2014年07月24日

EVFセミナー「我が国の地熱発電の現状と将来の課題」

演題;我が国の地熱発電の現状と 将来の課題
講師; 産業技術総合研究所 再生可能エネルギー研究センター 
      安川 香澄 様
開催日時  平成26年7月24日(木)
場所    新現役ネット事務局会議室
講師    産業技術総合研究所 再生可能エネルギー研究センター 
       安川 香澄 様
講演テーマ 我が国の地熱発電の現状と将来の課題

セミナー概要報告
1、地熱発電とは
 特徴は3つ、ライフサイクルのCO2排出量が少なく、純国産エネルギー、安定電源。
2、3.11の震災ではすべて無事。送電系統のトラブルのあったところも3日以内に復旧し送電開始。特に奥会津(柳津)は送電も無事で、福島をささえた。
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3、しくみ
 地下の熱+地下水+ボイラー(やかん)としての地層 を有する土地に建設する。
4、日本の地熱資源
 世界3位の規模で発電設備容量 23470MWのポテンシャルがあり、その10分の1は開発可能。
5、なぜ開発が進まないのか
 原子力や火力のようなスケールメリットが無く、電力会社にとって魅力がない。
 初期コストが大きく、立地が限られ、送電コストが高い。
 鉱区設定ができず井戸掘りのリスクおおきい。
 国立公園法の開発規制。
 温泉業者との対話不足。持続可能な開発との理解不足と、都会の電力不足対策が目的と考えられ、地元の安定電源との理解がされなかった。
6、技術開発
EGS 地下を刺激して人工的に亀裂を作ってボイラーとなるようにする。
 ねらいは 1、消費地の近くでできれば、送電コスト下がる。
        2、既存の温泉地や公園地域をさける
        3、既設発電所の出力向上
 課題は 技術開発、誘発地震の心配
まとめ
エネルギー政策として一律の経済原理でない推進方策が必要。
小規模出力(2−3万kW)や更に小規模のバイナリに対してコスト減となるようなインセンティブのある制度設計が必要。
 海外事業に対する技術移転をサポートする制度設計を行い、開発継続と人材育成サポートが急務。地熱技術者は絶滅危惧。
 稼働特性を生かし、地域の分散安定電源として、電力、熱をあわせて供給し地域エネルギー自立を目指すべきではないか。
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質疑
・原発と比べてコスト高いのか→計算方式による。
・地下を掘る開発では温泉周りから金がでませんか?→場所によっては出ることもあり、海外ではレアメタル生産で稼いでいる地熱発電の事例がある。
・ニュージーランドマオリトラストのような利益地元還元政策のようなベースポリシーが必要では→あればよいと思う。今のエネルギー政策は政府が短期経済性から判断しており、長期的ではない点が問題。
・還元水は温泉にならないのか→既存の温泉にとっては、混ぜ物のイメージになるので利用されにくい。温水(熱)としての利用は可能。
・東京では地熱発電できないか→温度不足。将来の超深度EGSなら可能だが、現状では経済性がなさそう。
・アイスランドの状況は→発電量の30%は地熱。これで国民生活をすべてまかなえる。残りの70%は水力だが、このぶんは外国資本のアルミ工場に販売。

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2014年06月26日

EVFセミナー「日本のこれからを考える」

1)開催日時  平成26年6月26日(木)
2)場所     新現役ネット事務局会議室
3)講師     内閣府参事官(兼)経済産業省 研究開発課長
          渡邊 昇治様
4)講演テーマ 「日本のこれからを考える」
5)参加者数  48名
6)セミナー概要報告
  今回のセミナー講師をお願いした渡邊様は2012年8月に「これからの新エネルギー政策、新エネルギーの可能性と課題」というテーマでご講演をいただき、大変好評で折に触れてお話を伺いたいということから、お忙しいところ再度のご講演をお願いした次第です。
  今回は経済産業省というお立場を離れて個人的に思うところをお話しいただきたいということでお願いしましたので、ご講演の記録は残しませんがご準備頂いたレジメに従って筆者の感想を書き加えるということで報告とさせていただきます。

