2015年02月20日

EVF第8回通常総会記念講演会報告「国の姿についてこの頃考えること」

演題:「国の姿についてこの頃考えること」
   〜元EVF顧問竹内行夫氏の内輪のトーク〜   
実施日:2015年2月20日(金)
開催場所:JICA市ヶ谷ビル 大会議室
講 師:元最高裁判事、元外務事務次官 竹内行夫 氏 
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 講師の竹内行夫氏はEVFが設立されたまもなくの約8年前、初代EVF顧問をお引き受けくださり、初期の土台作りに惜しみないご助力を下さった方です。
外務事務次官から最高裁判事を歴任されて昨秋には旭日大綬章を受章されたこの機をとらえ、非公式の内輪のトークという前提でご講話をいただきました。
ご講話の演題は「国の姿についてこの頃考えること」です。
1、今年は戦後70年にあたるが、いつまで「戦後」にこだわるのだろうか? 中国と韓国を相手に“歴史問題”ををいつまでも引きずるのは得策でない、との認識について丁寧に歴史的経緯を説明されました。問題の所在は、中国・韓国が対日歴史問題を克服しうるのかという両国の認識の中にある、と看破されました。
2、日本を取り巻く国際環境の大きな変化としての中国の挑戦について。中国はいま世界経済システムに挑戦しているとの認識がとりわけ重要であり、今後の日本と中国は経済上の相互利益関係を損なわないような冷戦状況を覚悟すべきと見通されました。
3、世界の中で相対的に経済力の低下が免れないわが国が、いかにして国際的地位を維持し向上させていくべきか、“グローバル・シヴィリアン・パワー”としての日本を強調されました。わが国は戦後から一貫して国際社会から尊敬され信頼されることを目標に努力してきた積み重ねを大切にして、「国際公益と道義性」をしたたかに発信する国家像を確認したいとされました。
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質疑応答では世界のイスラム教をどう考えるべきか、現在の政府中枢の考え方について巨視的な質問があり、それぞれ丁寧にお答えになられました。。聴衆41人の心がひとつになった1時間半でした。

配布資料:
「村山総理談話」
「小泉総理談話」
2年ほど前の寄稿文「国家像とやむにやまれぬ気概」
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2015年01月22日

EVFセミナー報告「気象変動に関する世界の現状と日本は何をなすべきか?」

EVFセミナー(1/22)の概要報告 (今泉良一)  
演題: 気候変動に関する世界の現状と日本は何をなすべきか?    
実施日: 2015年1月22日(木)
開催場所 :国際協力機構(JICA )市ヶ谷ビル 202AB会議室
講師: 山岸尚之(やまぎし なおゆき)氏 WWFジャパン (公益財団法人 世界自然保護基金ジャパン)
自然保護室 気候変動グループ リーダー
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これまでの気候変動に関する講演や議論の多くは、先進国や後発国、また、産業界や学界の思惑も絡み、 “何が実際に起こっているのか”、“どうすればよいのか”等について分かりにくいことが多かった。 一方、今回講師をお願いした山岸氏は、昨年12月に南米リマで開催されたCOP20にも参加され、IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)が出した評価報告書(世界の論文に基づいたコンセンサス)や国立環境研究所報告等を踏まえて、1.気候変動の予測と影響、2.国際的な取組、3.難しさの要因、4.必要な対策、そして最後に5.これからの課題について解説された。世界の現状と日本が直面する問題について大変分かり易く、参加者の理解が深まった講演でした。特に、気候変動に対して“できない理由を探すのではなく、できる理由を探す”というスタンスは、共感できました。

講演概要
1.気候変動の予測と影響
95%の確率で温暖化が起きていることが、裏付けられている。現状のまま推移すると(産業革命前と比較して) 2100年には気温が4℃上昇するが、一方、充分な対策を講じてCO2を削減すれば2℃に抑えられるとし、全体で4つのシナリオがあることを解説された。一番酷いシナリオでは日本への影響も甚大であり、海面が60p上昇し、砂浜の80%が消失すると予測される。世界規模でも海面上昇は起こり、台風が大型化し、また、マラリアが増える等の弱者への“絶対的な不公平”も増長されると予測される。1970年の世界のGHG (温室効果ガス)排出量が
30G(ギガ)Tであったのに、2010年には49GTに増加している。上昇気温を2℃未満に抑えるには、2050年までに2010年比40〜70%削減し、今世紀後半にはマイナスでなければ達成できないと報告されている。
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2.国際的な取組
1992年にリオ・デ・ジャネイロで初めて開催された“地球サミット”以来国際社会が進めている取り組みは、大変重要である。 しかし、内容が難しく、なかなか理解が進んでいないのが現状である。1997年の国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の第3回締約国会議COP3の京都議定書では、“2008~2012年5年間”の西側の数値目標が採択された。一方、2009年のコペンハーゲンCOP15では、2013~2020年の枠組みを目指すも決まらず、これ以降温暖化への世界の関心は急速に低下してしまった。2011年ダーバンCOP17でも各国の枠組みは合意されず、現在2015年末に開催予定のパリ会議COP21で “新しい国際枠組み”の合意を目指している。この会議では、2020年以降の世界の気候変動・温暖化対策の大枠が合意される予定であり、この会議の結果により、世界がどの程度気候変動を防ぐことが出来るか、既に起こっている影響を軽減できるか、大変重要である。国際的な関心は高まってきているが、現在日本、中国、米国等各国が持ち寄った案では気温上昇は2.9~3℃であり、これを2℃以下に抑えるには、どうしたら良いのか、 まさに“人類の運命が決まる”会議であると山岸氏は述べられた。

3.難しさの要因
2011年現在のCO2排出国のトップ3は、1.中国26%、2.米国18%、3.インド6%(日本は5.4%)である。一方、中国やインド等の後発国は、産業革命以降の累積CO2排出量こそが重要であり、先進国の責務は大きいと主張している。更に、1人当たりのCO2排出量は、1.米国16.9、2.韓国11.8、3.先進国平均9.9、4.日本9.3、
5.ドイツ9.1であるが、中国は5.9、インドは1.4であることも忘れてはならない。国際的枠組みを決める上で、何が平等で、フェアーであるか、判断を大変難しくしている。

