2016年08月25日

EVFセミナー:「まだまだ頼りになるエネルギー=石炭」

[演題]まだまだ頼りになるエネルギー=石炭
   −地球温暖化対策に貢献する日本の最新石炭利用技術について−



開催日:2016年8月25日(木) 15:30〜17:30
会場 :新現役ネット事務局会議室
参加 :27名
講師 :原田 道昭 様(財団法人 石炭エネルギーセンター上席調査役 工学博士)、
講師略歴 :
 早稲田大学大学院理工学研究科資源及金属工学専攻博士課程後期修了
 1978年 第20次南極地域観測隊員(博士課程在学中に休学)
 1983年 早稲田大学理工学研究所奨励研究員
 1984年 (財)石炭技術研究所、 (財)石炭利用総合センター、 (財)石炭エネルギーセンター
 所属機関の統合が進む中、現職に至る。
IMG_0809-2.jpg
要約 :石炭利用分野に長年情熱を注いで来た第一人者にお話し頂いた。石炭の分類を導入に、発電での広汎性や製鉄での不可欠性と価格の安価性・安定性、および近年の環境対策の必要性の高まりに及んだ。次いで、世界の主要関係各国の状況、およびわが国の状況が説明された。更に、主題の「地球温暖化対策に貢献するわが国の石炭利用技術」が詳しく述べられ、最後に今後の石炭利用状況の見通し等が説明された。

講演概要:
 石炭利用について下記の順序で幅広く網羅的にお話し頂いた。

1. 今石炭はどのように使われているか

●石炭は以下の様に分類される。
1)石炭化(炭素の濃縮)の程度: 無煙炭、瀝青炭、亜瀝青炭、褐炭
2)用途: 原料炭(製鉄)、一般炭(発電燃料、セメント燃料)、無煙炭
3)粘結性: 粘結炭、非粘結炭
●石炭による火力発電は世界各国で広く行われている。
1)褐炭露天掘りと山元発電の例: ドイツ、ポーランド、豪州、等
2)高い日本のクリーンコール技術: J-POWER磯子石炭火力、勿来IGCCプラント
●高炉法による製鉄には石炭(コークス)が不可欠である。
 コークス用には粘結性の高さが必要だが事前の判別は不可能
●石炭の輸入価格は安価で安定している。
 一般炭に比べ、原油は2.6倍、LNGは2.9倍(2015年12月)
●石炭利用における環境対策の必要性が高まっている。
1)熱量当りのCO2排出量: 石炭5:石油4:LNG 3
2)日本の石炭火力の排ガスは、ガスおよび石油火力の排出基準以下

2. 世界の中での石炭

●世界の確認可採埋蔵量(2010年)は8,609億3,800万トンである。
 国別に、米国(27.6%)、ロシア(18.2%)、中国(13.3%)、豪州(8.9%)、インド(7.0%)
●世界の石炭生産量(2014年)は増加傾向に歯止めがかかっている。
 豪州、インドは順調に生産増だが、インドネシアは急成長後2014年に減少に転じた。
 米国は2012年以降大幅減であり、最大生産国の中国も前年比1億トン近い減である。
●世界の石炭消費量(2014年)も増加傾向に歯止めがかかっている。
 米国、EUの落ち込みが激しく、最大消費国の中国も前年比1億トン以上の減である。
 一方インドの消費は大幅に増加し、インドネシア、韓国、ベトナム等も増加傾向である。
●主要各国の状況は以下の如くである。
1)豪州
 重要な輸出国(国内消費は1/4弱)で、日本の要求に合う高品質炭を1億トン以上輸出
 石炭産業の持続的成長・環境対策を重視しているが、インフラ整備に課題がある。
2)インドネシア
 低品位炭が多い。石炭生産は増産から抑制に転じた。一般炭の大輸出国である。
 石油生産の減少に伴い、石炭の高付加価値化や国内供給の義務化の動きが生じている。
3)中国
 世界生産の半分近くを占めるが、2009年に純輸入国に、2011年は世界一の輸入国に近年の経済成長減速で輸入が激減しており、今後の石炭需給動向は不透明である。
4)米国
 消費の9割は電力向けでシェールガス台頭の影響を受け、2015年に一時首位を転落
 政府規制で老朽石炭火力は閉鎖、新規石炭火力建設も困難。石炭火力は40%を割込み
5)インド
 生産量、消費量共に近年急増している。今後も積極的に石炭を利用する方針である。
 日本を抜き世界第二位の石炭輸入国になったが、政府は輸入を抑える方針である。
●世界の石炭輸出/輸入は堅調に増加している。
  主要輸出国: インドネシア、豪州、ロシア、米国、コロンビア、等
  主要輸入国: 中国、インド、日本、韓国、台湾、等

3. わが国における石炭

●日本の石炭生産は供給の0.7%に過ぎず、近年ほぼ100%を海外炭で供給している。
 石炭政策による合理化やエネルギーミックスの多様化が進み海外炭の使用が増加した。
●我が国の一次エネルギー供給構成の変遷
 オイルショック等を踏まえ、石油依存度(最高1973年75%)の低減を推進して来ている。
●震災後の発電構成
 原子力発電停止で電力需給がひっ迫、代替火力発電燃料費は約3.8兆円増加(2013年度)
●産業別石炭消費(2010年度)
 電力:43.3%、鉄鋼:37.6%、窯業土石:5.5%、紙・パルプ3.0%、その他:10.6%
●石炭輸入推移は2007年以降ほぼ同一水準。輸入先は豪州が大半で2位はインドネシア
 豪州:63.4%、インドネシア:18.7%、ロシア:8.0%、カナダ:4.9%
●長期エネルギー需給見通し(目標水準)
1)安全性の確保が大前提
2)温室効果ガス排出量の削減は欧米と比較して遜色ないレベルの削減目標に
3)自給率の向上は現状の6%から震災前(20%)を上回る25%に
4)原子力比率の可能な限りの削減と徹底した省エネ
5)電力コストの現状よりの引き下げ
 2030年発電比率:石油2%、石炭26%、LNG27%、原子力22~20%、再生エネ22~24%
 石炭火力発電は、高効率化を促進し、環境負荷低減と両立しながら有効活用を図る。

4. 地球温暖化対策に貢献するわが国の石炭利用技術

状況分析:
●日本の石炭火力の発電効率は世界最高レベルである。
 中国、インドの石炭火力の発電効率は低い。但し、中国はここ数年高くなって来ている。
●開発目標〜高効率発電・低炭素化
 IGFC(石炭ガス化燃料電池複合発電)等で更なる高効率化を目指している。
●石炭火力の国際展開(技術移転による低炭素化の推進)
 今後も石炭火力発電需要の増加中、高効率発電の技術移転やシステム輸出で競争力維持
●世界の石炭火力の導入見通し(2012年→2035年)
 世界需要は約129兆円で、特にアジアでは約79兆円であり需要が拡大する見込みである。
 具体的推進事項:
●石炭ガス化燃料電池複合発電実証事業(大崎クールジェン)
 酸素吹IGCCの確立と燃料電池との組合せ発電技術を見越した実証。発電端効率55%
●石炭とバイオマスの混焼
 バイオマスのカーボンオフセットを利用した低炭素化だが、採算上の課題が多い。
●インドネシアで進めている低品位炭(褐炭)活用事業
1)UBC(改質褐炭)実証事業(神戸製鋼所): 瀝青炭同等発熱量の改質炭にする
2)JCF(JGC Clean Fuel)事業(日揮): 低品位炭原料の新液体燃料を製造
3)二塔式ガス化炉利用事業(IHI): 褐炭をガス化し、水素、メタン、DME等に転換
●褐炭から水素を製造する事業(川崎重工)
 豪州で水素を製造し、日本等に輸出する。
●CCS(CO2地中貯留技術)への取組
 石炭火力発電等で排出されるCO2を分離回収し、地中帯水層に圧入貯留する技術
 苫小牧でCCS大規模実証試験を実施中。今後技術開発や潜在的CCS適地の選定を実施
 但し、CO2削減シナリオでのCCSの2035年目標(WEO2013)の達成は極めて困難

5. 今後の石炭

●石炭資源(長期契約)価格の推移
 比較的安定に推移していたが、アジアを始めとした世界的石炭需要の増加等で上昇傾向。
 但し、近年は世界的景気後退での供給過多により、ピークは過ぎて下落傾向にある。
●米国の天然ガス生産シェアの予測
 シェールガスのシェアは近年急激に増加し、2035年に49%に達するとの予測も(EIA)
●米国シェールガスの影響
 一時石炭と天然ガスの発電比率は略同じになったが、その後の天然ガス価格増で石炭比率上昇。政府は石炭火力が40%程度維持と予測。むしろ水銀・有害物質規制やオバマ大統領の気候変動対策(Clean Power Plan)の方がシェールガスより影響大かも知れない。
●アジア圏の石炭需要
 日本、韓国、台湾に加え、中国、インドの輸入量が増加し、限られた貿易対象の石炭の獲得競争が生じている。石炭輸入世界一になった中国の動向により石炭価格が変動する。

6. まとめ

 地球温暖化対策に貢献しつつ、将来的にわが国の石炭利用を持続的に発展させて行きたい。

7.その他

 質疑応答の中で、現状の石炭火力発電のCO2排出量は、最高効率でも700g/KWh程度で、英国、米国、カナダ等の要求する450g/KWhにはCCS採用が不可避とのお話があった。
以上 文責:岩崎力

講演資料:「日本の石炭利用技術とJCOALの役割」
posted by EVF セミナー at 18:00| Comment(0) | TrackBack(0) | セミナー紹介

2016年07月28日

EVFセミナー:「地デジの日本方式を最初に採用したブラジルに於けるリオ五輪」

[演題]地デジの日本方式を最初に採用したブラジルに於けるリオ五輪
   −そして、テレビはどこへゆくのか?−

(文責:和田政信)


開催日:2016年7月28日(木) 15:30〜17:30
会場 :新現役ネットA会議室
講師 :杉本 篤実氏(元NECエグゼクティブ・エキスパート)、
略歴 :室蘭工業大学を卒業、東京オリンピックが開催された1964年にNECに入社。1973~1985年はデジタル映像機器の開発。1990~2001年はハイビジョンの推進とデジタル化の推進。1997~2007年はDiBEG(デジタル放送技術国際共同研究連絡会)の初代議長やコンサルタントなどを務めて日本の地デジ方式の国際普及に取り組み、南米ブラジルをはじめ18ヶ国での日本方式採用に結びつけた。
デジタル映像機器(フレームシンクロナイザーおよびデジタルビデオエフェクト)の開発により、NECは米国テレビ芸術科学アカデミーより二度のエミー賞を受賞。
現在は、室蘭工業大学同窓会関東支部東京EEC会長、日本ビデオコミュニケーション協会理事、映像情報メディア学会フェローなどの立場で活躍している。
DSCN4903-2.jpg
要約 :テレビ放送のデジタル化の歴史と、その過程で日本方式のデジタル放送技術をブラジル筆頭に世界に広めていった取組を解説いただいた。ブラジルが日本方式を採用した背景には、日本方式が技術的にブラジルの環境に適していた面もあるが、ブラジルにおいて定着しているジャポネース・ガランチード(日本人は保証付き)という、移民が築いた日本人への信頼感が大きく貢献したとのことであった。
ブラジルの国情、リオデジャネイロオリンピックの見どころなどブラジルに関する話題を提供いただくとともに、テレビ放送の歴史を振り返りと今後のテレビ放送の方向性などのテーマについても解説いただいた。
SR07281.jpg

講演概要:
日本のテレビ放送は1953年に白黒で開始され、その後カラーの導入、ハイビジョンの導入に取り組んできた。その間、テレビ信号はアナログ方式を採用してきた。1973年より映像システムがデジタル化され、1990年頃より送信系以外のシステムのオールデジタル化が進んだ。
デジタル化により、(i)ハイビジョン放送や多チャンネル放送が可能となる、(ii)ゴーストのない鮮明な映像を見ることが出来る、(iii)移動時も安定した画像の受信が可能となる、(iv)周波数の有効利用、(v)データ放送など高機能化を図れることなど、ユーザーに大きなメリットがある。

2000年当時、世界の地デジでは日本方式と呼ばれるISDB-T、欧州方式のDVB-T、米国方式のATSCの3方式がありました。そのような状況の中で、日本の業界はデジタル放送技術国際共同研究連絡会(DiBEG)を設立、アジア、太平洋地域、南米への日本方式の展開を強力に推進した。2000年からブラジルと交渉を開始し、2006年にブラジル政府が採用を決定した。その後南米での採用国が拡大、さらにアジア・アフリカでの採用活動を行い現在は世界で18ヶ国が採用するまで大きく展開した。
規格策定の分野で日本は常に欧州の後塵を拝しているが、地デジの分野で日本方式(ISDB-T)を作りそれを18ヶ国採用にこぎつけた素晴らしい成果は杉本篤実氏の強力な指導力と関係業界・政府連携の賜物と考えます。

ブラジルの面積は日本の23倍、人口は206百万人でともに世界第5位の規模です。最初の日本からの集団移民は1908年でした。100年を超える移民の歴史で日系人は190万人を数え、人口の約1%に相当するそうです。日本方式の地デジがブラジルで採用された背景には100年を超えた日系人が培ってきた信頼と日本に対する信用が大きく貢献したことといえます。地デジの日本方式の採用の背景には技術やコストだけでなく、国家間の信頼感のみならず民族間の信頼感が大きく貢献していました。 なお、ブラジルのGDPは世界7位の規模ですが、貧困線未満の人口が31%を占め、全体の生活レベルの向上が大きな課題といえます。

リオデジャネイロオリンピック競技施設や見どころを伺ったが、中でもNHKが取り組んでいるスーパーハイビジョンでの配信計画は今後のテレビ受信機のあり方を考えさせられたものでした。 またNHKと民放で合わせた2500時間以上を共同サイトでネット配信するとのこと、今後の映像配信は、ネットやオンデマンドと地デジ放送が並行して進んでいくことを感じさせるものでした。

今後のテレビの進む方向として、超高精細テレビ放送(4Kと8K)はいまだに、アナログテレビ受信機をデジアナ変換して利用している人間にとっては何故ここまでやらねばいけないのか、理解に苦しむところもありました。今後の動画配信ビジネスそれもVideo on Demandが成長分野であるとの説明は納得できました。