日本のこれからを考える
1)少子高齢化とロボット
    生産年齢人口の減少は避けようがないが、それだけに高齢者、女性が本格的に働く時代が到来する。高齢者はともかく元気で働き続け、逆に働くことによって健康も維持できる。しかしながら通勤の問題もあり、在宅勤務をサポートする情報システムがさらに高度化するだけでなくサービス業でも働けるロボットが登場するかもしれない。社会でロボットが多用されるようになった時のことを踏まえて事故、犯罪、個人情報保護などに対して早期に検討をしておく必要があろう。
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2)ものづくり革命の予感
    コンピュータによる第3次産業の次に来るものは何か。それを本格的ネットワーク社会の到来ということでインダストリー4.0と呼ぶ。これにより企業という概念が変わる可能性もあり、その兆しが随所に表れ始めていると思われる。

3)ダブルメジャーの必要性
    そのような社会で生きていくためには人は複数の専門分野を習得する必要があるであろう。そのためには企業の仕組みや教育システムも変わらざるを得ないが、それだけでなく高齢者と若い人との融合によるオープンイノベーションの創発に期待したい。多様な能力を持った人々のミックスが重要との指摘が興味深い。

4)エネルギーのベストミックス
    これからのエネルギーを考えるうえで重要なことは安全性、エネルギー保障、経済性、環境維持の
S+3Eのバランスが重要である。
    エネルギー利用では電気だけでなくエネルギー利用の大半を占める熱利用に目を向けなければならないが「国産+無尽蔵+CO2フリー」な熱利用技術は現時点ではほとんど不在といえる。その面では研究課題は多いが水素エネルギーにもっと注目した方がよい。太陽光などの再生可能エネルギーの技術革新には期待大だが、技術革新とそれを踏まえた政策のベストミックスを追求すべきであろう。
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以上の項目に関して実例を交えながら大変わかりやすく解説していただきましたが、その目指すところは洞察力にとんだ骨太な想いがあったように感じました。
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2014年05月22日

EVFセミナー「首都直下地震は来るのか?そして富士山の噴火の可能性は?」

実施日:2014年5月22日(木)
演 題:「 首都直下地震は来るのか?
     そして富士山の噴火の可能性は? 」
講 師: 神奈川県温泉地学研究所長
静岡大学名誉教授 
理学博士 里 村 幹 夫 様  
開催場所: NPO法人新現役ネット  A会議室
参加人員: 44名

 里村先生には直接お答えにくいテーマをお願いしたにも拘らず快くお引き受けいただき、ほぼ満席の会場は最初から一言も聞き逃したくないという熱気がいっぱいでした。

1、 地震とは? 「地震」は自然現象、「震災」は社会現象という定義から始まりました。だから普通言われている“東日本大震災”の地震名は“東北地方太平洋沖地震”と呼ばれます。震度は0〜7まで10段階あり、現在は震度計で震度を計測していること、マグニチュードの計算方法には複数あり、Mが1大きくなるとエネルギーが30倍大きくなるとのこと。
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2、 関東地方に想定される地震について :南関東は北からの北米プレート、東からの太平洋プレート、南西からのフィリピン海プレートの交叉する複雑な構造をしており、地震が発生する場所をプレートをもとに分類するだけで6種類にもなる。昨年の中央防災会議では、どの地震が起こるかわからないので被害の最も大きくなる都心南部直下地震で被害想定が作成されている。

首都圏でM8を超える地震の発生予想としては、@大正関東地震タイプ(M8.2)→発生は100年先とされているが、1996年以降スロースリップイベントが5回発生、その間隔がだんだん短くなってきており不気味。A延宝房総沖地震タイプ(M8.5)→東北地方太平洋沖地震によって誘発されないか心配。B元禄地震タイプ(M8.7)→しばらくのところ発生の可能性はない。

3、 東海地震とは :南海トラフの地震帯には歴史的に幾度か大地震が起こっている。1944年の昭和東南海地震、1946年に昭和南海地震が発生した。そのとき地震が起きなかった空白域の東海沖が危険とされ、東海地震対策がクローズアップされた。2001年〜2005年の異常地殻変動が観測されたときにはそれがきっかけで東海地震が発生するのではないかと心配された。

