2015年12月15日

EVFセミナー:「有限時代へのパラダイムシフト」

EVFセミナー概要報告文責:(小栗武治)

開催日 : 2015年12月15日(木) 15:30〜17:30
会場  : 新現役ネット A会議室
講師  : 東大名誉教授 鈴木 基之 様 
略歴  :
 カリフォルニア大学にて研究生活を送り、帰国後、東京大学生産技術研究所で環境化学工学の研究室を主宰(のちに所長)。以降、学問領域を超えて総合的な環境問題解決を目指す活動を志す。国際連合大学副学長を経て特別学術顧問、放送大学教授、東京工業大学監事(非常勤)、環境省中央環境審議会会長を歴任。

演題  : 「有限時代へのパラダイムシフト」

要約  :  日本では高度経済成長期にGNPの伸びに比較し消費カロリーが過大な時期が続いた。この時期は4大公害に象徴されるが、上水道の整備などは進み、70年以降は環境汚染対策が順次行われた。これらの進展に従って消化器系感染症は激減し、水環境の状況も改善された。
 しかし、ある地域の生産活動を支えるために消費されている土地・水域面積の合計(エコロジカル・フットプリント)は、地域が供給できる面積を大幅に超過する事態を迎えている。
 今後はこのような有限な環境に調和できる人間活動を構築する必要がある。地球上に蔓延してしまった化学的に活性な窒素の管理も、その一つである。既に拡大しすぎた人間活動はこのままでは破局に向かう。今後有限時代の平衡安定な着地点に向けて人間活動をソフトランディングさせて行かねばならない。

講演概要:
1.地球の容量限界と人間活動の拡大
  日本での一人当たりのGNPと消費カロリーの推移を見ると、高度経済成長の時代に当たる1960年ごろから1970年にかけて一人あたりのGNPと消費カロリーの伸びは大きく、いわゆる高度経済成長時代を経験した。この間の環境を無視した経済一辺倒の人間活動の結果として、4大公害なども経験することとなった。これら局所的な環境問題に対して、70年代に対策が講じられることとなり、次いで80年代には、都市における環境問題への対応、90年代には地球環境問題への取り組みが始まるなど、拡大する環境問題への対策が試みられることとなる。
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 この間、1960年から1975年に掛けて、経済成長の恩恵を受け、上水道が整備され、浄化槽などの普及に伴い、赤痢、パラチフスなどの消化器系感染症が激減し、また1970年からは水質汚濁防止法などの整備により、有害物質による環境汚染に対する対策が実施され、水域の重金属や化学物質などに関する環境基準の達成率が改善されるなど、成功神話が蓄積される面もあった。一面において、水道普及や、遅れて設置されつつある下水道など、大規模なインフラ整備が行われた都市部においては、それらの設備が40〜50年という寿命を迎え、今後はそのメインテナンスに膨大な費用が必要となり、大規模集中型の考え方に反省を求められる状況に至っているとも考えられるようになっている。
 我が国と関連が深いアジアの新興国、途上国においては、全体としての経済成長は著しいが、それぞれの国の状況は多様であり、成長に伴って産業公害、都市環境、地球環境の諸問題が同時に起こっているのが実際の状況であり、いわば複合型環境問題を抱えた状況にあるといってもよく、今後の協力関係を構築していく上で難しい問題を解いていく必要がある。
2.有限時代
 地球上の人口増加、一人あたりのGNPの増加に象徴される、人間活動の拡大により、その影響は地球の提供できる環境容量を超える事態に達してしまっている。たとえば、ある特定の地域(地球全体、国、自治体などの単位)での人間活動が消費している土地・水域面積“の合計(エコロジカル・フットプリント)その地域の提供できる容量(バイオキャパシティー)を超えてしまうと、その人間活動は最早持続可能とは言えない。すなわち、人間活動は地球の有限性を考え、その限界を意識してなされなければならないということが重要である。地球全体では1970年頃にエコロジカル・フットプリントは、地球の容量を超えてしまったと試算されているが、我々はまだそれを意識した行動を始めていない。
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 地球の有限性の下では、限られた容量・有限な資源をめぐって拡大する人間活動を如何に抑制できるか、が重要となり、最早、地球上には新天地などは存在しないため、いかに有限な空間内での多様な価値観を持つ人々の共存を図るか、逃げ場のないことから生じる閉塞感から生じる社会の崩壊などへの対応などが今後重要である。
地球惑星の限界については、色々な項目に関する評価もなされており、地球温暖化などと並んで、人間活動が排出する過剰な窒素化合物が自然界の窒素の循環、収支バランスを崩していることも大きな課題として指摘される。人類が食糧危機を乗り切るために工業的に窒素を固定し、窒素肥料を大量に生産始めたことが、地球の健全な生態系に大きな影響を与えるようになっているのである。
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3.持続可能な人間活動をどう考えるか
 国連では、持続可能な社會に向けた取り組みを行っている。2015年を目標年にした8項目のミレニアム開発目標(MDG)が設定され、2015年には2030年を目標に17項目にわたる持続可能な開発ゴール(SDG)と、その中に総計169にわたるターゲットが国連特別サミット(9月)において採択されている。需要な事柄が網羅されている感があるが、これを、具体的にどう進めるのかが今後の課題である。
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4.パラダイムの転換へ
 今後は高度成長、イケイケどんどんはあり得ない。既に増殖してしまった人口・経済などはこのままでは破局に向かうであろう。今後有限時代の平衡安定な着地点を設定し、そこに向けて人口・経済をソフトランディングさせて行かねばならない。そのためには資源・環境容量の有限性を念頭に置いた許容される「物質資源の使用量」、「エネルギーの使用量」、「環境負荷」などの検討が大切であり、持続可能な人間社会のビジョンの確立が重要である。つまり従来の「成長パラダイム」から「持続可能性パラダイム」への転換が必要で、人間が生かされている自然の範囲内で活動するための着地点を考えなくてはならない。それには長期的・総合的視野に立った思い切った施策が必要である。「太陽エネルギー社会の構築」、「持続可能な地域物質循環システムの構築」、「豊かな自然と共生する地域の活性化」、が鍵となり、日本が「持続可能な社會のモデルを先進的に構築する」ことが重要と思う。

