2019年04月25日

EVFセミナー報告:「2030年自動車産業の競争軸を考える」〜MaaS、EV、自動運転〜

演 題 :「2030年自動車産業の競争軸を考える」
   〜MaaS、EV、自動運転〜

*MaaSとはMobility as a serviceの略で日本語では「サービスとしての移動」と訳されます。個々人の移動を最適化するために様々な移動手段を活用し、支払い手段の一元化を含めたパッケージサービスにより利用者の利便性を高めることを言います。

実施日:2019年4月25日(木)
講師:轟木光氏 アビームコンサルティング株式会社シニアマネージャー
開催場所:NPO法人新現役ネット会議室;〒108-0014港区芝5-31-10サンシャインビル
   
1.講師略歴:
1999年:九州工業大学大学院設計生産工学専攻 修了
同年:日産自動車入社 主としてR&Dにて開発及び商品投入戦略に従事、ドイツに駐在
2017年:アビームコンサルティング株式会社入社 日本の自動車産業を中心に戦略策定、調査などコンサルティング活動に従事 現在に至る
(著書)「EV・自動運転を超えて”日本流”で勝つ‐2030年新たな競争軸とは‐」
    日経BP社(2018/6/18発売)
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2.講演まとめ:
世界は効率化の追求だけでなく、持続性や循環型経済を意識した構想へ変化し、デジタル化やスマートフォンの普及によって顧客の声が顕在化し、顧客は100%満足できるモノ・サービスを探すようになった。こうした社会の変化はモビリティにも到来している。
自動車産業は、100年に一度の変化期に直面している。その変化を促すのが、パワートレインの電動化(環境)、自動運転(安全)、シェアリングエコノミー及びコネクテッド(ネット接続)である。この4つの内何が2030年の競争軸となるのか?下記講演概要に記述した3つの視点からご講演をいただいた。
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3.講演概要
(1)何故、EV拡大が必要なのか?+燃料電池EV(少しだけ)
・環境問題を背景に各国でCO2規制、ICE(ガソリン車)台数比率規制、ゼロエミッション車台数設定が実施される。
・EV拡大施策は、政府・地方自治体による補助金など優遇策がメインだが限界がある。
・規制対応にはEVは10〜15%の販売シェアが必要。そのためにはバッテリーへの莫大な投資が必要だが回収の見通しが立たない。また、課題も多い。
・リチウムイオンバッテリーについても熱を抑える技術開発、コバルトの調達の社会問題などが存在しコスト削減が困難。
・EVは課題が多く決して楽観できないが、マスコミがネガティブ情報を消している。
・その中でFCEV(燃料電池車)がブーム、排ガスやCO2を排出しないFCEVでないとゼロエミッションを達成できない。
・各国は環境規制への対応とエネルギーセキュリティの向上を見据えFCEVの普及政策を定めている。2024年からルマン24hでFCEVが採用予定。
・トラックはOEM、バスは行政主体で導入伸展、また、高出力、長航続距離が要求される商用車での採用が拡大の見込み。
・乗用車は、BEV(バッテリー式EV)は走行距離が短く充電時間も長いが現状は航続距離500Km以上の領域でFCEVと共存。
(2)完全自動運転後の世界は?
・自動運転技術とはドライバーをロボットに置き換えることである。さらにAI(人工知能)も必要。
・技術開発に関しては、人や他車の動き、天候などの再現性とドイツアウトバーンや日本の多信号などの極限環境の側面から今までのやり方での開発は非常に難しい。
・モノによる開発からバーチャル開発へ移行。試作車をやめてバーチャル認証になる。
・マスのモノづくりが終わり新しいモノづくりの始まりの予兆。
・IT人材不足で優秀な人材獲得が今後の競争軸のひとつになり、特徴としては高収入、日本では東京一極集中。
・自動運転レベル4(特定の場所ですべてを操作)レベル5(場所の限定なし)の拡大は、工場内の自動運転、高速道路での隊列トラックなどのステップを経て、法整備、ユーザーのアクセプタンス向上があり、そしてプライベート車の完全自動運転が達成できる。
・自動車産業が自動運転技術を活用したサービスへ参入拡大。将来キーポイントとなる。例えば工場内輸送・倉庫業、宅配業、シェアリング業など
(3)モビリティシェアリングは4つの変化(電動化・自動運転・シェアリングエコノミー・コネクテッド)の要+MaaS
・モビリティシェアリングサービスにはカーシェアリングサービスとライドシェアリングサービスの2つのタイプが存在する。
  -カーシェアリングは自動車OEM(ダイムラー/BMWなど)の参入後着実に成長。
  -ライドシェアリングはUber及びDiDiなどにより爆発的に普及。
・すでにダイムラーはモビリティサービスを乗用車・トラックに並ぶ事業とし、分社化、増資しながら提携先を拡大することを実施あるいは計画中。
・自動運転実現後の各事業コストはタクシードライバーがいなくなり、タクシー、カーシェアー、ライドシェアー、レンタカーのコストはほぼ同一となり競争が始まる。
・多くのユーザーは自家用車を持たなくなる可能性がある。その結果、マスブランド車が減少し、相対的にプレミアムブランド車の割合が増加する可能性がある。
・モビリティシェアリングサービスが変化の要で、それを通してEVの急速な拡大や、自動運転技術導入がされていき、コネクテッド技術も拡大する。
・この姿がMobility as Service (MaaS)である。
・MaaSは社会最適のための手段で、2014年にフィンランドで誕生。移動/輸送というサービスを統合し、情報・予約・決済を統合する「あらゆる人々の移動/輸送ニーズにこたえるサービス」また、これには周辺サービスが含まれる。
・MaaSは5つのレベルに分類され、現在はレベル2及び3が主戦場だが、社会の最適化というレベル4になると過当競争の発生から国や自治体のガバナンスが必要となる可能性がある。
  -MaaSプラットフォームはアプリケーションとAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェイス)連携で成り立つシンプルな構造で自社開発の必要性は低い。
  -米国ライドヘイリング2社(Uber、Lyft)の売上は順調だがずっと赤字。従って、周辺サービスにチャンスを見出す必要がある。(車両、燃料、駐車場、メンテ、保険、システムなど)
・未来の自動車産業は、航空産業のように車両の供給会社はグローバルで数社に集約され、部品供給はグローバルサプライヤー、エンドユーザーの窓口はMaaSプロバイダーと極めて少数の企業となる可能性がある。
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4.質疑応答
(1)Q1:日本のFCVの状況は
-水素に関しインフラの設置費が高く数が少ない。法律の改善の必要がある。
(2)Q2:アンモニアと水素を混ぜて燃やすのは駄目か
-燃やすとNOxが問題となる。
(3)Q3:ヨーロッパで盛んなディーゼルの見通しは
-絶滅はしない。重量物且つ長距離に有利。NOxはゼロと言い出す。
(4)Q4:カーシェアリングと車(運転)の楽しみの関係は
-わずかには残ると考えられるが、現在でも世代間格差は大きい。将来は車の買えない低所得者が増えると予想される。
(5)所有車が減少する中で新興国も車が増えないか。MaaSについていけるか
-MaaS専用車両が増加する。MaaSは各地域に適応する仕組みなので普及してしまう。
(6)世界を席巻するUberみたいな会社は増えるか
-Facebookは消滅の危機にある。Amazonは世界的には知られていない。現地に税金を払わなければ残れない。
(文責:冨野)
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2019年03月19日

EVFセミナー報告:福島第一原発の廃炉技術とロボット−廃炉作業ロボットの研究開発の現状と課題−

演 題 :福島第一原発の廃炉技術とロボット
   −廃炉作業ロボットの研究開発の現状と課題−

実施日:2019年3月19日(火)
講師:新井民夫氏:技術研究組合・国際廃炉研究開発機構(IRID) 副理事長、東大名誉教授
開催場所:NPO法人新現役ネット会議室;〒108-0014港区芝5-31-10サンシャインビル
   
1.講師略歴:
・福島第一原子力発電所廃炉事業の技術研究開発を担う国際廃炉研究開発機構(IRID)の設立時(2013年)から副理事長に就任し、ロボット技術、設計システム、人材育成を中心に機構の運営に携わっている。
・1970年に東京大学工学部精密機械工学科を卒業、1977年同大博士課程修了、工学博士。
・複数移動ロボットの協調制御、クレーンとロボットによる重量物ハンドリング、ホロニック自律分散生産システムの研究など生産システム研究を進めた。
・2000年より東京大学人工物工学研究センター長としてサービス工学を提唱した。
・2008〜10年精密工学会会長。
・2012年、東京大学名誉教授。
・2012〜16年サービス学会を設立、初代会長。
・日本学術会議会員(第22〜23期)。
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2.講演まとめ:
2011年3月11日に発生した東日本大震災により福島第一原子力発電所の3つの原子炉では全電源を喪失し、結果、炉心溶融が起こり、これに加えて水素爆発が発生した。これらの炉を廃炉にするには、内部の状況調査、放射線量測定、除染、がれきの除去、燃料デブリの取出し、解体という一連の作業が求められ、人が近づけない高放射線量過酷環境の中でも働けるロボットの開発が必須である。
この講演では、事故炉の中で放射性物質の閉じ込めを確保しながら、遠隔操作で数百トンにもおよぶ燃料デブリの取り出しから、収納・移送・保管までを実行するロボットの開発の現状と展望について、ビジュアルな資料を用いつつ語っていただいた。
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3.講演概要
(1)IRIDの発足
2011年3月に炉心溶融を起こした東京電力第一原子力発電所の3つの原子炉は廃炉とすることが決められている。そのため、溶融燃料並びに燃料と周囲の物質とが入り混じって固まった燃料デブリを取り出さなければならない。この技術課題を解決するために、2013年に「廃炉技術を集中して研究開発する技術研究組合(IRID)」が発足した。IRIDのミッションは次の3点にある。1)世界に例のない原子炉内の燃料デブリ取り出しロボットの技術研究開発、2)長期に亘る廃炉事業の技術維持・発展のための人材育成、3)廃炉に関わる世界の英知を結集するための国内のみならず海外の研究機関との技術交流・技術協力の推進。

(2)廃炉作業の特徴
・過酷環境下、かつ未踏分野での仕事であり、開発の⽴案と変更の機敏性が求められる。
・多分野複合技術が要求され、多方面の⼈材参画と連携作業が必須である。
・長期に亘るダイナミックな計画と、それに関わる⼈材育成と開発技術の実用化が必須。
・廃炉は社会的課題であり、研究開発は国の仕事である(全体的に宇宙開発との類比)。

(3)廃炉の手順
廃炉の手順は通常なら下記の手順で行われる。
1)使用済み燃料の搬出、2)炉設備の系統除染、3)一定期間の安全貯蔵で放射能減衰を待つ、4)建屋内部の炉等の解体撤去、建屋除染、5)建屋解体、燃料は譲渡、汚染物廃棄。6)建屋内部からの廃棄物処理処分。
しかしながら、福島の炉は通常ならざる状態であり廃炉工事内容と手順を策定するためにも、まずロボットによる内部状況の調査から始めなければならない。そして最終的な炉解体工事に至るまで、全面的にロボットの活用に依存せざるを得ない。

(4)ロボットに求められる要求とロボット開発
1)ロボットの開発目的は現場観察、環境測定、燃料デブリサンプリング、燃料デブリ取り出し、等々多岐に亘り、それぞれで要求される機能、性能、大きさ、パワーが異なる。
2)高放射線環境での作業のため、電子機器を長期間使用することが出来ない。また、無線の信頼性が低いため、電源供給をも含めた有線による遠隔操作ロボットとなる。しかし、有線では高度なケーブルマネージメントが求められる。
3)炉内では、炉内構造物の落下、瓦礫、たまり水等の障害物があり、外部から遮蔽壁を通って、炉内作業ポイントまでのロボットの持ち込みに、移動の確保が必要となる。
4)使用場所、使用目的に合わせた駆動機能、形状変化機能、運動機能が必要であり、開発が進んでいる。
・クローラタイプ・ロボット(階段、段差、ガレキ走行等の高い運動機能を持ち、映像撮影、環境モニタリング、軽量物のハンドリングに威⼒を発揮する。)
・磁気吸着移動ロボット(磁力で鋼鉄製壁面に吸着し、移動可。サプレッションチェンバ(S/C)やベント管上の漏えいなどの調査を⾏うために開発。)
・⽔上ボート(漏洩箇所調査用)
・⽔中ロボット(トーラス室壁⾯の⽔没したペネ貫通部の漏えいを調査する。超⾳波ソナーによるドップラ計測機能を装備。)
・今までは、炉内調査のため、外部から炉内へ小径の貫通穴(ペネトレーションと呼ぶ)を通過でき、内部で運動性能を発揮できる超⼩型ロボットを開発してきた。今後は耐放射線性、保守性、環境に応じた駆動⽅式を有する重作業のできる⼤型ロボットの開発が必要となる。

(5)現在までに行われた原⼦炉格納容器(PCV)内部調査
・(1号機)溶融燃料は、ほぼ全量が圧力容器(RPV)下部へ落下、炉⼼部には殆ど燃料が存在せずと推測。⇒・燃料デブリのペデスタル外側までの拡散の可能性から、ペデスタル外側の調査を優先。形状変化型ロボットを使用。グレーチング上を移動し、カメラ付き線量計を⽔⾯下に投⼊して調査。降下ポイントの⾼さ⽅向の線量率分布、地下階床⾯の燃料デブリの広がり状況の確認。
・(2号機)溶融した燃料のうち、⼀部は下部プレナムまたは又は格納容器(PCV)ペデスタルへ落下。燃料の⼀部は炉⼼部に残存と推測。⇒ペデスタル外側までの拡散の可能性低く、ペデスタル内側の調査を優先。クローラ型遠隔操作ロボットを使用。CRDレールを経由して直接ペデスタル開⼝部へ侵⼊を試みたが、粘性の高い物質のためとの干渉のため、途中停止。先立つ長尺竿先に付けたカメラによる画像では、ペデスタル底部の全体に,⼩⽯状・粘⼟状に⾒える堆積物を確認。燃料集合体の⼀部(上部タイプレート)がペデスタル底部に落下しており,その周辺に確認された堆積物は燃料デブリと推定。
(3号機)溶融燃料の存在形態は2号機に近いと思われる。PCV内の⽔位が⾼く、水中遊泳型ロボットを使用。着⽔後、潜⽔によりペデスタル⼊⼝から内部へ入る。底部に砂状、小石状の堆積物を確認。

(6)今後の展開・課題
IRIDの研究開発プロジェクトとしては次の3分野に関して、合計15プロジェクトが進行中。そのうち、9プロジェクトはロボット技術がベースになっている。
(1)燃料デブリ取り出し技術、(2)圧力容器補修、止水技術、(3)炉内調査、分析、評価技術