4、 東南海・南海地震 :最大クラスの巨大な地震・津波を検討したものであり、防災対策の基礎にすることは重要だが、必ずこの大きさの地震が来るとは限らない。

5、 富士山の噴火 :東北地方太平洋沖地震直後、富士山の活動が一時的に活発化したが、今は富士山の噴火の前兆と考えられる現象は起こっていないとのことでした。

6、 大地震発生時に一番大事なこと :死なないこと。阪神淡路大震災のときはほとんどの人が即死、その凶器はマイホームだったそうです。救助された人は警察、消防などからよりも近隣住民に助けられたとのことです。大地震で死なないためには、@倒壊しにくい家に住む、A家具を固定する、B寝る場所の安全に特に気をつかう、みなさんはっと我に返ったような顔をされ、深く納得したのでした。
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主な質疑応答)
Q1最近深海魚がよく捕獲されることと地震の兆候との関係
→ 直接の関係はないとおもう。ただし学問的に全く関係ないと言い切るのも難しいことを理解して欲しい。
Q2地震の計測器は変位を計測しているとのことだが、どのように計測しているのか。
   → 地震計以外にも長期的な変動はGPS装置を使った計測をしている。
Q3日本全国に地震計はどれくらい設置されているのか。
   → 全市町村1,700には最低1箇所設置されているので、4,000〜5,000箇所、いや1万箇所くらいに設置されていると思う。

                                      以上

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2014年04月24日

EVFセミナー「世界における施設園芸の現状と展望」

EVFセミナー「世界における施設園芸の現状と展望」(4月24日実施)報告

実施日:2014年4月24日
講師: 富田啓明 様  トミタテクノロジー株式会社 社長
開催場所: JICA研究所(市ヶ谷) 201AB会議室
参加人員: 29名

 講師はオランダの技術を吸収しながら独自の施設園芸技術を蓄積し、実際に自ら農業に会社として参入しながら、成長してきた。リッチフィールド栗原、リッチフィールド由布、リッチフィールド美浦など農業生産法人、販売会社を次々と設立し、高効率で計画性の高い施設園芸および販売までを実現してきている。リッチフィールドは「独自性の高い企画」「独自性の高い生産」「独自性の高い販売」の3つを柱に活動している。
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 施設園芸の規模の現状は全世界で250万ha、内中国が220万haで、残りは韓国5.6万ha、スペイン5.2万ha、日本4.9万haなどとなっている。 オランダは1.0万haだが、ガラス温室を利用し技術が高い。まず、メキシコのパプリカ、ノルウェーのキュウリ、ベトナムの菊、エクアドルのバラ、ジンバブエの生花など各国の園芸施設を写真を交えた紹介があった。

 次に、リッチフィールドの3つの柱の解説があった。「独自性の高い企画」はパプリカなどこれまで国内で作られていなかった農産物や加工品を提供する。リコピントマトもその例である。「独自性の高い生産」はグローバルGAPの手法やオランダなど最新の海外の技術を取り入れて活動する。閉鎖型温室において、暖房時の燃焼CO2を利用したり、LED照明による成長促進制御をするなどの様々な事例の紹介があった。「独自性の高い販売」は直接ユーザーにアプローチし、市場ニーズを把握できる販売体制を確立する。リッチフィールドは法人組織の農業への参入を支援するなど、活発な活動を行っていることの説明があった。
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講演後約30分間、下記を始めとする多くの活発な質疑応答があった。
・企業として農業に参入する場合の課題、解決方法。
・植物工場の将来性は? 輸出を狙う植物工場への補助金は?
・CO2利用の閉鎖温室は地球温暖化防止に寄与するのではないか?
・どのようなものを作ると良いか?
                            以上
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2014年03月27日

