2016年07月28日

EVFセミナー:「地デジの日本方式を最初に採用したブラジルに於けるリオ五輪」

[演題]地デジの日本方式を最初に採用したブラジルに於けるリオ五輪
   −そして、テレビはどこへゆくのか?−

(文責:和田政信)


開催日:2016年7月28日(木) 15:30〜17:30
会場 :新現役ネットA会議室
講師 :杉本 篤実氏(元NECエグゼクティブ・エキスパート)、
略歴 :室蘭工業大学を卒業、東京オリンピックが開催された1964年にNECに入社。1973~1985年はデジタル映像機器の開発。1990~2001年はハイビジョンの推進とデジタル化の推進。1997~2007年はDiBEG(デジタル放送技術国際共同研究連絡会)の初代議長やコンサルタントなどを務めて日本の地デジ方式の国際普及に取り組み、南米ブラジルをはじめ18ヶ国での日本方式採用に結びつけた。
デジタル映像機器(フレームシンクロナイザーおよびデジタルビデオエフェクト)の開発により、NECは米国テレビ芸術科学アカデミーより二度のエミー賞を受賞。
現在は、室蘭工業大学同窓会関東支部東京EEC会長、日本ビデオコミュニケーション協会理事、映像情報メディア学会フェローなどの立場で活躍している。
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要約 :テレビ放送のデジタル化の歴史と、その過程で日本方式のデジタル放送技術をブラジル筆頭に世界に広めていった取組を解説いただいた。ブラジルが日本方式を採用した背景には、日本方式が技術的にブラジルの環境に適していた面もあるが、ブラジルにおいて定着しているジャポネース・ガランチード(日本人は保証付き)という、移民が築いた日本人への信頼感が大きく貢献したとのことであった。
ブラジルの国情、リオデジャネイロオリンピックの見どころなどブラジルに関する話題を提供いただくとともに、テレビ放送の歴史を振り返りと今後のテレビ放送の方向性などのテーマについても解説いただいた。
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講演概要:
日本のテレビ放送は1953年に白黒で開始され、その後カラーの導入、ハイビジョンの導入に取り組んできた。その間、テレビ信号はアナログ方式を採用してきた。1973年より映像システムがデジタル化され、1990年頃より送信系以外のシステムのオールデジタル化が進んだ。
デジタル化により、(i)ハイビジョン放送や多チャンネル放送が可能となる、(ii)ゴーストのない鮮明な映像を見ることが出来る、(iii)移動時も安定した画像の受信が可能となる、(iv)周波数の有効利用、(v)データ放送など高機能化を図れることなど、ユーザーに大きなメリットがある。

2000年当時、世界の地デジでは日本方式と呼ばれるISDB-T、欧州方式のDVB-T、米国方式のATSCの3方式がありました。そのような状況の中で、日本の業界はデジタル放送技術国際共同研究連絡会(DiBEG)を設立、アジア、太平洋地域、南米への日本方式の展開を強力に推進した。2000年からブラジルと交渉を開始し、2006年にブラジル政府が採用を決定した。その後南米での採用国が拡大、さらにアジア・アフリカでの採用活動を行い現在は世界で18ヶ国が採用するまで大きく展開した。
規格策定の分野で日本は常に欧州の後塵を拝しているが、地デジの分野で日本方式(ISDB-T)を作りそれを18ヶ国採用にこぎつけた素晴らしい成果は杉本篤実氏の強力な指導力と関係業界・政府連携の賜物と考えます。

ブラジルの面積は日本の23倍、人口は206百万人でともに世界第5位の規模です。最初の日本からの集団移民は1908年でした。100年を超える移民の歴史で日系人は190万人を数え、人口の約1%に相当するそうです。日本方式の地デジがブラジルで採用された背景には100年を超えた日系人が培ってきた信頼と日本に対する信用が大きく貢献したことといえます。地デジの日本方式の採用の背景には技術やコストだけでなく、国家間の信頼感のみならず民族間の信頼感が大きく貢献していました。 なお、ブラジルのGDPは世界7位の規模ですが、貧困線未満の人口が31%を占め、全体の生活レベルの向上が大きな課題といえます。

リオデジャネイロオリンピック競技施設や見どころを伺ったが、中でもNHKが取り組んでいるスーパーハイビジョンでの配信計画は今後のテレビ受信機のあり方を考えさせられたものでした。 またNHKと民放で合わせた2500時間以上を共同サイトでネット配信するとのこと、今後の映像配信は、ネットやオンデマンドと地デジ放送が並行して進んでいくことを感じさせるものでした。

今後のテレビの進む方向として、超高精細テレビ放送(4Kと8K)はいまだに、アナログテレビ受信機をデジアナ変換して利用している人間にとっては何故ここまでやらねばいけないのか、理解に苦しむところもありました。今後の動画配信ビジネスそれもVideo on Demandが成長分野であるとの説明は納得できました。

デジタル映技術開発一筋に取り組んでこられた杉本篤実さんが、DiBEGの代表として日本方式を海外に展開してゆく姿には感心させられました。 製品を売り込むのではなく、相手先の国をよく理解し、その国に役立つ技術システムを導入しようとする姿勢は素晴らしいものです。このようなアプローチが地デジの日本方式採用国が18ヶ国にも拡大した要因でしょう。

杉本篤実さま本当にありがとうございました。
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講演後のQ&A:
Q1 地デジの方式は今後どのように変わってくるのか
A1 地デジは開始されてから欧米では18年、日本では13年が経過した。通信と違って放送方式は簡単には変えられない。通信との対比において地デジの存在価値は変わるかもしれないが、日・米・欧の3方式はしばらくこのまま使われる。4k放送はCATVや衛星が使われる。
Q2 動画の配信、ビデオ・オン・デマンドの今後は?
A2 スマホなどの発達などによってオン・デマンドな動画配信ビジネスは、ますます発達するだろう。しかしながら、最大の広告媒体としてのテレビはまだ続くのではないか?
Q3 日本方式をブラジルが採用した技術的な理由は何か?
A3 日本方式はノイズへの強さとワンセグを見られる点をブラジルが評価した点と理解している。
Q4 日本方式でノイズへの強さを、どのような技術的手段で成功させたのか?
A4 タイムインターリービングという、電波の強さが時間的変化による影響を抑止する技術を採用したことが大きい。
Q5 今後の電気技術者の生き方は?
A5 私が卒業した頃には、電気工学を学んだ者には回路設計という仕事があった。現在では、電気通信技術の世界では、多様な標準規格を理解して目的とするシステムの構築を論理的に行える。いわゆる回路設計はもはや必要ない。アンテナ、送電、配電の仕事ではアナログ的な回路設計の仕事は残っている。
ビジネス成功のためには、標準化されている技術の上に新しいサービスを生み出すアイデアが重要。その典型がGoogleやAppleだ。
Q6 4Kテレビ受信機はいつごろ購入すればよいのか?
A6 2018年から本格放送が開始されるので、このタイミングよいのではないか?
以上
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2016年06月23日

EVFセミナー報告:不安の海の羅針盤―環境リスク学

[演題] 不安の海の羅針盤―環境リスク学
(桑原 敏行)


開催日時:平成28年6月23日(木) 午後3時30分〜6時00分
場  所:新現役ネット事務局A会議室
講  師:中西 準子 氏  
(国立研究開発法人産業技術総合研究所名誉フェロー・横浜国大名誉教授)