デジタル映技術開発一筋に取り組んでこられた杉本篤実さんが、DiBEGの代表として日本方式を海外に展開してゆく姿には感心させられました。 製品を売り込むのではなく、相手先の国をよく理解し、その国に役立つ技術システムを導入しようとする姿勢は素晴らしいものです。このようなアプローチが地デジの日本方式採用国が18ヶ国にも拡大した要因でしょう。

杉本篤実さま本当にありがとうございました。
DSCN4910-2.jpg
講演後のQ&A:
Q1 地デジの方式は今後どのように変わってくるのか
A1 地デジは開始されてから欧米では18年、日本では13年が経過した。通信と違って放送方式は簡単には変えられない。通信との対比において地デジの存在価値は変わるかもしれないが、日・米・欧の3方式はしばらくこのまま使われる。4k放送はCATVや衛星が使われる。
Q2 動画の配信、ビデオ・オン・デマンドの今後は?
A2 スマホなどの発達などによってオン・デマンドな動画配信ビジネスは、ますます発達するだろう。しかしながら、最大の広告媒体としてのテレビはまだ続くのではないか?
Q3 日本方式をブラジルが採用した技術的な理由は何か?
A3 日本方式はノイズへの強さとワンセグを見られる点をブラジルが評価した点と理解している。
Q4 日本方式でノイズへの強さを、どのような技術的手段で成功させたのか?
A4 タイムインターリービングという、電波の強さが時間的変化による影響を抑止する技術を採用したことが大きい。
Q5 今後の電気技術者の生き方は?
A5 私が卒業した頃には、電気工学を学んだ者には回路設計という仕事があった。現在では、電気通信技術の世界では、多様な標準規格を理解して目的とするシステムの構築を論理的に行える。いわゆる回路設計はもはや必要ない。アンテナ、送電、配電の仕事ではアナログ的な回路設計の仕事は残っている。
ビジネス成功のためには、標準化されている技術の上に新しいサービスを生み出すアイデアが重要。その典型がGoogleやAppleだ。
Q6 4Kテレビ受信機はいつごろ購入すればよいのか?
A6 2018年から本格放送が開始されるので、このタイミングよいのではないか?
以上
posted by EVF セミナー at 17:25| Comment(0) | TrackBack(0) | セミナー紹介

2016年05月26日

EVFセミナー報告:いま、中国で起こっていること

[演題] いま、中国で起こっていること
〜資源および環境問題も、さらなる相互理解のためには〜

(奥野 政博)

開催日時:平成28年5月26日(木)午後3時30分〜6時00分
場  所:新現役ネット事務局A会議室
講  師:布施 玄 氏(北京在住オイルエコノミスト 元出光興産(株))

 今回講師をお願いした布施玄氏は、海賊とよばれた男と同じ神戸大学(中国経済ゼミ)を卒業後、出光興産に入社して主に海外部門(原油輸入・事業計画)と販売業務に従事され、内のべ13年間、中国(北京、香港、大連)で勤務され、7年前に出光興産を退職された後、北京に在住され石油エコノミストとして調査研究、経営コンサルタントやビジネス講座講師などで活躍されております。
05261.jpg 今回は、最近のホットニュースから中国の理解に必要な事柄についてお話しを頂いた後に、中国のエネルギー消費状況と環境問題について概説と現地の人々の意識や危険な現状と改善努力について紹介頂いた後、政治や経済運営の裏に潜む「中華意識」と云う延々と続いてきた中華文明の実際、日中間での相互の反中・反日感情の原因や中華文明と日本がどう打ち解け、理解しあえれば良いのかなど熱の籠ったお話しをたくさんの図表や写真を交えて予定時間を大幅に超えてお話しして頂きました。

講演概要:
 先ず初めについ最近、肌身に感じた中日友好病院での看護師の蕁麻疹治療での注射や超音波検診の見事さや我が国のマスコミが揶揄している中国の経済減速問題について購買力GDP(ドル人民元換算)の視点から、世界全体のGDPの伸び(1.5〜2%)が16%のシェアを占める中国のGDPが6.5%に減速したと騒いでいるマスコミが中国の潜在する実力という真実を伝えていないことを指摘された。
 中国理解のキーワードとして「マスコミは信じるな」「大数原則」「正しいマクロ政策〜わかりやすい評語で表現〜」「法律意識」「孔子の国&国益を理解(リアリズム)〜四書五経と孫子〜」「熱帯からツンドラまでの国土」を挙げられた。
 「大数原則」の例として我が国最新の製油所(出光愛知:1975年竣工)に対して中国では1974年以降100ヶ所以上の製油所が建設され、今では建設・運転ノウハウを十分吸収して建設コストも日本の1/4で世界の最先端を行っている。
 「正しい経済政策」の例として1980年代のケ小平の改革開放による市場経済への移行、朱鎔基の2001年にWTO加盟を果たして世界の工場化により世界の富を集中、胡錦濤の中産階級を救った小康和諧の道、そして習近平の中国の夢を目指してインテリ化した国造りと李克強の都市化政策を挙げ、我が国のマスコミは分析力が弱くマスコミは信じるなとのキーワードに繋げられた。
 貧富の大きな格差について、生活習慣、将来の進路と消費習慣から常識では通用しない大変な世界(自分中心、法律を守らないなど)であることを日本と中国のGDPの正規分布概念図で横軸をIQに準えて説明された。
 2016北京モーターショーの写真を示して、日本のマスコミが紹介している電気自動車、ハイブリッド車や燃料電池車より当面油が安いのでガソリン仕様のスーパーカーが人気を集めているとのこと。
 中国の石油に関する世界ランキング(BP統計2015年版)について、原油確認埋蔵量が第14位、原油生産量が第5位(トップ3のアメリカ、サウジ、ロシアの順位は年に依って入れ替わる)、石油消費量がアメリカに次いで第2位(日本は第3位、中国は日本の2.5倍)で精製能力もアメリカに次いで第2位(日本は第5位、中国は日本の3倍強)で、石油消費量1100万B/Dに対して原油生産量が420万B/Dしかなく、中東依存度が大きいためマラッカ海峡とホルムズ海峡への依存度を如何に軽減するかが中国のエネルギー戦略上の優先課題となっている。現在までパキスタン、ミャンマー、ロシアからの陸上パイプラインや鉄道輸送を進めているが量的に限界があり、公海のマラッカ海峡とホルムズ海峡プラス南沙諸島や尖閣諸島を如何に自分の領土にするのかが中国の軍事上の戦略(過去の歴史から戦争は石油で決まり、中国は戦争しないが何時でもする心積もり)であり底には孫子の兵法が息づいているとのこと。
 中国は陸上で14ヶ国、海上で6ヶ国と国境を接していて、これらの国と緊密な経済・貿易で協力関係にあると共に多くの歴史問題・領土問題を抱えていること、世界と日本の排他的経済水域面積を図表で説明され、地政学的な領土の重要性を再認識させられた。
 この度のCOP21(パリ協定)について、1990年を境に二酸化炭素排出量削減を努力目標とした欧州に対してそれ以前に排出量削減してきた日本がお金を持ち出しただけのCOP3(京都議定書)と比べると世界の二大排出国の中国とアメリカを参加させ排出量削減を縛り付けず将来的に上手く運用されるように仕向けたスキームとの評価は前回のセミナー(COP21・パリ協定を活かし、脱炭素社会を目指すために)の山岸先生のご講演と重なっていた。世界の4分の1の二酸化炭素を排出する中国では老朽化した火力発電所を地方政府の税収入と利権絡みで容易に廃止できないこと、世界の自動車生産台数(約9千万台)の25%弱を占める中国は自動車の大消費国で2003年から2015年の中国市場での乗用車販売量が12倍に増えている事とトヨタの世界全体の広告宣伝費の80%が中国と云う事実が一致している。このため中国の大都市では2017年から欧州と同等もしくはそれ以上の排ガス規制(ユーロ6)を前倒し導入すると共に2020年前後には無公害車の販売義務付け、燃費基準も20年までに先進国並みに引き上げ、深刻な大気汚染抑制に繋げようとしているとのこと。
 中国のシェールガスは水がない、僻地にしか存在しない、地層が深いと云う三重苦で開発は40〜50年先で大慶原油や勝利油田と共に戦略的地下備蓄と考えられているとのこと。
 再生可能エネルギーには熱心で、風力発電、水力発電(三峡ダムは世界No.1)、太陽光発電設備容量および電気自動車台数は何れも世界No.1で、ソーラーパネル機器は世界の18%を占めている。3月にアモイに行ったら乗合自動車は多くが電気自動車で、天然ガスプラスハイブリッド車も目立ったとのこと。
 原発については25基が稼働中、27基が建設中で中国の強みは地震や津波が無く、過疎地が多く立地には有利とのこと。講師がすごいと感じたのは東日本大震災の後、即審査を止め3ヶ月後に審査を再開し、建設を再開したことで、内陸の原発許認可・審査も進んでいて、電気自動車の普及と絡んで電力は原子力で賄い、戦争に使える石油は軍事面でも温存しておく構想と考えられるとのこと。
 環境汚染については水汚染、大気汚染、土壌汚染と食品安全問題、水資源とも最低レベルで、北京に住んでいて昨年の5月までは黄河とその下の水を飲んでいたが、5月からは揚子江の水に代わり、沿海地域では海水淡水化事業も積極的に進められているとのこと。
 北京の大気汚染については、今年は風が強く比較的良好だったものの煙草の煙の中にいるような日もあったが、マスコミはその日だけを取り上げて報道、日本も四日市、尼崎、川崎と経験しいつか来た道と同様の世界ではとコメントされていた。
 エネルギー・環境問題の最後に、石炭が中国の一次エネルギーの70%を占めているがこれを減らすことによりPM2.5や大気汚染問題を解決すべく、家庭用石炭もかなり減らしても老朽石炭火力が広い国土の内陸部にあり送電距離の問題もあり中々閉鎖できない事実を説明された。

 中国を理解するために「人類の知恵は中華の知恵」について、ホモサピエンスのGreat Journeyから「人類は旅することで賢くなる」「旅した先に良地」があって「3人寄れば文殊の知恵」で6大文明(日本では4大文明)が育ったこと、その中で同じ民族が同じ言葉を使って存在しているのは黄河文明のみ、その知恵の積み重ねが中華5000年の中華文明、
中華文明の欠点は積み重ねだけ(漢方医学)、漢学という伝統の知恵、仁義礼智信(儒教)の国、中国の小人と大人、三十六計(騙す技術=小人)と孫氏の兵法(経済に如何に損失を与えずに戦いに勝つか!戦争するな!)、古い知識・四書五経を中心とした単なる記憶詰込みなどと批判されながらも1300年も継続した科挙試験(官僚登用試験→功名利禄)、漢字文化圏などについて中国での体験を交えて解説して頂いた。
 最後に海野恵一氏のブログから「ジオポリティックス」の10箇条を引用されて予定時間を大幅に超過して今回のご講演をまとめられた。

Q1:中国は減速経済に入ったと言われているが正しいか?
 A:日本のマスコミが減速と強調するが世界第2位のGDPの国が6.5%伸びていて3年前に8%伸びていた時の増えた分と今の6.5%の増えた絶対値を比べると決して少なくないと考え、減速をあまり強調すべきでない。
Q2:台湾が蔡総統になって今後、台湾とどうなるのか?
 A:中国としては非常に気に入らない。前回の陳水扁さんの時は台湾の沖合に軍艦を持って行って反発を買った。一昨年台湾に行ったが、蔡さんは人気があり非常にマイルドな方で、現実路線(現状維持)で行くと思う。蔡さんも中国人も陰徳(大人)と陽徳(小人)をキチンと使い分ける。
Q3:一人っ子政策がダメになってたくさん作って良くなったがどう思われるか?
 A:一人っ子政策でかなり歪な人口ピラミッドになっているがハードランディングも可能と思う。不味かった点は、インテリ層が一人っ子で農村では人手が欲しく闇っ子が多いが、インテリ層=大人(たいじん)層が衰退するわけではなく結果としては失点にはならないと思う。
コメント:日本で26年生活している中国人で上海と仕事で行ったり来たりしているが、バランスの良いお話しを聴けて感謝します。日本と中国は発展の段階が違うと感じている。

 セミナー後の反響としては、日ごろ聞きたいと思っていた中国の実態に肉薄したお話しで知的好奇心を満たして頂いた、マスコミの勉強不足を現地での生活実感を元にシッカリ指摘して頂いた、目から鱗の布施歴史観と中国論を聞かせて頂いて充実した半日を過ごさせて頂いたなどポジティブなコメントを頂きました。布施先生、本当にありがとうございました。
以上
講演資料:
「いま、中国で起こっていること」
posted by EVF セミナー at 18:00| Comment(0) | TrackBack(0) | セミナー紹介

2016年04月28日

EVFセミナー報告:COP21・パリ協定を生かし、脱酸素社会を目指すために

EVFセミナー報告
  (演題)COP21・パリ協定を生かし、脱酸素社会を目指すために

EVFセミナー概要報告 文責:山田 和彦

開催日時:2016年4月28日(木)15:30〜17:30
場所:港区田町 新現役ネット会議室
講師:WWFジャパン(World Wide Fund for Nature Japan 、公益財団法人世界自然保護基金ジャパン)自然保護室 気候変動・エネルギーグループリーダー
   山岸 尚之 様

セミナー概要報告
 今回講師をお願いした山岸様は、WWFジャパンにおいて10年以上にわたり気候変動担当オフィサーとして、政策提言・キャンペーン活動に携わるほか、国連会議での情報収集・ロビー活動に携わってこられました。
 2015年11月から12月にかけてフランス・パリで開催されたCOP21においても実際に参加してこられました。
 今回のセミナーでは、COP21パリ協定が成立したことの意義についてお話しいただくとともに、現場に立ち会った者だからこそ感じることのできる“世界の環境に対する熱気”についても報告いただくことができました。
sem04281.jpg

1. パリ協定って?