EVFセミナー「What will accelerate the EV diffusion(何がEV普及を加速するか)」

>EVFセミナー「What will accelerate the EV diffusion(何がEV普及を加速するか)」

実施日:2014年3月27日(木)
講師:日産自動車グローバルデザインセンター シニアスタッフマネジャー 
井上眞人氏
演題:What will accelerate the EV diffusion(何がEV普及を加速するか)
参加人員:38名
開催場所:新現役ネット会議室    
 
講師は1979日産自動車デザイン本部入社、日産LEAFを初めとする日産系電気自動車(以下EV)デザイン及びEV関連デザインを統括。世界初の大規模量産EVとなる日産LEAFのデザインを最初から手がけ、発売、マイナーチェンジまで担当。数多くの賞を受賞している。
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2011年に日産LEAFが発売され本格的EVの時代が幕を開けた。2014年1月にはLEAFの世界累計販売台数が10万台に達し、着実に市場に浸透しつつある。しかしながら、まだまだ発展途上にあるEVは爆発的な販売を見せているとまでは言えない。ゼロエミッションの重要な役割を担うEVが更に普及していくには何が必要とされるのだろうか。今後のEV普及の鍵は何か、EVならではの新しい付加価値の可能性などにつきご講演いただいた。

講演概要:
バッテリーのコストが1kWhあたり$100以下になればEVは従来の内燃機関自動車との競争に打ち勝つと言われる。しかし現状では2030年になっても実現しそうにない。
従ってEVは従来の内燃機関自動車の代替機能を狙うのではなく、EVの得意分野を最適に生かした新しい守備範囲を創造して行くことでEVのベネフィットを得るべき。これはギターの変遷の歴史に似ている。在来型のAcousticギターからElectric ギターへの“革新“は必ずしも”置き換え“ではなく、技術の進歩による新しい分野の創造であった。EVについても多分同じストーリーが当てはまると思う。
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EVは航続距離が短いという固定観念があり普及の足かせになっている。しかし次に示すEVの強みを生かせば内燃機関自動車にない新しい守備範囲が創造できる。
・抜群のエネルギー効率の良さ:
LEAFの場合、ガソリン2.7リッター相当の電気エネルギーで160q走行でき、
驚異的な経済性を発揮する。日本には年に2万キロ以上走行するドライバーが22.5%おり、この人たちは4年でEVの割高分を十分に回収できる。とくに
年間走行距離が大きい地方のドライバーにはベネフィットが大きい。
・強大な低速トルク
   内燃機関に比べて低回転時のトルクが強大であり、強力な加速感がある。
・静粛で振動が少ない
    内燃機関に比べ往復運動がないため、非常に静粛で振動がなく疲労が少ない。

さらに、充電設備を自宅と勤務先の両方に設置すれば、行動範囲が両点を焦点とする楕円形の範囲に広がり、日常の通勤や週末の外出にも十分に対応できる。停めたら逃げないように馬を繋ぐ行為と同様に、EVも停めたら充電プラグにつなぐのが良い。
EVの経済性を生かすには、車両の大きさ(バッテリー搭載量)と1日の行動範囲にバランスした最適のEVサイズを選択することが重要。行動範囲が小さければ小さい車両を、行動範囲が大きければ大きい車両を選択するのが良い。それぞれの車両にはそれぞれに見合った守備範囲がある。
EVはトランスミッションが不要であり、バッテリーとモーターのみで制御されているため、来たるべき自動運転時代には最も対応しやすいと言うアドバンテージを持っている。
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講演終了後、聴講者と講師の間で活発な質疑応答があった。話題の例は以下の通り。
  ・インホイールモーターの実用時期の見通し
  ・聴講者が所有するLEAFのバッテリー寿命の懸念
  ・外観からEVとわかる記号性のあるデザイン適用の是非
  ・各地での急速充電の料率比較、他     
以上
                           (文責:小栗武治)