質疑応答:
 講演終了後、聴講者から自己の反省を含めた複数の感想、今後の地球全体人口の予測に関 する質問、今後のエネルギー源の構成の在り方、経済面で従来の利己主義から利他主義への転換の必要性、等々数多くの意見や質問が出され、活発な論議が交わされた。
                                      以上
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2015年11月16日

EVF第100回記念セミナー「生を全うするための「平穏死」のすすめ」

EVF第100回記念セミナー     

演題:生を全うするための「平穏死」のすすめ
講師:世田谷区立特別養護老人ホーム 芦花ホーム
   常勤医師 石飛幸三先生
日時:2015年11月16日(月)
場所:きゅりあん6階 大会議室
参加:93名

要旨
石飛幸三先生は世田谷区の特別養護老人ホーム「芦花ホーム」の常勤医師として多くの死を見つめてこられ、終末期医療を見直し、ヒトの生きる力を信頼して平穏な死に向かう患者の邪魔をせず、自然の摂理に従ってやさしく終末を見守ろうではないかと提案しておられます。

老衰は生身の人間として生きてきて避けることのできない生体の現象であり自然の摂理である。
胃瘻は本来、先天性食道狭窄の新生児が成長して食道形成術を受けるまでの補助手段であった。それが人生終末期に、老人が食べものを誤嚥して肺炎を起こすことの予防手段として使われた。しかし胃瘻では、常に変化する体にとっての食事の必要量への対応が難しく、過度に補給すると胃の内容は逆流して食道から肺に入り肺炎を起こす危険性もあり、時には口にまで戻り窒息死を招くこともある。

ところで胃瘻をつけたまま長い間寝たきりで、言葉も発せられず、常には口を開けて寝るばかりだったご老人の話。ある時介護士がこの患者の指が僅かに動いているのに気がつき、指差す方向を見ると棚に缶ビールが見えた。お父さんの好きだったビールを娘さんがベットの近くに置いていたのだという。
介護師や看護師から相談を受けた先生は決断した。「何かあったらドクターストップをかければいい。ご家族のご了解をとってビールを飲ませよう。」
老人は初め医師の手を借りながらなんと半分ほどビールを飲み、しげしげと缶を見つめなおし、次に残りのビールを飲み干してしまったという。今度は、自分の力だけで・・
寝たきりだった老人の表情は、見た目はあまり変わることはなかったが本人は久しぶりのビールの味を堪能したに違いない。
長い間、機能を使うことがなかった喉が“異物”を通した。人の身体は本来の生きる力を発揮して“異物”を通した。娘さんはビール好きな父親がもう一度ビールを飲めたことを心から喜んだ。

人は皆それぞれの社会の中で役割を持っている。
社会で自分の果たすべき役割を終えた人の最後を、自然の摂理に逆らって本人を苦しめるだけの医療になっていないか自戒して、静かに看取ってあげたほうがその人のためにもなるし、家族の心を支えることになる。
目的のないまま延命を続けると、医療費への更なる負担増となって社会全体がその重さに耐えられなくなるのではないか。

明治時代に作られ、今の時代にそぐわない刑法に囚われる意味はない。
これは単に医師だけの問題ではなく、家族や施設で働く人々も、最後を迎える人の平穏死を考えようではないかと、非常に説得力のある内容でした。

会員の一人からのメールを紹介します。
奥様は9月20日に芦花ホームを取り上げて放映したNHKスペシャルを一緒に見ようと声をかけたが、“辛気臭い番組”とテレビの前にはお座りにならなかった由。ところがセミナーに足を運び、石飛先生の講演を聴いて「いいお話でした」と神妙な面持ちでいらしたとのことです。
                           文責 工藤宣雄 
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配布資料:
「講演資料」

以上
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2015年10月22日

EVFセミナー「日本の水資源と国際的な水問題」

演題:日本の水資源と国際的な水問題
講師:国土交通省水管理・国土保全局 水資源部 水資源計画課 総合水資源管理戦略室課長補佐 佐渡周子様
日時:2015年10月22日(木)
場所:新現役ネット事務局会議室
参加:36名
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要約:
日本の年間水使用量は809億㎥(2011年)で水資源賦存量4,100億㎥の約20%。1990年代をピークに緩やかに減少している。日本の年平均降水量(約1,700mm)は世界の年平均降水量の約2倍だが、日本の一人あたり年降水総量(約5,000 ㎥/人・年)は世界の一人あたり年降水総量の3分の1程度である。高度経済成長期以降、地下水の過剰取水による地盤沈下、水質汚染等、が深刻化したが、様々な法整備や取組みの実施により沈静化している。都市への人口集中、気候変動等の要因により水循環が変化しており、健全な水循環を維持又は回復するための施策を、総合的かつ一体的に推進するため、水循環基本法を制定(平成26年4月2日公布)し、水循環基本計画を閣議決定(平成27年7月10日)した。
世界に目を向けると、利用可能な水の量が1,700 ㎥/人・年を下回る場合、「水ストレス下にある状態」とされており、2050年には全世界人口の40%以上(約40億人)が、水ストレス下にある状態になることが想定されている。水紛争、渇水被害、洪水被害も多く発生している。国連水と衛生に関する諮問委員会、世界水フォーラム、アジア太平洋水サミットなどの国際会議等の場で水に関する議論が進んでおり、2015年9月の国連総会で「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)」が決議され、ゴールの一つとして「すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する」が設定された。日本は、水と衛生分野におけるODA実績で、世界第1位の援助国であり、世界の水問題解決のために貢献している。

