官学民の横串を通し全体最適化に取り組んでいる。 また目標とする一次エネルギー供給量については各種審議会などで共有化された想定電力需要を踏まえて、全電力需要の1/3(設備容量換算で140GW/2050年)を風力発電が担うことを提言。また政府の脱炭素社会実現に向けた重要戦略は「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略(2021.6.18)」、「地球温暖化対策計画(2021.10.22)」、「GX・グリーントランスフォーメーション実現に向けた基本方針(2022.12.22)」、「第七次エネルギー基本計画(現在議論・検討中)」の4つである。講演最後の質問「風力発電における問題ワースト1を教えて欲しい」に対しては,1点に絞るのは難しいが1.風車認証期間短縮の加速化(太陽光発電は認証不要) 2,系統拡充による連系容量の確保(現在工程表に基づき進行中ではあるが),の2点と考える、との回答があった。
以下に質疑応答を紹介する。
Q1,地元メリットがいる.地元供給電気代無料はどうか?ストロー現象(利益が東京に吸い取られる)問題を必ず地元住民が意識すると思うので。
A1, その通りでやるべきである。適価で提供することで進めている。そういう時代である。
Q2, EEZは遠い沖合から送電するため設備の準備に時間がかかる。グランドデザイン(工程表)が必要ではないか?
A2,イエスである。また付け加えると洋上ウインドファームはそこに1ヶ所の変電所を設け一本の束にして高圧直流(HVDC)線などで陸上系統に接続する場合が多いが、その送電線を政府資金で進めるセントラル方式を要望している。
Q3,人材については自動車整備士のような国家資格がいるのではないか?
A3, 資格については経産省安全電力課が担当となるが、JWPAも教育機関や自治体とも連携して現在模索中。JWPAでは、発電・建設事業者などを対象として座学・実技からなる洋上風力メンテナンス用の資格試験のたたき台を準備中で、2024年度中に試行版初回を実施予定である。地元学校とも連携をしていく。また、日本財団の助成金も頂いている。
Q4,落雷に関して、メンテナンス要員の安全対策は?
A4,日本海側での冬季の落雷が厄介であり、回転中のブレードに落雷し損傷すると破片が飛び散り大変危険。 600クーロンまでならOKであるもののこれを越える場合の統一方針はまだ決まっていない。しかし回避策はあり例えば、落雷接近データを見て風車を止めるなど。
Q5,EVFでは化石燃料から再エネへの電力変換のロードマップを描こうとしている。その背景での質問だが大規模風力の場合10万kW/515億円(≈政府目標5億円/MW)と言われているが、何基分か?
A5, 一基1万から1万5千kWなので8基分程度と考える。
Q6,投資回収期間は?
A6,入札から運用開始まで6年程度である。
Q7, 江戸幕府の終焉を勉強している。幕府軍が先に近代化しそうに見えたので、薩長が焦り、急いで戦いに持ち込んで江戸幕府を潰したというのが真相に近いのだが、その薩長のような気迫、passion(熱情)、やる気などが、今の霞が関・政府にあるのでしょうか?
A7,極めて真剣である。課題はあるものの業界やJWPAの意見も聞きながら最重要課題として熱心に取り組んでいる。
Q8,日本の人口は6千万人程度まで減少するという説もあるが、そうなった時のエネルギーの需給関係はどう見通せるのでしょうか?
A8,人口減少はあるが電気自動車やデータセンターなどで電力需要は増えるという意見もありはっきりとは読めていないと思う。
Q9,イギリスのクラスターは八つあり総合的な取り組みをしている。太陽光発電、系統連系、余剰電力による水の電気分解と水素貯蔵、そしてガスパイプライン。日本はこのようなことを構想しているのか?
A9, グリーン水素には積極的に取り組んでいる。 単価が高くなるので値差(ねさ,価格差)支援制度に少なくない予算が付き、まもなく入札が始まる。JWPAもグリーン水素は価値が高く今後増えていき燃料転換が起きると考えている。
Q9,風車は交流か直流か? 昔(1980~90年代)カリフォルニアのパームスプリングスで大規模風車群を見て疑問に思ったが電力調整はできるのか?
A9,発電機はすべて交流。最近は磁石を用いた高効率発電機もあり電気回路(直交変換)もいくつかのタイプがあるが、風車群単位で周波数や力率を厳密に調整して電力調整を行っている。ご指摘の風車群は30年近い昔のもので発電量が小さく、不調があっても大きな社会問題にはなっていなかったと思う。
Q10,電力需要の1/3を風力発電で担う目標だが前提の全需が大変重要である。どこでどのように誰が決めているのか?
A10, 詳しくは即答できないが各種審議会で予測値が報告されている。それらに基づき風力発電協会の目標を定めた。またJWPA独自の試算からも妥当性を確認した。Wind Vision2023に根拠を含め詳述してあるので是非ご確認いただきたい。
Q11, EVFは風力推しであり第七次エネルギー基本計画のエネ庁ご意見箱にも投稿した。質問は化石燃料代年間30兆円を再エネ作りに回せないのか?
A11,難しい問題で政府は原発と再エネの二本立て実現が必要として整理していると考えている。
Q12. 風力発電における問題ワースト1を教えて欲しい。
A12,1点に絞るのは難しいが1.風車認証期間短縮の加速化(太陽光発電は認証不要) 2,系統拡充による連系容量の確保(現在工程表に基づき進行中ではあるが)の2点と考える。補足すると現在日本には風車メーカーがない。認証に関して海外勢は嫌がっており。一方で洋上風力入札で先行した東芝はGEの主部品のサプライヤに留まっている状況であり、撤退した三菱重工・日立製作所日本製鋼所などが認証の迅速化と共に復帰してもらえればJWPAとしてもこれほど嬉しいことはない。
文責:寺本正彦
講演資料:2050年カーボンニュートラル実現に向けた日本風力発電協会の取り組み
講師:秋吉 優 様(あきよし まさる)
株式会社ユーラスエナジーホールディングス代表取締役 一般社団法人日本風力発電協会代表理事
聴講者数:47名
講師略歴:
1983年3月 同志社大学 法学部法律学科卒業
1983年4月 株式会社トーメン入社
1999年4月 株式会社トーメンパワージャパン札幌支店長
2005年7月 株式会社 ユーラスジャパン事業開発第一部長
2011年4月 株式会社 ユーラスエナジーホールディングス アジア大洋州事業部長
2023年4月 同社 代表取締役副社長執行役員(現在)
2022年6月 一般社団法人日本風力発電協会 副代表理事
2024年2月 同代表理事(現在)
補足のご説明:中村 成人様(なかむら しげひと)一般社団法人日本発電協会専務理事
概要報告:
日本企業における風力発電事業の嚆矢は、ユーラスエナジー社による1987年米国事業である。冒頭 同社出身の講師から世界や日本の再生エネルギーに関する価値・意義や同社の立ち位置について紹介があり、続いて技術的側面とは少し角度を変えた制度設計的な面についての説明があった。EVFは洋上風力発電推しであり、第七次エネルギー基本計画に対しご意見箱に投稿もしており、特に実装時制度面について大変良い勉強になり活発な質疑応答もなされた。日本風力発電協会(JWPA)の取り組みは風力発電の主力電源化であるが、その前提として日本のエネルギー自給率が13%(2021年度)、OECD38ヶ国中37位と危機的状況にあり、化石燃料輸入による多額の国富流出があることを確認した。その状況において現在政府は再エネ主力電源化を含めた政策立案の山場に来ており、これを踏まえJWPAは技術要件に加え、市場開拓,認証・標準化,工程表(グランドデザイン)、地元協調、教育など事業全般について産官学民の横串を通し全体最適化に取り組んでいる。 また目標とする一次エネルギー供給量については各種審議会などで共有化された想定電力需要を踏まえて、全電力需要の1/3(設備容量換算で140GW/2050年)を風力発電が担うことを提言。また政府の脱炭素社会実現に向けた重要戦略は「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略(2021.6.18)」、「地球温暖化対策計画(2021.10.22)」、「GX・グリーントランスフォーメーション実現に向けた基本方針(2022.12.22)」、「第七次エネルギー基本計画(現在議論・検討中)」の4つである。講演最後の質問「風力発電における問題ワースト1を教えて欲しい」に対しては,1点に絞るのは難しいが1.風車認証期間短縮の加速化(太陽光発電は認証不要) 2,系統拡充による連系容量の確保(現在工程表に基づき進行中ではあるが),の2点と考える、との回答があった。
以下に質疑応答を紹介する。
Q1,地元メリットがいる.地元供給電気代無料はどうか?ストロー現象(利益が東京に吸い取られる)問題を必ず地元住民が意識すると思うので。
A1, その通りでやるべきである。適価で提供することで進めている。そういう時代である。
Q2, EEZは遠い沖合から送電するため設備の準備に時間がかかる。グランドデザイン(工程表)が必要ではないか?
A2,イエスである。また付け加えると洋上ウインドファームはそこに1ヶ所の変電所を設け一本の束にして高圧直流(HVDC)線などで陸上系統に接続する場合が多いが、その送電線を政府資金で進めるセントラル方式を要望している。
Q3,人材については自動車整備士のような国家資格がいるのではないか?
A3, 資格については経産省安全電力課が担当となるが、JWPAも教育機関や自治体とも連携して現在模索中。JWPAでは、発電・建設事業者などを対象として座学・実技からなる洋上風力メンテナンス用の資格試験のたたき台を準備中で、2024年度中に試行版初回を実施予定である。地元学校とも連携をしていく。また、日本財団の助成金も頂いている。
Q4,落雷に関して、メンテナンス要員の安全対策は?
A4,日本海側での冬季の落雷が厄介であり、回転中のブレードに落雷し損傷すると破片が飛び散り大変危険。 600クーロンまでならOKであるもののこれを越える場合の統一方針はまだ決まっていない。しかし回避策はあり例えば、落雷接近データを見て風車を止めるなど。
Q5,EVFでは化石燃料から再エネへの電力変換のロードマップを描こうとしている。その背景での質問だが大規模風力の場合10万kW/515億円(≈政府目標5億円/MW)と言われているが、何基分か?
A5, 一基1万から1万5千kWなので8基分程度と考える。
Q6,投資回収期間は?
A6,入札から運用開始まで6年程度である。
Q7, 江戸幕府の終焉を勉強している。幕府軍が先に近代化しそうに見えたので、薩長が焦り、急いで戦いに持ち込んで江戸幕府を潰したというのが真相に近いのだが、その薩長のような気迫、passion(熱情)、やる気などが、今の霞が関・政府にあるのでしょうか?
A7,極めて真剣である。課題はあるものの業界やJWPAの意見も聞きながら最重要課題として熱心に取り組んでいる。
Q8,日本の人口は6千万人程度まで減少するという説もあるが、そうなった時のエネルギーの需給関係はどう見通せるのでしょうか?
A8,人口減少はあるが電気自動車やデータセンターなどで電力需要は増えるという意見もありはっきりとは読めていないと思う。
Q9,イギリスのクラスターは八つあり総合的な取り組みをしている。太陽光発電、系統連系、余剰電力による水の電気分解と水素貯蔵、そしてガスパイプライン。日本はこのようなことを構想しているのか?
A9, グリーン水素には積極的に取り組んでいる。 単価が高くなるので値差(ねさ,価格差)支援制度に少なくない予算が付き、まもなく入札が始まる。JWPAもグリーン水素は価値が高く今後増えていき燃料転換が起きると考えている。
Q9,風車は交流か直流か? 昔(1980~90年代)カリフォルニアのパームスプリングスで大規模風車群を見て疑問に思ったが電力調整はできるのか?
A9,発電機はすべて交流。最近は磁石を用いた高効率発電機もあり電気回路(直交変換)もいくつかのタイプがあるが、風車群単位で周波数や力率を厳密に調整して電力調整を行っている。ご指摘の風車群は30年近い昔のもので発電量が小さく、不調があっても大きな社会問題にはなっていなかったと思う。
Q10,電力需要の1/3を風力発電で担う目標だが前提の全需が大変重要である。どこでどのように誰が決めているのか?
A10, 詳しくは即答できないが各種審議会で予測値が報告されている。それらに基づき風力発電協会の目標を定めた。またJWPA独自の試算からも妥当性を確認した。Wind Vision2023に根拠を含め詳述してあるので是非ご確認いただきたい。
Q11, EVFは風力推しであり第七次エネルギー基本計画のエネ庁ご意見箱にも投稿した。質問は化石燃料代年間30兆円を再エネ作りに回せないのか?
A11,難しい問題で政府は原発と再エネの二本立て実現が必要として整理していると考えている。
Q12. 風力発電における問題ワースト1を教えて欲しい。
A12,1点に絞るのは難しいが1.風車認証期間短縮の加速化(太陽光発電は認証不要) 2,系統拡充による連系容量の確保(現在工程表に基づき進行中ではあるが)の2点と考える。補足すると現在日本には風車メーカーがない。認証に関して海外勢は嫌がっており。一方で洋上風力入札で先行した東芝はGEの主部品のサプライヤに留まっている状況であり、撤退した三菱重工・日立製作所日本製鋼所などが認証の迅速化と共に復帰してもらえればJWPAとしてもこれほど嬉しいことはない。
文責:寺本正彦
講演資料:2050年カーボンニュートラル実現に向けた日本風力発電協会の取り組み
posted by EVF セミナー at 00:00| セミナー紹介
2024年10月18日
EVFセミナー200回記念 特別講演 報告:小泉悠が語る隣国ロシア・北朝鮮・中国と我が国の付き合い方
演 題:小泉悠が語る隣国ロシア・北朝鮮・中国と我が国の付き合い方
講 師:小泉 悠様 東京大学先端技術研究センター准教授
日 時:2024年10月18日(金)14:00〜16:00
場 所:新宿区NPO協働推進センター501会議室
聴講者数:104名
講師紹介:
2007年 3月 早稲田大学大学院政治学研究科 修士課程修了
2008年 2月 公益財団法人未来工学研究所 特別研究員
2009年 1月 外務省情報統括官組織 専門分析員
2009年12月 世界経済国際関係研究所 客員研究員
2011年 4月 国立国会図書館 非常勤調査員
2019年 3月 東京大学先端科学技術研究センター 特任助教
2022年 1月 東京大学先端科学技術研究センター 講師
2023年12月 東京大学先端科学技術研究センター 准教授

【講演概要】
■なぜ「地政学」なのか:大陸系地政学と海洋系地政学
・地政学は、19世紀にスウェーデンとかドイツで生まれてきた考え方。問題は、侵略の正当化イデオロギーになっていったこと。ヘーゲルの国家有機体説と結びつき、「国家とは生き物であり、生き物には栄養が必要。ある国にとって必要な栄養は地理的に見てどこからどこまでの範囲なのか。」という議論に移った。
・大陸で生まれた地政学(大陸系地政学)は、突き詰めると小国を滅ぼして大国が飲み込む勝者総取りの世界観に繋がる宿命を持っている。一方でアメリカ人やイギリス人が考えた海洋系地政学は、大陸内に強力な統一権力ができることを阻止しなければいけないというのが、根本にある関心事。
■ロシアについて:大陸系地政学の継承者。地理の問題とアイデンティティ(ルースキー・ミール)の問題が癒着
・生存権を確保するために緩衝地帯を作る発想。
・ソ連崩壊後にロシアの言説空間に復活させた人物が、アレクサンドル・ドゥーギン(ネオ・ユーラシア主義)。「地政学の基礎」を出版。
・ドゥーギンの言う三つの枢軸とは、何れもアメリカの影響力を排除し、ロシアにとって都合の良い「モスクワベルリン枢軸」・「モスクワテヘラン枢軸」・「モスクワ東京枢軸」。
・ロシア式地政学には、旧ソ連空間への執着と特殊な「主権」観がある。そこでのルースキー・ミールは、ロシア国家の中心であるルーシ民族のという意味。ルーシ文明を共有してる人は、文化的・人種的・宗教的等の共通した世界が広がっていて、国境の外でもそういうのはロシアということ。
・プーチンの戦争とかロシア右翼の言動は、このルースキー・ミールを根拠としている。
■中国について:大陸系地政学的。国力の伸展に伴い、損得・論理で考え得る行動
・中国とロシアは、見通し(プロスペクト)の違いにより振る舞いに差。
・ロシアは、国力自体が当面伸びず破滅的な戦争を始めて見通しは暗い。
・中国は、総合国力のピークはもう少し先。それまでの間に、台湾併合や東南アジアの国々をなびかせること、南シナ海において中国にとり有利な秩序を作る等の見通しをたてやすい。
・台湾は、不利な戦争を行うより、経済的な存在感・文化的近さ・同じ言語空間等を背景に段階的に取り込むと思われる。その方がはるかに低コスト。
・ロバート・カプラン(元CIAの情報分析官)が20年前に出した「地理の復讐」の中で、地理的に21世紀になってもヒンドゥークシュ山脈を越えるのは大変という記述がある。
・言語空間にもヒンドゥークシュ山脈があったが、それが大規模言語モデルの普及によって下がりつつある。結果、情報空間が現実の物理空間の中の地理的な境界線に影響を及ぼすのではないか。
■朝鮮半島について:ランドブリッジ。均衡が続くか怪しい
・朝鮮半島は、地政学でいうランドブリッジ(大国の利害の交差点)の位置づけ。
・ロシア・中国にとり北朝鮮の存在は望ましい。ただし、ずっとこの均衡が続くかどうかは最近非常に怪しい。
・心配しているのは、アメリカがそういう均衡を維持する意思をだんだん失いつつあるのではないかということ。
・今回のロシアのウクライナ侵略で明らかになったことは、核を持った国が本気で先に暴れだした場合に、他の国はなかなか手だしができないこと。
・その国が滅ばなくとも何十万人も死ぬという話になると、まともな民主主義国の指導者は絶対に決断できない。これが核戦略の用語で言う「耐えがたい損害」(国家が崩壊)と「受け入れがたい損害」(政治的に受入れ難い損害)の違い。
・核を持っているだけで、相当程度相手の行動を抑止することができるという状態。
・その走りが中国の核戦略で、最小限抑止戦略。
■日本の地政学について:海という戦略資産を使った抑止と格子状のネットワーク構築のジオストラテジー
・今できる地政学は否定的抑止で、懲罰的抑止ではない。日本の戦略目標は、台湾海峡と朝鮮半島の現状維持+中露の軍事的連携阻止。そのために海という戦略資産を最大限に活かすこと。ユーラシア大陸側からの侵略を遮断することに全力を挙げるべき。
・大事なことは、囲い込まずにゆるく繋がること。「格子状」のネットワーク(≠アジア版NATO)で、ユーラシア東西での連携を図り、「敵」との経済的繋がりも排除しない(ただし経済安全保障は手厚く)。
・地政学の論理の一つ上のレイヤーに、柔軟な枠組みを同時に持つことがこれから求められる。地政学と戦略と合わせたジオストラテジーとして、幅広さを持つ政策をとるべき。
【質疑応答】
Q1:アメリカのF16がウクライナに供与されたことが、一つのゲームチェンジャーになるか。