福島第一原発の廃炉は、人類が未だ踏み込んだことのない社会的・技術的分野であり、多分野複合技術とリソース(人材・予算)を必要とする長期プロジェクトである。この未踏分野における複雑かつ巨大システム技術を持続的進化させるためには、その考え方の基盤において、「認識科学」と「設計科学」を融合させながら推進することが重要。「認識科学」として観測⇒分析、その結果を使っての「設計科学」としての設計⇒適用があり、これらが循環することで持続的にシステムの進化が進む。

(7)講演の最後に講師は「君に何を期待するか」と若い人へのメッセージを発信された。
・福島第一原発の状況を科学的に理解せよ。
・社会の技術としての科学技術を広く眺める⼒を持て。同時に、社会科学的視点を理解せよ。
・部分最適化を避け、全体最適化を図れ。多分野複合技術者たれ。
・未踏分野の技術成功率は低いことを理解せよ。そして、技術の適⽤、失敗、その後の対応を深く考え、失敗例を的確な情報として残せ。

そして、「廃炉は世代をまたいだ⻑期事業。理解し、記憶し、⼿助けしよう」と呼びかけられた。

質疑応答
Q1;廃炉の達成は大変に難しそうであり、ダメな場合は、石棺もありうるか?
A1;ないと思う。国は石棺という手段を選択しないように考えている。
Q2;作業環境から無線は適さないとのことであるが、放射能耐性の高い材料もあると思うが?
A2;宇宙用にICが開発されているが、価格が高い。つまり、実用的な電子機器が使えるかどうかである。材料的には可能性がある。
Q3;IRIDは技術研究組合法に基づいての設立で、活動期間は10年と聞いている。プロジェクトの長さを考えると、それでは困るのでは?
A3;福島第一原発の廃炉技術開発をオール日本の態勢で立ち上げる必要があり、技術研究組合という枠組みを使った。組合故、時限で設置している。しかし、それで終わることはなく、必要に応じて、形態は変わっても何らかの形で技術開発の継続がなされよう。
Q4;お話の中で日本では技術伝承がないとおっしゃったが、自分の経験ではそうではなかった。
A4;一般論としては、日本はシステム的な技術について伝承が弱いと思う。また、日本ではリスクアセスメントが弱い。原子力はリスクに敏感な産業だけに進んでいると思っていたのだが、実際にはそうでもなかった。
(文責:橋本升)
講演資料:福島第一原発の廃炉技術とロボット
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2019年02月21日

EVF総会記念セミナー報告:クルマはエンジン車からEVに置き換わるか?〜電力ネットワークからソーラーカーを語る〜

演 題 :クルマはエンジン車からEVに置き換わるか?
〜電力ネットワークからソーラーカーを語る〜

実施日:2019年2月21日(木)
講師:廣田壽男氏 早稲田大学環境総合研究センター客員教授 工学博士
開催場所:JICA地球広場 セミナールーム202AB 
〒162-8433 東京都新宿区市谷本村町10-5(JICA市ヶ谷ビル内)   
1.講師略歴:
1972年、北海道大学工学部原子工学科(学部)卒業
同年、  日産自動車入社。中央研究所にて、電気自動車、燃料電池の研究開発
水素エンジン、メタノールエンジンの研究開発
1990年、エンジン開発部門にて生産車エンジンの開発 
1994年、米国駐在。パワートレーン開発、EV実用性試験
1998年、総合研究所にて、燃料電池システムの研究開発
1999年、工学博士(機械工学)
2001年、米国駐在。コネチカット州に燃料電池研究室開設。燃料電池車を開発
2005年、技術企画部。電動車両など環境・エネルギー研究開発戦略
2014年、日産自動車退職
2008年、早稲田大学。先進電動バス、EVバッテリ活用V2Hの研究
2011年、リチウムイオンバッテリの性能および耐久性に関する研究
2015年、燃料電池ゴミ収集車の研究
2018年、国際エネルギー機関(IEA) 太陽光発電 TASK17
     運輸部門における太陽光発電の活用に関する研究
現在に至る
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2.講演まとめ:
クルマはエンジン車からEVに置き換わるか?というテーマにつき以下の3つの視点からご講演をいただいた。
(1)EVの市場導入が進む
−2018年末にEV、PHV保有台数は500万台超に達する(全乗用車の0.5%)
−欧州、中国を中心に普及促進の政策が実行されている
(2)環境性能だけでないEVの魅力
−バッテリーとパワーエレクトロニクスの技術革新がEVを魅力ある車にかえた
−レスポンスの良い力強い走り、静かで滑らかな乗り心地、気持ちの良い空気感
−3ペダル(MT)⇒2ペダル(AT)⇒1ペダル(EV)の革新
−リチウムイオン電池の進化により2008年⇒2018年で、エネルギー密度は6倍、コストは1/6に進化
−2019年の日本国内の急速充電は7,500基、普通充電は1.5万基に達する
(3)将来展望
−EVのクルマとしての魅力により置き換わる。しかし時間がかかる。
−現在のEVはまだまだ重すぎるため、大幅な軽量化、コスト低減が必要
−太陽光エネルギーでどこまでも走ることができるクルマを作りたい
−PV(Photovoltaic:太陽光発電)セルの変換効率向上とモジュールコスト低減によりPV搭載EVの実用化を近づける
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3.講演概要
(1)EVの市場導入が進む
−2018年末にEV、PHV保有台数は500万台超に達する(全乗用車の0.5%)
−最大の市場は中国で米国、欧州(フランス、ノルウエーなど)が続く
−欧州、中国を中心に普及促進の政策が実行されている
−欧州では2030年〜2040年に内燃機関エンジン車の販売を禁止する動き
−中国では新エネ車を2019年に10%義務付け
(2)環境性能だけでないEVの魅力
−バッテリーとパワーエレクトロニクスの技術革新がEVを魅力ある車にかえた
−レスポンスの良い力強い走り:モーターは低速トルク大で変速機なしでクルマの要求トルクを実現できるため、変速ロスが無い。
−モーターの応答性の良さを生かして、コーナリング時のトルク制御により操縦安定性を改善することが可能
−3ペダル(MT)⇒2ペダル(AT)⇒1ペダル(EV)の革新
−市街地のゴーストップの多い走行で運転が容易。上り下りやカーブの多い山岳走行でも直感的にコントロールできる
−回生ブレーキのエネルギー回生量を増大できる
−静かで滑らかな乗り心地、気持ちの良い空気感
−長野市EVバス実証実験では「静かにお話ができる」「音楽の聞こえ方が違う」「オイルや排気ガスのにおいがしない」「長く乗っても車酔いしない」などの声が聞かれた
−リチウムイオン電池の進化により2008年⇒2018年で、エネルギー密度は6倍、コストは1/6に進化
−最近ではセル容量の大きい三元系(Ni,Co,Mn)やニッケルリッチ三元系が増加している
−2019年の日本国内の急速充電は7,500基、普通充電は15,000基に達する
−現在の急速充電は50kWだが、150kW、350kWへの拡大が検討されている
−充電器へのバッテリー内臓により大容量電源化無しでも超急速充電が可能となる
−仮に日本国内の保有乗用車7,000万台すべてがEV化されたとするとEVによる消費電力は全体の11%に相当する

(3)将来展望
−クルマはエンジン車からEVに置き換わるか?
−置き換わる。しかし時間がかかる。
−EVのクルマとしての魅力が置き換えを促進する
−ただし、大幅な軽量化、コスト低減がないと急速には普及しない
−Chevrolet VOLTもNissan Leafも1,600kg以上、1,000kg位の車が理想的。
−トヨタ、東工大が全個体電池を開発。実用化が待たれる。
−In-Wheel Motor、SiC半導体などの技術革新がEVの性能向上を促進する
−太陽光エネルギーでどこまでも走るクルマを創りたい
−PVセルの変換効率は22%(1977年)⇒46%(2015年)と進化している
−コストは$100/W(1976年)⇒$0.55W(2017年)まで低減された
−Nissan LEAFに1kWのPV搭載で試算すると、27回/年必要だった充電が5回/年に削減可能となり、消費電力量は732kWh⇒202kWhに低減される
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4.質疑応答
(1)Q1:運行費用はEVとエンジン車でどの程度違うのか?
−ガソリン車が約¥7/km、EVが約¥2.5/km(昼間電力)
(2)Q2:中国の技術レベルはどの程度なのか
−数年前は大したことは無かったが、ここ数年見ているととても高い。開発投資の投入量が莫大。日本の優位性は楽観できない。
(3)Q3:トラック、バスのEV化はどうなっているのか
−欧州、中国を中心に積極的に開発されている。日本は遅れている。
−EVバスは世界で40万台が走っている
−温暖化に対する国民に意識の差が原因か
(4)Q4:日産がEVシフトした理由は何か
−トヨタの後追いでHEVをやるよりはEVシフトしたほうが、勝算があった
(5)Q5:中古バッテリーよりも新品バッテリーの方が安くなるのでは
−新品は額面では¥10,000/kWhとなっているが現実には大量発注でないとこの値段では買えない。量が多くない場合は中古バッテリーは十分価値が有る。
以上 

(文責:深井吉男)

講演資料:クルマはエンジン車からEVに置き換わるか?
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2019年01月24日

EVFセミナー報告:COP24で見えてきた世界の大きな潮流

演 題 :「COP24で見えてきた世界の大きな潮流」
実施日:2019年1月24日(木)
講師:山岸 尚之氏 [WWFジャパン(公益財団法人 世界自然保護基金ジャパン)自然保護室 気候変動・エネルギーグループ リーダー]
開催場所:NPO法人新現役ネット会議室 
〒108-0014港区芝5-31-10サンシャインビル   
1.講師略歴:
1997年に立命館大学国際関係学部入学。同年にCOP3の開催をきっかけとして気候変動問題をめぐる国際政治に関心を持つようになる。2001年3月に同大を卒業。
同年9月よりアメリカ、マサチューセッツ州、ボストン大学大学院にて、国際関係論・環境政策の修士プログラムに入学。2003年5月に同修士号を取得。
卒業後、WWFジャパン(公益財団法人 世界自然保護基金ジャパン)の気候変動担当オフィサーとして、政策提言・キャンペーン活動に携わるほか、国連会議での情報収集・ロビー活動などを担当。
現在は自然保護室・自然保護室次長 兼 気候変動・エネルギーグループ長。
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2.講演まとめ:
COP24(2018年12月、ポーランド・カトヴィツェ、第24回国連気候変動枠組み条約締結国会議)は、地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」を運用する「実施指針」(通称「ルールブック」)を採択して閉幕しました。
今回焦点だった(1)「ルールブック」と呼ばれるパリ協定実施に際する細目ルールについて、(2)CO2削減目標をさらに高める必要性の合意について、会議(COP24)直後でもあり、具体的なやりとり、そしてその背景についてまでご説明頂きました。演題にもありますように、大きな世界の潮流の変化があり、そして現状の我が国の対応にまで言及して頂きました。質疑応答についても、時間も多めにあり、熱心な質問が続きました。
今回で山岸講師は4回目のEVFセミナーでもあり、我々EVF向けに的を絞った分かり易い、且つ高いレベルの講演でした。「24時間営業のコンビニ店舗の拡大」、「ネット通販の拡大に伴う再配達の増加」等、一部脱炭素社会への逆行とも思われる現状の日本の社会において、我々の今後のあるべき方向付けについても大いに認識が深まりました。
3.講演概要:
*パリ協定は、2015年に採択され、2020年の実施が予定されている。産業革命前に比して、気温上昇を2℃より低く、出来れば1.5℃を狙う。21世紀後半には、段階的な改善を経て、脱炭素化社会の実現を図る。

*パリ協定は、1980年代の後半からの国際的な議論の積み重ねの上にあり、先進国と途上国の対立を乗り越えての合意を優先した。今回は、初めてその実施の為の規則・ルールブックが、締結された。

*NDC(国別目標)は、5年ごとに管理のサイクル(P-D-C)で世界全体での進捗確認を行う、透明性のある枠組み作りを。NDCは、原則的にすべての国が参加する。2020年までに、「2030年までのNDC」を提出もしくは更新することを求める。5年ごとのグローバル・ストックテイクは、「緩和」「適応」「実施の手段」の3つのテーマを中心に行われる。

*2.0℃と1.5℃の差の影響は大きな問題であり、今のままでは3.0℃になってしまう現実がある。NDCに書くべき項目として、根本的な対立点は、「排出削減が中心」vs「資金・技術も」であったが、先進国と途上国が歩み寄る形でルールが概ね採択された。ルールが採択された原動力の一つは、各国の温暖化の被害(米国の例、日本の例・・・)に対する危機感だったのではないか。

*交渉において基本的な難しさは残っており、再燃する。国のタイプによるグループ分けをどうするかの議論も残っているが、ともかく今回はひとまず全ての国に共通する形で「ルールブック」を完成させることが出来た。

*ルールブック以外も含め、その他の決定事項は、COP25(チリ)に持ち越された。COP25の開催は、2019年11月から2020年1月に移すことが検討されている。
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*タラノア対話の意図は、今のままでは3℃になってしまい、世界全体の野心を2020年までに引き上げる事。44か国、429の非締約国ステークホルダーからのインプットがあり、又、国・地域で約90のイベントが開催。その背景には、世界各国での非国家ファクターの台頭がある。

*米国はトランプ大統領がパリ協定からの離脱を決め、自主目標を拒絶した。米国の企業と国民は「We are still in」のキャンペーンの盛り上がりが、そして日本では「気候変動イニシアティブ」の推進があり、その好例。

*「パリ協定」では、各国に長期戦略(2050年まで)も求めているが、G7では「日本」と「イタリア」だけが未提出。日本がリーダーシップを発揮しているとは言えない状況。しかし、「2020年までの野心の強化」を発表すれば、先進国としては初めてなだけに、日本の評価は一変するのでは。

*タラノア対話を通じた「野心の強化」のメッセージは、十分とは言い切れない。しかし、メッセージは埋め込まれている。2019年9月の国連事務総長主催の気候サミットへの「参加」、及び「強化された野心を示す」ことを呼びかける。

4.質疑応答:
講演終了(16:45)後、17:30まで活発な質疑応答があった。以下はQ&Aの事例。
Q:中国のCO2排出量削減の姿勢について。
A:パリ協定を支える姿勢は守っているが、交渉官の態度は極めてハード。しかしマスコミ対策は上手い。

Q:2.0℃/1.5℃にならなかったらどんなに事になるかを明らかにすべきでは。
A:今の科学ではそこまで明確に言いきれていないが、情報のある国では解決できる可能性はある。危機感を共有する事が必要であり、共有する時間が不足している。

Q:CO2排出量が削減され、上昇温度が減る事を検証する必要があるのでは。だれが責任を持つのか。
A:今回、グローバル・ストックテイクで5年ごとに進捗確認の仕組みが作られた。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が、今後起こりうる被害の科学的予測を報告している。政策決定者がそれをベースに判断する。

Q:COPにおける、非国家機関の位置付けは。
A:現状では「脇役」だが、しかし気候変動対策は、国家総力戦の方向であり、会場では「国家」と「非国家機関」の二つの盛り上がりがあった。但し、非国家機関の定義は難しい。
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Q:国連では、各国が何を対策としてやるかの議論を避けているのでは。
A:内政干渉になりかねないので、国連では「何を」の議論にはならない。