 今回講師をお願いした中西準子氏は、横浜国立大学化学工業科卒業、東京大学大学院工学系研究科合成化学専攻博士課程修了後、東京大学工学部都市工学科において、公害問題・下水道を研究され、さらには環境リスク論の研究を深めてこられました。東京大学環境安全研究センター教授、横浜国立大学大学院環境情報研究院教授、産業技術総合研究所化学物質リスク管理研究センター長、同安全科学研究部門長、フェローを経て、現在は、国立研究開発法人産業技術総合研究所名誉フェロー・横浜国大名誉教授・横浜県立医科大学客員教授としてご活躍されています。定量的な環境リスク評価と環境リスクマネジメントの研究において優れた業績を上げ、2003年春の褒章で紫綬褒章。2010年文化功労者顕彰、2013年瑞宝重光章を受章されています。
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 今回の講演についてですが、新聞・テレビなどでも、多く取り上げられている”リスク”という問題について分かりやすく説明をしていただきました。講師は、環境影響を環境リスクと表現し、数値で評価することの必要性を主張してきました。講師が言うリスクは、個々のリスクをゼロにすること、少なくすることが、リスク管理の目的ではなく、総体としてのリスクを低下させることが目標だという点です。この世には、種々のリスクがあり、それらは、”リスクトレードオフ”の関係にあるので、総体としてのリスクを減らすためには、従来のリスク評価法や管理原則では事態を打開できません。では、どういうリスク評価や管理をすべきなのか?今回は、講師がこれまでに行ってきた、下水道、化学物質、放射性物質などを例にして、判りやすく解説して戴きました。

講演概要:
 先ず初めに、下水道の研究からスタート。工場排水の処理に当たっては、異種の工場排水の混合処理よりも個別に工場毎に処理したほうが効率的であり、流域下水道システムよりも単独公共下水道が水循環の観点から優れている、また人口密度が小さい農村部においては個人下水道のほうが効率的。
 下水道の処理を考える場合、水循環(水の多面的な効用)の点で良くても水質(きれいな飲み水)の点ではマイナスということもあり、一つの目的を達成すると別のリスクが出てくるというRisk Tradeoffs関係にある。それは下水道の問題だけでなく、我々が直面している多くの問題で、Risk Tradeoffs関係がある。多面的に見る必要がある。
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 二つのいい目的がぶつかってしまう問題を解決するには、異種のリスクをあえて共通の尺度で評価する必要があり。その評価方法を開発すべき。
 環境影響評価で考慮すべき項目は、経済的な損失(P1)、人の健康への影響(P2)、生態系への影響(P3)、資源の消費(P4)、ベネフィット(P4)の5項目に絞るとして、P1、P4,P5はコストで換算し、P3は影響の深刻度を「損失余命」で、P4は「種の存続確立」で表現することにより、定量化すべき。
 リスクの和が最小になるようにすることが最もリスクを少なくする方法であり、何らかのリスクを許容するという考え方がない限り安全対策は進まない。
 福島の除染目標値については、日本政府の態度は右往左往という状況である。公式には、ICRPの考え方で20mSv/年と言いつつ、現場では1mSv/年と説明している。1mSv/年でもリスクはあるのだが、恰もそれがリスクゼロであるかのような説明になっている。しかしリクゼロにこだわっていては問題が解決しない。正解はないが、まずは、当面の目標値を、リスクの数値を基礎に決めるべきである。例えば除染目標値5mSv/年というように解を見つけるべきではないか。
 また福島第一原発事故の経過とその後の対策については、事故後に原子炉などの性能要求溶融は決められたが、安全目標としての健康リスクの数字の明示が必要。

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Q1:自動車や飛行機の場合はリスクがあるとわかって、メリットを享受している。環境問題でも同様に考えるべきなのに、リスクはOでなければと考えるのはおかしいのではないか。
A:確かにその通りで、そういうことを国が主張しなければならない。国はまずは補償しますと言ってからリスクを説明すべきところを、補償は言わずにこの程度の放射線なら大丈夫という言い方をしてしまったのがまずかった。
Q2:そもそも性格の異なるリスクの定量化ができるものなのか。
 A:温暖化のリスクと原子力のリスクを比較するような場合には、正確な定量化は確かに困難であるが、一定の過程の下に計算し、国が政策選択をし、経過を見ながら、その定量化で使われた仮定などが正しいか、否かを検証していくべきである。
Q3:原発のリスクは、他のリスクとは質的に異なるのではないか。
 A:違いを言い出すとみな違うことになる。環境問題で何を問題にするかを決めておき、多少無理はあっても、健康リスクについては、損失余命という数量化で一本化してはどうかと主張している。
Q4:福島の女性とは結婚してはならない等のデマにはどう対処すればよいのか。
 A:デマの解決方
Q5:「種の絶滅命」というのは果たしてリスクなのか。数量化が困難ではないか。
 A:その種を大切にしどの種を軽視するかは難しいが、議論しながら進めていかざるを得ない。
Q6:環境問題のリスクの数量化で国際的な合意形成の仕組みはないのか
 A:学者や研究の分野で葉合意形成ができつつあるが、各国の行政レベルではできていない。今後努力継続の必要がある。

 セミナー後、多くの方から、リスク問題を数量化して総体としてリスクを少なくするという考え方は非常に分かりやすく、リーズナブルで、このような考え方に感銘を受けたとの感謝の言葉が聞かれました。
中西先生、本当にありがとうございました。
以上
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2016年05月26日

EVFセミナー報告:いま、中国で起こっていること

[演題] いま、中国で起こっていること
〜資源および環境問題も、さらなる相互理解のためには〜

(奥野 政博)

開催日時:平成28年5月26日(木)午後3時30分〜6時00分
場  所:新現役ネット事務局A会議室
講  師:布施 玄 氏(北京在住オイルエコノミスト 元出光興産(株))

 今回講師をお願いした布施玄氏は、海賊とよばれた男と同じ神戸大学(中国経済ゼミ)を卒業後、出光興産に入社して主に海外部門(原油輸入・事業計画)と販売業務に従事され、内のべ13年間、中国(北京、香港、大連)で勤務され、7年前に出光興産を退職された後、北京に在住され石油エコノミストとして調査研究、経営コンサルタントやビジネス講座講師などで活躍されております。
05261.jpg 今回は、最近のホットニュースから中国の理解に必要な事柄についてお話しを頂いた後に、中国のエネルギー消費状況と環境問題について概説と現地の人々の意識や危険な現状と改善努力について紹介頂いた後、政治や経済運営の裏に潜む「中華意識」と云う延々と続いてきた中華文明の実際、日中間での相互の反中・反日感情の原因や中華文明と日本がどう打ち解け、理解しあえれば良いのかなど熱の籠ったお話しをたくさんの図表や写真を交えて予定時間を大幅に超えてお話しして頂きました。