講演概要:
1. 日本の水資源
1)日本の水資源の現状
水資源賦存量は4,100億㎥ (降水量6,400億㎥の約64%)でその内約20%を使用している。日本の年平均降水量(約1,700mm)は世界の年平均降水量(約800mm)の約2倍だが、日本の一人あたり年降水総量(約5,000 ㎥/人・年)は世界の一人あたり年降水総量(約16,000㎥/人・年)の3分の1程度である。
生活用水使用量は、生活水準の向上により、1990年頃まで急激に増加したが、日本全国での生活用水使用量及び、一人あたり平均使用量は2000年頃をピークに減少傾向。生活用水の一人一日平均使用量は289リットル/人・日(2011年、有効水量ベース)である。
工業用水使用量は高度経済成長に伴い、1980年頃まで増加したが、その後は減少。回収水の利用が進んでいる。
農業用水使用量は約544億㎥ (2011年、推計)農地用水の約94%を占める水田灌漑用水は近年減少傾向にある。
2)日本の水資源政策
日本の水資源政策・開発の歴史は人口の増加にともなう農業・産業の発展と平行して進行。
戦後は、復興のため国土の整備開発が進められ、緊急の課題に対応するため土地改良法(1949)、電源開発促進法(1952)、水道法(1957)、工業用水道事業法(1958)、国土総合開発法(1950)、特定多目的ダム法(1957)、水資源開発促進法(1961)等、様々な法整備、計画策定、実施を推進した。
戦後、地下水の過剰な取水により、全国各地で地盤沈下が進行したり、生活排水、工業廃水の河川への流入により深刻な水質汚染が発生したが、様々な法整備や取り組みにより改善してきた。(下図は代表的地域の地盤沈下の経年変化)
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3)新しい水資源政策
都市への人口集中、気候変動等の要因により水循環が変化し、渇水、洪水、水質汚濁、生態系への様々な課題への対応、は引き続き存在している。健全な水循環を維持又は回復するための施策を、総合的かつ一体的に推進することが必要となるため、「水循環基本法」を制定した。(平成26年4月2日公布、7月1日施行)。主なポイントは次のとおりである。
@水循環に関する施策を推進するため、水循環政策本部を設置
A水循環施策の実施にあたり基本理念を明確化
B国、地方公共団体、事業者、国民といった水循環関係者の責務を明確化
C水循環基本計画の策定
D水循環施策推進のための基本的施策を明確化

水循環基本法に基づく水循環基本計画を平成27年7月10日閣議決定した。
施策として、流域単位で水循環計画を新たに策定すること等を明記している。(下図は水循環施策のイメージ)
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2.世界の水資源・国際的な水問題
1)世界の水資源
地球全体の水(およそ14億k㎥ )のうち、比較的使いやすい河川・湖沼などの淡水は、わずか0.01%(約0.001億k㎥ )
農業、工業、エネルギー及び環境に要する水資源量は、一般的に1,700 ㎥ /人・年とされ、一人あたりの利用可能な水の量が1,700 ㎥ を下回る場合、「水ストレス下にある状態」とされている。2050年には製造業、生活用水等の需要増により、2000年の需要量より55%増加することが見込まれ、全世界人口の40%以上(約40億人)が、水ストレス下にある状態になることが想定されている。(下図は2011年の1人あたり水資源量)
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2)国際的な水問題
世界では様々な要因により水紛争が起きている。水紛争の主な要因は、水資源配分の問題(湖や河川の上流地域での過剰取水)、水質汚濁の問題(上流地域での汚染物質排出など) 、水の所有権の問題等が挙げられる。
水に関する国際的な取り組みとして、国連水と衛生に関する諮問委員会(2004〜)、世界水フォーラム(1997〜)、アジア太平洋水サミット(2006〜)など多くの国際会議等の場で水についての議論がなされている。
2015年以降の国連開発目標として、「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)」に水と衛生の目標がゴール6として設定されている。
ゴール6 : すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する

3)水と衛生分野における日本の支援
日本は、水と衛生分野におけるODA実績で、世界第1位の援助国。 援助の内訳は、上水−下水の大規模システム及び基本的な水供給・衛生設備に関する援助が全体の約8割と大半を占めており、日本の水インフラ技術が世界に大きく貢献している。
NARBOを通じた、総合水資源管理促進のための支援(ワークショップ、技術協力等)やUNESCOにおけるIWRMガイドライン作成支援などを通じ、統合水資源管理の普及を推進している。
*<NARBO>Network of Asian River Basin Organization

4)水インフラの国際展開
海外における水インフラ市場は、2025年には約87兆円規模の市場に成長する見通しであり、我が国の技術・知見を活用した水インフラ技術の戦略的展開を図っている。


以上 文責:深井吉男
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2015年09月17日

EVFセミナー「生態系/生物多様性はどうなって行くのか?」

演題:生態系/生物多様性はどうなって行くのか?
講師:東洋大学国際地域学部国際観光学科元教授 薄木 三生 様
日時:2015年9月17日(木)
場所:新現役ネット事務局会議室
参加:33名

