2015年09月17日

EVFセミナー「生態系/生物多様性はどうなって行くのか?」

演題:生態系/生物多様性はどうなって行くのか?
講師:東洋大学国際地域学部国際観光学科元教授 薄木 三生 様
日時:2015年9月17日(木)
場所:新現役ネット事務局会議室
参加:33名

要約:
地球生態系の健全さに関する「国連ミレニアム生態系評価」の要点が、最近50年間の生態系変化、生態系変化による得失、次の50年の生態系見通し、生態系劣化を反転させ得る有望な対応、の評価結果と共に紹介された。加えて、具体的環境教育が必要な分野の事例および技術と経済効率偏重の裏支えを強要され過ぎた現代科学への反省例が紹介された。
IMG_1604.jpg
講演概要:
1. 国連ミレニアム生態系評価(以下MA)の内容の紹介
1)MAは地球生態系の健全さに関する最大規模の評価で、2000年の国連事務総長要請に応じ、2千人を超える専門家と国連機関、条約事務局、産業界、諸NGOが参画して実施。気温上昇を19世紀工業化前比で2℃未満とする必要性はMAが指摘し、IPCC最新報告書にも反映されている。焦点を生態系機能に当て、人々が生態系から得る便益(サービス)を論じている。
基盤となるサービスは、栄養分の循環、土壌形成、1次生産などで、これらに支えられて以下の3機能が生ずる。この内、GDPに反映される@偏重の傾向がある。
  @ 供給サービス:食料、淡水、木材及び繊維、燃料など
  A 調節サービス:機構調節、洪水制御、疾病制御、水の浄化など
  B 文化的サービス:審美的、精神的、教育的、リクリエーション的など
2)生物多様性の保護は現代科学(技術偏重)での理解を超えるテーマの一つで、科学的に明らかな200万種弱(推計の10%)が、人間行動起因でかつてない速度で絶滅が進行、WRI予測では近年の主に熱帯林減少で全生物種の5〜15%が絶滅する。開発途上地域熱帯林での自然資源勘定の試算研究が試みられているが、政治・財界リーダ達への浸透は至難で、米(欧)、国連の目論見は民族国家主義の開発主権と真っ向から対立している。
3)MAの結果その1;最近50年間における生態系の変化
人間は、過去のどの期間よりも急速かつ広範に生態系を変え、地球上生命の多様性に大規模な不可逆的損失を招いて来た。1960年以降陸域生物が利用可能な窒素は2倍に増加しており、2050年迄に更に65%増えるとの予測もある。同じく燐のフローは3倍になった。CO2は1750年以降の濃度増加の60%が1959年以降に起こった。
IMG_1622.jpg
4)MAの結果その2;生態系変化による得失
 以下の3主要問題は人々が生態系から得る長期的便益(サービス)を減少させている。
  @ 生態系機能の劣化:これによる富の損失は伝統的自然勘定では含まれないので経済勘定に反映されない。従って見かけ上富が増加しても実際には損失を被っている。
  A 非線形変化の可能性の増大:不完全だが確かな証拠がある。例えば北大西洋のタラ漁獲量の1990年代以降の急激な落込みによる漁業の崩壊があげられる。
  B 特定地域(サブ・サハラ・アフリカなど)の人々の貧困の悪化:例えば砂漠化が乾燥地の貧しい人々の生活に悪影響を与えている。
5)MAの結果その3;次の50年における生態系の見通し
 生態系機能の劣化は今世紀前半に相当程度進行しミレニアム開発目標の障害になっている。これに対処するためにMAでは以下の4シナリオをあげている。
  @ 技術庭園:生態系機能の効率的利用を進める技術開発への相当な投資、及び「生態系機能に対する支払い」の広範な利用及び市場メカニズムの確立
  A グローバルな調和:教育・社会基盤への投資と貧困の減少、及び貿易障害と歪曲した補助金の除去
  B 適応モザイク:能動的適応管理の広範な利用、及び教育分野への投資(GDP比13%)
  C 権力による命令:3サービス機能の改善は見込めないと予測
6)MAの結果その4;生態系の劣化を反転させ得る有望な対応
  制度:・生態系管理目標の他部門内及び広範な開発計画枠組み内への統合
     ・政府及び民間部門の透明性及び説明責任の拡大
  経済:・生態系機能の過度の利用を促進する補助金の廃止
     ・生態系機能管理における経済的手法及び市場に基づくアプローチの拡大利用
  技術:・有害な影響なしに穀物生産の増加を可能にする技術の促進
     ・生態系機能を回復させる技術の促進
     ・エネルギー効率性を高め温室効果ガスの排出を減少させる技術の促進
  社会的及び行動的対応分野:
     ・非持続的に管理されている生態系機能の集合的消費を減らす方策
     ・通信と教育
     ・生態系機能に依存するグループの強化
  知識:・資源管理決定における生態系が持つ非市場的価値の取込み
     ・人材的及び制度的能力の向上
増大する需要に合わせながら生態系劣化を反転させる挑戦は、政策と制度の相当な変化を含むいくつかのシナリオの下では可能であるが、そうした変化は大きなものであり、現在は起こっていない。

2. 具体的な環境教育が必要とされる分野の事例の紹介
1)屋久島世界自然遺産
町は山中6カ所の汲取り式トイレ廃棄物の年間人力荷降し費4千万円を一口500円の寄付で賄う積り(登山者8割の寄付で成立)だったが、実際の寄付は1200万円のみだった。 仕方なく2008年屋久島登山有料携帯トイレ(1個500円)の試行・実施を導入した。
2)富士山世界文化遺産
五合目公衆トイレに利用者の善意によるチップ制を導入したが、1人当り30円しか集まらなかった。静岡県政モニターのアンケート調査では、受益者負担が必要:97%、強制有料制度導入賛成:63%、適切な負担額:100〜200円、であった。

3. 技術と経済効率偏重の裏支えを強要され過ぎた現代科学への反省例の紹介
 野家啓一氏著「科学哲学への招待」から以下の内容などが紹介された。
 ・これからはもう少し哲学に立ち返るべし。
 ・科学技術三神話(価値中立神話、安全神話、信頼神話)は砂上の楼閣で崩壊している。
・科学技術倫理のあり方は、信頼性回復、世代間倫理、社会的説明責任、知識の製造物責任の重視にある。
以上 文責:岩崎力
posted by EVF セミナー at 18:03| Comment(0) | TrackBack(0) | セミナー紹介