4.必要な対策(どこで対策が必要とされているのか?)
リーマンショックを除くと、日本の排出量は基本的に減っていない。増やさないことには成功したが、しかし、減らしていないと言えよう。大震災の後でも、省エネで減った分もあるが、原発停止による化石燃料の大量使用で増えている。つまるところ、気候変動対策とは、“日本のエネルギーのあり方を変える”ことである。つまり、80%が化石燃料であり、@使っている量を減らせば“省エネ”になり、ACO2 を出さない“自然エネルギー”や“再生エネルギー”を増やして化石燃料を置き換えることが、CO2排出削減対策である。日本では1970年のオイルショックを機会に省エネが進んだ。一方、1990年以降は改善があまり見られず、温暖化対策の旗を立て、もう一度省エネを実行することが必要なのではないか。OECD加盟国の省エネ基準適合義務化が進む中で、日本は住宅・建築の分野では後進国である。次世代省エネ基準が2014年に漸く改定され、2020年までに義務化しようとしているのが現状である。

5.これからの課題(目指すべきところは?)
WWFが掲げるビジョンでは、@省エネでエネルギーの無駄をなくし、A原発をなるべく早く廃止し、B残りを自然エネルギーで補おうとするものである。WWF(脱炭素社会に向けたエネルギーシナリオ)は、2008年の水準から2050年までに日本のエネルギー消費を半減できると試算している。車上太陽光・太陽熱・バイオマス・風力・太陽熱・地熱・水力を組み合わせれば、半減したエネルギー消費に対応できる。このシナリオによるWWFの試算では、設備投資で2030年まではコストが高くなるが、それ以降の運転費用を差し引いた正味費用は低下し、2050年までの40年間の累積では約200兆円の経費が軽減できると考えている。2050年の自然エネルギー100%時代を目指して送電線網を拡充し、色んなルートで融通を可能にすることが必要である。国としてより大きな削減を目指すには、産業界の自主的な取り組みだけではなく、排出を促す政策も重要である。主要国の自然エネルギーの発電全体に占める割合を見ると、90年代には5%未満であったデンマークやドイツは、政策の強化によって、この20年の間に自然エネルギーの比率をそれぞれ48%、22%まで引上げた。一方、日本の再生可能エネルギーは停滞している。CO2 の削減には、国の政策が極めて大事である。まさに、“できない理由を探すのではなく、できる理由を探す”ことが必要であろう。

講演終了後30分間強、欧州がなぜ積極的に自然エネルギーを推進するのか、日本の6%削減がなぜ達成でできたのか、原子力発電の役割、カーボンニュートラルについて、日本の国際気候変動交渉での評価等々大変活発な質疑応答が行われた。意見交換は、その後の懇親会でも活発に続けられた。

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2014年12月11日

EVFセミナー報告「国際司法裁判所判決と日本の将来」

EVFセミナー(12/11)の概要報告
(奥野 政博)
演 題:国際司法裁判所判決と日本の将来
開催日:平成26年12月11日(木)午後3時30分〜5時30分
場 所:新現役ネット事務局A会議室
講 師:小松 正之 氏(アジア成長研究所 客員主席研究員)

 講師は農林水産省に入省後、エール大学大学院で経営学修士(MBA)と東京大学で農学博士の学位を授与され、1991年から2004年に国際捕鯨委員会の日本代表代理を務められ、その間に国連食糧農業機関(FAO)やインド洋マグロ委員会議長やミナミマグロ国際海洋法裁判日本代表団員など国際的な捕鯨や水産問題で大活躍され、最近まで政策研究大学院大学で途上国公務員らに理論に基づく大局観と体験に基づく実践的なリーダーシップとネゴシエーションなどを教えていました。
 今回は2014年3月に判決が下った南極海捕鯨に関する国際司法裁判所(ICJ)の判決敗訴要因と今後、日本の取るべき方向について判り易い図表を交えて時間一杯お話しして頂きました。