要約:
地球生態系の健全さに関する「国連ミレニアム生態系評価」の要点が、最近50年間の生態系変化、生態系変化による得失、次の50年の生態系見通し、生態系劣化を反転させ得る有望な対応、の評価結果と共に紹介された。加えて、具体的環境教育が必要な分野の事例および技術と経済効率偏重の裏支えを強要され過ぎた現代科学への反省例が紹介された。
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講演概要:
1. 国連ミレニアム生態系評価(以下MA)の内容の紹介
1)MAは地球生態系の健全さに関する最大規模の評価で、2000年の国連事務総長要請に応じ、2千人を超える専門家と国連機関、条約事務局、産業界、諸NGOが参画して実施。気温上昇を19世紀工業化前比で2℃未満とする必要性はMAが指摘し、IPCC最新報告書にも反映されている。焦点を生態系機能に当て、人々が生態系から得る便益(サービス)を論じている。
基盤となるサービスは、栄養分の循環、土壌形成、1次生産などで、これらに支えられて以下の3機能が生ずる。この内、GDPに反映される@偏重の傾向がある。
  @ 供給サービス:食料、淡水、木材及び繊維、燃料など
  A 調節サービス:機構調節、洪水制御、疾病制御、水の浄化など
  B 文化的サービス:審美的、精神的、教育的、リクリエーション的など
2)生物多様性の保護は現代科学(技術偏重)での理解を超えるテーマの一つで、科学的に明らかな200万種弱(推計の10%)が、人間行動起因でかつてない速度で絶滅が進行、WRI予測では近年の主に熱帯林減少で全生物種の5〜15%が絶滅する。開発途上地域熱帯林での自然資源勘定の試算研究が試みられているが、政治・財界リーダ達への浸透は至難で、米(欧)、国連の目論見は民族国家主義の開発主権と真っ向から対立している。
3)MAの結果その1;最近50年間における生態系の変化
人間は、過去のどの期間よりも急速かつ広範に生態系を変え、地球上生命の多様性に大規模な不可逆的損失を招いて来た。1960年以降陸域生物が利用可能な窒素は2倍に増加しており、2050年迄に更に65%増えるとの予測もある。同じく燐のフローは3倍になった。CO2は1750年以降の濃度増加の60%が1959年以降に起こった。
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4)MAの結果その2;生態系変化による得失
 以下の3主要問題は人々が生態系から得る長期的便益(サービス)を減少させている。
  @ 生態系機能の劣化:これによる富の損失は伝統的自然勘定では含まれないので経済勘定に反映されない。従って見かけ上富が増加しても実際には損失を被っている。
  A 非線形変化の可能性の増大:不完全だが確かな証拠がある。例えば北大西洋のタラ漁獲量の1990年代以降の急激な落込みによる漁業の崩壊があげられる。
  B 特定地域(サブ・サハラ・アフリカなど)の人々の貧困の悪化:例えば砂漠化が乾燥地の貧しい人々の生活に悪影響を与えている。
5)MAの結果その3;次の50年における生態系の見通し
 生態系機能の劣化は今世紀前半に相当程度進行しミレニアム開発目標の障害になっている。これに対処するためにMAでは以下の4シナリオをあげている。
  @ 技術庭園:生態系機能の効率的利用を進める技術開発への相当な投資、及び「生態系機能に対する支払い」の広範な利用及び市場メカニズムの確立
  A グローバルな調和:教育・社会基盤への投資と貧困の減少、及び貿易障害と歪曲した補助金の除去
  B 適応モザイク:能動的適応管理の広範な利用、及び教育分野への投資(GDP比13%)
  C 権力による命令:3サービス機能の改善は見込めないと予測
6)MAの結果その4;生態系の劣化を反転させ得る有望な対応
  制度:・生態系管理目標の他部門内及び広範な開発計画枠組み内への統合
     ・政府及び民間部門の透明性及び説明責任の拡大
  経済:・生態系機能の過度の利用を促進する補助金の廃止
     ・生態系機能管理における経済的手法及び市場に基づくアプローチの拡大利用
  技術:・有害な影響なしに穀物生産の増加を可能にする技術の促進
     ・生態系機能を回復させる技術の促進
     ・エネルギー効率性を高め温室効果ガスの排出を減少させる技術の促進
  社会的及び行動的対応分野:
     ・非持続的に管理されている生態系機能の集合的消費を減らす方策
     ・通信と教育
     ・生態系機能に依存するグループの強化
  知識:・資源管理決定における生態系が持つ非市場的価値の取込み
     ・人材的及び制度的能力の向上
増大する需要に合わせながら生態系劣化を反転させる挑戦は、政策と制度の相当な変化を含むいくつかのシナリオの下では可能であるが、そうした変化は大きなものであり、現在は起こっていない。

2. 具体的な環境教育が必要とされる分野の事例の紹介
1)屋久島世界自然遺産
町は山中6カ所の汲取り式トイレ廃棄物の年間人力荷降し費4千万円を一口500円の寄付で賄う積り(登山者8割の寄付で成立)だったが、実際の寄付は1200万円のみだった。 仕方なく2008年屋久島登山有料携帯トイレ(1個500円)の試行・実施を導入した。
2)富士山世界文化遺産
五合目公衆トイレに利用者の善意によるチップ制を導入したが、1人当り30円しか集まらなかった。静岡県政モニターのアンケート調査では、受益者負担が必要:97%、強制有料制度導入賛成:63%、適切な負担額:100〜200円、であった。

3. 技術と経済効率偏重の裏支えを強要され過ぎた現代科学への反省例の紹介
 野家啓一氏著「科学哲学への招待」から以下の内容などが紹介された。
 ・これからはもう少し哲学に立ち返るべし。
 ・科学技術三神話(価値中立神話、安全神話、信頼神話)は砂上の楼閣で崩壊している。
・科学技術倫理のあり方は、信頼性回復、世代間倫理、社会的説明責任、知識の製造物責任の重視にある。
以上 文責:岩崎力
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2015年08月27日