・196か国の多国間交渉で、例えてみると、複雑な連立方程式を解くような交渉であった。
・パリ協定が合意に至った要因としては、
1) 議長国であったフランスの巧みな采配
2) 「先進国」と「途上国」の対立を超えた歩み寄り
3) 「グローバルな合意」を求める機運
が大きかったと思う。
・合意されたパリ協定のポイントとしては、
1) 2度未満:世界の平均気温上昇を産業革命前と比較して、2度未満に抑えることが目標として掲げられたこと(1.5度以内に抑えることの必要性にも言及)
2) 長期目標:今世紀後半に、世界全体の温室効果ガス排出量を、吸収量と均衡させる(実質ゼロにする)
3) 5年ごとの見直し:各国が5年ごとに目標を見直すという仕組みを組み入れたことで、現状では達成可能となっていない「2度未満」達成への方策を組み込んだこと
があげられる。
また、国別目標を達成するための資金、技術、キャパシティ・ビルディング(人材育成等)などについても言及された。

2. 日本は?

・日本の現在の温室効果ガス排出量の削減目標は、
1) 2020年までに2005年比で3.8%削減
2) 2030年までに2013年比で26%削減
3) 2050年までに80%削減
・しかし、欧州系の複数の研究機関による合同評価では、日本の削減目標は「不十分」という評価にとどまっている。
・ここ23年間で石炭火力による発電量が3.7倍に増えており、そのため、CO2の排出量も2.8倍に拡大している。これに加えて、新たな石炭火発の増設計画が乱立しており、このままでは、「不十分」とされた目標の達成すら危うい。
・パリ協定成立により日本は、(1)基本法制定/法改正、(2)26%削減目標を超えうる国内対策の整備、(3)早期批准、(4)2030年目標を見直し、2019年に再提出、(5)2050年までの長期計画策定、を求められている。
sem04282.jpg

質疑
Q. パリ協定では目標の達成は義務ではない、ということになっている。こういう縛りのないやり方でうまくいくと考えるのは、楽天的すぎるのではないか?
A. 確かに、各国の目標値合計では、必要な削減量に足りないのが現状だ。なのに合意した。しかしこれは、5年ごとの見直しの中で、むしろ目標値を高めていくことを目的としたためである。
Q. 今世紀後半にCO2の排出量をマイナスにするということは、具体的にどういうことを想定しているのか?
A. バイオマス発電由来のCO2を地中に埋めることになれば、CO2排出量はマイナスになる。
Q. パリ協定での中国などの評価は?
A. 政治的で難しいところである。ただし、アメリカと中国は、COP21の1年前に目標値を発表していて用意周到だった。たとえ不十分な目標であったとしても、1年前からきちんと発表されると批判はしにくい。中国の「1次エネルギーの20%を非化石に」という目標も確かに不十分だが、2018・19年の見直しが大事だと考える。
Q. 日本の評価が低いのは努力を怠っていたのか、それとも政府の危機感がないためなのか?
A. 産業界の事情を慮ってみれば、日本の景気が悪く、設備投資が弱まっている間に、他国に追いつかれ、一部は追い抜かれたということではないかと思う。

講演資料:
「2016年4月28日Cop21」
posted by EVF セミナー at 18:00| Comment(0) | TrackBack(0) | セミナー紹介

2016年02月19日

EVFセミナー報告:総会記念講演会「我が国が進める小型超音速機の開発と世界展開」

EVFセミナー総会記念講演会
「我が国が進める小型超音速機の開発と世界展開」

                   EVFセミナー概要報告 文責:磯野 克之


開催日 : 2016年2月19日(金) 15:30〜17:30会場  : 国際協力機構市ヶ谷ビル(JICA市ヶ谷ビル)201AB会議室
講師  : 坂田 公夫様
      (株)超音速機事業企画  代表取締役社長
      SKYエアロスペース研究所 所長
      航空総合技術政策フォーラム 代表

    (講師略歴)
      1972年 上智大学大学院卒業  理工学修士
       同年  科学技術庁(現文部科学省)航空宇宙技術研究所(NAL)入所
      1980年 米国スタンフォード大学 研究員
      1984年 科学技術庁(現文部科学省)宇宙企画課 課長補佐
      1989年 同庁原動機部 原動機空力研究室長
      1998年 次世代超音速機プロジェクトセンター長
      2005年 JAXA理事、総合技術研究本部長兼航空プログラムグループリーダ
      2012年 SKYエアロスペース研究所 設立 所長就任
      2014年 株式会社超音速機事業企画 社長就任
      
(要約)
DSCN4655-2.jpg
1.2015年は我が国航空産業にとって、MRJの初飛行やHondaJetの販売開始、国内の体制として我が国航空産業発展に不可欠な「航空基本法」に関連する議論も出始め、記念すべき年となった。

2. また、JAXA超音速試験機では、D-SEND(低ソニックブーム設計概念実証)プロジェクトの飛行試験(D-SEND 2)により「低ソニックブーム技術」の実証に成功した。
 (*ソニックブーム:超音速飛行時の瞬間的爆音)

3.我が国の航空機産業の世界シェア―(売上高)は、僅か2.7%であるが、将来的には20%程度まで伸ばしたい。このための国の政策の果たすべき役割は大きい。

4.我が国における航空産業は、残された最大の産業領域である。現在の自動車産業に次ぐ我が国の成長のけん引役ともなる重要産業であり、民間の航空機開発・製造体制確立と強固な中小企業クラスター体制づくりが有効である。いまこそ、その絶好の機会である。

5. これからの航空に大きなインパクトを与える最大の挑戦である超音速機の開発は、我が国の格好のテーマであり、小型機から着手することで効果的なプログラムとなる。
DSCN4656-2.jpg

(概要報告)
1. 2015年我が国航空にとって記念すべき年
(1)MRJ初飛行
  ・航続距離は、アメリカ、欧州内を飛行するには適している。
  ・技術的レベルは高い。
  ・販売面では、世界需要が拡大しており、可能性は高い。
  ・国の責任で発行する型式証明は、世界販売の必要条件であり、官民での能力向上が必須である。
(2)HondaJet販売開始
  ・Jetエンジンから開発し、民間だけの力で誕生させた。
  ・速度はマッハ0.72と速く、航続距離(2,185km)もあり、着陸距離(914)は短い。
  ・主翼上面にエンジンを配置し、性能UP、客室と荷物室などの内部スペースの拡大を実現し、商品価値が高い。
(3)JAXA D-SEND-2 実証成功
  ・超音速機実現の最大の課題である「低ソニックブーム」の実現にむけ、飛行試験による技術実証に成功した。
DSCN4660-2.jpg
2. 航空産業に課せられた期待と政策
(1)我が国の航空産業は、世界シェアの僅か2.7%と低く、産業構造変革による成長路線の切り札となりうる。(世界シェア20%に)
(2)そのためには、国の産業政策の出番であり、現在の関係4省庁の連携のみならず、国としての研究、技術基盤強化、完成機開発支援、人材育成、中小企業振興など総合的政策が必要となる。
(3)自動車産業にならう基幹産業の一角として航空機産業振興の政策づくりは与党内では進められているが、より幅広い議論と活動が必要となる。
   
3. 「航空基本法」草案の提案
  我が国の航空産業を質・量共に世界的なものに育てるためには、航空産業ビジョンを基に、省庁間の壁を取り去った国としての総合推進が必須である。

4. 諸外国の航空産業政策
2000年初頭から、米国、欧州、中国、イギリスなど、ほとんどの航空産業で先行する各国・地域で、目標とすべきビジョンをもとに強力な政策を出動している。


5. 航空産業クラスターと中小企業の振興
(1)航空機産業のインテグレータの確立とプロジェクトマネッジメントの人材育成。
(2)航空産業関連企業は多種・多様で、部品数は300万点に達し(自動車の約百倍)、多様な技術、素材、製造手法などが必要。インテグレータをトップにサブシステム産業、部品・素材産業、加工、組み立て産業など極めて裾野が広い。
(3)そのため、幅広い業種の中小企業参入による航空クラスターを構築することで、産業および技術の大きな波及効果が期待でき、我が国工業力全体の向上に寄与する。
(4)産業クラスターには、多様な中小企業の集結に加え、研究開発、人材育成、他クラスターとの連携、そして国際活動を含む総合的なマネージメントが必要である。

CIMG4061-2.jpg
6. 超音速機の技術と構想
(1)2003年にコンコルドの飛行は終了した。安全性、経済性、環境性、運用性の点で不十分な点があったため。
(2)超音速機が再び登場するには、ソニックブーム、燃費、排気騒音が課題→小型から開発着手が妥当。
(3)米Aerion社の超音速ビジネスジェット機SSBJ(AS2)は20機受注し、2025年ころの納入を予定している。
(4)JAXAの超音速機技術の研究開発計画では、NEXST計画(1997-2007)、静粛超音速機計画(2007-2016)があり、昨年D-SEND2飛行試験により「低ソニックブーム技術」の実証に成功し、かなりの研究成果が得られている。
(5)我が国の小型超音速機開発の構想
  ・アジア域を1日で往復が可能となる
  ・マッハ1.5〜1.6、席数8〜10席、航続距離4,000〜6,000km
(6)超音速機実現までには、基礎研究、実証プロ、製品化、市場投入、市場生存の過程があり、研究開発から実用化、さらにビジネス競争勝ち抜き(死の谷とダーウインの海)には関係者総力の連携が必要である。
(7)(株)超音速機事業企画は、超音速機・小型機の開発事業企画会社として、超音速機の開発事業はじめ航空機の研究・開発に関する産学官総合事業の推進・企画、関連する政策研究などを行う会社として活動している。

配布資料:
「講演資料」
posted by EVF セミナー at 18:00| Comment(0) | TrackBack(0) | セミナー紹介

2016年01月28日

EVFセミナー「『国土のグランドデザイン2050』を踏まえた『国土形成計画(全国計画)』〜国土計画が描く未来像〜」

EVFセミナー概要報告 文責:佐藤 孝靖


開催日 : 2016年1月28日(木) 15:30?17:30
会場  : 国際協力機構市ヶ谷ビル(JICA市ヶ谷ビル)201AB会議室
講師  : 国土交通省 国土政策局 総合計画課長 白石 秀俊 様

講師略歴:
1988年4月京都大学文学部卒業、国土庁入庁、国土交通省都市・地域整備局地方振興課半島振興室長
同省 総合政策局 政策課政策企画官、人事院人材局交流派遣専門員(みずほ信託銀行不動産コンサルティング部参事役)、
国土交通省 東北地方整備局 建政部長、同省 国土政策局 広域地方政策課長、2014年7月同省 国土政策局 総合計画課長
P1030936-2.jpg
演題  : 「国土のグランドデザイン2050」を踏まえた「国土形成計画(全国計画)」
       〜国土計画が描く未来像〜
要約  :最初の国土計画は昭和37年閣議決定の全国総合開発計画であり、その基本目標は地域間の均衡ある発展だった。
バブル崩壊後の平成10年には、それまでの国土計画とやや趣を異にした“21世紀の国土のグランドデザイン”が閣議決定され、平成20年に国土形成計画、昨年8月に「第二次国土形成計画」へと装いを新たにした計画へと発展してきた。この最新の国土形成計画の概要が今回のテーマである。

この計画の課題認識は、人口減少の問題と、今やいつ起きてもおかしくない巨大災害の二つである。
人口減少社会において、安全で豊かな生活を支える国土、持続的な経済成長を支える国土を実現することを目標に定めた。そのための基本構想としては“対流促進型国土の形成”がキーワードに掲げられた。また、国土構造、地域構造としてコンパクトにまとまった地域をネットワークで結ぶことを提示した。地域の多様な個性が「対流」の原動力となるため、地域の個性がますます重要となる。豊かさとな何か、それは新しい文化(暮らし)の創造が不可欠との価値観の大転換を提唱して締めくくられた。
最後に「日本未来デザインコンテスト〜「対流促進型国土」の形成に向けて〜」の公募開始についてが、ペーパー配布の上、積極的な応募の勧誘がなされた。
DSCN4620-2.jpg
日本未来コンテスト: http://www.mlit.go.jp/report/press/kokudoseisaku03_hh_000083.html

講演概要:

1、国土計画について

国土計画とは国土に関する長期的(概ね10年)、総合的(各役所の施策を総合)、空間的(配置計画)計画のことである。これまでの変遷は昭和37年閣議決定の全国総合開発計画(略称 一全総。基本目標:地域間の均衡ある発展)を最初の計画として、昭和44年の新全総、昭和52年の三全総、平成62年の四全総(目標:多極分散型国土の構築)と計画が続いてきた。
バブル崩壊後の平成10年には、それまでの国土計画とやや趣を異にした“21世紀の国土のグランドデザイン”が閣議決定され、平成20年に国土形成計画、昨年8月に「第二次国土形成計画」へと装いを新たにした計画へと発展してきた。この最新の国土形成計画の基本目標としては、“対流促進型国土の形成”が掲げられたのである。

2、課題認識

人口減少と巨大災害の切迫の二つを課題認識としてあげ、特に人口減少について出生率の観点、地域的偏在の面、ライフステージで見た人口移動、都市圏と地方圏における人口移動など多方面からの考察がなされた。これら二つの対応を誤れば国家存亡にもかかわるおそれがあるとの講師の指摘に、一同思わず姿勢を正して聞き入った次第である。

3、計画が描く未来

人口減少社会において、安全で豊かな生活を支える国土を目指し、持続的な経済成長を支える国土を実現することを目標に定めた。そのための基本構想としては「対流」という意外性のある言葉が出現し、“対流促進型国土の形成”がキーワードに掲げられた。また、国土構造、地域構造としてコンパクトにまとまった地域をネットワークで結ぶことを提示した。地域の多様な個性が「対流」の原動力となるため、地域の個性がますます重要となる。豊かさとは何か、それは新しい文化(暮らし)の創造が不可欠との、価値観の大転換を提唱して締めくくられた。途中、地域の個性の具体例として、内閣府の環境モデル都市で、バイオマス産業都市でもある岡山県の西粟倉村の名前が紹介された。

CIMG4022-2.jpg
質疑では、首都機能移転は今日的テーマか、地方活性化として過疎の離れ島に中国人休暇村を建設するアイデア、中小企業、農業を活性化する産業構造論的な観点の質問が活発になされ、その全てに講師から実践的で的確な示唆に富む回答がなされ、古参の会員からは質問の最後に「こんなに気迫あふれるお話が聞けて本日は本当に良かった!」との感謝の言葉があった。講演会のあとの懇親会も大いに盛り上がり、ここでも講師は質問攻めで、殆ど料理に箸をつけられずでした。白石課長さん、本当にありがとうございました。