A1:特定の兵器が、ゲームチェンジャーになることはない。ゲームチェンジャーとは戦争の流れを変える力。それはある能力、制空権を取る能力、何かを著しく妨害する能力、何かを大量に生産する能力等のこと。その能力の構成要素として、特定の兵器や特定の技術、人の考えがあったりする。F16があまり目立っていないのは、他に何かが足りないから。この戦争が始まって以来、ロシアもウクライナもどちらも実は制空権を取っていない。ロシア軍もウクライナ軍もソ連軍の末裔なので、地上配備型防空システムが分厚い。これまでウクライナはロシアに制空権を取られずに済んできたが、F16の数を増やすこと及び電子妨害でレーダーやミサイルが機能しないようにするぐらいの能力が必要。F16に期待されることはロシアの防空システムや重要インフラを壊して回ることだが、西側のミサイルをロシアに対して使用する許可がされていないのと、F16のパイロットは空中戦の訓練はしてきたが、地上攻撃には複雑で長い訓練が必要なことがある。各国から2年間で百機近く引き渡されるので、制空権を取るかもしれないが、取ったとしても地上作戦と連動することが必要で、地上作戦を好転させる別の能力が必要になってくる。
Q2:ドイツと日本の原子力発電をやめられるかどうかの違いは何か。ドイツは完全に原子力発電をやめたが、日本の場合、なかなかやめられないのは、核のポテンシャルを手放したくないということがあるのか。
A2:原子力発電をやめるかやめないかは、安全保障の話しというよりエネルギー業界の中の論理で決まっていると思う。安全保障業界の立場からは、核武装のポテンシャルと結びつけて考える。ドイツの場合は2重の核抑止力がある。アメリカの核抑止と核同盟としてのNATOで、ドイツにしてみれば、事実上核兵器を使って戦う軍隊であるとの認識を持っていると思う。例えばNATOの核作戦共有メカニズムは、第三次世界大戦になれば、各国が分担して核爆弾でどことどこを焼き払う等の計画をアップデートし、毎年戦術核を使って戦う演習を行っている。日米韓では10年前ぐらい前に局長級で拡大抑止協議を行い、最近それが国防大臣級になった。2019年9月東京での三国国防会議で、初めて核拡大防止の話しをした。核シェアリングの本質は核爆弾がどこに置いてあるかではなく、有事に核爆弾を使う計画を平時からどこまで共有しているか。日本周辺で自衛隊と米軍・韓国軍が一緒に核爆弾を使って作戦をするという計画を作り訓練まですることになり、はじめて事実上の核シェアリングといえるが、これは難しい。安全保障の立場からの発想では、プルトニウムの保有量からすると日本は比較的短期間で核爆弾を作れる能力があり、その能力があった方がオプションは広がるとの考え方がある。
Q3:ロシアはウクライナについては同じ人達という感覚があると思うが、中国から日本はそうは見えないと思う。香港や台湾は同じに見えると思うが、両者の人口規模は異なる。香港の数倍規模の人口を持つ台湾は、自由主義文化で数十年生きてきた国民がいる。こういう人達を力で押さえ込むのは、相当ハードルが高いと思われる。それが一つの抑止力になっているのではないか。
A3:その発想は面白い。ただいきなりすべてを中国本土並みにするわけではないと思う。香港の場合も一国二制度から始まって途中で国家安全法ができてというように、段階的にやっている。台湾について実際に行ってみると、中国に対する意見の分断も相当あるように思う。ジェネレーションによってもかなり違う。いきなりすべてを中国本土並みにするのは難しいが、中国はもっと上手くやると思う。武力侵攻により短期間で併合する蓋然性は低い。時間をかけて経済的に統合し、人の往来を増やし、情報空間も融合させて実質的に台湾への影響力を手に入れていくというのが、私の根本の発想にある。
Q4:ロシアのウクライナ侵攻は、旧ソ連時代あるいは帝政ロシア時代にそこは我々のものであったということを、再確認するために起こっているように思えるがどうか。
A4:一つの国だった、あそこは我々のものだったというのはあると思う。今回の戦争について、ロシアの右翼は“内戦”と呼び、プーチンもこの戦争を決して戦争と言わず“特別軍事作戦”としかいわない。今回の戦争は今始まったのではなく、10年前のクリミア併合、ドンバス侵攻から始まっている。プーチン周辺や右翼の人々が使い始めた“ノヴォロシア”という言葉がある。エカテリーナが、征服した一部コサック、一部オスマンの土地であったものを分捕って新ロシアの意味の“ノヴォロシア”と名付けた。プーチンはサンクトペテルブルグ鉱山大学で博士号をとっている。博士論文のテーマは、天然資源を国家管理において、これを武器としてロシアの地政学的地位を高めるというもの。この大学が実はエカテリーナが200年前に創ったもの。プーチンはピョートル大帝を尊敬しているが、エカテリーナの影も感じる。18世紀に一番輝いていたロシアを、再確認しているところがあるのかもしれない。
Q5:多くの国がエネルギーの地産地消をすれば、国家間の争いも少し下がるのではないか。
A5:ここ十年ぐらいの地政学の復活をみていると、やはり囲い込みを始めている。十数年前の中国によるレアメタルの対日禁輸や、ウクライナ戦争が始まった翌日にはトルコが交戦国の軍艦はボスポラス海峡を通さない、といったことが起こっている。こういうことを目にすると、地政学の戦略で海峡を抑えるとか資源地帯を抑えるとかという地政学者の発想が分かってくる。地政学的な力の論理よりマーケットの論理が全面にくる世界がくれば、エネルギーが偏在していても問題ない世界を作れる感覚はあるが、この先多分そうはならないと思う。エネルギーの地産地消の技術的フィージビリティースタディーがどの程度あるのか、またエネルギーだけ地産地消ができても、鉄鉱石はどうかとか農業肥料のリンがどうか等のエネルギー以外のバイタルなものがいろいろある。エネルギーの地産地消で緩和できるものと、そうでないものがあると思う。
Q6(ネット経由):小泉先生が語られた「拒否的抑止」に、ドローンなどによる無人兵器は含まれますか?日本には無人兵器に必要なセンサー技術、制御技術がありますが、無人兵器のコストダウンには、武器輸出が必要と思いますが、「拒否的抑止」に武器輸出は含まれますか。
A6:ドローンは道具なので拒否的抑止にも懲罰的抑止にも使えます。同じ兵器でもそうです。例えば高級なセンサーを積んだ大型ドローン(グローバルホークみたいなやつ)を使って中国のどこを叩くか調べるとします。その時「ここを叩けば経済が大混乱するだろう」と考えるのは懲罰的抑止に基づくターゲティング、「日本に侵攻する場合はここが拠点になりそうだ」と考えるのは拒否的抑止に近い考え方です。
武器輸出については、抑止に含まれるものとそうでないものもあります。商業活動として行われる武器輸出、外交の手段としての武器輸出などは違いますが、「この国の軍事力を強化してやって中国の軍拡に対抗しよう」という考え方なら拒否的抑止に入ると思います。
Q7(ネット経由):ウクライナ侵攻から1か月ほど経ったころ、高市早苗さんがTV番組で(多分、ウクライナを念頭に)「自分で自分を守ろうとしてこなかった国を助ける国はない」と冷厳に言い放ったことがありました。その自分で自分を守ろうとしない国≠ニ助ける国はない≠フ2点で我が国をどう評価されますか。
A7:「自分で自分を守る国」になろうとしている、ということだと思います。2022年の安保三文書はその点をかなり真面目に考えて作られていますので、是非ご一読ください。ちなみにウクライナは2014年以降、「自分で自分を守る」ことを真剣にやろうとしたと思います。ただ、そのことをロシアに認識させられなかった。したがって、抑止力の中には、こちらが知っておいて欲しいことを抑止対象に認識させる戦略的コミュニケーションが含まれます。これについても最近、日本語でいくつか本が出ています。
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Q8(ネット経由):欧米からの今程度の継続支援でウクライナが何とか長期的に戦い続けることができたとして、ロシア側はいつまで戦い続けることができるか、あるいはいつ継戦をあきらめざるを得ないか。ロシア厭戦のボトルネックは何であろうか?食料、天然ガス等基本資源が自前なのでこの程度の戦いは半永久的にできるのだろうか。
A8:まず財政がボトルネックになると思います。ロシアの国防費はすでに平時の4倍にもなっており、何年も続けられるものではありません。
第二に、軍需生産にも限界があります。ロシアは昨年、1500両の戦車を配備したと言っていますが、年間の生産能力はどんなに大きく見積もっても500両以上ではありません。現実的には350-400両くらいでしょう。これは戦車自体の生産能力もさることながら、砲身の生産能力の限界でもあります。ロシアといえども戦車・榴弾砲の砲身を量産できる工場は2か所しかありません。
したがって、残る1000-1100両は予備保管されていた旧式戦車を工場でオーバーホールして現役復帰させているわけです。これだけの数のオーバーホールを短期間でできる能力は大したものですが、予備の戦車や装甲車は無限ではありません。ロシア全土に約20か所ある予備兵器保管場の兵器が尽きたらそれまでです。
財政と予備兵器が保つのは、おそらくあと1-2年と見られています。このくらいがロシアの戦争継続の限界だと思っています。
講 師:小泉 悠様 東京大学先端技術研究センター准教授
日 時:2024年10月18日(金)14:00〜16:00
場 所:新宿区NPO協働推進センター501会議室
聴講者数:104名
講師紹介:
2007年 3月 早稲田大学大学院政治学研究科 修士課程修了
2008年 2月 公益財団法人未来工学研究所 特別研究員
2009年 1月 外務省情報統括官組織 専門分析員
2009年12月 世界経済国際関係研究所 客員研究員
2011年 4月 国立国会図書館 非常勤調査員
2019年 3月 東京大学先端科学技術研究センター 特任助教
2022年 1月 東京大学先端科学技術研究センター 講師
2023年12月 東京大学先端科学技術研究センター 准教授

【講演概要】
■なぜ「地政学」なのか:大陸系地政学と海洋系地政学
・地政学は、19世紀にスウェーデンとかドイツで生まれてきた考え方。問題は、侵略の正当化イデオロギーになっていったこと。ヘーゲルの国家有機体説と結びつき、「国家とは生き物であり、生き物には栄養が必要。ある国にとって必要な栄養は地理的に見てどこからどこまでの範囲なのか。」という議論に移った。
・大陸で生まれた地政学(大陸系地政学)は、突き詰めると小国を滅ぼして大国が飲み込む勝者総取りの世界観に繋がる宿命を持っている。一方でアメリカ人やイギリス人が考えた海洋系地政学は、大陸内に強力な統一権力ができることを阻止しなければいけないというのが、根本にある関心事。
■ロシアについて:大陸系地政学の継承者。地理の問題とアイデンティティ(ルースキー・ミール)の問題が癒着
・生存権を確保するために緩衝地帯を作る発想。
・ソ連崩壊後にロシアの言説空間に復活させた人物が、アレクサンドル・ドゥーギン(ネオ・ユーラシア主義)。「地政学の基礎」を出版。
・ドゥーギンの言う三つの枢軸とは、何れもアメリカの影響力を排除し、ロシアにとって都合の良い「モスクワベルリン枢軸」・「モスクワテヘラン枢軸」・「モスクワ東京枢軸」。
・ロシア式地政学には、旧ソ連空間への執着と特殊な「主権」観がある。そこでのルースキー・ミールは、ロシア国家の中心であるルーシ民族のという意味。ルーシ文明を共有してる人は、文化的・人種的・宗教的等の共通した世界が広がっていて、国境の外でもそういうのはロシアということ。
・プーチンの戦争とかロシア右翼の言動は、このルースキー・ミールを根拠としている。
■中国について:大陸系地政学的。国力の伸展に伴い、損得・論理で考え得る行動
・中国とロシアは、見通し(プロスペクト)の違いにより振る舞いに差。
・ロシアは、国力自体が当面伸びず破滅的な戦争を始めて見通しは暗い。
・中国は、総合国力のピークはもう少し先。それまでの間に、台湾併合や東南アジアの国々をなびかせること、南シナ海において中国にとり有利な秩序を作る等の見通しをたてやすい。
・台湾は、不利な戦争を行うより、経済的な存在感・文化的近さ・同じ言語空間等を背景に段階的に取り込むと思われる。その方がはるかに低コスト。
・ロバート・カプラン(元CIAの情報分析官)が20年前に出した「地理の復讐」の中で、地理的に21世紀になってもヒンドゥークシュ山脈を越えるのは大変という記述がある。
・言語空間にもヒンドゥークシュ山脈があったが、それが大規模言語モデルの普及によって下がりつつある。結果、情報空間が現実の物理空間の中の地理的な境界線に影響を及ぼすのではないか。
■朝鮮半島について:ランドブリッジ。均衡が続くか怪しい
・朝鮮半島は、地政学でいうランドブリッジ(大国の利害の交差点)の位置づけ。
・ロシア・中国にとり北朝鮮の存在は望ましい。ただし、ずっとこの均衡が続くかどうかは最近非常に怪しい。
・心配しているのは、アメリカがそういう均衡を維持する意思をだんだん失いつつあるのではないかということ。
・今回のロシアのウクライナ侵略で明らかになったことは、核を持った国が本気で先に暴れだした場合に、他の国はなかなか手だしができないこと。
・その国が滅ばなくとも何十万人も死ぬという話になると、まともな民主主義国の指導者は絶対に決断できない。これが核戦略の用語で言う「耐えがたい損害」(国家が崩壊)と「受け入れがたい損害」(政治的に受入れ難い損害)の違い。
・核を持っているだけで、相当程度相手の行動を抑止することができるという状態。
・その走りが中国の核戦略で、最小限抑止戦略。
■日本の地政学について:海という戦略資産を使った抑止と格子状のネットワーク構築のジオストラテジー
・今できる地政学は否定的抑止で、懲罰的抑止ではない。日本の戦略目標は、台湾海峡と朝鮮半島の現状維持+中露の軍事的連携阻止。そのために海という戦略資産を最大限に活かすこと。ユーラシア大陸側からの侵略を遮断することに全力を挙げるべき。
・大事なことは、囲い込まずにゆるく繋がること。「格子状」のネットワーク(≠アジア版NATO)で、ユーラシア東西での連携を図り、「敵」との経済的繋がりも排除しない(ただし経済安全保障は手厚く)。
・地政学の論理の一つ上のレイヤーに、柔軟な枠組みを同時に持つことがこれから求められる。地政学と戦略と合わせたジオストラテジーとして、幅広さを持つ政策をとるべき。
【質疑応答】
Q1:アメリカのF16がウクライナに供与されたことが、一つのゲームチェンジャーになるか。
A1:特定の兵器が、ゲームチェンジャーになることはない。ゲームチェンジャーとは戦争の流れを変える力。それはある能力、制空権を取る能力、何かを著しく妨害する能力、何かを大量に生産する能力等のこと。その能力の構成要素として、特定の兵器や特定の技術、人の考えがあったりする。F16があまり目立っていないのは、他に何かが足りないから。この戦争が始まって以来、ロシアもウクライナもどちらも実は制空権を取っていない。ロシア軍もウクライナ軍もソ連軍の末裔なので、地上配備型防空システムが分厚い。これまでウクライナはロシアに制空権を取られずに済んできたが、F16の数を増やすこと及び電子妨害でレーダーやミサイルが機能しないようにするぐらいの能力が必要。F16に期待されることはロシアの防空システムや重要インフラを壊して回ることだが、西側のミサイルをロシアに対して使用する許可がされていないのと、F16のパイロットは空中戦の訓練はしてきたが、地上攻撃には複雑で長い訓練が必要なことがある。各国から2年間で百機近く引き渡されるので、制空権を取るかもしれないが、取ったとしても地上作戦と連動することが必要で、地上作戦を好転させる別の能力が必要になってくる。
Q2:ドイツと日本の原子力発電をやめられるかどうかの違いは何か。ドイツは完全に原子力発電をやめたが、日本の場合、なかなかやめられないのは、核のポテンシャルを手放したくないということがあるのか。
A2:原子力発電をやめるかやめないかは、安全保障の話しというよりエネルギー業界の中の論理で決まっていると思う。安全保障業界の立場からは、核武装のポテンシャルと結びつけて考える。ドイツの場合は2重の核抑止力がある。アメリカの核抑止と核同盟としてのNATOで、ドイツにしてみれば、事実上核兵器を使って戦う軍隊であるとの認識を持っていると思う。例えばNATOの核作戦共有メカニズムは、第三次世界大戦になれば、各国が分担して核爆弾でどことどこを焼き払う等の計画をアップデートし、毎年戦術核を使って戦う演習を行っている。日米韓では10年前ぐらい前に局長級で拡大抑止協議を行い、最近それが国防大臣級になった。2019年9月東京での三国国防会議で、初めて核拡大防止の話しをした。核シェアリングの本質は核爆弾がどこに置いてあるかではなく、有事に核爆弾を使う計画を平時からどこまで共有しているか。日本周辺で自衛隊と米軍・韓国軍が一緒に核爆弾を使って作戦をするという計画を作り訓練まですることになり、はじめて事実上の核シェアリングといえるが、これは難しい。安全保障の立場からの発想では、プルトニウムの保有量からすると日本は比較的短期間で核爆弾を作れる能力があり、その能力があった方がオプションは広がるとの考え方がある。
Q3:ロシアはウクライナについては同じ人達という感覚があると思うが、中国から日本はそうは見えないと思う。香港や台湾は同じに見えると思うが、両者の人口規模は異なる。香港の数倍規模の人口を持つ台湾は、自由主義文化で数十年生きてきた国民がいる。こういう人達を力で押さえ込むのは、相当ハードルが高いと思われる。それが一つの抑止力になっているのではないか。
A3:その発想は面白い。ただいきなりすべてを中国本土並みにするわけではないと思う。香港の場合も一国二制度から始まって途中で国家安全法ができてというように、段階的にやっている。台湾について実際に行ってみると、中国に対する意見の分断も相当あるように思う。ジェネレーションによってもかなり違う。いきなりすべてを中国本土並みにするのは難しいが、中国はもっと上手くやると思う。武力侵攻により短期間で併合する蓋然性は低い。時間をかけて経済的に統合し、人の往来を増やし、情報空間も融合させて実質的に台湾への影響力を手に入れていくというのが、私の根本の発想にある。
Q4:ロシアのウクライナ侵攻は、旧ソ連時代あるいは帝政ロシア時代にそこは我々のものであったということを、再確認するために起こっているように思えるがどうか。
A4:一つの国だった、あそこは我々のものだったというのはあると思う。今回の戦争について、ロシアの右翼は“内戦”と呼び、プーチンもこの戦争を決して戦争と言わず“特別軍事作戦”としかいわない。今回の戦争は今始まったのではなく、10年前のクリミア併合、ドンバス侵攻から始まっている。プーチン周辺や右翼の人々が使い始めた“ノヴォロシア”という言葉がある。エカテリーナが、征服した一部コサック、一部オスマンの土地であったものを分捕って新ロシアの意味の“ノヴォロシア”と名付けた。プーチンはサンクトペテルブルグ鉱山大学で博士号をとっている。博士論文のテーマは、天然資源を国家管理において、これを武器としてロシアの地政学的地位を高めるというもの。この大学が実はエカテリーナが200年前に創ったもの。プーチンはピョートル大帝を尊敬しているが、エカテリーナの影も感じる。18世紀に一番輝いていたロシアを、再確認しているところがあるのかもしれない。