講演概要:
 今回の判決内容に入る前に、先ず初めに「世界に分布する鯨類とその資源」について図表を用いて説明して頂いた。クジラは1種類ではなく国際捕鯨取締条約の分類表で定められた「大型鯨類」約13種と条約の対象外の「小型鯨類」約70種に分けられ、小型鯨類は殆どがイルカで、大型鯨類はシロナガスクジラ、ナガスクジラ、ホッキョククジラ、イワシクジラ、マッコウクジラやミンククジラなどであること、資源が枯渇、悪化しているのはシロナガスクジラ、ホッキョククジラと一部悪化しているコククジラで、ナガスクジラ、マッコウクジラやミンククジラの資源は健全とのことで、科学的根拠では捕鯨を再開するに何の問題もないと言えるとのこと。
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 体長8mのミンククジラが大型鯨類に分類され、体長10mのツチクジラが小型鯨類に分類されている理由を本日の参加者に問われたが誰も答えられなかった。答えは、国際捕鯨取締条約で捕鯨の対象を大型鯨類としたもので、1949年に条約が制定された時に日本の房総半島や伊豆諸島にしか生息しないツチクジラは日本から専門家が参加していなかったので見落としただけとのことでした。
 またクジラとイルカの違いを皆に問われたがやはり誰も答えられなかった。答えは成体の体長4m以下がイルカとのこと。
 次いで「日本人と鯨類との長い関わり」について伊達藩の学者・大槻清準が記した捕鯨図説「鯨史稿」(文化5年(1808年))で近世捕鯨の繁栄例として平戸沖の鯨組と網取り式捕鯨の様子や江戸時代の捕鯨としてツチクジラのタレとして知られる安房勝山(房総)、ナガスクジラやザトウクジラを捕獲していた伊根(京都府)、日本の集団的職業捕鯨発祥地として知られている太地から室戸、長崎、長門へと続き、記録として残っているのは1604年の太地が最初で、江戸時代に西日本で捕獲された鯨肉が加工され九州、大阪、一部東京へ食文化として食べられ、その捕獲と加工技術を継承してその後南氷洋へ出て行ったとのこと。これに反し西洋の捕鯨は鯨油とせいぜいコルセットの骨として利用したため8割が海に捨てられ、乱獲につながったそうです。
 本題の判決内容の理解促進のため、先ず商業捕鯨モラトリウム(一時停止)は国際捕鯨取締条約第5条(商業捕鯨)に定めた捕獲枠やサンクチュアリー(保護区域)について科学的根拠に基づくべきとする条項に違反している事を生息データから説明された。
 今回の裁判の対象となった第2期南極海鯨類捕獲調査事業は、1987年から2005年に実施された第1期捕獲調査の調査結果を下に日本と世界の最高水準の鯨類科学者の英知を結集して2年以上の歳月を費やして作成され、2005年から始まった。南氷洋の鯨類資源の生態系のモニターや鯨種間の競合の解明などを目的とする裁判で日本政府代表団は調査計画よりシーシェパードの妨害が始まる以前から捕獲数を減らした科学的根拠を問われても的確な説明もできず、妨害の所為とした対応の不味さ(むしろ妨害を排除する方策や原計画を実行できないなら計画修正をすべき)を指摘された。
 もう一つの調査捕鯨の現状として北西太平洋鯨類捕獲調査の調査海域と調査目的(鯨類の摂餌生態の解明、DNA分析による系統群構造の解明、環境変動が鯨類に及ぼす影響の解明)と調査実態を図表と写真を交えて説明された。特にミンククジラの餌生物として胃袋にいたオキアミ、カタクチイワシ、サンマ、スケトウダラやスルメイカの写真を下にそれらの摂餌生態の実態や日本周辺での餌生物の漁獲減少と鯨類資源の増加などキチンとした調査分析と仮説検証の大切さを教えて頂いた。
 更に裁判での判決内容を理解する為に欠かせない「国際捕鯨取締条約」、特に第5条(商業捕鯨)第1項で捕獲枠の設定が、第2項でこれらの設定は科学的根拠に基くべき(そうでない場合は違法)と、第3項では第1項への異議申し立てができると定められていること、また捕鯨国であるノルウェイとアイスランドが商業捕鯨のモラトリウム(一時停止)に異議申し立てしていて、日本も一時異議申し立てしていたが水産業界の目先の利益のため撤回した(商業捕鯨はできない)背景など説明して頂いた。第8条(科学捕鯨(調査捕鯨))第1項に他の条項(第5条:商業捕鯨)に係らず科学目的なら許可を締結国(=日本)は発給でき、第2項で副産物(=鯨肉)は加工して処理する義務を課せられているので、一部外国から日本は調査捕鯨で捕獲した鯨肉を国内で販売していると批判されているが、主産物は科学的データで、鯨肉は第2項でいう副産物なので正当な義務であると日本は主張すべきと指摘され、鯨肉大好きの小生にとって心強い条項であると理解出来た。
 この条約には商業捕鯨の漁獲枠を具体的に決めた付表があり、「商業捕鯨モラトリウム(一時停止)」条項である第10(e)項は、1990年までにゼロ以外(=商業捕鯨OK)の捕獲枠設定を検討することになっていたが24年を経過しても未だ設定されず、日本は科学的根拠に基づかない捕獲枠の設定は第5条第2項に反すると意見を言い続けるべきとも指摘された。
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 ここまで約1時間かけて基礎知識を身に着けた上で、国際司法裁判所(ICJ)の判決内容について解説して頂いた。
(1)ICJは全会一致で南極海捕鯨に関する訴訟(オーストラリアが訴え日本が被告、ニュージーランドが介入)に管轄権があると認めた。
※オーストラリアはもともと、自国の領土・領海(200海里EEZも主張)の紛争はICJに裁判の管轄権がない。
     これを引用し日本は、日本の調査捕鯨はオーストラリアの海里内で実施しているのでICJの裁判とはならないとの主張を展開したが、ICJは世界の大勢はノンクレーマント(南極大陸や200カイリの領有権を主張せず、他国の主張も認めない)であることを根拠に日本の主張を却下した。見事、作戦失敗だった。
(2)日本の南極海第2期捕鯨調査(JARPAU)が取締条約第8条1項に該当しない。
    ※目的は良い、デザインも特段問題ないがそれらに基づく十分なサンプルを取らず、目的を達成できないので科学目的の調査捕鯨ではない、そして原住民生存捕鯨でもないので商業捕鯨であるのは議論の余地なし(後段のICJの判断が拙速で説得力が全くない)と判定された。
(3)ARPAUが条約付表第10(e)、10(d)と7(b)項に反する。
    ※第2期調査は十分なサンプルも取らず調査捕鯨でなく、それは商業捕鯨と解されるので商業捕鯨モラトリウムが適用されると判定された。このことにも商業捕鯨のモラトリウムが、資源が健全な状況で、国際法に違反するという反論をしていない日本政府の対応が問題である。
(4)ICJは、日本政府がJARPAUの捕獲調査の許可を取り消し、この調査計画に対し今後いかなる許可もしてはならないと決定した。
とのことだが、(2)と(3)について何ら反論していないことと、それ以前にノルウェイとアイスランドの商業捕鯨および北半球の日本の調査捕鯨を提訴しないオーストラリアの訴訟の狙いを読み間違い、その後の改善策も講じない日本政府の対応を指摘された。
 これら問題の解決には交渉とリーダーシップが重要で、そのためには年令如何にかかわらず、情熱とむしろ経験が必要と私たちを含めて激を飛ばされた。
 ここまで1時間半たっぷりのご講演を頂き、本日ご用意された「日本の水産業の将来」まで辿り着けなかったことが残念でした。
 この後の質問に対しても情熱溢れる回答を頂きました。
 先ず、役人のレベルについて、家庭を含めて教育に問題があると思うが打つ手は?
に対して、短期的手段としては打つ手はないとのこと。長期的に、国や地域のために貢献することの重要性を教え込むこと。米国の政府やアイビーリーグ大学では教えている。
 次いで、農水省の中で捕鯨に対する優先度は?所内の空気は?との質問に対して、今の若い役人は、経験もなく敢えて難しい仕事はできないし、挑戦したくないのが実情と嘆いておられた。
 更に、数量的にも科学的にも鯨は一杯いるとのお話しであったが、反捕鯨の人たちは鯨は賢い動物だとか可哀そうだからと言うようなメンタルな話しをするが…との質問には、   正しいことを正しいと主張せずに、長い間に鯨は絶滅危機と宣伝され、間違った情報操作が定着してしまった。反捕鯨国は畜肉生産大国であることに加えて、アメリカやオーストラリアを見て感じることは日本が南氷洋に居られることが、日本ほど緻密なデータを持っている国はないから嫌だと思うと回答された。
 次いで、国際問題に自信がなく、事なかれ主義に陥り戦略的に考えて上手く反論するように変わる必要があると思うが、敵は外務省にありと啓蒙活動が必要ではと思っているとの意見に対して、米国務省の役人はアフガニスタンやリビアなどで殉死している。リスクを負って政治家へ助言や行動している。モラルが高い。役人の差も大きいとのこと。
 最後のまとめとして、ICJの判決を忠実に読むと、今の第2期の南極海調査計画は立派だと言っているので、自信を持って鯨を取りに行けば良い。付表の第10(e)項が諸悪の根源で、これを廃止する裁判を起こせ。自分なら日本の200海里以内で鯨を持続的に捕獲する計画を作成し、米国など反捕鯨国と交渉する。気に入らない国なら止めろと言う裁判を起こすだろう。どちらが勝つか見ものだ。起こさないなら捕鯨をすればよいと小松先生が言われ、出席者一同の大喝采の中、2時間のご講演を終えました。
 以上