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2014年02月27日

EVFセミナー「福島新拠点における再生可能エネルギーの研究開発」

EVFセミナー講演概要 (2014年2月27日)/JICA地球ひろば・会議室

    福島新拠点における再生可能エネルギーの研究開発
    
講師:産業技術総合研究所福島再生可能エネルギー研究所長 大和田野芳郎殿

産総研は、永年の蓄積のある再生可能エネルギーに係わる技術を生かし福島復興に寄与すべく、再生可能エネルギー研究開発の新拠点を福島県郡山市に2014年4月に開所する。
講演において、講師は世界の再生可能エネルギー技術の現状と今後の展望を総括されるとともに、福島新拠点の理念・狙いを述べられた。
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長期持続可能なエネルギー源である再生可能自然エネルギーの日本における位置づけとしては、必ずしもエネルギー問題解決のオールマイティではないが、化石燃料調達のバーゲニングパワーとなり、且つ世界の課題である炭酸ガス排出削減のための手持ちカードの増加としての価値が大きい。

再生可能自然エネルギーは、エネルギー密度が低く、偏在し、時間的に変動する等の欠点があるが、個別の技術をシステム化・ネットワーク化すれば有効なエネルギー源となる。例えば北欧での揚水発電等の電力貯蔵とアフリカでの太陽発電を結びつけるような広域スーパーグリッド構想も可能となる。また風力発電と蓄電池を組み合わせれば出力の平準化が可能となるし、電力と水素(化学キャリア)の相補的ネットワークが再生可能エネルギーの規模の拡大、高効率利用を可能とする。
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講師は講演の最後を、「福島新拠点の研究開発のコンセプトは、再生可能エネルギー大量導入を支える技術の開発・実証・システム化研究であり、太陽電池、風力、地熱、地中熱、水素キャリア等々の研究設備を自前で持ち、実証とシステム化研究を国内外の企業や大学との連携のもと、且つ地元企業との連携も強め、復興と持続的発展に貢献すべく、賑やかに活発に研究を進めたい」と結ばれた。
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講演の後、下記のようなトピックスに関し活発な質疑応答が為された。
○再生可能自然エネルギーの固定価格買い取り制度の今後の展望
○電池、バイオマス、海藻、海洋発電等の将来性
○出力用電池と貯蔵用電池のコスト比較について
○再生可能エネルギーの最適ミックスはあり得るか?
(文責:橋本 升)
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2014年01月30日

EVFセミナー「シェール革命とは何か」

EVFセミナー(1/30)の概要報告      (今泉良一)

実施日:2014年1月30日(木)
講師:独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)上席研究員
   工学博士  伊原 賢
演題:シェール革命とは何か−アメリカのシェール革命はどう進展しているか−
参加人員:39名
開催場所:新現役ネット会議室


シェールガス(Shale gas)は、泥岩の一種で頁岩(けつがん)という固い岩盤の隙間に閉じ込められた天然ガスです。米国では、水平坑井や多段階の水圧破砕等の技術の進歩により、21世紀に入ってシェールガスの生産量が飛躍的に増加しました。その結果、米国内の天然ガス価格が大幅に下落し、電力や化学産業の燃料・原料コストの削減、新規雇用の創出、資源輸入量の減少等、「シェール革命」が進んでいます。シェールガスに代表される膨大な量の天然ガスを新規に取り出せるようになり、世界の天然ガスの寿命は60年から、少なくとも160年を超えるのは確実になったと云われています。今回のセミナーでは、中東・米国での10年間の石油採掘の業務経験をお持ちの伊原博士に、「シェール革命」の現状と将来について大変分かりやすく講演していただきました。
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講演概要
1. シェールガス・シェールオイル
シェール(頁岩)は、炭化水素の元になるので石油根源岩(Source rock)と呼ばれ、この岩の中に取り残されている油やガスを取り出せるようになった。シェールを叩くか削り、傷付ければ「クヌーセン拡散」という、地下の圧力が低くなってもメタン分子がシェール内部の隙間を跳ね返りながら動く現象が起きて流れやすくなり、開発当初の予想より多く回収できて、商業生産が加速した。在来型の油の場合は0.7%しか取り出せないが、シェールオイルの場合は5.6%、即ち、在来型の8倍も多く取り出せると米国では報告されている。2011年度の世界天然ガス生産高は124Tcf(兆立方フィート)、2013年始めの在来型天然ガス推定確認残存量は6,839Tcfであるが、一方、世界のシェールガス資源量評価(技術的回収可能量)は7,299Tcfという。米国の非在来型天然ガス[シェールガス、CBM(Coalbed methane), TG(Tight gas)]は、天然ガス総生産量の50%、全世界生産量の10%を占めると報告されている。
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2.環境リスク
水質汚染については、水質検査や水の再利用の徹底で、現在問題視されなくなっている。一方、最近懸念されているのは、シェール層を水圧破壊した時に断層に当たって地震が起きる可能性だが、地質調査をして、やみくもに開発しない限り防止できると考えられている。