Q5:多くの国がエネルギーの地産地消をすれば、国家間の争いも少し下がるのではないか。
A5:ここ十年ぐらいの地政学の復活をみていると、やはり囲い込みを始めている。十数年前の中国によるレアメタルの対日禁輸や、ウクライナ戦争が始まった翌日にはトルコが交戦国の軍艦はボスポラス海峡を通さない、といったことが起こっている。こういうことを目にすると、地政学の戦略で海峡を抑えるとか資源地帯を抑えるとかという地政学者の発想が分かってくる。地政学的な力の論理よりマーケットの論理が全面にくる世界がくれば、エネルギーが偏在していても問題ない世界を作れる感覚はあるが、この先多分そうはならないと思う。エネルギーの地産地消の技術的フィージビリティースタディーがどの程度あるのか、またエネルギーだけ地産地消ができても、鉄鉱石はどうかとか農業肥料のリンがどうか等のエネルギー以外のバイタルなものがいろいろある。エネルギーの地産地消で緩和できるものと、そうでないものがあると思う。
Q6(ネット経由):小泉先生が語られた「拒否的抑止」に、ドローンなどによる無人兵器は含まれますか?日本には無人兵器に必要なセンサー技術、制御技術がありますが、無人兵器のコストダウンには、武器輸出が必要と思いますが、「拒否的抑止」に武器輸出は含まれますか。
A6:ドローンは道具なので拒否的抑止にも懲罰的抑止にも使えます。同じ兵器でもそうです。例えば高級なセンサーを積んだ大型ドローン(グローバルホークみたいなやつ)を使って中国のどこを叩くか調べるとします。その時「ここを叩けば経済が大混乱するだろう」と考えるのは懲罰的抑止に基づくターゲティング、「日本に侵攻する場合はここが拠点になりそうだ」と考えるのは拒否的抑止に近い考え方です。
武器輸出については、抑止に含まれるものとそうでないものもあります。商業活動として行われる武器輸出、外交の手段としての武器輸出などは違いますが、「この国の軍事力を強化してやって中国の軍拡に対抗しよう」という考え方なら拒否的抑止に入ると思います。
Q7(ネット経由):ウクライナ侵攻から1か月ほど経ったころ、高市早苗さんがTV番組で(多分、ウクライナを念頭に)「自分で自分を守ろうとしてこなかった国を助ける国はない」と冷厳に言い放ったことがありました。その自分で自分を守ろうとしない国≠ニ助ける国はない≠フ2点で我が国をどう評価されますか。
A7:「自分で自分を守る国」になろうとしている、ということだと思います。2022年の安保三文書はその点をかなり真面目に考えて作られていますので、是非ご一読ください。ちなみにウクライナは2014年以降、「自分で自分を守る」ことを真剣にやろうとしたと思います。ただ、そのことをロシアに認識させられなかった。したがって、抑止力の中には、こちらが知っておいて欲しいことを抑止対象に認識させる戦略的コミュニケーションが含まれます。これについても最近、日本語でいくつか本が出ています。
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Q8(ネット経由):欧米からの今程度の継続支援でウクライナが何とか長期的に戦い続けることができたとして、ロシア側はいつまで戦い続けることができるか、あるいはいつ継戦をあきらめざるを得ないか。ロシア厭戦のボトルネックは何であろうか?食料、天然ガス等基本資源が自前なのでこの程度の戦いは半永久的にできるのだろうか。
A8:まず財政がボトルネックになると思います。ロシアの国防費はすでに平時の4倍にもなっており、何年も続けられるものではありません。
第二に、軍需生産にも限界があります。ロシアは昨年、1500両の戦車を配備したと言っていますが、年間の生産能力はどんなに大きく見積もっても500両以上ではありません。現実的には350-400両くらいでしょう。これは戦車自体の生産能力もさることながら、砲身の生産能力の限界でもあります。ロシアといえども戦車・榴弾砲の砲身を量産できる工場は2か所しかありません。
したがって、残る1000-1100両は予備保管されていた旧式戦車を工場でオーバーホールして現役復帰させているわけです。これだけの数のオーバーホールを短期間でできる能力は大したものですが、予備の戦車や装甲車は無限ではありません。ロシア全土に約20か所ある予備兵器保管場の兵器が尽きたらそれまでです。
財政と予備兵器が保つのは、おそらくあと1-2年と見られています。このくらいがロシアの戦争継続の限界だと思っています。
文責:井上 善雄
posted by EVF セミナー at 20:00| セミナー紹介
2024年09月27日
EVFセミナー報告:脱炭素へのエネルギー転換
演題:脱炭素へのエネルギー転換―エネルギー基本計画の論点にもふれてー
講師:大野 輝之様 公益財団法人 自然エネルギー財団 常務理事
聴講者数:49名
講師略歴:
• 1979年 東京大学経済学部卒。東京都庁入庁。
• 1998年 より環境行政に関わる。
「ディーゼル車NO作戦」の企画等国に先駆ける東京都の環境政策牽引
• 2010年 東京都環境局長。
• 2013年 より現職。
• 2014年 カルフォルニア州からハーゲンシュミット・グリーンエア賞を受賞。
著書:「自治体のエネルギー戦略」「都市開発を考える」「現代アメリカ都市計画」など。
概要報告:
COP28で2030年までに世界の自然エネルギー設備容量を3倍にすること、G7で2035年までに電源部門の全てまたは大部分を脱炭素化することが決定した。日本は、化石燃料の多くを海外からの輸入に依存し、自動車・半導体等輸出で稼いだ29兆円は化石燃料の輸入26兆円で使われている。脱炭素化に向けては、エネルギー安全保障、安定供給、低コストを実現できるエネルギーミックスが必要であり、5月15日から経産省主幹の基本政策分科会で次期エネルギー基本計画の議論が始まっている。脱炭素への日本の道筋を明らかにするために、自然エネルギー財団は次の問題提起をしている。
1)日本の2050年CO2排出削減目標達成はオントラックではなく、欧州に対しても遅れている。
政府はオントラックで進んでいると認識しているが、日本は東日本震災直後の化石燃料発電9割であった2013年を起点にしたトレンドを見ており、欧州と同じく1990年を起点にみると欧州よりも目標との乖離が大きい。
2)AIの普及による電力需要が増えると言われているが、もともと電化により電力需要は約1.5倍となることを予測しており、AIで言われている電化需要もこの範囲内にある。
3)原子力発電は日本では2050年代の電力需要の4〜6%しか供給できない。COP28で2050年までに現在の原発設備容量の3倍にする目標を立てたが、IEAのシナリオをもとに試算すると設備容量が3倍になっても2050年総発電量の10%程度に過ぎない。更に日本での課題は、放射線廃棄物の最終処分場を稼働する詳細計画がないこと、原発新設コストの上昇(過去の政府見積もりの3倍以上になっている)、原発新設には約20年のリードタイムが必要であることから間に合わない等将来が見えていない。
4)火力発電所の脱炭素の実現性に疑問がある。政府はCCSとアンモニア混焼を推進しているが、いずれも実現性のめどがたっていない。CCSはCO2回収率が低いこと(IEAは回収率9割以上を基準にしているが世界でも6割程度しかできていない)、回収したCO2の地下貯留先が決まっていない。アンモニアは燃やしてもCO2は出ないが作るときにCO2が出る。50%混焼してもCO2削減率は30%。しかも、蓄電を考慮した太陽光発電、風力発電よりもコスト高になる。
5)太陽光発電、風力発電は、世界でも導入が加速しており日本でもポテンシャルがある。太陽光発電はもともと日本がトップメーカーで20年以上の歴史があるが、近年は日本では減速している。環境破壊で問題視されているメガソーラーではなく、建物と農地を中心にしても現在導入量の30倍(2380GW)のポテンシャルがある。風力発電は、領海+EEZで1128GWのポテンシャルがあり、EEZ法案の国会での制定と洋上風力発電導入の目標値設定をし、風力発電の導入加速が望まれる。電源離脱など系統トラブル時のブラックアウトの懸念は、蓄電池+デジタル技術で問題を解決している国々がすでにある。
6)化石燃料・CCS+原子力に脱炭素の30〜40%を依存する戦略から再エネと省エネを中心とする脱炭素戦略に移行することが必要。自然エネルギー財団の試算では、蓄電池の大量導入と北海道‐東北‐東京の送電網の強化により、自然エネルギー80%で24時間365日安定供給が可能であるこがを確認している。
Q1 自動車業界のOBとして貢献できることはないか。中古EV、HEVのモーター、バッテリーを風力発電に使えないかと考えた時に、どのようなルート、どういう人と相談したらよいか。
A1 運輸部門を持っていないので十分な回答ができないかもしれないですが、EVのバッテリーを蓄電池に活用することは追加投資なしにできるので有力。EVを電力供給の安定化に使うことは有効で、実際にいろいろなメーカーが実証実験をしていると思います。電力系統の安定化の役割に大いに検討されてよいと思いますし、自動車業界と協力させていただきたい。モーターについては、財団に詳しい別の担当がいます。
Q2 アンモニア等の議論があるが、まずは供給電力から入らなければならいのではないか。再エネを出発点において、それからアンモニア等を考えるべきではないか。再生可能エネルギーでコストが高くなるといわれているが、実際のところどうなのか。
A2 政府は水素に力を注いでいるが、どこから水素を持ってくるのかはっきりしない。水素が役にたつのは、水素を作る過程からCO2を出さないグリーン水素であること。政府が進めているブルー水素は、作るときに大量のCO2が出るがCCSで回収することだが、CCSの回収がうまくいっていない。ブルー水素は本当のクリーンにならない。
・ブルー水素は化石燃料から作るので、化石燃料よりも必ず高くなる。再エネで作るグリーンは化石燃料よりも安くなる。ブルー水素を使い続けることは脱炭素戦略でも問題あるし、経済的に考えても問題ある。
・太陽光・風力発電の余剰電力をグリーン水素生成に充てればよいが、2050年でも自然エネルギーで電力の50%の計画では国産のグリーン水素は十分に作れない。海外からの水素供給は割高、海外依存も改善されない。
・コストについては、国別に発電方法のコストマップが作成されているが、日本も含めて太陽光発電が一番安くなっている。太陽光発電、風力発電は発電単体では安くなっているが安定化のために必要な統合コストを入れると高いという議論はあるが、財団での計算、IEAのスタディでも自然エネルギーが一番低コストである結果が出ている。
Q3 ポテンシャルのある風力、太陽光がなぜ日本で進まないのか。地方の問題か中央の問題か。
A3 色々な問題はあるが、一番の問題は、日本政府の政策が自然エネルギーを政策になっていなかった。電力会社も同様にそのような政策をとらなかったことが究極の問題と思われる。
・そもそも太陽光発電は日本の技術。2005、6年は太陽光発電は日本の企業が世界のトップ5にあった。NEDOは「なぜ日本は太陽光発電で世界一になったのか」本を出した。サンシャイン計画でNEDOが中心になって進めていたが、2005年辺りで、経産省がもう進んだからよいと補助金をやめてしまった。せっかくスタートして順調だったのに梯子が外された。
・そのころからドイツは(日本で言う)FIT制度を始めて、それを見ていた中国も力を入れ始め、ドイツに大量に輸出してコスト低減に成功。低コストになったので中国国内にも展開してダントツのシェアになった。
・日本の電力会社は垂直統合型だったためその名残がある。部分的に規制緩和されて発電、送電会社は法制分離されているが持ち株会社は一緒なので、違うビジネスから参入の太陽光、風力電力のシェアが増えれば電力会社の利益が減るため、送電は火力・原子力が優先になる。経産省が急速な普及に対応する経験を持っていなかったため、規制・制度に穴があり、メガソーラーで環境破壊、地域の反発を買ったり、変動電源の安定化技術も遅れた。
Q4 IEAの予測では2030年から再エネが急拡大されるようなカーブになっている。今既にコストが低いなら今から拡大が始まってもよいと思うがそのようなトレンドになっていないのははぜか。
A4 資料の6ページにIEAのシナリオがありますが、2022年段階で世界の電力供給の30%が再エネ。2030年に59%で2030年までにも倍に増えるトレンドと見ている。2030年から急に拡大というわけではない。
Q5 太陽光、風力の中国が覇権を握るよう進むのか。世界をリードしていけるのか。
A5 中国の独占は問題であるが、日本も含めてそれを許した国々の問題もある。2年くらい前から、アメリカでは太陽光、風力発電、蓄電池のアメリカ国内生産を加速させるための税金控除制度ができた。欧州でも国内蓄電池の生産能力増に力を入れている。両国ともうまくいっているとはまだ言える状況ではないが、方向としては、中国独占を許すのではなく、アメリカ、欧州、東南アジア、日本との同志国で相当程度の供給能力を作っていくことがエネルギー安全保障政策として重要だと思っている。
太陽光発電も風力発電も設備コストの中でモジュールの部分は3割程度で、残りの7割は国内での建設工事費、販売利益、メインテナンス等の費用になるので、化石燃料のようにすべてが海外依存ではない。
講演資料:脱炭素へのエネルギー変換
講師:大野 輝之様 公益財団法人 自然エネルギー財団 常務理事
聴講者数:49名
講師略歴:
• 1979年 東京大学経済学部卒。東京都庁入庁。
• 1998年 より環境行政に関わる。
「ディーゼル車NO作戦」の企画等国に先駆ける東京都の環境政策牽引
• 2010年 東京都環境局長。
• 2013年 より現職。
• 2014年 カルフォルニア州からハーゲンシュミット・グリーンエア賞を受賞。
著書:「自治体のエネルギー戦略」「都市開発を考える」「現代アメリカ都市計画」など。
概要報告:
COP28で2030年までに世界の自然エネルギー設備容量を3倍にすること、G7で2035年までに電源部門の全てまたは大部分を脱炭素化することが決定した。日本は、化石燃料の多くを海外からの輸入に依存し、自動車・半導体等輸出で稼いだ29兆円は化石燃料の輸入26兆円で使われている。脱炭素化に向けては、エネルギー安全保障、安定供給、低コストを実現できるエネルギーミックスが必要であり、5月15日から経産省主幹の基本政策分科会で次期エネルギー基本計画の議論が始まっている。脱炭素への日本の道筋を明らかにするために、自然エネルギー財団は次の問題提起をしている。
1)日本の2050年CO2排出削減目標達成はオントラックではなく、欧州に対しても遅れている。
政府はオントラックで進んでいると認識しているが、日本は東日本震災直後の化石燃料発電9割であった2013年を起点にしたトレンドを見ており、欧州と同じく1990年を起点にみると欧州よりも目標との乖離が大きい。
2)AIの普及による電力需要が増えると言われているが、もともと電化により電力需要は約1.5倍となることを予測しており、AIで言われている電化需要もこの範囲内にある。
3)原子力発電は日本では2050年代の電力需要の4〜6%しか供給できない。COP28で2050年までに現在の原発設備容量の3倍にする目標を立てたが、IEAのシナリオをもとに試算すると設備容量が3倍になっても2050年総発電量の10%程度に過ぎない。更に日本での課題は、放射線廃棄物の最終処分場を稼働する詳細計画がないこと、原発新設コストの上昇(過去の政府見積もりの3倍以上になっている)、原発新設には約20年のリードタイムが必要であることから間に合わない等将来が見えていない。
4)火力発電所の脱炭素の実現性に疑問がある。政府はCCSとアンモニア混焼を推進しているが、いずれも実現性のめどがたっていない。CCSはCO2回収率が低いこと(IEAは回収率9割以上を基準にしているが世界でも6割程度しかできていない)、回収したCO2の地下貯留先が決まっていない。アンモニアは燃やしてもCO2は出ないが作るときにCO2が出る。50%混焼してもCO2削減率は30%。しかも、蓄電を考慮した太陽光発電、風力発電よりもコスト高になる。
5)太陽光発電、風力発電は、世界でも導入が加速しており日本でもポテンシャルがある。太陽光発電はもともと日本がトップメーカーで20年以上の歴史があるが、近年は日本では減速している。環境破壊で問題視されているメガソーラーではなく、建物と農地を中心にしても現在導入量の30倍(2380GW)のポテンシャルがある。風力発電は、領海+EEZで1128GWのポテンシャルがあり、EEZ法案の国会での制定と洋上風力発電導入の目標値設定をし、風力発電の導入加速が望まれる。電源離脱など系統トラブル時のブラックアウトの懸念は、蓄電池+デジタル技術で問題を解決している国々がすでにある。
6)化石燃料・CCS+原子力に脱炭素の30〜40%を依存する戦略から再エネと省エネを中心とする脱炭素戦略に移行することが必要。自然エネルギー財団の試算では、蓄電池の大量導入と北海道‐東北‐東京の送電網の強化により、自然エネルギー80%で24時間365日安定供給が可能であるこがを確認している。
Q1 自動車業界のOBとして貢献できることはないか。中古EV、HEVのモーター、バッテリーを風力発電に使えないかと考えた時に、どのようなルート、どういう人と相談したらよいか。
A1 運輸部門を持っていないので十分な回答ができないかもしれないですが、EVのバッテリーを蓄電池に活用することは追加投資なしにできるので有力。EVを電力供給の安定化に使うことは有効で、実際にいろいろなメーカーが実証実験をしていると思います。電力系統の安定化の役割に大いに検討されてよいと思いますし、自動車業界と協力させていただきたい。モーターについては、財団に詳しい別の担当がいます。
Q2 アンモニア等の議論があるが、まずは供給電力から入らなければならいのではないか。再エネを出発点において、それからアンモニア等を考えるべきではないか。再生可能エネルギーでコストが高くなるといわれているが、実際のところどうなのか。
A2 政府は水素に力を注いでいるが、どこから水素を持ってくるのかはっきりしない。水素が役にたつのは、水素を作る過程からCO2を出さないグリーン水素であること。政府が進めているブルー水素は、作るときに大量のCO2が出るがCCSで回収することだが、CCSの回収がうまくいっていない。ブルー水素は本当のクリーンにならない。
・ブルー水素は化石燃料から作るので、化石燃料よりも必ず高くなる。再エネで作るグリーンは化石燃料よりも安くなる。ブルー水素を使い続けることは脱炭素戦略でも問題あるし、経済的に考えても問題ある。
・太陽光・風力発電の余剰電力をグリーン水素生成に充てればよいが、2050年でも自然エネルギーで電力の50%の計画では国産のグリーン水素は十分に作れない。海外からの水素供給は割高、海外依存も改善されない。
・コストについては、国別に発電方法のコストマップが作成されているが、日本も含めて太陽光発電が一番安くなっている。太陽光発電、風力発電は発電単体では安くなっているが安定化のために必要な統合コストを入れると高いという議論はあるが、財団での計算、IEAのスタディでも自然エネルギーが一番低コストである結果が出ている。
Q3 ポテンシャルのある風力、太陽光がなぜ日本で進まないのか。地方の問題か中央の問題か。