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2014年11月27日

EVFセミナー報告「いま、原子力発電を考える―地球温暖化の現状を踏まえて―」

平成26年11月27日
EVFセミナー報告
演題:  いま、原子力発電を考える
――地球温暖化の現状を踏まえて――
開催日: 平成26年11月27日(木) 午後3時30分〜5時30分
場所:  新現役ネット事務局会議室
講師:  木元 教子 氏
      元内閣府原子力委員会委員、評論家
講師は、テレビ等を通じて我々新現役にはあまりにも有名な方であるが、1998年から2006年まで9年間にわたり原子力委員会委員をつとめられた。ジャーナリスト出身のことから「広聴」に力を入れたという。2011年の東日本大震災・福島原発事故後に強まった脱原子力の動きに対して、日本の総合的なエネルギー環境を踏まえて原子力発電に取り組まなければならない考えで活動されている。
今回はこの考えの背景になったことなどをお話しいただいたのだが、何よりも想像する年齢を感じさせない元気の良さにEVFのベテランズも圧倒された会であった。
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講演概要:
演題に対する講師の思いをスライドや冊子(「暮らしの中のエネルギー」)を交えて話されたが次のようにまとめる。
・まずは、地球温暖化を止めなければならないということである。このためにCO2を削減しなければならない。世界的な人口増、開発途上国のエネルギー使用量の増大、そして現在のわれわれの生活レベルを極端には落とせないことからエネルギー使用量を減らすことに無理がある。また再生可能エネルギー・新エネルギーの利用推進だけでは需要に間に合わない。現段階では、CO2削減は原子力発電に頼らざるを得ない。
講師も新エネルギー雪氷冷熱利用のために、NPO法人雪氷環境プロジェクトの会長として活動されているが、これに賛同する参加者の間で「氷室」に盛り上りがあった。
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・さらに、日本の置かれている位置である。原発を外せば、石油・石炭・LNGのエネルギーの自給率があまりにも小さい。外貨流失が3.6兆円である。また、他国から電線を繋ぎ、電力の融通を受けることのできない島国である。
・原子力発電の可能性はある。安定・安全・安心に向けて、国も電力も安全対策・安全施策を進めている。使用済み核燃料に対しての核燃料リサイクルは実現できる。
・何事にも絶対間違いがない、絶対に安全だとは言えない。原子力発電も同じである。その意味で、ただ単純に脱原発で済むことでもない。国は国民の生活を守り、国力の維持を考えながら、真実を隠さず知らせ、本音で話し合うべきである。
参加者の中からは、「原発を必要としないエネルギー供給力の中で生活はできる」とか「使用済み核燃料の始末ができるようになるまで原発はやめておいた方が良い」などいくつかの意見があったが、限られた時間内で話は済まない。
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安全を最大に考慮しても、自然災害をはじめ、予想されなかった危険が発生する事を、今回の事故で明らかになり、原発は信頼を失ったのだが、国は原発の仕組みを、改めて分かりやすく提示し、国民との忌憚のない話し合いの中から、エネルギー問題解決の適確な道が開かれるという講師の姿勢を感じたセミナーであった。(津田俊夫)
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2014年10月23日

EVFセミナー「国際都市、川崎を御存知ですか?」

EVFセミナー(2014/10/23)の概要報告(三嶋 明)

開催日時 : 平成26年10月23日(木)14:30〜17:30(質疑応答含む)
演題 : 国際環境都市、川崎をご存知ですか?
場所 : 新現役ネット事務局会議室
講師 : 川崎市国際環境施策担当コーディネータ― 牧 葉子氏(前川崎市環境総合研究所所長)     <<川崎市に軸足を置きながら、国レベルの政策委員会などにもご参加>
概要 : アジアの新興国では、急激な工業化に伴う深刻な公害問題を抱えており、経済と環境を両立させたモデルとして川崎が注目されています。 今回は、川崎市自身がその注目の自覚のもとに、環境技術による国際貢献をすすめるとともに、地域の産業活性化を行っている状況を具体的に詳しくご説明頂きました。特に、質疑応答の中で、川崎市の成功は行政と民間の協調、そしてその市長を選んだ川崎市民が主要因との指摘は、国際比較という意味でも意義深いものでした。
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     国際環境都市、川崎をご存知ですか?

「変われば変わる」 ―日本も昔は―
*公害の町から環境先進都市へ、現在では川崎市から富士山が見える。
*キングスカイフロント:市内殿町における国際戦略拠点、Sky Frontは、対岸の羽田空港に面している事より。
*川崎生命科学・環境研究センター(LiSE)=ライズ・・・・<EVF見学会で、明年1月に訪問予定>
 LiSEに取り入れられた環境技術:共用部のLED証明、太陽熱利用給湯、地中熱空調利用、太陽光発電等。

「ものごとには始まりがある」 ―振り返って―
*いすゞ自動車の例:2001/11/19と2003/7/30の例  

「かわさきエコツアー」 ―自然環境だけがエコツアーでなく―
*川崎エネルギ―パーク:川崎市の環境技術をショーケース化し、国内外に情報発信。次世代エネルギーパーク。
*川崎臨海部のエネルギー関連施設:メガソーラー・2011年に運転開始、浮島及び扇島陽光発電所。
*かわさきエコ暮らし未来館:2011年開館。地球温暖化/再生可能エネルギー/資源循環が学習できる。
*焼却灰埋立地の上の大規模太陽光発電所:埋立地なので掘ってはいけない事などから、埋立地の有効利用として、今後国内で脚光をあびるのでは。