EVFセミナー「気候変動リスクと人類の選択-IPCCの最新報告から-」

EVFセミナー(8/27)の概要報告    (立花 賢一)
 
1)開催日時      平成27年8月27日(木)15:30〜17:30
2)場所        新現役ネット事務局会議室
3)講師        国立環境研究所 地球環境研究センター 気候変動リスク
  評価研究室長 江守正多様
4)講演テーマ    「気候変動リスクと人類の選択〜IPCCの最新報告から〜」 
5)参加者数     35 名
6)セミナー概要報告 
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国連気候変動枠組条約における国際交渉では、産業化前を基準に世界の平均気温上昇を2℃以内に抑えるという目標が掲げられています。しかし、新しく発表されたIPCCの第 5次評価報告書によれば、この目標を達成するためには、世界の二酸化炭素排出量をできるだけ速やかに減少に転じさせ、今世紀末を目途にゼロに近づけていかねばなりません。この状況に私たちはどう向き合ったらよいのか、リスク管理の観点から、シミュレーション映像などで解析していただき、わかりやすく紹介していただきました。
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地球温暖化のしくみ
地球の温暖化を引き起こす直接の原因となっているのは温室効果ガスで
・温室効果がなかったら −19℃
・温室効果があるので   14℃
・温室効果が高まると   14℃以上になる。
IPCC(気候変動に関する政府間パネル)
第5次評価報告書を一昨年〜昨年に発表。温室効果ガス濃度と世界平均気温・海面水位は20世紀に急激に上昇している
・20世紀半ば以降の世界平均気温上昇の半分以上は、人為起源の要因による可能性が極めて高い(95%以上)
・予測される100年後の気温上昇量は、社会の発展の仕方と対策の大きさに依存し科学的な予測にも幅(不確かさ)がある。
・予測される100年後の海面水位上昇は0.2m〜1.0m
極端現象の21世紀後半のリスク
・寒い日と寒い夜の頻度減少
・暑い日と暑い夜の頻度増加
・高潮の発生が増加
・脅威にさらされているサンゴなどの独特の生態系や地球システムの質的な変化などが考えられる。
気候変動対策の長期目標
メキシコでのCOP16カンクン合意で、産業化以前からの世界平均気温の上昇を2℃以内に収める観点から温室効果ガス排出量の大幅削減の必要性を認識された。
2℃以内目標を達成するには
・排出削減経路として今世紀前半は世界全体の排出量を現状に比べて2050年までに半減程度にする。
・今世紀後半は世界全体の排出量はゼロに近いか、マイナスにする必要がある。・
切り札と考えられるバイオマスは有効か
二酸化炭素を吸収して大気中の二酸化酸素濃度を下げ、放射エネルギーを増やす二酸化炭素除去する方法が考えられるが、次の課題がある。
・バイオマスでのco2回収貯留自体の社会的受容性が未知数である。
・エネルギー作物の大規模栽培は土地を巡って食料生産と競合する。
・新たな土地の開発は炭素放出に伴うとともに、生態系破壊にもつながる。
地球温暖化が最悪のシナリオになった時の最終手段は気候工学か
太陽光を反射させて入るエネルギーを減らし、地球の温度を低下させる太陽放射管理で最も研究が盛んなのが、硫酸の薄いミストのエアロゾルを成層圏に撒く方法がコストパフォーマンス良いとされるが、次の課題がある。
・気温分布、降水分布などに副作用の可能性
・海洋酸性は止められない。
・放射線管理を止めた時の急激な温暖化

おわりに
最新の日本および世界の地球環境問題に取り組みについては、気候変動関連リスクを全体像で捉える必要がある。悪影響、好影響の出方は、国、地域、世代、社会的責任によって異なる。地球温暖化問題の鍵は、豊かさとは何か・正義とは何かそしてどんな社会に生きたいかが必然的にかかわるので、科学だけでなく、社会的判断のための、コスト・リスク・便益・実現可能性を明らかにして行く必要がある。
なお、2020年以降の地球温暖化対策の時期枠組みをめぐる交渉で、50年以降の長期的な温暖化ガス排出削減目標の設定について合意を目指す動きが広がってきた。3か月後に迫ったパリでのCOP21は正念場を迎えている。
<後記>
講演後、30分に渡って、最大排出国中国や第3位のインドなどの協力、化石燃料を大幅に使用できなくなると考えられる300年先の温暖化などについて、熱心な質疑応答が続いた。なお、「切り札バイオマスについて」「気候工学について」の話などは、目から鱗の、大変興味深い講演であった。
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2015年07月23日