A3 色々な問題はあるが、一番の問題は、日本政府の政策が自然エネルギーを政策になっていなかった。電力会社も同様にそのような政策をとらなかったことが究極の問題と思われる。
・そもそも太陽光発電は日本の技術。2005、6年は太陽光発電は日本の企業が世界のトップ5にあった。NEDOは「なぜ日本は太陽光発電で世界一になったのか」本を出した。サンシャイン計画でNEDOが中心になって進めていたが、2005年辺りで、経産省がもう進んだからよいと補助金をやめてしまった。せっかくスタートして順調だったのに梯子が外された。
・そのころからドイツは(日本で言う)FIT制度を始めて、それを見ていた中国も力を入れ始め、ドイツに大量に輸出してコスト低減に成功。低コストになったので中国国内にも展開してダントツのシェアになった。
・日本の電力会社は垂直統合型だったためその名残がある。部分的に規制緩和されて発電、送電会社は法制分離されているが持ち株会社は一緒なので、違うビジネスから参入の太陽光、風力電力のシェアが増えれば電力会社の利益が減るため、送電は火力・原子力が優先になる。経産省が急速な普及に対応する経験を持っていなかったため、規制・制度に穴があり、メガソーラーで環境破壊、地域の反発を買ったり、変動電源の安定化技術も遅れた。
Q4 IEAの予測では2030年から再エネが急拡大されるようなカーブになっている。今既にコストが低いなら今から拡大が始まってもよいと思うがそのようなトレンドになっていないのははぜか。
A4 資料の6ページにIEAのシナリオがありますが、2022年段階で世界の電力供給の30%が再エネ。2030年に59%で2030年までにも倍に増えるトレンドと見ている。2030年から急に拡大というわけではない。
Q5 太陽光、風力の中国が覇権を握るよう進むのか。世界をリードしていけるのか。
A5 中国の独占は問題であるが、日本も含めてそれを許した国々の問題もある。2年くらい前から、アメリカでは太陽光、風力発電、蓄電池のアメリカ国内生産を加速させるための税金控除制度ができた。欧州でも国内蓄電池の生産能力増に力を入れている。両国ともうまくいっているとはまだ言える状況ではないが、方向としては、中国独占を許すのではなく、アメリカ、欧州、東南アジア、日本との同志国で相当程度の供給能力を作っていくことがエネルギー安全保障政策として重要だと思っている。
太陽光発電も風力発電も設備コストの中でモジュールの部分は3割程度で、残りの7割は国内での建設工事費、販売利益、メインテナンス等の費用になるので、化石燃料のようにすべてが海外依存ではない。
文責:白橋 良宏
講演資料:脱炭素へのエネルギー変換
posted by EVF セミナー at 17:00| セミナー紹介
2024年08月23日
EVFセミナー報告:内燃機関の可能性
演 題 :「内燃機関の可能性 〜ポストCN(カーボンニュートラル)時代の自動車の新しい軸〜」
講 師 : 轟木 光 様 KPMGアソシエイトパートナー(Automotive Sector)
聴講者数:50名
講師紹介
•日系自動車会社、日系総合コンサルティングファーム、監査法人系コンサルティングファームを経て現職
•自動車関連産業を中心に、商品戦略、技術戦略、新市場参入戦略などの戦略に関するプロジェクトに従事
•自動車産業の経営層及び経営企画に寄り添いながら、戦略構築及び業務改革推進に強みを持つ
•公益社団法人自動車技術会 エネルギー部門委員会にて幹事委員を務め、 Automotive Intelligence チームリーダーとして、自動車におけるエネルギー課題に対して外部セミナー寄稿を行い、メディア等から当分野における専門家としての意見を求められている
概要報告:
EV(電気自動車)が自動車業界において世紀の大転換をもたらすという見方が社会通念と化しているなか、米国、欧州、中国のすべての市場においてEVの販売シェアが減少し、各市場での主力パワートレインは、HEV(=ハイブリッド)を含むICE(=一般的なエンジン=内燃機関)であり、日本の自動車産業が内燃機関からBEVへ大きく舵を切った可能性があるものの世界市場を見渡すとBEV市場の拡大にはまだ時間がかかるということが厳然たるデータ(=事実)である。三極の政治は、自動車産業に対し、グリーン・低炭素化を求めているが、カーボンニュートラルという目的に対しては、手段はBEVだけには限定されず、内燃機関でも可能である。CO2削減に対し、LCA(ライフ・サイクル・アセスメント)の視点の重要性が高まるなかで、カーボンニュートラル燃料を使用した内燃機関のほうが、BEVよりもCO2削減効果が高い可能性がある。バイオ燃料、e-Fuel、バイオガス、水素などのカーボンニュートラル燃料により、内燃機関もカーボンニュートラル対応のソリューションとなると認識されうることから、自動車産業において、内燃機関向けの新規投資が増加する可能性、さらには、自動車産業におけるポストカーボンニュートラル時代の新しい競争(バッテリー搭載量の違いによる航続距離など)が始まる可能性がある。自動車産業は、カーボンニュートラルが当たり前化する時代の次にある自動車エネルギー源の多様化の時代において、考えられるすべてのエネルギー源に対応するソリューションを用意しなければならない。
Q&A:
Q1:カーボンニュートラルが進展するに伴い、地方のガソリンスタンドどうなってしまうのか。
A1:減少という点ではそうかもしれない。しかし、減少、効率化に着目するだけではなく、エコシステムを活かすためのカネの流入、すなわち、よい意味での「無駄遣い」が必要ではないだろうか。
Q2:カーボンニュートラル燃料としては、液体バイオが本命になるのではないか。
A2:なにが主流になるかは、地域によっても異なる。
Q3:日本の場合、水素はどこから手に入れるのか。
A3:輸入することになる。グリーン水素、ブルー水素とも安いところから買うことになろう。輸出元としては、どこでもたとえば、オーストラリア、中東など。
講 師 : 轟木 光 様 KPMGアソシエイトパートナー(Automotive Sector)
聴講者数:50名
講師紹介
•日系自動車会社、日系総合コンサルティングファーム、監査法人系コンサルティングファームを経て現職
•自動車関連産業を中心に、商品戦略、技術戦略、新市場参入戦略などの戦略に関するプロジェクトに従事
•自動車産業の経営層及び経営企画に寄り添いながら、戦略構築及び業務改革推進に強みを持つ
•公益社団法人自動車技術会 エネルギー部門委員会にて幹事委員を務め、 Automotive Intelligence チームリーダーとして、自動車におけるエネルギー課題に対して外部セミナー寄稿を行い、メディア等から当分野における専門家としての意見を求められている
概要報告:
EV(電気自動車)が自動車業界において世紀の大転換をもたらすという見方が社会通念と化しているなか、米国、欧州、中国のすべての市場においてEVの販売シェアが減少し、各市場での主力パワートレインは、HEV(=ハイブリッド)を含むICE(=一般的なエンジン=内燃機関)であり、日本の自動車産業が内燃機関からBEVへ大きく舵を切った可能性があるものの世界市場を見渡すとBEV市場の拡大にはまだ時間がかかるということが厳然たるデータ(=事実)である。三極の政治は、自動車産業に対し、グリーン・低炭素化を求めているが、カーボンニュートラルという目的に対しては、手段はBEVだけには限定されず、内燃機関でも可能である。CO2削減に対し、LCA(ライフ・サイクル・アセスメント)の視点の重要性が高まるなかで、カーボンニュートラル燃料を使用した内燃機関のほうが、BEVよりもCO2削減効果が高い可能性がある。バイオ燃料、e-Fuel、バイオガス、水素などのカーボンニュートラル燃料により、内燃機関もカーボンニュートラル対応のソリューションとなると認識されうることから、自動車産業において、内燃機関向けの新規投資が増加する可能性、さらには、自動車産業におけるポストカーボンニュートラル時代の新しい競争(バッテリー搭載量の違いによる航続距離など)が始まる可能性がある。自動車産業は、カーボンニュートラルが当たり前化する時代の次にある自動車エネルギー源の多様化の時代において、考えられるすべてのエネルギー源に対応するソリューションを用意しなければならない。
Q&A:
Q1:カーボンニュートラルが進展するに伴い、地方のガソリンスタンドどうなってしまうのか。
A1:減少という点ではそうかもしれない。しかし、減少、効率化に着目するだけではなく、エコシステムを活かすためのカネの流入、すなわち、よい意味での「無駄遣い」が必要ではないだろうか。
Q2:カーボンニュートラル燃料としては、液体バイオが本命になるのではないか。
A2:なにが主流になるかは、地域によっても異なる。
Q3:日本の場合、水素はどこから手に入れるのか。
A3:輸入することになる。グリーン水素、ブルー水素とも安いところから買うことになろう。輸出元としては、どこでもたとえば、オーストラリア、中東など。
文責:高橋 直樹
posted by EVF セミナー at 00:00| セミナー紹介
2024年07月26日
EVFセミナー報告:「インドってどんな国?」〜駐在経験から感じた生活と仕事〜
演題:「インドってどんな国?」 〜駐在経験から感じた生活と仕事〜
講師:大場 昇様 元日産自動車株式会社 グローバル技術渉外部主管
聴講者数:50名
講師略歴:
1980年 同志社大学工学部機械工学科卒業、日産自動車株式会社入社
1989〜1994年 米国ワシントン事務所駐在
1997〜2002年 米国ワシントン事務所所長、米国自動車輸入協会・技術委員会委員長
2004〜2008年 ルノー社へ出向 パリ駐在
2013〜2016年 インド・チェンナイ駐在
2016〜2022年 日産グローバル技術渉外部・日本自動車工業会、環境政策部会会長、燃費部会副部会長
講演概要
インドとは
【カースト制度は今でも存在するか?】
法的にカーストは排除されたが、現実的に存在
名前でカーストがわかる。カーストを超えての結婚は難しい
【インド人は存在しない?】
南インドのチェンナイは、北インドとは顔立ちも言葉も服装も全く異なる
・言語:
公用語はヒンディー語40%、残り60%は大括りでも30種の言語
準公用語はインド訛り英語
・宗教:
人口の80%がヒンドゥー教、イスラム教14%、他キリスト、シーク教、仏教等
・地域により、言語、宗教、習慣が異なり、「インド人」で一括りにできない
【インドはなぜ成長するのか?】
・人口と構成比
2023年のインド人口は14億2900万人、中国14億2600万人を上回る
人口構成はピラミッド型、2060年 まで人口増加
・民主主義
中国共産党による一党独裁や習近平一人へのような権力集中はなく、中央、各州の行政府と議会が機能
・エリート官僚制度
インド行政職は、毎年数十万人の応募者から 100 人程度を選抜。世界で例を見ないエリート
・インドには天才が多い説
天才は多く存在するが、総人口が多い為
現存するカースト制度のため、職業を選べない、親の職業を世襲、貧しい家庭の子供はその環境からの離脱が困難
IT産業はカーストに縛られず、優秀な人材が多い
【インドでの仕事】
・NOと言わない、言えないインド人
・とにかく喋るインド人
国際会議で日本人を喋らせるか、インド人を黙らせるかどちらが難しいか?
・「議事録を作れ」の指示は無意味
議事録は、文字を時系列に書き並べるだけ
日本本社の関心事を列挙し報告書の枠を作成、それを埋めれば報告書が自動的に作れるように
・時代の流れ?パワハラに注意
・インド人特有のプロモーション感覚
1年〜2年間、同じ仕事をすると、自分は既にエキスパートと主張
1年〜2年で配置転換を希望、昇格を要求するエンジニア多数 > 昇格のステップを細かく多段階に
【インドでの生活】
リサイクル容器は要注意、1回限りの使用の瓶、缶は安全
予防接種6種を赴任前に2回、その後、継続接種で免疫効果は半年、1年と伸びてくる。
80%の家庭にトイレがなく屋外へ、洪水で疫病
ガンジス川の沐浴は自殺行為
・食材
ヒンズー教は牛肉禁止、イスラム教は豚肉禁止、一般に入手可能は鶏肉
・水
水道水は「毒水」
雑菌、不純物多く、水道水で洗髪すると毛穴が詰まり脱毛も。洗髪後にペットボトル水でのすすぎが必要
梅干が腹痛、下痢予防に一番の効果
・酒
チェンナイでは、飲食店でアルコール提供なし
韓国料理屋や中華屋では、色付きの水差しにビールを入れ提供
ローカルのブランディーとジンは、エチルアルコール入り?
持込のアルコール類は空港で没収、日本出張から帰路にウイスキーや焼酎はペットボトルに入れ持込、お茶、水と申告
主な質疑応答
Q:国際会議でインド人の英語を聞き取る秘訣は?
A:無いです。Rの発音が独特、ひたすら慣れるしかない。仏人の英語も難しい
Q:テレビで列車の窓から乗車する光景を見るが、それは普通のことですか?
A:普通です。バスでも同様です
Q:インドでの仕事を頼まれたことがあったが、インドには行かずにすみました。(説明いただい内容は)ホテルでも同様ですか?
A:ホテルでも同じです。デリー近辺の方が水質は良くない。火が通っているものは大丈夫。キャラフに入った水は口にしないこと。ペットボトルなら大丈夫。飲食の前に梅干しが有効。5星ホテルを推奨します。
Q:フリーザはチェストフリーザですね、
A:はい
Q:パキスタン美人は北部のインド美人と同じでしょうか?
A:同じです、その地域は中国、ヒマラヤ、イスラム地域の混血が多い
Q:女性の人口が少ないとのことですが、結納金は高いですか?
A:結納は牛を何頭のケースが多いと聞く。インドでは現金紙幣より金(Gold)が大切にされている。インドではマフィアが現金を使えなくする為に突然紙幣が変わる。金なら価値がある
Q:(日産が)インドにデータセンターを投資するのは?
A:仏人が決めたことで、今後上手く行くかわからない。大変なことと思う。
Q:日産は(現地人を)どう使っている?
A:裏話もある。データセンターに反対もあったが、ITは優秀な学生を集め易い。出身大学によって給与が3倍違う。エンジニアとしては優秀な人が多い。苦労は風習、文化が違うこと。グローバルスタンダードをやろうとすると現地のマネージャーを上手く使うのがポイント
Q:カーストの低位の人々はどのようにしたら大学に入れるか?
A:難しい試験に合格するにはお金がかかり、カーストが低い人は難しい
以上
講師:大場 昇様 元日産自動車株式会社 グローバル技術渉外部主管
聴講者数:50名
講師略歴:
1980年 同志社大学工学部機械工学科卒業、日産自動車株式会社入社
1989〜1994年 米国ワシントン事務所駐在
1997〜2002年 米国ワシントン事務所所長、米国自動車輸入協会・技術委員会委員長
2004〜2008年 ルノー社へ出向 パリ駐在
2013〜2016年 インド・チェンナイ駐在
2016〜2022年 日産グローバル技術渉外部・日本自動車工業会、環境政策部会会長、燃費部会副部会長
講演概要
インドとは
【カースト制度は今でも存在するか?】
法的にカーストは排除されたが、現実的に存在
名前でカーストがわかる。カーストを超えての結婚は難しい
【インド人は存在しない?】
南インドのチェンナイは、北インドとは顔立ちも言葉も服装も全く異なる
・言語:
公用語はヒンディー語40%、残り60%は大括りでも30種の言語
準公用語はインド訛り英語
・宗教:
人口の80%がヒンドゥー教、イスラム教14%、他キリスト、シーク教、仏教等
・地域により、言語、宗教、習慣が異なり、「インド人」で一括りにできない
【インドはなぜ成長するのか?】
・人口と構成比
2023年のインド人口は14億2900万人、中国14億2600万人を上回る
人口構成はピラミッド型、2060年 まで人口増加
・民主主義
中国共産党による一党独裁や習近平一人へのような権力集中はなく、中央、各州の行政府と議会が機能
・エリート官僚制度
インド行政職は、毎年数十万人の応募者から 100 人程度を選抜。世界で例を見ないエリート
・インドには天才が多い説
天才は多く存在するが、総人口が多い為
現存するカースト制度のため、職業を選べない、親の職業を世襲、貧しい家庭の子供はその環境からの離脱が困難
IT産業はカーストに縛られず、優秀な人材が多い
【インドでの仕事】
・NOと言わない、言えないインド人
・とにかく喋るインド人
国際会議で日本人を喋らせるか、インド人を黙らせるかどちらが難しいか?
・「議事録を作れ」の指示は無意味
議事録は、文字を時系列に書き並べるだけ
日本本社の関心事を列挙し報告書の枠を作成、それを埋めれば報告書が自動的に作れるように
・時代の流れ?パワハラに注意
・インド人特有のプロモーション感覚
1年〜2年間、同じ仕事をすると、自分は既にエキスパートと主張
1年〜2年で配置転換を希望、昇格を要求するエンジニア多数 > 昇格のステップを細かく多段階に
【インドでの生活】
リサイクル容器は要注意、1回限りの使用の瓶、缶は安全
予防接種6種を赴任前に2回、その後、継続接種で免疫効果は半年、1年と伸びてくる。
80%の家庭にトイレがなく屋外へ、洪水で疫病
ガンジス川の沐浴は自殺行為
・食材
ヒンズー教は牛肉禁止、イスラム教は豚肉禁止、一般に入手可能は鶏肉
・水
水道水は「毒水」
雑菌、不純物多く、水道水で洗髪すると毛穴が詰まり脱毛も。洗髪後にペットボトル水でのすすぎが必要
梅干が腹痛、下痢予防に一番の効果
・酒
チェンナイでは、飲食店でアルコール提供なし
韓国料理屋や中華屋では、色付きの水差しにビールを入れ提供
ローカルのブランディーとジンは、エチルアルコール入り?
持込のアルコール類は空港で没収、日本出張から帰路にウイスキーや焼酎はペットボトルに入れ持込、お茶、水と申告
主な質疑応答
Q:国際会議でインド人の英語を聞き取る秘訣は?
A:無いです。Rの発音が独特、ひたすら慣れるしかない。仏人の英語も難しい
Q:テレビで列車の窓から乗車する光景を見るが、それは普通のことですか?
A:普通です。バスでも同様です
Q:インドでの仕事を頼まれたことがあったが、インドには行かずにすみました。(説明いただい内容は)ホテルでも同様ですか?
A:ホテルでも同じです。デリー近辺の方が水質は良くない。火が通っているものは大丈夫。キャラフに入った水は口にしないこと。ペットボトルなら大丈夫。飲食の前に梅干しが有効。5星ホテルを推奨します。
Q:フリーザはチェストフリーザですね、
A:はい
Q:パキスタン美人は北部のインド美人と同じでしょうか?
A:同じです、その地域は中国、ヒマラヤ、イスラム地域の混血が多い
Q:女性の人口が少ないとのことですが、結納金は高いですか?
A:結納は牛を何頭のケースが多いと聞く。インドでは現金紙幣より金(Gold)が大切にされている。インドではマフィアが現金を使えなくする為に突然紙幣が変わる。金なら価値がある
Q:(日産が)インドにデータセンターを投資するのは?
A:仏人が決めたことで、今後上手く行くかわからない。大変なことと思う。
Q:日産は(現地人を)どう使っている?
A:裏話もある。データセンターに反対もあったが、ITは優秀な学生を集め易い。出身大学によって給与が3倍違う。エンジニアとしては優秀な人が多い。苦労は風習、文化が違うこと。グローバルスタンダードをやろうとすると現地のマネージャーを上手く使うのがポイント
Q:カーストの低位の人々はどのようにしたら大学に入れるか?