2015年08月27日

EVFセミナー「気候変動リスクと人類の選択-IPCCの最新報告から-」

EVFセミナー(8/27)の概要報告    (立花 賢一)
 
1)開催日時      平成27年8月27日(木)15:30〜17:30
2)場所        新現役ネット事務局会議室
3)講師        国立環境研究所 地球環境研究センター 気候変動リスク
  評価研究室長 江守正多様
4)講演テーマ    「気候変動リスクと人類の選択〜IPCCの最新報告から〜」 
5)参加者数     35 名
6)セミナー概要報告 
002-2.jpg
国連気候変動枠組条約における国際交渉では、産業化前を基準に世界の平均気温上昇を2℃以内に抑えるという目標が掲げられています。しかし、新しく発表されたIPCCの第 5次評価報告書によれば、この目標を達成するためには、世界の二酸化炭素排出量をできるだけ速やかに減少に転じさせ、今世紀末を目途にゼロに近づけていかねばなりません。この状況に私たちはどう向き合ったらよいのか、リスク管理の観点から、シミュレーション映像などで解析していただき、わかりやすく紹介していただきました。
DSCN4129-2.jpg
地球温暖化のしくみ
地球の温暖化を引き起こす直接の原因となっているのは温室効果ガスで
・温室効果がなかったら −19℃
・温室効果があるので   14℃
・温室効果が高まると   14℃以上になる。
IPCC(気候変動に関する政府間パネル)
第5次評価報告書を一昨年〜昨年に発表。温室効果ガス濃度と世界平均気温・海面水位は20世紀に急激に上昇している
・20世紀半ば以降の世界平均気温上昇の半分以上は、人為起源の要因による可能性が極めて高い(95%以上)
・予測される100年後の気温上昇量は、社会の発展の仕方と対策の大きさに依存し科学的な予測にも幅(不確かさ)がある。
・予測される100年後の海面水位上昇は0.2m〜1.0m
極端現象の21世紀後半のリスク
・寒い日と寒い夜の頻度減少
・暑い日と暑い夜の頻度増加
・高潮の発生が増加
・脅威にさらされているサンゴなどの独特の生態系や地球システムの質的な変化などが考えられる。
気候変動対策の長期目標
メキシコでのCOP16カンクン合意で、産業化以前からの世界平均気温の上昇を2℃以内に収める観点から温室効果ガス排出量の大幅削減の必要性を認識された。
2℃以内目標を達成するには
・排出削減経路として今世紀前半は世界全体の排出量を現状に比べて2050年までに半減程度にする。
・今世紀後半は世界全体の排出量はゼロに近いか、マイナスにする必要がある。・
切り札と考えられるバイオマスは有効か
二酸化炭素を吸収して大気中の二酸化酸素濃度を下げ、放射エネルギーを増やす二酸化炭素除去する方法が考えられるが、次の課題がある。
・バイオマスでのco2回収貯留自体の社会的受容性が未知数である。
・エネルギー作物の大規模栽培は土地を巡って食料生産と競合する。
・新たな土地の開発は炭素放出に伴うとともに、生態系破壊にもつながる。
地球温暖化が最悪のシナリオになった時の最終手段は気候工学か
太陽光を反射させて入るエネルギーを減らし、地球の温度を低下させる太陽放射管理で最も研究が盛んなのが、硫酸の薄いミストのエアロゾルを成層圏に撒く方法がコストパフォーマンス良いとされるが、次の課題がある。
・気温分布、降水分布などに副作用の可能性
・海洋酸性は止められない。
・放射線管理を止めた時の急激な温暖化

おわりに
最新の日本および世界の地球環境問題に取り組みについては、気候変動関連リスクを全体像で捉える必要がある。悪影響、好影響の出方は、国、地域、世代、社会的責任によって異なる。地球温暖化問題の鍵は、豊かさとは何か・正義とは何かそしてどんな社会に生きたいかが必然的にかかわるので、科学だけでなく、社会的判断のための、コスト・リスク・便益・実現可能性を明らかにして行く必要がある。
なお、2020年以降の地球温暖化対策の時期枠組みをめぐる交渉で、50年以降の長期的な温暖化ガス排出削減目標の設定について合意を目指す動きが広がってきた。3か月後に迫ったパリでのCOP21は正念場を迎えている。
<後記>
講演後、30分に渡って、最大排出国中国や第3位のインドなどの協力、化石燃料を大幅に使用できなくなると考えられる300年先の温暖化などについて、熱心な質疑応答が続いた。なお、「切り札バイオマスについて」「気候工学について」の話などは、目から鱗の、大変興味深い講演であった。
posted by EVF セミナー at 19:00| Comment(0) | TrackBack(0) | セミナー紹介