配布資料:
「国土のグランドデザイン2050」を踏まえた「国土形成計画(全国計画)」〜国土計画が描く未来像〜

posted by EVF セミナー at 18:00| Comment(0) | TrackBack(0) | セミナー紹介

2015年12月15日

EVFセミナー:「有限時代へのパラダイムシフト」

EVFセミナー概要報告文責:(小栗武治)

開催日 : 2015年12月15日(木) 15:30〜17:30
会場  : 新現役ネット A会議室
講師  : 東大名誉教授 鈴木 基之 様 
略歴  :
 カリフォルニア大学にて研究生活を送り、帰国後、東京大学生産技術研究所で環境化学工学の研究室を主宰(のちに所長)。以降、学問領域を超えて総合的な環境問題解決を目指す活動を志す。国際連合大学副学長を経て特別学術顧問、放送大学教授、東京工業大学監事(非常勤)、環境省中央環境審議会会長を歴任。

演題  : 「有限時代へのパラダイムシフト」

要約  :  日本では高度経済成長期にGNPの伸びに比較し消費カロリーが過大な時期が続いた。この時期は4大公害に象徴されるが、上水道の整備などは進み、70年以降は環境汚染対策が順次行われた。これらの進展に従って消化器系感染症は激減し、水環境の状況も改善された。
 しかし、ある地域の生産活動を支えるために消費されている土地・水域面積の合計(エコロジカル・フットプリント)は、地域が供給できる面積を大幅に超過する事態を迎えている。
 今後はこのような有限な環境に調和できる人間活動を構築する必要がある。地球上に蔓延してしまった化学的に活性な窒素の管理も、その一つである。既に拡大しすぎた人間活動はこのままでは破局に向かう。今後有限時代の平衡安定な着地点に向けて人間活動をソフトランディングさせて行かねばならない。

講演概要:
1.地球の容量限界と人間活動の拡大
  日本での一人当たりのGNPと消費カロリーの推移を見ると、高度経済成長の時代に当たる1960年ごろから1970年にかけて一人あたりのGNPと消費カロリーの伸びは大きく、いわゆる高度経済成長時代を経験した。この間の環境を無視した経済一辺倒の人間活動の結果として、4大公害なども経験することとなった。これら局所的な環境問題に対して、70年代に対策が講じられることとなり、次いで80年代には、都市における環境問題への対応、90年代には地球環境問題への取り組みが始まるなど、拡大する環境問題への対策が試みられることとなる。
fig1.jpg
 この間、1960年から1975年に掛けて、経済成長の恩恵を受け、上水道が整備され、浄化槽などの普及に伴い、赤痢、パラチフスなどの消化器系感染症が激減し、また1970年からは水質汚濁防止法などの整備により、有害物質による環境汚染に対する対策が実施され、水域の重金属や化学物質などに関する環境基準の達成率が改善されるなど、成功神話が蓄積される面もあった。一面において、水道普及や、遅れて設置されつつある下水道など、大規模なインフラ整備が行われた都市部においては、それらの設備が40〜50年という寿命を迎え、今後はそのメインテナンスに膨大な費用が必要となり、大規模集中型の考え方に反省を求められる状況に至っているとも考えられるようになっている。
 我が国と関連が深いアジアの新興国、途上国においては、全体としての経済成長は著しいが、それぞれの国の状況は多様であり、成長に伴って産業公害、都市環境、地球環境の諸問題が同時に起こっているのが実際の状況であり、いわば複合型環境問題を抱えた状況にあるといってもよく、今後の協力関係を構築していく上で難しい問題を解いていく必要がある。
2.有限時代
 地球上の人口増加、一人あたりのGNPの増加に象徴される、人間活動の拡大により、その影響は地球の提供できる環境容量を超える事態に達してしまっている。たとえば、ある特定の地域(地球全体、国、自治体などの単位)での人間活動が消費している土地・水域面積“の合計(エコロジカル・フットプリント)その地域の提供できる容量(バイオキャパシティー)を超えてしまうと、その人間活動は最早持続可能とは言えない。すなわち、人間活動は地球の有限性を考え、その限界を意識してなされなければならないということが重要である。地球全体では1970年頃にエコロジカル・フットプリントは、地球の容量を超えてしまったと試算されているが、我々はまだそれを意識した行動を始めていない。
fig2.jpg
 地球の有限性の下では、限られた容量・有限な資源をめぐって拡大する人間活動を如何に抑制できるか、が重要となり、最早、地球上には新天地などは存在しないため、いかに有限な空間内での多様な価値観を持つ人々の共存を図るか、逃げ場のないことから生じる閉塞感から生じる社会の崩壊などへの対応などが今後重要である。
地球惑星の限界については、色々な項目に関する評価もなされており、地球温暖化などと並んで、人間活動が排出する過剰な窒素化合物が自然界の窒素の循環、収支バランスを崩していることも大きな課題として指摘される。人類が食糧危機を乗り切るために工業的に窒素を固定し、窒素肥料を大量に生産始めたことが、地球の健全な生態系に大きな影響を与えるようになっているのである。
fig3.jpg
fig4.jpg
3.持続可能な人間活動をどう考えるか
 国連では、持続可能な社會に向けた取り組みを行っている。2015年を目標年にした8項目のミレニアム開発目標(MDG)が設定され、2015年には2030年を目標に17項目にわたる持続可能な開発ゴール(SDG)と、その中に総計169にわたるターゲットが国連特別サミット(9月)において採択されている。需要な事柄が網羅されている感があるが、これを、具体的にどう進めるのかが今後の課題である。
fig5.jpg
4.パラダイムの転換へ
 今後は高度成長、イケイケどんどんはあり得ない。既に増殖してしまった人口・経済などはこのままでは破局に向かうであろう。今後有限時代の平衡安定な着地点を設定し、そこに向けて人口・経済をソフトランディングさせて行かねばならない。そのためには資源・環境容量の有限性を念頭に置いた許容される「物質資源の使用量」、「エネルギーの使用量」、「環境負荷」などの検討が大切であり、持続可能な人間社会のビジョンの確立が重要である。つまり従来の「成長パラダイム」から「持続可能性パラダイム」への転換が必要で、人間が生かされている自然の範囲内で活動するための着地点を考えなくてはならない。それには長期的・総合的視野に立った思い切った施策が必要である。「太陽エネルギー社会の構築」、「持続可能な地域物質循環システムの構築」、「豊かな自然と共生する地域の活性化」、が鍵となり、日本が「持続可能な社會のモデルを先進的に構築する」ことが重要と思う。

質疑応答:
 講演終了後、聴講者から自己の反省を含めた複数の感想、今後の地球全体人口の予測に関 する質問、今後のエネルギー源の構成の在り方、経済面で従来の利己主義から利他主義への転換の必要性、等々数多くの意見や質問が出され、活発な論議が交わされた。
                                      以上
posted by EVF セミナー at 18:15| Comment(0) | TrackBack(0) | セミナー紹介

2015年11月16日

EVF第100回記念セミナー「生を全うするための「平穏死」のすすめ」

EVF第100回記念セミナー     

演題:生を全うするための「平穏死」のすすめ
講師:世田谷区立特別養護老人ホーム 芦花ホーム
   常勤医師 石飛幸三先生
日時:2015年11月16日(月)
場所:きゅりあん6階 大会議室
参加:93名

要旨
石飛幸三先生は世田谷区の特別養護老人ホーム「芦花ホーム」の常勤医師として多くの死を見つめてこられ、終末期医療を見直し、ヒトの生きる力を信頼して平穏な死に向かう患者の邪魔をせず、自然の摂理に従ってやさしく終末を見守ろうではないかと提案しておられます。

老衰は生身の人間として生きてきて避けることのできない生体の現象であり自然の摂理である。
胃瘻は本来、先天性食道狭窄の新生児が成長して食道形成術を受けるまでの補助手段であった。それが人生終末期に、老人が食べものを誤嚥して肺炎を起こすことの予防手段として使われた。しかし胃瘻では、常に変化する体にとっての食事の必要量への対応が難しく、過度に補給すると胃の内容は逆流して食道から肺に入り肺炎を起こす危険性もあり、時には口にまで戻り窒息死を招くこともある。

ところで胃瘻をつけたまま長い間寝たきりで、言葉も発せられず、常には口を開けて寝るばかりだったご老人の話。ある時介護士がこの患者の指が僅かに動いているのに気がつき、指差す方向を見ると棚に缶ビールが見えた。お父さんの好きだったビールを娘さんがベットの近くに置いていたのだという。
介護師や看護師から相談を受けた先生は決断した。「何かあったらドクターストップをかければいい。ご家族のご了解をとってビールを飲ませよう。」
老人は初め医師の手を借りながらなんと半分ほどビールを飲み、しげしげと缶を見つめなおし、次に残りのビールを飲み干してしまったという。今度は、自分の力だけで・・
寝たきりだった老人の表情は、見た目はあまり変わることはなかったが本人は久しぶりのビールの味を堪能したに違いない。
長い間、機能を使うことがなかった喉が“異物”を通した。人の身体は本来の生きる力を発揮して“異物”を通した。娘さんはビール好きな父親がもう一度ビールを飲めたことを心から喜んだ。

人は皆それぞれの社会の中で役割を持っている。
社会で自分の果たすべき役割を終えた人の最後を、自然の摂理に逆らって本人を苦しめるだけの医療になっていないか自戒して、静かに看取ってあげたほうがその人のためにもなるし、家族の心を支えることになる。
目的のないまま延命を続けると、医療費への更なる負担増となって社会全体がその重さに耐えられなくなるのではないか。

明治時代に作られ、今の時代にそぐわない刑法に囚われる意味はない。
これは単に医師だけの問題ではなく、家族や施設で働く人々も、最後を迎える人の平穏死を考えようではないかと、非常に説得力のある内容でした。

会員の一人からのメールを紹介します。
奥様は9月20日に芦花ホームを取り上げて放映したNHKスペシャルを一緒に見ようと声をかけたが、“辛気臭い番組”とテレビの前にはお座りにならなかった由。ところがセミナーに足を運び、石飛先生の講演を聴いて「いいお話でした」と神妙な面持ちでいらしたとのことです。
                           文責 工藤宣雄 
heion1.jpg

配布資料:
「講演資料」

以上
posted by EVF セミナー at 20:00| Comment(0) | TrackBack(0) | セミナー紹介

2015年10月22日

EVFセミナー「日本の水資源と国際的な水問題」

演題:日本の水資源と国際的な水問題
講師:国土交通省水管理・国土保全局 水資源部 水資源計画課 総合水資源管理戦略室課長補佐 佐渡周子様
日時:2015年10月22日(木)
場所:新現役ネット事務局会議室
参加:36名
mizu1.jpg

要約:
日本の年間水使用量は809億㎥(2011年)で水資源賦存量4,100億㎥の約20%。1990年代をピークに緩やかに減少している。日本の年平均降水量(約1,700mm)は世界の年平均降水量の約2倍だが、日本の一人あたり年降水総量(約5,000 ㎥/人・年)は世界の一人あたり年降水総量の3分の1程度である。高度経済成長期以降、地下水の過剰取水による地盤沈下、水質汚染等、が深刻化したが、様々な法整備や取組みの実施により沈静化している。都市への人口集中、気候変動等の要因により水循環が変化しており、健全な水循環を維持又は回復するための施策を、総合的かつ一体的に推進するため、水循環基本法を制定(平成26年4月2日公布)し、水循環基本計画を閣議決定(平成27年7月10日)した。
世界に目を向けると、利用可能な水の量が1,700 ㎥/人・年を下回る場合、「水ストレス下にある状態」とされており、2050年には全世界人口の40%以上(約40億人)が、水ストレス下にある状態になることが想定されている。水紛争、渇水被害、洪水被害も多く発生している。国連水と衛生に関する諮問委員会、世界水フォーラム、アジア太平洋水サミットなどの国際会議等の場で水に関する議論が進んでおり、2015年9月の国連総会で「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)」が決議され、ゴールの一つとして「すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する」が設定された。日本は、水と衛生分野におけるODA実績で、世界第1位の援助国であり、世界の水問題解決のために貢献している。

講演概要:
1. 日本の水資源
1)日本の水資源の現状
水資源賦存量は4,100億㎥ (降水量6,400億㎥の約64%)でその内約20%を使用している。日本の年平均降水量(約1,700mm)は世界の年平均降水量(約800mm)の約2倍だが、日本の一人あたり年降水総量(約5,000 ㎥/人・年)は世界の一人あたり年降水総量(約16,000㎥/人・年)の3分の1程度である。
生活用水使用量は、生活水準の向上により、1990年頃まで急激に増加したが、日本全国での生活用水使用量及び、一人あたり平均使用量は2000年頃をピークに減少傾向。生活用水の一人一日平均使用量は289リットル/人・日(2011年、有効水量ベース)である。
工業用水使用量は高度経済成長に伴い、1980年頃まで増加したが、その後は減少。回収水の利用が進んでいる。
農業用水使用量は約544億㎥ (2011年、推計)農地用水の約94%を占める水田灌漑用水は近年減少傾向にある。
2)日本の水資源政策
日本の水資源政策・開発の歴史は人口の増加にともなう農業・産業の発展と平行して進行。
戦後は、復興のため国土の整備開発が進められ、緊急の課題に対応するため土地改良法(1949)、電源開発促進法(1952)、水道法(1957)、工業用水道事業法(1958)、国土総合開発法(1950)、特定多目的ダム法(1957)、水資源開発促進法(1961)等、様々な法整備、計画策定、実施を推進した。
戦後、地下水の過剰な取水により、全国各地で地盤沈下が進行したり、生活排水、工業廃水の河川への流入により深刻な水質汚染が発生したが、様々な法整備や取り組みにより改善してきた。(下図は代表的地域の地盤沈下の経年変化)
mizu2.jpg
3)新しい水資源政策
都市への人口集中、気候変動等の要因により水循環が変化し、渇水、洪水、水質汚濁、生態系への様々な課題への対応、は引き続き存在している。健全な水循環を維持又は回復するための施策を、総合的かつ一体的に推進することが必要となるため、「水循環基本法」を制定した。(平成26年4月2日公布、7月1日施行)。主なポイントは次のとおりである。
@水循環に関する施策を推進するため、水循環政策本部を設置
A水循環施策の実施にあたり基本理念を明確化
B国、地方公共団体、事業者、国民といった水循環関係者の責務を明確化
C水循環基本計画の策定
D水循環施策推進のための基本的施策を明確化