Q:地球温暖化について、日本政府/環境省、経産省の議論は。
A:「イノベーション」や最先端技術があったらできる、という意識が強すぎて、目の前でできることへの意識が低い。例えば、石炭や再エネなど。

Q:日本の政策と産業構造の可能性については。
A:最近は連携して進んでいる。日本の「気候変動イニシア「ティブ」の最近の拡大は特筆されるべき。革新的技術だけでは危機的であり、技術以外の社会の仕組み・ソフトの変化がなければ進まない。

Q:CO2排出量削減の日本の本質的な取り組みについて。
A:日本の社会、政府は、確証はないが、最初の10年に比べて、ここ5年の空気は変わっている。ビジネスチャンスと感じている人も増え、うねりとなっているのでは。自動車、プラスチック業界は、その好例。

以上
(文責:三嶋 明)

講演資料:COP24で見えてきた 世界の大きな潮流
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2018年12月20日

EVFセミナー:リチウムイオン電池の再利用への取り組み

演 題 :「リチウムイオン電池の再利用への取り組み」
実施日:2018年12月20日(木)
講師: フォーアールエナジー株式会社代表取締役社長 牧野英治様
演題:「リチウムイオン電池の再利用への取り組み」
開催場所:NPO法人新現役ネット会議室 
〒108-0014港区芝5-31-10サンシャインビル   
1.講師略歴:
講師は1983年に日産自動車に入社し、開発部門で技術渉外、技術企画等を担当、1994年〜98年、2004年〜07年の2回に亘り米国駐在を経験した。その後経営企画室、電気自動車リーフのプロジェクトメンバー、等々を歴任し、2014年4月から現職を務めている。

2.講演概要:
まず冒頭に電気自動車(EV)導入の社会的必然性と、その実現方策について以下のような説明があった。
・IPCCの第4次報告に基づくと2050年までにCO2排出量を2000年比で90%の削減が必要。
・この実現のためには走行中にCO2排出ゼロのEVを広く普及させることが必要。
・使用済み電池の活用まで計算に入れたEVの生涯コストを考えると、現行のガソリン車の生涯コストとほぼ同等になり、EVの普及が進む。
・このためには使用済み電池の活用が必須となる。
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次にフォーアールエナジー社の概要について以下のような説明があった。
フォーアールエナジー社は、日産自動車と住友商事の共同出資により2010年9月に設立された。同社はEVで使用済みとなったリチウムイオンバッテリーを2次利用し、エネルギー貯蔵の解決策として「4R」事業と銘打った事業を手掛ける。「4R」は社名のフォーアールの語源にもなっている。EVで使用済みのリチウムイオンバッテリーは、まだ高い残存容量を持つためこの有効利用を図る。「4R」とは、次のような事業を指している。
・再利用(Reuse) : 約60%〜80%と高い残存容量を持つバッテリーの2次利用を行なう。
・再販売(Resell): バッテリーを様々な用途のために再販売する。
・再製品化(Refabricate): バッテリーパックを分解した後、顧客のニーズに合うよう再度パッケージングを行なう。
・リサイクル(Recycle): 原材料を回収するために使用済みバッテリーのリサイクルを行なう。

4Rビジネスはゼロエミッション車の普及のみならず、再生可能エネルギー分野でさらなるCO2削減を行ない低炭素社会の実現に貢献する。電池の残存容量に合わせて使用対象を使い分ける
・性能が優れた電池   : EVの交換用電池、他
・性能が中程度の電池  : フォークリフト、ゴルフカート、他
・性能が少し低下した電池: 定置型蓄電池・電源、工場電源バックアップ設備、他
 
日産のリチウムイオン電池は、新品製造の段階でセルごとに詳細な情報をすべて記録保存してあり、万一の事故発生時に原因を特定できるようなトレーサビリティーが確保されている。4Rエナジーでの使用済み電池製品の製造過程についても全く同様な情報を記録保存してあり、日産の新品製造時の記録とも連結しているため、2次利用での不具合発生時にも原因を新品時までさかのぼって特定できる仕組みとなっている。

最後に同社が今年3月に建設した福島県浪江町の新事業所の機能について以下の紹介があった。
使用済み電池の2次利用ビジネスに関する、
(1) グローバル開発センター機能
    ・使用済み電池を使った製品の開発と、グローバル展開
    ・製造技術の開発と、グローバル展開
(2) 国内向け製品製造機能
   ・使用済み電池を使った国内向け製品の製造

今後太陽光発電のFIT(固定価格買い取り制度)が切れて来るので、売電の代わりに自家使用するための蓄電地としての需要増が期待されること、またEV用電池の高容量化を受けて充電速度の高速化技術を開発中、との説明があった。
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3.質疑応答:
講演終了後、聴講者と講師の間で活発な質疑応答があった。Q&Aの例は以下の通り。
Q.街路灯用電源として現在「ソーラーパネル+鉛蓄電池」を使っている。この鉛蓄電池を中古リチウム電池に置き替えたいが販売して貰えるか?  
A.相談に乗ります。
Q.リチウムイオン電池はどこの部分が劣化していてどう修理しているのか?
   A.電池の中身はいじらない。残存性能を正確に把握し再利用の仕方を判断する。
Q.フォーアールエナジー社の業務内容はいずれ中国にコピーされるだろうが、その先の収益策は?
   A.使用済み電池がこれから急増するのでこれを使った商品で収益を上げていく。
Q.非常用電源としての利用可否は?
   A.現在商品を開発中なので期待してほしい。
Q.他社車の電池でのリユースはできるのか?
    A.検討を進めている。
Q.中古バッテリーの価格のレベルは?
    A.同等性能の新品バッテリーに比較して1/2〜1/3の価格レベル。
Q.中古電池の回収の仕組みは?
    A.電池は中古といえども取り扱いを誤ると非常に危険なので、回収業者への資格制度、認証制度などの制度整備を政府に働きかけている。
Q.モンゴルの移動住宅「ゲル」などへの適用は?
   A.現在は未検討だが$700程度の価格なら事業化できるかもしれない。
以上
(文責:小栗武治)
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2018年11月20日

EVF拡大セミナー報告:「第三の危機」VS 鳥類学者、あるいは(外来生物の功罪)

演 題 :「第三の危機」VS 鳥類学者、あるいは(外来生物の功罪)
開催日:平成30年11月20日(火)18:30〜20:30
場 所:きゅりあん6F大会議室
講 師:川上和人氏 森林総合研究所主任研究員

講演概要:
T 生物の多様性を保全することがなぜ必要なのか?
生物多様性基本法(2008年施行)では、生物多様性の保全及び持続可能な利用に関する施策を総合的かつ計画的に推進することにより、豊かな生物多様性を保持し、その恵沢を将来にわたって享受できる自然と共生できる社会を実現し、地球環境の保全に寄与することとあり、人類共通の財産である生物多様性を引き継いでいく義務があると明確に記されています。そして、生物多様性がもたらす恵沢は生態系サービスと呼ばれ、いくつかの種類に分類されています。
1.供給サービス・・・何かを供給してくれる。例えば、農産物・魚介類・
水・医薬品
2.調整サービス・・・気候や水質、農地環境などを調整する。例えば、
洪水などの制御や受粉など。
3.生息・生育地サービス・・・多様な生物が生き、遺伝的多様性が維持
できる生息地を提供する。
4.文化的サービス・・・レクレーションや文化の発展、芸術的インスピ
レーションを得る。
次世代に生物の多様性を残すためには、保全のためにできることをして行くことであり森林を守る、寄付をする、研究、行政色々な立場での保全活動があります。
また、生物多様性の国家戦略で、基本法は生物多様性を阻害する四つの危機を示しています。
1.第一の危機・・・開発・乱獲の利用しすぎる危機
2.第二の危機・・・里山の放置などの利用しないことによる危機
3.第三の危機・・・外来種の侵入等、人間が何かを持ち込んでしまう危機
4.第四の危機・・・地球温暖化で世界的レベルでの気候変化の危機
中でも、このセミナーのテーマは第三の危機:外来生物の侵入です。

U 外来生物の問題
1.世界の侵略的外来種ワースト100、同様に日本の侵略的外来種ワースト100もあります。ブラックバス、ミシシッピアカミミガメ、繁殖力の強いグリーンワームそして意外なのは日本のわかめです。我が国や朝鮮半島でのみ好まれるわかめですが、船のバラスト水として世界の港に運ばれて繁殖しています。
2.侵略的外来生物による影響はどんなところで問題になっているのでしょう
か?

日本でも南西諸島・伊豆諸島・小笠原諸島の島嶼と陸上の池・湖・
川などの狭い面積の中で周囲から取り残された領域です。島嶼は面積が小
さいので、狭い所で生物が進化すると移動性が低く防御力が低くなります。
また、これらのエリアでは個体数が少ないので絶滅しやすい環境でもあり
ます。島は地球全体の5%しかなく、しかも鳥類絶滅種の83%は島嶼で
起きています。

3.余談ですが、オーストラリア大陸以上の大きさの陸地を大陸とし、それより面積が少ない陸地を島と表します。また、この島は二つに分類できます。
A.海洋島(小笠原諸島)・・海洋プレート上にあり、海が深く孤立する。
  地上哺乳類は遠くまで泳げない。捕食者であるキツネ・イタチ・テンは海洋島にはいない。海洋島では生態系が簡単で種が少ない環境になっています。
B.大陸島(本州・沖縄)・・大陸プレート上にあり、海面レベルの上下で      
  陸続きになる可能性が大きい。

V 世界自然遺産/小笠原諸島をモデルとして侵略的外来生物の影響を観察しま
す。
1.小笠原固有種の鳥類は四種(メグロ・オガサワラカラスバト・オガサワラガビチョウ・オガサワラマシコ)で長い時間をかけて進化し、島の環境に適合していると考えられます。メグロ以外は既に絶滅しています。
2.メグロはメジロより一回り大きく、小笠原村のマークになっている絶滅危惧種IBで約15000羽が生息していると推定されており、個体数は決して多くありません。本州では、木の幹にキツツキ、地上にツグミと空間を分割利用しているが、小笠原ではメグロは競争者や捕食者がいないので全体を使って生きています。
さて、メグロは母島・向島・妹島にのみ生息しているが、DNA分析で島ごとに独自の遺伝的パターンがないかを調べました。そうするとミトコンドリアDNAに、母島や妹島にしかない配列が見つかり、島間の移動がほとんど生じていないことが分かりました。
 島という環境では、しばしば移動性が低下することがあり、メグロもその
典型例と言えます。

W 小笠原諸島の外来種生物対策
1.聟島列島でヤギ被害
  人間が持ち込んだヤギが、森林そして草原化した小笠原固有植物を食い荒 
  らした上、荒れ地になってしまいましたが、ヤギの根絶対策を施した結果、オナガミズナドリなどの海鳥が増加しました。
2.東島でクマネズミ
  クマネズミはもともと植物食を中心とした雑食性であったが、海鳥を食べ
るようになってしまっていたのです。ネズミ駆除の結果、海鳥の営巣が増
えました。
3.トクサバモクマオウ(オーストラリア原産の植物)
  落葉が10pもたまると他の植物が生息できないし、しかも土地が乾燥しま
す。トクサバモクマオウを駆除することで、水分量が増加して在来種のウ
ラジオエノキが増加しました。
 
*外来種はなぜ増えるのか?移入先には、もともとの生息地にいたはずの天敵がいないため、増加しやすい場合があります。また、進化の歴史が違うことで強い競争力を持っている生物や、低コストで生きられる生物は侵略的外来種になりやすい性質を持っています。

X 外来種の駆除には良いことも悪いこともある
1.算数では1プラス1−1(駆除)=1で元に戻ると考えられるが、生態系ではそうはなりません。駆除の影響から違った生態系になることもあります。そんなことで駆除でなく、侵入を防止することが生態系の保全には肝要です。
*トクサバモクマオウを駆除したら生物多様性は回復したが、その葉がカタ
ツムリの絶好の隠れ場所となっているような場合もあります。
*また、ネズミを駆除するとネズミを捕食している在来種のオガサワラノス 
 リ(鷹の一種)の生存が危惧されます。

2.外来種対策は生態系に対する影響があるからやるのだが、不測の事態が起きることを恐れすぎては駄目でしょう。何が起きるか予測して、特定種の排除・保護を目的とするのではなく、在来種による安定した生態系を作ること・保全することが上位に位置する目標であります。

3.定着した外来種は、生態系の中で機能を持ちます
A.外来生物対策
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B.外来種生物問題の変遷
   STAGE1 認識外
   STAGE2 問題の認識
   STAGE3 対策開始
STAGE4 新たな課題
  以上、外来生物対策は「悪対善」の図式で考えるものでなく、もっと複雑な問題であります。大切なことは種間作用をキチンと把握して、生態系全体で考え対処することであろう。
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質疑応答
1.メグロに興味があります。メグロのご先祖は遠くへ飛べない姿だし、海鳥 
でもない。何百キロもどうして飛んだのか?また、もしくは、フィリピン・プレートの上に島が乗っていて、昔はもっと南に位置していたのか?
答:鋭い良い質問です。フィリピン・プレートは少しづつ北に向かって動いています。プレート上の島はもっと南にあったと考えられます。
 サイパンに居るオウゴンメジロはメグロの祖先に近いもので、メグロは南方起源と考えられます。カワセミが1000キロも飛んで小笠原諸島にやってくることが確認されているので、小さい鳥でも頑張って飛べるのです。
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2.飛翔力のある鳥がどうして北と南を往来しないのか?(渡りをしないのか)
答:渡り鳥の進化は食べ物の量に影響を受けます。北の方は寒くなると、昆虫が動かなくなり、両生類・爬虫類は冬眠します。小笠原諸島は亜熱帯で食べ物が豊富だから渡りをする必要がないのです。この「渡り」というのは鳥にとってリスクのとても大きいことです。行ったことのない所へ渡って、食べ物を新たに見つけそして危険を冒して戻ってくる。そんな危険な渡りをしない方が生き残りやすくなるのです。海洋島だから渡り鳥がいないのでなく、亜熱帯で季節的な変化が小さいから渡りをする必要がないのでしょう。

3.小笠原諸島の200〜300年前と現在、そして200年後を考えると、進化を
止めているのでないか?
答:人が持ち込む外来種が生態系の脅威となっているので、これを管理するこ
とは自然の進化を止めることではありません。また、全ての外来種を管理す
るのは現実的には不可能で、対象となっているのは侵略的な外来種のみとな
ります。 
 ただし、小笠原は世界自然遺産なので、基本的には生態系に対する人為的干
渉は最低限にすべきと考えられます。また、保全の目標となるべき人間が影
響を与える以前の環境はわかっていないので、在来種を中心に自律的に維持
される安定した生態系を目標に、保全が進められています。
                                以上
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2018年09月27日