2015年07月23日

EVFセミナー「宇宙測位技術で地球を測る」

セミナー「宇宙測位技術で地球を測る」  報告(文責:三嶋 明)
1)開催日時   平成27年7月23日(木)15:30〜17:40
2)場所     新現役ネット事務局会議室
3)講師     国土交通省国土地理院測地観測センター 専門調査官 後藤 清
4)講演テーマ   「宇宙測位技術で地球を測る」
5)参加者数      29名
6)セミナー概要報告
2015-07-23 15.44.15.jpg
(1)国土地理院のご紹介
動画を使っての紹介。700人体制で、その7割がつくば市のセンター、3割が全国10か所に。
(2)VLBI(超長基線電波干渉法)
1)VLBIとは、数十億光年の彼方にある数百の準星からの電波を追尾し、その到達時刻の差を計測する技術。
2)VLBIの目的(役割)は、*地球上の位置を高精度に決定、*プレート運動の検出、*地球の姿勢を測る。
3)VLBIの新システム(VGOS):国際VLBI事業は2009年に次世代VLBI観測システムの仕様を公表。国土地理院も参画。茨城県石岡市に次世代型アンテナを設置し、2014年に観測を開始。
DSCN4053-2.jpg
(3)GEONET(GNSS連続観測システム)
1)GNSSは各国の衛星測位システムの総称で、移動体の航法支援、測量などに活用されている。
アメリカ:GPS/30――>31機へ、日本:準天頂衛星システム/1――>2018/4――>7機へ、
ロシア:GLONASS/24機、EU:Galileo/3――>2017/26機へ、この他に中国:BeiDou。
2)GEONETは、世界最大級のGNSS連続観測システムで、日本全国に約1,300点に設置されている施設「電子基準点」とデータを集約・解析する「中央局」で構成されている。
3)GEONETの目的(役割)は、*各種測量の基準点、*地殻変動の把握(任意の期間における「地震、火山活動、地滑り」等の地殻変動を把握)、*位置情報サービス(リアルタイムデータを提供することにより、情報化施工等の事業に利用)
4)マルチGNSS:新たにGalileoからの信号を受信し、測量困難地域・時間の縮小を図り、長距離基線を短時間で求めることが可能になる。
(4)SAR(合成開口レーダー)
1)SARは、人工衛星のアンテナから対象物に電波を発射し、反射された電波を観測し、対象物の大きさや表面の性質を知る技術、又電波の戻ってくる時間により対象物までの距離を測定できる。
2)地殻変動、地盤沈下、火山活動、地滑りなどの面的変動の把握に特徴がある。
3)日本のSAR衛星は、ふよう1号(1992-98)、だいち(2006-11)、現在はだいち2号(2014-)と変遷。
(5)おわりに
国土地理院は、国内外の関係機関と協力して、VLBI、GEONET、SARの解析技術の向上を図るとともに、それぞれの特徴を生かして、その情報を防災・減災の関係機関、必要とする方、一般の方にも提供している。
<後記>
講演後、40分に渡って、精度の向上の歴史、安全運転、民間の地図情報会社との契約、三角点の将来、国土地理院の組織・守備範囲、プレートの動き、マルチGNSSなど、熱心な質疑応答が続いた。「技術そのものの進歩」「国際協力」に隔世の感があり、大変興味深い講演であった。//
posted by EVF セミナー at 19:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2015年06月25日

EVFセミナー「美しいものを美しく見せるために」

セミナー 「美しいものを美しく見せるために」 報告(文責:岡田康裕)
1)開催日時  平成27年6月25日(木)
2)場所    新現役ネット事務局会議室
3)講師    根津美術館顧問 (元副館長)  西田宏子殿
4)講演テーマ 「美しいものを美しく見せるために」
・美術館はエコでなければ運営できない
・根津美術館の場合
5)参加者数  43名
DSCN4015.jpg
6)セミナー概要報告
(1)根津美術館開館からの経緯
1)昭和16年に根津嘉一郎氏のコレクションを基に、氏の私邸を利用して開館した。  昭和29年に新たに館を建設し昭和31年に開館したが、空調は無く、展示ケース、蔵などの問題を抱えていた。
2)平成2年の改築に当たり、展示の場・空間として来館者にとって魅力があり、多目的の展示が可能であり、エコであり、収蔵庫の環境も改善できる美術館の実現を目指した。
(2)こだわりの美術館構築
1)収納品の量に対して狭く、高温・高湿でカビ対策が必要であった収蔵庫を大幅に改善した。 断熱方法、熱負荷シミュレーションなどを繰り返し検討してじっくりと蔵と館の空調構築を行って来た。
2)展示ケースを改善した。ケースはハット型として照明を上部につけ、配線もケースガラス面の角部を見えないように這わせるなどの工夫にこだわった。これにより、レイアウトにかかわらず、展示品を常時最適に鑑賞することが可能となった。
3)照明は当時、美術館照明としては非常に新しかったLEDに挑戦した。特に赤色が美しく見えるLEDを模索して、採用した。これにより展示品を美しくかつエコな運用が可能となった。さらに館の瓦屋根部には工夫して太陽光発電を設置し、併せてエコな運営が促進されている。
4)同時に館内の床、壁面の材質、色にもこだわり、展示品がより美しく鑑賞できる工夫をした。これらについてスライドで詳しく解説があった。
DSCN4019.jpg
(3)庭園・茶室・導線分析など
1)美術館は建物だけでなく、庭園の整備にも力を入れてきた。由緒ある茶室、発掘品などの移築も行って、四季折々、根津美術館八景も多くの方に楽しんでいただいている。
2)展示に当たっては、展示品の展示順序レイアウトに導線シミュレーションをおこない、気持ちよく鑑賞いただく工夫をしている。
<後記>
講演後約30分間にわたり、照明方法、展示ケース、美術館の由緒、独立採算の美術館の運営の苦労などについて熱心な質疑応答が続いた。「日ごろ何気なく入館して、展示品を鑑賞して退館していた美術館であるが、今後は美術館の運営の苦労に思いをいたして、また今までと違った、美術鑑賞が出来そうです。」との意見が出て、大変に有益な講演であった。
7月20日(木)から9月6日(日)には新しい企画「絵の音を聴く −雨と風、鳥のさえずり、人の声― 」が始まる。ぜひ訪問して、講演を思い起こしてみたいものである。
                          以上
配布資料:
「講演資料」
posted by EVF セミナー at 20:00| Comment(0) | TrackBack(0) | セミナー紹介

2015年05月28日

EVFセミナー報告「水素社会は来るか」

演題:「水素社会は来るか」
講師:経済産業省 産業技術環境局 研究開発課長 
   渡邉 昇治 様
開催日時:2015年5月28日(木)
場所: JICA(市ヶ谷)