水循環基本法に基づく水循環基本計画を平成27年7月10日閣議決定した。
施策として、流域単位で水循環計画を新たに策定すること等を明記している。(下図は水循環施策のイメージ)
mizu3.jpg
2.世界の水資源・国際的な水問題
1)世界の水資源
地球全体の水(およそ14億k㎥ )のうち、比較的使いやすい河川・湖沼などの淡水は、わずか0.01%(約0.001億k㎥ )
農業、工業、エネルギー及び環境に要する水資源量は、一般的に1,700 ㎥ /人・年とされ、一人あたりの利用可能な水の量が1,700 ㎥ を下回る場合、「水ストレス下にある状態」とされている。2050年には製造業、生活用水等の需要増により、2000年の需要量より55%増加することが見込まれ、全世界人口の40%以上(約40億人)が、水ストレス下にある状態になることが想定されている。(下図は2011年の1人あたり水資源量)
mizu4.jpg

2)国際的な水問題
世界では様々な要因により水紛争が起きている。水紛争の主な要因は、水資源配分の問題(湖や河川の上流地域での過剰取水)、水質汚濁の問題(上流地域での汚染物質排出など) 、水の所有権の問題等が挙げられる。
水に関する国際的な取り組みとして、国連水と衛生に関する諮問委員会(2004〜)、世界水フォーラム(1997〜)、アジア太平洋水サミット(2006〜)など多くの国際会議等の場で水についての議論がなされている。
2015年以降の国連開発目標として、「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)」に水と衛生の目標がゴール6として設定されている。
ゴール6 : すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する

3)水と衛生分野における日本の支援
日本は、水と衛生分野におけるODA実績で、世界第1位の援助国。 援助の内訳は、上水−下水の大規模システム及び基本的な水供給・衛生設備に関する援助が全体の約8割と大半を占めており、日本の水インフラ技術が世界に大きく貢献している。
NARBOを通じた、総合水資源管理促進のための支援(ワークショップ、技術協力等)やUNESCOにおけるIWRMガイドライン作成支援などを通じ、統合水資源管理の普及を推進している。
*<NARBO>Network of Asian River Basin Organization

4)水インフラの国際展開
海外における水インフラ市場は、2025年には約87兆円規模の市場に成長する見通しであり、我が国の技術・知見を活用した水インフラ技術の戦略的展開を図っている。


以上 文責:深井吉男
posted by EVF セミナー at 18:57| Comment(0) | TrackBack(0) | セミナー紹介

2015年09月17日

EVFセミナー「生態系/生物多様性はどうなって行くのか?」

演題:生態系/生物多様性はどうなって行くのか?
講師:東洋大学国際地域学部国際観光学科元教授 薄木 三生 様
日時:2015年9月17日(木)
場所:新現役ネット事務局会議室
参加:33名

要約:
地球生態系の健全さに関する「国連ミレニアム生態系評価」の要点が、最近50年間の生態系変化、生態系変化による得失、次の50年の生態系見通し、生態系劣化を反転させ得る有望な対応、の評価結果と共に紹介された。加えて、具体的環境教育が必要な分野の事例および技術と経済効率偏重の裏支えを強要され過ぎた現代科学への反省例が紹介された。
IMG_1604.jpg
講演概要:
1. 国連ミレニアム生態系評価(以下MA)の内容の紹介
1)MAは地球生態系の健全さに関する最大規模の評価で、2000年の国連事務総長要請に応じ、2千人を超える専門家と国連機関、条約事務局、産業界、諸NGOが参画して実施。気温上昇を19世紀工業化前比で2℃未満とする必要性はMAが指摘し、IPCC最新報告書にも反映されている。焦点を生態系機能に当て、人々が生態系から得る便益(サービス)を論じている。
基盤となるサービスは、栄養分の循環、土壌形成、1次生産などで、これらに支えられて以下の3機能が生ずる。この内、GDPに反映される@偏重の傾向がある。
  @ 供給サービス:食料、淡水、木材及び繊維、燃料など
  A 調節サービス:機構調節、洪水制御、疾病制御、水の浄化など
  B 文化的サービス:審美的、精神的、教育的、リクリエーション的など
2)生物多様性の保護は現代科学(技術偏重)での理解を超えるテーマの一つで、科学的に明らかな200万種弱(推計の10%)が、人間行動起因でかつてない速度で絶滅が進行、WRI予測では近年の主に熱帯林減少で全生物種の5〜15%が絶滅する。開発途上地域熱帯林での自然資源勘定の試算研究が試みられているが、政治・財界リーダ達への浸透は至難で、米(欧)、国連の目論見は民族国家主義の開発主権と真っ向から対立している。
3)MAの結果その1;最近50年間における生態系の変化
人間は、過去のどの期間よりも急速かつ広範に生態系を変え、地球上生命の多様性に大規模な不可逆的損失を招いて来た。1960年以降陸域生物が利用可能な窒素は2倍に増加しており、2050年迄に更に65%増えるとの予測もある。同じく燐のフローは3倍になった。CO2は1750年以降の濃度増加の60%が1959年以降に起こった。
IMG_1622.jpg
4)MAの結果その2;生態系変化による得失
 以下の3主要問題は人々が生態系から得る長期的便益(サービス)を減少させている。
  @ 生態系機能の劣化:これによる富の損失は伝統的自然勘定では含まれないので経済勘定に反映されない。従って見かけ上富が増加しても実際には損失を被っている。
  A 非線形変化の可能性の増大:不完全だが確かな証拠がある。例えば北大西洋のタラ漁獲量の1990年代以降の急激な落込みによる漁業の崩壊があげられる。
  B 特定地域(サブ・サハラ・アフリカなど)の人々の貧困の悪化:例えば砂漠化が乾燥地の貧しい人々の生活に悪影響を与えている。
5)MAの結果その3;次の50年における生態系の見通し
 生態系機能の劣化は今世紀前半に相当程度進行しミレニアム開発目標の障害になっている。これに対処するためにMAでは以下の4シナリオをあげている。
  @ 技術庭園:生態系機能の効率的利用を進める技術開発への相当な投資、及び「生態系機能に対する支払い」の広範な利用及び市場メカニズムの確立
  A グローバルな調和:教育・社会基盤への投資と貧困の減少、及び貿易障害と歪曲した補助金の除去
  B 適応モザイク:能動的適応管理の広範な利用、及び教育分野への投資(GDP比13%)
  C 権力による命令:3サービス機能の改善は見込めないと予測
6)MAの結果その4;生態系の劣化を反転させ得る有望な対応
  制度:・生態系管理目標の他部門内及び広範な開発計画枠組み内への統合
     ・政府及び民間部門の透明性及び説明責任の拡大
  経済:・生態系機能の過度の利用を促進する補助金の廃止
     ・生態系機能管理における経済的手法及び市場に基づくアプローチの拡大利用
  技術:・有害な影響なしに穀物生産の増加を可能にする技術の促進
     ・生態系機能を回復させる技術の促進
     ・エネルギー効率性を高め温室効果ガスの排出を減少させる技術の促進
  社会的及び行動的対応分野:
     ・非持続的に管理されている生態系機能の集合的消費を減らす方策
     ・通信と教育
     ・生態系機能に依存するグループの強化
  知識:・資源管理決定における生態系が持つ非市場的価値の取込み
     ・人材的及び制度的能力の向上
増大する需要に合わせながら生態系劣化を反転させる挑戦は、政策と制度の相当な変化を含むいくつかのシナリオの下では可能であるが、そうした変化は大きなものであり、現在は起こっていない。

2. 具体的な環境教育が必要とされる分野の事例の紹介
1)屋久島世界自然遺産
町は山中6カ所の汲取り式トイレ廃棄物の年間人力荷降し費4千万円を一口500円の寄付で賄う積り(登山者8割の寄付で成立)だったが、実際の寄付は1200万円のみだった。 仕方なく2008年屋久島登山有料携帯トイレ(1個500円)の試行・実施を導入した。
2)富士山世界文化遺産
五合目公衆トイレに利用者の善意によるチップ制を導入したが、1人当り30円しか集まらなかった。静岡県政モニターのアンケート調査では、受益者負担が必要:97%、強制有料制度導入賛成:63%、適切な負担額:100〜200円、であった。

3. 技術と経済効率偏重の裏支えを強要され過ぎた現代科学への反省例の紹介
 野家啓一氏著「科学哲学への招待」から以下の内容などが紹介された。
 ・これからはもう少し哲学に立ち返るべし。
 ・科学技術三神話(価値中立神話、安全神話、信頼神話)は砂上の楼閣で崩壊している。
・科学技術倫理のあり方は、信頼性回復、世代間倫理、社会的説明責任、知識の製造物責任の重視にある。
以上 文責:岩崎力
posted by EVF セミナー at 18:03| Comment(0) | TrackBack(0) | セミナー紹介

2015年08月27日

EVFセミナー「気候変動リスクと人類の選択-IPCCの最新報告から-」

EVFセミナー(8/27)の概要報告    (立花 賢一)
 
1)開催日時      平成27年8月27日(木)15:30〜17:30
2)場所        新現役ネット事務局会議室
3)講師        国立環境研究所 地球環境研究センター 気候変動リスク
  評価研究室長 江守正多様
4)講演テーマ    「気候変動リスクと人類の選択〜IPCCの最新報告から〜」 
5)参加者数     35 名
6)セミナー概要報告 
002-2.jpg
国連気候変動枠組条約における国際交渉では、産業化前を基準に世界の平均気温上昇を2℃以内に抑えるという目標が掲げられています。しかし、新しく発表されたIPCCの第 5次評価報告書によれば、この目標を達成するためには、世界の二酸化炭素排出量をできるだけ速やかに減少に転じさせ、今世紀末を目途にゼロに近づけていかねばなりません。この状況に私たちはどう向き合ったらよいのか、リスク管理の観点から、シミュレーション映像などで解析していただき、わかりやすく紹介していただきました。
DSCN4129-2.jpg
地球温暖化のしくみ
地球の温暖化を引き起こす直接の原因となっているのは温室効果ガスで
・温室効果がなかったら −19℃
・温室効果があるので   14℃
・温室効果が高まると   14℃以上になる。
IPCC(気候変動に関する政府間パネル)
第5次評価報告書を一昨年〜昨年に発表。温室効果ガス濃度と世界平均気温・海面水位は20世紀に急激に上昇している
・20世紀半ば以降の世界平均気温上昇の半分以上は、人為起源の要因による可能性が極めて高い(95%以上)
・予測される100年後の気温上昇量は、社会の発展の仕方と対策の大きさに依存し科学的な予測にも幅(不確かさ)がある。
・予測される100年後の海面水位上昇は0.2m〜1.0m
極端現象の21世紀後半のリスク
・寒い日と寒い夜の頻度減少
・暑い日と暑い夜の頻度増加
・高潮の発生が増加
・脅威にさらされているサンゴなどの独特の生態系や地球システムの質的な変化などが考えられる。
気候変動対策の長期目標
メキシコでのCOP16カンクン合意で、産業化以前からの世界平均気温の上昇を2℃以内に収める観点から温室効果ガス排出量の大幅削減の必要性を認識された。
2℃以内目標を達成するには
・排出削減経路として今世紀前半は世界全体の排出量を現状に比べて2050年までに半減程度にする。
・今世紀後半は世界全体の排出量はゼロに近いか、マイナスにする必要がある。・
切り札と考えられるバイオマスは有効か
二酸化炭素を吸収して大気中の二酸化酸素濃度を下げ、放射エネルギーを増やす二酸化炭素除去する方法が考えられるが、次の課題がある。
・バイオマスでのco2回収貯留自体の社会的受容性が未知数である。
・エネルギー作物の大規模栽培は土地を巡って食料生産と競合する。
・新たな土地の開発は炭素放出に伴うとともに、生態系破壊にもつながる。
地球温暖化が最悪のシナリオになった時の最終手段は気候工学か
太陽光を反射させて入るエネルギーを減らし、地球の温度を低下させる太陽放射管理で最も研究が盛んなのが、硫酸の薄いミストのエアロゾルを成層圏に撒く方法がコストパフォーマンス良いとされるが、次の課題がある。
・気温分布、降水分布などに副作用の可能性
・海洋酸性は止められない。
・放射線管理を止めた時の急激な温暖化

おわりに
最新の日本および世界の地球環境問題に取り組みについては、気候変動関連リスクを全体像で捉える必要がある。悪影響、好影響の出方は、国、地域、世代、社会的責任によって異なる。地球温暖化問題の鍵は、豊かさとは何か・正義とは何かそしてどんな社会に生きたいかが必然的にかかわるので、科学だけでなく、社会的判断のための、コスト・リスク・便益・実現可能性を明らかにして行く必要がある。
なお、2020年以降の地球温暖化対策の時期枠組みをめぐる交渉で、50年以降の長期的な温暖化ガス排出削減目標の設定について合意を目指す動きが広がってきた。3か月後に迫ったパリでのCOP21は正念場を迎えている。
<後記>
講演後、30分に渡って、最大排出国中国や第3位のインドなどの協力、化石燃料を大幅に使用できなくなると考えられる300年先の温暖化などについて、熱心な質疑応答が続いた。なお、「切り札バイオマスについて」「気候工学について」の話などは、目から鱗の、大変興味深い講演であった。
posted by EVF セミナー at 19:00| Comment(0) | TrackBack(0) | セミナー紹介