EVFセミナー「宇宙測位技術で地球を測る」

セミナー「宇宙測位技術で地球を測る」  報告(文責:三嶋 明)
1)開催日時   平成27年7月23日(木)15:30〜17:40
2)場所     新現役ネット事務局会議室
3)講師     国土交通省国土地理院測地観測センター 専門調査官 後藤 清
4)講演テーマ   「宇宙測位技術で地球を測る」
5)参加者数      29名
6)セミナー概要報告
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(1)国土地理院のご紹介
動画を使っての紹介。700人体制で、その7割がつくば市のセンター、3割が全国10か所に。
(2)VLBI(超長基線電波干渉法)
1)VLBIとは、数十億光年の彼方にある数百の準星からの電波を追尾し、その到達時刻の差を計測する技術。
2)VLBIの目的(役割)は、*地球上の位置を高精度に決定、*プレート運動の検出、*地球の姿勢を測る。
3)VLBIの新システム(VGOS):国際VLBI事業は2009年に次世代VLBI観測システムの仕様を公表。国土地理院も参画。茨城県石岡市に次世代型アンテナを設置し、2014年に観測を開始。
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(3)GEONET(GNSS連続観測システム)
1)GNSSは各国の衛星測位システムの総称で、移動体の航法支援、測量などに活用されている。
アメリカ:GPS/30――>31機へ、日本:準天頂衛星システム/1――>2018/4――>7機へ、
ロシア:GLONASS/24機、EU:Galileo/3――>2017/26機へ、この他に中国:BeiDou。
2)GEONETは、世界最大級のGNSS連続観測システムで、日本全国に約1,300点に設置されている施設「電子基準点」とデータを集約・解析する「中央局」で構成されている。
3)GEONETの目的(役割)は、*各種測量の基準点、*地殻変動の把握(任意の期間における「地震、火山活動、地滑り」等の地殻変動を把握)、*位置情報サービス(リアルタイムデータを提供することにより、情報化施工等の事業に利用)
4)マルチGNSS:新たにGalileoからの信号を受信し、測量困難地域・時間の縮小を図り、長距離基線を短時間で求めることが可能になる。
(4)SAR(合成開口レーダー)
1)SARは、人工衛星のアンテナから対象物に電波を発射し、反射された電波を観測し、対象物の大きさや表面の性質を知る技術、又電波の戻ってくる時間により対象物までの距離を測定できる。
2)地殻変動、地盤沈下、火山活動、地滑りなどの面的変動の把握に特徴がある。
3)日本のSAR衛星は、ふよう1号(1992-98)、だいち(2006-11)、現在はだいち2号(2014-)と変遷。
(5)おわりに
国土地理院は、国内外の関係機関と協力して、VLBI、GEONET、SARの解析技術の向上を図るとともに、それぞれの特徴を生かして、その情報を防災・減災の関係機関、必要とする方、一般の方にも提供している。
<後記>
講演後、40分に渡って、精度の向上の歴史、安全運転、民間の地図情報会社との契約、三角点の将来、国土地理院の組織・守備範囲、プレートの動き、マルチGNSSなど、熱心な質疑応答が続いた。「技術そのものの進歩」「国際協力」に隔世の感があり、大変興味深い講演であった。//
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2015年06月25日

EVFセミナー「美しいものを美しく見せるために」

セミナー 「美しいものを美しく見せるために」 報告(文責:岡田康裕)
1)開催日時  平成27年6月25日(木)
2)場所    新現役ネット事務局会議室
3)講師    根津美術館顧問 (元副館長)  西田宏子殿
4)講演テーマ 「美しいものを美しく見せるために」
・美術館はエコでなければ運営できない
・根津美術館の場合
5)参加者数  43名
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6)セミナー概要報告
(1)根津美術館開館からの経緯
1)昭和16年に根津嘉一郎氏のコレクションを基に、氏の私邸を利用して開館した。  昭和29年に新たに館を建設し昭和31年に開館したが、空調は無く、展示ケース、蔵などの問題を抱えていた。
2)平成2年の改築に当たり、展示の場・空間として来館者にとって魅力があり、多目的の展示が可能であり、エコであり、収蔵庫の環境も改善できる美術館の実現を目指した。
(2)こだわりの美術館構築
1)収納品の量に対して狭く、高温・高湿でカビ対策が必要であった収蔵庫を大幅に改善した。 断熱方法、熱負荷シミュレーションなどを繰り返し検討してじっくりと蔵と館の空調構築を行って来た。
2)展示ケースを改善した。ケースはハット型として照明を上部につけ、配線もケースガラス面の角部を見えないように這わせるなどの工夫にこだわった。これにより、レイアウトにかかわらず、展示品を常時最適に鑑賞することが可能となった。
3)照明は当時、美術館照明としては非常に新しかったLEDに挑戦した。特に赤色が美しく見えるLEDを模索して、採用した。これにより展示品を美しくかつエコな運用が可能となった。さらに館の瓦屋根部には工夫して太陽光発電を設置し、併せてエコな運営が促進されている。
4)同時に館内の床、壁面の材質、色にもこだわり、展示品がより美しく鑑賞できる工夫をした。これらについてスライドで詳しく解説があった。
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(3)庭園・茶室・導線分析など
1)美術館は建物だけでなく、庭園の整備にも力を入れてきた。由緒ある茶室、発掘品などの移築も行って、四季折々、根津美術館八景も多くの方に楽しんでいただいている。
2)展示に当たっては、展示品の展示順序レイアウトに導線シミュレーションをおこない、気持ちよく鑑賞いただく工夫をしている。
<後記>
講演後約30分間にわたり、照明方法、展示ケース、美術館の由緒、独立採算の美術館の運営の苦労などについて熱心な質疑応答が続いた。「日ごろ何気なく入館して、展示品を鑑賞して退館していた美術館であるが、今後は美術館の運営の苦労に思いをいたして、また今までと違った、美術鑑賞が出来そうです。」との意見が出て、大変に有益な講演であった。
7月20日(木)から9月6日(日)には新しい企画「絵の音を聴く −雨と風、鳥のさえずり、人の声― 」が始まる。ぜひ訪問して、講演を思い起こしてみたいものである。
                          以上
配布資料:
「講演資料」
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2015年05月28日

EVFセミナー報告「水素社会は来るか」

演題:「水素社会は来るか」
講師:経済産業省 産業技術環境局 研究開発課長 
   渡邉 昇治 様
開催日時:2015年5月28日(木)
場所: JICA(市ヶ谷)