講演概要:
 先ず初めについ最近、肌身に感じた中日友好病院での看護師の蕁麻疹治療での注射や超音波検診の見事さや我が国のマスコミが揶揄している中国の経済減速問題について購買力GDP(ドル人民元換算)の視点から、世界全体のGDPの伸び(1.5〜2%)が16%のシェアを占める中国のGDPが6.5%に減速したと騒いでいるマスコミが中国の潜在する実力という真実を伝えていないことを指摘された。
 中国理解のキーワードとして「マスコミは信じるな」「大数原則」「正しいマクロ政策〜わかりやすい評語で表現〜」「法律意識」「孔子の国&国益を理解(リアリズム)〜四書五経と孫子〜」「熱帯からツンドラまでの国土」を挙げられた。
 「大数原則」の例として我が国最新の製油所(出光愛知:1975年竣工)に対して中国では1974年以降100ヶ所以上の製油所が建設され、今では建設・運転ノウハウを十分吸収して建設コストも日本の1/4で世界の最先端を行っている。
 「正しい経済政策」の例として1980年代のケ小平の改革開放による市場経済への移行、朱鎔基の2001年にWTO加盟を果たして世界の工場化により世界の富を集中、胡錦濤の中産階級を救った小康和諧の道、そして習近平の中国の夢を目指してインテリ化した国造りと李克強の都市化政策を挙げ、我が国のマスコミは分析力が弱くマスコミは信じるなとのキーワードに繋げられた。
 貧富の大きな格差について、生活習慣、将来の進路と消費習慣から常識では通用しない大変な世界(自分中心、法律を守らないなど)であることを日本と中国のGDPの正規分布概念図で横軸をIQに準えて説明された。
 2016北京モーターショーの写真を示して、日本のマスコミが紹介している電気自動車、ハイブリッド車や燃料電池車より当面油が安いのでガソリン仕様のスーパーカーが人気を集めているとのこと。
 中国の石油に関する世界ランキング(BP統計2015年版)について、原油確認埋蔵量が第14位、原油生産量が第5位(トップ3のアメリカ、サウジ、ロシアの順位は年に依って入れ替わる)、石油消費量がアメリカに次いで第2位(日本は第3位、中国は日本の2.5倍)で精製能力もアメリカに次いで第2位(日本は第5位、中国は日本の3倍強)で、石油消費量1100万B/Dに対して原油生産量が420万B/Dしかなく、中東依存度が大きいためマラッカ海峡とホルムズ海峡への依存度を如何に軽減するかが中国のエネルギー戦略上の優先課題となっている。現在までパキスタン、ミャンマー、ロシアからの陸上パイプラインや鉄道輸送を進めているが量的に限界があり、公海のマラッカ海峡とホルムズ海峡プラス南沙諸島や尖閣諸島を如何に自分の領土にするのかが中国の軍事上の戦略(過去の歴史から戦争は石油で決まり、中国は戦争しないが何時でもする心積もり)であり底には孫子の兵法が息づいているとのこと。
 中国は陸上で14ヶ国、海上で6ヶ国と国境を接していて、これらの国と緊密な経済・貿易で協力関係にあると共に多くの歴史問題・領土問題を抱えていること、世界と日本の排他的経済水域面積を図表で説明され、地政学的な領土の重要性を再認識させられた。
 この度のCOP21(パリ協定)について、1990年を境に二酸化炭素排出量削減を努力目標とした欧州に対してそれ以前に排出量削減してきた日本がお金を持ち出しただけのCOP3(京都議定書)と比べると世界の二大排出国の中国とアメリカを参加させ排出量削減を縛り付けず将来的に上手く運用されるように仕向けたスキームとの評価は前回のセミナー(COP21・パリ協定を活かし、脱炭素社会を目指すために)の山岸先生のご講演と重なっていた。世界の4分の1の二酸化炭素を排出する中国では老朽化した火力発電所を地方政府の税収入と利権絡みで容易に廃止できないこと、世界の自動車生産台数(約9千万台)の25%弱を占める中国は自動車の大消費国で2003年から2015年の中国市場での乗用車販売量が12倍に増えている事とトヨタの世界全体の広告宣伝費の80%が中国と云う事実が一致している。このため中国の大都市では2017年から欧州と同等もしくはそれ以上の排ガス規制(ユーロ6)を前倒し導入すると共に2020年前後には無公害車の販売義務付け、燃費基準も20年までに先進国並みに引き上げ、深刻な大気汚染抑制に繋げようとしているとのこと。
 中国のシェールガスは水がない、僻地にしか存在しない、地層が深いと云う三重苦で開発は40〜50年先で大慶原油や勝利油田と共に戦略的地下備蓄と考えられているとのこと。
 再生可能エネルギーには熱心で、風力発電、水力発電(三峡ダムは世界No.1)、太陽光発電設備容量および電気自動車台数は何れも世界No.1で、ソーラーパネル機器は世界の18%を占めている。3月にアモイに行ったら乗合自動車は多くが電気自動車で、天然ガスプラスハイブリッド車も目立ったとのこと。
 原発については25基が稼働中、27基が建設中で中国の強みは地震や津波が無く、過疎地が多く立地には有利とのこと。講師がすごいと感じたのは東日本大震災の後、即審査を止め3ヶ月後に審査を再開し、建設を再開したことで、内陸の原発許認可・審査も進んでいて、電気自動車の普及と絡んで電力は原子力で賄い、戦争に使える石油は軍事面でも温存しておく構想と考えられるとのこと。
 環境汚染については水汚染、大気汚染、土壌汚染と食品安全問題、水資源とも最低レベルで、北京に住んでいて昨年の5月までは黄河とその下の水を飲んでいたが、5月からは揚子江の水に代わり、沿海地域では海水淡水化事業も積極的に進められているとのこと。
 北京の大気汚染については、今年は風が強く比較的良好だったものの煙草の煙の中にいるような日もあったが、マスコミはその日だけを取り上げて報道、日本も四日市、尼崎、川崎と経験しいつか来た道と同様の世界ではとコメントされていた。
 エネルギー・環境問題の最後に、石炭が中国の一次エネルギーの70%を占めているがこれを減らすことによりPM2.5や大気汚染問題を解決すべく、家庭用石炭もかなり減らしても老朽石炭火力が広い国土の内陸部にあり送電距離の問題もあり中々閉鎖できない事実を説明された。

 中国を理解するために「人類の知恵は中華の知恵」について、ホモサピエンスのGreat Journeyから「人類は旅することで賢くなる」「旅した先に良地」があって「3人寄れば文殊の知恵」で6大文明(日本では4大文明)が育ったこと、その中で同じ民族が同じ言葉を使って存在しているのは黄河文明のみ、その知恵の積み重ねが中華5000年の中華文明、
中華文明の欠点は積み重ねだけ(漢方医学)、漢学という伝統の知恵、仁義礼智信(儒教)の国、中国の小人と大人、三十六計(騙す技術=小人)と孫氏の兵法(経済に如何に損失を与えずに戦いに勝つか!戦争するな!)、古い知識・四書五経を中心とした単なる記憶詰込みなどと批判されながらも1300年も継続した科挙試験(官僚登用試験→功名利禄)、漢字文化圏などについて中国での体験を交えて解説して頂いた。
 最後に海野恵一氏のブログから「ジオポリティックス」の10箇条を引用されて予定時間を大幅に超過して今回のご講演をまとめられた。