2015年06月25日

EVFセミナー「美しいものを美しく見せるために」

セミナー 「美しいものを美しく見せるために」 報告(文責:岡田康裕)
1)開催日時  平成27年6月25日(木)
2)場所    新現役ネット事務局会議室
3)講師    根津美術館顧問 (元副館長)  西田宏子殿
4)講演テーマ 「美しいものを美しく見せるために」
・美術館はエコでなければ運営できない
・根津美術館の場合
5)参加者数  43名
DSCN4015.jpg
6)セミナー概要報告
(1)根津美術館開館からの経緯
1)昭和16年に根津嘉一郎氏のコレクションを基に、氏の私邸を利用して開館した。  昭和29年に新たに館を建設し昭和31年に開館したが、空調は無く、展示ケース、蔵などの問題を抱えていた。
2)平成2年の改築に当たり、展示の場・空間として来館者にとって魅力があり、多目的の展示が可能であり、エコであり、収蔵庫の環境も改善できる美術館の実現を目指した。
(2)こだわりの美術館構築
1)収納品の量に対して狭く、高温・高湿でカビ対策が必要であった収蔵庫を大幅に改善した。 断熱方法、熱負荷シミュレーションなどを繰り返し検討してじっくりと蔵と館の空調構築を行って来た。
2)展示ケースを改善した。ケースはハット型として照明を上部につけ、配線もケースガラス面の角部を見えないように這わせるなどの工夫にこだわった。これにより、レイアウトにかかわらず、展示品を常時最適に鑑賞することが可能となった。
3)照明は当時、美術館照明としては非常に新しかったLEDに挑戦した。特に赤色が美しく見えるLEDを模索して、採用した。これにより展示品を美しくかつエコな運用が可能となった。さらに館の瓦屋根部には工夫して太陽光発電を設置し、併せてエコな運営が促進されている。
4)同時に館内の床、壁面の材質、色にもこだわり、展示品がより美しく鑑賞できる工夫をした。これらについてスライドで詳しく解説があった。
DSCN4019.jpg
(3)庭園・茶室・導線分析など
1)美術館は建物だけでなく、庭園の整備にも力を入れてきた。由緒ある茶室、発掘品などの移築も行って、四季折々、根津美術館八景も多くの方に楽しんでいただいている。
2)展示に当たっては、展示品の展示順序レイアウトに導線シミュレーションをおこない、気持ちよく鑑賞いただく工夫をしている。
<後記>
講演後約30分間にわたり、照明方法、展示ケース、美術館の由緒、独立採算の美術館の運営の苦労などについて熱心な質疑応答が続いた。「日ごろ何気なく入館して、展示品を鑑賞して退館していた美術館であるが、今後は美術館の運営の苦労に思いをいたして、また今までと違った、美術鑑賞が出来そうです。」との意見が出て、大変に有益な講演であった。
7月20日(木)から9月6日(日)には新しい企画「絵の音を聴く −雨と風、鳥のさえずり、人の声― 」が始まる。ぜひ訪問して、講演を思い起こしてみたいものである。
                          以上
配布資料:
「講演資料」
posted by EVF セミナー at 20:00| Comment(0) | TrackBack(0) | セミナー紹介

2015年05月28日

EVFセミナー報告「水素社会は来るか」

演題:「水素社会は来るか」
講師:経済産業省 産業技術環境局 研究開発課長 
   渡邉 昇治 様
開催日時:2015年5月28日(木)
場所: JICA(市ヶ谷)

セミナー概要報告

 今回ご講演をお願いした渡邊 昇治様には産業技術の変わり目の機会をとらえて、その将来動向を分かりやすく解説していただいてきております。お立場上、お話しされる内容が国の産業政策と誤解されることも懸念されますのでご講演はオフレコということでお願いしています。したがってここではお話しされた内容から筆者の判断でその要点をまとめたものを概要報告とさせていただくことをご理解ください。 
suiso4.jpg
さて、水素はその利用時にCO2を排出しない新たなエネルギー源として注目を集めているが、家庭用燃料電池、燃料電池自動車は実用化段階にその一歩を踏み出したように思われる。しかしながら水素の価格がまだ実用化には高い、水素製造時にCO2が排出されるなどの課題も残っている。
suiso5.jpg
主要なエネルギーの転換にはそれが実用化されるには太陽光パネルの例を引くまでもなく30年以上の時間を必要とし水素社会の到来にはまだその見極めのための時間がかかると思われた。水素燃料電池自動車も2002年から実証プロジェクトが始まっており2025年頃には普及に弾みがつく可能性もある。
水素燃料のメリット、用途と課題を整理しておくと
(1)メリット
・CO2排出抑制
・クリーンエネルギー
・電気だけでなく熱源として利用できる
・エネルギー国産化の可能性がある
・再生可能エネルギーの余剰電力の蓄電が可能 
(2)水素エネルギーの主たる用途
・水素発電
・燃料電池
・燃料電池自動車   
(3)解決すべき課題
・コストが高い(水素製造価格よりも輸送、貯蔵など)
・社会的受容性
・法規制など 
 以上の課題を乗り越えた時に初めて実用化されるが、時間的見通しは燃料電池自動車、燃料電池コジェネの普及が始まっているが、2020年頃までにインフラ利用技術の開発、水素タウンの実証を踏まえ、2030年頃までに本命である高効率水素発電の実証を終えて、本格的普及の時期を迎えるかもしれないと思われる。
suiso6.jpg
配布資料:
講演資料「水素社会」

posted by EVF セミナー at 18:00| Comment(0) | TrackBack(0) | セミナー紹介

2015年04月23日

EVFセミナー報告「日本の製薬産業の現状と課題」

セミナー「日本の製薬産業の現状と課題」報告(文責:橋本 升)

1)開催日時  平成27年4月23日(木)
2)場所    新現役ネット事務局会議室
3)講師    元三共株式会社社長 池上康弘殿
4)講演テーマ 「日本の製薬産業の現状と課題」
5)参加者数  34名
6)セミナー概要報告
DSCN3872.jpg
(1)日本の製薬産業を取り巻く課題
1)子ども人口(14歳以下)の減少と高齢者(75歳以上)の増加が顕著であり、人口の減少をもたらし、医療費や年金などの社会保障費の増加が財政を圧迫する。
2)平成26年度で見ると、国民医療費は約43兆円にも及ぶ。このうち、医師等の人件費が20兆円、医薬品が10兆円(約70%が調剤薬局分)等であり、新薬が高くなることや高齢者が何種類もの薬を飲むこと等が相まって、今後ますます後期高齢者医療費が国の財政を圧迫してくる。
3)財政問題改善に有効な手段として、年金と福祉に手を付けることが政治的にも困難な中、医療面とりわけ薬剤費の抑制策が即効性の高い策として強化されよう。今後、薬価改定(2年ごとに実施されている)及び包括化(使用制限)と並んで、ジェネリック医薬品のさらなる浸透策が強化されよう。

(2)ジェネリック医薬品
1)日本での現在のジェネリック医薬品の占める割合は約23%であるが、英(63%)、米(75%)、独(68%)などでは高い比率になっている。
2)日本でのジェネリックの浸透が遅れているのは医師、薬剤師のジェネリックに対する考え方の国情によるが、欧米との薬価政策の差によるところが大である。
3)日本の場合、保健薬の価格は公定価格であるが、欧米では新薬価格は自由に付けられる。その代わり、アメリカでは特許期間中は大きな売り上げを示していた薬が、特許切れと同時にジェネリックに取って代わられ、売り上げが急落すると言うことが起きている。このような事情は、一つの薬につき物質・用途に関する一つの特許が対応しているため、一つの特許が切れると裸になってしまうという、他の工業製品とは異なる特許構成にもよる。
新規_1_IMG_1601.jpg
(3)世界の製薬産業規模と医薬品開発力
ジェネリックの比重が増大して特許薬の売り上げ減少が続く一方で、新薬の創出は困難性を増している。新薬の創出には長い年月と巨大な資金がかかる。しかも既存の薬剤を上回る効果と安全性をもつ新薬はなかなか出せない状況にある。
1)世界での医薬品の売上高は、ファイザー(米)が約600億ドル、メルク、ロッシュ等スイス、英国の6社が3〜400億ドル、日本は武田、アステラス、第一三共エーザイを合わせて400億ドル。
2)薬の研究開発費は概略売上額の20%程度であるが、開発費の絶対額の大きい米国が結果的には開発する新薬数が多くなる。米国が開発する新薬数は、世界売り上げ上位100品目中44品目(2010年)となっている。
3)また、米国では発見された新薬で医薬品大企業由来の新薬は40数%であり、50%以上が大学やバイオテク企業によるものである。米国以外では、新薬のほぼ90%がメガファーマの開発。
3)医薬品開発の難しさ
新薬創出の困難性:新薬開発の過程で、臨床試験が開始できる薬は7〜8千件中の1件、最終的に承認取得できるのは、1〜3万件の中から1件程度にまで絞られる。1社当たり数年に1件の新薬が出せるかどうか。

(4)これからの医薬品産業の動向
1)近年の新薬開発は、バイオ製品(従来より高分子構造物)が増加しつつあり、これに伴い薬剤の価格が上がる傾向にある。
2)また、これからの創薬アプローチは、ポストゲノム技術の応用、iPS細胞の利用等々で開発期間や成功確率が大きく変わってくることが期待できる。変わってくることがあり得る。
3)製薬企業の動向に関しては、グローバル化とマネージメント能力強化が世界的な動向であり、個別企業の得意分野を他社、異種企業と共有し総合的な競争力構築を図る動きも出てきつつある。ただし、その場合必要なのは、どことどう組むかについての「目利き」である。
4)日本の医薬工業規模は世界的に見て決して大きくはないが、新薬創出力はある。諸々の課題を抱えてはいるが、日本の特長を生かした、高付加価値・少資源・知識集約型の産業として生き残らなければならない。

講演後の質疑応答:
*医薬分業のメリット *世界的に見て開発費が欧米に及ばないが生き残るための算段は*ジェネリック薬品は完全に同じでないが、問題ないか *薬価の決め方 *医薬品の特許期間 *中国の動き 等々につき多くの質問が出され、活発な質疑応答が続いた。

配布資料:
「日本の製薬産業の現状と課題」
posted by EVF セミナー at 20:22| Comment(0) | TrackBack(0) | セミナー紹介

2015年03月26日

EVFセミナー報告「雨庭のすすめ」

2015.3.26EVFセミナー概要報告(山田和彦)
演題:「雨庭のすすめ」
講師:京都学園大学 バイオ環境学部/バイオ環境デザイン学科教授 京都大学名誉教授
   森本 幸裕 様
開催日時:2015年3月26日(木)
場所:港区田町 新現役ネット会議室

セミナー概要報告

「雨庭」はこれまで都市が邪魔物として抹殺してきた湿地の生態系を、もう一度都市全体のデザインに復活させる試みです。
ヒートアイランド現象、集中豪雨に対して、その災害を低コストに低減することができるのです。しかも、多様な生態系の維持に貢献します。
講師は生態、景観など広く、新しい分野の第一線をリードしてこられました。今回はそうしたこれまでの研究を総合して、アクションにつなげようというお話を伺うことができました。
DSCN3795-2.jpg
1.地球環境危機を語る前に:攪乱と再生
・日本の国土利用計画は1億3千万人ではなく、8千万人に対応したものである必要がある。
・人類にとって、地球の安全運転の限界を超えて、最も厳しい危機に直面しているのは「生物多様性の損失」である。
・気候変動的には1時間に50mmや100mmを超す集中豪雨が増加している。加えて少子高齢化で、もはや子孫と地球環境に負荷をかけられない状況となっている。
・攪乱を受けた後元に戻る能力のことをレジリエンスというが、効率性を高めるための「選択と集中」が、想定以上の攪乱(洪水、干ばつ、地震、津波、病虫獣害etc.)への対処能力を弱め、別の悪い状態へレジームが変化する恐れをもたらす。これへの対処の手掛かりは、冗長性と多様性である。
・京都は攪乱があってもなぜか蘇ってきた都市である。京都三大祭(葵祭、祇園祭、時代祭)も攪乱に対する復興の象徴である。

2.「要塞型」と「柳に風型」
・3.11宮古市田老地区は長さ2km超、高さ10mの防潮堤を築いていたが、229人の死者・行方不明者(7.6%)を出し、一方、防潮堤を作らず、避難対策に傾注した同市鍬ヶ崎地区は65人の死者・行方不明者(2%)にとどまった。

3.「攪乱≠災害」「減災&再生」
・アメリカのハリケーンカトリーナによる災害では、堤防による氾濫の防止が海洋浸食を招き、逆に都市の危険地帯化を招いた。ミシシッピー流域では、通常の氾濫によってもたらされる湿地の確保が、減災に重要なのであった。
・また、インド洋大津波の時には、マングローブの森は耐えることができたのに対し、近くの橋は壊れてしまった。
・北海道奥尻島の津波では、対策費930億円をかけて要塞型の復興を行ったが、ハード事業終了後には亡くなられた人数の2倍以上(660人)の人口減少となってしまった。

4.攪乱の日本列島:生物多様性の宝庫
・日本列島は極めてきめ細かい表層地質のモザイク構造で、地滑りや土砂崩れ、活火山、断層などがあり、短期的には災害だが、長期的には土壌資源と多様性をもたらす。
・京都では、例えば銀閣寺の庭園造形は、池に溜まる砂の処理でもある。

5.都市のグリーンインフラストラクチャー(GI)=雨庭のすすめ

雨水の流れはいのちの流れ
・都市型洪水リスクの増加 ⇒ 雨水の浸透+貯留は流域防災の基本
・都市化がもたらしたヒートアイランド、水辺の生物多様性の危機 ⇒ 都市は雨庭でよみがえる
・街路、公園、住宅敷地をレインガーデン(雨庭)に!