3.日本への影響
日本は現在、輸入原油価格に連動した液化天然ガス(LNG)輸入価格の高騰に加え、原子力発電停止による代替火力発電燃料のLNG輸入量急増により、貿易赤字に転落し電力料金値上げを強いられている。液化・輸入コストを勘案しても日本の70%程度と低く、ガス自体の需給で価格が決まる米国のシェールガスを輸入しようと、日本のガス会社や商社等がシェールガス由来LNGプロジェクトに参画したり、上流権益を取得したりしている。米国は昨年5月に、FTA締結をしていない日本にLNGの輸出を認めた。この結果、2017年以降に日本向けのシェールガス由来LNGの輸出が始まる。このことは、既存の産ガス国との契約交渉にも有利な影響を与える結果となった。
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4.シェール革命と自動車燃料
単位熱量当たりで比べると、昨年末時点で価格が原油の1/4以下のシェールガスは自動車の燃料としても使えるが、トラックやバスといった商用車に限られよう。一般自動車への普及には、圧縮天然ガス(CNG)タンクの低コスト化と燃料供給インフラの整備という大きなハードルがある。一方、シェールオイルの増産が北米から世界に展開して原油の生産量が仮に増えれば、ガソリン価格の低下が期待できる。米国での自動車燃料の主役は、暫くの間従来のガソリンと軽油で変わりないと予想されるが、今後の次世代自動車の開発・普及の動向は、シェール革命の米国から世界への進展度合いを見極めることが必要であろう。
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講演終了後30分間、シェールガスの日本への輸入コスト、中国での採掘の可能性、採掘技術の特許状況、メタンハイドレートの工業化の現状等々について大変活発な質疑応答が行われた。

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2013年12月19日

EVFセミナー「東京都の気候変動対策動向と今後の取り組みについて」

EVFセミナー(12/19)の概要報告      (千葉 一雄)

実施日: 12月19日(木)
講 師:東京都環境局、都市地球環境部 中小規模事業所対策担当課長 千田 敏 様
演 題:東京都の気候変動対策動向と今後の取り組みについて
参加人数:32人
開催場所:新現役ネット会議室


 地球環境に対する人間活動の影響として、近年温暖化現象が懸念されています。
 東京都は地方自治体として温室効果ガス削減に果敢に取り組み、成果をあげました。その経緯と地道な取り組みについて、現場からのレポートをいただきました。概要は下記にまとめますが、丁寧な目標設定と説得活動の積み上げの説明を聞き、自治体の取り組みで、ここまでやれるものなのだと言う感動を覚えました。大都市として持続可能な低炭素都市モデルを自分の手で実現したいとの思いが伝わる講演でした。
 講演後の懇親会でも丁寧に質問対応いただき、目標の実現に対して、日本の自治体の現場の強さを実感することができました。
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講演概要
1、都の現状と基本姿勢
CO2排出量シェア45%x40%=18%の大規模事業所1400カ所のフォーカス。
基本姿勢は、大消費地としての責務と持続可能な都市への転換、成長である。

2、都の気候変動対策の経緯
CO2キャップ&トレード制度を2008年に条例化し導入
2002年から事業者へ自主的な取組みを促し準備し、実行期間5年毎の準備ステップを2回踏んで、2010年からの総量削減規制義務化にこぎ着けた。義務化の大きな目的は、いち早く低炭素型の都市へ移行し、まじめに努力するものが不利益を被るのを防止すること。関係者への丁寧な説得と地道なノウハウ、データの積み上げが困難で時間がかかった。
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3、都の気候変動対策の展開
新築に対する建築物環境計画書制度、地域エネルギ有効利用計画制度、および既築に対する東京キャップ&トレード制度を2010年以降展開し、効果を上げている。大規模事業所に加えて、中小の使えるベンチマークや無料省エネ診断コンサル、補助支援制度を組み合わせ、初期投資ゼロ0の省エネ支援モデル事業も展開をはじめた。