セミナー概要報告

 今回ご講演をお願いした渡邊 昇治様には産業技術の変わり目の機会をとらえて、その将来動向を分かりやすく解説していただいてきております。お立場上、お話しされる内容が国の産業政策と誤解されることも懸念されますのでご講演はオフレコということでお願いしています。したがってここではお話しされた内容から筆者の判断でその要点をまとめたものを概要報告とさせていただくことをご理解ください。 
suiso4.jpg
さて、水素はその利用時にCO2を排出しない新たなエネルギー源として注目を集めているが、家庭用燃料電池、燃料電池自動車は実用化段階にその一歩を踏み出したように思われる。しかしながら水素の価格がまだ実用化には高い、水素製造時にCO2が排出されるなどの課題も残っている。
suiso5.jpg
主要なエネルギーの転換にはそれが実用化されるには太陽光パネルの例を引くまでもなく30年以上の時間を必要とし水素社会の到来にはまだその見極めのための時間がかかると思われた。水素燃料電池自動車も2002年から実証プロジェクトが始まっており2025年頃には普及に弾みがつく可能性もある。
水素燃料のメリット、用途と課題を整理しておくと
(1)メリット
・CO2排出抑制
・クリーンエネルギー
・電気だけでなく熱源として利用できる
・エネルギー国産化の可能性がある
・再生可能エネルギーの余剰電力の蓄電が可能 
(2)水素エネルギーの主たる用途
・水素発電
・燃料電池
・燃料電池自動車   
(3)解決すべき課題
・コストが高い(水素製造価格よりも輸送、貯蔵など)
・社会的受容性
・法規制など 
 以上の課題を乗り越えた時に初めて実用化されるが、時間的見通しは燃料電池自動車、燃料電池コジェネの普及が始まっているが、2020年頃までにインフラ利用技術の開発、水素タウンの実証を踏まえ、2030年頃までに本命である高効率水素発電の実証を終えて、本格的普及の時期を迎えるかもしれないと思われる。
suiso6.jpg
配布資料:
講演資料「水素社会」

posted by EVF セミナー at 18:00| Comment(0) | TrackBack(0) | セミナー紹介

2015年04月23日

EVFセミナー報告「日本の製薬産業の現状と課題」

セミナー「日本の製薬産業の現状と課題」報告(文責:橋本 升)

1)開催日時  平成27年4月23日(木)
2)場所    新現役ネット事務局会議室
3)講師    元三共株式会社社長 池上康弘殿
4)講演テーマ 「日本の製薬産業の現状と課題」
5)参加者数  34名
6)セミナー概要報告
DSCN3872.jpg
(1)日本の製薬産業を取り巻く課題
1)子ども人口(14歳以下)の減少と高齢者(75歳以上)の増加が顕著であり、人口の減少をもたらし、医療費や年金などの社会保障費の増加が財政を圧迫する。
2)平成26年度で見ると、国民医療費は約43兆円にも及ぶ。このうち、医師等の人件費が20兆円、医薬品が10兆円(約70%が調剤薬局分)等であり、新薬が高くなることや高齢者が何種類もの薬を飲むこと等が相まって、今後ますます後期高齢者医療費が国の財政を圧迫してくる。
3)財政問題改善に有効な手段として、年金と福祉に手を付けることが政治的にも困難な中、医療面とりわけ薬剤費の抑制策が即効性の高い策として強化されよう。今後、薬価改定(2年ごとに実施されている)及び包括化(使用制限)と並んで、ジェネリック医薬品のさらなる浸透策が強化されよう。

(2)ジェネリック医薬品
1)日本での現在のジェネリック医薬品の占める割合は約23%であるが、英(63%)、米(75%)、独(68%)などでは高い比率になっている。
2)日本でのジェネリックの浸透が遅れているのは医師、薬剤師のジェネリックに対する考え方の国情によるが、欧米との薬価政策の差によるところが大である。
3)日本の場合、保健薬の価格は公定価格であるが、欧米では新薬価格は自由に付けられる。その代わり、アメリカでは特許期間中は大きな売り上げを示していた薬が、特許切れと同時にジェネリックに取って代わられ、売り上げが急落すると言うことが起きている。このような事情は、一つの薬につき物質・用途に関する一つの特許が対応しているため、一つの特許が切れると裸になってしまうという、他の工業製品とは異なる特許構成にもよる。
新規_1_IMG_1601.jpg
(3)世界の製薬産業規模と医薬品開発力
ジェネリックの比重が増大して特許薬の売り上げ減少が続く一方で、新薬の創出は困難性を増している。新薬の創出には長い年月と巨大な資金がかかる。しかも既存の薬剤を上回る効果と安全性をもつ新薬はなかなか出せない状況にある。
1)世界での医薬品の売上高は、ファイザー(米)が約600億ドル、メルク、ロッシュ等スイス、英国の6社が3〜400億ドル、日本は武田、アステラス、第一三共エーザイを合わせて400億ドル。
2)薬の研究開発費は概略売上額の20%程度であるが、開発費の絶対額の大きい米国が結果的には開発する新薬数が多くなる。米国が開発する新薬数は、世界売り上げ上位100品目中44品目(2010年)となっている。
3)また、米国では発見された新薬で医薬品大企業由来の新薬は40数%であり、50%以上が大学やバイオテク企業によるものである。米国以外では、新薬のほぼ90%がメガファーマの開発。
3)医薬品開発の難しさ
新薬創出の困難性:新薬開発の過程で、臨床試験が開始できる薬は7〜8千件中の1件、最終的に承認取得できるのは、1〜3万件の中から1件程度にまで絞られる。1社当たり数年に1件の新薬が出せるかどうか。

(4)これからの医薬品産業の動向
1)近年の新薬開発は、バイオ製品(従来より高分子構造物)が増加しつつあり、これに伴い薬剤の価格が上がる傾向にある。
2)また、これからの創薬アプローチは、ポストゲノム技術の応用、iPS細胞の利用等々で開発期間や成功確率が大きく変わってくることが期待できる。変わってくることがあり得る。
3)製薬企業の動向に関しては、グローバル化とマネージメント能力強化が世界的な動向であり、個別企業の得意分野を他社、異種企業と共有し総合的な競争力構築を図る動きも出てきつつある。ただし、その場合必要なのは、どことどう組むかについての「目利き」である。
4)日本の医薬工業規模は世界的に見て決して大きくはないが、新薬創出力はある。諸々の課題を抱えてはいるが、日本の特長を生かした、高付加価値・少資源・知識集約型の産業として生き残らなければならない。

講演後の質疑応答:
*医薬分業のメリット *世界的に見て開発費が欧米に及ばないが生き残るための算段は*ジェネリック薬品は完全に同じでないが、問題ないか *薬価の決め方 *医薬品の特許期間 *中国の動き 等々につき多くの質問が出され、活発な質疑応答が続いた。

配布資料:
「日本の製薬産業の現状と課題」
posted by EVF セミナー at 20:22| Comment(0) | TrackBack(0) | セミナー紹介

2015年03月26日

EVFセミナー報告「雨庭のすすめ」

2015.3.26EVFセミナー概要報告(山田和彦)
演題:「雨庭のすすめ」
講師:京都学園大学 バイオ環境学部/バイオ環境デザイン学科教授 京都大学名誉教授
   森本 幸裕 様
開催日時:2015年3月26日(木)
場所:港区田町 新現役ネット会議室