Q1:中国は減速経済に入ったと言われているが正しいか?
 A:日本のマスコミが減速と強調するが世界第2位のGDPの国が6.5%伸びていて3年前に8%伸びていた時の増えた分と今の6.5%の増えた絶対値を比べると決して少なくないと考え、減速をあまり強調すべきでない。
Q2:台湾が蔡総統になって今後、台湾とどうなるのか?
 A:中国としては非常に気に入らない。前回の陳水扁さんの時は台湾の沖合に軍艦を持って行って反発を買った。一昨年台湾に行ったが、蔡さんは人気があり非常にマイルドな方で、現実路線(現状維持)で行くと思う。蔡さんも中国人も陰徳(大人)と陽徳(小人)をキチンと使い分ける。
Q3:一人っ子政策がダメになってたくさん作って良くなったがどう思われるか?
 A:一人っ子政策でかなり歪な人口ピラミッドになっているがハードランディングも可能と思う。不味かった点は、インテリ層が一人っ子で農村では人手が欲しく闇っ子が多いが、インテリ層=大人(たいじん)層が衰退するわけではなく結果としては失点にはならないと思う。
コメント:日本で26年生活している中国人で上海と仕事で行ったり来たりしているが、バランスの良いお話しを聴けて感謝します。日本と中国は発展の段階が違うと感じている。

 セミナー後の反響としては、日ごろ聞きたいと思っていた中国の実態に肉薄したお話しで知的好奇心を満たして頂いた、マスコミの勉強不足を現地での生活実感を元にシッカリ指摘して頂いた、目から鱗の布施歴史観と中国論を聞かせて頂いて充実した半日を過ごさせて頂いたなどポジティブなコメントを頂きました。布施先生、本当にありがとうございました。
以上
講演資料:
「いま、中国で起こっていること」
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2016年04月28日

EVFセミナー報告:COP21・パリ協定を生かし、脱酸素社会を目指すために

EVFセミナー報告
  (演題)COP21・パリ協定を生かし、脱酸素社会を目指すために

EVFセミナー概要報告 文責:山田 和彦

開催日時:2016年4月28日(木)15:30〜17:30
場所:港区田町 新現役ネット会議室
講師:WWFジャパン(World Wide Fund for Nature Japan 、公益財団法人世界自然保護基金ジャパン)自然保護室 気候変動・エネルギーグループリーダー
   山岸 尚之 様

セミナー概要報告
 今回講師をお願いした山岸様は、WWFジャパンにおいて10年以上にわたり気候変動担当オフィサーとして、政策提言・キャンペーン活動に携わるほか、国連会議での情報収集・ロビー活動に携わってこられました。
 2015年11月から12月にかけてフランス・パリで開催されたCOP21においても実際に参加してこられました。
 今回のセミナーでは、COP21パリ協定が成立したことの意義についてお話しいただくとともに、現場に立ち会った者だからこそ感じることのできる“世界の環境に対する熱気”についても報告いただくことができました。
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1. パリ協定って?

・196か国の多国間交渉で、例えてみると、複雑な連立方程式を解くような交渉であった。
・パリ協定が合意に至った要因としては、
1) 議長国であったフランスの巧みな采配
2) 「先進国」と「途上国」の対立を超えた歩み寄り
3) 「グローバルな合意」を求める機運
が大きかったと思う。
・合意されたパリ協定のポイントとしては、
1) 2度未満:世界の平均気温上昇を産業革命前と比較して、2度未満に抑えることが目標として掲げられたこと(1.5度以内に抑えることの必要性にも言及)
2) 長期目標:今世紀後半に、世界全体の温室効果ガス排出量を、吸収量と均衡させる(実質ゼロにする)
3) 5年ごとの見直し:各国が5年ごとに目標を見直すという仕組みを組み入れたことで、現状では達成可能となっていない「2度未満」達成への方策を組み込んだこと
があげられる。
また、国別目標を達成するための資金、技術、キャパシティ・ビルディング(人材育成等)などについても言及された。

2. 日本は?

・日本の現在の温室効果ガス排出量の削減目標は、
1) 2020年までに2005年比で3.8%削減
2) 2030年までに2013年比で26%削減
3) 2050年までに80%削減
・しかし、欧州系の複数の研究機関による合同評価では、日本の削減目標は「不十分」という評価にとどまっている。
・ここ23年間で石炭火力による発電量が3.7倍に増えており、そのため、CO2の排出量も2.8倍に拡大している。これに加えて、新たな石炭火発の増設計画が乱立しており、このままでは、「不十分」とされた目標の達成すら危うい。
・パリ協定成立により日本は、(1)基本法制定/法改正、(2)26%削減目標を超えうる国内対策の整備、(3)早期批准、(4)2030年目標を見直し、2019年に再提出、(5)2050年までの長期計画策定、を求められている。
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質疑
Q. パリ協定では目標の達成は義務ではない、ということになっている。こういう縛りのないやり方でうまくいくと考えるのは、楽天的すぎるのではないか?
A. 確かに、各国の目標値合計では、必要な削減量に足りないのが現状だ。なのに合意した。しかしこれは、5年ごとの見直しの中で、むしろ目標値を高めていくことを目的としたためである。
Q. 今世紀後半にCO2の排出量をマイナスにするということは、具体的にどういうことを想定しているのか?
A. バイオマス発電由来のCO2を地中に埋めることになれば、CO2排出量はマイナスになる。
Q. パリ協定での中国などの評価は?
A. 政治的で難しいところである。ただし、アメリカと中国は、COP21の1年前に目標値を発表していて用意周到だった。たとえ不十分な目標であったとしても、1年前からきちんと発表されると批判はしにくい。中国の「1次エネルギーの20%を非化石に」という目標も確かに不十分だが、2018・19年の見直しが大事だと考える。
Q. 日本の評価が低いのは努力を怠っていたのか、それとも政府の危機感がないためなのか?
A. 産業界の事情を慮ってみれば、日本の景気が悪く、設備投資が弱まっている間に、他国に追いつかれ、一部は追い抜かれたということではないかと思う。

講演資料:
「2016年4月28日Cop21」
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2016年03月24日

EVFセミナー報告:苫小牧におけるCCS実証プロジェクトについて

EVFセミナー報告
  (演題)苫小牧におけるCCS実証プロジェクトについて


開催日: 平成28年3月24日(木) 午後3時30分〜5時30分
場所:  新現役ネット事務局会議室
講師:  佐々木 孝 氏
     日本CCS調査株式会社 
      プラント本部 プラント技術部 プラント技術グループ長