A:難しい試験に合格するにはお金がかかり、カーストが低い人は難しい
以上
文責:松本泰郎
講演資料:インドってどんな国posted by EVF セミナー at 17:00| セミナー紹介
2024年06月28日
EVFセミナー報告:「環境省が果たしてきた役割とカーボンニュートラルに向けた課題」〜公害、循環型社会、生物多様性、そして真に持続可能な社会の構築へ〜
演題:「環境省が果たしてきた役割とカーボンニュートラルに向けた課題」 〜公害、循環型社会、生物多様性、そして真に持続可能な社会の構築へ〜
講師:一方井(いっかたい)誠治 様 武蔵野大学名誉教授、京都大学特任教授
聴講者数:50名
講師紹介:
1951年東京生まれ、都立富士高校、東京大学経済学部を経て1975年環境庁入庁。環境保健部企画課、外務省ワシントン在米日本国大使館、富山県学術国際課長、環境庁環境計画課長、地球環境部企画課長、環境省大臣官房政策評価広報課長、財務省神戸税関長、京都大学経済研究所教授、武蔵野大学環境学部教授等を経て、2022年4月から武蔵野大学名誉教授、京都大学特任教授。
講演概要:
はじめに、講師が環境庁(省)に入庁(省)した経緯、職務を通じて遭遇したエピソード、排出権取引や環境税などの環境政策としての経済的措置にかかる政策研究に携わってきた経緯を紹介。持続可能性の定義、ドイツの気候政策についての解説を交え、日本の気候変動政策とGX推進法の問題点に言及された。
【ドイツの気候変動政策】
・ドイツと日本は、第二次世界大戦敗戦国として、戦後相似形の経済発展を遂げてきたが、エネルギー政策に関しては、2000年代に入りかなり異なる歩みを辿ることとなった。
・ドイツでは、2000年に政府・電力会社間で脱原発を合意、再生エネルギーFIT、エコロジー税制改革を開始。2010年に、2050年までの長期エネルギー政策となる「エネルギーコンセプト」を策定。2020年に、2038年までの石炭火力廃止を決定。2023年4月に、全ての原子力発電が停止された。
・このような急速なエネルギー政策の転換がなされた背景のひとつとして、生産性等の経済目標も織り込んだ「国家持続性戦略」(2002年策定)の前提に、自然資本は人間の福祉の究極的な源泉であり自然資本の制約を超えて成長することは不可能であるといった「ハーマンデイリーの3原則」(詳細は講演資料参照)が明記されていることにある。1990年代に大学教授も加わり、環境法典を作る試みが行われ、その法典案にハーマンデイリー3原則を一般原則として明記、それが引き継がれたもの。
・ドイツでは、GHG・エネルギー消費量の継続的な削減トレンドに合わせ、GDPは増加トレンドにあり、環境経済学におけるデカップリングが実現している(1990‐2021講演資料グラフ参照)。
【気候変動政策をめぐる日本の現状と課題】
・日本では「環境基本計画」(1994年 第1次計画閣議決定)が、国連で「国家持続発展計画」と位置付けられている。本計画は環境省所管であるが、地球温暖化対策の中心となるエネルギー政策は経済産業省専管で、経産省が反対すれば計画にエネルギー政策をビルトインできない構造となっている。
・2012年に「地球温暖化対策のための税」として石油石炭税への上乗せ税が導入されたが、CO2排出1トン当たり289円と少額で、エネルギー価格に与える影響は微々たるもの。
・エネルギー転換部門の排出量も配分された産業部門のCO2排出量は、ほぼ横這いで推移しているが(1990-2021講演資料グラフ参照)、その原因は、産業界自身の自主的な削減努力(経団連「環境自主行動計画」1997年策定)に負っており、炭素税・キャップ付排出量取引制度などが本格的に導入されておらず、市場メカニズムによる経済的な削減インセンティブが働いていなかったことにある。
・京大経済研究所における実証研究(1999-2006年度)で、日本企業はまだ費用をかけずに温室効果ガスを削減する余地があることが判った。企業の自主的努力のみでは、今後大幅な削減は期待できない。
・昨年制定されたGX法において「GX経済移行債」の償還財源として、カーボンプライシング(賦課金)を整備することが織り込まれたが、本格的な排出量取引制度の導入は2033年から、化石燃料輸入者等からの「炭素にかかる賦課金」は2038年から導入とされており、企業等の経済合理的な削減努力が促進されるという、カーボンプライシング本来の市場主導型の政策となっていない。
・カーボンプライシングは、2050年カーボンニュートラル実現の最後の切り札で、経済にも環境にも良い効果をもたらすものと考えているが、GX法の「先行投資支援」という枠組みは、経済産業省の補助金行政という古いタイプの政府主導型の政策という側面が強い。
主な質疑応答
Q1:日本においては、2000年代に入っても火力発電所がリプレースされているが、阻止できなかった理由は?EUでは炭素税による国境措置が導入されたが、日本で同様の検討が進まなかった理由は?
A1:火力発電は、環境省で環境アセスメントを厳格に行えば止められるのではとの議論があったが、様々な圧力でうまくいかなかった。カーボンプライシングについては、かなり以前より環境省と経産省で各々検討会を設け議論を継続してきたが、政府首脳に本格的に導入する意識が乏しかった。EUの動きをみて、あわててGX法を立法したが、日本もきちんとしたプライシングが出来ているとEUが評価してくれるか怪しい。
Q2:排出量取引制度が進まないのは、ベースラインの設定や評価方が定まらないことが理由としてあげられていたが、今どうなっているのか?
A2:ベースライン、評価方についてEUでも様々な議論を経て排出量取引が導入されたが、決め方の不公平感の問題は解消できず多くの訴訟が起こった。その後電力会社から順次、域内の排出総量を予め決め、オークションでの入札方式に切り替わっている。これにより排出総量は守られ、排出削減努力をした企業がコスト安となるといった合理的な市場メカニズムが働くようになった。
Q3:蓄電池とセットでの太陽光発電の住宅への普及、核融合発電の開発が進めば、電力の国内での自賄いが可能となるのでは?
A3:住宅への太陽光発電は、まだ普及の余地があり進めていくべきと考える。一方で、核融合の開発・実用化については慎重を期すべきと考える。クリーンエネルギーだからとの理由でお墨付きを与えると使用に歯止めが効かなくなり、軍事利用等に悪用される危険がある。私見ではあるが、フローの太陽エネルギーなど、エネルギー使用に自ら制約を課した方が、人類の文明は幸せで安定的なものになるのではないかと考えている。
Q4:化石燃料の輸入に約30兆円のコスト負担をしており円安リスクも続く。自然エネルギーで国内自給が可能となれば、全国の各地域の家計に戻ってくる。エネルギー政策、選挙対策としてアピールしない背景には何があるのか?
A4:ドイツでも石炭・天然ガスを輸入しており、化石燃料を自然エネルギーにシフトすることの経済的メリットについて、政府が大々的にキャンペーンをはり国民にアピールしている。日本の政府が、なぜドイツと同様の政策アピールを行わないのか、ドイツと異なる原子力発電政策もその背景にあると思うが、理由はよくわからない。
Q5:政府は、カーボンプライシングの良さを生かそうとせず、実施も今から相当先に設定したり、これを税収の手段とみるような動きがあるとのお話だが、もう一方の当事者である経済界、経団連辺りの動きも鈍いように思えるが、如何なものか?
A5:ご案内のように当時の経団連は1997 年の京都議定書採択の年に、環境庁などの炭素税導入の動きに対抗し「環境自主行動計画」を公表し業界内での自主対策を進めてきた。もとよりACLP(日本気候リーダーズ・パートナーシップ)など、本格的なカーボンプライシングの導入を積極的に提言する経済団体もあったが、その後の経済界での広がりは必ずしも顕著なものではなかった。その意味では、経済界、経団連周辺の動きは未だかつての認識・対応から大きくは変わっていないというのが私の印象。

講演資料:環境省が果たしてきた役割とカーボンニュートラルに向けた課題
講師:一方井(いっかたい)誠治 様 武蔵野大学名誉教授、京都大学特任教授
聴講者数:50名
講師紹介:1951年東京生まれ、都立富士高校、東京大学経済学部を経て1975年環境庁入庁。環境保健部企画課、外務省ワシントン在米日本国大使館、富山県学術国際課長、環境庁環境計画課長、地球環境部企画課長、環境省大臣官房政策評価広報課長、財務省神戸税関長、京都大学経済研究所教授、武蔵野大学環境学部教授等を経て、2022年4月から武蔵野大学名誉教授、京都大学特任教授。
講演概要:
はじめに、講師が環境庁(省)に入庁(省)した経緯、職務を通じて遭遇したエピソード、排出権取引や環境税などの環境政策としての経済的措置にかかる政策研究に携わってきた経緯を紹介。持続可能性の定義、ドイツの気候政策についての解説を交え、日本の気候変動政策とGX推進法の問題点に言及された。
【ドイツの気候変動政策】
・ドイツと日本は、第二次世界大戦敗戦国として、戦後相似形の経済発展を遂げてきたが、エネルギー政策に関しては、2000年代に入りかなり異なる歩みを辿ることとなった。
・ドイツでは、2000年に政府・電力会社間で脱原発を合意、再生エネルギーFIT、エコロジー税制改革を開始。2010年に、2050年までの長期エネルギー政策となる「エネルギーコンセプト」を策定。2020年に、2038年までの石炭火力廃止を決定。2023年4月に、全ての原子力発電が停止された。
・このような急速なエネルギー政策の転換がなされた背景のひとつとして、生産性等の経済目標も織り込んだ「国家持続性戦略」(2002年策定)の前提に、自然資本は人間の福祉の究極的な源泉であり自然資本の制約を超えて成長することは不可能であるといった「ハーマンデイリーの3原則」(詳細は講演資料参照)が明記されていることにある。1990年代に大学教授も加わり、環境法典を作る試みが行われ、その法典案にハーマンデイリー3原則を一般原則として明記、それが引き継がれたもの。
・ドイツでは、GHG・エネルギー消費量の継続的な削減トレンドに合わせ、GDPは増加トレンドにあり、環境経済学におけるデカップリングが実現している(1990‐2021講演資料グラフ参照)。
【気候変動政策をめぐる日本の現状と課題】
・日本では「環境基本計画」(1994年 第1次計画閣議決定)が、国連で「国家持続発展計画」と位置付けられている。本計画は環境省所管であるが、地球温暖化対策の中心となるエネルギー政策は経済産業省専管で、経産省が反対すれば計画にエネルギー政策をビルトインできない構造となっている。
・2012年に「地球温暖化対策のための税」として石油石炭税への上乗せ税が導入されたが、CO2排出1トン当たり289円と少額で、エネルギー価格に与える影響は微々たるもの。
・エネルギー転換部門の排出量も配分された産業部門のCO2排出量は、ほぼ横這いで推移しているが(1990-2021講演資料グラフ参照)、その原因は、産業界自身の自主的な削減努力(経団連「環境自主行動計画」1997年策定)に負っており、炭素税・キャップ付排出量取引制度などが本格的に導入されておらず、市場メカニズムによる経済的な削減インセンティブが働いていなかったことにある。
・京大経済研究所における実証研究(1999-2006年度)で、日本企業はまだ費用をかけずに温室効果ガスを削減する余地があることが判った。企業の自主的努力のみでは、今後大幅な削減は期待できない。
・昨年制定されたGX法において「GX経済移行債」の償還財源として、カーボンプライシング(賦課金)を整備することが織り込まれたが、本格的な排出量取引制度の導入は2033年から、化石燃料輸入者等からの「炭素にかかる賦課金」は2038年から導入とされており、企業等の経済合理的な削減努力が促進されるという、カーボンプライシング本来の市場主導型の政策となっていない。
・カーボンプライシングは、2050年カーボンニュートラル実現の最後の切り札で、経済にも環境にも良い効果をもたらすものと考えているが、GX法の「先行投資支援」という枠組みは、経済産業省の補助金行政という古いタイプの政府主導型の政策という側面が強い。
主な質疑応答
Q1:日本においては、2000年代に入っても火力発電所がリプレースされているが、阻止できなかった理由は?EUでは炭素税による国境措置が導入されたが、日本で同様の検討が進まなかった理由は?
A1:火力発電は、環境省で環境アセスメントを厳格に行えば止められるのではとの議論があったが、様々な圧力でうまくいかなかった。カーボンプライシングについては、かなり以前より環境省と経産省で各々検討会を設け議論を継続してきたが、政府首脳に本格的に導入する意識が乏しかった。EUの動きをみて、あわててGX法を立法したが、日本もきちんとしたプライシングが出来ているとEUが評価してくれるか怪しい。
Q2:排出量取引制度が進まないのは、ベースラインの設定や評価方が定まらないことが理由としてあげられていたが、今どうなっているのか?
A2:ベースライン、評価方についてEUでも様々な議論を経て排出量取引が導入されたが、決め方の不公平感の問題は解消できず多くの訴訟が起こった。その後電力会社から順次、域内の排出総量を予め決め、オークションでの入札方式に切り替わっている。これにより排出総量は守られ、排出削減努力をした企業がコスト安となるといった合理的な市場メカニズムが働くようになった。
Q3:蓄電池とセットでの太陽光発電の住宅への普及、核融合発電の開発が進めば、電力の国内での自賄いが可能となるのでは?
A3:住宅への太陽光発電は、まだ普及の余地があり進めていくべきと考える。一方で、核融合の開発・実用化については慎重を期すべきと考える。クリーンエネルギーだからとの理由でお墨付きを与えると使用に歯止めが効かなくなり、軍事利用等に悪用される危険がある。私見ではあるが、フローの太陽エネルギーなど、エネルギー使用に自ら制約を課した方が、人類の文明は幸せで安定的なものになるのではないかと考えている。
Q4:化石燃料の輸入に約30兆円のコスト負担をしており円安リスクも続く。自然エネルギーで国内自給が可能となれば、全国の各地域の家計に戻ってくる。エネルギー政策、選挙対策としてアピールしない背景には何があるのか?
A4:ドイツでも石炭・天然ガスを輸入しており、化石燃料を自然エネルギーにシフトすることの経済的メリットについて、政府が大々的にキャンペーンをはり国民にアピールしている。日本の政府が、なぜドイツと同様の政策アピールを行わないのか、ドイツと異なる原子力発電政策もその背景にあると思うが、理由はよくわからない。
Q5:政府は、カーボンプライシングの良さを生かそうとせず、実施も今から相当先に設定したり、これを税収の手段とみるような動きがあるとのお話だが、もう一方の当事者である経済界、経団連辺りの動きも鈍いように思えるが、如何なものか?
A5:ご案内のように当時の経団連は1997 年の京都議定書採択の年に、環境庁などの炭素税導入の動きに対抗し「環境自主行動計画」を公表し業界内での自主対策を進めてきた。もとよりACLP(日本気候リーダーズ・パートナーシップ)など、本格的なカーボンプライシングの導入を積極的に提言する経済団体もあったが、その後の経済界での広がりは必ずしも顕著なものではなかった。その意味では、経済界、経団連周辺の動きは未だかつての認識・対応から大きくは変わっていないというのが私の印象。

文責:伊藤博通
講演資料:環境省が果たしてきた役割とカーボンニュートラルに向けた課題
posted by EVF セミナー at 17:00| セミナー紹介
2024年05月24日
EVFセミナー報告:不動産不況、地方政府巨額債務問題そして地政学的リスクの高まりに立ち向かう中国
演 題 :「不動産不況、地方政府巨額債務問題そして地政学的リスクの高まりに立ち向かう中国」
講 師 : 結城 隆 様 多摩大学経営情報学部客員教授
聴講者数:50名
講師略歴:
1955年:福島県生。一橋大学経済学部卒。
1979年:日本長期信用銀行入行、調査部、ロンドン支店、マーチャントバンキンググループ、パリ支店、ニューヨーク支店勤務を経て1999年ダイキン工業経営企画室、大金(中国)投資有限公司(北京)など。
2021年より現在:多摩大学経営情報学部客員教授
著書(含む共著・共訳):「アラブ産油国の挑戦」(日本経済新聞社)、「路地裏の世界経済」(東洋経済新報社)、「キャピタルシティー」(訳書、東洋経済新報社)、「中国市場に踏みとどまる」(上場大のペンネームで執筆、草思社)など。世界経済評論IMPACTに隔週でコラムを寄稿している。
講演概要:
・不動産不況
不動産不況の原因は、過剰投資、過剰な借り入れ、過剰在庫である。その引き金は2019年の政府による過剰投資への警鐘と2020年からの金融規制。その結果不動産開発業者の相次ぐ債務不履行と建設中止が起こった。この不動産問題に対して中国政府は施工中断した工事の再開と新規着工の抑制、金融危機抑制のための貸し手責任の追及も含む金融機関の監督強化、需要喚起のための金融緩和と不動産購入規制の撤廃等に全力を挙げて取り組んでいる。この結果中断していた工事の完了、大手不動産会社の株価アップ、消費者の購入意欲の向上が見られ始めている。銀行の不良債権は依然として残るがその比率は低下傾向にあり銀行の倒産が相次ぐという事態は避けられそうな状況。
・「新三様(EV、電池、太陽光発電パネル)」の成長力
不動産に代わる成長エンジンとして浮上しているのが「新三様(NEV、電池、太陽光発電パネル)」。特にNEVに関しては世界市場において中国のシェアは60%を超えた。国内の充電スタンドもNEV2台に1台の充電スタンド体制が構築されつつある。さらにリチウムイオン電池の世界生産シェアも圧倒的であり今後も拡大の見込み。但し中国NEVの課題としては、過剰生産能力と国内の過当競争、充電スタンドの品質問題、発火事故等の安全性、商品開発面での日欧米メーカーの猛追、欧米の保護主義の台頭といったことが上げられる。
・地政学的リスク
中国製品の世界貿易シェアは30%を超えている。No.2をとことん抑え込みたい米国としては、台頭する中国に対して貿易戦争を仕掛け中国の押さえ込みを図っている。中国の一帯一路構想には140カ国以上が参加、この10年間で中国は参加国に対し1兆ドルの投融資を行ってきた。最大の貿易相手国が中国とする国が120カ国に達しASEAN諸国の中国に対する信頼度は米国を上回ってきている。他方米国は9.11以降85カ国で反テロ軍事介入し、ドル覇権を利用した制裁措置を乱発。またウクライナ戦争、イスラエル・ハマス戦争によって欧米の偽善と虚偽が明らかになりつつある。中国はロシア、フランス、セルビア、ハンガリーに近づいており米国逆包囲網は徐々に進んでいるのが現状。
・ ・ ・
日本のマスコミ報道の影響を受けて中国経済低迷の印象を持っていたが、不動産問題、新技術等について着々と対策が打たれており、日米欧が追いかける展開になっていることに気づかされた。非常に有意義なレクチャーだった。
Q1.中国では不動産は所有できないと言われているが実態は?
A1.土地の所有権は国のモノ。土地の使用権が50年の期限付きで売買されているのが現状。50年の期限到来後は、おそらく自動延長されることになる。国としては固定資産税を課すことができないかと水面下で議論されている。
Q2.人口減少問題はどうなっているのか?
A2.二人目三人目の子供は六歳まで生育補助金を出すこと等の少子化対策がなされている。また高額な教育費についても問題で塾の禁止等の措置が取られている。高齢化問題については、党が運営する「社区(町内会のようなもの)」が、高齢者向け食堂の運営やレクレーションの開催、見守り活動などを行っている。
Q3.日本企業の中国への投資は今後どう考えるべきか?
A3.ほとんどの日本企業は追加投資を控えているがニデックのように積極投資の企業もあるのが現状。投資を控えるという一辺倒はいかがなモノかと思われる。
Q4.不動産融資で貸した人の党員剥奪とは具体的にどういうイメージか?
A4.非常に不名誉なことで経歴にキズがつき禁治産者的なダメージを受ける。
Q5.EVシフトしている中国の電源構成(化石燃料、原子力、再エネetc)と今後の見通しは?