EVFセミナー報告:「極地研究からわかる地球規模の気候変化」〜第58次副隊長兼越冬隊長に聞く〜

演 題 :「極地研究からわかる地球規模の気候変化」〜第58次副隊長兼越冬隊長に聞く〜
開催日:平成30年9月27日(木)午後3時30分〜5時30分
場 所:新現役ネット事務局A会議室
講 師:岡田雅樹氏  国立極地研究所准教授、第58次南極地域観測隊副隊長兼越冬隊長

 講師は京都大学大学院工学研究科電子工学専攻博士課程を修了し、国立極地研究所に入所。現在は研究教育系宙空圏研究グループ准教授として極域プラズマ物理学分野を担当されると共に情報基盤センター長も兼ねられています。

講演概要:
今回の講演では、第58次南極地域観測隊副隊長兼越冬隊長として本年3月に帰国され、
南極という自然条件のなか、南極観測船「新しらせ」による年1回の物資の輸送に大きく依存しながらも、第1次南極地域観測隊が昭和基地を開設してから60年の長きにわたり安定した運用を維持する一方で、世界的な観測競争に伍して最先端の観測を維持する昭和基地の現状と観測体制を32名の越冬隊員とともに越冬した経験を基に、南極の自然と観測隊運営について最新の映像と観測データから地球環境観測の現況と厳しい自然環境の中、いかにして隊員の安全と柔軟な運営を両立させているか基地運営の実態を多数の資料にて紹介いただきました。

先ず最初に先生が所属している国立極地研究所の建物や南極観測実施体制の中での位置付け、国際学術研究組織体制と第58次南極地域観測隊(夏隊35名、越冬隊33名と同行者25名)が「しらせ」甲板上でお正月を迎えた様子をご紹介頂いた。
次いで1961年に発効した南極条約(51条約締結国)に基づく南極観測実施国(29ヶ国)と越冬実施国(20ヶ国)の基地位置と絡めて昭和基地の気象・海氷状況と気温の変化をグラフを使って厳しい環境を紹介して頂きました。因みに最低気温は-32.9℃(8/29/2017)で最高気温は5.4℃(12/22/2017)で、一日中太陽が出ている“白夜”が11月末から1月末と一日中太陽が出てこない“極夜”が6月20日から2ヶ月半があり、この期間の隊員の体調管理が大変との事。
また昭和基地には約70棟の建物と一般家庭約400件分の発電機(300kVA、2基)があり、「しらせ」による年1回1,000トンの物資が輸送されています。
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 宇宙環境の予測、宇宙天気予報への応用のためのオーロラ観測(宙空圏変動)、地球温暖化予測のための精密観測と温暖化物質(微量元素)の変化観測(気水圏変動観測)、30年以上にわたりペンギンの個体数変化を調べることで南極の温暖化が生息環境にどのような影響を及ぼすかの調査(生態圏変動)についてデータと豊富な写真を用いて説明頂いた。特にオーロラ発現の動画は参加者の興味を大いに曳き付けました。
南極氷床の成り立ちの説明では、南極海下からの大陸岩盤の上に厚さ平均約2,450mの氷床(雪が降り積もり圧縮されてでき、世界の淡水の90%を占める)が覆い被さって最高標高が約4,000mもある氷でできた南極大陸のイメージと南極大陸の落ちる隕石の集積機構についても説明された。
ここまで約1時間、丁寧な説明をされた後、越冬隊員の構成について写真を交えて説明頂きました。観測系隊員が14名でその内訳は、宙空圏分野が5名、気水圏分野が1名、地圏分野が1名、生物圏分野で2名と気象観測に5名との事。
観測隊員の裏方になる設営系隊員が18名でその内訳は機械担当(エンジン、制御、電気、設備と車両)が7名、調理と医療担当が夫々2名、通信、衛星受信、ネットワークおよび環境保全担当が夫々1名と少数精鋭の体制であることを感じ取れました。
第59次先遣隊(18名)受入の為の緊急用滑走路(1,000m、昭和基地から8km)の整備状況と隊員との交歓やペンギン、湖沼調査やアザラシ調査状況さらに昭和基地からの情報発信としてのホームページ“昭和基地NOW!!”やテレビ会議を用いた小学生を対象とした“南極教室”なども写真や動画をフル登場で判り易く説明頂きました。
南極観測隊における危機管理として火災、漏油事故、隊員の生命にかかわる事故・病気などに対する行動実施計画書・安全対策計画書として“昭和基地油流失防災計画指針”“ブリザード対策指針”“防火・防災指針”“野外行動における安全行動指針”“レスキュー指針”および“内陸行動における安全指針”が用意され、これらの指針に基づいた訓練状況の映像解説で基地生活の厳しさがよく理解できました。
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ここまで丁度1時間半、多くのデータ、写真や動画を駆使した説明を頂き質疑応答の時間になり、これまでのセミナーでは類を見ない約15件もの質疑応答となり司会者も時間を気にしながら進行をされました。
質疑応答の数例を以下に紹介します。
Q1:燃料は600トン輸送されるそうだが、水は飲料水や洗濯水などに使われると思うが現地調達しているのですか?また発電機を使っているのでコージェネになっていますか?
A1:発電機はコージェネになっていて熱効率で70%回収している。冷却水は暖房や融雪に活用し、水は貴重で常日頃節水に心がけている。
Q2:60年間の南極観測予算は減ってはいないと思うが?また一冬の越冬費用は?
A2:当初1億円弱でスタートし、現在は約30億円規模の予算。一番費用が掛かるのは「しらせ」の運航で約20億円、越冬隊が約10億円。
Q3:33名の越冬隊員が約1ヶ月の引継ぎでは難しいと思う。越冬経験が2度目、3度目という隊員がいるのか否か?また、建築担当が1名で33名の隊員を指導できるのか?
A3:越冬が2度目という隊員が約10%前後で、越冬隊長も2度目・3度目の経験者を充て、建物の建設は夏隊を1〜2名増員して行い、越冬隊は内装改修をメインにしている。
Q4:南極は寒い処なので冷蔵庫はあるのか?長い期間閉じられた環境で生活するので帰国後、同窓会的な集まりはあるのか否か?
A4:生鮮食品を凍らせないための大型冷蔵庫が3個、冷凍庫も3個あり、分散保管している。同窓会も年1〜2回実施している隊が普通。
Q5:現地での廃棄物処理対策は?減量化・燃料化は行っているのか?
A5:南極条約で厳しくなっており、持ち帰りが原則。固形物は焼却して減量・減容化し、灰は持ち帰る。汚水の浄化装置があり、浄化水は海洋投棄が出来る。1,000トン持ち込み、400トンを持ち帰っている。
Q6:33名の隊員のメンタルケアは?またインターネットを利用したカウンセリングの事例は?
A6:太陽のない時期は滅入る隊員が出てくるので懇親会など行って気分転換を図っている。テレビ電話やラインを使って家族とのコミュニケーションが頻繁に行われている。
東葛病院と連携して何かあればテレビ会議で対応している。対応アドバイスが必要な場合は専門病院と患部を確認しながら対処している。
Q7:帰国してからのデータ発表期間の制限は?
A7:南極条約で観測データは原則2年を目途に公開することになっている。その間、個人が自由に使えるが、共同研究ではオープンデータアクセスを使うこともある。
Q8:先生の専門はオーロラ分野と聞いているが?
A8:オーロラの電波を観測して光では天気が悪くて見えない時でも電波によりオーロラ現象が分かり、地球規模の観測が出来る。
 3月に帰国されてから数多くのご講演をなされ、豊富なデーター、写真や動画を駆使されたご発表で30分間の質疑応答も時間が足りないくらい密度の濃く出席者一同の大喝采の中、2時間のご講演を終えました。
以上
講演資料:昭和基地創設60周年を迎える南極観測
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2018年08月23日

EVFセミナー報告:「インドはカーストよりコスト」〜あなたの既成概念は、インドビジネスの敵〜

演 題 :「インドはカーストよりコスト」〜あなたの既成概念は、インドビジネスの敵〜
講 師 : 島田 卓様  株式会社インド・ビジネス・センター 代表取締役社長
日 時 : 2018年8月23日(木) 15:30〜17:30 
場 所 : NPO法人新現役ネット会議室

講師略歴 : 島田 卓(しまだ たかし)氏 
・1948年生まれ。明治大学商学部卒業。
・1972年東京銀行入行。本店営業部、ロサンジェルス支店、事務管理部、大阪支店等を経て、1991年インド・ニューデリー支店次長
・1995年アジア・オセアニア部次長。1997年同行退職。同年4月に潟Cンド・ビジネス・センターを設立、代表取締役社長に就任。
・東京商工会議所 中小企業国際展開アドバイザー。
・NHK「クローズアップ現代」「Bizスポワイド」等のテレビ出演、各方面での講演、執筆多数。
・主な著書:「インドとビジネスをするための鉄則55」(アルク)、「不思議の国インドがわかる本」(廣済堂出版)、「スズキのインド戦略」(監訳、中経出版)、
「トヨタとインドとモノづくり」(編著、日刊工業新聞社)、「インド2020」(監修、日本経済新聞出版社)、「日本を救うインド人」(講談社)など多数。
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講演概要:
「インドをモノにしようとするなら、インドに関するカーストを含めた既成概念を一旦捨て、一対一のビジネスマンとして、差し違えるくらいの気概で取り組む必要がある」とのことだが、その訳をインドの向かう方向を追い求めてきたインド駐在時代の経験も含めてお話していただいた。
1.あなたの視点でインドは変わる
●インドを理解するためには
ポール・セザンヌの多角的な視点の採用 即ち一点透視画法から多視点透視画法の見方が必要であるということ。ポール・セザンヌの発明とは「私たちは絵を描く際に、見たように筆を走らせる。これを単一視点と言うが、それは対象物の一側面を描いただけにすぎない」ということである。
セザンヌはそれでは対象を正確に描写することではできないと主張した。そこで彼は多角的に対象物を観察し、画面に同時に描写する「多角的視点」を導入した。インドも全体を理解するためには、多面的に、多視点からバランスの取れた判断をしていく必要がある。
●印ビジネスを飛躍的に拡大するには
スティーブ・ジョブスは、一見すると関係のないように見えるさまざまな分野の疑問や課題、アイデアやひらめきを上手につなぎ合わせる力が創造力だと語っている。
インドでは神様が無数いるがこれらを包含して多様性国の統一を目指している。最初は何でもありで多様な社会における知識を積み重ね、それに基づく判断をしていく。単一民族といわれる日本が、人種の坩堝であるインドに、日本流経営の良さとメリットを伝え、うまく結びつけ、ハーモニーを醸し出す努力をすべきではないか。
2.なぜヒンドゥー至上主義政党から首相が生まれたか
●モディを理解すれば今のインドが分かる。
独立以来インド社会が頼みにしてきたネル-・ガンディ-家支配の腐敗にまみれた体制の呪縛からインドを解き放ち、インド国家自体の政治・経済体制を作り変えたのは、2014年の総選挙で勝利したナレンドラ・モディである。モディは苦学して大学を卒業しているが、二等列車の紅茶売りからたたき上げ、17歳で家を出て現政権BJP(インド人民党)の母体である民族奉仕団に加わった。彼ほど多極的な側面を持つ人間はいない。ヒンドゥー至上主義者でありながら、ことビジネスに関しては無宗教派に徹する。現在、硬軟併せ持ち、政治とビジネスを融合させる、らつ腕を絵にかいたような立ち回りのできる人物であり、モットーは【Perform or Perish(結果の出せぬものは去れ) 】である。
3.インド経済の現状と今後
●直近のインド実質GDPの推移
2014年の105兆ルピーから2017年は130兆ルピー(2.6兆ドル)と急成長している。
●10年後の中米印の主要国GDP推移
2010年のGDPは10位以下の圏外であったが、2020年には4.5兆ドルの5位で、2030年にはドイツ、日本を抜いて15兆ドルとなる予測がある。
●ビジネスの世界が変わる
将来、ナレッジ国家インドが世界ビジネスの中心になる。
●人口の増減が物語ること
少子化する日本は2025年の20〜24歳の人口が600万人で、一人っ子政策のリスクのある中国は8000万人、バランスの取れた人口構成のインドは一億人になる。
●GDP構成・労働人口比を変える
GDPの2割に満たない農業部門に労働人口の約5割が従事しているが、今インドに必要なことは、農業生産の効率化を進めるための総合的社会のインフラの整備を行い、それで余った労働力を生産性のより高い製造業へシフトして、国としての総合力をつけていくことではないか。

4.インドビジネスの要諦
●『プシュカールの老人』を描いたときの西田俊英画伯の言葉から
相手の心底にまで入り込み、相手を理解しようとする気概でビジネスをやれば、案外心が通じ合い、それまで気になっていたことが些細なことにすぎず、ことの本質ではないということに気付くのではないか。これからの日印の各種交流拡大を考えたとき、西田画伯の言う「心で受け止める気概」を忘れてはならない。
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●暗黙知・実践知・形式知
日印製造業の顧客創造の施策には、製造業における日印人材の暗黙知の形式知化が必要である。日印双方の暗黙知を統合、形式知化し、相互協力体制を築き、国籍に関係なく現場が現状を創造、維持、破壊、再生の繰り返しで、最適解を求めて動くようにする。そうすれば日印両国の労働者は、世界最強の製造業を創り出せる。
●金まみれのヒラリーと型破りのトランプを全く同列の醜悪大統領選だと。
米国のある有権者曰く「今回の選挙はガンか心臓発作のいずれかを選べと言っているに等しい」。
●鈴木修会長に要請され、インド重工業省から同社をマルチウドヨク(現マルチ・スズキ・インディアの前身)に転身し同社をインド最大の自動車メーカーに育て上げたバルガバ氏は完璧に時間を守った。インド人は時間をまもらない、というのは一面的観察に過ぎない。
●バルガバ氏から聞いた話だが、以前日本からの使節団に講演を頼まれた「カーストの話」をあえて「コストの話」に変えて話した。なぜなら、いかなる国でものづくりしようが、
一番大切なのは「いかにしてコストを削減するか」だから、とのことだった。 
セミナーに参加して
●中国のように中央政府の決定が絶対的な意味を持つ国とは異なり、村落レベルから合意形成を重視する傾向が根付いている親日国インドは、行政による意思決定に時間がかかるが、改革が進めば、これまでにないスピードで発展していく期待感が今回のセミナーを通じて強くなってきた。
(文責:立花賢一)

講演資料:インドはカーストよりコスト-18.8.23
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2018年07月26日