雨庭の7つの利点
・都市気候の緩和
・生物多様性保全への貢献
・景観の向上
・コミュニティの交流
・洪水調節・湧水保全
・水質浄化
・身近な自然体験の場
IMG_1576-2.jpg
質疑
Q.日本は「要塞型」をとってきたことの反省が足りないのではないか。
A.東日本大震災復興の基本方針に関する有識者会議で、エコロジーの分かる人が1人もいなかった。
Q.私は宮城の人間で、津波で被災した。今、7.2mの防潮堤ができているが、柳に風型の考えが必要と思った。
A.うまく組み合わせることが必要。EUはグリーンインフラストラクチャーの導入を決めた。
Q.ロンドンのグリーンベルトのような考え方は?
A.日本では根づかなかった。しかし日本では市街化区域と市街化調整区域の線引きが行われ、むしろ田園の開発が促進された。
Q.経済的な観点から、今日のお話が国民的視点になるためには?
A.KES(環境マネジメントシステム)に取り組んでいるような企業への働きかけを行い、現状をリスクとしてちゃんととらえてもらい、自治体に取り組んでもらう必要がある(ドイツでは雨庭的な対応いかんにより、下水道料金に差)。
posted by EVF セミナー at 18:12| Comment(0) | TrackBack(0) | セミナー紹介

2015年02月20日

EVF第8回通常総会記念講演会報告「国の姿についてこの頃考えること」

演題:「国の姿についてこの頃考えること」
   〜元EVF顧問竹内行夫氏の内輪のトーク〜   
実施日:2015年2月20日(金)
開催場所:JICA市ヶ谷ビル 大会議室
講 師:元最高裁判事、元外務事務次官 竹内行夫 氏 
竹内講師.JPG
 講師の竹内行夫氏はEVFが設立されたまもなくの約8年前、初代EVF顧問をお引き受けくださり、初期の土台作りに惜しみないご助力を下さった方です。
外務事務次官から最高裁判事を歴任されて昨秋には旭日大綬章を受章されたこの機をとらえ、非公式の内輪のトークという前提でご講話をいただきました。
ご講話の演題は「国の姿についてこの頃考えること」です。
1、今年は戦後70年にあたるが、いつまで「戦後」にこだわるのだろうか? 中国と韓国を相手に“歴史問題”ををいつまでも引きずるのは得策でない、との認識について丁寧に歴史的経緯を説明されました。問題の所在は、中国・韓国が対日歴史問題を克服しうるのかという両国の認識の中にある、と看破されました。
2、日本を取り巻く国際環境の大きな変化としての中国の挑戦について。中国はいま世界経済システムに挑戦しているとの認識がとりわけ重要であり、今後の日本と中国は経済上の相互利益関係を損なわないような冷戦状況を覚悟すべきと見通されました。
3、世界の中で相対的に経済力の低下が免れないわが国が、いかにして国際的地位を維持し向上させていくべきか、“グローバル・シヴィリアン・パワー”としての日本を強調されました。わが国は戦後から一貫して国際社会から尊敬され信頼されることを目標に努力してきた積み重ねを大切にして、「国際公益と道義性」をしたたかに発信する国家像を確認したいとされました。
竹内講演会.JPG
質疑応答では世界のイスラム教をどう考えるべきか、現在の政府中枢の考え方について巨視的な質問があり、それぞれ丁寧にお答えになられました。。聴衆41人の心がひとつになった1時間半でした。

配布資料:
「村山総理談話」
「小泉総理談話」
2年ほど前の寄稿文「国家像とやむにやまれぬ気概」
posted by EVF セミナー at 19:00| Comment(0) | TrackBack(0) | セミナー紹介

2015年01月22日

EVFセミナー報告「気象変動に関する世界の現状と日本は何をなすべきか?」

EVFセミナー(1/22)の概要報告 (今泉良一)  
演題: 気候変動に関する世界の現状と日本は何をなすべきか?    
実施日: 2015年1月22日(木)
開催場所 :国際協力機構(JICA )市ヶ谷ビル 202AB会議室
講師: 山岸尚之(やまぎし なおゆき)氏 WWFジャパン (公益財団法人 世界自然保護基金ジャパン)
自然保護室 気候変動グループ リーダー
DSCN3608-2.jpg
これまでの気候変動に関する講演や議論の多くは、先進国や後発国、また、産業界や学界の思惑も絡み、 “何が実際に起こっているのか”、“どうすればよいのか”等について分かりにくいことが多かった。 一方、今回講師をお願いした山岸氏は、昨年12月に南米リマで開催されたCOP20にも参加され、IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)が出した評価報告書(世界の論文に基づいたコンセンサス)や国立環境研究所報告等を踏まえて、1.気候変動の予測と影響、2.国際的な取組、3.難しさの要因、4.必要な対策、そして最後に5.これからの課題について解説された。世界の現状と日本が直面する問題について大変分かり易く、参加者の理解が深まった講演でした。特に、気候変動に対して“できない理由を探すのではなく、できる理由を探す”というスタンスは、共感できました。

講演概要
1.気候変動の予測と影響
95%の確率で温暖化が起きていることが、裏付けられている。現状のまま推移すると(産業革命前と比較して) 2100年には気温が4℃上昇するが、一方、充分な対策を講じてCO2を削減すれば2℃に抑えられるとし、全体で4つのシナリオがあることを解説された。一番酷いシナリオでは日本への影響も甚大であり、海面が60p上昇し、砂浜の80%が消失すると予測される。世界規模でも海面上昇は起こり、台風が大型化し、また、マラリアが増える等の弱者への“絶対的な不公平”も増長されると予測される。1970年の世界のGHG (温室効果ガス)排出量が
30G(ギガ)Tであったのに、2010年には49GTに増加している。上昇気温を2℃未満に抑えるには、2050年までに2010年比40〜70%削減し、今世紀後半にはマイナスでなければ達成できないと報告されている。
DSCN3607-2.jpg
2.国際的な取組
1992年にリオ・デ・ジャネイロで初めて開催された“地球サミット”以来国際社会が進めている取り組みは、大変重要である。 しかし、内容が難しく、なかなか理解が進んでいないのが現状である。1997年の国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の第3回締約国会議COP3の京都議定書では、“2008~2012年5年間”の西側の数値目標が採択された。一方、2009年のコペンハーゲンCOP15では、2013~2020年の枠組みを目指すも決まらず、これ以降温暖化への世界の関心は急速に低下してしまった。2011年ダーバンCOP17でも各国の枠組みは合意されず、現在2015年末に開催予定のパリ会議COP21で “新しい国際枠組み”の合意を目指している。この会議では、2020年以降の世界の気候変動・温暖化対策の大枠が合意される予定であり、この会議の結果により、世界がどの程度気候変動を防ぐことが出来るか、既に起こっている影響を軽減できるか、大変重要である。国際的な関心は高まってきているが、現在日本、中国、米国等各国が持ち寄った案では気温上昇は2.9~3℃であり、これを2℃以下に抑えるには、どうしたら良いのか、 まさに“人類の運命が決まる”会議であると山岸氏は述べられた。

3.難しさの要因
2011年現在のCO2排出国のトップ3は、1.中国26%、2.米国18%、3.インド6%(日本は5.4%)である。一方、中国やインド等の後発国は、産業革命以降の累積CO2排出量こそが重要であり、先進国の責務は大きいと主張している。更に、1人当たりのCO2排出量は、1.米国16.9、2.韓国11.8、3.先進国平均9.9、4.日本9.3、
5.ドイツ9.1であるが、中国は5.9、インドは1.4であることも忘れてはならない。国際的枠組みを決める上で、何が平等で、フェアーであるか、判断を大変難しくしている。

4.必要な対策(どこで対策が必要とされているのか?)
リーマンショックを除くと、日本の排出量は基本的に減っていない。増やさないことには成功したが、しかし、減らしていないと言えよう。大震災の後でも、省エネで減った分もあるが、原発停止による化石燃料の大量使用で増えている。つまるところ、気候変動対策とは、“日本のエネルギーのあり方を変える”ことである。つまり、80%が化石燃料であり、@使っている量を減らせば“省エネ”になり、ACO2 を出さない“自然エネルギー”や“再生エネルギー”を増やして化石燃料を置き換えることが、CO2排出削減対策である。日本では1970年のオイルショックを機会に省エネが進んだ。一方、1990年以降は改善があまり見られず、温暖化対策の旗を立て、もう一度省エネを実行することが必要なのではないか。OECD加盟国の省エネ基準適合義務化が進む中で、日本は住宅・建築の分野では後進国である。次世代省エネ基準が2014年に漸く改定され、2020年までに義務化しようとしているのが現状である。

5.これからの課題(目指すべきところは?)
WWFが掲げるビジョンでは、@省エネでエネルギーの無駄をなくし、A原発をなるべく早く廃止し、B残りを自然エネルギーで補おうとするものである。WWF(脱炭素社会に向けたエネルギーシナリオ)は、2008年の水準から2050年までに日本のエネルギー消費を半減できると試算している。車上太陽光・太陽熱・バイオマス・風力・太陽熱・地熱・水力を組み合わせれば、半減したエネルギー消費に対応できる。このシナリオによるWWFの試算では、設備投資で2030年まではコストが高くなるが、それ以降の運転費用を差し引いた正味費用は低下し、2050年までの40年間の累積では約200兆円の経費が軽減できると考えている。2050年の自然エネルギー100%時代を目指して送電線網を拡充し、色んなルートで融通を可能にすることが必要である。国としてより大きな削減を目指すには、産業界の自主的な取り組みだけではなく、排出を促す政策も重要である。主要国の自然エネルギーの発電全体に占める割合を見ると、90年代には5%未満であったデンマークやドイツは、政策の強化によって、この20年の間に自然エネルギーの比率をそれぞれ48%、22%まで引上げた。一方、日本の再生可能エネルギーは停滞している。CO2 の削減には、国の政策が極めて大事である。まさに、“できない理由を探すのではなく、できる理由を探す”ことが必要であろう。

講演終了後30分間強、欧州がなぜ積極的に自然エネルギーを推進するのか、日本の6%削減がなぜ達成でできたのか、原子力発電の役割、カーボンニュートラルについて、日本の国際気候変動交渉での評価等々大変活発な質疑応答が行われた。意見交換は、その後の懇親会でも活発に続けられた。

資料はここをクリックしてください。
posted by EVF セミナー at 21:02| Comment(0) | TrackBack(0) | セミナー紹介

2014年12月11日

EVFセミナー報告「国際司法裁判所判決と日本の将来」

EVFセミナー(12/11)の概要報告
(奥野 政博)
演 題:国際司法裁判所判決と日本の将来
開催日:平成26年12月11日(木)午後3時30分〜5時30分
場 所:新現役ネット事務局A会議室
講 師:小松 正之 氏(アジア成長研究所 客員主席研究員)

 講師は農林水産省に入省後、エール大学大学院で経営学修士(MBA)と東京大学で農学博士の学位を授与され、1991年から2004年に国際捕鯨委員会の日本代表代理を務められ、その間に国連食糧農業機関(FAO)やインド洋マグロ委員会議長やミナミマグロ国際海洋法裁判日本代表団員など国際的な捕鯨や水産問題で大活躍され、最近まで政策研究大学院大学で途上国公務員らに理論に基づく大局観と体験に基づく実践的なリーダーシップとネゴシエーションなどを教えていました。
 今回は2014年3月に判決が下った南極海捕鯨に関する国際司法裁判所(ICJ)の判決敗訴要因と今後、日本の取るべき方向について判り易い図表を交えて時間一杯お話しして頂きました。