セミナー概要報告

「雨庭」はこれまで都市が邪魔物として抹殺してきた湿地の生態系を、もう一度都市全体のデザインに復活させる試みです。
ヒートアイランド現象、集中豪雨に対して、その災害を低コストに低減することができるのです。しかも、多様な生態系の維持に貢献します。
講師は生態、景観など広く、新しい分野の第一線をリードしてこられました。今回はそうしたこれまでの研究を総合して、アクションにつなげようというお話を伺うことができました。
DSCN3795-2.jpg
1.地球環境危機を語る前に:攪乱と再生
・日本の国土利用計画は1億3千万人ではなく、8千万人に対応したものである必要がある。
・人類にとって、地球の安全運転の限界を超えて、最も厳しい危機に直面しているのは「生物多様性の損失」である。
・気候変動的には1時間に50mmや100mmを超す集中豪雨が増加している。加えて少子高齢化で、もはや子孫と地球環境に負荷をかけられない状況となっている。
・攪乱を受けた後元に戻る能力のことをレジリエンスというが、効率性を高めるための「選択と集中」が、想定以上の攪乱(洪水、干ばつ、地震、津波、病虫獣害etc.)への対処能力を弱め、別の悪い状態へレジームが変化する恐れをもたらす。これへの対処の手掛かりは、冗長性と多様性である。
・京都は攪乱があってもなぜか蘇ってきた都市である。京都三大祭(葵祭、祇園祭、時代祭)も攪乱に対する復興の象徴である。

2.「要塞型」と「柳に風型」
・3.11宮古市田老地区は長さ2km超、高さ10mの防潮堤を築いていたが、229人の死者・行方不明者(7.6%)を出し、一方、防潮堤を作らず、避難対策に傾注した同市鍬ヶ崎地区は65人の死者・行方不明者(2%)にとどまった。

3.「攪乱≠災害」「減災&再生」
・アメリカのハリケーンカトリーナによる災害では、堤防による氾濫の防止が海洋浸食を招き、逆に都市の危険地帯化を招いた。ミシシッピー流域では、通常の氾濫によってもたらされる湿地の確保が、減災に重要なのであった。
・また、インド洋大津波の時には、マングローブの森は耐えることができたのに対し、近くの橋は壊れてしまった。
・北海道奥尻島の津波では、対策費930億円をかけて要塞型の復興を行ったが、ハード事業終了後には亡くなられた人数の2倍以上(660人)の人口減少となってしまった。

4.攪乱の日本列島:生物多様性の宝庫
・日本列島は極めてきめ細かい表層地質のモザイク構造で、地滑りや土砂崩れ、活火山、断層などがあり、短期的には災害だが、長期的には土壌資源と多様性をもたらす。
・京都では、例えば銀閣寺の庭園造形は、池に溜まる砂の処理でもある。

5.都市のグリーンインフラストラクチャー(GI)=雨庭のすすめ

雨水の流れはいのちの流れ
・都市型洪水リスクの増加 ⇒ 雨水の浸透+貯留は流域防災の基本
・都市化がもたらしたヒートアイランド、水辺の生物多様性の危機 ⇒ 都市は雨庭でよみがえる
・街路、公園、住宅敷地をレインガーデン(雨庭)に!

雨庭の7つの利点
・都市気候の緩和
・生物多様性保全への貢献
・景観の向上
・コミュニティの交流
・洪水調節・湧水保全
・水質浄化
・身近な自然体験の場
IMG_1576-2.jpg
質疑
Q.日本は「要塞型」をとってきたことの反省が足りないのではないか。
A.東日本大震災復興の基本方針に関する有識者会議で、エコロジーの分かる人が1人もいなかった。
Q.私は宮城の人間で、津波で被災した。今、7.2mの防潮堤ができているが、柳に風型の考えが必要と思った。
A.うまく組み合わせることが必要。EUはグリーンインフラストラクチャーの導入を決めた。
Q.ロンドンのグリーンベルトのような考え方は?
A.日本では根づかなかった。しかし日本では市街化区域と市街化調整区域の線引きが行われ、むしろ田園の開発が促進された。
Q.経済的な観点から、今日のお話が国民的視点になるためには?
A.KES(環境マネジメントシステム)に取り組んでいるような企業への働きかけを行い、現状をリスクとしてちゃんととらえてもらい、自治体に取り組んでもらう必要がある(ドイツでは雨庭的な対応いかんにより、下水道料金に差)。
posted by EVF セミナー at 18:12| Comment(0) | TrackBack(0) | セミナー紹介

2015年02月20日

EVF第8回通常総会記念講演会報告「国の姿についてこの頃考えること」

演題:「国の姿についてこの頃考えること」
   〜元EVF顧問竹内行夫氏の内輪のトーク〜   
実施日:2015年2月20日(金)
開催場所:JICA市ヶ谷ビル 大会議室
講 師:元最高裁判事、元外務事務次官 竹内行夫 氏 
竹内講師.JPG
 講師の竹内行夫氏はEVFが設立されたまもなくの約8年前、初代EVF顧問をお引き受けくださり、初期の土台作りに惜しみないご助力を下さった方です。
外務事務次官から最高裁判事を歴任されて昨秋には旭日大綬章を受章されたこの機をとらえ、非公式の内輪のトークという前提でご講話をいただきました。
ご講話の演題は「国の姿についてこの頃考えること」です。
1、今年は戦後70年にあたるが、いつまで「戦後」にこだわるのだろうか? 中国と韓国を相手に“歴史問題”ををいつまでも引きずるのは得策でない、との認識について丁寧に歴史的経緯を説明されました。問題の所在は、中国・韓国が対日歴史問題を克服しうるのかという両国の認識の中にある、と看破されました。
2、日本を取り巻く国際環境の大きな変化としての中国の挑戦について。中国はいま世界経済システムに挑戦しているとの認識がとりわけ重要であり、今後の日本と中国は経済上の相互利益関係を損なわないような冷戦状況を覚悟すべきと見通されました。
3、世界の中で相対的に経済力の低下が免れないわが国が、いかにして国際的地位を維持し向上させていくべきか、“グローバル・シヴィリアン・パワー”としての日本を強調されました。わが国は戦後から一貫して国際社会から尊敬され信頼されることを目標に努力してきた積み重ねを大切にして、「国際公益と道義性」をしたたかに発信する国家像を確認したいとされました。
竹内講演会.JPG
質疑応答では世界のイスラム教をどう考えるべきか、現在の政府中枢の考え方について巨視的な質問があり、それぞれ丁寧にお答えになられました。。聴衆41人の心がひとつになった1時間半でした。