EVFセミナー報告:経済発展する中国の現状と将来〜ある中国ウオッチャーの観察

演題:経済発展する中国の現状と将来〜ある中国ウオッチャーの観察
講師:結城 隆様  中国ウォッチャー 荒井商事常勤顧問 
日時:2018年7月26日(木) 15:30〜17:30
場所:NPO法人新現役ネット 会議室
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講師略歴:
•1955年生まれ。福島県出身。一橋大学経済学部卒。
•1979年旧日本長期信用銀行入行。調査部、ロンドン支店、マーチャントバンキンググループ、パリ支店、ニューヨーク支店勤務。
•1999年ダイキン工業経営企画室、大金中国投資有限公司(北京)勤務。
•デンロコーポレーション常務執行役員を経て2013年より現職。
•現在、荒井商事の常勤顧問として新規事業開拓を担当する傍ら、東日本大震災事業者再生支援機構業務委託、柳沼プレス工業顧問を務める。
•中国ビジネス研究会会員。
•主な著書:中国市場に踏みとどまる(2009年草思社)、中国羅針盤(2009〜2010年)日経ビジネスオンライン、ジョークで読み解く省別中国人気質(2012年草思社)、その他四半期毎に中国観察レポートを発行。
•座右の銘:百年生きて、百年学べ。
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講演概要:
本年の全人代政府報告からここ数年の習政権中国の発展の実績を数値をいれて紹介された。2014年の「新常態」(景気下降、政治的乱気流)から2017年「新時代」(中華民族の偉大な復興の夢)への移行が謳われている。GDP年平均成長率7.1%、高速鉄道総延長2.5万キロなど目覚ましい発展を遂げている。北京市の地下鉄の年間利用客はなんと述べ30億人に達しているとのこと。
従来の投資+輸出による成長から消費が投資を上回る消費主導の成長に転換。その陰では消費者金融の利用も大きく伸びて、違法金利などの問題も出ている。
携帯電話普及台数は14億台、内スマホは9.7億台。スマホを使用したネット予約タクシー、自転車シェアリングなど新しいサービスが次々に登場。スマホ支払サービスが急増した背景には100元札で5%とも言われる偽札率もある。
一方、過当競争により企業の生き残りも厳しく、各種規制も追いつかない現状がある。
自動車分野ではEV市場世界No.1を目指す戦略で2020年までに新エネルギー車生産比率10%以上を目標としている。
「不動産は住むものであって投機の対象ではない」と明言し、不動産市場は本格的な調整局面に入った。
環境問題取り組みが本格化し、環境対応コストが上昇するが、逆に言えば、環境対応が企業価値を高める時代になっている。
綱紀粛正は継続し、2017年規律検査委員会調査件数127万件、うち52.7万件を立件、44万人を処分。省部級処分58名、庁局級3,300人。結果、高官専用の泰城監獄がスペース不足に。
新たに1)資産効果縮減 2)新農民工問題 3)「ミンスキーの時」(金融崩壊の危険) 4)「トゥキディデェスの罠」(パワー・ゲームの中で、軍事的な争いに発展しがちな現象)等4つのリスクが挙げられる。
日本にとっては2007年に対中貿易は対米を超えており、最も重要な隣国となっている。積極的な環境対応、旺盛な消費市場への商品供給、シェアリングビジネス等の新しいビジネスモデルへの積極的な取り組みを図るべき時にある。
(文責:深井吉男)

講演資料:中国「新時代」
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2018年06月26日

EVFセミナー報告:クルマを捨ててこそ地方は甦る

演題:クルマを捨ててこそ地方は甦る〜自立・分散・協調型国土の形成に向けて〜
講師:藤井 聡氏 京都大学大学院工学研究科(都市社会工学)教授、内閣官房参与 
日時:2018年6月26日15:30〜17:30
場所:NPO法人新現役ネット 会議室
講師略歴:
京都大学大学院工学研究科(都市社会工学)教授、京都大学レジリエンス実践ユニット長、ならびに2012年より安倍内閣 内閣官房参与(防災減災ニューディール担当)。
1968年奈良県生駒市生。 京都大学卒業後、同大学助教授、東京工業大学教授等を経て現職。 専門は都市計画、国土計画、経済政策等の公共政策論のための実践的人文社会科学研究。
著書「プライマリーバランス亡国論」「国民所得を80万円増やす経済政策」「国土学」「超インフラ論」「凡庸という悪魔」「大阪都構想が日本を破壊する」「大衆社会の処方箋」「巨大地震Xデー」 等多数。
朝日放送「正義のミカタ」、関西テレビ「報道ランナー」、文化放送「おはよう寺ちゃん」「週刊ラジオ表現者」に解説者としてレギュラー出演中。 表現者クライテリオン編集長。
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講演概要:
冒頭、講師がその日に携わった仕事にどんなことがあったか順次紹介があり、聴衆は講師が関心を持たれているワールドに引き込まれた。今年は5年に一度の国土強靭化計画策定の年であること、南海トラフの大地震が来ると1400兆円の被害を被るとの予想がある一方、予め30兆円の対策が打てれば500兆円の被害縮小の効果がある説が存在するなど、大まかな問題提起がなされた。
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後半は、昨秋発売されてベストセラーになっているPHP新書の「クルマを捨ててこそ地方は甦る」の本題に入った。刺激的な言葉を使っているが主旨は「クルマ利用はほどほどに!」であり、講師の研究の本源である“コミュニティ・マネジメント”を論じたものであるとの由。クルマ社会の進展によって大型のショッピングモールが郊外に出来て都市が郊外化し、それにつれて公共交通機関が衰退、クルマによる移動で運動不足となって住民の健康が劣化し、一方地元商店街で買い物をしないために地域のマネーが流出、コミュニティの劣化、医療費等の行政支出の拡大、ついには地域の魅力が劣化し、行政サービスが劣化して地方都市が消滅していく。
どうすれば都市に再び人を呼び集められるか、それがこのセミナーの最大のテーマである。講師は都市の中心部からクルマを締め出し、空間を作れば人の賑わいは呼び戻せるとして、京都・四条通の歩道拡大工事の効果、富山市の駅前の事例を具体的にわかりやすく説明された。講師の提言は、日本全国にもっともっと新幹線網、高速道路網を整備する一方、地方都市の中心部からは車を締め出して人々が集まる工夫をすべきとのことであった。

なお、コミュニティ・マネジメントのついでにお話しされた際、織田信長が天下人になれた理由についてのお話が興味深かった。信長は土木工事でインフラを整備し、農地をしっかりと築き上げて石高を増やし、道路の機能を、敵の侵入から守ることよりも利便性を高めて生産力を増強したことにより強大になったのだとの由。講師から特別に提供いただいた「歴史の謎はインフラで解ける」の資料を末尾に掲載します。
(文責:佐藤孝靖)
講演資料:
配布資料 :クルマ利用はほどほどに!
講師からの特別提供資料 :歴史の謎はインフラで解ける
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2018年05月24日

2018年5月24日EVFセミナー報告:アフリカでの製油所建設

EVFセミナー報告:アフリカでの製油所建設〜襲い来る数々の困難に立ち向かうプロジェクト組織〜

演題:アフリカでの製油所建設〜襲い来る数々の困難に立ち向かうプロジェクト組織〜
講師:吉見昭司氏、元日揮株式会社理事、元東京大学工学部大学院プロジェクトマネジメント講座講師 
日時:2018年5月24日15:30〜17:30
場所:NPO法人新現役ネット会議室
講師略歴:
1941年;岩手県盛岡市生まれ
1966年;東北大学工学部化学工学科卒業、日揮(株)入社、基本設計部門勤務
1975年;国内プロジェクト部門にて合成ガス製造装置のプロジェクトエンジニア
1977年;ブラジル営業事務所責任者(ブラジル、アルゼンチンの営業活動)
1980年;帰国後、国内プロジェクト部門に復帰、更に海外プロジェクト部門に移籍。大型プロジェクトに携わる。
1995年;基本設計とエンジニアリングマネジメントを業務とする新設本部に異動、副本部長
1997年;基本設計と詳細設計部門が合併した新設本部の副本部長、理事
2001年;EPC委員会(業務改善・改革、競争力強化委員会)副委員長
2010年;東京大学工学部大学院のプロジェクトマネジメント講座講師(〜2011)
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講演概要:
アフリカでの製油所建設プロジェクトを、厳しい経済情勢と自然・労働環境の中で如何にして成功に導いたか、そのご苦労の実態をご講演いただいた。お話は(1)プロジェクトマネージメントとはどのようなものかについての解説と、(2)プロジェクトの実例の紹介 の2部構成であった。後者においては、大型プロジェクトの中身と完成までの間に発生した生々しいトラブルとその解決への取り組みにつき臨場感溢れるお話を伺うことが出来た。

(1)プロジェクトマネジメントとは;

1)プロジェクト組織に求められるもの
世界的に大型プロジェクトの受注は、極めて厳しい競争環境(リスクの顕在化で赤字転落の危険性を孕んでいる)の中での受注が普通であり、従ってプロジェクト完遂のためには各種の問題が発生しても、絶対条件である品質と納期の確保、及びコストダウン・追加獲得のためのノウハウを持ったプロジェクト組織およびエンジニアーの存在が大前提となる。そのためにプロジェクト組織に求められるものは、1)複雑に絡む諸々の因子を俯瞰的に捉えることが出来る洞察力 2)緻密な計画力 3)諸々の事情で計画からの乖離が発生したときの解決への調整能力 4)組織の強化力 等々である。

2)プロジェクト運営手法
プロジェクトは、あるプラントでものを作ろうとするプラントオーナーがプロジェクトを計画することから始まり、それを実現するプラント建設をコントラクター(プラント建設会社)に発注する。受注したコントラクターは、納期、コスト、品質の確保をしながら契約に基づき基本設計、詳細設計、機器調達、建設、試運転、引渡までの一貫した複雑な作業を行う。ここで採用されるのがプロジェクトマネジメント手法であり、その中でも重要なのが、WBS(Work Breakdown Structure)と呼ばれるものである。これは、プロジェクト全体を細かな作業要素に分解(Work Breakdown)し、全作業を階層構造(Structure)として組み立てる手法であり、これによりプロジェクトの全ての作業が事前に明確にされ、全体が統合的に管理できる。最も重要な事は問題を発見しそれを解決しようとする姿勢である。
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(2)プロジェクトの実例紹介;

1)プロジェクトの中身
アフリカにおける日量150,000バーレルの原油を処理するガソリン最大収率型製油所建設プロジェクトの受注から完成に至るまでの間に、講演者が遭遇した諸々の出来事について、問題点とそれぞれの解決策が映像と共に詳細な説明がなされた。言及された出来事は、それらが解決しないとプラントの納期、品質、コストに多大の影響を与える事象であり、キーワードを挙げればファイナンスの組み方、パートナーとのコミュニケーション、設計から建設に至るまでのプロジェクトライフサイクルに係わるプロフェッショナルエンジニアの確保とコミュニケーション、現場作業員の確保、現場労働環境、等々である。
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2)プロジェクトライフサイクルの中で解決してきた諸々の課題
・プロジェクトの受注活動―客先の現地事情や会社状況の調査。客先作成の膨大な量のプロジェクト指示書を読みこなした上での見積作業。
・ファイナンス準備――信用度の低い開発途上国へのファイナンスの難しさ
・基本設計、詳細設計――客先側のコンサルタントの自己PR・保身のための過剰な質問、コメントによる混乱、時間の無駄使い
・客先の姿勢――客先や、パートナーのプロジェクト理解の差、あるいはコミュニケーションの欠落等からの混乱、
・調達――急激な円高から海外発注へ切り替えたことによる海外ベンダーの発掘と品質管理、工程管理に苦労
・建設――建設マンパワーの質の問題(日本人125名に対し、7000名を超える現地およびアジア人労働者の技能教育、管理)、現場における盗難、ストライキ、暴動等々。労務管理上の問題は、人的関係、技能等に関するトラブル早期発見と早い対応(辞めさせることも含め)が肝要。
・作業環境保全――安全上の問題、現地風土病への対応(罹ってもすぐ適切に対処すれば命を救える)

3)プロジェクトマネージャーに求められること
・プロジェクト業務が好きであること。
・ストレスに強いこと
・洞察力と想像力、リーダーシップ。
・困難から逃げない意志。改善・改革の意識。
・自分および人を(経験によって)育てる。

(3)質疑応答:

講演後、活発な質疑応答があったが、その内の数例を以下に記す。
・Q:開発途上国と契約をするときの難しさは何か?(A:リスクヘッジは当然考えるが、契約時に読み切れない事象は必ず生じる。その解決はプロジェクトチームの総合力による。)
・Q:なにかとプロジェクト遂行の困難さが予想できる国と仕事をしようとした理由は?(A:相手国が資源保有国であり、将来性が期待できたから。)
・Q:ヨーロッパ人や日本人技術者の作業環境維持はどうしたか?(A:居住環境、特に食べ物への配慮。ヨーロッパ人、中国人の冒険心とタフさには学ぶべきところあり。)
(以上 文責:橋本 升)
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2018年04月26日

EVFセミナー報告:「我が国の再生可能エネルギー政策の現状と将来」

演題:「我が国の再生可能エネルギー政策の現状と将来」
講 師 : 山崎 琢矢様 経済産業省 資源エネルギー庁 新エネルギー課長
日 時 :  2018年4月26日(木) 15:30〜17:30
場 所 :  NPO法人新現役ネット会議室

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〔講師略歴〕
1996年  東京大学法学部卒
1996年〜 通商産業省(現:経済産業省)入省
電力事業制度改革(第2次改革:小売りの部分自由化の導入
ベンチャー企業育成政策
サイバーセキュリティ対策を担当
2006年〜 米国ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院にて修士号取得。同大学客員研究員として活動。
2008年〜 インフラ・システム輸出の制度設計を手掛ける。
2012年〜 東日本大震災を契機に検討が本格化した電力システム改革の制度設計を担当
2015年〜 経済産業大臣秘書官
2016年10月〜現職(新エネルギー課長)

〔講演概要〕
・日本ではFIT制度導入以降、急速に再エネの導入が進んでいるものの、発電コストは国際水準と比較して依然高い状況になっている。
・また、系統制約の顕在化や調整力の確保、事業環境の整備など、新たな政策課題も浮き彫りになってきている。
・再生可能エネルギーが置かれた現状として現状再エネの大量導入とそれを支える次世代電力ネットワークの在り方について、エネルギー基本計画での検討状況も含めた再エネの現状と今後の課題について講演をいただいた。
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〔講演概要〕
1.再生可能エネルギーが置かれた現状
・世界での再エネの導入状況:世界では2012年頃までは再エネは発電量が変動しかも価格が高いことから、扱いに疑問が持たれていた。 最近は変わってきて、再エネは当たり前になってきた。
(i)2015年には再エネの発電設備容量が石炭火力を超えた。
(ii)2016年には太陽光の新規導入量が石炭火力の純増分を超えた。
(iii)2008年には太陽光発電が約40円/kWhであったが、現在世界での太陽光・風力発電の価格は約10円/kWhになっている。洋上風力も、2016年には落札額が10円/kWhを切る事例や、ドイツでは市場価格(補助金ゼロ)の事例が生じている。
・日本での再エネの導入状況:日本では再エネの割合が原発の多いフランスと比較しても小さい、2030年度のエネルギーミックスでは、ゼロエミ44%、火力発電
56%である。 
・エネルギーミックス実現への道のり:既に、特に太陽光において多くの認定が出ているが、いろいろな障害があり、現在認定されているものすべてが稼働する保証はなく、2030年度のエネルギーミックス実現に向けて、引き続き政策を打っていかなければならない。
・太陽光発電:(i)設置に関する地元とのトラブル、(ii)小規模の発電所の適切なメンテナンスや再投資をどう確保するか等の問題がある。
・エネルギーミックスと国民負担:2030年度の再エネの目標は22〜24%であるが、それを達成するためにはFIT買取費用総額は4兆円となる見込み。今後、再エネ比率プラス9%(15%→24%)を、約1兆円の賦課金で実現しなければならない。

2.エネルギー基本計画での検討
・2030年の議論は総合エネルギー調査会(基本政策分科会)、2050年の論議は情勢懇談会でやっている。
・2030年の目標では再エネを「主力電源とする」ことを位置付ける。主力電源とすることでの課題は、(i)発電コストの低減、(ii)事業環境の整備,(iii)系統制約の克服、(iv)調整力の確保。

・太陽光発電:2019年にFIT買取期間が終了する住宅用太陽光発電の案件が生じ始める、影響は150万kWに及ぶ。太陽光パネルは25-30年の耐久性があるので、自立型として継続できないか?
・風力発電:陸上での建設は限界がある、洋上風力の立地制約を解消することが必要
・地熱発電: 採掘リスクや地元との調整などの課題あり。
・中小水力発電: 新規が少ない
・バイオマス発電: 期待大、国内材と林業をペアで考えられないか?