A5.2022年時点で、化石燃料が7割弱、グリーンエネルギーが3割弱、原子力が5%という構成。化石燃料の殆どが石炭。太陽光と風力発電は10%程度。海上巨大風力発電設備の設置や、甘粛省、新疆ウイグルの砂漠地帯での巨大太陽光発電プラントの設置などにより、再生可能エネルギーのシェアは中期的に見れば30%程度まで高まる見込み。
講 師 : 結城 隆 様 多摩大学経営情報学部客員教授
聴講者数:50名
講師略歴:
1955年:福島県生。一橋大学経済学部卒。
1979年:日本長期信用銀行入行、調査部、ロンドン支店、マーチャントバンキンググループ、パリ支店、ニューヨーク支店勤務を経て1999年ダイキン工業経営企画室、大金(中国)投資有限公司(北京)など。
2021年より現在:多摩大学経営情報学部客員教授
著書(含む共著・共訳):「アラブ産油国の挑戦」(日本経済新聞社)、「路地裏の世界経済」(東洋経済新報社)、「キャピタルシティー」(訳書、東洋経済新報社)、「中国市場に踏みとどまる」(上場大のペンネームで執筆、草思社)など。世界経済評論IMPACTに隔週でコラムを寄稿している。
講演概要:
・不動産不況
不動産不況の原因は、過剰投資、過剰な借り入れ、過剰在庫である。その引き金は2019年の政府による過剰投資への警鐘と2020年からの金融規制。その結果不動産開発業者の相次ぐ債務不履行と建設中止が起こった。この不動産問題に対して中国政府は施工中断した工事の再開と新規着工の抑制、金融危機抑制のための貸し手責任の追及も含む金融機関の監督強化、需要喚起のための金融緩和と不動産購入規制の撤廃等に全力を挙げて取り組んでいる。この結果中断していた工事の完了、大手不動産会社の株価アップ、消費者の購入意欲の向上が見られ始めている。銀行の不良債権は依然として残るがその比率は低下傾向にあり銀行の倒産が相次ぐという事態は避けられそうな状況。
・「新三様(EV、電池、太陽光発電パネル)」の成長力
不動産に代わる成長エンジンとして浮上しているのが「新三様(NEV、電池、太陽光発電パネル)」。特にNEVに関しては世界市場において中国のシェアは60%を超えた。国内の充電スタンドもNEV2台に1台の充電スタンド体制が構築されつつある。さらにリチウムイオン電池の世界生産シェアも圧倒的であり今後も拡大の見込み。但し中国NEVの課題としては、過剰生産能力と国内の過当競争、充電スタンドの品質問題、発火事故等の安全性、商品開発面での日欧米メーカーの猛追、欧米の保護主義の台頭といったことが上げられる。
・地政学的リスク
中国製品の世界貿易シェアは30%を超えている。No.2をとことん抑え込みたい米国としては、台頭する中国に対して貿易戦争を仕掛け中国の押さえ込みを図っている。中国の一帯一路構想には140カ国以上が参加、この10年間で中国は参加国に対し1兆ドルの投融資を行ってきた。最大の貿易相手国が中国とする国が120カ国に達しASEAN諸国の中国に対する信頼度は米国を上回ってきている。他方米国は9.11以降85カ国で反テロ軍事介入し、ドル覇権を利用した制裁措置を乱発。またウクライナ戦争、イスラエル・ハマス戦争によって欧米の偽善と虚偽が明らかになりつつある。中国はロシア、フランス、セルビア、ハンガリーに近づいており米国逆包囲網は徐々に進んでいるのが現状。
・ ・ ・
日本のマスコミ報道の影響を受けて中国経済低迷の印象を持っていたが、不動産問題、新技術等について着々と対策が打たれており、日米欧が追いかける展開になっていることに気づかされた。非常に有意義なレクチャーだった。
Q1.中国では不動産は所有できないと言われているが実態は?
A1.土地の所有権は国のモノ。土地の使用権が50年の期限付きで売買されているのが現状。50年の期限到来後は、おそらく自動延長されることになる。国としては固定資産税を課すことができないかと水面下で議論されている。
Q2.人口減少問題はどうなっているのか?
A2.二人目三人目の子供は六歳まで生育補助金を出すこと等の少子化対策がなされている。また高額な教育費についても問題で塾の禁止等の措置が取られている。高齢化問題については、党が運営する「社区(町内会のようなもの)」が、高齢者向け食堂の運営やレクレーションの開催、見守り活動などを行っている。
Q3.日本企業の中国への投資は今後どう考えるべきか?
A3.ほとんどの日本企業は追加投資を控えているがニデックのように積極投資の企業もあるのが現状。投資を控えるという一辺倒はいかがなモノかと思われる。
Q4.不動産融資で貸した人の党員剥奪とは具体的にどういうイメージか?
A4.非常に不名誉なことで経歴にキズがつき禁治産者的なダメージを受ける。
Q5.EVシフトしている中国の電源構成(化石燃料、原子力、再エネetc)と今後の見通しは?
A5.2022年時点で、化石燃料が7割弱、グリーンエネルギーが3割弱、原子力が5%という構成。化石燃料の殆どが石炭。太陽光と風力発電は10%程度。海上巨大風力発電設備の設置や、甘粛省、新疆ウイグルの砂漠地帯での巨大太陽光発電プラントの設置などにより、再生可能エネルギーのシェアは中期的に見れば30%程度まで高まる見込み。
文責:桑原
posted by EVF セミナー at 17:00| セミナー紹介
2024年04月27日
EVFセミナー報告:ボロンドープダイヤモンド電極による海水から直接水素製造するシステムの構想
演題:「ボロンドープダイヤモンド電極による海水から直接水素製造するシステムの構想」
講師:下田一喜氏
株式会社エイディーディー代表取締役社長
聴講者数 : 40名
1.講師紹介
日本大学経済学部卒業
温度調節器メーカー、チラーユニットメーカー、真空機器メーカー勤務を経て、2001年株式会社エイディーディー(ADD)を設立、それより現職
2.講演概要
ADD社は、「チラーのメンテナンス」から「合成ダイヤモンドを使った製品の開発・提供」までの4事業に展開しており、成功したビジネスになっているものが多い。最近取り組んでいるダイヤモンド電極による海水を直接、水分解することによる水素製造は有用であるとの印象を受けた。
1.ADD社の国内半導体メーカー用のチラーでは「−100℃まで冷やすチラー」から「−120℃の超低温まで冷やすチラー」まで扱っており、特にTSV(貫通電極)用超低温チラーを製造提供している。超低温チラーの実績を持つのはADD社のみである。
2.「−120℃まで冷やすチラーCW-1221」はタイヤメーカーにスタッドレスタイヤの長時間のテスト用に毎年30台程売れている。
又、自動車用の半導体のテスト用(-45℃)にも使われるようになってきている。こちらは今まで使われていたフッ素系液体がPガスの規制に引っかかって発がん性があると言うことがその理由で、来年からこのチラーを月に50台から100台位作ることになりそうである。
3.クライオバス フォーフット(足湯タイプで足を―100℃に冷やす)は3分間入るだけで、こむら返りがなくなる効果があって売れている。全日空の地上業務員が月に2000人位、足のむくみの改善に利用している。
クライオバス(人間の体の全身を―100℃に冷やす)は、サッカー選手などのスポーツ選手用にも使ってもらっている。
クライオバス フォーソール(足裏のみを―100℃に冷やす)は、ヴィッセル神戸がハーフタイムに使って、昨年優勝したので、宣伝になった。これは、保冷剤をフリーザーで冷やしたものを置くだけだが、高齢者施設で使われて足のむくみが取れたという報告がされていて、厚生労働省でロコモ(*1)対策になるのではないかと言われている。
4.又、ドライアイスの代わりになる商品を開発し、ゼロドライアイスサービスを行っている。これはファイザー社の新型コロナワクチンの第3接種時の輸送に使われた。これで、-65℃以下に32時間キープできた。
5.ダイヤモンドの軸受けは、ダイヤモンドが最も硬い物質で摩耗が殆どなく、摩擦係数が低いことから、風力発電機に着目して提供することを考えている。これを使うことによりほぼメンテナンスフリーにできる。更にバーティカル風力発電機は発電機を大きくできないという難点もダイヤモンド軸受けでカバーできる。
6.ダイヤモンド電極は貴金属の電極に比べ長寿命。その合成方法は真空チャンバー内にフィラメントを張り、メタンガスと水素ガスを入れ、フィラメント温度を2500℃まで上げると、メタンガスはプラズマ状態になり、炭素と水素に分解し、そこに水素ガスを流し込むと、その分解した水素とくっついて系外に排出される。残った炭素が基材の表面にくっついてダイヤモンド膜になる。
7.海水電気分解用ダイヤモンド電極は、海水を循環させながら定電流の条件で計96時間運転し、電極が変質することはなかったこと、生成物が付くこともなかったことを確認した。今度東海大学の使っていない水族館を使って何か月というオーダーのテストを行う。電気分解の効率を上げるには導電率を上げることで、ホウ素(ボロン)を今の1.0%から最大の1.5%まで上げる計画をしている。
8.ダイヤモンド電極でCO2からギ酸を作ってギ酸の燃料電池に利用する研究も行っている。これはダイヤモンド電極が強酸、強アルカリにも強いという点を利用していて、低濃度のCO2を水に吸収させてそれからギ酸を作る方式で、今は50Wの規模まで進んでいる。
4.質疑応答
主な質疑は以下の通り。
Q.(クライオ機器の説明を聞いて)これで凍傷にはならないのですか?
A.なりません。20〜30分入ると凍傷になりますが、3分間ならなりません。3分なら表面の血管だけが収縮し、クライオバスから出ると、周りの空気と温度差が140℃位あるので、脳が無茶無茶暑いと勘違いして血管を膨張させ、血流が良くなります。
Q.最も硬いダイヤモンドの平坦化はどのようにするのですか?ダイヤモンドの硬さを変えることはできますか?
A.ダイヤモンドの朋削りでできます。熱線射方式もありますが、当社は朋削りでやっています。朋削りは圧力をかければ、5分位でできます。
ダイヤモンドの硬さを変えることはできません。
Q.本日の発表は成功事業が多く、内容がきらきらしているように感じます。私が20年位前
の現役の頃にダイヤモンドコーティングを扱っていて、ダイスに使えないかと考えて富士ダイスや旭ダイヤモンドと接触していましたが、そのような会社との付き合いはありますか?
風力発電をターゲットにされていますが、いくら位で作れば売れると思っていますか?
A.旭ダイヤモンドとはないです。富士ダイスは知っていますがこちらもないです。まだ合成ダイヤモンドは市場が小さいですし、着目している企業は少ないと思っています。風力発電の全体のコストは把握しきれていませんが、小型のものでも5〜6百万円するのに発電量が何百Wということで、市場に出ないと思っています。その理由は軸受けなどにコストが多くかかっているからで、特に風力発電は竪型設置なので回転力と遠心力をどのように抑えるかが課題で、全体の荷重を1か所で支える軸受けがネックです。余談ですが、今後は水力発電にもダイヤモンドがSiCの軸にコーティングする方法などで使えると考えています。
Q.2023年4圧3日の静岡新聞でADD社と東海大学工学部と清水銀行は駿河湾の海水を電気分解して水素を製造する。3者連携で3年間技術研究して2030年位に長時間稼働できるプラントとして実用化を目指すと書かれています。そのイメージは、駿河湾に水素生成ステーションを作って、風力発電した電気を使って、駿河湾の海水を直接電気分解して水素を製造して、それを提供するような感じでしょうか?
A. イメージはそうです。特徴として、設備が駿河湾の湾内だと塩素が出ても希釈され問題なくなる(他物質との反応による分解やその量的な影響を確認すれば?)という点が良いと東海大学の先生が指摘しています。
又、産学金という組み合わせが、とても強いとの指摘もあり、有望視しています。
Q.ダイヤモンド電極による海水の電気分解の課題は何ですか?価格的な問題ですか?効率の問題なのか?副生物である塩素などの処理ですか?
A.ダイヤモンド電極の利点は寿命が長い、腐食がない、メンテナンスフリーですが、電気分解の効率をどれだけ上げられるかが課題です。 それにはホウ素ドープ量のコントロールが必要で、それによって電気を流れ易くすることで、そこをこれから我々はやっていくところです。それができれば、海水の電気分解を行っている場所は(風力発電の設置場所の関係で)海岸から100m行ったところになれば、水深も相応にあるので、副生成物は希釈などで対応可能と考えています。
以上
講演資料:海水から直接水素製造する構想
講師:下田一喜氏
株式会社エイディーディー代表取締役社長
聴講者数 : 40名
1.講師紹介日本大学経済学部卒業
温度調節器メーカー、チラーユニットメーカー、真空機器メーカー勤務を経て、2001年株式会社エイディーディー(ADD)を設立、それより現職
2.講演概要
ADD社は、「チラーのメンテナンス」から「合成ダイヤモンドを使った製品の開発・提供」までの4事業に展開しており、成功したビジネスになっているものが多い。最近取り組んでいるダイヤモンド電極による海水を直接、水分解することによる水素製造は有用であるとの印象を受けた。
1.ADD社の国内半導体メーカー用のチラーでは「−100℃まで冷やすチラー」から「−120℃の超低温まで冷やすチラー」まで扱っており、特にTSV(貫通電極)用超低温チラーを製造提供している。超低温チラーの実績を持つのはADD社のみである。
2.「−120℃まで冷やすチラーCW-1221」はタイヤメーカーにスタッドレスタイヤの長時間のテスト用に毎年30台程売れている。
又、自動車用の半導体のテスト用(-45℃)にも使われるようになってきている。こちらは今まで使われていたフッ素系液体がPガスの規制に引っかかって発がん性があると言うことがその理由で、来年からこのチラーを月に50台から100台位作ることになりそうである。
3.クライオバス フォーフット(足湯タイプで足を―100℃に冷やす)は3分間入るだけで、こむら返りがなくなる効果があって売れている。全日空の地上業務員が月に2000人位、足のむくみの改善に利用している。
クライオバス(人間の体の全身を―100℃に冷やす)は、サッカー選手などのスポーツ選手用にも使ってもらっている。
クライオバス フォーソール(足裏のみを―100℃に冷やす)は、ヴィッセル神戸がハーフタイムに使って、昨年優勝したので、宣伝になった。これは、保冷剤をフリーザーで冷やしたものを置くだけだが、高齢者施設で使われて足のむくみが取れたという報告がされていて、厚生労働省でロコモ(*1)対策になるのではないかと言われている。
4.又、ドライアイスの代わりになる商品を開発し、ゼロドライアイスサービスを行っている。これはファイザー社の新型コロナワクチンの第3接種時の輸送に使われた。これで、-65℃以下に32時間キープできた。
5.ダイヤモンドの軸受けは、ダイヤモンドが最も硬い物質で摩耗が殆どなく、摩擦係数が低いことから、風力発電機に着目して提供することを考えている。これを使うことによりほぼメンテナンスフリーにできる。更にバーティカル風力発電機は発電機を大きくできないという難点もダイヤモンド軸受けでカバーできる。
6.ダイヤモンド電極は貴金属の電極に比べ長寿命。その合成方法は真空チャンバー内にフィラメントを張り、メタンガスと水素ガスを入れ、フィラメント温度を2500℃まで上げると、メタンガスはプラズマ状態になり、炭素と水素に分解し、そこに水素ガスを流し込むと、その分解した水素とくっついて系外に排出される。残った炭素が基材の表面にくっついてダイヤモンド膜になる。
7.海水電気分解用ダイヤモンド電極は、海水を循環させながら定電流の条件で計96時間運転し、電極が変質することはなかったこと、生成物が付くこともなかったことを確認した。今度東海大学の使っていない水族館を使って何か月というオーダーのテストを行う。電気分解の効率を上げるには導電率を上げることで、ホウ素(ボロン)を今の1.0%から最大の1.5%まで上げる計画をしている。
8.ダイヤモンド電極でCO2からギ酸を作ってギ酸の燃料電池に利用する研究も行っている。これはダイヤモンド電極が強酸、強アルカリにも強いという点を利用していて、低濃度のCO2を水に吸収させてそれからギ酸を作る方式で、今は50Wの規模まで進んでいる。
4.質疑応答
主な質疑は以下の通り。
Q.(クライオ機器の説明を聞いて)これで凍傷にはならないのですか?
A.なりません。20〜30分入ると凍傷になりますが、3分間ならなりません。3分なら表面の血管だけが収縮し、クライオバスから出ると、周りの空気と温度差が140℃位あるので、脳が無茶無茶暑いと勘違いして血管を膨張させ、血流が良くなります。
Q.最も硬いダイヤモンドの平坦化はどのようにするのですか?ダイヤモンドの硬さを変えることはできますか?
A.ダイヤモンドの朋削りでできます。熱線射方式もありますが、当社は朋削りでやっています。朋削りは圧力をかければ、5分位でできます。
ダイヤモンドの硬さを変えることはできません。
Q.本日の発表は成功事業が多く、内容がきらきらしているように感じます。私が20年位前
の現役の頃にダイヤモンドコーティングを扱っていて、ダイスに使えないかと考えて富士ダイスや旭ダイヤモンドと接触していましたが、そのような会社との付き合いはありますか?
風力発電をターゲットにされていますが、いくら位で作れば売れると思っていますか?
A.旭ダイヤモンドとはないです。富士ダイスは知っていますがこちらもないです。まだ合成ダイヤモンドは市場が小さいですし、着目している企業は少ないと思っています。風力発電の全体のコストは把握しきれていませんが、小型のものでも5〜6百万円するのに発電量が何百Wということで、市場に出ないと思っています。その理由は軸受けなどにコストが多くかかっているからで、特に風力発電は竪型設置なので回転力と遠心力をどのように抑えるかが課題で、全体の荷重を1か所で支える軸受けがネックです。余談ですが、今後は水力発電にもダイヤモンドがSiCの軸にコーティングする方法などで使えると考えています。
Q.2023年4圧3日の静岡新聞でADD社と東海大学工学部と清水銀行は駿河湾の海水を電気分解して水素を製造する。3者連携で3年間技術研究して2030年位に長時間稼働できるプラントとして実用化を目指すと書かれています。そのイメージは、駿河湾に水素生成ステーションを作って、風力発電した電気を使って、駿河湾の海水を直接電気分解して水素を製造して、それを提供するような感じでしょうか?
A. イメージはそうです。特徴として、設備が駿河湾の湾内だと塩素が出ても希釈され問題なくなる(他物質との反応による分解やその量的な影響を確認すれば?)という点が良いと東海大学の先生が指摘しています。
又、産学金という組み合わせが、とても強いとの指摘もあり、有望視しています。
Q.ダイヤモンド電極による海水の電気分解の課題は何ですか?価格的な問題ですか?効率の問題なのか?副生物である塩素などの処理ですか?