「デカップリング」 
*経済発展と環境のデカップリング(非連動)
*川崎市のGDPは1990年頃よりほぼ横這い、又人口も増加しているのに、ごみの量は‘90をピークに減少。
*環境技術を活かした中国の瀋陽市との連携(環境5機関の協力に関する覚書)。
*アジア太平洋エコビジネスフォーラム。
*PM2、5の監視体制と成分分析調査。
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「リスクに備えて」 −川崎市知的財産戦略―  ―かわさき知的財産スクール―
*国連グローバルコンパクト及びかわさきコンパクト:国際連合が提唱する企業・団体の自主行動原則で、川崎市は都市として日本で初めてこのプログラムに参加。
*法的根拠をいつも念頭に:国際協力・貢献は、地域のため、市民のためになっていることを念頭に。

「エコタウン思潮」
*川崎エコタウン:背景には、川崎市の産業構造の変換・地域経済の活性化、臨海工業地帯の再生、ごみ非常事態宣言などがあり、1997年に通産大臣からエコタウン地域の承認を受ける。
*先進的なリサイクル施設の集積:半径約1、5kmに主要企業のリサイクル施設。
*影響を与えた人:Gunter Pauli氏(ゼロエミッション構想)、吉川弘之氏(元東大総長、産総研理事長)
*国レベルでは、経産省と環境省のエコタウンがあり、地方自治体が策定するエコタウンを共同承認する。
*川崎市の優位性は、幅広い産業構造、工業専用地域、大消費地(環境について高い市民意識)。

「臨海部の動き」―今から見てもダイナミックだった―
◎危機意識の共有、◎低未利用地の減少(前年比較、横浜市との比較)、◎川崎臨海部再生リエゾン研究会(学識経験者、企業で構成され、21世紀型の新たな産業立地促進と新たな街作りを推進)、◎かわさき逆工場ネットワーク(臨海部製造業は環境負荷がほぼゼロの産業に変身するとともに、その産業競争力を飛躍的に高める)、◎都市再生緊急整備地域、◎構造改革特区、◎川崎臨海部再生プログラム(産業再生・環境再生・都市再生)、◎アジア環境テクノハブ、◎都市のサスティナビリティの実現、◎国際連携によるエコタウンコンセプト移転の取組(2009年、瀋陽市と協定)、国際環境計画UNEPとの連携、◎国際貢献と地域振興(環境技術での貢献)、
◎UNEP連携(国際的に、環境は川崎に行けばわかる、ビジネスになる)

川崎の果たすべき役割:
--川崎市は50年間かけて順次培った環境技術が産業発展の負の部分に対応できたが、これからの新興国は大変。
--川崎市は、経済援助はしないが、ビジネスベースを基本に川崎の経験を海外に移転し、地球規模の環境問題の解決に貢献する。

主な質疑応答
質:行政と民間のありかたについて?
答:川崎の成功例は、行政と民間が一緒に考え始めたことから始まった。

質:国際環境都市川崎のコアな部分の推進者は?
答:市長のリーダーシップと、それを支えた市民(選挙民)。川崎の次のステップは、文化都市への推進。
以上

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2014年09月26日

EVF創立7周年記念セミナー「持続可能な海」

    ―資源の枯渇を防ぐための海洋利用の国際ルールはどうなるのか―
演題;  「公海の持続可能なガバナンスを目指して」
         〜問題解決のための一つの取り組みに参加して〜
開催日時:  平成26年9月26日(金) 14:30〜16:30
場所:  東京都品川区総合区民会館「きゅりあん」大会議室
講師:  明治大学国際総合研究所特任教授 川口順子氏
     略歴;元外務大臣、元環境大臣、元通産省大臣官房審議官、元在米日本大使館公使
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今回は、国際政治、環境問題に精通され現在「世界海洋委員会」の委員を務められる川口先生から、海洋とくに公海が直面する魚類をはじめとする水産資源の枯渇、遺伝子資源の喪失、ごみによる汚染等々の諸問題について解説して頂きました。さらにこのままで推移すると将来後戻りできない状況にあるので、これを防ぐための「世界海洋委員会」から国連に提言された内容や今後の活動について詳しくご説明頂きました。また質疑応答では会場からの活発な意見や質問に対し、川口先生から非常に明快かつ一貫性のある回答をして頂きました。
<講演概要>
1.世界海洋委員会とは
 海洋の悪化に歯止めをかけ海洋の完全なる健全性と生産性を取り戻すため、国際的なリーダーをメンバーとする独立団体で2013年2月に設立された。先進国、途上国からビジネスリーダー、開発の専門家、大臣級を含む政治家等がバランス良く参集。公海が直面する以下の重要問題に対処するために政治的、技術的に可能な短期、中期、長期の勧告を策定することが使命。
 1)過剰漁獲 
 2)生息環境と生物多様性の喪失
 3)有効な管理と強制力の不備
 4)公海ガバナンスの不備
同委員会は今年6月24日に「劣化から再生へ~世界の海洋レスキューパッケージ~」と言う報告書を発表し、精力的にフォローアップ活動を進めている。世界各地で要所に説明、「海洋の保護の交渉を2014年9月から始まる国連総会の会期中に始めるべきである」との請願募集なども行なっている。