新聞にも報道されているように、日本のCCS (Carbon dioxide Capture and Storage)実証プロジェクトのCO2圧入が来る4月初めから開始される。今回は日本のCCS実証プロジェクトの先頭に立って活躍されている講師に、その最新情報を交えたCCSの話を聞くことができた。
CCSは、火力発電所や工場などで排出されるCO2(Carbon dioxide)を大気中に放散する前に捕らえて(Capture)、地中に貯留する(Storage)技術である。CO2を回収することと地中に圧入する技術が重要である。
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日本のCCS実現に向けて、2008年に電力会社、エネルギー各社、エンジニアリング会社など35社の出資により日本CCS調査株式会社が設立され、経済産業省の委託を受けて苫小牧CCS実証試験プロジェクトを進めている。講師は設立当初からこのプロジェクトに参加されている。プロジェクトは順調に、調査、準備の工程を進み此度のCO2注入の段階に至った。2020年には技術の実用化を目指している。
地球温暖化防止に関して昨秋パリで開催されたCOP21では196ヵ国により新しい対策枠組みが合意された。日本のCO2排出量削減目標は2030年度までに2013年度(排出量13.6億トン)の26%(3.5億トン)である。
IEA(国際エネルギー機関)の報告書によると、CCSは、2050年までの世界の累積CO2削減量の14%を担うことが期待されている技術である。
本プロジェクトでは、隣接する石油精製所で水素製造工程から発生するCO2を海洋汚染防止法に適う99.%以上純度に回収し、年間10万トン以上を約100〜230気圧に昇圧して陸側の2本の傾斜井で3〜4km沖合の地下1000〜3000mの地層に注入する。
CCSの2か所の注入地層は、流体を通さない泥岩層で覆われた砂岩や火山岩等隙間の多い地層である。
EOR(Enhanced Oil Recovery)や陸上型(オンショア)・海上型(オフショア)深部塩水層へのCO2貯留は既に行われているが、圧入したCO2の安全・監視(モニタリング)を含め十分な情報があるとはいえず、世界をリードする我が国の技術を確立したいとしている。特に、
・陸上から海底部の地下への斜坑を利用した注入
・CO2分離・回収するエネルギーを最小とすること
・貯留の安定性を確認し、かつ将来的にも安全を見張るモニタリングシステムの確立
に注目している。
講師らが進める新しい分離・回収プロセスに必要なエネルギーは、従来法の3分の1程度になると予想されている。
本プロジェクトは社会受容性が大事なこともあり、講演会、見学会など広報活動を広く行っていることも報告された。
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今回は話題の最新性もあり多くの参加者を集めたが、講師からCCSに関する技術を大変わかりよく話していただいて有意義なセミナーとなった。(正会員 津田俊夫)

苫小牧CCS実証試験の概要については、日本CCS調査(株)のホームページを参照してください。
www.japanccs.com/

 
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2016年02月19日

EVFセミナー報告:総会記念講演会「我が国が進める小型超音速機の開発と世界展開」

EVFセミナー総会記念講演会
「我が国が進める小型超音速機の開発と世界展開」

                   EVFセミナー概要報告 文責:磯野 克之


開催日 : 2016年2月19日(金) 15:30〜17:30会場  : 国際協力機構市ヶ谷ビル(JICA市ヶ谷ビル)201AB会議室
講師  : 坂田 公夫様
      (株)超音速機事業企画  代表取締役社長
      SKYエアロスペース研究所 所長
      航空総合技術政策フォーラム 代表

    (講師略歴)
      1972年 上智大学大学院卒業  理工学修士
       同年  科学技術庁(現文部科学省)航空宇宙技術研究所(NAL)入所
      1980年 米国スタンフォード大学 研究員
      1984年 科学技術庁(現文部科学省)宇宙企画課 課長補佐
      1989年 同庁原動機部 原動機空力研究室長
      1998年 次世代超音速機プロジェクトセンター長
      2005年 JAXA理事、総合技術研究本部長兼航空プログラムグループリーダ
      2012年 SKYエアロスペース研究所 設立 所長就任
      2014年 株式会社超音速機事業企画 社長就任
      
(要約)
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1.2015年は我が国航空産業にとって、MRJの初飛行やHondaJetの販売開始、国内の体制として我が国航空産業発展に不可欠な「航空基本法」に関連する議論も出始め、記念すべき年となった。

2. また、JAXA超音速試験機では、D-SEND(低ソニックブーム設計概念実証)プロジェクトの飛行試験(D-SEND 2)により「低ソニックブーム技術」の実証に成功した。
 (*ソニックブーム:超音速飛行時の瞬間的爆音)

3.我が国の航空機産業の世界シェア―(売上高)は、僅か2.7%であるが、将来的には20%程度まで伸ばしたい。このための国の政策の果たすべき役割は大きい。

4.我が国における航空産業は、残された最大の産業領域である。現在の自動車産業に次ぐ我が国の成長のけん引役ともなる重要産業であり、民間の航空機開発・製造体制確立と強固な中小企業クラスター体制づくりが有効である。いまこそ、その絶好の機会である。

5. これからの航空に大きなインパクトを与える最大の挑戦である超音速機の開発は、我が国の格好のテーマであり、小型機から着手することで効果的なプログラムとなる。
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(概要報告)
1. 2015年我が国航空にとって記念すべき年
(1)MRJ初飛行
  ・航続距離は、アメリカ、欧州内を飛行するには適している。
  ・技術的レベルは高い。
  ・販売面では、世界需要が拡大しており、可能性は高い。
  ・国の責任で発行する型式証明は、世界販売の必要条件であり、官民での能力向上が必須である。
(2)HondaJet販売開始
  ・Jetエンジンから開発し、民間だけの力で誕生させた。
  ・速度はマッハ0.72と速く、航続距離(2,185km)もあり、着陸距離(914)は短い。
  ・主翼上面にエンジンを配置し、性能UP、客室と荷物室などの内部スペースの拡大を実現し、商品価値が高い。
(3)JAXA D-SEND-2 実証成功
  ・超音速機実現の最大の課題である「低ソニックブーム」の実現にむけ、飛行試験による技術実証に成功した。
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2. 航空産業に課せられた期待と政策
(1)我が国の航空産業は、世界シェアの僅か2.7%と低く、産業構造変革による成長路線の切り札となりうる。(世界シェア20%に)
(2)そのためには、国の産業政策の出番であり、現在の関係4省庁の連携のみならず、国としての研究、技術基盤強化、完成機開発支援、人材育成、中小企業振興など総合的政策が必要となる。
(3)自動車産業にならう基幹産業の一角として航空機産業振興の政策づくりは与党内では進められているが、より幅広い議論と活動が必要となる。
   
3. 「航空基本法」草案の提案
  我が国の航空産業を質・量共に世界的なものに育てるためには、航空産業ビジョンを基に、省庁間の壁を取り去った国としての総合推進が必須である。

4. 諸外国の航空産業政策
2000年初頭から、米国、欧州、中国、イギリスなど、ほとんどの航空産業で先行する各国・地域で、目標とすべきビジョンをもとに強力な政策を出動している。


5. 航空産業クラスターと中小企業の振興
(1)航空機産業のインテグレータの確立とプロジェクトマネッジメントの人材育成。
(2)航空産業関連企業は多種・多様で、部品数は300万点に達し(自動車の約百倍)、多様な技術、素材、製造手法などが必要。インテグレータをトップにサブシステム産業、部品・素材産業、加工、組み立て産業など極めて裾野が広い。
(3)そのため、幅広い業種の中小企業参入による航空クラスターを構築することで、産業および技術の大きな波及効果が期待でき、我が国工業力全体の向上に寄与する。
(4)産業クラスターには、多様な中小企業の集結に加え、研究開発、人材育成、他クラスターとの連携、そして国際活動を含む総合的なマネージメントが必要である。

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6. 超音速機の技術と構想
(1)2003年にコンコルドの飛行は終了した。安全性、経済性、環境性、運用性の点で不十分な点があったため。
(2)超音速機が再び登場するには、ソニックブーム、燃費、排気騒音が課題→小型から開発着手が妥当。
(3)米Aerion社の超音速ビジネスジェット機SSBJ(AS2)は20機受注し、2025年ころの納入を予定している。
(4)JAXAの超音速機技術の研究開発計画では、NEXST計画(1997-2007)、静粛超音速機計画(2007-2016)があり、昨年D-SEND2飛行試験により「低ソニックブーム技術」の実証に成功し、かなりの研究成果が得られている。
(5)我が国の小型超音速機開発の構想
  ・アジア域を1日で往復が可能となる
  ・マッハ1.5〜1.6、席数8〜10席、航続距離4,000〜6,000km
(6)超音速機実現までには、基礎研究、実証プロ、製品化、市場投入、市場生存の過程があり、研究開発から実用化、さらにビジネス競争勝ち抜き(死の谷とダーウインの海)には関係者総力の連携が必要である。
(7)(株)超音速機事業企画は、超音速機・小型機の開発事業企画会社として、超音速機の開発事業はじめ航空機の研究・開発に関する産学官総合事業の推進・企画、関連する政策研究などを行う会社として活動している。