配布資料:
「村山総理談話」
「小泉総理談話」
2年ほど前の寄稿文「国家像とやむにやまれぬ気概」
posted by EVF セミナー at 19:00| Comment(0) | TrackBack(0) | セミナー紹介

2015年01月22日

EVFセミナー報告「気象変動に関する世界の現状と日本は何をなすべきか?」

EVFセミナー(1/22)の概要報告 (今泉良一)  
演題: 気候変動に関する世界の現状と日本は何をなすべきか?    
実施日: 2015年1月22日(木)
開催場所 :国際協力機構(JICA )市ヶ谷ビル 202AB会議室
講師: 山岸尚之(やまぎし なおゆき)氏 WWFジャパン (公益財団法人 世界自然保護基金ジャパン)
自然保護室 気候変動グループ リーダー
DSCN3608-2.jpg
これまでの気候変動に関する講演や議論の多くは、先進国や後発国、また、産業界や学界の思惑も絡み、 “何が実際に起こっているのか”、“どうすればよいのか”等について分かりにくいことが多かった。 一方、今回講師をお願いした山岸氏は、昨年12月に南米リマで開催されたCOP20にも参加され、IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)が出した評価報告書(世界の論文に基づいたコンセンサス)や国立環境研究所報告等を踏まえて、1.気候変動の予測と影響、2.国際的な取組、3.難しさの要因、4.必要な対策、そして最後に5.これからの課題について解説された。世界の現状と日本が直面する問題について大変分かり易く、参加者の理解が深まった講演でした。特に、気候変動に対して“できない理由を探すのではなく、できる理由を探す”というスタンスは、共感できました。

講演概要
1.気候変動の予測と影響
95%の確率で温暖化が起きていることが、裏付けられている。現状のまま推移すると(産業革命前と比較して) 2100年には気温が4℃上昇するが、一方、充分な対策を講じてCO2を削減すれば2℃に抑えられるとし、全体で4つのシナリオがあることを解説された。一番酷いシナリオでは日本への影響も甚大であり、海面が60p上昇し、砂浜の80%が消失すると予測される。世界規模でも海面上昇は起こり、台風が大型化し、また、マラリアが増える等の弱者への“絶対的な不公平”も増長されると予測される。1970年の世界のGHG (温室効果ガス)排出量が
30G(ギガ)Tであったのに、2010年には49GTに増加している。上昇気温を2℃未満に抑えるには、2050年までに2010年比40〜70%削減し、今世紀後半にはマイナスでなければ達成できないと報告されている。
DSCN3607-2.jpg
2.国際的な取組
1992年にリオ・デ・ジャネイロで初めて開催された“地球サミット”以来国際社会が進めている取り組みは、大変重要である。 しかし、内容が難しく、なかなか理解が進んでいないのが現状である。1997年の国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の第3回締約国会議COP3の京都議定書では、“2008~2012年5年間”の西側の数値目標が採択された。一方、2009年のコペンハーゲンCOP15では、2013~2020年の枠組みを目指すも決まらず、これ以降温暖化への世界の関心は急速に低下してしまった。2011年ダーバンCOP17でも各国の枠組みは合意されず、現在2015年末に開催予定のパリ会議COP21で “新しい国際枠組み”の合意を目指している。この会議では、2020年以降の世界の気候変動・温暖化対策の大枠が合意される予定であり、この会議の結果により、世界がどの程度気候変動を防ぐことが出来るか、既に起こっている影響を軽減できるか、大変重要である。国際的な関心は高まってきているが、現在日本、中国、米国等各国が持ち寄った案では気温上昇は2.9~3℃であり、これを2℃以下に抑えるには、どうしたら良いのか、 まさに“人類の運命が決まる”会議であると山岸氏は述べられた。

3.難しさの要因
2011年現在のCO2排出国のトップ3は、1.中国26%、2.米国18%、3.インド6%(日本は5.4%)である。一方、中国やインド等の後発国は、産業革命以降の累積CO2排出量こそが重要であり、先進国の責務は大きいと主張している。更に、1人当たりのCO2排出量は、1.米国16.9、2.韓国11.8、3.先進国平均9.9、4.日本9.3、
5.ドイツ9.1であるが、中国は5.9、インドは1.4であることも忘れてはならない。国際的枠組みを決める上で、何が平等で、フェアーであるか、判断を大変難しくしている。

4.必要な対策(どこで対策が必要とされているのか?)
リーマンショックを除くと、日本の排出量は基本的に減っていない。増やさないことには成功したが、しかし、減らしていないと言えよう。大震災の後でも、省エネで減った分もあるが、原発停止による化石燃料の大量使用で増えている。つまるところ、気候変動対策とは、“日本のエネルギーのあり方を変える”ことである。つまり、80%が化石燃料であり、@使っている量を減らせば“省エネ”になり、ACO2 を出さない“自然エネルギー”や“再生エネルギー”を増やして化石燃料を置き換えることが、CO2排出削減対策である。日本では1970年のオイルショックを機会に省エネが進んだ。一方、1990年以降は改善があまり見られず、温暖化対策の旗を立て、もう一度省エネを実行することが必要なのではないか。OECD加盟国の省エネ基準適合義務化が進む中で、日本は住宅・建築の分野では後進国である。次世代省エネ基準が2014年に漸く改定され、2020年までに義務化しようとしているのが現状である。