2.人類にとって海とは何か?
  海洋は以下の観点から人類にとって非常に大切な存在。
 1)海洋漁業と養殖は数百万人もの人々に生活手段を提供し、数十億人もの人たちに食料を提供。
 2)海は地球の生態系に大きな役割を果たし地球上のすべての生命を支える。人間の健康、社会、経済を直接的に支えるサービスと資源を提供。
 3)海は森よりはるかに大きなCO2吸収源。森の9億炭素トン/年に対し、海は22億炭素トン/年を吸収する。また人間が呼吸する酸素のほぼ1/2を生産し、排出するCO2のほぼ1/4以上を吸収。
 4)温室効果ガスによって地球上に蓄えられた熱の90%以上が海洋に貯蔵される。
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3.問題の認識
 現在の海洋は以下のような問題に直面している。
 1)60年後には日本近海では造礁サンゴが全滅する可能性がある。海水温度が上昇するとサンゴが白化して棲めなくなるためサンゴ虫は北に逃げようとするが、北の海は冷たいためCO2の吸収が盛んであり海水が酸性化してサンゴが棲息できない。
 2)海洋資源への増大する需要
  ・世界人口の増大のため海洋漁業の漁獲量は1900年には3百万トンだったが現在では80百万トン。すでに満限までの漁獲、ないしは枯渇に瀕している。再生産ができない状況まで獲られている。
  ・ニシン、イワシ、サバ等、大型魚類の餌になる魚種が減少し食物連鎖への影響が大。
  ・原油、天然ガス、鉱物資源への需要が増大。海洋汚染発生の可能性も大。
  ・遺伝資源の重要性に対する認識と需要の高まり。生物多様性に関する名古屋議定書(1992年)ができたが批准する国が少なく発効できなかった。しかしこの10月に発効することになり前進した。
 3)技術の進歩
  ・海洋法条約ができた1980年代には想定していなかった「船舶の性能向上+冷凍技術の進歩」等による漁業の大規模商業化。
  ・原油採掘、分子生物学等々の技術進歩により海洋からの資源採取の増大。
 4)漁業資源の減少
  ・漁船の増加、技術の進歩による最先端の集魚装置の搭載や漁船の大型化、政府補助金等々に起因する過剰な漁獲能力の現出、等により漁業資源が減少。
  ・IUU(違法、無報告、無規制)漁業の横行などにより漁業資源が減少。
  ・クロマグロの資源管理の失敗も漁業資源減少の一因。
 5) 気候変動、生物多様性の減少と生息地の破壊
  ・海水酸性化、海水温上昇、貧酸素化が主な要因。
  ・肥料、殺虫剤、下水、ごみ、プラスティック、放射性物質、石油などによる陸由来の海洋汚染。
  ・海水温度の低い極域でCO2吸収が進み、海水の酸性化が進行。
 6) 脆弱な公海ガバナンス
  ・海洋の環境問題は問題点があるかどうか見えない場合が多い。分かった時では遅いため「エコシステムアプローチ」、「予防的アプローチ」、「汚染者負担」の原則が肝要だが、取り入れられていない。
  ・海洋は総合的に管理されておらず、漁業、貿易、海底採掘の管理は別々。国連でも担当している部署がバラバラで、マネージする組織が分断されており組織的欠陥がある。
  ・現状は「旗国主義」であるため、他国の船には規則を守らせる権限がなく取り締まりもできない。寄港国措置協定は寄港国に権限を与えようとする方向への動き。
  ・まじめに取り組んできた先進国に加えて、ルール策定時の想定されていなかった発展途上国が進出し始めており、主役が変わってきた。今回の国連総会会期期間に実態に合うように海洋法条約を見直すか否かの決定をしなければならない。
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4.問題意識の特徴
 1)海を総合的に管理する必要のある一つのシステムとしてとらえるべき。
 2)海洋が窮状にあるのは公海のガバナンスが不適切であるのが原因。人類の生存にかかわる問題。
 3)現状は、技術や資金を持つ者の自由になっており、次世代や発展途上国の権利が守られておらず、衡平性に欠ける。
 4)国連海洋法条約で加えられた「公海の自由の原則に一定の制約を」 との流れをさらに推し進める等。

5.回復の推進方法 
現状の問題を解決し、海洋を回復するためには次のような方策を取らなくてはならない。
 1)海洋の持続可能な詳細目標や明確な指標を策定し、開発目標の中心に据える。
 2)ケアと回復を促進するための公海の統治を実現する。
 3)政府の補助金を廃止し、乱獲ができないようにする。
 4)違法、無報告、無規制な漁業に対し、海、港、市場を遮断する。
 5)市場(スーパーマーケット、サプライチェーン)、水族館、などにおいて、魚のさまざまな状況に関する
情報を消費者に知らせるための啓蒙システムを導入する。
 6)プラスティック類の海洋への流入を阻止する。
 7)海底石油・ガスの採掘に対して、法的拘束力のある国際安全基準と法的責任を導入する。
 8)「世界海洋アカウンタビリティ委員会」を設置し、健全な海洋状況をモニタリングする。
 9)公海再生ゾーンを創設し、5年間十分な行動がとられなければ産業漁業を禁止する。
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6.最後に
   川口先生から本日の聴講生に対して以下の様なご期待が示された。
 1)海に多くの問題があるにもかかわらず現在は過小に取り扱われている。このまま放っておくと生態系の変化等から地球が守られなくなることを認識して欲しい。
 2)大きな仕組みで世論喚起をしようと世界が動いていることを知って欲しい。
 3)海洋保全のために消費者一人一人がやるべきことが沢山あり、是非とも実践してほしい。
                                                               以上 (文責:小栗武治)

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2014年08月28日

EVFセミナー「地球温暖化の現状と異常気象について」

演 題 ;地球温暖化の現状と異常気象について
    〜異常気象の経年変化と将来予測〜
開催日時  平成26年8月28日(木)
場 所   新現役ネット事務局会議室
講 師   東京管区気象台 気象防災部 地球環境・海洋課
      地球温暖化情報官 戸川祐樹様