4、スマートエネルギ都市 東京
低炭素、快適性、防災力 の3つを同時実現を目指す。
需要・供給双方の努力で目標を達成。下記を展開。
需要側2010年比、2013年夏のピーク電力16.5%(9-10百万kW)削減を実現している。
無理のない節電・省エネが定着。
供給側、HEMS,BEMS導入補助予算付け、ソーラー屋根貸しビジネス仲介
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主な質疑
1、規制により活力がそがれるのでは?
a, 活性化要因としてうまく使って欲しい。C&T導入後は、そのような動きになっている。

2、オリンピック騒ぎで省エネ忘れないか?
a. オリンピック自体はカーボンフリーでやるが、建物は20年以上残る。東京投資は中小規模ビルが国内外からの投資対象となるので、全体としてハイスペックなものにしたい。

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2013年11月21日

EVFセミナー「健寿の駅とは・・歩行の勧め」

演題:「健寿の駅とは・・歩行の勧め」
講師:芝浦工業大学 ライフサポートテクノロジ―研究センター 名誉教授、
工学博士 岡村 宏氏
参加人数:25人
開催場所:新現役ネット会議室


概要:健寿の駅の活動は高齢者の健康寿命を2年延伸し、自立生活を維持できる様に
することが目的である。その為、講師が中心となって、「IC歩数計」などの正確な
日常バイタルデータを基にして高齢者の生活のリズムを確保する方法を展開しつつあ
る。
今回はその活動の状況についてご講演戴いた。
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1. 高齢者の自立生活維持状況
 65歳から生活習慣病などによる体力の低下傾向が明確になり始め、75歳で自立
生活度維持の壁にぶつかり始める。男性の低下傾向は女性よりも急速である。また、
自立生活度および死亡率は歩行の状況と密接な関連性があり、歩行機能の改善で自立
生活度を維持することが出来る。日本は2025年には世界に先駆けて高齢者の割合
のピークに達し、医療費に関しても、危機的状況に至る。

2.活動の概要
以上の状況を踏まえて、「健寿の駅」の運動では下記の活動を展開している。
 (1)自助:歩行の大切さを認識し自分の情報を正確に把握しながら自主的に歩行
を行う。
 (2) 互助:「健寿の駅」を構築することで、自分の状況を正確に把握し、仲間
同士のコミュニケーションの場として歩行活動を長続きさせることができる。
 (3) 公助:歩きやすい街づくりを実現し、歩行環境を向上させる。
 活動はNPO地域交流センター、健寿の駅研究会、健寿の駅推進協議会などで足掛
け3年にわたり推進されてきた。地域としては町田市、多摩市、日野市、気仙沼市で
立ち上がっている。

3. 歩き方
 歩数と歩行速度がポイントとなる。歩数は4000歩/日以下の人は閉じこもり状
態と言え、自立出来なくなる可能性が高くなる。女性の場合歩数は家事でも4000
歩/日程度になるが、男性は外出を意識的に行わないとそれに至らない。男女とも7
000歩/日は確保すべきである。
また、その歩数の内、速足歩行を5分以上は織り込むと効果が高くなる。ゆっくり歩
行だけでは長く歩いても効果が落ちる。
 歩き方は、骨盤が前後に動くと効果が高くなる。
 歩けない日でも、スクワット、片足たち、大腰筋ストレッチをすると良い。

 講演後30分間以上活発な質疑応答が行われた。 歩行の重要性、歩行を行う上で
のポイントについて理解が出来、意義の高い講演であった。


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2013年10月29日

EVFセミナー「リスク危機マネジメントから考える原子力安全確保問題について」

EVFセミナーリスク危機マネジメントから考える原子力安全確保問題について
〜福島第一原子力発電所事故 及び それに対する対応の状況を踏まえて〜      (佐藤 孝靖)