3.今後の課題
再エネ政策の検討の状況
・太陽光:入札制の導入。過剰な流通構造などでコスト高になっていることの解消。
・洋上風力:立地制約の解消 海は国有財産→1人が長期間占有はできない(都道府県の占用許可は3-5年と短期)→海域を指定し、長期占用を可能とする制度を創設。
・バイオマス:今年度より入札制導入 木質系入札量180MW、液体燃料系20MW
液体燃料はパーム油に限定。
・非化石価値取引市場の創設
・太陽光パネル廃棄問題
・系統制約への対応:既存系統の最大限の活用のため、従来の運用を見直し。(日本版コネクト&マネージ)
・グリッド・コード(系統連系技術要件)の整備:今後は、再エネ自身も調整力の機能を持つことが重要。

以上
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2018年02月15日

EVFセミナー報告:AIとの付き合い方

演題:AIとの付き合い方

講師:DeepZenGoプロジェクト代表 加藤英樹 様
日時:2018年2月15日(木) 15時30分 〜 17時30分
場所:JAICA市ヶ谷ビル201A/B会議室
参加:63名

[講師略歴]
1953年 東京都出身
1977年 東京工業大学工学部電子物理工学科卒業
1980年 東京工業大学工学部情報工学専攻修了
1980年 東京工業大学工学部助手
1982年 (株)富士通研究所にてエキスパートシステム、ニューラルネットなどの研究開発に従事
2005年 東京大学大学院創造情報学専攻博士課程にてモンテカルロ碁を研究
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[要約]
囲碁AIの第一人者である加藤英樹氏から、自ら開発されたプログラム「Zen」の紹介と「囲碁AIの進歩」の状況から入って、「AIを巡る混乱」として問題点や課題を指摘して頂き、「ディープラーニング」と呼ばれるAIを大きく発展させた機械学習方法の説明の後、「何に使えるか」と題してAIの効用の分析を行って、AI全般の「今後の展望」までを講演して頂いた。
幅広く豊富なAIに関する知見や経験に基づき、1時間半の長丁場を一気に講演して下さり、聴講者を飽きさせることなく、AIに関する混乱や問題点を分析して不安を解き、AIの今後への展望について知識を向上させて頂いた講演でした。

[講演概要]
加藤氏は、東工大で電子物理工学と情報工学を専攻した後、富士通研究所でエキスパートシステムやニューラルネットなどを研究・開発したことが背景にあって、囲碁AIに取り組まれるようになられた。
何故囲碁AIであったかと言うと、2つ理由があって、一つは、AI研究には人工認識やパターン認識などがあって多くは一人でできないものであるが、囲碁AIは一人できること。もう一つは、客観的に出来/不出来が分かるということで、その世界に進むようになった。一方、囲碁AIは研究当初コンピューターゲームのような扱いを受けており、日本では学問領域としての認知が進んでおらず、博士号が取れないなどと言った課題があり、苦労の多い領域であった。
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加藤氏は2008年に独立プログラマの尾島陽児氏と知り合ってから二人で組んで囲碁AIの開発を大きく進ませ、その成果であるZenは2009年にスペインで行われたコンピューターゲームオリンピックで初参加初優勝した。また、2012年に武宮正樹九段に4子で勝ったことも大きな話題になった。 その後も囲碁AIは浮き沈みがあったが、Zenは世界一を維持していた。2015年頃から囲碁AIにディープラーニングを取り入れる動きが始まり、そこで開発されたDeepZenGo(同名プロジェクト中のZenの公式名称)が、2017年8月に内モンゴルで行われた第1回世界電脳碁オープン戦で優勝して囲碁AIのチャンピオンとして認められた。
AIの専門家でない人が混乱していることは、AIには「人類を滅ぼす・人類の敵」という側面と「人類を手助けする道具・技術」という側面がある点で、この混乱には、2つのAIがゴッチャになっていると思われる。それらは、一般にAIとして実用化されている「専用AI」と、SFや映画に登場する人間のような「汎用AI」で、後者の研究は最近始まったばかりである。
現在のAIは、ディープラーニング(深層学習)と呼ばれる人間の神経系を模した情報処理技術で大きく発展してきている。結果として人間の真似が上手いのが特徴であるが、膨大な実例(訓練データ)が必要である点が難点と言える。現在のAI(ディープラーニング)は人間の視覚や小脳と同じ役割で、それ以上はできず、人間並みのAIはまだ当分先の話である。
AIを何に使えるかを考えると、普通の人間が0.5秒でできる情報処理をすることと同等であり、画像認識、顔認識から食べ頃の果実を選ぶとか、車の自動運転などまでが考えられる。予測やプランニングも得意であり、限られたゲームのような世界で活用されている。しかしながら、実世界で問題なく使えるようになっているかというとまだ無理と考えられる。その理由は、情報の質が悪く、扱う量が膨大であることに対して十分な状態ではないと言うことが挙げられる。
今後のAIの長期的な展望としては、「AIと人間の共存」が第一に挙げられるが、人間並みのAIが出現はまだまだ(なので、安心して良いとも考えられるし、なかなか楽はできないとも考えられる)。
留意すべき点は、「AIは人間が設計するものであり、悪用するのも人間」ということである。将来的なAIとの付き合い方の選択肢は2つあって、「労働を全てAIに任せる」のと、「人間も一緒に働く」のがある。
AIが人間の労働を分担していくことになると思われるが、それによって得られた富をどのように分配するかという問題がその裏に存在し、その点を解決していくことも必要となる。
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お薦め図書
1.「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」 新井紀子 (東洋経済新報社)
2.「棋士とAI ‐ アルファ碁から始まった未来」 王銘? (岩波新書)
3.「よくわかる囲碁AI大全」大橋拓文(日本棋院)
4.月刊碁ワールド2017年11月号「加藤英樹氏が語る囲碁AI」(日本棋院)
5.数学セミナー2017年11月号「コンピュータ将棋・囲碁のこれから」(日本評論社)
6.日経サイエンス2018年2月号「AIの新潮流」(日経サイエンス社)
7.別冊日経サイエンス「AI人工知能の軌跡と未来」(日経サイエンス社)

以上 文責:浜田 英外

講演資料:
AIとの付き合い方
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2018年01月25日

EVFセミナー報告:ワイヤレス給電の現状と将来の展望

演題:ワイヤレス給電の現状と将来の展望

講師:早稲田大学 電動車両研究所 招聘研究員 高橋 俊輔 様
日時:2018年1月25日(木) 15時30分 〜 17時30分
場所:新現役ネット事務局会議室
参加:44名

[講師略歴]
1972年 早稲田大学大学院 理工学研究科 卒業
1972年 三菱造船株式会社 入社
2003年 昭和飛行機工業株式会社 入社、EV関係の開発に従事
2003年 早稲田大学 環境総合研究センター参与、電動バスの開発に従事
2012年 早稲田大学 参与兼客員上級研究員、非接触給電の開発に従事
2014年 京都大学 生存圏研究所研究員、ワイヤレス給電および大電力給電の研究に従事
2017年 早稲田大学 電動車両研究所 招聘研究員、車両電動化の研究に従事

[要約]
最近NHKなどで取り上げられる様になったワイヤレス給電について、昭和飛行機や早稲田大学などで、実際に電気自動車や給電システムの研究・開発・実証実験に携わって来られた第一人者に、以下の項目についてお話し頂いた。
1.ワイヤレス給電システムとは?
2.EV用ワイヤレス給電の動向
3.汎用機器向けワイヤレス給電の動向
4.ワイヤレス給電における課題
5.将来の展望
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[講演概要]
ワイヤレス給電について以下の順序で幅広く網羅的にお話し頂いた。

1. ワイヤレス給電システムとは?
電磁誘導や電波を利用して、離れた場所へワイヤレスで給電するシステムである。
●ワイヤレスで給電(電力伝送)方式は以下の様に分類される。
(1)非放射型
  1)磁界結合方式
   ・電磁誘導方式
   ・磁界共振方式
  2)電界結合方式
(2)放射型
  3)電波方式(マイクロ波など)
  4)光方式(レーザーやLEDなど)
(3)その他の方式
  5)エバネセント波方式
  6)超音波方式
  7)回転磁石方式
●各方式の特徴などを簡略に述べると以下の様になる。
IMG_0266-2.JPG1)磁界結合方式
・電磁誘導方式:
 19世紀にファラデーの発見した電磁誘導(トランス)の原理を利用した方式。
 非接触化ギャップによる漏れ磁束発生で結合係数k<1となり電力伝送効率が下がる。
・磁界共振方式:
 2007年6月のMITの発表以降多くの会社が発表し注目を浴びている方式。
 送信側と受信側のコイルを高い性能係数QにしてLC共振させる磁気共鳴技術を活用。
2)電界結合方式
 送信側と受信側に電極を設置して電極が近接した時に発生する電界を利用する方式。
 基本的に小さなギャップしか許容されないので未だ出力が小さい。
3)電波方式(マイクロ波など)
 19世紀にマクスウェルが予言した遠方にまで伝搬する電磁波を利用した方式。
 効率が高くない上にマイクロ波の放射は法律で認められていない。
4)光方式(レーザーやLEDなど)
 THz帯の面発光タイプレーザーで送信したエネルギーを太陽電池で受取る方式。
 人体防護の観点からビームエネルギー密度の減少が必要なのが難点。
5)エバネセント波方式
 全反射を起こす壁に挟まれた領域内にマイクロ波を注入し一方の壁から滲み出るエバネセント波を利用する方式。
 基本的に小さなギャップしか許容されないので出力が小さい。
6)超音波方式
 20kHz以上の超音波を利用する方式。
 人体に対する影響はないが壁などの遮蔽物に弱いのが難点。
7)回転磁石方式
 送電部磁石の回転で受電部磁石を回転させ発電するカナダのUBCが開発した方式。
 高周波の電磁界が発生せず人体に対する影響はないが機械的作動がある。
DSCN5913-2.JPG

2. EV用ワイヤレス給電の動向
●国内
 2014年頃まで日産自動車やトヨタ自動車、三菱自動車、本田技研工業が出力3kw程度、周波数85kHzの磁界共振式のものを自社のEVやPHEVに搭載して展示・実証試験を行っていたが最近では発表が殆ど見られない。
●海外(欧州)
 パリモーターショー2016でダイムラーが3.6kWコイルを搭載し、VW社も受電コイルをEV向け新プラットフォームに搭載するコンセプトを発表。一次下請けのボッシュも2017年にBMW用に7 kWコイルを搭載、2018年にはダイムラー車に搭載し市販予定と活発。
●日本でのワイヤレス充電バス
 2004年以降、早稲田大学が電動化した7m長のバスで長野市や川崎市で長期の実証運行。
 国交省や東京都も2008年以降12m長の路線バスで羽田空港や東京駅などで実証運行。
 この結果50kW以下では充電時間が掛かり過ぎてダイヤを確保出来ず、実証試験止まり。
●欧州でのワイヤレス充電バス
 殆どの事例が大電力ワイヤレス給電システムを採用して実運用している。
 2014年から英国ミルトンキーンズ市は8台の電動バスに120kWを搭載して運用続行中。
 ロンドン市も2016年から11kmの路線で電動2階建てバスに100kWを給電して運用中。
 ボンバルディアは200kWシステムを連接バスに搭載しドイツやベルギー各市で実運用中。
●中国でのワイヤレス充電バス
 通信機器大手ZTEが120kWを搭載し各市で最長1充電で44 kmなどの長距離運用中。
●米国でのワイヤレス充電バス
 カリフォルニア州モントレー市で50kWシステムを搭載し2016年6月から実運用開始。

3. 汎用機器向けワイヤレス給電の動向
●家庭・オフィス機器への応用
 1980年代から電話子機などで電磁誘導式が使われていたが機器の小型・薄型化につれ充電コネクタ不要のワイヤレス給電化が進み自宅、店舗、車内充電の相互互換性が図られた。
●モバイル機器への応用
 2017年末のiPhoneX搭載でQi規格(ワイヤレス給電の国際標準規格)が優位に立った。
 現在では家具・店舗・自動車車内などでの給電にQiワイヤレス給電が導入されている。
●水中機器・ロボットへの応用
 水中でも漏電しないで充電出来るという特性から水中機器やスプラッシュ域、フィールド機器などへの応用が増え、警備や介護などのロボットへの応用も実施されている。
●工場内機器等への応用
 レール搬送システム、AGV(無人搬送車)、電動工具などで1990年代から使われている。
●回転機器への応用
 コイルを向かい合わせるだけで回転体に影響を与えずに、軽量、接触抵抗無しで給電。
 防水型給電ソケット、劇場の回り舞台、CTスキャナーなどへの応用が可能である。
●医療機器への応用
 電磁波にセンシティブな医療分野でペースメーカーや人工内耳などに実用化されている。
 人工眼やコンタクトレンズ使用の検査機器、カプセル内視鏡などで臨床試験実施中。

4. ワイヤレス給電における課題
●電磁波の課題
 電力供給ワイヤの制約から解放される反面、他システムへの影響や人体防護の面が課題。
 人体防護に関しては総務省電波防護指針やICNIRPの人体防護ガイドラインがある。
●異物の侵入への課題
 通電中にコイル間に鉄やアルミなどの金属製品が入ると誘導加熱により高温になる。
 これを防ぐために異物の検知や生体検知のシステムなどがいろいろ考えられている。
●標準化などの課題
 EV用ワイヤレス給電システムの相互互換性を確保するための国際標準・規格化進行中。
 標準化を2019年までに実施しないと合意済み内容もリセットされるので鋭意取組み中。