セミナー概要報告

 今回ご講演をお願いした渡邊 昇治様には産業技術の変わり目の機会をとらえて、その将来動向を分かりやすく解説していただいてきております。お立場上、お話しされる内容が国の産業政策と誤解されることも懸念されますのでご講演はオフレコということでお願いしています。したがってここではお話しされた内容から筆者の判断でその要点をまとめたものを概要報告とさせていただくことをご理解ください。 
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さて、水素はその利用時にCO2を排出しない新たなエネルギー源として注目を集めているが、家庭用燃料電池、燃料電池自動車は実用化段階にその一歩を踏み出したように思われる。しかしながら水素の価格がまだ実用化には高い、水素製造時にCO2が排出されるなどの課題も残っている。
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主要なエネルギーの転換にはそれが実用化されるには太陽光パネルの例を引くまでもなく30年以上の時間を必要とし水素社会の到来にはまだその見極めのための時間がかかると思われた。水素燃料電池自動車も2002年から実証プロジェクトが始まっており2025年頃には普及に弾みがつく可能性もある。
水素燃料のメリット、用途と課題を整理しておくと
(1)メリット
・CO2排出抑制
・クリーンエネルギー
・電気だけでなく熱源として利用できる
・エネルギー国産化の可能性がある
・再生可能エネルギーの余剰電力の蓄電が可能 
(2)水素エネルギーの主たる用途
・水素発電
・燃料電池
・燃料電池自動車   
(3)解決すべき課題
・コストが高い(水素製造価格よりも輸送、貯蔵など)
・社会的受容性
・法規制など 
 以上の課題を乗り越えた時に初めて実用化されるが、時間的見通しは燃料電池自動車、燃料電池コジェネの普及が始まっているが、2020年頃までにインフラ利用技術の開発、水素タウンの実証を踏まえ、2030年頃までに本命である高効率水素発電の実証を終えて、本格的普及の時期を迎えるかもしれないと思われる。
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配布資料:
講演資料「水素社会」

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2015年04月23日

EVFセミナー報告「日本の製薬産業の現状と課題」

セミナー「日本の製薬産業の現状と課題」報告(文責:橋本 升)

1)開催日時  平成27年4月23日(木)
2)場所    新現役ネット事務局会議室
3)講師    元三共株式会社社長 池上康弘殿
4)講演テーマ 「日本の製薬産業の現状と課題」
5)参加者数  34名
6)セミナー概要報告
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(1)日本の製薬産業を取り巻く課題
1)子ども人口(14歳以下)の減少と高齢者(75歳以上)の増加が顕著であり、人口の減少をもたらし、医療費や年金などの社会保障費の増加が財政を圧迫する。
2)平成26年度で見ると、国民医療費は約43兆円にも及ぶ。このうち、医師等の人件費が20兆円、医薬品が10兆円(約70%が調剤薬局分)等であり、新薬が高くなることや高齢者が何種類もの薬を飲むこと等が相まって、今後ますます後期高齢者医療費が国の財政を圧迫してくる。
3)財政問題改善に有効な手段として、年金と福祉に手を付けることが政治的にも困難な中、医療面とりわけ薬剤費の抑制策が即効性の高い策として強化されよう。今後、薬価改定(2年ごとに実施されている)及び包括化(使用制限)と並んで、ジェネリック医薬品のさらなる浸透策が強化されよう。

(2)ジェネリック医薬品
1)日本での現在のジェネリック医薬品の占める割合は約23%であるが、英(63%)、米(75%)、独(68%)などでは高い比率になっている。
2)日本でのジェネリックの浸透が遅れているのは医師、薬剤師のジェネリックに対する考え方の国情によるが、欧米との薬価政策の差によるところが大である。
3)日本の場合、保健薬の価格は公定価格であるが、欧米では新薬価格は自由に付けられる。その代わり、アメリカでは特許期間中は大きな売り上げを示していた薬が、特許切れと同時にジェネリックに取って代わられ、売り上げが急落すると言うことが起きている。このような事情は、一つの薬につき物質・用途に関する一つの特許が対応しているため、一つの特許が切れると裸になってしまうという、他の工業製品とは異なる特許構成にもよる。
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(3)世界の製薬産業規模と医薬品開発力
ジェネリックの比重が増大して特許薬の売り上げ減少が続く一方で、新薬の創出は困難性を増している。新薬の創出には長い年月と巨大な資金がかかる。しかも既存の薬剤を上回る効果と安全性をもつ新薬はなかなか出せない状況にある。
1)世界での医薬品の売上高は、ファイザー(米)が約600億ドル、メルク、ロッシュ等スイス、英国の6社が3〜400億ドル、日本は武田、アステラス、第一三共エーザイを合わせて400億ドル。
2)薬の研究開発費は概略売上額の20%程度であるが、開発費の絶対額の大きい米国が結果的には開発する新薬数が多くなる。米国が開発する新薬数は、世界売り上げ上位100品目中44品目(2010年)となっている。
3)また、米国では発見された新薬で医薬品大企業由来の新薬は40数%であり、50%以上が大学やバイオテク企業によるものである。米国以外では、新薬のほぼ90%がメガファーマの開発。
3)医薬品開発の難しさ
新薬創出の困難性:新薬開発の過程で、臨床試験が開始できる薬は7〜8千件中の1件、最終的に承認取得できるのは、1〜3万件の中から1件程度にまで絞られる。1社当たり数年に1件の新薬が出せるかどうか。