A.ダイヤモンド電極の利点は寿命が長い、腐食がない、メンテナンスフリーですが、電気分解の効率をどれだけ上げられるかが課題です。 それにはホウ素ドープ量のコントロールが必要で、それによって電気を流れ易くすることで、そこをこれから我々はやっていくところです。それができれば、海水の電気分解を行っている場所は(風力発電の設置場所の関係で)海岸から100m行ったところになれば、水深も相応にあるので、副生成物は希釈などで対応可能と考えています。
以上
文責:浜田英外
講演資料:海水から直接水素製造する構想
posted by EVF セミナー at 17:00| セミナー紹介
2024年03月28日
EVFセミナー報告:農業基本法改正の論点
演題:「農業基本法改正の論点」〜日本の食料自給率と安全保障、環境と調和のとれた産業への転換など〜
講師:石田一喜氏
株式会社農林中金総合研究所 主事研究員
聴講者数 : 45名
1.講師紹介
1984年福島県生まれ。
2013年3月東京大学農学生命科学研究科 食料・資源経済学研究科博士課程単位取得退学、
2013年4月株式会社農林中金総合研究所入社。現在:主事研究員
2.講演概要
1999年に食料・農業・農村基本法が制定されて以降、最近は新型コロナウイルスの感染拡大やそれに続くウクライナ情勢や国際的な環境への関心の高まりなど、現行基本法の想定を超えた状況に直面しており、今の通常国会にて25年ぶりの改正が行われる予定。講演では現行基本法が目指してきたものを、自給率等を中心に振り返ったうえで、新基本法の目指す方向性が紹介された。
3.講演内容
基本法とは基本理念や施策の方向性を示す理念法であり、内容の実現には別途必要な実体法の制定が必要。食料・農業・農村基本法の制定から約20年が経過した現在、新たに食料安全保障に関わる情勢の大きな変化や課題が顕在化してきた。このため、今回の改正では以下の3法案が国会に提出されている。
*食料供給困難事態対策法案
*スマート農業技術の活用促進に向けた法案
*農地法関連法改正案
1)食料・農業・農村法改正法案の概要
改正法案は2024年2月に国会に上程され「良質な食料が合理的な価格で安定的に供給され国民一人一人がこれを入手できる状態にする」という食料安全保障の確保を目指す内容となっている。政府は少なくとも毎年1回、自給率などから食料安全保障の達成状況を調査し、結果を適切な方法で公表しなければならないこととなっている。また、「環境と調和のとれた食料システムの確立」が新たな条文として追記された。
2)従来の自給率・食料安全保障の関連施策と改正案の検討内容
現行法では危機管理対応としての規定が色濃く、一貫した政策体系が希薄だったのに対し、改正案では不測時に限らない平時からの食料安全保障を規定し、不測時対策についても拡充されたものとなっている。
また、食料安全保障の確保に向けて輸出促進と価格形成の内容が追加され、農業を海外市場も視野に入れた産業に転換しつつ、国内農業基盤の維持を図ることを目指している。
さらに、適正な価格形成に向けた食料システムの構築を目指して、高騰化した生産資材の価格を食料価格に適正に転嫁できることを目指し、合理的な費用を考慮した価格形成が図られるような施策を取り入れようとしている。
さらに、不測時における措置については「食料供給困難事態対策法案」を用意しており、平時→食料供給困難兆候→食料供給困難事態→最低限必要な食糧不足の恐れ、といった不測の事態の程度に応じて、政府全体での取り組みを図る内容となっている。
食料供給困難事態になった場合、「出荷・販売の調整」、「輸入の促進」、「生産・製造の促進」が要請され、食料供給困難事態になった場合には、各項目の計画を作成し、届け出ることの指示がある。この場合の各要請に応じた経営リスクについては政府が財政上の措置を講じることになっている。一方で、計画の届け出が無い場合は罰金が科せられ、正当な理由なく計画の沿った取り組みを行わない場合は社名等が公表される。なお、計画に基づく生産が行えなくても罰則対象にはならない。
今回の改正案では、食料安全保障の指標として従来の「食料自給率」だけではなく、その他の食料安全保障の確保に関する目標が定められる。以上をまとめると以下の様になる。
(1)改正基本法は、食料安全保障を一層重視し、不測時のみならず平時からの食料確保を明確化。
(2)その確保に向けては、国内生産の拡大と安定的な輸入の取組みに加えて輸出促進を通じた清算基盤の確保と持続的な供給に要する合理的な費用を考慮した価格形成を用意。
(3)食料安全保障の確保≒自給率の向上、という発想を脱却し、新たな他の指標を加味していく方針。
3)環境と調和のとれた食料システムの確立に向けた”みどりの戦略”と農業生産現場の対応
改正基本法では「環境と調和のとれた食料システムの確立」を明記し、農業生産活動における環境負荷低減の促進に関する基本的施策を以下の様に規定している。
(1)農薬及び肥料の適正な使用の確保
(2)家畜排せつ物等の有効利用による地力の増進
(3)環境への負荷低減に資する技術を活用した生産方式の導入の促進
欧米に並び、政府は2021年5月に「みどりの食料システム戦略」を策定し、「持続可能な食料システムの構築」を課題として認識、食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立を技術革新で実現することを目指している。同戦略ではEUを参考に2030年と2050年の目標を定めているが、現時点の状況からは非常に高い設定値となっている。

みどり法では“みどり認定”のメリットとして、融資・税制の措置を用意しているが、農業生産現場では以下のような課題が生じている。
・みどり戦略に取り組むインセンティブはあるのか?
・高齢化や労働力不足により負荷の高い作業が出来なくなった。
・気候変動等の影響により新たな病虫害が発生。既存の防除方法の限界。
環境負荷低減の取組拡大のインセンティブの一つとしては、二酸化炭素等を減らした分をクレジット化して売却できる”クレジット”が制度化され、クレジット創出が活発になってきた。創出されたクレジットの購入を希望する企業も徐々に増えてくると見込まれる。クレジットの新たな方法論及び環境負荷低減の農法などが検討されており、まとめると以下のようになる。
(1)農業に由来する環境負荷低減の方向性は決まっており、今後は実践フェーズ。
(2)具体的な農法等は、現段階では可能な内容に着手するフェーズだが、今後の技術革新に対する期待度は高い。
(3)環境負荷低減の取組に対する補助等の議論はこれからであり、補助金、高付加価値化以外の選択肢として”クレジット”の仕組みへの関心は高い。
(4)基本法改正案の論点の一つは、みどり戦略およびカーボンニュートラルと食料安全保障の両立をいかに同時に進めて行くか。
(5)海外の動向を注視する必要もある。
4.質疑応答
主な質疑は以下の通り。
Q.農家は自分が儲かるようにしか動けないと思うが、法律などは企業や大組織向けに出来ている。これをどのように展開するのかが見えない。
A.そこが基本法が出てきて話題になっている所。食料生産の増大と自給率を上げる方策との一体感が見えないまま、安保が大事という内容になっている。農業生産者の大半が家族経営であるが、その過半では後継者不足により持続性が失われており、かつ企業だけでは賄えないことが分かり切っている。また、減少分に比べて家族経営が増える見込みはない。半農半Xなどにも着目しなければ農業生産の維持ができないのではという意見もある。しかし、それに対する補助や施策は無い。武器が無い中で目標だけが示されている。2025年の基本計画で具体的にやることを示すまでは全貌はわからない。これまで通りでは、目標達成は難しいだろう。
Q.民間ストックの把握の仕方は?
A.民間企業でも自社でどれ位ストックがあるか、国の想定するような把握をしていないことが実態ではないか。また、情報出すのが面倒くさいとか、情報漏洩対策はできているのとか、なぜ出さなくてはならないのとか言う抵抗感もありそうな気がしている。
Q.生物多様性のクレジットは何故ないのか?
A.農業と環境の議論ではカーボンクレジットが先行した。2024年以降は生物多様性への着目が広まると思うが、その評価が難しい。生物多様性クレジットが大事だということは分かるが、ではどの生物が生き残ったかなど、優劣をつける評価基準や計測の在り方、価値基準の付け方などが課題になるだろう。
Q.食料の保全には漁業も大切だが、漁業に関しての議論は行われているのか?
A.別の所で議論されている模様。漁業の場合は資源管理的な観点からの議論が強い。ただし、漁船への外国人就業者が多いなど、漁業の担い手不足は農業以上に深刻。輸入の議論はしており、安定的な輸入が模索されるだろう。陸上養殖への関心が高まって来ているが、環境負荷への影響などが悩ましい点ではないかと思う。
Q.ソーラーシェアリングが簡単に進まない理由は何か?
A.ソーラーシェアリングへの関心を示す人は増えている。法律的にもやり易くなっており、手続きも楽になってきた。しかし実際にやろうという希望者が出にくいのが現状。また、ソーラーパネルの下で農業生産を本気で考えている人がどれだけいるか地元の人達が心配している。生物多様性等も見据えると、パネルの下で何を作るかは今後論点になっていくかもしれない。設置したのが企業だった場合の倒産した時のデメリットや、ソーラーパネルの回収などの問題もあり、今まで農地としていたところにソーラーシェアリングを入れた場合のデメリットなどを広く見ていく必要がある。アセスメントが大事。
Q.37枚目のスライドを見るといいところだらけだが、秋耕が進まない理由は?
A.単に農作業の繁忙期であるため、忙しくてやってられないというのが主な理由ではないか。ある程度お金になったり、地力保持に繋がれば広がると期待している。
以上
講演資料:農業基本法改正の論点
講師:石田一喜氏
株式会社農林中金総合研究所 主事研究員
聴講者数 : 45名
1.講師紹介1984年福島県生まれ。
2013年3月東京大学農学生命科学研究科 食料・資源経済学研究科博士課程単位取得退学、
2013年4月株式会社農林中金総合研究所入社。現在:主事研究員
2.講演概要
1999年に食料・農業・農村基本法が制定されて以降、最近は新型コロナウイルスの感染拡大やそれに続くウクライナ情勢や国際的な環境への関心の高まりなど、現行基本法の想定を超えた状況に直面しており、今の通常国会にて25年ぶりの改正が行われる予定。講演では現行基本法が目指してきたものを、自給率等を中心に振り返ったうえで、新基本法の目指す方向性が紹介された。
3.講演内容
基本法とは基本理念や施策の方向性を示す理念法であり、内容の実現には別途必要な実体法の制定が必要。食料・農業・農村基本法の制定から約20年が経過した現在、新たに食料安全保障に関わる情勢の大きな変化や課題が顕在化してきた。このため、今回の改正では以下の3法案が国会に提出されている。
*食料供給困難事態対策法案
*スマート農業技術の活用促進に向けた法案
*農地法関連法改正案
1)食料・農業・農村法改正法案の概要
改正法案は2024年2月に国会に上程され「良質な食料が合理的な価格で安定的に供給され国民一人一人がこれを入手できる状態にする」という食料安全保障の確保を目指す内容となっている。政府は少なくとも毎年1回、自給率などから食料安全保障の達成状況を調査し、結果を適切な方法で公表しなければならないこととなっている。また、「環境と調和のとれた食料システムの確立」が新たな条文として追記された。
2)従来の自給率・食料安全保障の関連施策と改正案の検討内容
現行法では危機管理対応としての規定が色濃く、一貫した政策体系が希薄だったのに対し、改正案では不測時に限らない平時からの食料安全保障を規定し、不測時対策についても拡充されたものとなっている。
また、食料安全保障の確保に向けて輸出促進と価格形成の内容が追加され、農業を海外市場も視野に入れた産業に転換しつつ、国内農業基盤の維持を図ることを目指している。
さらに、適正な価格形成に向けた食料システムの構築を目指して、高騰化した生産資材の価格を食料価格に適正に転嫁できることを目指し、合理的な費用を考慮した価格形成が図られるような施策を取り入れようとしている。
さらに、不測時における措置については「食料供給困難事態対策法案」を用意しており、平時→食料供給困難兆候→食料供給困難事態→最低限必要な食糧不足の恐れ、といった不測の事態の程度に応じて、政府全体での取り組みを図る内容となっている。
食料供給困難事態になった場合、「出荷・販売の調整」、「輸入の促進」、「生産・製造の促進」が要請され、食料供給困難事態になった場合には、各項目の計画を作成し、届け出ることの指示がある。この場合の各要請に応じた経営リスクについては政府が財政上の措置を講じることになっている。一方で、計画の届け出が無い場合は罰金が科せられ、正当な理由なく計画の沿った取り組みを行わない場合は社名等が公表される。なお、計画に基づく生産が行えなくても罰則対象にはならない。
今回の改正案では、食料安全保障の指標として従来の「食料自給率」だけではなく、その他の食料安全保障の確保に関する目標が定められる。以上をまとめると以下の様になる。
(1)改正基本法は、食料安全保障を一層重視し、不測時のみならず平時からの食料確保を明確化。
(2)その確保に向けては、国内生産の拡大と安定的な輸入の取組みに加えて輸出促進を通じた清算基盤の確保と持続的な供給に要する合理的な費用を考慮した価格形成を用意。
(3)食料安全保障の確保≒自給率の向上、という発想を脱却し、新たな他の指標を加味していく方針。
3)環境と調和のとれた食料システムの確立に向けた”みどりの戦略”と農業生産現場の対応
改正基本法では「環境と調和のとれた食料システムの確立」を明記し、農業生産活動における環境負荷低減の促進に関する基本的施策を以下の様に規定している。
(1)農薬及び肥料の適正な使用の確保
(2)家畜排せつ物等の有効利用による地力の増進
(3)環境への負荷低減に資する技術を活用した生産方式の導入の促進
欧米に並び、政府は2021年5月に「みどりの食料システム戦略」を策定し、「持続可能な食料システムの構築」を課題として認識、食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立を技術革新で実現することを目指している。同戦略ではEUを参考に2030年と2050年の目標を定めているが、現時点の状況からは非常に高い設定値となっている。

みどり法では“みどり認定”のメリットとして、融資・税制の措置を用意しているが、農業生産現場では以下のような課題が生じている。
・みどり戦略に取り組むインセンティブはあるのか?
・高齢化や労働力不足により負荷の高い作業が出来なくなった。
・気候変動等の影響により新たな病虫害が発生。既存の防除方法の限界。
環境負荷低減の取組拡大のインセンティブの一つとしては、二酸化炭素等を減らした分をクレジット化して売却できる”クレジット”が制度化され、クレジット創出が活発になってきた。創出されたクレジットの購入を希望する企業も徐々に増えてくると見込まれる。クレジットの新たな方法論及び環境負荷低減の農法などが検討されており、まとめると以下のようになる。
(1)農業に由来する環境負荷低減の方向性は決まっており、今後は実践フェーズ。
(2)具体的な農法等は、現段階では可能な内容に着手するフェーズだが、今後の技術革新に対する期待度は高い。
(3)環境負荷低減の取組に対する補助等の議論はこれからであり、補助金、高付加価値化以外の選択肢として”クレジット”の仕組みへの関心は高い。
(4)基本法改正案の論点の一つは、みどり戦略およびカーボンニュートラルと食料安全保障の両立をいかに同時に進めて行くか。
(5)海外の動向を注視する必要もある。
4.質疑応答
主な質疑は以下の通り。
Q.農家は自分が儲かるようにしか動けないと思うが、法律などは企業や大組織向けに出来ている。これをどのように展開するのかが見えない。
A.そこが基本法が出てきて話題になっている所。食料生産の増大と自給率を上げる方策との一体感が見えないまま、安保が大事という内容になっている。農業生産者の大半が家族経営であるが、その過半では後継者不足により持続性が失われており、かつ企業だけでは賄えないことが分かり切っている。また、減少分に比べて家族経営が増える見込みはない。半農半Xなどにも着目しなければ農業生産の維持ができないのではという意見もある。しかし、それに対する補助や施策は無い。武器が無い中で目標だけが示されている。2025年の基本計画で具体的にやることを示すまでは全貌はわからない。これまで通りでは、目標達成は難しいだろう。
Q.民間ストックの把握の仕方は?
A.民間企業でも自社でどれ位ストックがあるか、国の想定するような把握をしていないことが実態ではないか。また、情報出すのが面倒くさいとか、情報漏洩対策はできているのとか、なぜ出さなくてはならないのとか言う抵抗感もありそうな気がしている。
Q.生物多様性のクレジットは何故ないのか?
A.農業と環境の議論ではカーボンクレジットが先行した。2024年以降は生物多様性への着目が広まると思うが、その評価が難しい。生物多様性クレジットが大事だということは分かるが、ではどの生物が生き残ったかなど、優劣をつける評価基準や計測の在り方、価値基準の付け方などが課題になるだろう。
Q.食料の保全には漁業も大切だが、漁業に関しての議論は行われているのか?
A.別の所で議論されている模様。漁業の場合は資源管理的な観点からの議論が強い。ただし、漁船への外国人就業者が多いなど、漁業の担い手不足は農業以上に深刻。輸入の議論はしており、安定的な輸入が模索されるだろう。陸上養殖への関心が高まって来ているが、環境負荷への影響などが悩ましい点ではないかと思う。
Q.ソーラーシェアリングが簡単に進まない理由は何か?
A.ソーラーシェアリングへの関心を示す人は増えている。法律的にもやり易くなっており、手続きも楽になってきた。しかし実際にやろうという希望者が出にくいのが現状。また、ソーラーパネルの下で農業生産を本気で考えている人がどれだけいるか地元の人達が心配している。生物多様性等も見据えると、パネルの下で何を作るかは今後論点になっていくかもしれない。設置したのが企業だった場合の倒産した時のデメリットや、ソーラーパネルの回収などの問題もあり、今まで農地としていたところにソーラーシェアリングを入れた場合のデメリットなどを広く見ていく必要がある。アセスメントが大事。
Q.37枚目のスライドを見るといいところだらけだが、秋耕が進まない理由は?