5.これからの課題(目指すべきところは?)
WWFが掲げるビジョンでは、@省エネでエネルギーの無駄をなくし、A原発をなるべく早く廃止し、B残りを自然エネルギーで補おうとするものである。WWF(脱炭素社会に向けたエネルギーシナリオ)は、2008年の水準から2050年までに日本のエネルギー消費を半減できると試算している。車上太陽光・太陽熱・バイオマス・風力・太陽熱・地熱・水力を組み合わせれば、半減したエネルギー消費に対応できる。このシナリオによるWWFの試算では、設備投資で2030年まではコストが高くなるが、それ以降の運転費用を差し引いた正味費用は低下し、2050年までの40年間の累積では約200兆円の経費が軽減できると考えている。2050年の自然エネルギー100%時代を目指して送電線網を拡充し、色んなルートで融通を可能にすることが必要である。国としてより大きな削減を目指すには、産業界の自主的な取り組みだけではなく、排出を促す政策も重要である。主要国の自然エネルギーの発電全体に占める割合を見ると、90年代には5%未満であったデンマークやドイツは、政策の強化によって、この20年の間に自然エネルギーの比率をそれぞれ48%、22%まで引上げた。一方、日本の再生可能エネルギーは停滞している。CO2 の削減には、国の政策が極めて大事である。まさに、“できない理由を探すのではなく、できる理由を探す”ことが必要であろう。

講演終了後30分間強、欧州がなぜ積極的に自然エネルギーを推進するのか、日本の6%削減がなぜ達成でできたのか、原子力発電の役割、カーボンニュートラルについて、日本の国際気候変動交渉での評価等々大変活発な質疑応答が行われた。意見交換は、その後の懇親会でも活発に続けられた。

資料はここをクリックしてください。
posted by EVF セミナー at 21:02| Comment(0) | TrackBack(0) | セミナー紹介

2014年12月11日

EVFセミナー報告「国際司法裁判所判決と日本の将来」

EVFセミナー(12/11)の概要報告
(奥野 政博)
演 題:国際司法裁判所判決と日本の将来
開催日:平成26年12月11日(木)午後3時30分〜5時30分
場 所:新現役ネット事務局A会議室
講 師:小松 正之 氏(アジア成長研究所 客員主席研究員)

 講師は農林水産省に入省後、エール大学大学院で経営学修士(MBA)と東京大学で農学博士の学位を授与され、1991年から2004年に国際捕鯨委員会の日本代表代理を務められ、その間に国連食糧農業機関(FAO)やインド洋マグロ委員会議長やミナミマグロ国際海洋法裁判日本代表団員など国際的な捕鯨や水産問題で大活躍され、最近まで政策研究大学院大学で途上国公務員らに理論に基づく大局観と体験に基づく実践的なリーダーシップとネゴシエーションなどを教えていました。
 今回は2014年3月に判決が下った南極海捕鯨に関する国際司法裁判所(ICJ)の判決敗訴要因と今後、日本の取るべき方向について判り易い図表を交えて時間一杯お話しして頂きました。