今回のセミナーでは、地球環境予測情報第8巻(2013年)などをベースに地球温暖化について最新の知見を分かりやすく非常にためになる話を紹介していただきました。

講演概要
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1.IPCC(気候変動に関する政府間パネル)とは 
 国連の下で、各国の専門家が参加して気象変動についての最新の科学的知見を取りまとめている。
 3つの作業部会があり、日本では第1作業部会の自然科学的根拠は気象庁、第2作業部会の影響・適応脆弱性は環境省、第3作業部会の気候変動の緩和は経済産業省がそれぞれおもな担当をしている。
2.IPCCとUNFCC(気候変動に関する国際連合枠組条約)の関係は
 IPCCは世界中の研究成果の取りまとめを行い、UNFCCでは温暖化対策を話し合っている。
3.東京都の気候の将来変化
 日本の年平均気温は過去100年あたり1.14℃のペースで上昇しているが、東京(大手町)の年平均気温は2.5℃の割合で上昇している。東京では21世紀末は今より、約3℃上昇すると予測されている。これは、東京の気温が屋久島になるくらいの変化である。また真夏日日数が倍以上に増え約70日になる。熱帯夜である日最低気温25℃以上の日が約50日になる。東京では最高気温が33℃を超えると熱中症が急増する。
 21世紀には、1時間降水量50mm以上の短期間強雨の発生頻度が増加するが、雨の降らない日も増加する。
4.どうして詳しい予測ができたか
スーパーコンピュータ使って、格子間隔5kmの細かさにすることにより、日本列島の細かな地形の影響を従来のモデルより現実に近い形に計算に反映させている。高解像度な気候モデルとしては世界最高水準である。
 気象庁による温室効果ガス等の観測には、僻地での地上観測の他に、観測船で観測を行う航海コースと航空機で観測を行う飛行コースがある。
 温暖化予測の方法はまず気候システムを理解しコンビュ―タ上に地球を再現して、時計を進め日々の天気予報と同じ原理で計算結果を出す。
5.気候変動に関するIPCCまとめ
二酸化炭素は人間活動により産業革命以降に40%増加して、現在は約390ppmで過去80万年間において前例のない水準になっている。
 二酸化炭素等の増加で、地球から宇宙に出てゆくエネルギーが減少し、収支のバランスが崩れ地球温暖化は進む。地球温暖化は大気だけではなく、蓄積されたエネルギーの90%以上は海洋へ。上部に加え海洋深層でも水温上昇している。地球温暖化で、21世紀末頃に世界海面水位が26cm〜82cm位上昇し高潮等へのリスクが増加する。第4次評価報告書(2013年)での評価によると、気候システムの温暖化には疑う余地がなく、人間による影響が20世紀半ば以降に観測された温暖化の支配的要因であつた可能性が極めて高い。最新の研究を踏まえ、確度が着実に上がってきた。
6.地球温暖化の将来
今後の我々の行動により、将来の気温の上昇幅は変わってくる。深刻な影響を避けるためには、産業革命以降の気温上昇を+2℃以内に抑えることを目指す国際合意が出されている。地球温暖化がどうなるかは、今後の我々の行動で決まる。根治療法としては、温室効果ガスの排出を抑制し、対症療法としては自然や人間社会の在り方を調整する方法がある。気象庁は、科学的根拠に基づき、判断に必要な観測や予測の情報を提供していく。
7.質疑
(問)過去に氷河期から間氷期へ移行した際や、縄文時代などはかなり早く温暖化が進行したこともあった。現在の問題となっている温暖化も同じと考えられないのか?
(答)過去の数千年で数℃というペースと比べると、現状はオーダーが1桁大きい速さになっている。生物が気候変動に伴って生息域を変える(温暖化で北上する)場合、植物などは移動可能なスピードが遅いので、温暖化のペースが速すぎると追随できず絶滅のおそれが増す。スピードの違いというのは無視できない。また、気候変動が人間活動に影響を与えるということを考えると、温暖化は地球環境だけに留まらない問題である。
(問)第8巻の結果には温暖化対策の有無は考慮されているのか?
(答)気象庁による地球温暖化予測情報 第8巻は、排出シナリオはSRESシナリオのAIBに固定されているため、対策の有無は考慮されていない。この結果は、現状のままあまり対策を取らないようなシナリオと見ていただいて、対策を取ればこれよりも影響を抑えられるのだと考えて欲しい。また、モデルの解像度は荒くなるが、環境省は第8巻の気候モデルを使用して、シナリオごとに予測結果がどのように変わるのかを計算して公表しているので、併せて参照していただきたい。

(問)気候モデルによる将来予測は、信用できるのか?普通の天気予報ならば日々の結果を見て検証できると思うが?
(答)気候モデルの検証には、それを過去の地球において再現実験を行うことにより、モデルの結果と実際の観測値を比較するということを行っている。また、各機関のモデルの結果を相互比較する、アンサンブル化してモデルの不確実性を見積もるなど、IPCCに採用されているモデルには一定の信頼性があると考えられる。

以上

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2014年07月24日

EVFセミナー「我が国の地熱発電の現状と将来の課題」

演題;我が国の地熱発電の現状と 将来の課題
講師; 産業技術総合研究所 再生可能エネルギー研究センター 
      安川 香澄 様
開催日時  平成26年7月24日(木)
場所    新現役ネット事務局会議室
講師    産業技術総合研究所 再生可能エネルギー研究センター 
       安川 香澄 様
講演テーマ 我が国の地熱発電の現状と将来の課題

セミナー概要報告
1、地熱発電とは
 特徴は3つ、ライフサイクルのCO2排出量が少なく、純国産エネルギー、安定電源。
2、3.11の震災ではすべて無事。送電系統のトラブルのあったところも3日以内に復旧し送電開始。特に奥会津(柳津)は送電も無事で、福島をささえた。
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3、しくみ
 地下の熱+地下水+ボイラー(やかん)としての地層 を有する土地に建設する。
4、日本の地熱資源
 世界3位の規模で発電設備容量 23470MWのポテンシャルがあり、その10分の1は開発可能。
5、なぜ開発が進まないのか
 原子力や火力のようなスケールメリットが無く、電力会社にとって魅力がない。
 初期コストが大きく、立地が限られ、送電コストが高い。
 鉱区設定ができず井戸掘りのリスクおおきい。
 国立公園法の開発規制。
 温泉業者との対話不足。持続可能な開発との理解不足と、都会の電力不足対策が目的と考えられ、地元の安定電源との理解がされなかった。
6、技術開発
EGS 地下を刺激して人工的に亀裂を作ってボイラーとなるようにする。
 ねらいは 1、消費地の近くでできれば、送電コスト下がる。
        2、既存の温泉地や公園地域をさける
        3、既設発電所の出力向上
 課題は 技術開発、誘発地震の心配
まとめ
エネルギー政策として一律の経済原理でない推進方策が必要。
小規模出力(2−3万kW)や更に小規模のバイナリに対してコスト減となるようなインセンティブのある制度設計が必要。
 海外事業に対する技術移転をサポートする制度設計を行い、開発継続と人材育成サポートが急務。地熱技術者は絶滅危惧。
 稼働特性を生かし、地域の分散安定電源として、電力、熱をあわせて供給し地域エネルギー自立を目指すべきではないか。
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質疑
・原発と比べてコスト高いのか→計算方式による。
・地下を掘る開発では温泉周りから金がでませんか?→場所によっては出ることもあり、海外ではレアメタル生産で稼いでいる地熱発電の事例がある。
・ニュージーランドマオリトラストのような利益地元還元政策のようなベースポリシーが必要では→あればよいと思う。今のエネルギー政策は政府が短期経済性から判断しており、長期的ではない点が問題。
・還元水は温泉にならないのか→既存の温泉にとっては、混ぜ物のイメージになるので利用されにくい。温水(熱)としての利用は可能。
・東京では地熱発電できないか→温度不足。将来の超深度EGSなら可能だが、現状では経済性がなさそう。
・アイスランドの状況は→発電量の30%は地熱。これで国民生活をすべてまかなえる。残りの70%は水力だが、このぶんは外国資本のアルミ工場に販売。