A.単に農作業の繁忙期であるため、忙しくてやってられないというのが主な理由ではないか。ある程度お金になったり、地力保持に繋がれば広がると期待している。
以上
文責:小栗武治
講演資料:農業基本法改正の論点
posted by EVF セミナー at 18:00| セミナー紹介
2024年02月21日
EVF総会記念セミナー報告:カーボンニュートラルへの日本の取り組み
演題:「カーボンニュートラルへの日本の取り組み」
講師:橘川 武郎(きっかわ たけお)様
EVF顧問、国際大学 学長・国際経営学研究科教授
講師略歴: 1951年生まれ。和歌山県出身。東京大学経済学部卒業。 東京大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。経済学博士。 青山学院大学経営学部助教授、東京大学社会科学研究所教授、一橋大学大学院商学研究科教授、東京理科大学大学院イノベーション研究科教授を経て、2020年より現職。 2023年、国際大学学長就任。 東京大学・一橋大学名誉教授。元経営史学会会長
聴講者数:53名
講演概要
1 2023年の注目すべき二つの動き:
〇現在の世界の動きのベースにある二つのキーワードは、「GX(グリーントランスフォーメーション):化石燃料をできるだけ使わず、クリーンなエネルギーを活用していくための変革やその実現に向けた活動」と「カーボンニュートラル:カーボン(二酸化炭素)排出量=吸収・回収量とすること」。
〇カーボンニュートラルの実現はコスト削減こそが最大の課題;日本の独自の解決策として、既存石炭火力の活用と既存ガス管の活用があり、それらを実現するには、アンモニアとメタネーションが鍵になる。またこれらは、アジア諸国、新興国、非OECD諸国への展開が可能であり、日本のリーダーシップの根拠となりうる。
〇GXにたいしては、今後10年間に総額150兆円が投資される。経産省の資料によれば、重点項目は1.徹底した省エネ、2.再エネの主力電化、3.原子力の活用、4.その他の重要事項(水素・アンモニアの生産供給網構築、他)とされている。ただし、実際の投資見通しでは、原子力関連は、わずか1兆円にとどまる。
〇新しい温室効果ガス(GHG)削減目標の設定 :2023年に開催された、G7札幌気候・エネルギー・環境大臣会合(2023.4)において、IPCCの「2035年GHG排出削減2019年比60%削減」目標(2023.3.20) が確認された。このIPCC目標は世界基準となり各国とも35年の目標を25年までに国連の会議(COP30)に提出することが求められている。
〇これらの大きな動きから、これらの国際公約からもはや日本は逃げられない。
2 再生可能エネルギー :
ウクライナ戦争がヨーロッパにもたらした大きな問題はロシアからの天然ガス供給停止である。これにより世界的な天然ガスの争奪戦と価格上昇が、これからの日本の天然ガス輸入に大きな影響を与えている。日本の輸入元である中近東等にEUや中国が目を向けだした。このような世界情勢から日本に求められることはエネルギー自給率の向上であり、それには究極の国産エネルギーである再生可能エネルギーの普及が鍵となり。またこれが脱炭素社会形成に直接結びつく。その為の当面の課題は、コスト低減、住民とのトラブル解決、実現を加速するための移行戦略の三点である。最近では太陽光、風力等でコスト低下が進んでおり、また住民とのトラブル解消のために事業主体への住民参加の動きを作るべきである。
3 原子力発電と石炭火力発電に関して:
岸田政権は「原発に関する政策転換」はしていない。既存炉の運転期間延長によってかえって次世代革新炉の建設は遠のき、各地の停止中の原発の再開も進展少なく、原子力には前向きではない。一方、ウクライナ戦争で、原発が軍事標的という新しいリスクが発生している。
石炭火力発電所は、電力危機対策の柱となる超々臨界圧(USC)の建設ラッシュ であるが、一方で、石炭火力はアンモニア混焼で進展がみられるので、2040年までにたたむことを宣言すべきである。たたむ時期を明確にしていないため、石炭を減らすためのアンモニア混焼はG7の中で孤立化している。「アンモニアは石炭延命の言い訳」というあらぬ誤解を受けている。
4 カーボンニュートラルの時代へ:
菅首相の「2050カーボンニュートラル」所信表明(2020.10)、さらに気候サミット(2022.4.22)での「2030GHG13年比46%削減」表明によって、日本は大きく動き出した。第6次エネルギー基本計画で掲げられた2050年の電源構成は、再生可能エネルギー:50〜60% 、水素・アンモニア火力:10%、水素・アンモニア以外のカーボンフリー(CCUS付き)火力+原子力 :30〜40%(実質は原子力10%(副次電源化))と設定された。。
CCUS(二酸化炭素回収利用・貯留)に関しても技術開発や適地開発の向けての方針が打ち出された。
カーボンニュートラル実現への具体策として、
〇発電分野では、ゼロエミッション電源として考えられるのは、再生可能エネルギー、原子力、カーボンフリー火力(水素、アンモニア、CCUS)等々である。
〇非電力分野(熱利用も含む)では、電化(EV[電気自動車])、水素(水素還元製鉄、FCV[燃料電池車]))、メタネーション(e-gas;CO2とH2からのメタン合成))、合成液体燃料(e-fuel;CO2とH2からの液体燃料合成)、バイオマス 等々。
〇発生したCO2は吸収除去し、発生分をオフセットする。方策としては、植林 、DACCS(空気中のCO2を回収し貯留、有効利用)等々。
5 コスト削減が最大の課題 :
〇RITE(Research Institute of Innovation Technology for the Earth )が、に2050年カーボンユートラル達成時の発電コストの試算を行った(2021.5)。それによると、電源構成を再エネ・原子力・水素/アンモニア・CCUS火力の組み合わせで想定し、それぞれの比率を変えた7つのシナリオについて発電コスト算出したが、いずれの場合でも現行の発電コスト(13円/kWh)を大きく上回るとしている。
〇カーボンニュートラルの実現はコスト削減こそが最大の課題である。日本の独自の解決策として、既存石炭火力の活用と既存ガス管の活用があり、それらを実現するには、アンモニアとメタネーションが鍵になる。またこれらは、アジア諸国、新興国、非OECD諸国への展開が可能であり、日本のリーダーシップの根拠となりうる。
6 カーボンニュートラルの切り札と目されるアンモニア・水素・メタネーションの壁:
〇アンモニアには、調達の壁、技術の壁がある。 現状で国内年間消費量(肥料中心)は100万d、これが発電だけで30年300万d、50年3000万dと予想される。技術的課題としては、NOX対策、合成法開発がある。グリーンアンモニアを合成するには、ハーバー・ボッシュ法に代わる技術が望まれる。
〇水素については、 現状では大口需要の水素発電にメドが立っていない。
〇メタネーションでは、技術の壁=需要の壁がある。 都市ガス業界では、都市ガス需要が維持されるという前提に立ってメタネーション(e-gas)志向であるが、メタネーションの技術開発が遅れ、その間に電化の影響で都市ガス需要が減少すると、メタネーションが間に合わなくなるおそれもある。 一方で、カーボンフットプリント(サプライチェーンのカーボンフリー化)の脅威にさらされている鉄鋼・セメント・部品メーカー等では、すぐにでもオンサイトメタネーションへを導入したいという要請が高まっている。
7 第7次エネルギー基本計画
〇今後の流れとして、世界的には2025年のCOP30に「2035年削減目標」を持ち寄る。 日本は、今年後半から第7次エネルギー基本計画を策定する。その中に盛り込まれるべき
3つの課題 ;再生可能エネルギーの抜本的拡充、バックアップ火力のカーボンフリー化の推進、省エネルギーの抜本的強化 。
〇あてにされていない原子力;計画を策定する基本政策分科会のメンバーの問題
8 3つの落とし穴
(1)需要からのアプローチに欠ける(供給側から見るだけではだめ) 、(2)セクターカップリングの視点に欠ける;「電力」と「非電力」の分離 →熱電併給の観点の欠落(電力部門と非電力部門との連携が重要)、(3)「地域」の重要性に目を向けていない:このままだと担い手は大企業に限定される、中小企業も「サプライチェーン全体の脱炭素化」に迫られる。
9 再生可能エネルギーのコストダウン
〇太陽光/風力+蓄電池/バックアップ火力は高コストになるが、これに CHP(熱電併給)+地域熱供給 を加えることで、再生可能エネルギーを発電用にも熱供給用にも使えるようになり、コストダウンを図ることができる(デンマークに成功例あり)。
10 需要サイドからのアプローチ
〇ゼロカーボンシティ;2023.3.31時点で934自治体が意思表明するも、大半は具体的施策を模索中
〇コミュニティベースのカーボンニュートラル挑戦のポイント;熱電併給とコミュニティによるエネルギー選択、創電+蓄電+節電のネットワークとアグリゲーター(多くの需要家が持つエネルギーリソースをたばね、需要家と電力会社の間に立って、電力の需要と供給のバランスコントロールや、各需要家のエネルギーリソースの活用に取り組む事業者「特定卸供給事業者」) によるVPP(仮想発電所)の実現。
11 カーボンニュートラル推進の両輪は、企業のイノベーションと地域の脱炭素化(地産地消) にある。
質疑応答:
Q1) 講演資料の中でご説明の無かったP.16(第7次エネルギー基本計画)の「あてにされていない原子力」のところで「計画を策定する基本政策分科会のメンバーの問題」とは、どのようなことをおっしゃりたかったのか、お伺いしたいと思います。
A1) 基本政策委員会のメンバーが、原子力推進派ばかりに偏っていること。しかも、その原子力推進派委員が勉強不足で、原子力に関する具体的な提案(リプレースによる美浜4号機の建設、敦賀3・4号機用地での高温ガス炉・大型水素専焼火力の建設、原子力発電で得た電力で水を電気分解し水素を作ることによるカーボンフリー水素の国産化など)を行えないでいること。
Q2) 太陽光は、地球にとってエネルギー源である一方、最近は地球温暖化の原因になってきていると考えるので、太陽光を多くエネルギー源に利用する(太陽光発電)ことによって、地球温暖化を下げ、結果、炭酸ガスも削減出来る。そう考えると温暖化防止の観点から、太陽光発電の効果は他のエネルギー源と比べると2倍あるといえるのではないか?
A2) 今日テーマとして取り上げたカーボンニュートラルの考え方から行くと2倍というようなことは言えない。また温暖化は、直接太陽光ではなく、地球上の炭酸ガス増加によると考えるのが自然ではないかと思うので、その点からも違うと思う。
Q3) 本日の講演の中に核融合が取り上げられなかったが、その理由は?
A3) 核融合は、カーボンニュートラル実現後のまだまだ先のことであるからだ。
Q4) 大型水素発電は何故難しいか?
A4) 今のプランでは、コストが安い海外で水素を製造し輸入するため、グリーン水素の運び方、大量輸送が難しいから。原子力からの水素をもっと考えるべき。また、電力業界は、石炭火力のアンモニア転換に力を集中しており、ガス火力の水素転換には目が向いていない。
Q5)地域での脱炭素化案はどのようなことか?
A5) 住民参加型VPP。地域ぐるみの節電、オンザルーフの太陽光発電の地域全体での活用、EVの電力ネットワークとしての利用等を組み合わせる。
Q6) 地方と都会とで同じ電力料金というのはおかしくないか。
A6) 日本の電力は国民に広く供給するという観点や、送電網を大電力会社が専有していることからも同一料金になっているためそのようになる。地産地消が徹底されると、コストも下がり電力料金に差が出てくる。
Q7) 再エネは地産地消がベースである。最近は温泉業者の理解のもとに、地熱利用も増えて地熱バイナリー発電なども増えているように思うが。
A7) その通り。ただし、バイナリーは規模が小さい。別府などでは温泉業者が中心になってバイナリー発電に取り組んでいるが、供給規模には限界がある。一方、大型地熱発電では、最近、秋田県湯沢市で地元自治体や温泉業者の理解を得て、2カ所の発電所が建設されており、その広がりが注目される。
以上 (文責:橋本)
講演資料:カーボンニュートラルへの日本の取り組み
講師:橘川 武郎(きっかわ たけお)様EVF顧問、国際大学 学長・国際経営学研究科教授
講師略歴: 1951年生まれ。和歌山県出身。東京大学経済学部卒業。 東京大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。経済学博士。 青山学院大学経営学部助教授、東京大学社会科学研究所教授、一橋大学大学院商学研究科教授、東京理科大学大学院イノベーション研究科教授を経て、2020年より現職。 2023年、国際大学学長就任。 東京大学・一橋大学名誉教授。元経営史学会会長
聴講者数:53名
講演概要
1 2023年の注目すべき二つの動き:
〇現在の世界の動きのベースにある二つのキーワードは、「GX(グリーントランスフォーメーション):化石燃料をできるだけ使わず、クリーンなエネルギーを活用していくための変革やその実現に向けた活動」と「カーボンニュートラル:カーボン(二酸化炭素)排出量=吸収・回収量とすること」。
〇カーボンニュートラルの実現はコスト削減こそが最大の課題;日本の独自の解決策として、既存石炭火力の活用と既存ガス管の活用があり、それらを実現するには、アンモニアとメタネーションが鍵になる。またこれらは、アジア諸国、新興国、非OECD諸国への展開が可能であり、日本のリーダーシップの根拠となりうる。
〇GXにたいしては、今後10年間に総額150兆円が投資される。経産省の資料によれば、重点項目は1.徹底した省エネ、2.再エネの主力電化、3.原子力の活用、4.その他の重要事項(水素・アンモニアの生産供給網構築、他)とされている。ただし、実際の投資見通しでは、原子力関連は、わずか1兆円にとどまる。
〇新しい温室効果ガス(GHG)削減目標の設定 :2023年に開催された、G7札幌気候・エネルギー・環境大臣会合(2023.4)において、IPCCの「2035年GHG排出削減2019年比60%削減」目標(2023.3.20) が確認された。このIPCC目標は世界基準となり各国とも35年の目標を25年までに国連の会議(COP30)に提出することが求められている。
〇これらの大きな動きから、これらの国際公約からもはや日本は逃げられない。
2 再生可能エネルギー :
ウクライナ戦争がヨーロッパにもたらした大きな問題はロシアからの天然ガス供給停止である。これにより世界的な天然ガスの争奪戦と価格上昇が、これからの日本の天然ガス輸入に大きな影響を与えている。日本の輸入元である中近東等にEUや中国が目を向けだした。このような世界情勢から日本に求められることはエネルギー自給率の向上であり、それには究極の国産エネルギーである再生可能エネルギーの普及が鍵となり。またこれが脱炭素社会形成に直接結びつく。その為の当面の課題は、コスト低減、住民とのトラブル解決、実現を加速するための移行戦略の三点である。最近では太陽光、風力等でコスト低下が進んでおり、また住民とのトラブル解消のために事業主体への住民参加の動きを作るべきである。
3 原子力発電と石炭火力発電に関して:
岸田政権は「原発に関する政策転換」はしていない。既存炉の運転期間延長によってかえって次世代革新炉の建設は遠のき、各地の停止中の原発の再開も進展少なく、原子力には前向きではない。一方、ウクライナ戦争で、原発が軍事標的という新しいリスクが発生している。
石炭火力発電所は、電力危機対策の柱となる超々臨界圧(USC)の建設ラッシュ であるが、一方で、石炭火力はアンモニア混焼で進展がみられるので、2040年までにたたむことを宣言すべきである。たたむ時期を明確にしていないため、石炭を減らすためのアンモニア混焼はG7の中で孤立化している。「アンモニアは石炭延命の言い訳」というあらぬ誤解を受けている。
4 カーボンニュートラルの時代へ:
菅首相の「2050カーボンニュートラル」所信表明(2020.10)、さらに気候サミット(2022.4.22)での「2030GHG13年比46%削減」表明によって、日本は大きく動き出した。第6次エネルギー基本計画で掲げられた2050年の電源構成は、再生可能エネルギー:50〜60% 、水素・アンモニア火力:10%、水素・アンモニア以外のカーボンフリー(CCUS付き)火力+原子力 :30〜40%(実質は原子力10%(副次電源化))と設定された。。
CCUS(二酸化炭素回収利用・貯留)に関しても技術開発や適地開発の向けての方針が打ち出された。
カーボンニュートラル実現への具体策として、
〇発電分野では、ゼロエミッション電源として考えられるのは、再生可能エネルギー、原子力、カーボンフリー火力(水素、アンモニア、CCUS)等々である。
〇非電力分野(熱利用も含む)では、電化(EV[電気自動車])、水素(水素還元製鉄、FCV[燃料電池車]))、メタネーション(e-gas;CO2とH2からのメタン合成))、合成液体燃料(e-fuel;CO2とH2からの液体燃料合成)、バイオマス 等々。
〇発生したCO2は吸収除去し、発生分をオフセットする。方策としては、植林 、DACCS(空気中のCO2を回収し貯留、有効利用)等々。
5 コスト削減が最大の課題 :
〇RITE(Research Institute of Innovation Technology for the Earth )が、に2050年カーボンユートラル達成時の発電コストの試算を行った(2021.5)。それによると、電源構成を再エネ・原子力・水素/アンモニア・CCUS火力の組み合わせで想定し、それぞれの比率を変えた7つのシナリオについて発電コスト算出したが、いずれの場合でも現行の発電コスト(13円/kWh)を大きく上回るとしている。
〇カーボンニュートラルの実現はコスト削減こそが最大の課題である。日本の独自の解決策として、既存石炭火力の活用と既存ガス管の活用があり、それらを実現するには、アンモニアとメタネーションが鍵になる。またこれらは、アジア諸国、新興国、非OECD諸国への展開が可能であり、日本のリーダーシップの根拠となりうる。
6 カーボンニュートラルの切り札と目されるアンモニア・水素・メタネーションの壁:
〇アンモニアには、調達の壁、技術の壁がある。 現状で国内年間消費量(肥料中心)は100万d、これが発電だけで30年300万d、50年3000万dと予想される。技術的課題としては、NOX対策、合成法開発がある。グリーンアンモニアを合成するには、ハーバー・ボッシュ法に代わる技術が望まれる。
〇水素については、 現状では大口需要の水素発電にメドが立っていない。
〇メタネーションでは、技術の壁=需要の壁がある。 都市ガス業界では、都市ガス需要が維持されるという前提に立ってメタネーション(e-gas)志向であるが、メタネーションの技術開発が遅れ、その間に電化の影響で都市ガス需要が減少すると、メタネーションが間に合わなくなるおそれもある。 一方で、カーボンフットプリント(サプライチェーンのカーボンフリー化)の脅威にさらされている鉄鋼・セメント・部品メーカー等では、すぐにでもオンサイトメタネーションへを導入したいという要請が高まっている。
7 第7次エネルギー基本計画
〇今後の流れとして、世界的には2025年のCOP30に「2035年削減目標」を持ち寄る。 日本は、今年後半から第7次エネルギー基本計画を策定する。その中に盛り込まれるべき
3つの課題 ;再生可能エネルギーの抜本的拡充、バックアップ火力のカーボンフリー化の推進、省エネルギーの抜本的強化 。
〇あてにされていない原子力;計画を策定する基本政策分科会のメンバーの問題
8 3つの落とし穴
(1)需要からのアプローチに欠ける(供給側から見るだけではだめ) 、(2)セクターカップリングの視点に欠ける;「電力」と「非電力」の分離 →熱電併給の観点の欠落(電力部門と非電力部門との連携が重要)、(3)「地域」の重要性に目を向けていない:このままだと担い手は大企業に限定される、中小企業も「サプライチェーン全体の脱炭素化」に迫られる。
9 再生可能エネルギーのコストダウン
〇太陽光/風力+蓄電池/バックアップ火力は高コストになるが、これに CHP(熱電併給)+地域熱供給 を加えることで、再生可能エネルギーを発電用にも熱供給用にも使えるようになり、コストダウンを図ることができる(デンマークに成功例あり)。
10 需要サイドからのアプローチ
〇ゼロカーボンシティ;2023.3.31時点で934自治体が意思表明するも、大半は具体的施策を模索中
〇コミュニティベースのカーボンニュートラル挑戦のポイント;熱電併給とコミュニティによるエネルギー選択、創電+蓄電+節電のネットワークとアグリゲーター(多くの需要家が持つエネルギーリソースをたばね、需要家と電力会社の間に立って、電力の需要と供給のバランスコントロールや、各需要家のエネルギーリソースの活用に取り組む事業者「特定卸供給事業者」) によるVPP(仮想発電所)の実現。
11 カーボンニュートラル推進の両輪は、企業のイノベーションと地域の脱炭素化(地産地消) にある。
質疑応答:
Q1) 講演資料の中でご説明の無かったP.16(第7次エネルギー基本計画)の「あてにされていない原子力」のところで「計画を策定する基本政策分科会のメンバーの問題」とは、どのようなことをおっしゃりたかったのか、お伺いしたいと思います。
A1) 基本政策委員会のメンバーが、原子力推進派ばかりに偏っていること。しかも、その原子力推進派委員が勉強不足で、原子力に関する具体的な提案(リプレースによる美浜4号機の建設、敦賀3・4号機用地での高温ガス炉・大型水素専焼火力の建設、原子力発電で得た電力で水を電気分解し水素を作ることによるカーボンフリー水素の国産化など)を行えないでいること。
Q2) 太陽光は、地球にとってエネルギー源である一方、最近は地球温暖化の原因になってきていると考えるので、太陽光を多くエネルギー源に利用する(太陽光発電)ことによって、地球温暖化を下げ、結果、炭酸ガスも削減出来る。そう考えると温暖化防止の観点から、太陽光発電の効果は他のエネルギー源と比べると2倍あるといえるのではないか?
A2) 今日テーマとして取り上げたカーボンニュートラルの考え方から行くと2倍というようなことは言えない。また温暖化は、直接太陽光ではなく、地球上の炭酸ガス増加によると考えるのが自然ではないかと思うので、その点からも違うと思う。
Q3) 本日の講演の中に核融合が取り上げられなかったが、その理由は?
A3) 核融合は、カーボンニュートラル実現後のまだまだ先のことであるからだ。
Q4) 大型水素発電は何故難しいか?
A4) 今のプランでは、コストが安い海外で水素を製造し輸入するため、グリーン水素の運び方、大量輸送が難しいから。原子力からの水素をもっと考えるべき。また、電力業界は、石炭火力のアンモニア転換に力を集中しており、ガス火力の水素転換には目が向いていない。
Q5)地域での脱炭素化案はどのようなことか?
A5) 住民参加型VPP。地域ぐるみの節電、オンザルーフの太陽光発電の地域全体での活用、EVの電力ネットワークとしての利用等を組み合わせる。
Q6) 地方と都会とで同じ電力料金というのはおかしくないか。
A6) 日本の電力は国民に広く供給するという観点や、送電網を大電力会社が専有していることからも同一料金になっているためそのようになる。地産地消が徹底されると、コストも下がり電力料金に差が出てくる。
Q7) 再エネは地産地消がベースである。最近は温泉業者の理解のもとに、地熱利用も増えて地熱バイナリー発電なども増えているように思うが。
A7) その通り。ただし、バイナリーは規模が小さい。別府などでは温泉業者が中心になってバイナリー発電に取り組んでいるが、供給規模には限界がある。一方、大型地熱発電では、最近、秋田県湯沢市で地元自治体や温泉業者の理解を得て、2カ所の発電所が建設されており、その広がりが注目される。
以上 (文責:橋本)
講演資料:カーボンニュートラルへの日本の取り組み
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