5.将来の展望
●技術開発の方向性
 特許出願から見たワイヤレス給電の技術動向を踏まえ特許庁が下記3提言を行った。
 ・EV用ワイヤレス給電技術およびそのFODやロバスト性向上技術
 ・コイル、コアなどの構成部品とモジュール化、実装技術
 ・エナジーハーベスティング、回転体、医療機器、検査・診断機器
●EVへの走行中給電
 EV分野でいろいろ調査検討した結果、提言以外で走行中ワイヤレス給電があげられる。
 海外では標準化コイルによる静止中も走行中も給電出来るシステムの実証を実施中。
 日本では自動車会社は静観し大学のみ独自の方法やコイルで取組みガラパゴス化の恐れ。
●新たなコイル・デバイス等の構成部品
 電線のブレークスルーが必要でカーボンナノチューブとプリント基板コイルが有望分野。
 デバイス材料としては高周波化と高出力化に対応するためGaNなども非常に重要な技術。
●新たな応用分野
 ワイヤレスキッチンと言ったホームユースの大電力化、ドローンなどの空中移動体への給電、極小インプラントや人工心臓への給電、検査・診断機器への給電などが挙げられる。
●市場規模
 2030年の充電設備必要とするEV、PHEV用のワイヤレス給電の市場規模は3,600億円。
 モバイル用ワイヤレス給電モジュールだけでも2030年には1.75兆円になる予測がある。

6.その他
 質疑応答の中で、EVや電動バスへの給電方式としてCHAdeMOの120kWタイプの試作や欧州でのEVバスへのパンタグラフ式接触給電の検討の例を挙げ、実用的方式の最終的な決着までにはまだまだいろいろな検討が行われるだろうとのお話があった。

以上 文責:岩崎力
講演資料:
ワイヤレス給電ワイヤレス給電の現状と将来の展望
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2017年12月21日

EVFセミナー報告:「これからの10年、日本の自動車産業はどうなる?」

[演題]:これからの10年、日本の自動車産業はどうなる?
日時:2017年12月21日(木) 15:30〜17:30
場所:新現役ネット事務局会議室
講師:小枝 至 氏 日産自動車株式会社 相談役
参加者:36名
DSCN5848-2.JPG講師略歴:
1965年 3月  東京大学工学部機械工学科卒業
1965年 4月  日産自動車株式会社入社
1993年 6月  日産自動車株式会社取締役
1998年 5月  同社常務取締役
1999年 5月  同社副社長
2003年 6月  同社代表取締役
       同社取締役共同会長
2008年 6月  同社相談役名誉会長
2015年 4月  同社相談役
講師役職 :
2009年 6月  HOYA株式会社 社外取締役
2013年 6月  (一社)企業研究会会長

講演内容:
縮小版 CIMG6385-2.jpgEVF設立10周年記念セミナーの第4弾(最終回)として開催されました。
記念セミナーの最終回としてふさわしく、自動車のこれから10年について自動車産業の真っただ中からの展望をお話いただきました。
小枝講師には、まことにご多忙の中EVFのために時間を割いていただき心から感謝の意を表します。

1.自動車産業の状況
世界では人口の増加(現在73億人から2050年には97億人に)と新興国の普及率増に伴い自動車の需要は伸びる。
韓国、中国、ロシアの業者が製造の実力を伸ばし、電気自動車の普及による他産業(IT関連など)からの参入もあり、業界コンペティターが増える。
日本では国内保有台数(7700万台)は飽和状態、かつ買換え需要は減る方向であるが、自動車産業は日本の産業のかなめであり、輸出の拡大に期待している。このためには、「日本ブランド(故障少なく、中古でも人気)」の維持、拡大が必要であり、国内での先進技術を含む開発が不可欠。
軽自動車需要の動き、新興国の国情に合わせた車の開発、低価格車の実現に注目している。
2.自動車を取り巻く課題とチャレンジとしては、地球温暖化に影響の大きいエネルギー削減と交通事故対策が挙がった。
(1)CO2排出量の17%が自動車からのものとの認識から、燃費の最良点でエンジンを働かすe-Power(日産NOTE)や、ゼロエミッションを目指す電気自動車が示され、さらなる改善への方向が示された。
電気自動車に使う「電気」の生産に化石燃料を使用する場合があり、ゼロエミッションの難しいところについては、再生エネルギーへの転換が世界的に大きく進められている状況が示された。世界的に石炭発電への抵抗大きいことや、太陽光発電が技術開発と普及により単価が低下したことにも言及があった。
(2)自動車事故や渋滞の多くがドライバーのミスに起因することなどから、これを防ぐための車の知能化(自動運転)に取り組んでいる。10年後の完全自動運転(無人化)に向けて段階的に開発が進んでいる。
レベル2(部分運転自動化)について、日産の開発したシステム「日産プロパイロット」が搭載されたセレナが販売されている。ドライバーと共存するレベルであることを示すために「プロパイロット」と名付け、他社の「オートパイロット」のように自動運転に過剰な期待を持たせて事故が起きることの無いようにしている配慮も示された。
自動運転に向けた課題技術のアイテムについて説明があった。ヘッドアップディスプレー、画像解析技術(判別ばかりでなく、死角や予測の技術を含む)、外部情報不可欠なため避けられないサイバーセキュリティなどである。
3.完全自動運転が実現した後の状況についても話があった。
事故責任については、完成車メーカーが責任を持つのが筋だろうが、今後の社会受容性や法律の整備にかかっている。自動運転対応の特約設定を始めた保険会社がある。
車の所有にこだわる人が少なくなる。既にライドシェア(相乗り)事業が始まり、拡大を期待する向きも多い。
公共交通機関もあるので、車不要にならないかとの質問もあったが、公共交通機関の不便なところには車は不可欠だろうとの講師の見解である。
機械に依存し過ぎた結果、故障した車の対応に困る人をどうするか、運転する楽しさをどう残すかも考えなければならない課題である。現時点で、自動運転車を買いたいと思う人は半分以下との報告もあるという。

縮小版 CIMG6386-2.jpg演題に沿う多くの内容を休憩時間も惜しんでお話しいただいたが、参加の方々は熱心に聞き入っていました。
お話を聞いて業界の開発の現場に投入されている莫大な努力を感じるとともに、日本の誠実なかつ緻密なモノづくりへの信頼とこだわりを感じました。講師には、その後の懇親会にも参加していただき意見を聞かせていただきました。

更なる詳しい説明は、講師提供の資料があるので参照してください。
(報告者:EVF正会員津田俊夫)

講演資料:
これからの10年、日本の自動車産業はどうなる?
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2017年11月30日

EVFセミナー報告:「驚きの中国、大丈夫か日本」

[演題]:驚きの中国、大丈夫か日本
 〜急速に展開するI oT、Fintech、EC関連経済〜

日時:2017年11月30日(木) 15:30〜17:30
場所:JICA市ヶ谷ビル大会議室
講師:古林 恒雄氏 華鍾コンサルタントグループ 董事長・総経理
参加者:57名

IMG_0106-2.JPG講師略歴:
1965年東京大学工学部卒業、鐘紡(株)入社。ポリエステル直接連続重合法を開発、大河内記念生産賞、科学技術長官賞など各種受賞。75年初訪中、78年技術プラント輸出契約より84年引渡しまで上海石化で現地契約総代表。85年より中国事業開発に従事、20数社の合弁会社を設立運営。94年上海華鐘コンサルタントを設立、董事長・総経理。

DSC_2939-2.JPG講演要旨:
講演は中国に関する知識のブラッシュアップからスタートした。私たちが抱く中国のイメージには講師が携わってきた繊維産業のように、日本からの技術や設備の移転による成長があってこそという意識が、払拭されてないことが大きい。
また中国の自動車販売台数は3,000万台/年(日本の約10倍)を超え、EVでは世界のリーダーにと、まだ増加する需要を抱える中国がEVにかじを切ったことの意味は大きい。
特にGDPの成長は目を見張るものがあり購買力平価でのGDPは2014年に米国を抜き、名目GDPも2030年前後には米国を抜くという予測もあることを紹介。ピュー研究所(PEC)の意識調査は、世界の中国観と私たち日本人の中国観の差を感じさせるものであった。

本題のIoT、Fintech、EC関連については、中国におけるスマホの普及率(54.3%)、インターネットの利用率(96.3%)が急速な発達を可能にした。
ECの普及は阿里巴巴、テンセントによるQRコードを利用したスマホで完結する決済手段の開発によるところが大きい。典型的なのはシェア自転車…利用者認識、料金支払い全てスマホ(携帯)でOK。街の風景が激変した。
また爆発的に増加するEC利用額とスマホ決済額は、2016年に中国GDP74.4兆元(1,265兆円)の2倍以上に達し、さらに増加ピッチは上がっている。
RFID(近距離無線タグ)による商品認識とスマホ決済による無人店舗実験が進む。
お金を入れずに決済する自動販売機が急速に普及し、レストランの無人化も進み(接客は商品をテーブルに届ける人くらいしかいない)、これらの大量情報の蓄積と分析により個人の格付けも進む。また市中では監視カメラの設置も急速に進められており、顔認識技術の進歩により通行している人の特定も行われて信号無視の警告がされたりしている。
中国では身分証番号とスマホ番号がリンクしており、スマホでの自動決済は自動的な個人認証と不可分である。スマホ番号を個人情報と認識している日本と意識の差は大きい。日本はこれらのスピードについてゆけるだろうか。

DSC_2950-2.JPG<質疑応答>
Q.農村と都会の格差は広がっているのではないか?
A.EC(電子取引)で都市と農村の区別がつかなくなりつつある。ECで買い物をしてドローンで配達するようになればこれ以上格差が広がることはなくなるだろう。

Q.ピュー研究所のアンケート「中国はアメリカに替わり世界をリードするか。」に対する回答の世界平均は半数近くがYES。日本は77%があり得ない。この差に対しては情報統制があるとか、道徳観等から私も77%側に近い感情を持っているがどう理解すればいいか?
A.このアンケートは世界中で行われたもので、日本人の中国観が特別なのはマスコミが作ったと私は思っている。また欧米では経済的な事象の判断に道徳観や倫理観を持ち込むことは少ないので差が出やすいこともある。日本のマスコミも近時は肯定的に報道することが多くなってきたが、末尾にただ…と従来の流れの否定的判断を添えることを忘れてはいない。
ただしドルに元が取って代わると考える人は10%もいないだろうとは思う。


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2017年10月26日

EVFセミナー報告:ここまで来た農業改革

[演題]:ここまで来た農業改革
 〜これからのわが国農業の姿と国際競争力〜

日時:平成29年10月26日(木)
場所:国際協力機構市ヶ谷ビル(JICA市ヶ谷ビル)会議室
講師:西南学院大学経済学部教授・東京大学名誉教授 本間正義 先生 
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講演要旨:
『日本の農業問題はだれもが関心あるが、だれもが内容を知らない。
グローバル化と少子高齢化が進む中で、何が起きているのだろうか。日本の農業はかつての食管制度や今日の農協制度に守られて、国際化を拒否し構造改革を遅らせてきた。
しかし、国際化(仲良くする)からグローバル化(ルールを決め、一緒に仕事する事)へと社会構造は変化している。安部政権下は農業改革に取り組んでおり、農業に革新をもたらすのではないかと考えられる。これからの日本農業はどのような方向に進むのか、現場はどうこたえようとしているのか。』等についてご講演頂いた。
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講演概要:
1.グローバル化・少子高齢時代と日本農業の課題
1)農業生産の停滞と農業経営の零細性
農業生産額が1990年代以後減少しており、これは農業構造の脆弱化による。
1000万円未満:1,119,685経営体(増加率 −30.4%)
1000〜5000万円未満:108,547経営体(増加率 −20.8%)
5000〜3億円:15,173経営体(増加率 11.6%)
3億円以上:1,827経営体(増加率 54.6%)
 2)農業労働力の高齢化と労働力不足
  @農業労働者の高齢化が進み、新規参入者が少ない。特に稲作では65歳以上が77%
を占める。一方、酪農や施設野菜では若い労働者が多い。
A米作は65歳でもやれるのである。ウイークエンド農業。3チャン農業。
3)農地集約化が進まず、経営面積は大でも分散圃場になっている。
    都道県(2015年)           北海道(2015年)
5㏊未満:1,262,058経営体(増加率 −33.6%)  :10,195経営体(増加率 −37.5%)
5〜20㏊未満:64.428経営体(増加率 24.8%)  :13,197経営体(増加率 −35.8%) 
20〜50㏊未満:8,107経営体(増加率 159.9%)  :11,570経営体(増加率 −8.2%)
50〜100㏊未満:1,537経営体(増加率 234.9%) :4,584経営体(増加率 3.3%)
50〜100㏊未満:422経営体(増加率 165.4%)  :11,168経営体(増加率 65.7%)
 4)アベノミックスにおける農業改革の行方
 @生産現場の強化
 A国内バリューチェーンの6次産業化
 B輸出促進

2.近年の農業政策の展開
1)農地中間管理機構による農地の流動化:
(問題点)借り手は使いにくい。お隣の農家に、農地を貸したりしない。
2)農業委員会の組織改編
3)農地所有適格法人の要件緩和:現在、出資は農業関係者が50%超になっている。
4)農協改革(全中、監査、準組合韻、全農)
5)米の生産調整の転換:減反政策の廃止では無く、生産調整は続ける。
⇒主食米の価格を上げる。=主食のコメを減らす。米価は高いままに維持する。
200円/kg⇒飼料用米20円/kg=9割が補助金
6)指定生乳生産者団体制度の改革:差別化が当たり前なのに、生乳は一緒に混ぜてしまうので、差別化できない。=高品質の牛乳を生産するモチベーションが無くなる。
7)収入保険制度の導入(予定)
  収入保険についても検討を進めるべき。制度設計の検討の際には、社会政策的な保険ではなく、産業政策的な保険として、財政負担に頼らない自己責任を原則とする。
8)国家戦略特区での取組み
 @特例措置で株式会社による農地取得(養父市)
 A外国人農業労働者の受入れ(予定)。研修生ではなく専門労働者として受入れる。

3.農産物の国境保護措置の推移 
1)戦後「貿易、為替自由化計画大綱」で農産物の自由化を進めたが、重要品目には手をつけなかった
2)本格的な農産物自由化はガット・ウルグライ・ラウンド合意による非関税障壁の関税化と関税削減からである。しかし、関税化品目には高関税が容認されていたため、輸入禁止的高関税による保護が続いている。
3)WTO農業交渉(2000年〜)では実質的保護削減の方向付けがなされたが全体交渉が停滞
4)関税等の保護削減の舞台はFTAだが、TPPは発効の見込みがなく、
日欧EPAは次のステージが未定

4.今後の日本農業への期待
 1)稲作の規模拡大と乾田直播等による生産費削減=労働時間の節約になる。農業機械への投資増大と効率的利用につながる。
 2)農業は楽しい。=農作業する人から金を取る。農業のテーマパーク化
   農地を経営資源にする。
 3)情報機器・システムで高度に管理された野菜栽培
   IT、ICT企業との連携と農作業のマニュアル化
 4)農業の6次産業化の広範な取り組み
   他産業とのコラボレーション、バリューチェーン
 5)農業のサービス産業化と都市・農村の交流
   教育への活用、作るプロセスの商品化
 6)農業をフードシステムで考えられる。
   農協は生産物の差別化を行わず、一緒くたである。   
 7)流通業との連携でマーケットインによる輸出戦略
   国際的フードネットワークの確立。
農業は8兆円産業だが、製造業・サービス産業を含めると80兆円である。
農水産物・食品の輸出は1兆円。NO1は真珠。