(4)これからの医薬品産業の動向
1)近年の新薬開発は、バイオ製品(従来より高分子構造物)が増加しつつあり、これに伴い薬剤の価格が上がる傾向にある。
2)また、これからの創薬アプローチは、ポストゲノム技術の応用、iPS細胞の利用等々で開発期間や成功確率が大きく変わってくることが期待できる。変わってくることがあり得る。
3)製薬企業の動向に関しては、グローバル化とマネージメント能力強化が世界的な動向であり、個別企業の得意分野を他社、異種企業と共有し総合的な競争力構築を図る動きも出てきつつある。ただし、その場合必要なのは、どことどう組むかについての「目利き」である。
4)日本の医薬工業規模は世界的に見て決して大きくはないが、新薬創出力はある。諸々の課題を抱えてはいるが、日本の特長を生かした、高付加価値・少資源・知識集約型の産業として生き残らなければならない。

講演後の質疑応答:
*医薬分業のメリット *世界的に見て開発費が欧米に及ばないが生き残るための算段は*ジェネリック薬品は完全に同じでないが、問題ないか *薬価の決め方 *医薬品の特許期間 *中国の動き 等々につき多くの質問が出され、活発な質疑応答が続いた。

配布資料:
「日本の製薬産業の現状と課題」
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2015年03月26日

EVFセミナー報告「雨庭のすすめ」

2015.3.26EVFセミナー概要報告(山田和彦)
演題:「雨庭のすすめ」
講師:京都学園大学 バイオ環境学部/バイオ環境デザイン学科教授 京都大学名誉教授
   森本 幸裕 様
開催日時:2015年3月26日(木)
場所:港区田町 新現役ネット会議室

セミナー概要報告

「雨庭」はこれまで都市が邪魔物として抹殺してきた湿地の生態系を、もう一度都市全体のデザインに復活させる試みです。
ヒートアイランド現象、集中豪雨に対して、その災害を低コストに低減することができるのです。しかも、多様な生態系の維持に貢献します。
講師は生態、景観など広く、新しい分野の第一線をリードしてこられました。今回はそうしたこれまでの研究を総合して、アクションにつなげようというお話を伺うことができました。
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1.地球環境危機を語る前に:攪乱と再生
・日本の国土利用計画は1億3千万人ではなく、8千万人に対応したものである必要がある。
・人類にとって、地球の安全運転の限界を超えて、最も厳しい危機に直面しているのは「生物多様性の損失」である。
・気候変動的には1時間に50mmや100mmを超す集中豪雨が増加している。加えて少子高齢化で、もはや子孫と地球環境に負荷をかけられない状況となっている。
・攪乱を受けた後元に戻る能力のことをレジリエンスというが、効率性を高めるための「選択と集中」が、想定以上の攪乱(洪水、干ばつ、地震、津波、病虫獣害etc.)への対処能力を弱め、別の悪い状態へレジームが変化する恐れをもたらす。これへの対処の手掛かりは、冗長性と多様性である。
・京都は攪乱があってもなぜか蘇ってきた都市である。京都三大祭(葵祭、祇園祭、時代祭)も攪乱に対する復興の象徴である。

2.「要塞型」と「柳に風型」
・3.11宮古市田老地区は長さ2km超、高さ10mの防潮堤を築いていたが、229人の死者・行方不明者(7.6%)を出し、一方、防潮堤を作らず、避難対策に傾注した同市鍬ヶ崎地区は65人の死者・行方不明者(2%)にとどまった。

3.「攪乱≠災害」「減災&再生」
・アメリカのハリケーンカトリーナによる災害では、堤防による氾濫の防止が海洋浸食を招き、逆に都市の危険地帯化を招いた。ミシシッピー流域では、通常の氾濫によってもたらされる湿地の確保が、減災に重要なのであった。
・また、インド洋大津波の時には、マングローブの森は耐えることができたのに対し、近くの橋は壊れてしまった。
・北海道奥尻島の津波では、対策費930億円をかけて要塞型の復興を行ったが、ハード事業終了後には亡くなられた人数の2倍以上(660人)の人口減少となってしまった。

4.攪乱の日本列島:生物多様性の宝庫
・日本列島は極めてきめ細かい表層地質のモザイク構造で、地滑りや土砂崩れ、活火山、断層などがあり、短期的には災害だが、長期的には土壌資源と多様性をもたらす。
・京都では、例えば銀閣寺の庭園造形は、池に溜まる砂の処理でもある。

5.都市のグリーンインフラストラクチャー(GI)=雨庭のすすめ

雨水の流れはいのちの流れ
・都市型洪水リスクの増加 ⇒ 雨水の浸透+貯留は流域防災の基本
・都市化がもたらしたヒートアイランド、水辺の生物多様性の危機 ⇒ 都市は雨庭でよみがえる
・街路、公園、住宅敷地をレインガーデン(雨庭)に!

雨庭の7つの利点
・都市気候の緩和
・生物多様性保全への貢献
・景観の向上
・コミュニティの交流
・洪水調節・湧水保全
・水質浄化
・身近な自然体験の場
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質疑
Q.日本は「要塞型」をとってきたことの反省が足りないのではないか。
A.東日本大震災復興の基本方針に関する有識者会議で、エコロジーの分かる人が1人もいなかった。
Q.私は宮城の人間で、津波で被災した。今、7.2mの防潮堤ができているが、柳に風型の考えが必要と思った。
A.うまく組み合わせることが必要。EUはグリーンインフラストラクチャーの導入を決めた。
Q.ロンドンのグリーンベルトのような考え方は?
A.日本では根づかなかった。しかし日本では市街化区域と市街化調整区域の線引きが行われ、むしろ田園の開発が促進された。
Q.経済的な観点から、今日のお話が国民的視点になるためには?
A.KES(環境マネジメントシステム)に取り組んでいるような企業への働きかけを行い、現状をリスクとしてちゃんととらえてもらい、自治体に取り組んでもらう必要がある(ドイツでは雨庭的な対応いかんにより、下水道料金に差)。
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