配布資料:
「講演資料」
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2016年01月28日

EVFセミナー「『国土のグランドデザイン2050』を踏まえた『国土形成計画(全国計画)』〜国土計画が描く未来像〜」

EVFセミナー概要報告 文責:佐藤 孝靖


開催日 : 2016年1月28日(木) 15:30?17:30
会場  : 国際協力機構市ヶ谷ビル(JICA市ヶ谷ビル)201AB会議室
講師  : 国土交通省 国土政策局 総合計画課長 白石 秀俊 様

講師略歴:
1988年4月京都大学文学部卒業、国土庁入庁、国土交通省都市・地域整備局地方振興課半島振興室長
同省 総合政策局 政策課政策企画官、人事院人材局交流派遣専門員(みずほ信託銀行不動産コンサルティング部参事役)、
国土交通省 東北地方整備局 建政部長、同省 国土政策局 広域地方政策課長、2014年7月同省 国土政策局 総合計画課長
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演題  : 「国土のグランドデザイン2050」を踏まえた「国土形成計画(全国計画)」
       〜国土計画が描く未来像〜
要約  :最初の国土計画は昭和37年閣議決定の全国総合開発計画であり、その基本目標は地域間の均衡ある発展だった。
バブル崩壊後の平成10年には、それまでの国土計画とやや趣を異にした“21世紀の国土のグランドデザイン”が閣議決定され、平成20年に国土形成計画、昨年8月に「第二次国土形成計画」へと装いを新たにした計画へと発展してきた。この最新の国土形成計画の概要が今回のテーマである。

この計画の課題認識は、人口減少の問題と、今やいつ起きてもおかしくない巨大災害の二つである。
人口減少社会において、安全で豊かな生活を支える国土、持続的な経済成長を支える国土を実現することを目標に定めた。そのための基本構想としては“対流促進型国土の形成”がキーワードに掲げられた。また、国土構造、地域構造としてコンパクトにまとまった地域をネットワークで結ぶことを提示した。地域の多様な個性が「対流」の原動力となるため、地域の個性がますます重要となる。豊かさとな何か、それは新しい文化(暮らし)の創造が不可欠との価値観の大転換を提唱して締めくくられた。
最後に「日本未来デザインコンテスト〜「対流促進型国土」の形成に向けて〜」の公募開始についてが、ペーパー配布の上、積極的な応募の勧誘がなされた。
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日本未来コンテスト: http://www.mlit.go.jp/report/press/kokudoseisaku03_hh_000083.html

講演概要:

1、国土計画について

国土計画とは国土に関する長期的(概ね10年)、総合的(各役所の施策を総合)、空間的(配置計画)計画のことである。これまでの変遷は昭和37年閣議決定の全国総合開発計画(略称 一全総。基本目標:地域間の均衡ある発展)を最初の計画として、昭和44年の新全総、昭和52年の三全総、平成62年の四全総(目標:多極分散型国土の構築)と計画が続いてきた。
バブル崩壊後の平成10年には、それまでの国土計画とやや趣を異にした“21世紀の国土のグランドデザイン”が閣議決定され、平成20年に国土形成計画、昨年8月に「第二次国土形成計画」へと装いを新たにした計画へと発展してきた。この最新の国土形成計画の基本目標としては、“対流促進型国土の形成”が掲げられたのである。

2、課題認識

人口減少と巨大災害の切迫の二つを課題認識としてあげ、特に人口減少について出生率の観点、地域的偏在の面、ライフステージで見た人口移動、都市圏と地方圏における人口移動など多方面からの考察がなされた。これら二つの対応を誤れば国家存亡にもかかわるおそれがあるとの講師の指摘に、一同思わず姿勢を正して聞き入った次第である。

3、計画が描く未来

人口減少社会において、安全で豊かな生活を支える国土を目指し、持続的な経済成長を支える国土を実現することを目標に定めた。そのための基本構想としては「対流」という意外性のある言葉が出現し、“対流促進型国土の形成”がキーワードに掲げられた。また、国土構造、地域構造としてコンパクトにまとまった地域をネットワークで結ぶことを提示した。地域の多様な個性が「対流」の原動力となるため、地域の個性がますます重要となる。豊かさとは何か、それは新しい文化(暮らし)の創造が不可欠との、価値観の大転換を提唱して締めくくられた。途中、地域の個性の具体例として、内閣府の環境モデル都市で、バイオマス産業都市でもある岡山県の西粟倉村の名前が紹介された。

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質疑では、首都機能移転は今日的テーマか、地方活性化として過疎の離れ島に中国人休暇村を建設するアイデア、中小企業、農業を活性化する産業構造論的な観点の質問が活発になされ、その全てに講師から実践的で的確な示唆に富む回答がなされ、古参の会員からは質問の最後に「こんなに気迫あふれるお話が聞けて本日は本当に良かった!」との感謝の言葉があった。講演会のあとの懇親会も大いに盛り上がり、ここでも講師は質問攻めで、殆ど料理に箸をつけられずでした。白石課長さん、本当にありがとうございました。

配布資料:
「国土のグランドデザイン2050」を踏まえた「国土形成計画(全国計画)」〜国土計画が描く未来像〜

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2015年12月15日

EVFセミナー:「有限時代へのパラダイムシフト」

EVFセミナー概要報告文責:(小栗武治)

開催日 : 2015年12月15日(木) 15:30〜17:30
会場  : 新現役ネット A会議室
講師  : 東大名誉教授 鈴木 基之 様 
略歴  :
 カリフォルニア大学にて研究生活を送り、帰国後、東京大学生産技術研究所で環境化学工学の研究室を主宰(のちに所長)。以降、学問領域を超えて総合的な環境問題解決を目指す活動を志す。国際連合大学副学長を経て特別学術顧問、放送大学教授、東京工業大学監事(非常勤)、環境省中央環境審議会会長を歴任。

演題  : 「有限時代へのパラダイムシフト」

要約  :  日本では高度経済成長期にGNPの伸びに比較し消費カロリーが過大な時期が続いた。この時期は4大公害に象徴されるが、上水道の整備などは進み、70年以降は環境汚染対策が順次行われた。これらの進展に従って消化器系感染症は激減し、水環境の状況も改善された。
 しかし、ある地域の生産活動を支えるために消費されている土地・水域面積の合計(エコロジカル・フットプリント)は、地域が供給できる面積を大幅に超過する事態を迎えている。
 今後はこのような有限な環境に調和できる人間活動を構築する必要がある。地球上に蔓延してしまった化学的に活性な窒素の管理も、その一つである。既に拡大しすぎた人間活動はこのままでは破局に向かう。今後有限時代の平衡安定な着地点に向けて人間活動をソフトランディングさせて行かねばならない。