講演概要:
 今回の判決内容に入る前に、先ず初めに「世界に分布する鯨類とその資源」について図表を用いて説明して頂いた。クジラは1種類ではなく国際捕鯨取締条約の分類表で定められた「大型鯨類」約13種と条約の対象外の「小型鯨類」約70種に分けられ、小型鯨類は殆どがイルカで、大型鯨類はシロナガスクジラ、ナガスクジラ、ホッキョククジラ、イワシクジラ、マッコウクジラやミンククジラなどであること、資源が枯渇、悪化しているのはシロナガスクジラ、ホッキョククジラと一部悪化しているコククジラで、ナガスクジラ、マッコウクジラやミンククジラの資源は健全とのことで、科学的根拠では捕鯨を再開するに何の問題もないと言えるとのこと。
小松2-2.jpg
 体長8mのミンククジラが大型鯨類に分類され、体長10mのツチクジラが小型鯨類に分類されている理由を本日の参加者に問われたが誰も答えられなかった。答えは、国際捕鯨取締条約で捕鯨の対象を大型鯨類としたもので、1949年に条約が制定された時に日本の房総半島や伊豆諸島にしか生息しないツチクジラは日本から専門家が参加していなかったので見落としただけとのことでした。
 またクジラとイルカの違いを皆に問われたがやはり誰も答えられなかった。答えは成体の体長4m以下がイルカとのこと。
 次いで「日本人と鯨類との長い関わり」について伊達藩の学者・大槻清準が記した捕鯨図説「鯨史稿」(文化5年(1808年))で近世捕鯨の繁栄例として平戸沖の鯨組と網取り式捕鯨の様子や江戸時代の捕鯨としてツチクジラのタレとして知られる安房勝山(房総)、ナガスクジラやザトウクジラを捕獲していた伊根(京都府)、日本の集団的職業捕鯨発祥地として知られている太地から室戸、長崎、長門へと続き、記録として残っているのは1604年の太地が最初で、江戸時代に西日本で捕獲された鯨肉が加工され九州、大阪、一部東京へ食文化として食べられ、その捕獲と加工技術を継承してその後南氷洋へ出て行ったとのこと。これに反し西洋の捕鯨は鯨油とせいぜいコルセットの骨として利用したため8割が海に捨てられ、乱獲につながったそうです。
 本題の判決内容の理解促進のため、先ず商業捕鯨モラトリウム(一時停止)は国際捕鯨取締条約第5条(商業捕鯨)に定めた捕獲枠やサンクチュアリー(保護区域)について科学的根拠に基づくべきとする条項に違反している事を生息データから説明された。
 今回の裁判の対象となった第2期南極海鯨類捕獲調査事業は、1987年から2005年に実施された第1期捕獲調査の調査結果を下に日本と世界の最高水準の鯨類科学者の英知を結集して2年以上の歳月を費やして作成され、2005年から始まった。南氷洋の鯨類資源の生態系のモニターや鯨種間の競合の解明などを目的とする裁判で日本政府代表団は調査計画よりシーシェパードの妨害が始まる以前から捕獲数を減らした科学的根拠を問われても的確な説明もできず、妨害の所為とした対応の不味さ(むしろ妨害を排除する方策や原計画を実行できないなら計画修正をすべき)を指摘された。
 もう一つの調査捕鯨の現状として北西太平洋鯨類捕獲調査の調査海域と調査目的(鯨類の摂餌生態の解明、DNA分析による系統群構造の解明、環境変動が鯨類に及ぼす影響の解明)と調査実態を図表と写真を交えて説明された。特にミンククジラの餌生物として胃袋にいたオキアミ、カタクチイワシ、サンマ、スケトウダラやスルメイカの写真を下にそれらの摂餌生態の実態や日本周辺での餌生物の漁獲減少と鯨類資源の増加などキチンとした調査分析と仮説検証の大切さを教えて頂いた。
 更に裁判での判決内容を理解する為に欠かせない「国際捕鯨取締条約」、特に第5条(商業捕鯨)第1項で捕獲枠の設定が、第2項でこれらの設定は科学的根拠に基くべき(そうでない場合は違法)と、第3項では第1項への異議申し立てができると定められていること、また捕鯨国であるノルウェイとアイスランドが商業捕鯨のモラトリウム(一時停止)に異議申し立てしていて、日本も一時異議申し立てしていたが水産業界の目先の利益のため撤回した(商業捕鯨はできない)背景など説明して頂いた。第8条(科学捕鯨(調査捕鯨))第1項に他の条項(第5条:商業捕鯨)に係らず科学目的なら許可を締結国(=日本)は発給でき、第2項で副産物(=鯨肉)は加工して処理する義務を課せられているので、一部外国から日本は調査捕鯨で捕獲した鯨肉を国内で販売していると批判されているが、主産物は科学的データで、鯨肉は第2項でいう副産物なので正当な義務であると日本は主張すべきと指摘され、鯨肉大好きの小生にとって心強い条項であると理解出来た。
 この条約には商業捕鯨の漁獲枠を具体的に決めた付表があり、「商業捕鯨モラトリウム(一時停止)」条項である第10(e)項は、1990年までにゼロ以外(=商業捕鯨OK)の捕獲枠設定を検討することになっていたが24年を経過しても未だ設定されず、日本は科学的根拠に基づかない捕獲枠の設定は第5条第2項に反すると意見を言い続けるべきとも指摘された。
小松1-2.jpg
 ここまで約1時間かけて基礎知識を身に着けた上で、国際司法裁判所(ICJ)の判決内容について解説して頂いた。
(1)ICJは全会一致で南極海捕鯨に関する訴訟(オーストラリアが訴え日本が被告、ニュージーランドが介入)に管轄権があると認めた。
※オーストラリアはもともと、自国の領土・領海(200海里EEZも主張)の紛争はICJに裁判の管轄権がない。
     これを引用し日本は、日本の調査捕鯨はオーストラリアの海里内で実施しているのでICJの裁判とはならないとの主張を展開したが、ICJは世界の大勢はノンクレーマント(南極大陸や200カイリの領有権を主張せず、他国の主張も認めない)であることを根拠に日本の主張を却下した。見事、作戦失敗だった。
(2)日本の南極海第2期捕鯨調査(JARPAU)が取締条約第8条1項に該当しない。
    ※目的は良い、デザインも特段問題ないがそれらに基づく十分なサンプルを取らず、目的を達成できないので科学目的の調査捕鯨ではない、そして原住民生存捕鯨でもないので商業捕鯨であるのは議論の余地なし(後段のICJの判断が拙速で説得力が全くない)と判定された。
(3)ARPAUが条約付表第10(e)、10(d)と7(b)項に反する。
    ※第2期調査は十分なサンプルも取らず調査捕鯨でなく、それは商業捕鯨と解されるので商業捕鯨モラトリウムが適用されると判定された。このことにも商業捕鯨のモラトリウムが、資源が健全な状況で、国際法に違反するという反論をしていない日本政府の対応が問題である。
(4)ICJは、日本政府がJARPAUの捕獲調査の許可を取り消し、この調査計画に対し今後いかなる許可もしてはならないと決定した。
とのことだが、(2)と(3)について何ら反論していないことと、それ以前にノルウェイとアイスランドの商業捕鯨および北半球の日本の調査捕鯨を提訴しないオーストラリアの訴訟の狙いを読み間違い、その後の改善策も講じない日本政府の対応を指摘された。
 これら問題の解決には交渉とリーダーシップが重要で、そのためには年令如何にかかわらず、情熱とむしろ経験が必要と私たちを含めて激を飛ばされた。
 ここまで1時間半たっぷりのご講演を頂き、本日ご用意された「日本の水産業の将来」まで辿り着けなかったことが残念でした。
 この後の質問に対しても情熱溢れる回答を頂きました。
 先ず、役人のレベルについて、家庭を含めて教育に問題があると思うが打つ手は?
に対して、短期的手段としては打つ手はないとのこと。長期的に、国や地域のために貢献することの重要性を教え込むこと。米国の政府やアイビーリーグ大学では教えている。
 次いで、農水省の中で捕鯨に対する優先度は?所内の空気は?との質問に対して、今の若い役人は、経験もなく敢えて難しい仕事はできないし、挑戦したくないのが実情と嘆いておられた。
 更に、数量的にも科学的にも鯨は一杯いるとのお話しであったが、反捕鯨の人たちは鯨は賢い動物だとか可哀そうだからと言うようなメンタルな話しをするが…との質問には、   正しいことを正しいと主張せずに、長い間に鯨は絶滅危機と宣伝され、間違った情報操作が定着してしまった。反捕鯨国は畜肉生産大国であることに加えて、アメリカやオーストラリアを見て感じることは日本が南氷洋に居られることが、日本ほど緻密なデータを持っている国はないから嫌だと思うと回答された。
 次いで、国際問題に自信がなく、事なかれ主義に陥り戦略的に考えて上手く反論するように変わる必要があると思うが、敵は外務省にありと啓蒙活動が必要ではと思っているとの意見に対して、米国務省の役人はアフガニスタンやリビアなどで殉死している。リスクを負って政治家へ助言や行動している。モラルが高い。役人の差も大きいとのこと。
 最後のまとめとして、ICJの判決を忠実に読むと、今の第2期の南極海調査計画は立派だと言っているので、自信を持って鯨を取りに行けば良い。付表の第10(e)項が諸悪の根源で、これを廃止する裁判を起こせ。自分なら日本の200海里以内で鯨を持続的に捕獲する計画を作成し、米国など反捕鯨国と交渉する。気に入らない国なら止めろと言う裁判を起こすだろう。どちらが勝つか見ものだ。起こさないなら捕鯨をすればよいと小松先生が言われ、出席者一同の大喝采の中、2時間のご講演を終えました。
 以上

資料はここをクリックしてください。
posted by EVF セミナー at 19:21| Comment(0) | TrackBack(0) | セミナー紹介

2014年11月27日

EVFセミナー報告「いま、原子力発電を考える―地球温暖化の現状を踏まえて―」

平成26年11月27日
EVFセミナー報告
演題:  いま、原子力発電を考える
――地球温暖化の現状を踏まえて――
開催日: 平成26年11月27日(木) 午後3時30分〜5時30分
場所:  新現役ネット事務局会議室
講師:  木元 教子 氏
      元内閣府原子力委員会委員、評論家
講師は、テレビ等を通じて我々新現役にはあまりにも有名な方であるが、1998年から2006年まで9年間にわたり原子力委員会委員をつとめられた。ジャーナリスト出身のことから「広聴」に力を入れたという。2011年の東日本大震災・福島原発事故後に強まった脱原子力の動きに対して、日本の総合的なエネルギー環境を踏まえて原子力発電に取り組まなければならない考えで活動されている。
今回はこの考えの背景になったことなどをお話しいただいたのだが、何よりも想像する年齢を感じさせない元気の良さにEVFのベテランズも圧倒された会であった。
木元2.jpg
講演概要:
演題に対する講師の思いをスライドや冊子(「暮らしの中のエネルギー」)を交えて話されたが次のようにまとめる。
・まずは、地球温暖化を止めなければならないということである。このためにCO2を削減しなければならない。世界的な人口増、開発途上国のエネルギー使用量の増大、そして現在のわれわれの生活レベルを極端には落とせないことからエネルギー使用量を減らすことに無理がある。また再生可能エネルギー・新エネルギーの利用推進だけでは需要に間に合わない。現段階では、CO2削減は原子力発電に頼らざるを得ない。
講師も新エネルギー雪氷冷熱利用のために、NPO法人雪氷環境プロジェクトの会長として活動されているが、これに賛同する参加者の間で「氷室」に盛り上りがあった。
木元3.jpg
・さらに、日本の置かれている位置である。原発を外せば、石油・石炭・LNGのエネルギーの自給率があまりにも小さい。外貨流失が3.6兆円である。また、他国から電線を繋ぎ、電力の融通を受けることのできない島国である。
・原子力発電の可能性はある。安定・安全・安心に向けて、国も電力も安全対策・安全施策を進めている。使用済み核燃料に対しての核燃料リサイクルは実現できる。
・何事にも絶対間違いがない、絶対に安全だとは言えない。原子力発電も同じである。その意味で、ただ単純に脱原発で済むことでもない。国は国民の生活を守り、国力の維持を考えながら、真実を隠さず知らせ、本音で話し合うべきである。
参加者の中からは、「原発を必要としないエネルギー供給力の中で生活はできる」とか「使用済み核燃料の始末ができるようになるまで原発はやめておいた方が良い」などいくつかの意見があったが、限られた時間内で話は済まない。
IMG_0897.jpg
安全を最大に考慮しても、自然災害をはじめ、予想されなかった危険が発生する事を、今回の事故で明らかになり、原発は信頼を失ったのだが、国は原発の仕組みを、改めて分かりやすく提示し、国民との忌憚のない話し合いの中から、エネルギー問題解決の適確な道が開かれるという講師の姿勢を感じたセミナーであった。(津田俊夫)
posted by EVF セミナー at 22:15| Comment(0) | TrackBack(0) | セミナー紹介

2014年10月23日

EVFセミナー「国際都市、川崎を御存知ですか?」

EVFセミナー(2014/10/23)の概要報告(三嶋 明)

開催日時 : 平成26年10月23日(木)14:30〜17:30(質疑応答含む)
演題 : 国際環境都市、川崎をご存知ですか?
場所 : 新現役ネット事務局会議室
講師 : 川崎市国際環境施策担当コーディネータ― 牧 葉子氏(前川崎市環境総合研究所所長)     <<川崎市に軸足を置きながら、国レベルの政策委員会などにもご参加>
概要 : アジアの新興国では、急激な工業化に伴う深刻な公害問題を抱えており、経済と環境を両立させたモデルとして川崎が注目されています。 今回は、川崎市自身がその注目の自覚のもとに、環境技術による国際貢献をすすめるとともに、地域の産業活性化を行っている状況を具体的に詳しくご説明頂きました。特に、質疑応答の中で、川崎市の成功は行政と民間の協調、そしてその市長を選んだ川崎市民が主要因との指摘は、国際比較という意味でも意義深いものでした。
024.JPG
     国際環境都市、川崎をご存知ですか?

「変われば変わる」 ―日本も昔は―
*公害の町から環境先進都市へ、現在では川崎市から富士山が見える。
*キングスカイフロント:市内殿町における国際戦略拠点、Sky Frontは、対岸の羽田空港に面している事より。
*川崎生命科学・環境研究センター(LiSE)=ライズ・・・・<EVF見学会で、明年1月に訪問予定>
 LiSEに取り入れられた環境技術:共用部のLED証明、太陽熱利用給湯、地中熱空調利用、太陽光発電等。

「ものごとには始まりがある」 ―振り返って―
*いすゞ自動車の例:2001/11/19と2003/7/30の例  

「かわさきエコツアー」 ―自然環境だけがエコツアーでなく―
*川崎エネルギ―パーク:川崎市の環境技術をショーケース化し、国内外に情報発信。次世代エネルギーパーク。
*川崎臨海部のエネルギー関連施設:メガソーラー・2011年に運転開始、浮島及び扇島陽光発電所。
*かわさきエコ暮らし未来館:2011年開館。地球温暖化/再生可能エネルギー/資源循環が学習できる。
*焼却灰埋立地の上の大規模太陽光発電所:埋立地なので掘ってはいけない事などから、埋立地の有効利用として、今後国内で脚光をあびるのでは。

「デカップリング」 
*経済発展と環境のデカップリング(非連動)
*川崎市のGDPは1990年頃よりほぼ横這い、又人口も増加しているのに、ごみの量は‘90をピークに減少。
*環境技術を活かした中国の瀋陽市との連携(環境5機関の協力に関する覚書)。
*アジア太平洋エコビジネスフォーラム。
*PM2、5の監視体制と成分分析調査。
026.JPG
「リスクに備えて」 −川崎市知的財産戦略―  ―かわさき知的財産スクール―
*国連グローバルコンパクト及びかわさきコンパクト:国際連合が提唱する企業・団体の自主行動原則で、川崎市は都市として日本で初めてこのプログラムに参加。
*法的根拠をいつも念頭に:国際協力・貢献は、地域のため、市民のためになっていることを念頭に。

「エコタウン思潮」
*川崎エコタウン:背景には、川崎市の産業構造の変換・地域経済の活性化、臨海工業地帯の再生、ごみ非常事態宣言などがあり、1997年に通産大臣からエコタウン地域の承認を受ける。
*先進的なリサイクル施設の集積:半径約1、5kmに主要企業のリサイクル施設。
*影響を与えた人:Gunter Pauli氏(ゼロエミッション構想)、吉川弘之氏(元東大総長、産総研理事長)
*国レベルでは、経産省と環境省のエコタウンがあり、地方自治体が策定するエコタウンを共同承認する。
*川崎市の優位性は、幅広い産業構造、工業専用地域、大消費地(環境について高い市民意識)。

「臨海部の動き」―今から見てもダイナミックだった―
◎危機意識の共有、◎低未利用地の減少(前年比較、横浜市との比較)、◎川崎臨海部再生リエゾン研究会(学識経験者、企業で構成され、21世紀型の新たな産業立地促進と新たな街作りを推進)、◎かわさき逆工場ネットワーク(臨海部製造業は環境負荷がほぼゼロの産業に変身するとともに、その産業競争力を飛躍的に高める)、◎都市再生緊急整備地域、◎構造改革特区、◎川崎臨海部再生プログラム(産業再生・環境再生・都市再生)、◎アジア環境テクノハブ、◎都市のサスティナビリティの実現、◎国際連携によるエコタウンコンセプト移転の取組(2009年、瀋陽市と協定)、国際環境計画UNEPとの連携、◎国際貢献と地域振興(環境技術での貢献)、
◎UNEP連携(国際的に、環境は川崎に行けばわかる、ビジネスになる)

川崎の果たすべき役割:
--川崎市は50年間かけて順次培った環境技術が産業発展の負の部分に対応できたが、これからの新興国は大変。
--川崎市は、経済援助はしないが、ビジネスベースを基本に川崎の経験を海外に移転し、地球規模の環境問題の解決に貢献する。

主な質疑応答
質:行政と民間のありかたについて?
答:川崎の成功例は、行政と民間が一緒に考え始めたことから始まった。

質:国際環境都市川崎のコアな部分の推進者は?
答:市長のリーダーシップと、それを支えた市民(選挙民)。川崎の次のステップは、文化都市への推進。
以上

資料はここをクリックしてください。
posted by EVF セミナー at 18:00| Comment(0) | TrackBack(0) | セミナー紹介