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2014年06月26日

EVFセミナー「日本のこれからを考える」

1)開催日時  平成26年6月26日(木)
2)場所     新現役ネット事務局会議室
3)講師     内閣府参事官(兼)経済産業省 研究開発課長
          渡邊 昇治様
4)講演テーマ 「日本のこれからを考える」
5)参加者数  48名
6)セミナー概要報告
  今回のセミナー講師をお願いした渡邊様は2012年8月に「これからの新エネルギー政策、新エネルギーの可能性と課題」というテーマでご講演をいただき、大変好評で折に触れてお話を伺いたいということから、お忙しいところ再度のご講演をお願いした次第です。
  今回は経済産業省というお立場を離れて個人的に思うところをお話しいただきたいということでお願いしましたので、ご講演の記録は残しませんがご準備頂いたレジメに従って筆者の感想を書き加えるということで報告とさせていただきます。

日本のこれからを考える
1)少子高齢化とロボット
    生産年齢人口の減少は避けようがないが、それだけに高齢者、女性が本格的に働く時代が到来する。高齢者はともかく元気で働き続け、逆に働くことによって健康も維持できる。しかしながら通勤の問題もあり、在宅勤務をサポートする情報システムがさらに高度化するだけでなくサービス業でも働けるロボットが登場するかもしれない。社会でロボットが多用されるようになった時のことを踏まえて事故、犯罪、個人情報保護などに対して早期に検討をしておく必要があろう。
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2)ものづくり革命の予感
    コンピュータによる第3次産業の次に来るものは何か。それを本格的ネットワーク社会の到来ということでインダストリー4.0と呼ぶ。これにより企業という概念が変わる可能性もあり、その兆しが随所に表れ始めていると思われる。

3)ダブルメジャーの必要性
    そのような社会で生きていくためには人は複数の専門分野を習得する必要があるであろう。そのためには企業の仕組みや教育システムも変わらざるを得ないが、それだけでなく高齢者と若い人との融合によるオープンイノベーションの創発に期待したい。多様な能力を持った人々のミックスが重要との指摘が興味深い。

4)エネルギーのベストミックス
    これからのエネルギーを考えるうえで重要なことは安全性、エネルギー保障、経済性、環境維持の
S+3Eのバランスが重要である。
    エネルギー利用では電気だけでなくエネルギー利用の大半を占める熱利用に目を向けなければならないが「国産+無尽蔵+CO2フリー」な熱利用技術は現時点ではほとんど不在といえる。その面では研究課題は多いが水素エネルギーにもっと注目した方がよい。太陽光などの再生可能エネルギーの技術革新には期待大だが、技術革新とそれを踏まえた政策のベストミックスを追求すべきであろう。
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以上の項目に関して実例を交えながら大変わかりやすく解説していただきましたが、その目指すところは洞察力にとんだ骨太な想いがあったように感じました。
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2014年05月22日

EVFセミナー「首都直下地震は来るのか?そして富士山の噴火の可能性は?」

実施日:2014年5月22日(木)
演 題:「 首都直下地震は来るのか?
     そして富士山の噴火の可能性は? 」
講 師: 神奈川県温泉地学研究所長
静岡大学名誉教授 
理学博士 里 村 幹 夫 様  
開催場所: NPO法人新現役ネット  A会議室
参加人員: 44名

 里村先生には直接お答えにくいテーマをお願いしたにも拘らず快くお引き受けいただき、ほぼ満席の会場は最初から一言も聞き逃したくないという熱気がいっぱいでした。

1、 地震とは? 「地震」は自然現象、「震災」は社会現象という定義から始まりました。だから普通言われている“東日本大震災”の地震名は“東北地方太平洋沖地震”と呼ばれます。震度は0〜7まで10段階あり、現在は震度計で震度を計測していること、マグニチュードの計算方法には複数あり、Mが1大きくなるとエネルギーが30倍大きくなるとのこと。
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2、 関東地方に想定される地震について :南関東は北からの北米プレート、東からの太平洋プレート、南西からのフィリピン海プレートの交叉する複雑な構造をしており、地震が発生する場所をプレートをもとに分類するだけで6種類にもなる。昨年の中央防災会議では、どの地震が起こるかわからないので被害の最も大きくなる都心南部直下地震で被害想定が作成されている。

首都圏でM8を超える地震の発生予想としては、@大正関東地震タイプ(M8.2)→発生は100年先とされているが、1996年以降スロースリップイベントが5回発生、その間隔がだんだん短くなってきており不気味。A延宝房総沖地震タイプ(M8.5)→東北地方太平洋沖地震によって誘発されないか心配。B元禄地震タイプ(M8.7)→しばらくのところ発生の可能性はない。

3、 東海地震とは :南海トラフの地震帯には歴史的に幾度か大地震が起こっている。1944年の昭和東南海地震、1946年に昭和南海地震が発生した。そのとき地震が起きなかった空白域の東海沖が危険とされ、東海地震対策がクローズアップされた。2001年〜2005年の異常地殻変動が観測されたときにはそれがきっかけで東海地震が発生するのではないかと心配された。

4、 東南海・南海地震 :最大クラスの巨大な地震・津波を検討したものであり、防災対策の基礎にすることは重要だが、必ずこの大きさの地震が来るとは限らない。

5、 富士山の噴火 :東北地方太平洋沖地震直後、富士山の活動が一時的に活発化したが、今は富士山の噴火の前兆と考えられる現象は起こっていないとのことでした。

6、 大地震発生時に一番大事なこと :死なないこと。阪神淡路大震災のときはほとんどの人が即死、その凶器はマイホームだったそうです。救助された人は警察、消防などからよりも近隣住民に助けられたとのことです。大地震で死なないためには、@倒壊しにくい家に住む、A家具を固定する、B寝る場所の安全に特に気をつかう、みなさんはっと我に返ったような顔をされ、深く納得したのでした。
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主な質疑応答)
Q1最近深海魚がよく捕獲されることと地震の兆候との関係
→ 直接の関係はないとおもう。ただし学問的に全く関係ないと言い切るのも難しいことを理解して欲しい。
Q2地震の計測器は変位を計測しているとのことだが、どのように計測しているのか。
   → 地震計以外にも長期的な変動はGPS装置を使った計測をしている。
Q3日本全国に地震計はどれくらい設置されているのか。
   → 全市町村1,700には最低1箇所設置されているので、4,000〜5,000箇所、いや1万箇所くらいに設置されていると思う。

                                      以上

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