開催日時 : 平成25年10月29日
講 師 :千葉科学大学危機管理学部 教授・博士(工学)
      宮林 正恭 氏
聴講者数 : 26名

講演概要報告
 講師は1967年(昭42年)に東大工学部合成化学科を卒業され通産省に入省された。在アメリカ合衆国日本大使館の一等書記官就任直前にスリーマイル島の原発事故が起こり、身近に原発事故を観察された。以降、科学技術庁の科学技術行政、原子力行政に長く関与され、1995年(平7年)には科学技術庁の原子力安全局長も歴任、2004年(平16年)からは千葉科学大学でリスク危機マネジメント論の研究に取り組まれている。
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1.「リスク危機マネジメント」の概要
 世にある“リスクマネジメント論”はリスクを減らすことのみを強調し、危機時にはトップダウン方式を推奨するなどの問題がある。人間的要素を導入した「リスク危機マネジメント」論への脱皮が必要であるとして本題に入る。

(1)リスク危機マネジメントのコンセプト
危機発生の前と後を一体のものとして統合的に捉える。その上被害が許容できる範囲内であれば、危機発生はありうるとしてその被害を限度内に収まるように対策を打つ。常にプライオリティ付けの考え方が重要で、トータルで考えてリスク危機対応を進めるべき。「部分最適化」は最悪だ。
(2) 基本的な考え方
 人間はミスをする、認知バイアスがある、組織カルチャーなどに拘束される等の弱点を持つとの認識の下、重層防御はハードだけでなく仕事の仕方にも及ばせる必要がある。
  
2.福島第一原発から原子力の安全問題を考える
 <事故が大きくなっている主要理由>
@  水素爆発で放射性物質が飛び散ったこと。
A  メルトダウンで燃料がむき出しになってしまったこと。
以上はアメリカのスリーマイル島事故と同じものだ。
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<関係方面別の問題>
東電 :巨大津波の可能性が指摘されたのに放置した等。
政府 :指導監督の直接的責任がある経産省原子力安全・保安院が全て官邸に委ねてしまった等。
その他 :技術を複雑系として捉えず、単純系の科学としての側面でしか捉えない風潮など。

<7つの主要問題点>
@ 組織構造及びカルチャー
ゼネラリスト優位と技術系職員の人事が部局ごとに分断されてきた問題と、形式理論優先。原子力の高度の専門家が結果として育ち難いカルチャー。
A 人材と技術的能力
ターンキィによる原発建設方式と下請け依存体制。
B マネジメントと運
複雑系技術に暗いトップと、技術を特別視する主流派経営陣。
C リスク危機マネジメント知識と能力
政官界や原発会社に体系的な学習の必要性が認識されているとは言い難い。
D 法規制等
安全審査と設計工事方法の認可を一体的に管理するよう改革が必要等。
E その他〜国民意識の問題
原発に対する感性的反対論と、安全政策の反省がなくエネルギー論のみからの推進論との不毛の対立。また、常時リスクをモニターして速やかに対応してゆこうとのリスクに対する謙虚さが不足している。

3、福島第一原発の現状
 「危機との共存」の状況にある。廃棄物の問題は未解決。汚染水問題にすべての力が取られて全体像が確定していないところが多い可能性がありそう。
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4、課題と考え方
 原発は止めていようが動かしていようがリスクは存在し、コストも永続的に発生し人員も必要。我が国のトータルとしてのリスク分析とリスク対応の意思決定が必要なのではないか、人材の確保はどうするのか、という大きな問題を提起されてセミナー会場は静まり返ったのでした。

その後約30分の質疑応答は地に足のついた内容のあるものでした。その中で印象的だったのは、「この難しい問題は我々では解けないので、若い人たちの英知をまつべきか」との質問に対して宮林先生は、「いや、我々の年代が考え、社会を啓蒙してゆく責任があるのではないでしょうか」ときっぱりとお答えになられたことでした。  (終)
posted by EVF セミナー at 17:25| Comment(0) | TrackBack(0) | セミナー紹介