講演概要:
 今回の判決内容に入る前に、先ず初めに「世界に分布する鯨類とその資源」について図表を用いて説明して頂いた。クジラは1種類ではなく国際捕鯨取締条約の分類表で定められた「大型鯨類」約13種と条約の対象外の「小型鯨類」約70種に分けられ、小型鯨類は殆どがイルカで、大型鯨類はシロナガスクジラ、ナガスクジラ、ホッキョククジラ、イワシクジラ、マッコウクジラやミンククジラなどであること、資源が枯渇、悪化しているのはシロナガスクジラ、ホッキョククジラと一部悪化しているコククジラで、ナガスクジラ、マッコウクジラやミンククジラの資源は健全とのことで、科学的根拠では捕鯨を再開するに何の問題もないと言えるとのこと。
小松2-2.jpg
 体長8mのミンククジラが大型鯨類に分類され、体長10mのツチクジラが小型鯨類に分類されている理由を本日の参加者に問われたが誰も答えられなかった。答えは、国際捕鯨取締条約で捕鯨の対象を大型鯨類としたもので、1949年に条約が制定された時に日本の房総半島や伊豆諸島にしか生息しないツチクジラは日本から専門家が参加していなかったので見落としただけとのことでした。
 またクジラとイルカの違いを皆に問われたがやはり誰も答えられなかった。答えは成体の体長4m以下がイルカとのこと。
 次いで「日本人と鯨類との長い関わり」について伊達藩の学者・大槻清準が記した捕鯨図説「鯨史稿」(文化5年(1808年))で近世捕鯨の繁栄例として平戸沖の鯨組と網取り式捕鯨の様子や江戸時代の捕鯨としてツチクジラのタレとして知られる安房勝山(房総)、ナガスクジラやザトウクジラを捕獲していた伊根(京都府)、日本の集団的職業捕鯨発祥地として知られている太地から室戸、長崎、長門へと続き、記録として残っているのは1604年の太地が最初で、江戸時代に西日本で捕獲された鯨肉が加工され九州、大阪、一部東京へ食文化として食べられ、その捕獲と加工技術を継承してその後南氷洋へ出て行ったとのこと。これに反し西洋の捕鯨は鯨油とせいぜいコルセットの骨として利用したため8割が海に捨てられ、乱獲につながったそうです。
 本題の判決内容の理解促進のため、先ず商業捕鯨モラトリウム(一時停止)は国際捕鯨取締条約第5条(商業捕鯨)に定めた捕獲枠やサンクチュアリー(保護区域)について科学的根拠に基づくべきとする条項に違反している事を生息データから説明された。
 今回の裁判の対象となった第2期南極海鯨類捕獲調査事業は、1987年から2005年に実施された第1期捕獲調査の調査結果を下に日本と世界の最高水準の鯨類科学者の英知を結集して2年以上の歳月を費やして作成され、2005年から始まった。南氷洋の鯨類資源の生態系のモニターや鯨種間の競合の解明などを目的とする裁判で日本政府代表団は調査計画よりシーシェパードの妨害が始まる以前から捕獲数を減らした科学的根拠を問われても的確な説明もできず、妨害の所為とした対応の不味さ(むしろ妨害を排除する方策や原計画を実行できないなら計画修正をすべき)を指摘された。
 もう一つの調査捕鯨の現状として北西太平洋鯨類捕獲調査の調査海域と調査目的(鯨類の摂餌生態の解明、DNA分析による系統群構造の解明、環境変動が鯨類に及ぼす影響の解明)と調査実態を図表と写真を交えて説明された。特にミンククジラの餌生物として胃袋にいたオキアミ、カタクチイワシ、サンマ、スケトウダラやスルメイカの写真を下にそれらの摂餌生態の実態や日本周辺での餌生物の漁獲減少と鯨類資源の増加などキチンとした調査分析と仮説検証の大切さを教えて頂いた。
 更に裁判での判決内容を理解する為に欠かせない「国際捕鯨取締条約」、特に第5条(商業捕鯨)第1項で捕獲枠の設定が、第2項でこれらの設定は科学的根拠に基くべき(そうでない場合は違法)と、第3項では第1項への異議申し立てができると定められていること、また捕鯨国であるノルウェイとアイスランドが商業捕鯨のモラトリウム(一時停止)に異議申し立てしていて、日本も一時異議申し立てしていたが水産業界の目先の利益のため撤回した(商業捕鯨はできない)背景など説明して頂いた。第8条(科学捕鯨(調査捕鯨))第1項に他の条項(第5条:商業捕鯨)に係らず科学目的なら許可を締結国(=日本)は発給でき、第2項で副産物(=鯨肉)は加工して処理する義務を課せられているので、一部外国から日本は調査捕鯨で捕獲した鯨肉を国内で販売していると批判されているが、主産物は科学的データで、鯨肉は第2項でいう副産物なので正当な義務であると日本は主張すべきと指摘され、鯨肉大好きの小生にとって心強い条項であると理解出来た。
 この条約には商業捕鯨の漁獲枠を具体的に決めた付表があり、「商業捕鯨モラトリウム(一時停止)」条項である第10(e)項は、1990年までにゼロ以外(=商業捕鯨OK)の捕獲枠設定を検討することになっていたが24年を経過しても未だ設定されず、日本は科学的根拠に基づかない捕獲枠の設定は第5条第2項に反すると意見を言い続けるべきとも指摘された。
小松1-2.jpg
 ここまで約1時間かけて基礎知識を身に着けた上で、国際司法裁判所(ICJ)の判決内容について解説して頂いた。
(1)ICJは全会一致で南極海捕鯨に関する訴訟(オーストラリアが訴え日本が被告、ニュージーランドが介入)に管轄権があると認めた。
※オーストラリアはもともと、自国の領土・領海(200海里EEZも主張)の紛争はICJに裁判の管轄権がない。
     これを引用し日本は、日本の調査捕鯨はオーストラリアの海里内で実施しているのでICJの裁判とはならないとの主張を展開したが、ICJは世界の大勢はノンクレーマント(南極大陸や200カイリの領有権を主張せず、他国の主張も認めない)であることを根拠に日本の主張を却下した。見事、作戦失敗だった。
(2)日本の南極海第2期捕鯨調査(JARPAU)が取締条約第8条1項に該当しない。
    ※目的は良い、デザインも特段問題ないがそれらに基づく十分なサンプルを取らず、目的を達成できないので科学目的の調査捕鯨ではない、そして原住民生存捕鯨でもないので商業捕鯨であるのは議論の余地なし(後段のICJの判断が拙速で説得力が全くない)と判定された。
(3)ARPAUが条約付表第10(e)、10(d)と7(b)項に反する。
    ※第2期調査は十分なサンプルも取らず調査捕鯨でなく、それは商業捕鯨と解されるので商業捕鯨モラトリウムが適用されると判定された。このことにも商業捕鯨のモラトリウムが、資源が健全な状況で、国際法に違反するという反論をしていない日本政府の対応が問題である。
(4)ICJは、日本政府がJARPAUの捕獲調査の許可を取り消し、この調査計画に対し今後いかなる許可もしてはならないと決定した。
とのことだが、(2)と(3)について何ら反論していないことと、それ以前にノルウェイとアイスランドの商業捕鯨および北半球の日本の調査捕鯨を提訴しないオーストラリアの訴訟の狙いを読み間違い、その後の改善策も講じない日本政府の対応を指摘された。
 これら問題の解決には交渉とリーダーシップが重要で、そのためには年令如何にかかわらず、情熱とむしろ経験が必要と私たちを含めて激を飛ばされた。
 ここまで1時間半たっぷりのご講演を頂き、本日ご用意された「日本の水産業の将来」まで辿り着けなかったことが残念でした。
 この後の質問に対しても情熱溢れる回答を頂きました。
 先ず、役人のレベルについて、家庭を含めて教育に問題があると思うが打つ手は?
に対して、短期的手段としては打つ手はないとのこと。長期的に、国や地域のために貢献することの重要性を教え込むこと。米国の政府やアイビーリーグ大学では教えている。
 次いで、農水省の中で捕鯨に対する優先度は?所内の空気は?との質問に対して、今の若い役人は、経験もなく敢えて難しい仕事はできないし、挑戦したくないのが実情と嘆いておられた。
 更に、数量的にも科学的にも鯨は一杯いるとのお話しであったが、反捕鯨の人たちは鯨は賢い動物だとか可哀そうだからと言うようなメンタルな話しをするが…との質問には、   正しいことを正しいと主張せずに、長い間に鯨は絶滅危機と宣伝され、間違った情報操作が定着してしまった。反捕鯨国は畜肉生産大国であることに加えて、アメリカやオーストラリアを見て感じることは日本が南氷洋に居られることが、日本ほど緻密なデータを持っている国はないから嫌だと思うと回答された。
 次いで、国際問題に自信がなく、事なかれ主義に陥り戦略的に考えて上手く反論するように変わる必要があると思うが、敵は外務省にありと啓蒙活動が必要ではと思っているとの意見に対して、米国務省の役人はアフガニスタンやリビアなどで殉死している。リスクを負って政治家へ助言や行動している。モラルが高い。役人の差も大きいとのこと。
 最後のまとめとして、ICJの判決を忠実に読むと、今の第2期の南極海調査計画は立派だと言っているので、自信を持って鯨を取りに行けば良い。付表の第10(e)項が諸悪の根源で、これを廃止する裁判を起こせ。自分なら日本の200海里以内で鯨を持続的に捕獲する計画を作成し、米国など反捕鯨国と交渉する。気に入らない国なら止めろと言う裁判を起こすだろう。どちらが勝つか見ものだ。起こさないなら捕鯨をすればよいと小松先生が言われ、出席者一同の大喝采の中、2時間のご講演を終えました。
 以上

資料はここをクリックしてください。
posted by EVF セミナー at 19:21| Comment(0) | TrackBack(0) | セミナー紹介