講演概要:
1.地球の容量限界と人間活動の拡大
  日本での一人当たりのGNPと消費カロリーの推移を見ると、高度経済成長の時代に当たる1960年ごろから1970年にかけて一人あたりのGNPと消費カロリーの伸びは大きく、いわゆる高度経済成長時代を経験した。この間の環境を無視した経済一辺倒の人間活動の結果として、4大公害なども経験することとなった。これら局所的な環境問題に対して、70年代に対策が講じられることとなり、次いで80年代には、都市における環境問題への対応、90年代には地球環境問題への取り組みが始まるなど、拡大する環境問題への対策が試みられることとなる。
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 この間、1960年から1975年に掛けて、経済成長の恩恵を受け、上水道が整備され、浄化槽などの普及に伴い、赤痢、パラチフスなどの消化器系感染症が激減し、また1970年からは水質汚濁防止法などの整備により、有害物質による環境汚染に対する対策が実施され、水域の重金属や化学物質などに関する環境基準の達成率が改善されるなど、成功神話が蓄積される面もあった。一面において、水道普及や、遅れて設置されつつある下水道など、大規模なインフラ整備が行われた都市部においては、それらの設備が40〜50年という寿命を迎え、今後はそのメインテナンスに膨大な費用が必要となり、大規模集中型の考え方に反省を求められる状況に至っているとも考えられるようになっている。
 我が国と関連が深いアジアの新興国、途上国においては、全体としての経済成長は著しいが、それぞれの国の状況は多様であり、成長に伴って産業公害、都市環境、地球環境の諸問題が同時に起こっているのが実際の状況であり、いわば複合型環境問題を抱えた状況にあるといってもよく、今後の協力関係を構築していく上で難しい問題を解いていく必要がある。
2.有限時代
 地球上の人口増加、一人あたりのGNPの増加に象徴される、人間活動の拡大により、その影響は地球の提供できる環境容量を超える事態に達してしまっている。たとえば、ある特定の地域(地球全体、国、自治体などの単位)での人間活動が消費している土地・水域面積“の合計(エコロジカル・フットプリント)その地域の提供できる容量(バイオキャパシティー)を超えてしまうと、その人間活動は最早持続可能とは言えない。すなわち、人間活動は地球の有限性を考え、その限界を意識してなされなければならないということが重要である。地球全体では1970年頃にエコロジカル・フットプリントは、地球の容量を超えてしまったと試算されているが、我々はまだそれを意識した行動を始めていない。
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 地球の有限性の下では、限られた容量・有限な資源をめぐって拡大する人間活動を如何に抑制できるか、が重要となり、最早、地球上には新天地などは存在しないため、いかに有限な空間内での多様な価値観を持つ人々の共存を図るか、逃げ場のないことから生じる閉塞感から生じる社会の崩壊などへの対応などが今後重要である。
地球惑星の限界については、色々な項目に関する評価もなされており、地球温暖化などと並んで、人間活動が排出する過剰な窒素化合物が自然界の窒素の循環、収支バランスを崩していることも大きな課題として指摘される。人類が食糧危機を乗り切るために工業的に窒素を固定し、窒素肥料を大量に生産始めたことが、地球の健全な生態系に大きな影響を与えるようになっているのである。
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3.持続可能な人間活動をどう考えるか
 国連では、持続可能な社會に向けた取り組みを行っている。2015年を目標年にした8項目のミレニアム開発目標(MDG)が設定され、2015年には2030年を目標に17項目にわたる持続可能な開発ゴール(SDG)と、その中に総計169にわたるターゲットが国連特別サミット(9月)において採択されている。需要な事柄が網羅されている感があるが、これを、具体的にどう進めるのかが今後の課題である。
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4.パラダイムの転換へ
 今後は高度成長、イケイケどんどんはあり得ない。既に増殖してしまった人口・経済などはこのままでは破局に向かうであろう。今後有限時代の平衡安定な着地点を設定し、そこに向けて人口・経済をソフトランディングさせて行かねばならない。そのためには資源・環境容量の有限性を念頭に置いた許容される「物質資源の使用量」、「エネルギーの使用量」、「環境負荷」などの検討が大切であり、持続可能な人間社会のビジョンの確立が重要である。つまり従来の「成長パラダイム」から「持続可能性パラダイム」への転換が必要で、人間が生かされている自然の範囲内で活動するための着地点を考えなくてはならない。それには長期的・総合的視野に立った思い切った施策が必要である。「太陽エネルギー社会の構築」、「持続可能な地域物質循環システムの構築」、「豊かな自然と共生する地域の活性化」、が鍵となり、日本が「持続可能な社會のモデルを先進的に構築する」ことが重要と思う。

質疑応答:
 講演終了後、聴講者から自己の反省を含めた複数の感想、今後の地球全体人口の予測に関 する質問、今後のエネルギー源の構成の在り方、経済面で従来の利己主義から利他主義への転換の必要性、等々数多くの意見や質問が出され、活発な論議が交わされた。
                                      以上
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2015年11月16日

EVF第100回記念セミナー「生を全うするための「平穏死」のすすめ」

EVF第100回記念セミナー     

演題:生を全うするための「平穏死」のすすめ
講師:世田谷区立特別養護老人ホーム 芦花ホーム
   常勤医師 石飛幸三先生
日時:2015年11月16日(月)
場所:きゅりあん6階 大会議室
参加:93名

要旨
石飛幸三先生は世田谷区の特別養護老人ホーム「芦花ホーム」の常勤医師として多くの死を見つめてこられ、終末期医療を見直し、ヒトの生きる力を信頼して平穏な死に向かう患者の邪魔をせず、自然の摂理に従ってやさしく終末を見守ろうではないかと提案しておられます。

老衰は生身の人間として生きてきて避けることのできない生体の現象であり自然の摂理である。
胃瘻は本来、先天性食道狭窄の新生児が成長して食道形成術を受けるまでの補助手段であった。それが人生終末期に、老人が食べものを誤嚥して肺炎を起こすことの予防手段として使われた。しかし胃瘻では、常に変化する体にとっての食事の必要量への対応が難しく、過度に補給すると胃の内容は逆流して食道から肺に入り肺炎を起こす危険性もあり、時には口にまで戻り窒息死を招くこともある。

ところで胃瘻をつけたまま長い間寝たきりで、言葉も発せられず、常には口を開けて寝るばかりだったご老人の話。ある時介護士がこの患者の指が僅かに動いているのに気がつき、指差す方向を見ると棚に缶ビールが見えた。お父さんの好きだったビールを娘さんがベットの近くに置いていたのだという。
介護師や看護師から相談を受けた先生は決断した。「何かあったらドクターストップをかければいい。ご家族のご了解をとってビールを飲ませよう。」
老人は初め医師の手を借りながらなんと半分ほどビールを飲み、しげしげと缶を見つめなおし、次に残りのビールを飲み干してしまったという。今度は、自分の力だけで・・
寝たきりだった老人の表情は、見た目はあまり変わることはなかったが本人は久しぶりのビールの味を堪能したに違いない。
長い間、機能を使うことがなかった喉が“異物”を通した。人の身体は本来の生きる力を発揮して“異物”を通した。娘さんはビール好きな父親がもう一度ビールを飲めたことを心から喜んだ。

人は皆それぞれの社会の中で役割を持っている。
社会で自分の果たすべき役割を終えた人の最後を、自然の摂理に逆らって本人を苦しめるだけの医療になっていないか自戒して、静かに看取ってあげたほうがその人のためにもなるし、家族の心を支えることになる。
目的のないまま延命を続けると、医療費への更なる負担増となって社会全体がその重さに耐えられなくなるのではないか。