5.具体的なビジネス
 1)経営コンサルの展開。本来は農協の職員がやるべきことだが、実際は経理士、税理士、獣医師が担っている。
 2)乾田直播の技術導入
 3)食と農のクラスラー形成。
@シリコンバレーのようなフードバレーを作る。
A次世代施設園芸の拠点
  BICTの活用
   
講演資料:
「ここまで来た農業改革」〜これからのわが国農業の姿と国際競争力

参考資料:日経調 本間正義先生 プレゼン資料
http://www.nikkeicho.or.jp/wp/wp-content/uploads/honma_siryou.pdf
http://www.nikkeicho.or.jp/wp/wp-content/uploads/honma_kouenroku.pdf
DSC_2556-3.JPG
6.質疑応答
 Q)日本に農業は必要か。米生産を止めたらどうなるのか。
 A) @安全保障から言えることは、コメが入らなくなるとオイルもはいらなくなる。
   有事の際のビジョンや計画が必要である。スイスの様に、家庭内備蓄で2週間対処できるか。古米や古古米を優先的に食べるコンセンサスができるか。
   A日本の農業が消えることは無い。5兆円は残る。
   B景観が変わる。(日本文化が変質する。)       以上  文責:大山敏雄


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2017年09月28日

EVFセミナー報告:四股・テッポウが四十八手を作る

[演題]:「四股・テッポウが四十八手を作る」
     〜その奥義のヒミツ〜

日時:2017年8月24日15:30〜17:30
場所:東京サンシャインビル9F 新現役ネット会議室
講師:松田哲博様(高砂部屋・マネージャー/元・一ノ矢)
参加人数:40名

講師略歴:
本名:松田 哲博 (まつだてつひろ) 元・一ノ矢(いちのや)
鹿児島県徳之島出身1960年生まれ
琉球大学理学部物理学科卒業後若松部屋(現高砂部屋)に入門し史上初の国立大学出身力士となる
2007年11月場所引退するまで24年間の現役生活
引退時点で現役最年長力士であり昭和以降の最高齢力士 引退後は、マネージャーとして高砂部屋の運営を支えつつ、シコトレの普及や相撲の物理的な探究を続けている
朝日カルチャーセンター講師 著書『シコふんじゃおう』(ベースボール・マガジン社)『股関節を動かして一生元気な体をつくる』(実業之日本社社)など多数

講演要旨:
「四股・テッポウ」の本質的な目的を、双葉山の映像と実技の指導により、平易且つ魅力的な語り口で説明され、身体の無限の可能性についても説かれました。当EVFのセミナーとしては異質な演題でしたが、従来の枠を広げうる挑戦的な試みであったと言えるのではないでしょうか。
DSCN5710-2.JPG
講演概略:
 講師の松田哲博氏(元・一ノ矢)は徳之島から琉球大学物理学部に進学し、土俵作りも含め相撲部を創設、卒業後は大相撲の入門規定173cmに届かず、大変な苦労をされましたが、何とか若松部屋に入門。史上初の国立大学出身力士となりました。
 24年間の現役生活の中で、20代は身体を鍛えようとするあまり負傷が多く、30代では身体の使い方を勉強し負傷と仲良くし、40代では負傷は身体からのメッセージとして受けとめました。その中から「四股・テッポウ」の大切さにたどり着きました。IMG_2287-2.JPG
 「四股・テッポウ」は、準備運動であり、基本動作であり、整理体操でもあります。「四股・テッポウ」は本来、丹田や軸といった身体の芯をつくるもので、その為には四股を500回、1,000回と踏み、テッポウを2,000回、3,000回と突く必要があります。又、「四股・テッポウ」は、全身を均一にし、身体の感度を上げるために必要なのです。
 講師は、「四股・テッポウ」の大切さを説明しながら、最近の力士の負傷の多さについても、 *四股の量が少ない  *四股が正しい姿勢で踏めていない  とのコメントがありました。
 双葉山の映像による「立ち姿」、「骨の構造・並び」、「脱力感」などの実際を見せて頂き、「眼から鱗」の出席者も多かったのではないでしょうか。
 最後に、講師の美声による「相撲甚句『かえる』」のサービスがあり、出席者は驚きながらも、楽しんで講演を終えました。
 質問は、「土俵の大きさの変遷」、「引き技」、「白鵬への期待」、「朝稽古の見学」、「取組の質」、など、多種多様で、活発な質疑がなされました。

なお、会場では発売されたばかりの新刊本、元・一ノ矢著「転ばぬ先のシコ」ベースボール・マガジン社刊が、希望者に割引価格で頒布されました。// (1,028文字)

講演資料:
四股・テッポウが四十八手をつくる
相撲とテンセグリティ

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2017年08月24日

EVFセミナー報告:人工知能(AI:Artificial Interlligence)の現状と将来

[演題]:人工知能(AI:Artificial Interlligence)の現状と将来
日時:2017年8月24日15:30〜17:30
場所:東京サンシャインビル9F 新現役ネット会議室
講師:経済産業省 商務情報政策局 総務課長 渡邊 昇治様
参加人数:46名
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講演要旨:
1.人工知能の分類と実例
 人工知能は知識ベース型と学習型に大別される。
 囲碁やクイズのチャンピオンを破ったりとか話題になるが、すでに様々な分野での応用が始まっている。特に医療への利用に期待できるが、大学受験や国会答弁作成支援などはまだ難しいようだ。
 それでも日本は欧米に比して導入が遅れているとのことである。
 人工知能の開発が進むほどに、その一方で人間の対応力のすごさが浮かび上がってくるとか、人工知能といえどもよい教材がないと学習できないとか、勝手に新しいものを生み出すわけではないとか、欧米と異なり日本は人工知能に対してお友達感覚で、むしろ人間としては働きやすくなるのではないかとの指摘が興味深かった。 
2.人工知能のインパクト
 市場規模は運輸、小売りを中心に88兆円市場と予測、雇用への影響予測もあるが知識ベース型はとってかわるところもありそうと理解した。また2045年に人工知能が人間を追い越すというシンギュラリティー(科学的特異点)の予測があるがそれほど心配するほどのことではないと理解した。
3.人工知能に関する課題
 世界中で研究開発が進んでおり日本も傑出している分野もあるが安心できる状況ではいない。
 医療、自動車、ロボットが主たる分野だが、特許出願は欧米企業が多く、最近では関連論文数では中国の大学が欧米に迫っているとのこと。
 各国企業の研究所が米国シリコンバレーに設立されているが、日本も負けじと関係府省連携や産総研にAI研究センターを設立するなど力を入れている。
 日本のチャンスとしてはIOT分野が良質なデータを数多く保有するので期待できそうである。例えば高齢者の健康情報などは世界一ではないか。
 制度的な課題としては知財制度との関係、事故時の責任問題などがあるが解決が不可能なわけではない。
4.まとめ
・人工知能の「独創性」は未知数だが、実用化の段階に入った。
・人工知能のレベルアップには大量の良質データがなければ進歩しない。
・日本の研究者・技術者の層の厚みが欧米・中国に比較して懸念材料である。
・日本の強い分野を人工知能でより強化する戦略が必要である。
・人工知能導入は避けられないのでそれを想定した制度・ルール整備が急がれる。
・人工知能と人間が共存できる社会・時代を提唱すべし。Connected Industriesを提唱。
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以上ですが、大変明解に解説していただき、根拠なく悲観したり、喜んだりすることなく今後が見据えられたような気がしました。
渡邊 昇治様のご講演はその行間に含蓄があり、今後もお忙しいところですが困った時にはEVFセミナーの講師をお願いするつもりですので皆様もその謦咳に触れていただきたくふるってご参加ください。
−以上−

講演資料:講演資料:人工知能の現状と将来の動向

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2017年06月22日

EVFセミナー報告:ここまできた福島第一原子力発電所の廃炉事業−技術的進展と今後の展望−

[演題]:ここまできた福島第一原子力発電所の廃炉事業−技術的進展と今後の展望−
日時:2017年6月22日15:30〜17:30
場所:東京サンシャインビル9F 新現役ネット会議室
講師:株式会社キュリオン ジャパンProject Director Japan 沼田 守 殿

講演要旨:
 2011.3.11の大地震と津波が福島第一発電所を襲った結果、使用済み燃料プール、炉心、デブリという3つの高放射能発生源を同時に抱えるという世界でも例のない事故となった。事故当初から数年間は、炉心冷却水とこれに合わさって発電所地下へ流入する地下水の除染および外部へ漏れないようにすることが喫緊の課題であった。そして現段階では、汚染水処理は技術的に見通しが立ってきた。これからは使用済み燃料とデブリの安全な取り出しが最大の課題である。
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 廃炉・汚染水対策関係閣僚等会議は2011年5月にロードマップを作成、福島第一原発を廃炉にすることを決定し、その後、2014年8月に原子力損害賠償・廃炉等支援機構(NDF)が設立され、ロードマップで示された基本方針の下に、廃炉事業を進めるための具体的技術戦略プランを作成。東京電力廃炉カンパニーが中心となり、廃炉作業が進められている。
 NDFの中で廃炉に関わる戦略プラン策定に深く関わられ、また現在は汚染水問題解決技術をはじめ廃炉に関する技術を提供しているキュリオンジャパンに移られ、継続的に福島問題の解決に携わっておられる沼田講師をお招きして、「福島題意原子力発電所の廃炉事業――技術的進展と今後の展望――」についてご講演頂いた。
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講演概要:
1)福島における解決すべき課題(廃炉の基本的考え方)
廃炉・汚染水問題は、大きく分類すると下記の4点から構成される。
@汚染水対策
A使用済み燃料プールからの燃料取り出し
B燃料デブリの取り出し
C廃棄物対策

2)廃炉に携わる機関組織
この大きな課題解決に関わっている組織とそのミッションは下記のようである。
政府「大方針の策定=中長期ロードマップの策定、課題解決の進捗管理」
原子力損害賠償・廃炉等支援機構(NDF)「戦略プラン作成と技術的支援、国際連携の強化」
東京電力「廃炉に係わる上記の4つの課題の着実な実施」
原子力規制委員会「安全規制の実施、実施計画の認可」
研究開発機関(国際廃炉研究開発機構(IRID)、日本原子力研究開発機構(JAEA)等「研究開発の実施」

3)中長期ロードマップ;その基本原則と工程
@福島における解決すべきすべての課題に取り組む際の基本原則
原則1.安全確保
原則2.透明性
原則3.見直し
原則4.政府が前面に立つ
A課題解決への工程
第1期(2011年12月から):燃料プールからの燃料取り出し開始までの期間(2年以内)
第2期(10年以内):燃料デブリ取り出しが開始されるまでの期間
第3期(2021年12月から30-40年後):廃炉終了までの期間


4)戦略プラン
中長期ロードマップの着実な実効や改定の検討に資することを目的に、下記の項目に対する戦略の策定。
@戦略プランの中身
・ リスク低減戦略(基本となる考え=安全、確実、合理的、迅速、現場指向)
・ 燃料デブリ取り出し分野の戦略プラン
・ 廃棄物対策分野の戦略プラン
・ 研究開発への取組
・ 今後の進め方
A廃炉に関わるリスク源の分類と対応方針
【分類T】プール内燃料と建屋内汚染水:可及的速やかに対処すべきリスク源。
4号機プール内燃料は取り出し済み。1,2,3号機からの取り出しにおける最大優先課題は、ダスト飛散防止対策、作業員の被曝線量低減対策。
汚染水対策のポイントは、@汚染源に水を近づけない。A汚染源を取り除く。B汚染水を漏らさない。
【分類U】燃料デブリ:周到な準備と技術によって安全・確実・慎重に対処し、より安定な状態に持ち込むべきリスク源。デブリ取り出しは、人類未経験のこと。目下デブリの状況はブラックボックスであり、取り出し方法は水中か気中か、それらの組み合わせか等々は各号機の状況次第.
【分類V】濃縮廃液、廃スラッジ、HICスラリー、一時保管固体廃棄物の一部、PCV内構造物等:より安定な状態に向けて措置すべきリスク源。放射性廃棄物の処分に対する安全確保の基本的考え方
・廃棄物を閉じ込める。
・廃棄物を生活環境から隔離する。
・放射性物質の生活環境への移行を抑制し、遅らせる。
・放射性物質の生活環境への移行量が、有意な健康影響を与えないこと。

5)廃炉に関連する研究開発への取り組み
@研究組織機関:
基礎研究・基盤研究:大学、他の研究機関(文部科学省:叡智を結集した原子力科学技術・人材育成推進事業)               
応用開発:JAEA(JAEA運営費交付金による基礎基盤研究)
実用研究:IRID(経産省:廃炉・汚染水対策事業費)
A具体的な研究施設:
廃炉に関する研究開発については、日本原子力研究開発機構(JAEA)が中心となり、現在までに下記のような研究機関が設立され活動が開始されている。
・廃炉国際共同研究センター(富岡町;世界の叡智を結集した研究開発・人材育成拠点)
・楢葉遠隔技術開発センター(楢葉町;遠隔操作機器(ロボット等)の開発・実証試験を行う施設)
・大熊分析・研究センター(大熊町;ガレキや燃料デブリ等の放射性物質の分析・研究拠点)
B国際協力
廃炉を巡る国際協力は東電、NDF(原子力損害賠償・廃炉等支援機構)、JAEA(国立研究開発法人日本原子力研究開発機構)等の機関が、海外の原子力関連研究機関や企業の専門家を招聘し、定期的に会議や共同研究を行っている。このような動きは福島県内の新聞等ではよく取り上げられるが、首都圏におけるマスコミが報道することは少ない。
また、事故直後の応急的対応に関していえば、フランスやアメリカの政府や民間企業からの人材を含め技術や設備機器の提供によって初動対応に大きな効果があったことは記憶にとどめておくべきことである。

おわりに
「福島事故の歴史・現在までの対応と今後の展望につき、事実に基づいたお話(ファクトファインディング)をしたい」との説明から講演は開始され、講演の終わりに当たっては以下の言葉で講演を締めくくられた。
・政策及び大きな方針(技術を含む)が存在し、それが細分化・具体化されて現場で作業が行われている。
・マスコミ情報が無い時は、何もなされていないのではない。粛々と作業が順調に行われている証である。
・事実の確認、収集に努力を惜しまない。価値判断はそれから。
・国内外の関係者との情報交換に努力を惜しまない。いろんな知恵が出てくる。事故の教訓は人類共通の財産。

以上 文責:橋本 升

講演資料:講演資料:「ここまできた福島第一原子力発電所の廃炉事業−技術的進展と今後の展望−」

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