明治時代に作られ、今の時代にそぐわない刑法に囚われる意味はない。
これは単に医師だけの問題ではなく、家族や施設で働く人々も、最後を迎える人の平穏死を考えようではないかと、非常に説得力のある内容でした。

会員の一人からのメールを紹介します。
奥様は9月20日に芦花ホームを取り上げて放映したNHKスペシャルを一緒に見ようと声をかけたが、“辛気臭い番組”とテレビの前にはお座りにならなかった由。ところがセミナーに足を運び、石飛先生の講演を聴いて「いいお話でした」と神妙な面持ちでいらしたとのことです。
                           文責 工藤宣雄 
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配布資料:
「講演資料」

以上
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2015年10月22日

EVFセミナー「日本の水資源と国際的な水問題」

演題:日本の水資源と国際的な水問題
講師:国土交通省水管理・国土保全局 水資源部 水資源計画課 総合水資源管理戦略室課長補佐 佐渡周子様
日時:2015年10月22日(木)
場所:新現役ネット事務局会議室
参加:36名
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要約:
日本の年間水使用量は809億㎥(2011年)で水資源賦存量4,100億㎥の約20%。1990年代をピークに緩やかに減少している。日本の年平均降水量(約1,700mm)は世界の年平均降水量の約2倍だが、日本の一人あたり年降水総量(約5,000 ㎥/人・年)は世界の一人あたり年降水総量の3分の1程度である。高度経済成長期以降、地下水の過剰取水による地盤沈下、水質汚染等、が深刻化したが、様々な法整備や取組みの実施により沈静化している。都市への人口集中、気候変動等の要因により水循環が変化しており、健全な水循環を維持又は回復するための施策を、総合的かつ一体的に推進するため、水循環基本法を制定(平成26年4月2日公布)し、水循環基本計画を閣議決定(平成27年7月10日)した。
世界に目を向けると、利用可能な水の量が1,700 ㎥/人・年を下回る場合、「水ストレス下にある状態」とされており、2050年には全世界人口の40%以上(約40億人)が、水ストレス下にある状態になることが想定されている。水紛争、渇水被害、洪水被害も多く発生している。国連水と衛生に関する諮問委員会、世界水フォーラム、アジア太平洋水サミットなどの国際会議等の場で水に関する議論が進んでおり、2015年9月の国連総会で「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)」が決議され、ゴールの一つとして「すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する」が設定された。日本は、水と衛生分野におけるODA実績で、世界第1位の援助国であり、世界の水問題解決のために貢献している。

講演概要:
1. 日本の水資源
1)日本の水資源の現状
水資源賦存量は4,100億㎥ (降水量6,400億㎥の約64%)でその内約20%を使用している。日本の年平均降水量(約1,700mm)は世界の年平均降水量(約800mm)の約2倍だが、日本の一人あたり年降水総量(約5,000 ㎥/人・年)は世界の一人あたり年降水総量(約16,000㎥/人・年)の3分の1程度である。
生活用水使用量は、生活水準の向上により、1990年頃まで急激に増加したが、日本全国での生活用水使用量及び、一人あたり平均使用量は2000年頃をピークに減少傾向。生活用水の一人一日平均使用量は289リットル/人・日(2011年、有効水量ベース)である。
工業用水使用量は高度経済成長に伴い、1980年頃まで増加したが、その後は減少。回収水の利用が進んでいる。
農業用水使用量は約544億㎥ (2011年、推計)農地用水の約94%を占める水田灌漑用水は近年減少傾向にある。
2)日本の水資源政策
日本の水資源政策・開発の歴史は人口の増加にともなう農業・産業の発展と平行して進行。
戦後は、復興のため国土の整備開発が進められ、緊急の課題に対応するため土地改良法(1949)、電源開発促進法(1952)、水道法(1957)、工業用水道事業法(1958)、国土総合開発法(1950)、特定多目的ダム法(1957)、水資源開発促進法(1961)等、様々な法整備、計画策定、実施を推進した。
戦後、地下水の過剰な取水により、全国各地で地盤沈下が進行したり、生活排水、工業廃水の河川への流入により深刻な水質汚染が発生したが、様々な法整備や取り組みにより改善してきた。(下図は代表的地域の地盤沈下の経年変化)
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3)新しい水資源政策
都市への人口集中、気候変動等の要因により水循環が変化し、渇水、洪水、水質汚濁、生態系への様々な課題への対応、は引き続き存在している。健全な水循環を維持又は回復するための施策を、総合的かつ一体的に推進することが必要となるため、「水循環基本法」を制定した。(平成26年4月2日公布、7月1日施行)。主なポイントは次のとおりである。
@水循環に関する施策を推進するため、水循環政策本部を設置
A水循環施策の実施にあたり基本理念を明確化
B国、地方公共団体、事業者、国民といった水循環関係者の責務を明確化
C水循環基本計画の策定
D水循環施策推進のための基本的施策を明確化

水循環基本法に基づく水循環基本計画を平成27年7月10日閣議決定した。
施策として、流域単位で水循環計画を新たに策定すること等を明記している。(下図は水循環施策のイメージ)
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2.世界の水資源・国際的な水問題
1)世界の水資源
地球全体の水(およそ14億k㎥ )のうち、比較的使いやすい河川・湖沼などの淡水は、わずか0.01%(約0.001億k㎥ )
農業、工業、エネルギー及び環境に要する水資源量は、一般的に1,700 ㎥ /人・年とされ、一人あたりの利用可能な水の量が1,700 ㎥ を下回る場合、「水ストレス下にある状態」とされている。2050年には製造業、生活用水等の需要増により、2000年の需要量より55%増加することが見込まれ、全世界人口の40%以上(約40億人)が、水ストレス下にある状態になることが想定されている。(下図は2011年の1人あたり水資源量)
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2)国際的な水問題
世界では様々な要因により水紛争が起きている。水紛争の主な要因は、水資源配分の問題(湖や河川の上流地域での過剰取水)、水質汚濁の問題(上流地域での汚染物質排出など) 、水の所有権の問題等が挙げられる。
水に関する国際的な取り組みとして、国連水と衛生に関する諮問委員会(2004〜)、世界水フォーラム(1997〜)、アジア太平洋水サミット(2006〜)など多くの国際会議等の場で水についての議論がなされている。
2015年以降の国連開発目標として、「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)」に水と衛生の目標がゴール6として設定されている。
ゴール6 : すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する

3)水と衛生分野における日本の支援
日本は、水と衛生分野におけるODA実績で、世界第1位の援助国。 援助の内訳は、上水−下水の大規模システム及び基本的な水供給・衛生設備に関する援助が全体の約8割と大半を占めており、日本の水インフラ技術が世界に大きく貢献している。
NARBOを通じた、総合水資源管理促進のための支援(ワークショップ、技術協力等)やUNESCOにおけるIWRMガイドライン作成支援などを通じ、統合水資源管理の普及を推進している。
*<NARBO>Network of Asian River Basin Organization

4)水インフラの国際展開
海外における水インフラ市場は、2025年には約87兆円規模の市場に成長する見通しであり、我が国の技術・知見を活用した水インフラ技術の戦略的展開を図っている。


以上 文責:深井吉男
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